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審決分類 審判 一部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効としない W41
審判 一部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない W41
審判 一部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない W41
管理番号 1360593 
審判番号 無効2018-890067 
総通号数 244 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-04-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-09-04 
確定日 2020-02-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第6027710号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6027710号商標(以下「本件商標」という。)は、「People Analytics」の欧文字を標準文字により表してなり、平成29年7月4日に登録出願、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,財務管理及び事業評価の分野における教育・訓練,試験の採点・集計及び評価,教育テストの分析・診断に基づいた助言及び指導,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」を指定役務として、同30年2月13日に登録査定、同年3月16日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標は、その指定役務中、『技芸・スポーツ又は知識の教授,財務管理及び事業評価の分野における教育・訓練,試験の採点・集計及び評価,教育テストの分析・診断に基づいた助言及び指導,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供』(以下「無効請求役務」という。)についてその登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第22号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 はじめに
本件商標は、無効請求役務について、商標法第3条第1項第3号、同法第4条第1項第16号及び同第7号に該当するものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録は無効とされるべきものである。
なお、請求人は、平成30年8月29日付で、役務の区分第41類に属する役務を指定して「R-People Analytics」の欧文字よりなる商標について登録出願をしていることから、本件商標を引用して商標法第4条第1項第11号の規定により拒絶される可能性が極めて高く、本件審判請求についての利害関係を有するため、本件登録無効審判について請求人適格を有する。
2 商標法第3条第1項第3号、同法第4条第1項第16号該当性について
(1)本件商標を構成する「People Analytics」の文字は、「職場の人間科学」の意味合いを有する「ピープル・アナリティクス」を欧文字で表記するものであり、本件商標を無効請求役務に使用するときは、単に役務の質や内容等を普通に用いられる方法で表示するものにすぎないから、何人も役務の流通過程・取引過程において使用する必要があり、一私人に独占を認めるべきでない。
(2)「People Analytics」(ピープル・アナリティクス)の意味合いについて
ア 「People Analytics」(以下「ピープル・アナリティクス」という。)とは、企業人事の領域において職場の生産性や従業員の満足度を高めることを目的として、従業員の行動データを収集・解析することをいい、これを端的にいうと「職場の人間科学」といえるものである。この「ピープル・アナリティクス」は、「優秀な人材の確保」、「人材のパフォーマンスの最大化」などの企業の人事領域における重要な課題を解決するために、人材に関する多様なデータを収集し、統計的に分析することで予測モデルを立て、これに基づいた人事戦略を実施し得るものとして、近年非常に注目を浴びており、以下のように、多くの雑誌記事及び書籍において紹介されている。
(ア)「日本の人事部 人事白書 2017」(株式会社アイ・キュー発行)において、「ここでは、企業におけるピープル・アナリティクス(人事・組織関連データの分析および活用)の状況について調査しました。」、「このように多くの企業では、ピープル・アナリティクスの必要性を感じており、相応のデータを収集していても、分析の担当者がいなかったり、分析するチームが人事部門になかったりするため、データの分析や活用を行うことができていない実態が見受けられます。」、「ピープル・アナリティクスでは、分析・活用するための体制を構築することが大切です。」及び「・・・取り組みに向けた組織体制を構築し、データの取得・整備を行い、分析・活用に長けたピープル・アナリティクスの専門家を招き入れる(育成する)必要があると思われます。」の記載がある(甲5)。
(イ)「月刊人事マネジメント 2017年6月号」(株式会社ビジネスパブリッシング発行)において、「世界的に関心が高まるピープル・アナリティクス/日本におけるピープル・アナリティクスヘの関心は近年高い水準で推移している。」、「この数字の推移は、ピープル・アナリティクスが単なる『流行りもの』の域を脱し、事業運営に必要不可欠な存在となりつつあることを示唆していると考えられ、今後その役割はますます広がっていくことが予想される。」、「まずは、データ収集のインフラが重要である。ピープル・アナリティクスに必要なデータは、さまざまな部署にまたがって存在していることが多く、・・・」の記載がある(甲6)。
(ウ)「月刊人材ビジネス 2017年11月号」(株式会社オーピーエヌ発行)において、「『ピープル・アナリティクス』の定義をもっともシンプルに表現すると『科学的・客観的なデータに基づき、「人事を科学」し、より角度の高い人事を実現させる手法』ということになるでしょう。」、「確かな根拠に基づいた仕組み・モデルづくりが必要だと考え、着目したのが『ピープル・アナリティクス』です。データサイエンティストと人事の経験者がタッグを組み、『退職予測モデル』の構築から着手し、『適正配置モデル』『ハイパフォーマー分析』などに領域を広げています。」の記載がある(甲7)。
(エ)「職場の人間科学」(株式会社早川書房発行)において、「効率的で満足度の高いクリエイティブな人材、専門家、リーダー、部下、橋渡し役、先駆者などを生み出す職場のあり方とは?それをデータで明らかにしようとするのが、ピープル・アナリティクスなのだ。」、「ピープル・アナリティクス・システムの大きなメリットとは、従業員に進捗を示したり、ベスト・プラクティスを広めたりするのを、自動的にできる点だ。」、「ピープル・アナリティクス・システムは、過去の数々の新規部門の設立事例を調べ、協調がうまくいく要因を割り出す。」、「ピープル・アナリティクス・システムでは、これらのコミュニケーション手段を介して、組織の社会的構造を形成するためのメッセージを送信することもできる。」、「しかし、ピープル・アナリティクス・システムの場合、組織内で誰と誰が直接つながっているかだけではなく、誰と誰が会話しているかまで、システムが把握している。」、「ピープル・アナリティクスは企業のあり方を一変させるということだ。ピープル・アナリティクスは、利用者にとっても労働者にとっても、より身近で日常的なものになっていくはずだ。」の記載がある(甲8)。
(オ)これらの他にも雑誌掲載記事などにおいて「ピープル・アナリティクス」が多数掲載されている事実が存在する(甲9、甲10)。
イ 「ピープル・アナリティクス」は、以下のようにインターネット上のウェブサイトにおいても盛んに紹介されている。
(ア)「ピープルアナリティクス/パーソル総合研究所」のウェブサイトのプリントアウト(2017年10月23日掲載)において、「ピープルアナリティクスとは、企業に蓄積されたさまざまなデータを統計解析し、戦略的な人事・経営の意思決定や業務効率化などに活かそうとする取り組みの総称です。」の記載がある(甲11の1)。
(イ)「People Analytics(ピープル アナリティクス)」のウェブサイトのプリントアウト(2015年5月17日掲載)において、「グーグルの職場改革は、効果的なマネジャーのあるべき姿に関する簡単なアンケートから始まりました。その実現には、あくまでもトップダウンによる職場改革を目指したのではなく、多くの社員が理解できるような『行動分析に基づいたデータ解析』(これをピープル・アナリティクスと呼ぶ)を行い、このデータに基づいて、職場でのオープンな議論が繰り広げられた点に特徴があります。」、「シュミット会長は、技術者としての長年の体験から、スマート・クリエイティブには、どんな気質があるのかを理解していたことが、ピープル・アナリティクスを重視した最大の要因であり、これがグーグルの成功要因にもなったと言えます。」の記載がある(甲12の1)。
(ウ)「マイクロソフトの『ピープルアナリティクス』企業VoloMetrix買収-期待されることは?-ZDNet Japan」のウェブサイトのプリントアウト(2015年10月7日掲載)において、「ピープルアナリティクスは、ビッグデータのアナリティクスの中でも専門性の高いニッチな分野だ。適切な分析に必要なデータは、企業の従業員が行うさまざまな活動から収集される。その目的は、可能な限りシステマチックな形で、従業員の全体的なパフォーマンスを向上させる方法を見いだすことだ。」の記載がある(甲13の1)。
(エ)「ピープルアナリティクスのいま-CYDAS Blog」のウェブサイトのプリントアウト(2016年7月21日掲載)において、「ピープルアナリティクスのいま 少し前になりますが、ロンドンで開催されたPeople Analyticsという会議に出席してきました。これは人材データをどう組織開発や経営に活かすかというテーマの会議で、主に事業会社、ITベンダー、サービスベンダーが参加していました。」の記載がある(甲14の1)。
(オ)「ブラック企業経営者がピープル・アナリティクスを導入したらきっとこうなる」のウェブサイトのプリントアウト(2017年5月25日掲載)において、「『ピープル・アナリティクス』(people-analytics)とは『職場の人間科学』ともいわれています。『ピープル・アナリティクス』とは、最新のテクノロジーを活用し、社員の行動データを収集・分析して、クリエイティブな人材を輩出する職場のあり方や生産的で満足度の高い働き方などを導き出す技術のことです。引用:日本の人事部」の記載がある(甲15)。
(カ)「ピープルアナリティクスの動向-世の中の肌触り」のウェブサイトのプリントアウト(2017年9月27日掲載)において、「以前紹介したビックデータ人事の概念とも関連するが、人事のトレンドに1つに、ピープルアナリティクスがあげられる。最近リクルートがアメリカの当該領域の会社を買収したことが記憶に新しいが、ピープルアナリティクスとは、職場の人間に関するデータを収集、分析して、組織風土や職場環境の改善に繋げ、エンゲージメントの向上やパフォーマンス向上を試みるアプローチである。」の記載がある(甲16)。
(キ)「欧米と日本における『ピープルアナリティクス』の違い ORICON NEWS」のウェブサイトのプリントアウト(2016年12月1日掲載)において、「欧米と日本における『ピープルアナリティクス』の違い/人事のビッグデータともいえる『ピープルアナリティクス』が、今後の人事のあり方を変える新機軸となっていく。」及び「データの分析というよりも、まだデータの見える化に取り組んでいる段階の会社が実際としては圧倒的に多い印象があります。一方で、アナリティクスの依頼が私のような大学の人間には結構来ています。このことは、ピープルアナリティクスがまだビジネスとして成熟しきれていないことを示しているという印象を持っています。」の記載がある(甲17)。
(ク)「『ピープル・アナリティクス』とは?-『日本の人事部』」のウェブサイトのプリントアウト(2016年2月15日掲載)において、「『ピープル・アナリティクス』とは、最新のテクノロジーを活用し、社員の行動データを収集・分析して、クリエイティブな人材を輩出する職場のあり方や生産的で満足度の高い働き方などを導き出す技術のことです。近年は、特に社員の行動を、カード型やウェアラブル型端末に組み込まれたセンサー技術から得られるビッグデータとして取得し、オフィス環境の最適化などにつなげる手法が注目を集めています。米国では、グーグルやフェイスブック、アクサ生命保険など、ピープル・アナリティクス専門の部署を設立する企業も増えてきました。」の記載がある(甲19)。
(ケ)「データを武器に、人事が進化する?ピープル・アナリティクスのトレンドと導入の第一歩?(前編)」のウェブサイトのプリントアウト(2016年10月31日掲載)において、「ビッグデータ・アナリティクスという言葉が当たり前のように語られる時代になったが、『ヒト』という最もデータから縁遠いとされていた領域にも波は押し寄せつつある。ピープル・アナリティクス(People Analytics)と呼ばれる、人事データを始めとする多様なデータを駆使して人事課題の解決を図る手法に着手する企業が増えているのだ。」の記載がある(甲20)。
ウ このような事実から、「ピープル・アナリティクス」が世間一般にいかに注目を浴びているかが容易に理解できる。そのため、「ピープル・アナリティクス」の語が、遅くとも本件商標の登録査定時には「職場の人間科学」を表すものとして、取引者、需要者に理解、把握されていたものといわなければならない。
そうすると、本件商標に接する取引者、需要者は、無効請求役務の質や内容等を普通に用いられる方法で表示するものと認識するにすぎず、一私人にすぎない被請求人にこのような語の独占を認めるべきではない。
(3)「ピープル・アナリティクス」と無効請求役務との関係
「ピープル・アナリティクス」は、「職場の人間科学」の意味合いを有するものとして、遅くとも本件商標の登録査定時までには、取引者、需要者の間で容易に理解、把握されるものであるから、以下の無効請求役務との関係を考慮すると、本件商標は、自他役務を識別する標識として機能する余地はない。
ア 「技芸・スポーツ又は知識の教授」及び「セミナーの企画・運営又は開催」との関係
本件商標は、「職場の人間科学」の意味合いを有するものであるところ、「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催」の役務が提供される講座、セミナー等においては、その目的・内容等を端的に表す目的やタイトルなどを冠してその講座、セミナー等の名称とすることが通例行われていることが取引の実情である。
そのため、本件商標を無効請求役務のうちの前記役務などに使用する場合には、取引者、需要者は、「職場の人間科学」を内容とする講座、セミナー等を表示したものであると認識するものというべきである。
したがって、本件商標は、「技芸・スポーツ又は知識の教授」及び「セミナーの企画・運営又は開催」との関係では、前記役務の内容を記述的に表示するにすぎないことから、自他役務を識別する標識として機能する余地はない。一方で、「職場の人間科学」以外の内容の講座、セミナー等に本件商標を使用する場合には、役務の質を誤認するものというべきである。
イ 「財務管理及び事業評価の分野における教育・訓練」との関係
「ピープル・アナリティクス」(職場の人間科学)は、主に企業における人事領域において広く認識されているものであるところ、「財務管理及び事業評価の分野における教育・訓練」は、主に企業における財務部門や事業部門が提供する役務であり、前記指定役務とは何らつながりが認められず、両者の間には関連性がない。そのため、本件商標に接する取引者、需要者は、役務の内容を誤認する可能性が極めて高いものといわなければならない。
ウ 「試験の採点・集計及び評価」及び「教育テストの分析・診断に基づいた助言及び指導」との関係
本件商標とこれらの指定役務との関係については、本件商標をこれらの指定役務について提供される試験、テスト等において、その目的やタイトルを試験、テスト等の名称として使用され得るものである。そのため、本件商標に接する取引者、需要者は、「職場の人間科学」についての試験、テスト等を普通に用いられる方法で表示するものと認識するにすぎない。
したがって、本件商標は、「試験の採点・集計及び評価」及び「教育テストの分析・診断に基づいた助言及び指導」との関係では、前記役務の内容を記述的に表示するにすぎないから、自他役務を識別する標識として機能する余地はない。一方で、「職場の人間科学」以外の内容の試験、テスト等に本件商標を使用する場合には、役務の質を誤認するものというべきである。
エ 「電子出版物の提供」との関係
本件商標とこれらの指定役務との関係については、本件商標をこれらの指定役務について提供される電子出版物において、その内容を定期的に発行される電子出版物のタイトルとして使用されるものである。そのため、本件商標に接する取引者、需要者は、「職場の人間科学」についての電子出版物を表示するものと認識するにすぎない。また、「職場の人間科学」以外についての電子出版物に本件商標を使用する場合には、役務の質を誤認するものというべきである。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標は、無効請求役務との関係で自他役務識別力を著しく欠くものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当し、さらに、前記意味合いに照応する役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。
3 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)被請求人が登録出願時に悪意であったこと
「ピープル・アナリティクス」の語は、前記のとおり、様々なメディアによって盛んに掲載、紹介されている事実がある点にかんがみると、遅くとも本件商標の登録査定時までには、企業人事の分野において、広く認識、理解されていたものといえる。その結果、本件商標は、我が国の取引者、需要者の間で広く認知され、深く浸透しているものといい得る。そうであるにもかかわらず、被請求人のみが「ピープル・アナリティクス」の語を知り得ないとする特別な事情は全く存在しない。
そうすると、被請求人は、少なくとも、本件商標登録出願時には「People Analytics」の語の存在については悪意であったものと容易に推認し得る。
(2)本件商標が剽窃的な出願であること
本件商標は、「People Analytics」の欧文字より構成されるものであるところ、当該語は請求人が独自に採択した独創的な造語ともいい難く、さらに、被請求人が本件商標を採択する必然的な理由が見いだせないことからすれば、被請求人が本件商標の採択において「People Analytics」の語と偶然に一致したとするのは、極めて不自然であるものといわなければならない。
そのため、被請求人は、前記意思を持って剽窃的に本件商標を登録出願し、無断で登録を得たものと考えざるを得ない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標は、登録に至る出願の経緯において著しく社会的相当性を欠くものであり、この登録を認めることは、商標法の予定する秩序を害するおそれがあることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。
1 商標法第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号について
(1)「People Analytics」の語について
「People」の語の意味は、「人々。人民。」(岩波書店「広辞苑」第七版)であり、本件商標の指定役務「技芸・スポーツ又は知識の教授、セミナーの企画・運営又は開催」等の内容を記述的に表示したものではない(乙1)。
一方、「Analytics」の語は、「分析論」(研究社「新英和中辞典」第7版)を意味する語であり、これも指定役務の内容を記述的に表示したものではない(乙2)。
「People」と「Analytics」の語を結合させた「People Analytics」の語は、辞書等に掲載された既成語ではなく、構成各語より「人々の分析論」程の意味合いを看取させる一種の造語と認められる。
(2)請求人の提出した証拠について
請求人は、甲第5号証ないし甲第20号証によって、「People Analytics」の語が業界において普通に使用されているため、商標法第3条第1項第3号に該当すると主張している。
請求人は、「このような事実から、『ピープル・アナリティクス』が世間一般にいかに注目を浴びているかが容易に理解できる。そのため『ピープル・アナリティクス』の語が、遅くとも本件商標の登録査定時には『職場の人間科学』を表すものとして取引者、需要者に理解、把握されていたものといわなければならない。」と主張しているが、当該主張には、商標法第3条第1項第3号に該当するとする明確な理由が存在していない。「指定役務の内容等を表示する語として普通に使用されている」場合とは、業界において、需要者等が役務の内容等を直接的かつ具体的に認識することができるため、一定の出所から流出する役務であると一般的に認識することができない商標であるということである。
しかし、請求人が提出した甲第5号証ないし甲第20号証を精査してみると、役務とは関係のない「ピープル・アナリティクス」という語の使用例が大半であり、指定役務の内容を直接的かつ具体的に表示する状態で記載・使用されている例は存在していない。
請求人は、「ピープル・アナリティクス」という名称について説明がなされている記事等を証拠として提出しているにすぎず、無効請求役務との関係で内容表示的に用いられている可能性のあるものは皆無である。
また、「ピープル・アナリティクス」の語について、内容の説明としての多数の使用例が存在しているということは、裏を返せば、この語が「職場の人間科学」であるということ自体が需要者の間で認識されていないか、又は、通用していないことの現れである。例えば、「ピープル」の語が同じ記事の中で用語説明がなされていないのは、「ピープル」がどのようなものか需要者が認識しているからである。同様に考えれば、「ピープル・アナリティクス」の語には用語説明が必要である。言葉そのものの語義が通用していない以上、この語が指定役務の内容等を具体的に表示するということは、理論上も現実問題としてもありえない。
さらに、「ピープル・アナリティクス」の語が「職場の人間科学」を示す語として普通に使用されているとしても、指定役務の内容を直接的・具体的に表示する語として使用されていなければ、「ピープル・アナリティクス」の語が指定役務との関係で、識別力のある商標であると考えられる。
しかしながら、請求人は、この点に関する主張を欠いている。「ピープル・アナリティクス」の語を、本件商標の指定役務である「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催」等に使用しても、「ピープル・アナリティクス」の語は、指定役務との関係では、業界において、直接又は具体的に内容表示として普通に使用されていないため、需要者等が本件商標に接しても、役務の内容を具体的に認識することはない。むしろ、本件商標は、一定の出所から提供されたものであることを示す標識と一般的に認識することができる商標である。
請求人が提出した各証拠では、「People Analytics」の語の意味について非常に多義にわたって説明されており、明確な定義というものが存在しない。唯一挙げるとすれば、甲第15号証において、「ピープル・アナリティクス(people-analytics)とは、『職場の人間科学』ともいわれています。」のように伝聞のごとく表現されているだけであり、著しく客観性に欠ける。このことは、「職場の人間科学」が「ピープル・アナリティクス」の明確な定義とはいえないことを意味するものである。また、権威のある文献・辞書等にも、現時点では「ピープル・アナリティクス」の語の定義についての記載は見当たらない。このため、「ピープル・アナリティクス」とは、「職場の人間科学」を意味するとはいえない。
したがって、このような不明な用語の説明を根拠として、本件商標が請求に係る指定役務の内容を普通に表すものであると主張することは失当である。
甲各号証において、「ピープル・アナリティクス」の語がどの様に説明されているか挙げると、以下のとおりである。
「ピープル・アナリティクス」の意味は、「人事・組織関連データの分析及び活用」と説明されている(甲5)。
「ピープル・アナリティクス」の意味についての説明はない(甲6)。
「ピープル・アナリティクス」の意味について、「科学的・客観的なデータに基づき、『人事を科学』し、より確度の高い人事を実現させる手法」と説明されている(甲7)。
「ピープル・アナリティクス」の意味について、「効率的で満足度の高いクリエイティブな人材、専門家、リーダー、部下、橋渡し役、先駆者などを生み出す職場のあり方は?それをデータで明らかにしようとするのが、ピープル・アナリティクス」と説明されている(甲8)。
「ピープル・アナリティクス」の意味について、「現在、ウェアラブル端末や電子タグ(RFID)等の利用を通じて、従業員の行動のデータを収集・分析し、職場管理の最適化・効率化(つまり、従業員にとって満足度が高くかつ生産性が高い職場づくり)を行うための技術」と説明されている(甲9)。
「ピープル・アナリティクス」の意味についての説明はなし(甲10)。
「ピープル・アナリティクス」の意味について、「企業に蓄積されたさまざまなデータを統計解析し、戦略的な人事・経営の意思決定や業務効率化などに活かそうとする取り組みの総称」と説明されている(甲11)。
「ピープル・アナリティクス」の意味について、「ピープル・アナリティクス(職場の人間科学)とは?・・・グーグルの職場改革は、効果的なマネージャーのあるべき姿に関する簡単なアンケートから始まりました。その実現には、あくまでもトップダウンによる職場改革を目指したものではなく、多くの社員が理解できるような『行動分析に基づいたデータ解析』(これをピープル・アナリティクスと呼ぶ)を行い、このデータに基づいて、職場でのオープンな議論が繰り広げられた点に特徴があります」と説明されている(甲12の1)。
「ピープル・アナリティクス」について、「企業内でデータを収集し、従業員がどのように働いており、どうすればよりよく働けるかを明らかにする、『ピープル・アナリティクス』を専門とする会社だ。」と説明されている(甲13)。
「ピープル・アナリティクス」の意味についての説明はなし(甲14)。
「ピープル・アナリティクス」の意味について、「職場の人間科学」と説明されている(甲15)。
「ピープル・アナリティクス」の意味について、「職場の人間に関するデータを収集、分析して、組織風土や職場環境の改善に繋げ、エンゲージメントの向上やパフォーマンス向上を試みるアプローチである。」と説明されている(甲16)。
「ピープル・アナリティクス」について、「人事のビッグデータともいえるピープル・アナリティクスが、今後の人事のあり方を変える新機軸となっていく。」と説明されている(甲17)。
「ピープル・アナリティクス」の意味について、「ウェアラブル端末等のIoT・センサーを用いて収集した従業員データを統計解析し、戦略的な人事・経営の意思決定や業務効率化などへと活かすピープル・アナリティクスが活性化している。」と説明されている(甲18)。
「ピープル・アナリティクス」の意味について、「最新のテクノロジーを活用し、社員の行動データを収集・分析して、クリエイティブな人材を輩出する職場のありかたや生産的で満足度の高い働き方などを導き出す技術のことです。」と説明されている(甲19)。
「ピープル・アナリティクス」の意味について、「ピープル・アナリティクス(People Analytics)と呼ばれる、人事データを始めとする多様なデータを駆使して人事課題の解決を図る手法。」と説明されている(甲20)。
上記甲各号証の説明は、「People Analytics」の語が何を意味しているかが多様であり、その内容が不明確である。したがって、このような不明確な用語の説明を根拠として本件商標が請求に係る指定役務の内容を普通に表すものであるとの主張することは失当である。
(3)「ピープル・アナリティクス」の意味について
「ピープル・アナリティクス」は、その用語の意味から直接的には、「人々の分析論」という学問としての意味が本来の語義であるといえる。
そして、請求人が提出した甲各号証における「ピープル・アナリティクス」についての説明から、この語の有する意味を総合的に検討すれば、以下のア及びイであることがいえる。
ア 「人事・組織関連のデータの分析及び活用」や「社員の行動データを収集・分析して、クリエイティブな人材を輩出する職場のあり方」という職場側からの解釈
イ 「生産的で満足度の高い働き方などを導き出す技術」という社員側からの解釈
このため、「People Analytics」又は「ピープル・アナリティクス」の用語の用いられ方は用語の使用者によって様々である。
(4)「People Analytics」の語が本件商標の登録査定時において、一般的に用いられていたかについて
被請求人が「People Analytics」又は「ピープル・アナリティクス」の語が世界最大の検索エンジンであるグーグルにおいて、2014年から登録査定時である2018年2月まで何回検索されていたかについて調査した(乙4)が、3年4か月で1万190回しか検索されていない。
中小企業庁によれば、我が国の中小企業数は、2017年時点で約382万社あり(乙5)、人事に関心を持つ人事担当者(社長等の役員含む。)は1社に1人以上いると考えられるから、その数は企業数である380万以上と推定される。
さらに、企業以外の団体等も含めれば、その数はより多くなる。しかし、検索回数の合計は1万190回しかない。すなわち、この「People Analytics」又は「ピープル・アナリティクス」で検索した人の数は、最大でも、推計された人事担当者数の0.3%以下である。
このことは、本件商標の登録査定時において、「People Analytics」又は「ピープル・アナリティクス」の語についての需要者(企業人事担当者等)の関心は低いか、又は、ほとんどないことを示すものである。したがって、請求人の「『ピープル・アナリティクス』の語が世間一般にいかに注目を浴びているかが容易に理解でき、遅くとも本件商標の登録査定時には『職場の人間科学』を表すものとして、取引者、需要者に理解、把握されていたものといわなければならない。」との主張は失当である。
(5)小括
以上から、「People Analytics」又は「ピープル・アナリティクス」の用語の用いられ方は、用語の使用者によって多様であり、需要者の関心も低いと認められる。
また、「People Analytics」の語が、具体的な役務の質を表示するものとして取引上一般に使用されていると認める事実は発見できず、さらに、無効請求役務の取引者、需要者がこの語を役務の質を表したものと認識するというべき事情もない。
さらに、「ピープル・アナリティクス」の語は、辞書等に掲載された既成語ではない。
これらの事情にかんがみると、「People Analytics」又は「ピープル・アナリティクス」の語は、需要者、取引者の間で、無効請求役務の内容を直接的かつ具体的に役務の質等を認識させるものではない。
してみれば、本件商標は、これを無効請求役務に使用しても、取引者、需要者をして、役務の質を表示したものとして認識されることはなく、自他役務の識別標識としての機能を果たし得るというべきであり、かつ、役務の質の誤認を生ずるおそれもない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第7号非該当性について
(1)悪意について
「People Analytics」の語は、本件商標の登録査定時において、需要者、取引者に深く浸透しているものでないことは、前述のグーグルにおける検索結果から明らかである。
したがって、人事の分野において、「People Analytics」又は「ピープル・アナリティクス」の語は一般的に用いられているとは認められない。
このため、「People Analytics」の語について、被請求人は、本件商標の登録出願時において悪意はなかった。
(2)剽窃的について
「People Analytics」の語は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に一般的なものではなく、また、ある特定の法人又は個人の取扱いにかかる商標として我が国の取引者、需要者の間で広く認識されていたとまではいえない。
したがって、本件商標が剽窃的であるとの請求人の主張は失当であり、本件商標は、「出願の経緯に社会的相当性を欠くものがある等、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合」に該当しないことは明らかであるから、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
3 請求人の出願商標「R-People Analytics」(商願2018-108715)について
請求人は、自ら「R-People Analytics」の欧文字よりなる商標を登録出願している。このため、本件無効審判についての請求人適格を有する旨述べている。
しかし、請求人の出願商標の「R-」の部分は、商品等の型番等を表すと考えられることから、多くの場合において、自他役務等識別力がないと考えられている。
そうすると、請求人の登録出願している商標のうち、自他役務識別力を有する部分(要部)は「People Analytics」の部分となり、請求人の主張によると、この部分は「職場の人間科学」関連の指定役務については自他役務識別力がなく、「職場の人間科学」と関連のない指定役務については質の誤認を招くことから、商標法第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号に該当すると自ら主張していることとなる。
また、この部分については、請求人自らが登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認しえないような商標であると主張していることとなる。
このことは、請求人の出願商標「R-People Analytics」にもそのまま当てはまり、請求人は自らの商標が商標法第4条第1項第7号に該当すると主張していると同様の結論となる。
4 まとめ
本件商標は、自他役務識別機能を有しない商標ではない。
また、役務の用途等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標でもなく、質の表示でない限り、役務との関係で質の誤認を生じるおそれがある商標でもない。
さらに、公序良俗を害するおそれがある商標にも該当しない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号、同第7号に該当しない。

第4 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係について争いがないから、本案について判断する。
1 「People Analytics」の語について
(1)「People Analytics」の語は、辞書等に掲載された既成語ではないが、構成中の「People」は「人々。人民。」の意味を有する語(乙1)であり、「Analytics」は「分析論」の意味を有する語(乙2)であることからすれば、これらを結合させた「People Analytics」の語は、「人々の分析論」程の意味合いを認識させるものということができる。
(2)一方、請求人の提出した甲第5号証ないし甲第20号証において、「People Analytics」の語が、例えば、「人事・組織関連データの分析及び活用」(甲5)、「企業に蓄積されたさまざまなデータを統計解析し、戦略的な人事・経営の意思決定や業務効率化などに活かそうとする取り組みの総称」(甲11の1)、「人事データを始めとする多様なデータを駆使して人事課題の解決を図る手法」(甲20)のように説明されていることからすれば、「People Analytics」の語は、主に企業の人事労務管理の部門等において、「社員・従業員等の人事関連データの収集・分析及び活用」のような意味合いで使用されていることがうかがえる。
しかしながら、かかる使用状況からは、「People Analytics」の語が「職場の人間科学」を表すものとして認識されるとはいえない上、そもそも、請求人の主張する「職場の人間科学」が、無効請求役務について、いかなる役務の質(内容)を認識させるものであるのか具体的でなく、また、「職場の人間科学」がどのようなものを表すのかについて、これが定義付けられているような証拠の提出もないものである。
(3)そうすると、「People」及び「Analytics」の語からは、「人々の分析論」程の意味合いと請求人の提出した証拠における「People Analytics」の語に関する説明内容からすれば、「社員・従業員等の人事関連データの収集・分析及び活用」程の意味合いが想起されるといえる。
しかしながら、請求人が主張するような「職場の人間科学」の意味合いを有するものとして認識されるものとはいい難い。
また、その他に、「People Analytics」の語が特定の語義を有するものとして定義付けられているというような事情は見いだせない。
2 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
「People Analytics」の語は、上記1のとおり、主に企業の人事労務管理の部門等において、「社員・従業員等の人事関連データの収集・分析及び活用」のような意味合いで使用されていることがうかがえるとしても、未だ、特定の語義を有するものとして定義付けられているとまではいえないものである。
また、たとえ、「社員・従業員等の人事関連データの収集・分析及び活用」程の意味合いを有するものとして認識されるものであったとしても、無効請求役務との関係において、役務の質(内容)を表すものとして「People Analytics」の語が使用されている証拠又は「People Analytics」の語が具体的な役務の質(内容)を表すものとして認識されるというべき取引の実情を裏付ける証拠は見いだせない。
なお、この点に関して、令和元年10月18日付け審尋により、請求人に対して、「無効請求役務との関係において、役務の質(内容)を表すものとして『People Analytics』の語が使用されている証拠又は『People Analytics』の語が役務の質(内容)を表すものとして認識されるというべき取引の実情を裏付ける証拠」の提出を求めたが、請求人からは、何ら応答がなかった。
そうすると、本件商標を無効請求役務について使用しても、これに接する取引者、需要者は、具体的な役務の質(内容)を表示するものと認識するということはできない。
また、本件商標は、上記のとおり、具体的な役務の質(内容)を表示するものではないから、役務の質について誤認を生じさせるおそれもない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、「People Analytics」の欧文字を横書きした構成からなるものであるところ、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。
また、本件商標は、これを無効請求役務に使用することが社会公共の利益や社会の一般的道徳観念に反するものということはできず、さらに、その使用が他の法律によって禁止されているものではなく、外国の権威や尊厳を損なうおそれもないものであって、国際信義に反するものでもない。
加えて、本件商標の商標登録出願の経緯について、社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合等、その出願経緯などに公序良俗に反するおそれがあることを具体的に示す証拠の提出もない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同法第4条第1項第16号及び同第7号のいずれにも該当するものでなく、その登録は、同法第3条及び第4条第1項の規定に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2019-12-19 
結審通知日 2019-12-23 
審決日 2020-01-10 
出願番号 商願2017-90128(T2017-90128) 
審決分類 T 1 12・ 272- Y (W41)
T 1 12・ 13- Y (W41)
T 1 12・ 22- Y (W41)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 斎 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 冨澤 美加
鈴木 雅也
登録日 2018-03-16 
登録番号 商標登録第6027710号(T6027710) 
商標の称呼 ピープルアナリティクス、ピープル、アナリティクス 
代理人 佐藤 大輔 
代理人 藤本 正紀 
代理人 特許業務法人創成国際特許事務所 
代理人 橘 哲男 

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