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審決分類 審判 一部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない W41
審判 一部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W41
審判 一部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない W41
管理番号 1360672 
審判番号 無効2015-890053 
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-06-18 
確定日 2020-03-24 
事件の表示 上記当事者間の登録第5707700号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成27年12月1日付け審決に対し,知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成28年(行ケ)第10083号 平成28年10月11日判決言渡)があったので,さらに審理のうえ,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5707700号商標(以下「本件商標」という。)は,「コナミスポーツクラブマスターズ」の文字を標準文字により表してなり,平成26年5月30日に登録出願,第41類「教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),スポーツの興行の企画・運営又は開催,ゲーム大会の企画・運営又は開催,その他の興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),運動施設の提供,運動用具の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与」を指定役務として,同年10月3日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
1 請求の趣旨及び経緯
請求人は,本件商標の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を平成27年6月18日付け審判請求書(要旨は項番2及び項番3)において述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第25号証(枝番号を含む。)を提出した。
上記審判事件については,本件審判の請求は,成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決がされ,当該審決は,知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成28年(行ケ)第10083号 平成28年10月11日判決言渡)がされた。
そして,その後,請求人は,本件審判の請求に係る役務の一部を取り下げ,その請求に係る役務は,第41類「ゴルフ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),ゴルフの興行の企画・運営又は開催,ゴルフ場・ゴルフ練習場の提供,ゴルフ用具の貸与,ゴルフを内容とする録画済み磁気テープの貸与」(以下「無効請求役務」という場合がある。)となったものであり,その無効とすべき理由を平成28年12月26日付け上申書(要旨は項番4)及び同29年11月29日付け弁駁書(要旨は項番5)において述べ,証拠方法として,甲第26号証ないし甲第81号証(枝番号を含む。)を提出した。
2 請求の理由
本件商標は,商標法第4条第1項第15号,同第19号及び同第7号に該当し,同法第46条第1項1号により,無効にすべきものである。
3 無効原因
(1)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標は,本件審判請求人(以下「請求人」という。)の業務に係る商品又は役務と混同を生じさせるおそれがある商標である。
イ 請求人「オーガスタ ナショナル インコーポレイテッド(Augusta National Inc.)」及び「オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ(Augusta National Golf Club)」について
請求人は,米国 ジョージア州 オーガスタ ワシントン ロード 2604 に所在し,同所に所在するオーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ(Augusta National Golf Club)を経営する米国法人である。
請求人の経営するオーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ(Augusta National Golf Club)は,いわゆる世界の4大メジャーゴルフトーナメントの一つである「マスターズトーナメント(Masters Tournament)」が開催されるゴルフクラブとして世界中に知れ渡っている。
(審決注:「Masters Tournament」の片仮名表記については,以下,「マスターズトーナメント」と統一する。)
ウ 「マスターズトーナメント(Masters Tournament)」及び「マスターズ(Masters)」の著名性について
請求人の,オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ(Augusta National Golf Club)は,今日のゴルフの人気,及びマスターズトーナメントの著名性とも相まって,今日では,特にゴルフ愛好者の間において誰もが知るゴルフクラブの名称として著名なものであることは疑いない。
「オーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブ」は,球聖ボビージョーンズにより設計されて作られたゴルフコースで,1933年に開場され,1934年にここで,「オーガスタ・ナショナル・インビテーショナル」としてトーナメントが発足された。そして,第6回目の大会である1939年から現在の正式名称である「The Masters Tournament」と呼ばれるようになり,今日に至っている。
「マスターズトーナメント」は,男子プロゴルフ競技で格の高い世界4大メジャー大会の一つであるが,同じ場所,すなわち「オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ/Augusta National Golf Club」で開催されるのは「マスターズトーナメント」のみである。
この大会は,招待資格を有する限られた選手しか出場できない大会として「ゴルフの祭典」と呼ばれ,このトーナメントに出場を許されることは世界中の男子プロゴルフ・プレイヤーにとって夢であり,憧れとなっている。その結果,「Masters」「マスターズ」は,4大メジャー大会の中でも特に注目度が高く,日本でも最も評判の高いゴルフイベントである。
したがって,請求人が,開催,運営する「マスターズトーナメント」が世界屈指の著名なゴルフトーナメントであることは周知の事実であり,これが単に「Masters」「マスターズ」の略称で古くから親しまれている(甲5の1?甲5の80,甲12の1?甲21の9)。
「マスターズトーナメント」は,米国ジョージア州オーガスタに所在する「オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ/Augusta National Golf Club」が毎年主催してそのコースで行われることは,ゴルフに関心を持つ人々の間で知らない者がいないほどである。
さらに,「オーガスタ」も「オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ」の略称として,各種の雑誌その他のメディアで広く用いられているので,その結果,「オーガスタ」もゴルフに関心を持つ人々の間で知らない者がいないほどに周知性・著名性を得ている。
その結果,時には,「オーガスタ」と「マスターズ」はしばしば同義語として雑誌その他のメディアで用いられている事実が存在するほどまでに,「マスターズ」と「オーガスタ ナショナル ゴルフ クラブ」は極めて深く強い結びつきをもっている(甲12の1?甲22の2)。
よって,「マスターズ」といった場合,特にゴルフに関心を持つ人々は,常に請求人との関係で認識する,ということができる。
エ 本件商標との類似性について
(ア)称呼上の類似性について
本件商標は,片仮名の「コナミスポーツクラブマスターズ」からなる。すなわち,本件商標は合計で15文字と商標としては極めて多くの文字からなるものであるから,これを称呼した場合には15音という極めて冗長な構成音数からなる。
したがって,本件商標を一息で称呼するには困難な構成音数であるから,本件商標はいずれかの部分で分離されて称呼される。
しかして,本件商標の商標権者「コナミホールディングス株式会社」(審決注:平成28年11月8日付けで「コナミ株式会社」から表示の変更がされた。以下「被請求人」という。)は,「娯楽」と「健康」の分野で,デジタルエンタテイメント事業,健康サービス事業,ゲーミング&システム事業,遊技機事業の4つの事業を展開している企業である(甲24の1)。被請求人は,その健康サービス事業において「コナミスポーツクラブ」を運営していることは広く知られているから,本件商標中の「コナミスポーツクラブ」は,被請求人が運営しているスポーツクラブの名称である「コナミスポーツクラブ」を示すことは明らかである(甲24の1)。
よって,本件商標に接する者は,本件商標を全体で一個の商標として認識するのではなく,商標権者が運営するスポーツクラブの名称である「コナミスポーツクラブ」に「マスターズ」を付してなる商標であると認識することは疑いない。
さらに,後述するように本件商標中の「マスターズ」は請求人の著名な「マスターズ」を含むものであるから,本件商標に接する者は「マスターズ」の部分に特に印象付けられる。すなわち,本件商標は「コナミスポーツクラブ」と請求人の著名な商標である「マスターズ」という別個の2つの商標が結合した商標として認識される。
このような事情に鑑みれば,本件商標が称呼される場合には,本件商標に接する受益者は本件商標を「コナミスポーツクラブ」と「マスターズ」を別個の商標として認識するから,本件商標からは,「コナミスポーツクラブマスターズ」の他に,「コナミスポーツクラブ」及び「マスターズ」の称呼が生じる,というべきである。
しかして,本件商標から生じる称呼「マスターズ」と請求人の商標「Masters」「マスターズ」から生じる称呼「マスターズ」は同一である。
よって,本件商標と請求人の著名な「Masters」「マスターズ」とは称呼上類似する商標であることは明らかである。
(イ)観念上の類似性について
本件商標は,被請求人が運営するスポーツクラブの名称である「コナミスポーツクラブ」と請求人の著名な「マスターズ」とが結合してなる商標である。
しかして,本件商標の主要部「マスターズ」は,「達人,名人」といった意味を有する言葉として広く一般に知られた言葉である「Masters」を片仮名で表したものであることは明らかである。しかして,請求人の著名な「Masters」からも「達人,名人」の観念が生じる。
したがって,本件商標と請求人の「Masters」「マスターズ」は観念上類似する商標である。
オ 出所の混同について
本件商標は請求人の著名な「マスターズ」をその構成中に含むから,請求人の「Masters」「マスターズ」と類似する商標である。しかも,本件商標の指定役務中,特に「スポーツ用ビデオの制作,スポーツの興行の企画・運営又は開催,運動施設の提供」の受益者はゴルフを含むスポーツ愛好者であるから,これらの者が本件商標に接した場合には,本件商標中「マスターズ」を請求人の著名な「Masters」「マスターズ」を示すものとして認識することは疑いない。さらに,スポーツクラブはスポーツ施設を提供するだけでなく,様々なレッスンプログラムを提供し,本件商標の商標権者も実際にゴルフのレッスンを提供している(甲24の2)。
さらに,今日においては,「Masters」「マスターズ」は,ゴルフ愛好者にはよりいっそう,さらに老若男女を問わず幅広い一般の人たちの間に,請求人が開催するゴルフトーナメントの名称として,広く知れ渡っている。
その結果,請求人の著名な「Masters」「マスターズ」を含む本件商標が指定役務について使用された場合,その役務がゴルフ,その他のスポーツに関係したものでなくても,本件商標の受益者は,当該役務が請求人と経済的あるいは資本的に何らかの関係がある者によって提供されているかの如く,役務の出所について誤認,混同することは明らかである。
さらに,「Masters」「マスターズ」が世界4大メジャーゴルフトーナメントのうちでも格別に世界的に著名なゴルフトーナメントとなったのは,当然ながら,該トーナメントが常に「Augusta National Golf Club」で開催され,該ゴルフクラブが,前述したようにボビージョーンズの設計の理念に基づいた,そのコースの美しさ,コースの攻略の難しさがトーナメントに参加するプレイヤーや,及びこれを観戦する者全てを魅了するからであり,これは,さらに,コースコンディション作り,その他環境の整備等などトーナメントを開催するにあたり,すべてにおいて,最高のトーナメントを提供するという請求人による長年にわたる不断の努力の賜物である。したがって,本件商標の登録が維持され,請求人と何ら関係の無い者により,「マスターズ」をその構成中に含む本件商標が「ゴルフ練習場,ゴルフのレッスン,その他のスポーツ施設の提供」をはじめとする本件指定役務について自由に使用されると,請求人が長年の努力により培ってきた「Masters」の名称に化体された業務上の信用が毀損されることは明らかであり,請求人が受ける損害は計り知れない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する,というべきである。
(2)商標法第4条第1項第19号について
請求人が開催する「Masters」「マスターズ」は世界4大メジャーゴルフトーナメントのうちでも格別に世界的に著名なゴルフトーナメントである。
しかして,被請求人はスポーツクラブを運営する有名な企業であるから,被請求人が「Masters」「マスターズ」が世界的に著名なゴルフトーナメントの略称であることを知らないはずはない。被請求人は,スポーツに関係した役務について使用する商標として,無数にある言葉の中から「マスターズ」を採択し,自らが運営するスポーツクラブの名称にこれを付したのである。これは明らかに,「マスターズ」のもつ顧客吸引力を利用し,不当に利益を上げることを目的として採用したに他ならない。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する,というべきである。
(3)商標法第4条第1項第7号について
請求人が開催する「Masters」「マスターズ」が世界4大メジャーゴルフトーナメントのうちでも格別に世界的に著名なゴルフトーナメントである。
しかして,被請求人は実際にスポーツクラブを運営する企業であるから,被請求人が「Masters」「マスターズ」が世界的に著名なゴルフトーナメントの略称であることを知らないはずはない。被請求人は本件商標の採択にあたり,「マスターズ」の名声や顧客吸引力に便乗するものであることは明らかであり,更に商標登録することは,その名声や顧客吸引力の希釈化を進めるおそれがある。
したがって,本件商標の登録は,公正な取引秩序を乱し,公の秩序を害するおそれがあるものである。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する,というべきである。
4 上申書(平成28年12月26日付け)による主張
(1)「Masters」「マスターズ」の周知・著名性は,特にゴルフの分野においては圧倒的なものである。
ア 「マスターズ」には,請求人が開催する「マスターズトーナメント」の他にも,「マスターズ」を冠したスポーツのイベントが存在することを請求人は否定するものではないが,とりわけ請求人の「マスターズ」の著名性は他のイベントを圧倒していることは明らかであり,以下に挙げる証拠,すなわち,「マスターズ」が古くから我が国の多くの辞書で「マスターズトーナメント」を示す語として掲載されている事実からも,「マスターズ」といった場合は,請求人の「マスターズ」を表示するものとして広く一般に認識されていることは明らかである。
およそ特定の商標が広く知られている事実を立証するためには多種多様な方法が存在する。どれだけその商標について新聞,テレビ等のマスメディアに宣伝広告を行い,費用を支出したか,新聞,テレビ等に報道として取り上げられたか,知名度の調査によりどれほどの知名度を得ているか等が考えられる。しかし,とりわけ,辞書にどのように掲載されているかは,決定的な重みを持っており,辞書にある語が掲載されたという事実は広く一般的に用いられ,社会的に定着している語であることを示しているのである。
「日本国語大辞典・第二版」2001年12月小学館刊(甲27),「広辞苑 第五版」1998年11月岩波書店刊(甲28)等のすべての辞書(甲29?甲41)に,「マスターズ」の語は,「マスターズトーナメント」に由来する,その略称である旨が記載されており,複数の語義を有するとしている辞書でも常に真っ先にこの意義が記載されている。しかも「大辞林(初版)」1988年11月,三省堂刊に「(Masters Tournament)アメリカのオーガスタで毎年開催される世界的ゴルフ競技会。一九三四年有力選手の招待競技として創設」(甲30)と記載されているように,1980年代にはすでに国語辞書に掲載されはじめ,1990年代にほとんどの中型辞書に掲載され,2000年代に入ると小型辞書にも次々に掲載されるに至っている。
このように,多くの国語辞書に掲載されている事実は,「マスターズ」という語が単にゴルフの取引者,需要者だけでなく,広く一般的に用いられ,社会的に定着している事実を示すものである。
イ 「マスターズ」の語が,古くからゴルフ愛好家のための専門誌だけでなく,一般公衆を読者とする「朝日新聞」,「読売新聞」等の一般全国紙,「週刊朝日」,「サンデー毎日」,「週刊文春」,「週刊新潮」,「週刊現代」,「週刊ポスト」,「アサヒ芸能」,「週刊プレーボーイ」,「週刊女性」,「女性自身」,「FRIDAY」,「FLASH」等の各種の雑誌に「マスターズトーナメント」の略称として,記事,報道,読み物などに広く使用されてきたことは,甲第5号証の1ないし80,甲第12号証の1ないし甲第21号証の9,甲第26号証ないし甲第41号証に示すとおりである。
「Masters」「マスターズ」の語が,このように社会的に広く,限られた読者層だけでなく,一般公衆に知られてきたことが,上記のような各種の辞書に記載される基礎ともなっている。
また,多年にわたり毎年4月第2週に開催される「マスターズトーナメント」は,TBS放送を通じ全国的に同時放映されており,時差の関係で,視聴しにくい時間帯に放映されるにもかかわらず,例年,高い視聴率をあげている。もちろん,一々,「マスターズトーナメント」と完全に呼ぶことは稀であり,「マスターズ」の略称がふんだんに放映に際して発言されるのである(甲11の1?6)。
ウ 以上の状況からみて,「Masters」「マスターズ」が請求人が主催している「マスターズトーナメント」の略称として,我が国一般公衆の間に広く認識され,周知,著名となっており,特にゴルフに関係する分野においては,その周知・著名度は圧倒的なものであるから,誰もが「Masters Tournament」「マスターズトーナメント」の略称として認識することは疑いの余地がない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 称呼上の類似性について
(ア)商標の構成に基づく考察
本件商標は,片仮名の「コナミスポーツクラブマスターズ」からなる。本件商標は合計で15文字と商標としては極めて多くの文字からなるものであるから,これを称呼した場合には15音という極めて冗長な構成音数からなる。
そうとすれば,本件商標を一息で称呼するには困難な構成音数であるから,本件商標はいずれかの部分で分離されて称呼される。よって,通常であれば,「コナミ・スポーツ・クラブ・マスターズ」と4語に区切り,3回息継ぎして発音するか,「コナミ・スポーツクラブ・マスターズ」と3語に区切り,2回息継ぎして発音するのが普通であると考えられる。
したがって,本件商標の構成文字数及び発音方法からして,本件商標は「コナミスポーツクラブ」という部分と「マスターズ」とを結合した商標であり,本件商標から「マスターズ」という称呼,観念も「コナミスポーツクラブ」という称呼,観念とともに生じると考えるのが極めて常識的である。
被請求人「コナミホールディングス株式会社」は,「娯楽」と「健康」の分野で,デジタルエンタテイメント事業,健康サービス事業,ゲーミング&システム事業,遊技機事業の4つの事業を展開している企業である(甲24の1)。また,本件商標中前半の「コナミスポーツクラブ」が,被請求人が展開しているスポーツクラブの名称である「コナミスポーツクラブ」を示すことは明らかである。これに対し,「マスターズ」は前述したとおり,請求人が開催する著名な「マスターズトーナメント」の略称として認識されることは明らかであり,「コナミスポーツクラブ」と「マスターズ」には何ら意味上の関連はない。
よって,本件商標に接する者は,本件商標を全体で一個の商標として認識するのではなく,被請求人が運営するスポーツクラブの名称である「コナミスポーツクラブ」に「マスターズ」を付してなる商標であると認識することは疑いない。
(イ)役務の提供者,提供場所,受益者などの具体的事情に基づく考察
請求人が本件商標の登録の無効を求めている無効請求役務は,全てゴルフに関係したものであるから,これらは,全てゴルフに関係した者により及びゴルフ場やゴルフ練習場において提供され,ゴルフをする者や,ゴルフ愛好者に対して提供されるものであって,これらの役務の受益者は,明らかに,ゴルフをする者,ゴルフの愛好者である。
これらの役務の提供者・受益者にとっては,「マスターズ」といえば,まず,請求人の「マスターズ」を示すものといっても過言でない。さらに,ゴルフの分野においての「マスターズ」の著名度は,前半の「コナミスポーツクラブ」とは比較にならないほど圧倒的なものであるから,本件商標に接する者は「マスターズ」の部分に特に印象付けられることは疑いない。
したがって,本件商標中「マスターズ」が上記ゴルフに関係した役務に使用された場合,本件商標の支配的な識別部分として認識されることは明らかである。
このように,上記の事情に鑑みれば,本件商標が,ゴルフに関係する役務,すなわち,無効請求役務について使用され,本件商標が称呼される場合には,「コナミスポーツクラブ」と「マスターズ」が別個の商標として認識されるから,本件商標からは,「コナミスポーツクラブマスターズ」の他に,「コナミスポーツクラブ」及び「マスターズ」の称呼が生じる,というべきである。
よって,本件商標から生じる称呼「マスターズ」と請求人の周知・著名な「Masters」「マスターズ」から生じる称呼とは同一であるから,本件商標と請求人の周知・著名な「Masters」「マスターズ」は,称呼上類似することは明らかである。
イ 観念上の類似性について
本件商標は,被請求人が運営するスポーツクラブの名称である「コナミスポーツクラブ」に「マスターズ」を付してなる商標であり,両者の間には意味上の関連性は全くない。しかして,本件商標の主要部「マスターズ」は,請求人の開催する「マスターズトーナメント」を意味する言葉であり,その意味で広く一般に知られた言葉であることは明らかであり,特にゴルフに関係した分野においては,「マスターズ」の著名度は「コナミスポーツクラブ」と比べて圧倒的なものである。
よって,本件商標が,請求人が無効を請求しているゴルフに関係する役務に使用された場合,本件商標に接する者は「マスターズ」に印象づけられることは明らかであるから,本件商標を請求人の「マスターズトーナメント」と観念上関連付けて認識する,というべきである。これに対し請求人の「Masters」「マスターズ」からも「マスターズトーナメント」の観念が生じることは明らかである。
したがって,本件商標と請求人の周知・著名な「Masters」「マスターズ」は観念上類似する商標である。
ウ 「Masters」「マスターズ」の著名性に基づく考察
「マスターズ」が請求人が主催している「マスターズトーナメント」の略称として我が国一般公衆の間に広く認識され,周知,著名となっており,特にゴルフに関係する分野においてのその周知度,著名度は圧倒的なものであるから,「マスターズ」がゴルフに関係する役務,すなわち,無効請求役務に使用された場合,誰もが「マスターズトーナメント」の略称として認識することは疑いの余地がない。本件商標は,「コナミスポーツクラブ」と請求人の著名な「マスターズ」が結合した商標であることは明らかであるから,本件商標は請求人の「Masters」「マスターズ」と類似する商標である。
エ 本件商標の指定役務と請求人の役務の間における役務の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情に基づく考察
無効請求役務は,全てゴルフに関係したものであり,これらの役務の提供者・提供場所は,ゴルフ番組やゴルフ練習用のビデオの製作者,ゴルフ場,ゴルフ練習場等であり,その受益者は,ゴルフに関係した者,ゴルフをする者,ゴルフ愛好者などである。
よって,これらの役務の提供場所は請求人の役務すなわち,ゴルフトーナメントの提供場所と一致し,かつ,受益者も完全に一致する。
さらに請求人は,「Masters」について,商標権を古くから所有し,「Masters」「マスターズ」の信用の維持を図り,特にゴルフに関係する商品について,「Masters」「マスターズ」を独占的に使用してきた(甲43の1?8)。
オ 出所の混同について
(ア)「マスターズ」は,請求人が主催している「マスターズトーナメント」の略称として我が国一般公衆の間に広く認識され,周知,著名となっており,特にゴルフに関係する分野においてのその周知度,著名度は圧倒的に強力なものである。本件商標は請求人の著名な「マスターズ」をその構成中に含むから,請求人の「Masters」「マスターズ」と類似する商標である。その上,無効請求役務は全てゴルフに関係したものであるから,これらの役務の提供者,提供場所,受益者は全て,ゴルフに関係した者,ゴルフ場,ゴルフ練習場であり,その受益者がゴルフをする者及びゴルフ愛好者である。よって,請求人によるゴルフトーナメントと提供場所,受益者は完全に一致する。
さらに,今日においては,「Masters」「マスターズ」は,ゴルフやスポーツ愛好者ばかりでなく,老若男女を問わず幅広い一般の人たちの間に,請求人が開催するゴルフトーナメントの名称として,広く知れ渡っている。「コナミスポーツクラブ」と「マスターズ」の間には全く意味上の関連性はなく,特にゴルフに関係する分野における請求人の「マスターズ」の著名性は「コナミスポーツクラブ」とは比較の対象にならないほど圧倒的なものであり,極めて強い出所表示力を有するものである。
したがって,本件商標が,無効請求役務について使用された場合,本件商標の受益者は,当該役務が請求人あるいは請求人から許諾を受けた者によって提供されているかの如く,役務の出所につき誤認,混同を生じることは疑いないというべきである。
(イ)「Masters」「マスターズ」が世界4大メジャーゴルフトーナメントのうちでも格別に世界的に著名なゴルフトーナメントとなったのは,当然ながら,該トーナメントが常に「Augusta National Golf Club」で開催され,該ゴルフクラブが,ボビージョーンズの設計の理念に基づき,そのコースの美しさ,コースの攻略の難しさがトーナメントに参加するプレイヤー及びこれを観戦する者全てを魅了するからであり,これは,さらに,コースコンディション作り,その他環境の整備等などトーナメントを開催するにあたり,すべてにおいて,最高のトーナメントを提供するという請求人による長年にわたる不断の努力の成果である。
したがって,本件商標の登録が維持され,請求人と何ら関係の無い者により,「マスターズ」をその構成中に含む本件商標が本件指定役務中のゴルフに関係した商品・役務について自由に使用されると,請求人が長年の努力により培ってきた「Masters」の名称に化体された業務上の信用が毀損されることは明らかであり,請求人が受ける損害は計り知れない。
よって,本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する,というべきである。
(3)商標法第4条第1項第19号について
請求人が開催する「Masters」「マスターズ」は世界4大メジャーゴルフトーナメントのうちでも格別に世界的に著名なゴルフトーナメントである。しかして,被請求人はスポーツクラブを運営する企業であり,被請求人が経営する「コナミスポーツクラブ」は,「ジュニア・ゴルフ・アカデミー」「ゴルフ・アカデミー」と称する青少年向け及び成人向けゴルフ講習会を経常的に設けており,更にこのような活動が新聞等により報道されている(甲44?甲50)。
このように,事業の一部としてゴルフの競技会を企画し,運営を行っている被請求人が,「Masters」「マスターズ」が世界的に著名なゴルフトーナメントの略称であることを知らないはずはない。被請求人は,ゴルフに関係した役務について使用する商標として,無数にある言葉の中から「マスターズ」を採択し,自らが運営するスポーツクラブの名称にこれを付したのであり,これは明らかに,「マスターズ」のもつ顧客吸引力を利用し,不当に利益を上げることを目的として採用したに他ならない。
したがって,本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する,というべきである。
(4)商標法第4条第1項第7号について
請求人が開催する「Masters」「マスターズ」は,世界4大メジャーゴルフトーナメントのうちでも格別に世界的に著名なゴルフトーナメントである。しかして,被請求人は実際にスポーツクラブを運営する企業であるから,被請求人が「Masters」「マスターズ」が世界的に著名なゴルフトーナメントの略称であることを知らないはずはない。ゴルフに関係した役務に関して本件商標の採択にあたり,被請求人は「マスターズ」の名声や顧客吸引力に便乗するものであることは明らかであり,更に商標登録することは,その名声や顧客吸引力の希釈化を進めるおそれがある。したがって,本件商標の登録は,公正な取引秩序を乱し,公の秩序を害するおそれがあるものである。
よって,本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する,というべきである。
5 弁駁書(平成29年11月29日付け)による主張
(1)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標と請求人商標の類否
(ア)本件商標から生じる称呼
a 本件商標から生じる称呼は15音の構成音数からなるから,この構成音数は一般的にいって冗長であり,このような冗長な構成音数からなる称呼は,観念上一体的に認識されるものを除いては,いずれかの部分で分離されて称呼される。
b 被請求人は,本件商標よりも長い称呼を生じる商標が一連に称呼し得ると判断された審決例として,「CYBER WHITE BRILLIANT CELLS」及び「Multimedia Archive Explore」等の商標に関する審決例を挙げているが(乙6?乙11),これらの商標は本件と異なり,観念上一体的に認識され得るものであり,本件商標のように2つの商標からなるものと認識されるものではない。
c 本件商標中の「コナミスポーツクラブ」は被請求人が運営するスポーツクラブの名称として知られているが,「マスターズ」は請求人の世界的に著名な「Masters Tournament」「マスターズトーナメント」の略称であるから,別個に観念され,これらが一体に認識されるべき何ら観念上の必然的な関連はない。よって,本件商標に接する者は,特に無効の請求にかかるゴルフに関する役務の取引者,受益者をして,本件商標を,「コナミスポーツクラブ」と請求人のゴルフトーナメントである「マスターズ」からなる商標で,「コナミスポーツクラブ」と分離して,「マスターズ」を把握・認識することは明らかである。
したがって,本件商標から,「コナミスポーツクラブマスターズ」の他に「マスターズ」の称呼が生じる。
d さらに,被請求人は,ゴルフ大会名は一連一体に認識されると主張するが,そもそも本件商標には,被請求人が主張するような「ゴルフトーナメント」の語は含まれていないから,被請求人が何を言わんとしているのか趣旨不明である。なお,請求人の「マスターズゴルフトーナメント」は,単に「マスターズ」と省略されていることからしても,仮に本件商標がゴルフトーナメントを表示するものと仮定した場合であっても,ゴルフトーナメントの名称はいずれかの部分に省略されることは考えられる。
e 以上のとおり,被請求人の主張は全く理由のないものであり,本件商標は「コナミスポーツクラブ」と個別化した「マスターズ」の構成部分からなる商標として取引者,受益者には認識されるから,本件商標から,「コナミスポーツクラブマスターズ」の他に「マスターズ」の称呼が生じる。
(イ)本件商標から生じる観念
請求人は「コナミスポーツクラブ」が広く知られたスポーツクラブの名称であることを否定するものではないが,そうだとしても,被請求人の主張には,合理的理由はない。
無効請求役務との関係では,これら役務の取引者,受益者はゴルフに関係する業務を行っている者,550万人のゴルフをする者,ゴルフ愛好者等であり,フィットネスクラブの会員等ではない。被請求人の「コナミスポーツクラブ」と請求人の「マスターズ」を比べると,これらの者の間では,請求人の「マスターズ」の著名性は圧倒的であることは明らかである。
無効請求役務の取引者,需要者であるゴルフに関係する業務を行っている者,ゴルフをする者,ゴルフ愛好者,等には,「コナミスポーツクラブ」を知らない者があっても,請求人の「マスターズ」を知らない者はいないといっても過言ではない。このように,本件商標に接する取引者,受益者は,本件商標を「コナミスポーツクラブ」と「マスターズ」の別個の2個の商標からなる商標として認識し,特に無効請求役務との関係では,「マスターズ」の著名性は圧倒的なものであるから「マスターズ」の部分に特に注意を惹かれることは疑いない。
よって,本件商標からは「コナミスポーツクラブマスターズ」の他に「マスターズ」の観念が生じることは明らかである。
(ウ)「マスターズ」の語の意味について
a 上申書において述べたとおり,例えば広辞苑において,「語釈の区分 語義がいくつかに分かれる場合には,原則として語源に近いものから列挙した。」と説明されており,辞書に掲載されている言葉が複数ある場合は,まず,語源に近いものが最初に記載されるのである(甲28)。また,大辞林においては,「現代語は一般的な語義を先にし,特殊な語義や専門的な語義をあとに記述した。」,と説明されている(甲31)。さらに,その他の辞書においても,多くがこのように説明されている。すなわち,これらの辞書における説明によれば,「マスターズ」が辞書に真っ先に記載されていることは,ゴルフ関係者以外の人々にも「マスターズトーナメント」の意味で一般的に知られていることを示すものである。よって,「マスターズ」といった場合には,まず,請求人の「マスターズトーナメント」の意味で認識されるということである。
さらに,甲第30号証,甲第33号証ないし甲第35号証,甲第38号証及び甲第39号証の辞書においては,「マスターズ」の語義として,請求人の「マスターズトーナメント」が記載されているのみであり,「中高年のための大会の総称」といった語義は記載されていない。すなわちこれは,「マスターズ」は「中高年のための大会の総称」の意味ではあまり知られていないことを示すものにほかならない。
しかも,無効請求役務の取引者,受益者は,ゴルフに関係する業務を行っている者,ゴルフをする者,ゴルフ愛好者等である。
したがって,「マスターズ」が請求人の「マスターズトーナメント」の意味で広く一般に知られているにもかかわらず,無効請求役務について「マスターズ」が使用された場合に,ゴルフに関係した者が,「マスターズ」を他の意味で理解するようなことはあり得ない。
b これに関し,被請求人が提出する審決例(乙26の1?乙27の2)は,本件とは事案が全く異なるので,何ら理由にならない。
したがって,これらの審決例が存在するからといって,本件商標中「マスターズ」が「年齢が一定以上の中高年向けの大会の総称」の語義で理解されるとする理由にはならない。
(エ)本件商標中「マスターズ」の文字から生じる観念
a 被請求人は,「マスターズ」を「年齢が一定以上の中高年向けの大会の総称」の語義で理解されることが多いと「年齢が一定以上の」を「中高年向けの」の前に用いているが,この「年齢が一定以上の」とは何を意味するか不明である。「マスターズ」の語義の一つとして「中高年向けの大会の総称」はあるが,「年齢が一定以上の中高年向けの大会の総称」と説明している辞書はない。いずれにせよ,いくつかの辞書においては,「マスターズ」に「中高年向けの大会の総称」という記載があるから,被請求人はその意味で上記語義を用いていると解する。
「マスターズ」は請求人の主催する「Masters Tournament」「マスターズトーナメント」の略称として極めて著名であることは明らかであり,これは,すでに特許庁による審決及び審査における拒絶査定においても認められている(甲6,甲23,甲7)。しかも,無効請求役務は全てゴルフに関係したものであるから,当該役務の取引者,需要者,受益者は全てゴルフに関係した事業者,ゴルフをする者やゴルフ愛好者である。そして,無効請求役務の受益者であるゴルフ人口は550万もいるといわれ,これら550万人の全ての人達に請求人の「マスターズ」は知られているといっても過言でない。
したがって,これらゴルフ関係の役務の事業者,ゴルフをする者やゴルフ愛好者が「マスターズ」の語に接した場合に,これを請求人の「Masters Tournament」「マスターズトーナメント」と関連付けないというようなことはあり得ない。
よって,本件商標に接する取引者,受益者は,本件商標を「コナミスポーツクラブ」と請求人の「マスターズ」からなる商標として把握・認識するから,「マスターズ」の部分が「Masters Tournament」「マスターズトーナメント」の観念が生じる,というべきである。
b 中高年とは「中年と高年。青年期をすぎて老年期に至る間のころ。」をいい,中年とは「青年と老年との中間の年頃。40歳前後の頃。壮年」をいう(甲52)。よって,中高年は40歳前後以上の歳の者である。
しかしながら,「ワールドマスターズゲームス」(乙28)及び「日本スポーツマスターズ」(乙29の1?5)は,大会の競技の種目にゴルフが含まれているとしても,これらの大会の名称はゴルフ大会の名称ではなく,様々な競技を含む大会の名称である。よって,これを理由に「マスターズ」がゴルフの「年齢が一定以上の中高年向けの大会の総称」として一般に使用されていることの理由にはならない。さらに,ゴルフの大会の名称である,「全日本エイジシューターマスターズ」,「和歌山マスターズクラブ」,「OTV杯マスターズゴルフ選手権大会」を始めとするその他のゴルフ大会については,被請求人提出の証拠に記載されたこれらの大会の参加資格及びその他の記載をみると,まず「全日本エイジシューターマスターズ」は,参加者の年齢がエイジシュート達成を目指すもの,すなわち,60歳以上で,ゴルフの上級者を対象とし(乙30の1,2,甲53),その他の大会も,学生選手権の優勝者及び上位の成績を獲得した者,ハンディキャップが少ない上級者,学生以外の者等であるから,単に「年齢が一定以上の中高年向けの大会」は存在しない(乙31?乙36)。よって,これらの大会において「マスターズ」は,「年齢が一定以上の中高年向けの大会」の意味では使用されていない。
さらに,「パテントマスターズ」(乙37の1,2)は,その大会の参加資格は,弁理士であるから,ここでは「マスターズ」を「年齢が一定以上の中高年向けの大会」の意味では使用していない。
以上のとおり,被請求人が提出した証拠によれば,ゴルフの大会名に「マスターズ」が使用されたものがあるが,これらにおいて,「マスターズ」がゴルフについて一般に「年齢が一定以上の中高年向けの大会」の意味で使用されていることを証明するものではない。
そもそも,ゴルフ人口の大半は中高年である。野球,サッカー,テニスなどのスポーツは,子供・少年・少女,学生,青年,中高年といった幅広い年齢層の人によって行われている。これらのスポーツにおいては,中高年以外の年齢層も多く存在するから「中高年のため競技会」というものが存在するかもしれない。これに対し,ゴルフに関しては,その人口のうち大半が中高年であるから「年齢が一定以上の中高年向けの大会」なるものが存在するとは考えられない。よって,かかるゴルフ人口の年齢構成からしても,「マスターズ」が一般に「年齢が一定以上の中高年向けの大会」の意味で使用されてはいないというべきである。上記各証拠における大会は,ハイレベルな大会が多いことを考えると,これらの大会の主催者は,世界のプロゴルファーのうちでも特に選ばれた者だけが出場できる請求人の「マスターズ」の名声や,ゴルフの祭典と言われる華やかな「マスターズ」のイメージにあやかって「マスターズ」を大会の名称に採用し,使用していることは容易に想像できる。
前述したとおり我が国のゴルフ人口は550万人おり,これらのほとんど全ての者が請求人の「マスターズ」を知っていることは疑いのない事実である。一方,被請求人が提出する証拠にかかる「マスターズ」を大会の名称中に使用しているゴルフ大会に参加する者及びその大会名を知る者は,数百人からせいぜい,2千人か3千人といったところであり,請求人の主催するゴルフトーナメントの略称である「マスターズ」を知る人の数とは比べものにならない程少数である。仮に,これらのゴルフ大会に接する者で,「マスターズ」を,誤って,単に「年齢が一定以上の中高年向けの大会」の意味で認識する者がいたとしてもその数は,極めて少数である。
c 被請求人は,ゴルフ以外の各種競技においても「マスターズ」が「年齢が一定以上の中高年向けの大会」の意味で使用されていることを示す証拠を提出しているが,「マスターズ甲子園」(乙38)及び「プロ野球マスターズリーグ」(乙39)は,「年齢が一定以上の中高年向けの大会」の意味で使用されていない。
「マスターズ陸上大会」(乙40)は,陸上の大会であるから,これをもって,ゴルフの大会名において「マスターズ」が「中高年のための競技会」の意味で使用されていることを証明することにはならない。
「マスターズ水泳」(乙41)は,被請求人が主催している水泳大会であるが,当該証拠によれば,参加資格は18歳以上と記載されているから,被請求人が主催している水泳大会においても「マスターズ」が「年齢が一定以上の中高年向けの大会」の意味では使用されていない。
「マスターズ柔道」(乙42)は,大会の参加資格は30歳以上であり,また,これは柔道の大会であるから,これをもって,ゴルフ大会名において「マスターズ」が「年齢が一定以上の中高年向けの大会」の意味で使用されていることを証明することにはならない。
d 以上のとおり,被請求人が提出した証拠において,ゴルフについて,「マスターズ」が単に「年齢が一定以上の中高年向けの大会」の意味で使用されているゴルフトーナメントの名称は一つもなく,これらにおいては,むしろ,大会主催者は「マスターズ」をプロゴルファーの中でも特に選ばれた者だけが出場できる請求人の「マスターズ」の名声やゴルフの祭典と言われる華やかな「マスターズ」のイメージにあやかって採用したことが容易に想像できる。
e 以上述べたとおり,被請求人が提出した証拠からみても,「マスターズ」が単に「年齢が一定以上の中高年向けの大会」の意味で定着しているとは到底いうことはできない。特にゴルフの大会名に一般的に使用されている事実は存在しない。
無効請求役務の取引者,受益者のうちで,請求人の,「マスターズ」を知らない者はいないといっても過言でない。
よって,「マスターズ」を構成中に含む本件商標がゴルフに関係する無効請求役務について使用された場合に,当該役務の取引者,受益者は,本件商標中「マスターズ」を「年齢が一定以上の中高年向けの大会」の意味で理解するようなことはありえず,これを請求人の「Masters Tournament」「マスターズトーナメント」の意味で理解することは疑う余地がないから,本件商標からは請求人の「マスターズトーナメント」の観念が生じることは明らかである。
イ 出所の混同について
(ア)無効請求役務について本件商標が使用された場合,特に受益者は役務の出所について混同を生じるというべきである。
出所の混同には,「いわゆる親子関係や系列会社等の密接な関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係ある営業主の業務に係る商品間等であると誤認されるおそれ,すなわち広義の混同を生ずるおそれがある商標を含み」,さらに特許庁の審査基準においても「他人の著名な商標と他の文字又は図形等と結合した商標は,その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め,原則として,その商品又は役務の混同を生ずるおそれがあるものとして推定して,取り扱うものとする。」とされている(甲25)。無効請求役務の取引者,受益者はゴルフに関係する業務を行っている者,ゴルフをする者,ゴルフ愛好者などである。これまで述べてきた理由により,本件商標に接する者は本件商標を「コナミスポーツクラブ」と請求人の「マスターズトーナメント」が結合してなる商標として認識することは明らかである。繰り返し述べるとおり,我が国のゴルフ人口(ゴルフをする者,ゴルフ愛好者)550万人という多くの人たちの間において「マスターズ」は知れ渡っている。
a「ゴルフ用ビデオの制作」について
「ゴルフ用ビデオの制作」の受益者は,ゴルフ用ビデオの制作を依頼する者,例えば,ゴルフスクール,ゴルフ関係の商品,雑誌等の販売者である(甲55の1,2)。役務の提供場所,すなわち,撮影場所は,ゴルフスクール内,ゴルフ場などであり,ゴルフに関するビデオは,まず,これらの場所で撮影されるのが一般的であり,重要である。被請求人が主張するように,ゴルフ用ビデオの制作の依頼において依頼者は高い注意力を払うとはいっても,本件商標を「コナミスポーツクラブ」と請求人の「マスターズトーナメント」が結合してなる商標として認識することは明らかであるから,「ゴルフ用ビデオの制作」が,請求人と営業上の関係があってなされているかの如く混同し,受益者は「マスターズ」の名声から被請求人を信用して取引するようなことが起こることは容易に想像できる。
さらに,「ゴルフ用ビデオ」という場合,通常は,「ゴルフに用いるビデオ」を意味するから,通常,ゴルフレッスン等を意味し,ゴルフトーナメントを内容とするビデオではない。
よって,「マスターズトーナメント」を内容とする「ゴルフ用ビデオの制作」という役務は想像できないから,本件商標中「マスターズ」は役務の質を表示するものではない。また,仮に「マスターズトーナメント」を内容とするものであったとしても,「マスターズトーナメント」は,請求人によって開催されるゴルフトーナメントであって,その参加資格,運営方法等は,他のゴルフトーナメントとは異なる独特の内容,質のトーナメントである。 したがって,「マスターズ」が役務の質を表示するといった場合,「マスターズ」は,他のゴルフトーナメントとは全く異なった独特な「質」,すなわち,商標の品質表示機能である特別な質を表示しているのであり,商標の自他役務識別力でいう役務の質を表示するものではない。さらに,「マスターズトーナメント」は毎年開催されるから,その内容は毎年異なるものである。
よって,仮に上記役務が「マスターズトーナメント」を内容とするゴルフ用ビデオの制作であったとしても,「マスターズ」には十分自他役務識別力があり,極めて強い出所表示力があるというべきである。さらに,そもそも,被請求人が「マスターズトーナメント」を内容とするビデオを制作することはない。
b 「ゴルフの興行の企画・運営又は開催」について
ここで問題とするのは,役務の受益者が当該役務の出所について混同を生じるか否か,ということである。すなわち,本件役務についての提供場所はゴルフ場である。したがって,役務の受益者は,役務の提供場所を提供ゴルフ場の経営者や,当該ゴルフトーナメントを観戦する者などである。特に観戦する者,すなわちゴルフの愛好者は「マスターズ」を請求人の「マスターズトーナメント」と関連づけて認識することは疑いない。
c 「ゴルフ場・ゴルフ練習場の提供」「ゴルフ用具の貸与」について
「ゴルフ場・ゴルフ練習場の役務の提供場所」は,ゴルフ場及びゴルフ練習場であり,受益者はゴルフをする者,ゴルフの愛好者である。フィットネスクラブ等には,ゴルフ練習場を備えたものもあるが,「ゴルフ場・ゴルフ練習場の提供」と「ゴルフ用具の貸与」は「フィットネスクラブ」等のスポーツクラブにおいてのみ提供されるのではない。また,フィットネスクラブの利用者であっても,一般にゴルフ場やゴルフ練習場を利用するゴルフをする者やゴルフ愛好者のうちで,請求人の「マスターズ」を知らない者はいないといっても過言ではないから,本件商標がこれらの役務について使用された場合,当該役務の受益者が本件商標中の「マスターズ」を請求人の「マスターズトーナメント」と関連付けないといったことはあり得ない。
したがって,本件商標に接する者は,当該ゴルフ場やゴルフ練習場が,例えば,請求人と被請求人の提携によって提供されているかの如く誤認を生じるというべきである。
d 「ゴルフを内容とする録画済み磁気テープの貸与」について
上記役務の受益者はゴルフをする者,ゴルフの愛好者である。ゴルフをする者やゴルフ愛好者に「マスターズ」を知らない者は皆無といっても過言ではない。役務の提供場所として,ビデオのレンタルショップの他に,ゴルフ練習場やゴルフスクールもある。役務の出所の混同が生じるか否かは,請求人が日本で現に当該役務を行っているか否かは関係ない。当該役務について本件商標が使用された場合,当該役務の取引者や受益者が本件商標をどのように認識するかが問題である。
本件役務の受益者,すなわち,ゴルフを内容とするビデオを借りる者は,ゴルフをする者やゴルフ愛好者であるから,レンタルショップのゴルフ関連のビデオの陳列棚,ゴルフ練習場やゴルフスクール等でゴルフを内容とするビデオが貸し出され,本件商標が使用されると,当該ビデオを借りる者は,本件商標中「マスターズ」を請求人の「マスターズトーナメント」と関連付けるに違いない。
貸与される磁気テープが「マスターズトーナメント」を内容とするものであるとしても,「マスターズトーナメント」は,請求人によって開催されるゴルフトーナメントであって,その参加資格,運営方法等は,他のゴルフトーナメントとは異なる独自の内容,質を有するトーナメントである。
したがって,「マスターズ」が役務の質を表示するといった場合,「マスターズ」は,他のゴルフトーナメントとは異なる独自の「質」,すなわち,商標の品質表示機能を有するものである。さらに,「マスターズトーナメント」は毎年開催されるから,当然その内容は毎年異なるが,請求人独自の「マスターズ」の特質を有する以上,十分自他役務識別力がある,というべきである。
さらに,そもそも,常識的にみて,被請求人が「マスターズトーナメント」を内容とする磁気テープを貸与することはないのである。
e 被請求人は,請求人の「マスターズトーナメント」の提供場所は常に「Augusta National Golf Club」であるから,日本で提供される被請求人の役務の提供場所とは一致しないと主張するが,全く理由のないものである。
出所の混同には,「いわゆる親子関係や系列会社等の密接な関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係ある営業主の業務に係る商品等であると誤認されるおそれ,すなわち広義の混同を生ずるおそれがある商標を含む」ことは数多くの裁判において認められている。すなわち,本件でいえば,本件商標が指定役務について使用された場合に,本件商標に接する受益者等が,本件商標中「マスターズ」をどのようにとらえ,本件商標が指定役務について使用された場合に,これを請求人との関係でどのようにとらえるか,ということである。
請求人の「マスターズトーナメント」は,米国の「Augusta National Golf Club」でのみ開催されるのであるが,そのトーナメントは世界中に放映され,日本では1976年からTBSテレビジョンによって放映され,さらにその試合は様々な多くのスポーツ誌,ゴルフ雑誌を始め,一般の新聞,一般の雑誌にも頻繁に掲載されていることは,すでに提出した証拠からも明らかである。さらに,請求人は,古くから,ゴルフウェア,キャディーバッグ,ゴルフボール,カレンダー,ビデオ,DVD等を我が国において販売している(甲56?甲59)。
したがって,本件商標がゴルフに関係する役務について使用された場合,無効請求役務の取引者,受益者,すなわち,ゴルフに関係する事業者,ゴルフをする者,ゴルフ愛好者は「マスターズ」を請求人の「マスターズトーナメント」の意味で認識することは明らかであるから,本件商標に係る役務が請求人と何らかの経済的に関係のあるものにより,提供されている役務であるかの如く認識する,というべきである。よって,請求人により提供される役務の提供場所と無効請求役務が提供される場所が一致しないということは,両者の間における出所の混同を否定する理由にはならない。
f 被請求人は,請求人が「Masters」「マスターズ」について商標登録を有し,独占的に使用している証拠を提出していないと主張する。
しかしながら,請求人が「Masters」について商標登録を有していることは,提出した甲第43号証に示すとおりである。さらに請求人は,我が国において,1980年代から,株式会社ミズノを通じてゴルフバッグ,ゴルフクラブ,ゴルフシューズ等のゴルフ用品を,株式会社ダンロップを通じてゴルフボールを,株式会社フェニックスを通じてゴルフウェアを永年にわたり販売しており,これらの商品について「MASTERS」を広く使用してきた(甲60?甲75)。また,2012年からは,3月から4月末頃までの「マスターズトーナメント」が開催される前後の期間,株式会社TBSの大手町,赤坂及び東京スカイツリーのショップにおいて,ボールペン,カレンダー,キャップ,サンバイザー,ポロシャツの他,傘,ぬいぐるみ,コップ等,様々な商品を販売している(甲76)。またTBSにより各年に開催された「マスターズトーナメント」を収録したDVD(甲58)を,株式会社ゴルフダイジェスト社によりカレンダーを販売している(甲59)。
(イ)以上述べたとおり,被請求人が主張する「マスターズ」が,「年齢が一定以上の中高年向けの大会」の意味で一般的に使用されている事実はないから,本件商標が「コナミスポーツクラブが運営する年齢が一定以上の中高年向けの競技会」の意味で認識されることはない。また,日本におけるゴルフ人口は550万人おり,そのうちで請求人の「マスターズ」を知らない者はいないといっても過言でない。これに対して被請求人が主張し,提出した「マスターズ」をその名称に用いたゴルフ大会に接する者は,550万人いるゴルフ人口のうち極わずかにすぎない。
さらに,被請求人が挙げたゴルフトーナメントの主催者等は,請求人の「マスターズ」の名声やゴルフの祭典と言われる華やかな「マスターズ」のイメージにあやかってゴルフトーナメントの名称に「マスターズ」を採用し,使用していることが容易に想像でき,これらの者も請求人の「マスターズ」と全く関係なく大会の名称に「マスターズ」を採用したとは考えられない。これらの者に対して法的措置をとるか否かは別として,これらの者による「マスターズ」の使用は不正競争行為に該当するものである。
したがって,これらのゴルフトーナメントが存在することを理由に請求人の「マスターズ」の著名性が否定されることは決してあり得ない。
また,これに関する被請求人の主張は全く合理的理由がないものである。さらに,無効請求役務はゴルフに関係するものであるから,これらの者のうち請求人のマスターズを知らない者はいないといっても過言ではない。
そうすると,本件商標に接する取引者,受益者は,本件商標は,「コナミスポーツクラブ」と請求人の「マスターズトーナメント」を示す「マスターズ」が結合してなる商標として認識することは明らかである。すなわち,本件商標が無効請求役務について使用された場合,取引者,受益者は,当該役務は,被請求人である「コナミスポーツクラブ」と「マスターズトーナメント」を主催している請求人あるいはオーガスタナショナルゴルフクラブの提携により提供されているものであるかの如く誤認するというべきであるから,本件商標が,無効請求役務について使用された場合,当該役務の取引者,受益者は,当該役務が請求人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者により提供されているかの如く,役務について,出所の混同を生じることは明らかである。
よって,上記出所の混同に関する裁判例及び特許庁における審査基準(甲25)に照らしても,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当することは明らかである。
(ウ)被請求人は,「マスターズトーナメント」を「日本におけるゴルフをする者,ゴルフ愛好者にとっても,遠い米国で年に一度開催され,メディアを通じてのみ情報を取得できる,実生活とは特段関係のないゴルフトーナメントとして認識しているはずである。」と主張しているが,これも全く的はずれの主張であるといわざるを得ない。
請求人の「マスターズトーナメント」は米国の「Augusta National Golf Club」でのみ開催されるのであるが,そのトーナメントは,日本では1976年からTBSテレビジョンによって放映され,さらにその試合はスポーツ誌,ゴルフ雑誌を始め,一般の新聞,一般の雑誌にも頻繁に掲載されていることは,すでに提出した証拠からも明らかである。その結果,「マスターズ」は,我が国及び外国で行われるゴルフトーナメントのうちでも最も広く一般になじみのあるゴルフトーナメントであることは疑いない事実である。さらに,請求人は,古くから,ゴルフウェア,キャディーバッグ,ゴルフボール,カレンダー,ビデオ,等を我が国において販売している(甲56?甲76)。
したがって,日本で開催されないとはいっても,「マスターズトーナメント」は無効請求役務の取引者,受益者をはじめ,我が国の一般人の間でも極めて身近な存在となっていることは明らかな事実である。
(エ)被請求人の提供する役務は,役務の提供場所,提供時期や提供方法が請求人のものとは大きく異なり,またそのコンセプトや指向性も,請求人のものとは全く異にするから,本件商標を用いて無効請求役務が提供されても,請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務にかかる役務であるかのように,無効請求役務について出所の混同は生じない,と主張しているが,これも全く理由がないことは明らかである。
コンセプトや方向性が違う複数の企業が協力して一つの事業を行うことが頻繁になされていることは周知の事実である。これまで繰り返し述べたとおり,無効請求役務は,ゴルフに関係するものであり,これらの取引者,受益者は「マスターズ」といえばまず,請求人の「マスターズトーナメント」の意味で認識することは明らかである。
(オ)構成中に「マスターズ」等を含む商標登録(甲77?甲80)は,その指定商品・役務から「ゴルフに関する商品・役務」が除かれている。これは,請求人の求めに応じて商標権者がこれらの商品・役務を除いたのである。
また,甲第81号証については,請求人が無効審判を請求したところ,被請求人が審判請求書を取り下げることを条件として自ら登録を放棄するとの申し出があり,当該商標権は抹消されたものである。
よって,かかる状況からしても,本件商標が請求人が無効を請求しているゴルフに関係する役務について使用された場合,取引者,受益者は,請求人との間で役務の出所につき混同が生じるおそれがあることは明らかである。
(2)商標法第4条第1項第19号について
ア 本件商標と被請求人商標の類否について
本件商標に接する取引者,受益者は,本件商標は,「コナミスポーツクラブ」と請求人の「マスターズトーナメント」を示す「マスターズ」が結合してなる商標として認識することは明らかである。
したがって,本件商標は請求人商標「Masters」「マスターズ」と称呼及び観念において類似するものであることは明らかである。
不正の目的について
被請求人は,「コナミスポーツクラブマスターズ水泳競技会」を,2006年以降毎年開催していることに起因し,本件商標を採択し出願した,と主張する。
しかしながら,「マスターズ水泳」についての商標権者は「一般社団法人マスターズ水泳協会」であり,被請求人ではない。また,水泳競技について「マスターズ」を使用してきたからといって,請求人の著名な商標を構成中に含む商標を請求人と出所の混同が生じる役務について登録を取得することを正当化する理由にはならない。
上記したとおり,「マスターズ」は「年齢が一定の以上の中高年を対象とした競技会」の意味で,ゴルフ大会の名称としては一般的に使用されていないものである。
ウ よって,本件商標は商標法第4条第1項第19号の規定に該当するものである。
(3)商標法第4条第1項第7号について
ア 本件商標に接する取引者,受益者は,本件商標が請求人の「マスターズトーナメント」を示す「マスターズ」を含むものとして認識することは明らかである。したがって,本件商標は請求人商標「Masters」「マスターズ」と称呼及び観念において類似するものであることは明らかである。
被請求人は「マスターズ」は「年齢が一定の以上の中高年を対象とした競技会」の総称として一般に定着していると述べているが,「マスターズ」は「年齢が一定の以上の中高年を対象とした競技会」の意味で,ゴルフ大会の名称としては一般的に使用されていないものであり,仮にあったとしても,その意味で理解している人の数は,請求人の「マスターズ」を知る550万人のゴルフ人口のうち,極わずかな人たちである。さらに,「マスターズ水泳/マスターズスイミング/MASTERS SWIMMING」は登録商標であり,「水泳大会の企画・運営又は開催」等を指定役務とし,「年齢が一定の以上の中高年を対象とした水泳大会の・・・・」のように,大会の参加者に年齢による制限はなく登録されている。しかも,被請求人が自ら開催している上記「マスターズ水泳競技会」も18歳以上を参加資格としているのであり(乙41),被請求人は「マスターズ」を「年齢が一定の以上の中高年を対象とした競技会」の意味で使用していない。
本件商標は,その構成中被請求人の「コナミスポーツクラブ」を含むものであるとはいっても,ゴルフに関係した役務を指定役務とするものであるから,本件商標に接する取引者,受益者は,本件商標中「マスターズ」を世界的に著名な請求人の「マスターズトーナメント」として認識するというべきである。
イ よって,商願2010-046916の拒絶査定に照らしても,本件商標は,商標法第4条第1項第7号の規定に該当するものである。

第3 被請求人の答弁
1 答弁の趣旨
被請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第48号証(枝番号を含む。)を提出した。
2 答弁の理由
(1)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標と請求人の商標の類否
(ア)本件商標及び請求人の商標から生ずる称呼
本件商標は,「コナミスポーツクラブマスターズ」の文字を標準文字で表してなり,その構成各文字は同一の書体・同じ大きさ,等間隔をもって表されており,視覚上,構成全体としてまとまりよく一体的に看取されるものである。よって,本件商標からは,その構成に対応して,「コナミスポーツクラブマスターズ」の称呼が生ずる。「コナミスポーツクラブマスターズ」の称呼は,短い音構成とはいえないとしても,一息によどみなく称呼し得るものであり,称呼において,本件商標を特定の部位で分離すべき理由はない。本件審判について,平成27年12月1日になされた審決においても「『コナミスポーツクラブマスターズ』の称呼が,やや冗長であるとしても,一連に称呼し得るものである」と判断されている。
また,取引の実情に照らすと,本件の指定役務中,特に「ゴルフの興行の企画・運営又は開催」においては,例えば国内男子プロゴルフツアーでは「東建ホームメイトカップ」,「パナソニックオープンゴルフチャンピオンシップ」等のようにゴルフトーナメントの名称の語頭に当該トーナメントの主催者やスポンサー企業の名称やブランド名等を付す例が多数みられる(乙1)。また,語頭にスポンサー企業名等を付する例は,企業が主催するアマチュア競技者向けの大会でも「GDOアマチュアゴルフトーナメント」(株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン主催),「ゴルフパートナーカップ」(株式会社ゴルフパートナー主催),「毎日杯アマチュアゴルフ選手権」(毎日新聞水戸支局主催)などが挙げられる(乙2の1?3)。
多額の費用をかけてゴルフトーナメントを主催し,また,一般にスポーツの大会や施設に企業名・商品名などを冠することを引き換えに,多額の資金提供を行うスポンサーであるスポーツ大会の冠スポンサーとなる目的の一つは,大会名称に企業のハウスマークやブランド名を付すことにより露出を増やし,ゴルフのファンや一般の人達へ当該企業名やブランドの浸透を図る点にあり(乙3),サッカー,テニスや野球の日本選手権シリーズなどゴルフを含むスポーツの業界全般で普通に行われている(乙4)。企業名やブランド名を付した大会名が大会の開催に際して表示・称呼されることにより高い広告効果を発揮するからこそ,企業は多額の資金を投じて大会名に企業名・ブランド名を付すのであるから,ゴルフの興行の企画・運営に関わる取引者が,大会名称の語頭に付された企業名を略して称呼することは到底あり得ない。
また,様々なスポーツ大会に企業名・ブランド名が付されていることから,スポーツ大会の主催者やスポンサー企業が広告やPR,ブランディングのために資金を投じて企業名やブランド名を大会名に付すことは,一般にも広く知られている。よって,ゴルフを始めとするスポーツ大会への参加者や観戦者といった一般的な需要者についてみても,大会名称の語頭に付された企業名を略して称呼することはない。
上記事情を考慮すると,本件商標の語頭部分の「コナミスポーツクラブ」の文字部分を捨象し,後半部分の「マスターズ」の文字部分のみに着目して単に「マスターズ」の称呼が生ずることは,到底あり得ないといえ,本件商標は,その構成に対応して「コナミスポーツクラブマスターズ」の称呼のみが生ずる。
さらに,日本で開催されるゴルフトーナメントは,「○○オープン」,「○○カップ」(「○○」には企業名又はブランド名が用いられる)など,大会を主催する企業のブランド名と大会の形態や特色を表す語を結合させた名称が採用される例が少なくない(乙5の1?5)。このように,「○○オープン」,「○○カップ」など,大会を主催する企業のブランド名と,大会の形態や特色を表す語とを結合させてなる大会名称は,一連一体のものとして認識・称呼され,企業名又はブランド名のみが単独で称呼されることはないといえる。
本件商標についてみると,その後半部分の「マスターズ」は,「年齢が一定以上の中高年向けの競技会」を意味するものであり,大会の形態を表す語として頻繁に用いられる語である。よって,被請求人が運営するスポーツクラブのブランド名である「コナミスポーツクラブ」と大会の形態を表す「マスターズ」の語とを組み合わせた本件商標は,「コナミスポーツクラブ」と「マスターズ」の文字部分とが分離して称呼されることはなく,「コナミスポーツクラブマスターズ」と一連に称呼されるものである。
また,特許庁における審決例においても,比較的長い音数からなる称呼が,一連に称呼し得るものであると判断されており(乙6?乙11),これら審決を考慮すれば,15音という構成音数からなる本件商標は,一連に称呼することを妨げるほど冗長なものではなく,構成音数が15音であることを理由に「息継ぎなしに発音することはありえない」という請求人の主張は,到底受け入れられるものではない。
以上より,平成27年12月1日付けの審決においても判断されたとおり,本件商標は一連に称呼し得るものといえ,その構成に対応して,「コナミスポーツクラブマスターズ」の称呼が生じ,他方,請求人の商標からはその構成に対応して「マスターズ」の称呼が生ずる。
本件商標から生ずる「コナミスポーツクラブマスターズ」と請求人の商標から生ずる「マスターズ」の称呼は,「コナミスポーツクラブ」の音の有無という音構成上の明らかな差異を有するものであるから,その音構成及び音数の差異により十分に区別できるものである。
(イ)観念について
a 本件商標中「コナミスポーツクラブ」の文字部分は,被請求人が運営するスポーツ施設として著名な「コナミスポーツクラブ」を表すものであり,「マスターズ」の文字部分は,ゴルフを含む各種の競技において「年齢が一定以上の中高年向けの競技会の総称」として使用されていることから,本件商標は,その構成全体より「コナミスポーツクラブが運営する年齢が一定以上の中高年向けの競技会」程の観念を生ずるものである。
b 「コナミスポーツクラブ」の著名性について
(a)店舗について
被請求人は持株会社であり,スポーツクラブの運営を主とする健康サービス事業は,完全子会社である株式会社コナミスポーツクラブ(以下「被請求人子会社」という。)が事業を行っている。被請求人子会社は,全国に直営施設を183施設運営しており,会員数は50万人を超える。そのうち「コナミスポーツクラブ」の名称で運営するクラブは177施設あり,フランチャイズ及び受託施設も含めると,施設数は399にも及ぶ。各店舗の建物には,外壁や外壁に取り付けられた看板に「コナミスポーツクラブ」や「KONAMI SPORTS CLUB」が表示されている。そして,被請求人は特色ある赤色をコーポレートカラーとして使用しており,赤色に白抜きした文字を配した看板は人目につきやすく,なおかつ店舗数が多いため,「コナミスポーツクラブ」の看板は日常的に相当数の人目に触れているといえる。
また,スポーツクラブの多くは,集客や,継続的な利用を促すために,アクセスがよく,人が集まる場所で店舗を運営しており,いずれの店舗においても,より多くの人に当該店舗を認知してもらう目的で,駅前や大通り等人目のある場所,人通りの多い場所に正対するように,施設建物の壁に大きな看板が掲出されている(乙12の1?15)。
以上より,ゴルフを含めスポーツに関心のある者を始めとし,相当数の人が,被請求人子会社の店舗及び「コナミスポーツクラブ」の看板を,日常的に目にしているといえる。
(b)売上について
「日本のクラブ業界のトレンド2014年版」(乙13)からも明らかなとおり,被請求人子会社の運営するスポーツクラブの売上規模は遅くとも2002年以降業界において常に首位を保っており,2013年の売上高は約765億円に上る。また,世界的にみても,被請求人子会社のスポーツクラブの売上規模は世界第5位に位置するのであり,世界を代表するフィットネスクラブの一つであるといえる(乙14)。被請求人子会社はスポーツクラブ・フィットネス業界におけるリーディングカンパニーであり,被請求人子会社が運営する「コナミスポーツクラブ」は,スポーツクラブ・フィットネスクラブの業界にとどまらず,スポーツに関連する業界全般において,その存在が広く知られている。
(c)事業内容について
被請求人子会社が運営するコナミスポーツクラブでは,フィットネスマシンやスイミングプールなどフィットネスに関する設備の提供や,プール,エアロビクスやヨガといったフィットネスに関するプログラムの提供のみならず,スイミングスクール,体操スクール,ダンススクール,サッカースクール,テニススクール,チアダンススクール,空手スクール等の役務を提供している(乙15)。
ゴルフに関しては,被請求人子会社は子供向け及び大人向けのゴルフスクールを,主に被請求人子会社のスポーツクラブ内で運営しており,ゴルフシミュレータなどの練習設備を提供している。ゴルフスクールの施設は,北海道から九州にかけて,全52施設を展開しており,また,子供向けには,ゴルフスクールに加え,小学生を対象としたゴルフの競技会として,「コナミスポーツクラブキッズゴルファーチャレンジカップ」を毎年開催している(乙16の1?9)。
そして,被請求人子会社は様々な分野においてスポーツ大会を主催している。
水泳においては,公益財団法人日本水泳連盟公認大会である「KONAMI OPEN」を毎年主催しており,本大会は,トップレベルの選手も出場する大会であり,2012年ないし2014年の大会は,新聞社・出版社・テレビ局媒体により広く報道されている(乙17の1?3)。
また,年齢が一定以上の一般の水泳競技者を対象とするマスターズ水泳について,一般社団法人日本マスターズ水泳協会の公認大会である「コナミスポーツクラブマスターズ水泳競技会」を2006年から継続的に主催している(乙18の1?15)。
さらに,コナミスポーツクラブの会員向けに,前記のゴルフにおける子供向けの「コナミスポーツクラブキッズゴルファーチャレンジカップ」に加え,「ダンシングスターズコンテスト」,「コナミスポーツクラブジュニアテニス選手権大会」,「アクションサッカー選手権」などを毎年開催している(乙19の1?3)。
すなわち,被請求人は,トップレベルの選手が出場する大会から一般の競技者が参加できる大会まで,様々なジャンルのスポーツ大会を開催している。
また,被請求人子会社は,数々のオリンピック選手が所属し,所属選手らの活動をサポートすることでも広く知られており(乙20の1?乙21の3),被請求人子会社は2004年以降,公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC)のオフィシャルパートナーとして,専門的なノウハウや資金の提供を通して,日本におけるスポーツの普及及び発展に大きく寄与している(乙22の1?4)。
なお,被請求人子会社は,平成27年(2015年)10月1日に,商号を「株式会社コナミスポーツ&ライフ」から現在の商号に変更した。「連結子会社の商号変更に関するお知らせ」(乙23)に,商号変更の理由として「社会的な認知度の高い『コナミスポーツクラブ』ブランドと商号を一致させることで,より一層の企業価値の向上を目指すものであります。」とあるとおり,商号変更以前より,被請求人子会社によるスポーツ関連事業は,「コナミスポーツクラブ」ブランドとして広く認識されていた。
以上より,「コナミスポーツクラブ」は,被請求人子会社及び被請求人子会社が運営するスポーツクラブを表すブランドとして,スポーツクラブの運営,スポーツの競技会の開催,五輪選手を始めとするアスリートの支援といった事業活動を通じて広く宣伝広告された結果,ゴルフファン・愛好家を含む広くスポーツに関心のある者の間で相当程度認識され,その結果,相当の知名度,著名性を獲得したといえる。
よって,本件商標の構成中の「コナミスポーツクラブ」の文字部分は,被請求人子会社及び被請求人子会社の運営する「コナミスポーツクラブ」を直感させる,強い出所識別力を有する。
加えて,株式会社リクルートライフスタイルによる「ゴルフ市場に関する実態調査」によると,ゴルフの経験者の割合は平均30.3%であるところ,60歳代はゴルフ経験者の割合が38.6%と最も多く,また平均を超えるのは40歳代から60歳代であり,中高年層に経験者が多い(乙24)。また,フィットネスクラブの業界でみると,経済産業省大臣官房調査統計グループによる報告「シニア層の健康志向に支えられるフィットネスクラブ」によると,「スポーツクラブ使用料」支出金額全体に占める世帯主の年齢階級別シェア(乙25)でみると,60歳代が最もシェアが高く,36.5%を占める。また「フィットネスクラブ会員数の年齢別構成比の推移」でみると,60歳以上の会員比率が約30%を占め,また40歳以上の会員比率が全体の6割以上を占める。すなわち,フィットネス業界においても,40代以上の年齢層は主要な需要者層であるといえ,ゴルフに関心のある需要者の年齢層と,フィットネスクラブに関心のある需要者の年齢層とは重複する。そうだとすると,フィットネスクラブに関心が高い中高年層の間では,日本全国で店舗を運営し,フィットネス業界のリーディングカンパニーとして長年にわたりトップのシェアを誇る被請求人子会社の「コナミスポーツクラブ」が特に周知されているといえる。
そうすると,同じく中高年に比較的多く認められるゴルフに関心のある者が本件商標に接した場合に,本件商標の特定の部分にのみ着目し,請求人が開催する「マスターズトーナメント」の略称としての「マスターズ」のみを想起し,被請求人子会社及び被請求人子会社の運営するスポーツクラブを表すブランドである「コナミスポーツクラブ」には全く思い至らないといった状況が生ずる可能性は極めて低い。
すなわち,被請求人子会社及び被請求人子会社の運営するスポーツクラブを表す周知・著名商標「コナミスポーツクラブ」は,ゴルフに関心のある者,特に中高年層の間でも十分周知されているのであり,本件商標の語頭に位置する「コナミスポーツクラブ」の文字部分は無効請求役務について使用した場合,強い識別力を有する語といえる。
よって,本件商標に接する者が,商標の識別上重要な語頭部分の「コナミスポーツクラブ」を捨象し,後半部分の「マスターズ」の文字部分のみに特に印象づけられ,「マスターズ」の文字部分のみに着目して取引にあたるとは到底考えられない。
c 「マスターズ」の語の意味について
本件商標中「マスターズ」の文字部分については,請求人の「マスターズトーナメント」の略称としての語義の他に,男子は三十五歳,女子は三十歳以上,五歳刻みの年齢別で行われる中高年のための国際スポーツ大会である「ワールドマスターズゲームズ(世界マスターズ大会)」や,「中高年のための競技会の総称」の語義が広く知られている。
「ワールドマスターズゲームズ(世界マスターズ大会)」については,「日本国語大辞典・第二版」(甲27),「広辞苑 第五版」等(甲28,甲29,甲31,甲32)に掲載され,また「中高年のための国際スポーツ大会」としての語義が「旺文社国語辞典 第十版」(甲40),「旺文社国語辞典 第十一版」(甲41)にも掲載されており,中高年のための国際スポーツ大会として語義が,社会的に定着している語であるといえる。
また,「中高年のための競技会の総称」としての語義も,「広辞苑 第五版」(甲28),「広辞苑 第六版」(甲29)等(甲31,甲32,甲40,甲41)に掲載されており,「三省堂国語辞典 第六版」(甲36)及び同第七版(甲37)には,「中高年でおこなう<競技会/リーグ戦>。」との記載があるから,中高年のための競技会の総称の意味での「マスターズ」も,使用頻度が高く,また社会的に定着しているといえる。
請求人は,「マスターズ」の語は,「『マスターズトーナメント』に由来する,その略称である旨が記載されており,複数の語義を有するとしている辞書でも常に真っ先にこの意義が記載されている」と主張し,「特にゴルフに関係する分野においては,その周知・著名度は圧倒的である」ことの根拠の一つとし,「Masters」「マスターズ」は,「誰もが『Masters Tournament』『マスターズトーナメント』の略称として認識することは疑いの余地がない」と主張している。
しかしながら,上述のとおり,「マスターズ」の語は複数の語義を有するのであり,そうである以上,使用される態様や取引事情に応じて,辞書に掲載された2つ目以降の語義が生ずることは当然のことであり,請求人の主張は不合理である。
複数の語義を持つ語を,他の語と結合させて使用する場合,いずれの語義が生ずるかは,結合する語同士の関係や,その他の取引実情によって判断されるのであって,辞書に真っ先に掲載されている語義が常に認識されるわけではない。よって,辞書に真っ先に形成されている語義であること自体は,本件商標の「マスターズ」の文字部分が,請求人が主催している「マスターズトーナメント」の略称として認識されることの理由にはならない。
d 本件商標中「マスターズ」の文字部分から生じる観念について
無効請求役務中「ゴルフの興行の企画・運営又は開催」の役務においては,通常,ゴルフ大会の主催者は,主催する企業のブランド名と,大会の形態を表す語と組み合わせることが多い。そうとすると,本件商標「コナミスポーツクラブマスターズ」についても,ブランド名とゴルフ大会の一形態を表す語との組合せであると理解,認識され,「マスターズ」の文字部分は,社会一般に定着する複数の語義のうち,「中高年のための競技会の総称」という語義をもって解されるとするのが,最も自然である。このことは,ゴルフ競技において,数々の競技会で「マスターズ」の語が,年齢が一定以上の中高年向けの競技会の意味で使用されていることからも明らかである。
例えば,1985年より国際マスターズゲーム協会が主催する,原則30歳以上のスポーツ愛好者であれば誰でも参加できる生涯スポーツの国際総合競技大会は「ワールドマスターズゲームズ」と称されている(同大会は,広辞苑において,「世界マスターズ大会」として掲載されている)。同大会の競技種目にはゴルフが含まれており,日本で開催予定の2021年大会でも,ゴルフは競技種目に含まれている(乙28)。
また,国民体育大会(国体)の主催者でもある公益財団法人日本体育協会が主催する「日本スポーツマスターズ」は,対象年齢を原則35歳以上とし,生涯スポーツの普及・振興を図るためのスポーツ大会であって,2001年より総合競技大会として,文部科学省,公益財団法人日本オリンピック委員会,NHK,一般社団法人共同通信社が後援の下,継続的に開催されており,2014年も,ゴルフを含む13競技が実施された。同大会では,ゴルフ競技は男子55歳以上,女子50歳以上を対象とし,所属都道府県の競技団体会長が,代表と認め選抜した者に参加資格が認められており,公益財団法人日本ゴルフ協会のウェブサイトにおいても,「日本スポーツマスターズ」におけるゴルフ競技が紹介されている(乙29の1?5)。
この他にも,中高年向けのゴルフの競技会として,「全日本エイジシューターマスターズ選手権」が,一般社団法人日本エイジシューター協会の主催により毎年開催されており,2016年大会はスポーツ庁が後援している(乙30の1,2)。同大会は,その大会名の如く,エイジシュート(自分の年齢以下のスコアを出すこと)を目指す大会のため,高齢者向けに開催されるものである。日本においては,文部科学省やスポーツ庁といった行政機関や公益性が認定された複数の公益財団法人が,ゴルフの大会について,「マスターズ」の語を中高年や年齢が一定以上の競技者向けの競技会を指す語として使用している。これらのゴルフ競技会の開催に際して,請求人の業務に係る役務との間に混同が生じた事実は一切認められず,このことからも,該ゴルフ競技会に関する取引者,需要者が,「マスターズ」の文字部分を請求人の「マスターズトーナメント」の略称と認識していないことは明らかである。
上記以外にも,中高年のスポーツ競技6団体でつくる和歌山マスターズクラブは,成績優秀者や競技の振興に取り組んだ者に「マスターズ賞」を贈っており,ゴルフ競技者が受賞者に入っている(乙31)。
民間企業主催の大会では,沖縄テレビ放送主催で,50歳以上を対象とした「OTV杯マスターズゴルフ選手権大会」が開催されている(乙32)。
また,福井県ゴルフ協会の主催で,「日本スポーツマスターズ」の出場希望者を対象とした「福井県マスターズゴルフ大会」が開催されている(乙33)。
さらに,「産業新聞鉄鋼マスターズゴルフ大会」や,石川テレビ放送,富山テレビ放送,福井テレビジョン放送,中日スポーツの共催の「北陸マスターズゴルフ」(2015年が第42回大会),「春のマグナリゾート マスターズゴルフコンペティションin浜名湖カントリークラブ」なるゴルフコンペも開催されている(乙34?乙36)。ここで使用されている「マスターズ」の正確な語義は不明だが,需要者や取引者が請求人の「マスターズトーナメント」の略称と認識し使用していないことは明らかである。さらに,弁理士100名ほどが参加するゴルフ大会が,「パテントマスターズ」の名称で例年開催されており,2017年は第11回目の「パテントマスターズ」ゴルフ大会の開催を予定している(乙37の1,2)。商標法に精通し,また常に品位ある行動が求められる弁理士により継続して企画・開催されている大会であり,「マスターズ」の語を請求人の「マスターズトーナメント」の略称と認識し使用していないことは明らかである。
以上のとおり,行政庁や公益財団法人,企業,地方自治体など多数の法人や団体が,ゴルフ大会の開催にあたり「マスターズ」の語を「年齢が一定以上の中高年向けの大会」の語義で用いており,これらの名称が単に「マスターズ」と略称されている事実は認められない。また,請求人の開催する「マスターズトーナメント」の略称としての「マスターズ」と上記競技会で使用される「マスターズ」を含む商標(ゴルフ大会名)との間で,出所の混同が生じたという事実は存在せず,また,それを示す証拠は一切存在しない。
上記事情に照らしても,本件商標中の「マスターズ」の語は,大会の一形態(参加基準)である「年齢が一定以上の中高年向けの大会」の語義をもって認識されるのであり,本件商標は,その構成全体より,「コナミスポーツクラブが運営する年齢が一定以上の中高年向けの大会」程の観念が生ずるといえる。
また,「マスターズ」の語は,ゴルフ以外の各種競技においても「年齢が一定以上の中高年のための競技会の総称」として,野球,陸上,水泳及び柔道において使用されている(乙38?乙42)。
e 小括
以上のとおり,各種のスポーツにおいて「マスターズ」の語は中高年又は所定の年齢を超えた競技者を対象とした競技会の総称として定着しており,特にスポーツに関心のある者の間では広く定着しておりゴルフ競技も例外ではない。また,フィットネスクラブの業界において40歳以上の利用者が全体の6割以上を占め,中高年層は被請求人子会社の重要な顧客層であること,日本においては今後さらなる高齢化が見込まれること,また被請求人子会社は「マスターズ水泳」について競技会を主催している,といった事情からも,被請求人子会社は,「年齢が一定以上の中高年向けの競技会」としての「マスターズ」に関するサービスを提供する主体として,無理なく認識,把握され得る。よって,本件商標を無効請求役務に使用した場合,「マスターズ」の文字部分は,「年齢が一定以上の中高年向けの競技会」の意味合いを容易に看取し,本件商標は全体として「コナミスポーツクラブが運営する年齢が一定以上の中高年向けの競技会」程の観念が生ずる。
また,上記の使用例のように,「マスターズ」の語を中高年又は所定の年齢を超えた競技者のための競技会の総称として用いる際は,「日本スポーツマスターズ」,「全日本エイジシューターマスターズ選手権」,「OTV杯マスターズゴルフ選手権大会」など,「マスターズ」の語が語尾または語中に位置されることが多い。さらに,ゴルフの大会名称は,商標の識別において重要な語頭に,主催する企業のブランド名が配され,それに続く語には「オープン」や「カップ」といった,大会の形態を指す語が使用されることが多い。
よって,本件商標が「企業のブランド名」と「マスターズ」の語の組み合わせた構成である点に着目した場合も,「マスターズ」の文字部分は「年齢が一定以上の中高年向けの競技会」の意味合いを容易に看取し,本件商標は全体として「コナミスポーツクラブが運営する年齢が一定以上の中高年向けの競技会」ほどの,一体的な観念が生ずるといえる。
そうとすれば,本件商標から,請求人が開催する「マスターズトーナメント」との観念が生ずることは一切なく,本件商標と請求人の商標「Masters」「マスターズ」とは,観念上も非類似である。
(ウ)中括
以上のとおり,本件商標と請求人の商標とは,称呼及び観念が異なり,また構成文字や構成文字数の相違などにより外観も明確に相違するものである。
したがって,本件商標は,請求人の商標とは明らかに非類似の商標である。
(エ)請求人の主張について
「ゴルフ用ビデオの制作」の提供者・提供場所を,請求人は「ゴルフ番組やゴルフ練習用のビデオの製作者,ゴルフクラブ」としている。役務の提供者は,ゴルフ番組やゴルフ練習用のビデオの製作者といえるが,当該役務の受益者は,ビデオ制作の委託者やビデオの販売業者であり,「これらの役務の受益者は,明らかにゴルフをする者,ゴルフの愛好者である。」との請求人の主張は矛盾する。
また,請求人のいう「ゴルフクラブ」が何を指すのかは不明であるが,仮にゴルフ場を意味すると,「ゴルフ用ビデオの制作」の役務は,撮影はゴルフ場で行われるとしても,企画や編集作業は制作会社内で行われるといえる。ゴルフ用のビデオの制作を委託する場合は,委託する制作会社の情報や委託契約の条件等を検討した上で,高い注意力をもって委託先を決定すると想定され,被請求人子会社の著名商標であり語頭に配された「コナミスポーツクラブ」の文字部分を捨象し,後半部分の「マスターズ」の文字部分だけで,役務の出所を判断するような状況は到底考えられない。よって,「ゴルフ用ビデオの制作」について本件商標が使用された場合に,「マスターズ」の称呼のみが生じることは,ありえない。
次に,「ゴルフの興行の企画・運営又は開催」の提供者・提供場所として,請求人は「ゴルフクラブ,ゴルフクラブの経営会社」としている。請求人のいう「ゴルフクラブ」が何を指すのか不明であるが,ゴルフ場を意味するとした場合,「ゴルフの興行の企画・運営又は開催」の提供者・提供場所が「ゴルフ場,ゴルフ場の経営会社」ということになる。
しかしながら,日本においてゴルフの興行の企画・運営又は開催を行うのは,主に大会の主催者となる企業や大会の運営会社であり,ゴルフ場の経営会社ではなく(乙43の1?5),日本においてゴルフ場の経営会社がゴルフの興行の企画・運営又は開催を行うことが一般的であることを示す証拠書類は一切示されていない。
また,ゴルフの競技会の開催に関わる取引者や需要者は,大会名称において,語頭に企業のブランド名が配されている場合,企業のブランド名の部分を捨象して称呼することは到底ありえない。よって「コナミスポーツクラブ」の文字部分を捨象して称呼することは到底ありえず,本件商標中「マスターズ」の文字部分のみに着目して単に「マスターズ」の称呼が生ずることは一切ない。
無効請求役務中「ゴルフ場・ゴルフ練習場の提供」,「ゴルフ用具の貸与」についてみると,被請求人子会社が運営するコナミスポーツクラブを始めとし,大手のスポーツクラブ・フィットネスクラブは通常ゴルフの練習設備を備えており,当該練習設備を有料で利用できるクラブも多い。また利便性の良さを生かし,利用者が仕事帰りに立ち寄れるよう,通常ゴルフクラブなどのゴルフ用具は貸し出ししている(乙44の1?6)。一般に,スポーツクラブはゴルフの練習施設の提供やゴルフ用具の貸与に関する需要者や取引者により,当該役務を提供する主体として認識されているのであり,また上述のとおり「コナミスポーツクラブ」の文字部分は,被請求人子会社及び被請求人子会社の運営するスポーツクラブを直感させる著名な商標であるから,本件商標は,「ゴルフ場・ゴルフ練習場の提供」,「ゴルフ用具の貸与」の役務について使用された場合も,取引者,需要者の注意を最も強く引き付ける語頭部分の「コナミスポーツクラブ」の文字部分が,強い出所識別機能を発揮するといえる。よって,商標の識別上重要な語頭に位置し,また被請求人子会社の周知・著名商標である「コナミスポーツクラブ」の文字部分を捨象して称呼することは到底ありえないため,本件商標中「マスターズ」の文字部分のみに着目して単に「マスターズ」の称呼が生ずることは一切ない。
「ゴルフを内容とする録画済み磁気テープの貸与」については,請求人は,役務の提供者はビデオのレンタルショップであり,提供場所はゴルフについてのビデオの陳列棚であり,またゴルフをする者,ゴルフの愛好者が受益者であると主張している。そうだとすると,請求人は当該役務を日本で提供したことがあるとは思えず,また日本において一般のゴルフ愛好者向けに当該役務の提供する主体として認識されていることを示す証拠は一切提出されていないのであるから,「ゴルフを内容とする録画済み磁気テープの貸与」の役務をビデオのレンタルショップなどで提供する主体として,「前半の『コナミスポーツクラブ』とは比較にならないほど圧倒的な」著名度を有するとはいえない。他方,大手スポーツクラブは通常ゴルフスクールを運営しており,また通常施設の利用者に様々な用具を貸与することから,ゴルフを内容とするビデオの貸与の役務を提供することも十分想定できる。また,被請求人子会社のブランドとして広く一般に周知されている「コナミスポーツクラブ」の文字が商標の識別上重要な語頭に位置すること,本件商標がまとまりよく一体に表されていること,「マスターズ」は複数の語義が社会に定着しているといった事情も勘案すると,本件商標の構成において,後半部分に表された「マスターズ」の文字部分が殊更に着目され,一義的に被請求人の「マスターズトーナメント」が想起され,これから生じる「マスターズ」の称呼のみをもって,取引に資されるとは到底いえない。
また,請求人は,「本件商標の指定商品と請求人の役務の間における役務の性質,用途,又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情に基づく考察」として,無効請求役務の提供場所は,「請求人の役務すなわち,ゴルフトーナメントの提供場所と一致し,かつ受益者も完全に一致する」と主張する。
しかしながら,請求人の「ゴルフトーナメントの提供場所」は,請求人が再三にわたり,請求人の開催する「マスターズトーナメント」は「常に『Augusta National Golf Club』で開催され」ると述べ,「マスターズトーナメント」は「Augusta National Golf Club」で開催されるからこそ価値がある旨の主張をしていることから,請求人の役務が米国の「Augusta National Golf Club」以外で提供されることは起こり得ない。他方,当然ながら本件商標は日本で提供する役務について使用するために登録したものであるから,被請求人による役務の提供場所が,請求人の「ゴルフトーナメントの提供場所」と一致するはずがない。
さらに,請求人は,「Masters」について有する登録商標を示し,特にゴルフに関する商品について,「Masters」「マスターズ」を独占的に使用してきたと主張するが,日本において独占的に,実際に使用していることを証明する書類は一切提出されておらず,実体は不明である。
(オ)出所の混同について
本件商標は,上述のとおり,まとまりよく一体に表され,語頭に位置する「コナミスポーツクラブ」が強い識別力を有し,また構成全体より「コナミスポーツクラブが運営する年齢が一定以上の中高年向けの競技会」ほどの観念が生ずるものであって,構成中の「マスターズ」の文字部分が役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとは到底いえないため,「マスターズ」の文字部分だけを抽出して,請求人の商標「Masters」「マスターズ」と比較し,商標そのものの類否を判断することは許されない。よって,本件商標から「マスターズ」の称呼が生ずる余地はなく,本件商標と請求人の商標は互いに非類似の商標である。また,「マスターズ」の語は,年齢が一定以上の中高年向けの競技会の総称としての語義が,ゴルフを含むスポーツに関心のある者の間で定着していることから,本件商標中の「マスターズ」の文字部分から直ちに,一義的に請求人の「マスターズトーナメント」の略称としての「マスターズ」を想起することはなく,無効請求役務に使用しても,需要者や取引者が,請求人又は請求人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように,役務の出所について混同するおそれはない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しないものである。
なお,仮に,本件商標中「マスターズ」の文字部分から,請求人が開催する「マスターズトーナメント」をも連想したとしても,請求人は,「マスターズトーナメント」は常に米国の「Augusta National Golf Club」で開催することに価値があると主張しているのであり,それ故に「ゴルフ場・ゴルフ練習場の提供」や「ゴルフの興行の企画・運営又は開催」を始めとする無効請求役務は,日本のゴルフ場やゴルフ施設では一切提供されておらず,被請求人子会社とは役務の提供場所が一致しない。また,請求人が開催する「マスターズトーナメント」は「招待資格を有する限られた選手しか出場できない大会」であり世界のトッププロのみを対象とし,「世界で一番取れにくいゴルフトーナメントとしても知られており,通称『パトロン』と呼ばれているスポンサーや関係者,オーガスタの地元住民だけしか入場できない。」とされ,実際に観戦できるのも限られた者のみである(乙46)。また,請求人の商標「Masters」「マスターズ」は,年に1回のみ,4月に4日間のみ開催される大会に使用される商標である。
そうすると,日本におけるゴルフをする者,ゴルフ愛好者にとっても,遠い米国で年に一度開催され,メディアを通じてのみ情報を取得できる,実生活とは特段関係のないゴルフトーナメントとして認識しているはずである。
他方,被請求人子会社が運営するスポーツクラブは初心者から中・上級者まで広くスポーツに関心のある一般の者を対象とするスポーツクラブとして著名であり,利用者が「続けられる」施設やプランを提供し,利用者の「トータル健康パートナー」として,利用者の健康づくりに取り組むことを目指している(乙12の1)。ゴルフについても,利便性の良い場所に練習施設を設け,一般的なゴルフ競技者やゴルフに関心のある者が日常的にゴルフを練習することができる施設を提供している(乙16の2)。よって,被請求人の提供する役務は,役務の提供の場所,提供の時期や提供方法が請求人のものとは大きく異なり,また,そのコンセプトや指向性も,請求人のものとは全く異にするものであるから,本件商標を用いて無効請求役務が提供されても,請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務にかかる役務であるかのように,無効請求役務について出所の混同は起こり得ない。
(2)商標法第4条第1項第19号について
ア 本件商標と請求人の商標の類否について
本件商標は,「コナミスポーツクラブマスターズ」の片仮名からなり,請求人の商標「Masters」「マスターズ」とは,外観,称呼及び観念のいずれからみても,相紛れるおそれのない非類似の商標である。
不正の目的について
被請求人は,遅くとも2002年から,「マスターズ水泳」の競技会を開催しており,また,一般社団法人日本マスターズ水泳協会の公認大会として「コナミスポーツクラブマスターズ水泳競技会」を,2006年以降毎年開催していることに起因し,本件商標を採択し出願した(乙47,乙18)。
また,年齢が一定以上の中高年向けの競技会の総称としての「マスターズ」は,水泳のみならずゴルフや陸上など様々な競技の競技会に使用されている語であること,今後も日本社会の高齢化が見込まれ,スポーツ全般について中高年層向けの「マスターズ」大会に関する需要のさらなる増加が予想されること,また種々のスポーツに関するサービスを提供するスポーツクラブにおいては中高年層が重要な顧客層であることなどを考慮すれば,「スポーツの興行の企画・運営又は開催」や「運動施設の提供」,「運動用具の貸与」を始めとする本件商標に係る役務を指定して被請求人が本件商標を出願したことは正当な行為といえ,不正の目的を推認させる事実は一切ない。その他,出願の経緯において,請求人が主張するような,請求人の「『マスターズ』のもつ顧客吸引力を利用し,不当に利益を上げることを目的として採用した」ことを推認させる事実は一切ない。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号の規定に該当するものでないことは明白である。
(3)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は,「コナミスポーツクラブマスターズ」の片仮名からなり,請求人の商標「Masters」「マスターズ」とは,外観,称呼及び観念のいずれからみても,相紛れるおそれのない非類似の商標である。
被請求人子会社は,上述のとおり日本全国でスポーツクラブを運営し,日本人や日本在者の健康の維持・向上を広くサポートする企業であり,またゴルフを含め各種競技について子供向けの「運動塾」を運営し幼少期からの運動能力向上やスポーツ選手の育成に貢献している(乙48)。さらに,被請求人及び被請求人子会社は日本のスポーツ業界において高い名声を有する企業である。そのような企業が自らの業務について使用する商標を採択する際に,あえて他人の周知商標の名声や顧客吸引力に便乗し,社会一般の道徳観念に反し,公正な取引秩序を乱すような商標を採択するとは到底考えられないし,また,そのような動機があったことを証する証拠も一切提出されていない。
そして,「マスターズ」の語は,「年齢が一定以上の中高年を対象とした競技会」の総称としての語義が社会一般に定着しており,ゴルフ競技についても普通に使用されているのであるから,高い名声を有する「コナミスポーツクラブ」の語に続く「マスターズ」の語は,「年齢が一定以上の中高年を対象とした競技会」の総称としての語義が容易に理解されるため,本件商標が公正な取引秩序を乱し,公の秩序を害するおそれのある商標であると認めるべき理由はない。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号の規定に該当するものでないことは明白である。
(4)総括
以上のとおり,本件商標はその構成文字に対応し「コナミスポーツクラブマスターズ」の称呼のみを生ずるものであり,「マスターズ」の称呼を生ずる請求人の商標とは非類似の商標であって,出所の混同を生ずるおそれのないものであるから,商標法第4条第1項第15号に該当せず,また出願経緯に不正の目的を推認させる事情は一切なく,商標法第4条第1項第19号及び商標法第4条第1項第7号にも該当しないものである。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)請求人及び被請求人から提出された証拠及び主張によれば,以下の事実が認められる。
ア 請求人について
(ア)請求人は,米国法人であって,請求人が経営する米国ジョージア州オーガスタ所在のオーガスタナショナルゴルフクラブ(Auguata National golf Club)において,世界の4大ゴルフトーナメントの一つである「Masters Tournament(マスターズトーナメント)」を,毎年4月の第2週に開催している(甲2?甲5の80)。
(イ)請求人は,我が国において,1980年代から株式会社ミズノを通じて「ゴルフバッグ,ゴルフクラブ,ゴルフシューズ」等のゴルフ用品を,株式会社ダンロップを通じて「ゴルフボール」を,株式会社フェニックスを通じて「ゴルフウェア」を販売しており,これら商品及びそのカタログには「MASTERS」及び「マスターズ」の文字が表示されている(甲60?甲75)。
また,2012年からは,3月から4月末頃までの「マスターズトーナメント」が開催される前後の期間,株式会社TBSテレビで,「ボールペン,カレンダー」等,様々な商品を販売し(甲76),株式会社TBSテレビにより各年に開催された「マスターズトーナメント」を収録したDVDが(甲58),株式会社ゴルフダイジェスト社によりカレンダーが販売されており(甲59),これら商品及び店舗には「MASTERS」の文字が表示されている。
イ 「マスターズ」及び「Masters」の周知性について
(ア)請求人の提出した各種辞典等(甲5の2?14,甲27?甲41)には,「マスターズ」の項目において,「(Masters Tournament)アメリカのジョージア州オーガスタで毎年四月に行われるゴルフ競技会。一九三四年,世界の名手の招待競技として発足。」(甲5の2,3),また,「マスターズ(Masters)」の項目において,「ゴルフの世界四大競技会の一つ。招待された世界の有力選手によって,毎年アメリカのオーガスタで行われる。マスターズトーナメント」(甲5の4)等の記載があり,「マスターズ」及び「Masters」の文字が「Masters Tournament」,「The Masters Tournament」,及び「マスターズトーナメント」,「マスターズゴルフトーナメント」(以下,これらについて「マスターズトーナメント」と表示する場合がある。)を表す語として掲載されている。
(イ)2009年1月23日から2010年3月17日付けの朝日新聞及び読売新聞(甲5の15?22)において,「マスターズトーナメント」に関する記事が掲載され,例えば「17歳石川遼マスターズへ」(甲5の15),「20歳,マスターズで優勝したい」(甲5の16),「遼君 マスターズ招待」(甲5の19),「ウッズ マスターズで復帰」(甲5の22)のように,「マスターズ」の文字が,「マスターズトーナメント」を表す語として使用されている。
(ウ)2002年から2011年に発行された一般紙及び女性週刊誌の「新潮45」,「週刊朝日」,「サンデー毎日」,「週刊文春」,「週刊新潮」,「週刊現代」,「週刊ポスト」,「アサヒ芸能」,「週刊プレイボーイ」,「THEMIS」,「週刊女性」,「女性自身」,「FRIDAY」,「FLASH」,「週刊ダイヤモンド」,「YomiuriWeekly」,「月刊バーサス」及び「週刊東洋経済」(甲5の23?80及び甲20の2?11,13,14,16,17)において,「マスターズトーナメント」に出場する選手や当該トーナメントに関する記事等が掲載され,「マスターズ」の文字が,「マスターズトーナメント」を表す語として使用されている。
(エ)マスターズトーナメントは,1972年からVTRで,1976年以降は衛星生中継で,我が国においても毎年テレビで放映されており(甲10?甲11の6),例えば,2005年から2010年の中継時間帯の瞬間最高視聴率は,2005年9.9パーセント,2006年9.3パーセント,2007年7.4パーセント,2008年9.3パーセント,2009年14.6パーセント,2010年13.7パーセント(甲11の6)であり,そのテレビ放送のレポートにおいて冠詞を伴って「THE MASTERS」の表示が使用されている(甲11の1?6)。
(オ)1989年から2011年に発行された,ゴルフ専門誌及びスポーツ雑誌である「週刊ゴルフダイジェスト」,「ゴルフダイジェストチョイス」,「月刊ゴルフダイジェスト」,「アルバトロス・ビュー」,「Number」,「SPORTSYeah!」,「スポルティーバ」及び「GolfClassic」(甲12の2?34,37?41,甲15の2,3,5?10,甲17の2?6,甲17の8?14,甲19の4)において,例えば「総力特集マスターズ!」,「マスターズ観戦ガイド」(甲12の12),「マスターズ 渾身レポート3本立て!」(甲12の26)のように,その表紙やマスターズトーナメントの特集記事等において「マスターズ」の文字が使用されている。
(カ)甲第19号証の2及び3において,「オーガスタのルーツは南アフリカにあり」の表題の書籍の広告に「ゴルフの聖地,マスターズ。」,「1933年アメリカ・ジョージア州にオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブがオープンし,近代ゴルフコース時代の幕が切って落とされた。」などの記載がある。
(キ)株式会社TBSテレビ作成の2001年から2007年のマスターズトーナメントのパンフレット(甲21の3?8)において,その表紙に「マスターズ,四月○日から○日(「○」には,各年の開催日が記載されている。)までオーガスタにて開催」の記載があり,「マスターズ歴代優勝者」,「マスターズ出場資格」などの記載がある。
(ク)上記(ア)ないし(キ)によれば,「マスターズ」及び「Masters」の文字(以下「引用商標」という。)は,アメリカのジョージア州オーガスタで開催されるゴルフ競技会として,1934年に発足し,1972年から我が国において毎年テレビで放映されている,世界の4大ゴルフトーナメントの一つである「マスターズトーナメント」を表す語として,各種事典等(甲5の2?14,甲27?甲41),新聞(甲5の15?22),一般紙及び女性週刊誌(甲5の23?80及び甲20の2?11,13,14,16,17),ゴルフ専門誌及びスポーツ雑誌(甲12の2?34,37?41,甲15の2,3,5?10,甲17の2?6,甲17の8?14,甲19の4),書籍(甲19の2,3)及びテレビ局のパンフレット(甲21の3?8)において広く使用されているものであるから,引用商標は,アメリカのジョージア州オーガスタで開催されるゴルフ競技会の「マスターズトーナメント」を表す語として,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国のゴルフに関連する役務の取引者,需要者の間で広く認識されていたということができる。
ウ 被請求人子会社が使用する「コナミスポーツクラブ」の周知性について
(ア)被請求人子会社は,スポーツクラブの運営を主とする健康サービス事業を行っており,全国に183の直営施設を運営,会員数は50万人を超え,そのうち「コナミスポーツクラブ」の名称で運営するクラブは177施設あり,フランチャイズ及び受託施設も含めると施設数は399であって,各施設の建物には,外壁や外壁に取り付けられた看板に「コナミスポーツクラブ」や「KONAMI SPORTS CLUB」の文字が表示されている(乙12の1?4)。
(イ)被請求人子会社が運営するスポーツクラブの売上規模は,我が国において,フィットネスクラブ売上ランキングで2002年以降首位を保っており,2013年の売上高は約765億円である(乙13)。また,売上規模は,2016年12月9日付けのウェブサイトの記事によれば,フィットネスクラブ業界の世界ランキングでは,世界で第5位である(乙14)。
(ウ)「コナミスポーツクラブ」の名称で運営するクラブでは,フィットネスに関するプログラムのみならず,スイミングスクール,体操スクール,サッカースクール,テニススクール等も提供し(乙15),さらに,子ども向け及び大人向けのゴルフスクールを主に当該スポーツクラブ内で運営しており,北海道から九州にかけて,全52施設を展開し(乙16の1,2),加えて,小学生を対象としたゴルフの競技会を開催しており,その紹介がゴルフ雑誌(乙16の6)に掲載されている。
(エ)してみれば,「コナミスポーツクラブ」の文字は,被請求人子会社の運営するスポーツクラブの名称として使用され,広く知られているということができるものであり,また,当該施設において,様々なスポーツプログラムが提供され,ゴルフに関しても,全国に52施設を展開し,小学生のゴルフ競技会も開催しており,これが,ゴルフ雑誌で紹介されたこと等を考慮すれば,「コナミスポーツクラブ」の文字は,フィットネスの分野のみならず,ゴルフを含むスポーツに関する分野全般において,一般需要者に広く知られているものと認められる。
(2)商標法第4条第1項第15号について
商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には,当該商標をその指定商品等に使用したときに,当該商品等が他人の商品等に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず,当該商品等が右他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれがある商標を含むものと解するのが相当である。けだし,同号の規定は,周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)を防止し,商標の自他識別機能を保護することによって,商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り,需要者の利益を保護することを目的とするものであるところ,その趣旨からすれば,企業経営の多角化,同一の表示による商品化事業を通して結束する企業グループの形成,有名ブランドの成立等,企業や市場の変化に応じて,周知又は著名な商品等の表示を使用する者の正当な利益を保護するためには,広義の混同を生ずるおそれがある商標をも商標登録を受けることができないものとすべきであるからである。そして,「混同を生ずるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や,当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号,平成12年7月11日第三小法廷判決)。
そこで,以下,かかる観点から,検討する。
ア 本件商標と引用商標の類似性の程度について
本件商標は,前記第1に記載のとおり「コナミスポーツクラブマスターズ」の文字からなるものであるところ,該構成文字は,同書,同大,同間隔で表されており,視覚的に後半の「マスターズ」の文字が看者の注意を強く惹く構成とはいえないものであり,たとえ,「マスターズ」の語が,上記(1)イのとおり,アメリカのジョージア州オーガスタで開催されるゴルフ競技会である「マスターズトーナメント」を表す語として,我が国のゴルフに関連する役務の取引者,需要者の間で広く認識されているとしても,上記(1)ウのとおり,前半の「コナミスポーツクラブ」の文字は,我が国で広く知られた被請求人子会社に係るスポーツクラブの名称であるから,これを捨象してまで,後半の「マスターズ」の文字に着目して,本件商標から「マスターズ」の称呼及びゴルフ競技会の「マスターズトーナメント」の観念を生ずるということはできない。
してみれば,「コナミスポーツクラブマスターズ」の文字からなる本件商標と「マスターズ」及び「Masters」の文字からなる引用商標とは,その文字構成において大きく異なるものであるから,その類似性の程度は低いというべきである。
イ 引用商標の周知性について
引用商標は,上記(1)イに記載のとおり,アメリカのジョージア州オーガスタで開催されるゴルフ競技会である「マスターズトーナメント」を表す語して,我が国のゴルフに関連する役務の取引者,需要者の間で広く認識されていたということができる。
ウ 「マスターズ」及び「Masters」の独創性について
引用商標は,「マスターズ」及び「Masters」の文字からなるものであるところ,「マスターズ」の語は,広辞苑第六版(株式会社岩波書店)によれば,「(a)(Masters Tournament)アメリカのジョージア州オーガスタで毎年4月に行われるゴルフ競技会。1934年,世界の名手の招待競技として発足。(b)(World Masters Games)中高年のための国際スポーツ大会。女子30歳・男子35歳以上の参加者が5歳きざみの年齢別で競技。世界マスターズ大会。(c)中高年のための競技会の総称。」の複数の意味を有する語として掲載されており,また,「Masters」の語は,ジーニアス英和辞典 第5版(株式会社大修館書店)によれば,「(使用人に対する)男主人。(・・・の)名人,達人」等の意味合いを有する語として「master」の語が掲載されていることからすれば,該語は,「master」の英単語の複数形「masters」であるといえるものである。
そして,「マスターズ」及び「Masters」の語は,「マスターズトーナメント」を表す語として使用されているものであるところ,その名称の由来について,甲第5号証の11及び12には,「当初はオーガスタ・ナショナル・インビテーショナル・トーナメントが大会名だったが,世界の名手たち(マスターズ)が一堂に会した大会ということで,第二回大会からはマスターズが正式名称になった。」,甲第5号証の14には,「マスコミ界ではこの試合を世界の名手たちの競演という意味でマスターズ・トーナメントと表現した。・・・これが正式名になった。」の記載があることからすれば,「マスターズ」及び「Masters」の語は,元々「上級者」ほどの意味合いで使用されていたものといえる。
なお,請求人も,引用商標である「マスターズ」及び「Masters」から「達人,名人」の観念が生じることを認めている。
そうすると,「マスターズ」及び「Masters」の語は,各種事典等に請求人の「マスターズトーナメント」を表す語として掲載されているとしても,そのほかにも,複数の意味を有する語として知られているものであるから,該語は,請求人の造語とは認められないものであり,その独創性は高いとはいえないものである。
エ 請求人の多角経営の可能性について
請求人の提出した証拠によっては,請求人が,米国ジョージア州オーガスタ所在のオーガスタナショナルゴルフクラブ(Auguata National golf Club)を経営し,当該ゴルフクラブで「マスターズトーナメント」の運営,開催を行う以外に,我が国において,ゴルフ場の提供・競技会の開催等の無効請求役務に係る役務を提供している事実はない。
また,請求人は,我が国において,「マスターズ」及び「MASTERS」の文字を使用して,1980年代から株式会社ミズノ等を通じて,「ゴルフ用品,ゴルフウェア」を販売し,2012年からは,株式会社TBSテレビ等を通じて「ボールペン」,「カレンダー」,「マスターズトーナメント」を収録した「DVD」等を販売していることが認められるが,これら商品の売上高や広告宣伝の詳細は明らかではなく,上記以外に,ゴルフの分野において他の業務を行っている事実又は新たな事業を計画している等多角経営を行っていることや事業拡大の計画があることを認め得る証拠は見いだせない。
オ 役務の関連性について
無効請求役務は,「ゴルフ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),ゴルフの興行の企画・運営又は開催,ゴルフ場・ゴルフ練習場の提供,ゴルフ用具の貸与,ゴルフを内容とする録画済み磁気テープの貸与」であるところ,引用商標は,請求人が運営するゴルフクラブにおいて開催されるゴルフ競技会の名称として使用されていることからすれば,「ゴルフの興行の運営又は開催」に使用されているものといえ,無効請求役務中の「ゴルフの興行の運営又は開催」とは同一又は類似の役務といえるものであり,また,無効請求役務中の「ゴルフの興行の企画,ゴルフ場・ゴルフ練習場の提供,ゴルフ用具の貸与」の役務と上記引用商標に係る役務とは,いずれもゴルフに関連したものであり,その提供の手段,場所等の観点からしても,両役務は,関連性が高い役務といえるものである。
カ 需要者の共通性について
引用商標に係る役務は,上記オのとおり「ゴルフの興行の運営又は開催」であるところ,無効請求役務はいずれもゴルフに関連した役務であり,その需要者は,ゴルフを行うか,あるいはゴルフに興味を有する者であることからすれば,需要者を共通にする場合が少なくないものといえる。
キ 取引の実情について
(ア)請求人の我が国における役務の提供について
上記(1)アによれば,請求人が,我が国において「ゴルフ場の提供・競技会の開催」等の無効請求役務に係る役務を提供している事実はなく,また,請求人が他社と協賛して「○○マスターズ(Masters)」又は「マスターズ(Masters)××」のような表示でゴルフトーナメントを我が国において行っている実情もない。
(イ)我が国における他者による「マスターズ」の使用例について
我が国において,「マスターズ」の文字は,様々な競技会で,他の語と組み合わせた大会名の一部として使用されており,例えば,ゴルフを競技種目に含む「ワールドマスターズゲームズ」には,「原則30歳以上」(乙28),「日本スポーツマスターズ(SPORTS MASTERS JAPAN)」のゴルフ競技には,「55歳以上の男子と50歳以上の女子が技を競う国民体育大会のシニア版」(乙29の4)の記載があり,さらに,ゴルフ競技会において,「2016年/OVT杯/マスターズゴルフ選手権」の「参加資格」には「50歳?64歳部門/65歳以上の部門」(乙32)の記載があり,「第15回福井県マスターズゴルフ大会」(乙33)は,上記「日本スポーツマスターズ」の代表選考会であるから,これらにおいては,「マスターズ」の文字は,「一定の年齢以上の者,中高年のための競技会」といった意味合いで使用されているということができる。
また,「全日本エイジシューターマスターズゴルフ選手権2016」(乙30の1)は,「エイジシューター」が「ゴルフで,6000ヤード(5486メートル)以上の18ホールのコースを自分の年齢と同じか,それ以下のスコアで回った人」(「大辞泉 第二版」株式会社小学館)を意味する語であり,一定程度の年齢以上であるか又は上級者でなければ達成が困難であることからすれば,「マスターズ」の文字は,「中高年の大会」又は「上級者」の意味合いを理解させるものといえ,「第42回 北陸マスターズゴルフ」(乙35)は,「参加資格」に「・・・ハンデキャップ6.0までの者。・・・ハンデキャップ9.1までの者。第39回北陸マスターズプレリュードゴルフ上位30位タイまでの者。・・・ハンデキャップ取得者で大会本部の推薦者」の記載があることからすれば,「マスターズ」の文字は,「上級者の競技会」といった意味合いで使用されているとみるのが相当である。
さらに,その意味合いが明確とはいえないとしても「春のマグナリゾート/マスターズゴルフコンペティション」(乙36),「パテントマスターズ」(乙37の1,2)のように,「マスターズ」の文字を競技会の名称の一部として使用しているものもある。
(3)出所の混同について
上記(2)アのとおり,引用商標は,アメリカのジョージア州オーガスタで開催されるゴルフ競技会である「マスターズトーナメント」を表す語として需要者の間で,広く認識されており,引用商標に係る「ゴルフの興行の運営又は開催」と無効請求役務とは,一定程度の関連性があり,需要者を共通にする場合があるとしても,引用商標を構成する「マスターズ」の文字は,複数の意味合いを有する語として辞書等にも掲載されており,その独創性は高いとはいえず,本件商標と引用商標との類似性の程度は低いものである。
また,我が国においては,スポーツ競技会において,「マスターズ」の語を含む大会名称がいくつかあるが,いずれも,請求人と関係がある大会であるとの証左はなく,該「マスターズ」の文字は,請求人の出所を表示するものとみるよりは,「中高年のための競技会」,「上級者の競技会」ほどの意味合いで使用されているとみるのが自然である。
してみれば,「マスターズ」及び「Masters」の語が,アメリカのジョージア州オーガスタで開催されるゴルフ競技会の名称である「マスターズトーナメント」を表すものとして周知であるとしても,「コナミスポーツクラブマスターズ」の文字からなる本件商標にあっては,前半の「コナミスポーツクラブ」の文字が,被請求人子会社に係るスポーツクラブの名称として我が国で広く知られているものであるから,本件商標からは,まず,この前半部分に着目して,被請求人子会社のスポーツクラブを想起し,これに続く後半の「マスターズ」の文字については,該スポーツクラブと関連付けて,「上級者,中高年のための競技会」程の意味合いを認識させるものとみるのが相当であって,殊更,後半の「マスターズ」の文字に着目し,かつ,前半部分から看取される被請求人子会社に係るスポーツクラブとの関連性を排除してまで,「マスターズトーナメント」を想起させるとみるのは妥当ではない。
したがって,商標権者が,本件商標を無効請求役務に使用しても,これに接する取引者,需要者が,請求人の引用商標である「マスターズ」及び「Masters」を連想又は想起し,これと関連付けて本件商標を認識することはないというべきであり,その役務が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように,その役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものと判断するのが相当である。
(4)小括
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第19号該当性について
引用商標は,上記1(1)イのとおり,アメリカのジョージア州オーガスタで開催されるゴルフ競技会の名称である「マスターズトーナメント」を表す語として,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国のゴルフに関連する役務の取引者,需要者の間で広く認識されていたといえるものである。
しかしながら,本件商標と引用商標とは,上記1(2)アのとおり,その文字構成において大きく異なる別異の商標というべきものであって,しかも,請求人の提出に係る甲各号証を総合してみても,商標権者が,請求人の使用に係る商標の名声と信用にフリーライドする意図など,不正の目的をもって本件商標の使用をするものと認めるに足る具体的事実を見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標である「コナミスポーツクラブマスターズ」は,その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではなく,これを無効請求役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するものともいえない。
また,本件商標は,他の法律によって,その商標の使用等が禁止されているものではないし,特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反するものでもない。
さらに,請求人の主張及び同人の提出に係る甲各号証を総合してみても,本件商標の登録出願の経緯に社会的妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当すると認めるに足る具体的事実を見いだすことができない。
その他,本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足る証拠もない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
4 請求人の主張について
(1)請求人は,「本件商標から生じる称呼は15音の構成音数からなるから,この構成音数は一般的にいって冗長であることは間違いない。このような冗長な構成音数からなる称呼は,観念上一体的に認識されるものを除いては,いずれかの部分で分離されて称呼される。・・・本件商標中の『コナミスポーツクラブ』は被請求人が運営するスポーツクラブの名称として知られているが,『マスターズ』は請求人の世界的に著名な『Masters Tournament』『マスターズトーナメント』の略称であるから,別個に観念され,これらが一体に認識されるべき何ら観念上の必然的な関連はない。よって,本件商標に接する者は,特に無効の請求にかかるゴルフに関する役務の取引者,受益者をして,本件商標を,『コナミスポーツクラブ』と請求人のゴルフトーナメントである『マスターズ』からなる商標で,『コナミスポーツクラブ』と分離して,『マスターズ』を把握・認識することは明らかである。したがって,本件商標から,『コナミスポーツクラブマスターズ』の他に『マスターズ』の称呼が生じる。」,及び「請求人は『コナミスポーツクラブ』が広く知られたスポーツクラブの名称であることを否定するものではないが,・・・無効請求役務との関係では,これら役務の取引者,受益者はゴルフに関係する業務を行っている者,550万人のゴルフをする者,ゴルフ愛好者等であり,フィットネスクラブの会員等ではない。被請求人の『コナミスポーツクラブ』と請求人の『マスターズ』を比べると,これらの者の間では,請求人の『マスターズ』の著名性は圧倒的であることは明らかである。本件商標の登録の無効を求めている役務の取引者,需要者であるゴルフに関係する業務を行っている者,ゴルフをする者,ゴルフ愛好者,等には,『コナミスポーツクラブ』を知らない者があっても,請求人の『マスターズ』を知らない者はいないといっても過言ではない。このように,本件商標に接する取引者,受益者は,本件商標を『コナミスポーツクラブ』と『マスターズ』の別個の2個の商標からなる商標として認識し,特に無効請求役務との関係では,『マスターズ』の著名性は圧倒的なものであるから『マスターズ』の部分に特に注意を惹かれることは疑いない。よって,本件商標からは『コナミスポーツクラブマスターズ』の他に『マスターズ』の観念が生じることは明らかである。」旨を主張する。
しかしながら,たとえ,引用商標である「マスターズ」及び「Masters」が,上記1(1)イのとおり,ゴルフ競技会の名称である「マスターズトーナメント」を表す語として広く認識されているとしても,上記1(2)アのとおり,本件商標である「コナミスポーツクラブマスターズ」においては,後半の「マスターズ」の文字が着目され,該文字部分から独立した称呼及び観念が生じるということはできない。
(2)請求人は,「被請求人が主張する『マスターズ』が,『年齢が一定以上の中高年向けの大会』の意味で一般的に使用されている事実はないから,本件商標が『コナミスポーツクラブが運営する年齢が一定以上の中高年向けの競技会』の意味で認識されることはない。また,日本におけるゴルフ人口は550万人おり,そのうちで請求人の『マスターズ』を知らない者はいないといっても過言でない。これに対して被請求人が主張し,提出した『マスターズ』をその名称に用いたゴルフ大会に接する者は,550万人いるゴルフ人口のうち極わずかにすぎない。さらに,被請求人が挙げたゴルフトーナメントの主催者等は,請求人の『マスターズ』の名声やゴルフの祭典と言われる華やかな『マスターズ』のイメージにあやかってゴルフトーナメントの名称に『マスターズ』を採用し,使用していることが容易に想像でき,これらの者も請求人の『マスターズ』と全く関係なく大会の名称に『マスターズ』を採用したとは考えられない。・・・これらの者による『マスターズ』の使用は不正競争行為に該当するものである。したがって,これらのゴルフトーナメントが存在することを理由に請求人の『マスターズ』の著名性が否定されることは決してあり得ない。・・・本件商標に接する取引者,受益者は,本件商標は,『コナミスポーツクラブ』と請求人の『マスターズトーナメント』を示す『マスターズ』が結合してなる商標として認識することは明らかである。すなわち,本件商標が無効請求役務について使用された場合,取引者,受益者は,当該役務は,被請求人である『コナミスポーツクラブ』と『マスターズトーナメント』を主催している請求人あるいはオーガスタナショナルゴルフクラブの提携により提供されているものであるかの如く誤認するというべきである。」及び「請求人は,古くから,ゴルフウェア,キャディーバッグ,ゴルフボール,カレンダー,ビデオ,DVD等を我が国において販売している(甲56?甲59)。したがって,本件商標がゴルフに関係する役務について使用された場合,無効請求役務の取引者,受益者,すなわち,ゴルフに関係する事業者,ゴルフをする者,ゴルフ愛好者は『マスターズ』を請求人の『マスターズトーナメント』の意味で認識することは明らかであるから,本件商標に係る役務が請求人と何らかの経済的に関係のあるものにより,提供されている役務であるかの如く認識する,というべきである。よって,請求人により提供される役務の提供場所と無効請求役務が提供される場所が一致しないということは,両者の間における出所の混同を否定する理由にはならない。」旨を主張する。
しかしながら,「マスターズ」の語は,上記1(1)イのとおり,アメリカのジョージア州オーガスタで開催されるゴルフ競技会である「マスターズトーナメント」を表す語として,我が国のゴルフに関連する役務の取引者,需要者の間で広く認識されていると認められるとしても,該語は,上記1(2)ウのとおり,複数の意味合いを有する成語であり,我が国においては,他の語と組み合わせて「中高年のための競技会」,「上級者の競技会」といった意味合いで使用されている語といえるものであり,ゴルフに関連した分野においても,上記意味合いで競技会の名称に使用されている実情がある。
そして,請求人は,「『マスターズ』をその名称に用いたゴルフ大会に接する者は,550万人いるゴルフ人口のうち極わずかにすぎない。」旨主張するが,上記ゴルフ大会の参加者,観戦者等これに接する人数は明らかにされておらず,かつ「マスターズ」の文字が,我が国において,「中高年のための競技会」,「上級者の競技会」といった意味合いで使用されている語であることからすれば,「マスターズ」をその名称の一部に用いたゴルフ大会においても,これに接する需要者は,同様の意味合いを想起する場合が少なくないものというのが相当である。
また,請求人は,「請求人の『マスターズ』と全く関係なく大会の名称に『マスターズ』を採用したとは考えられない。・・・これらの者による『マスターズ』の使用は不正競争行為に該当するものである」旨主張するが,これを裏付ける証拠は見いだせない。
加えて,請求人が我が国において,ゴルフウェアやDVD等の商品を販売しているとしても,請求人が他者と提携して「マスターズ」及び「Masters」の文字を含む商標を使用して役務を提供している実態がないことからすれば,需要者が,被請求人と請求人とが提携して提供されている役務であると認識する蓋然性もないというべきである。
そうすると,「コナミスポーツクラブマスターズ」の文字は,上記1(2)アのとおり,同書,同大,同間隔で表されており,視覚的に後半の「マスターズ」の文字部分が分離抽出され,当該文字部分から独立した識別標識としての称呼及び観念が生じるとは認められないものであり,商標権者が,本件商標を無効請求役務に使用しても,その役務の出所について混同を生じさせるおそれがないものであることは,上記1(3)のとおりである。
(3)請求人は,「『マスターズ』は請求人の主催する『Masters Tournament』『マスターズトーナメント』の略称として極めて著名であることは明らかであり,これは,すでに特許庁による審決及び審査における拒絶査定においても認められている。・・・したがって,これらゴルフ関係の役務の事業者,ゴルフをする者やゴルフ愛好者が『マスターズ』の語に接した場合に,これを請求人の『Masters Tournament』『マスターズトーナメント』と関連付けないというようなことはあり得ない。・・・本件商標に接する取引者,受益者は,本件商標を『コナミスポーツクラブ』と請求人の『マスターズ』からなる商標として把握・認識するから,『マスターズ』の部分が『Masters Tournament』『マスターズトーナメント』の観念が生じる,というべきである。」旨を主張し,審査例(甲7)及び審決例(甲6,甲23)を挙げている。
しかしながら,審査例(甲7)の商標は「Masters」及び「マスターズ」の文字を二段に書した構成からなるものであり,また,審決例は「MASTERS GOLF CLUB」(甲6)及びシルエット風に描かれた樹木の図形を中央に配しその左側に「Master」を右側に「golf」の欧文字を配してなるもの(甲23)であって,「マスターズ」の文字が,独立して自他役務の識別標識として機能するものとは認められない本件商標とはその構成を異にするものであり,本件商標と同列に論じることはできないものであるから,これら審査例及び審決例は,本件商標についての上記判断を左右するものではない。
したがって,上記請求人の主張は,いずれも認めることができない。
5 まとめ
以上のとおり,本件商標は,その指定役務中,「ゴルフ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),ゴルフの興行の企画・運営又は開催,ゴルフ場・ゴルフ練習場の提供,ゴルフ用具の貸与,ゴルフを内容とする録画済み磁気テープの貸与」については,商標法第4条第1項第7号,同第15号及び同第19号に違反して登録されたものとは認められないから,同法第46条第1項の規定によって,その登録を無効とすることはできない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2018-04-13 
結審通知日 2018-04-17 
審決日 2018-05-17 
出願番号 商願2014-43929(T2014-43929) 
審決分類 T 1 12・ 222- Y (W41)
T 1 12・ 271- Y (W41)
T 1 12・ 22- Y (W41)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 泉田 智宏 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 中束 としえ
木住野 勝也
登録日 2014-10-03 
登録番号 商標登録第5707700号(T5707700) 
商標の称呼 コナミスポーツクラブマスターズ、コナミスポーツクラブ、コナミスポーツ、コナミ、マスターズ 
代理人 城山 康文 
代理人 北口 貴大 
代理人 松尾 和子 
代理人 辻居 幸一 
代理人 横川 聡子 
代理人 舩越 輝 
代理人 中村 稔 
代理人 藤倉 大作 
代理人 熊倉 禎男 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 田中 伸一郎 
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