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審決分類 審判 判定 その他 属する(申立て成立) X09
管理番号 1359824 
判定請求番号 判定2019-600024 
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2020-03-27 
種別 判定 
2019-09-11 
確定日 2020-02-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第2084923号商標の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 商品「身体の角度の変化を測定し、歩数、エネルギー消費量を測定する機器」に使用するイ号標章は,登録第2084923号商標の商標権の効力の範囲に属する。
理由 1 本件商標
本件登録第2084923号に係る商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,昭和61年2月5日に登録出願,第10類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同63年10月26日に設定登録され,その後,平成21年4月8日に指定商品を,第9類「理化学機械器具,光学機械器具,写真機械器具,映画機械器具,測定機械器具」及び第10類「医療用機械器具」とする指定商品の書換登録がされ,現に有効に存続しているものである。

2 イ号標章
請求人が判定を求める標章(以下「イ号標章」という。)は,「SEED」の文字を横書きしてなり,その使用する商品を「歩数測定・姿勢変化測定機能を有する測定機械器具」とするものである。

3 請求人の主張
請求人は,結論同旨の判定を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。
(1)判定請求の必要性
本件商標の商標権者である請求人は,被請求人が関連するウェブサイト上で,商品「歩数測定・姿勢変化測定機能を有する測定機械器具」にイ号標章が使用されていることを発見し(甲1?甲3),これについて,令和元年(2019年)7月18日付けで,被請求人に対し本件商標の商標権を侵害するものである旨の通知書を発した(甲4)。その後,請求人は,被請求人から令和元年(2019年)7月31日付にて本件商標の商標権を侵害しない旨の回答を受領した(甲5)。そこで,請求人は,本件商標の商標権の効力の範囲について,専門的,中立的な判断を得るため判定を求める。
(2)イ号標章の説明
イ号標章は,甲第1号証ないし甲第3号証において請求人が赤線で示すように,「SEED」の欧文字からなり,「シード」の称呼,「種,種子」の観念を生じるものである。甲第1号証ないし甲第3号証のとおり,被請求人は,イ号標章を,商品「歩数測定・姿勢変化測定機能を有する測定機械器具」の説明,紹介等に係るカタログ,広告のためのウェブサイトに現在も使用している。
(3)イ号標章が商標権の効力の範囲に属するとの説明
ア イ号標章の使用商品「歩数測定・姿勢変化測定機能を有する測定機械器具」について
甲第1号証及び甲第3号証に示すとおり,イ号標章の使用商品「歩数測定・姿勢変化測定機能を有する測定機械器具」は,商品名「SEED」,文中等で「ウェアラブルデバイス」として掲載されているものである。イ号標章の使用商品は,身体のウエスト付近に着用して使用される小型の機器であり,その用途は,甲第1号証の記載によれば,「高い精度の角度センシング技術:SEEDの角度測定精度実験で身体の角度の変化を±0.5゜まで正確にリアルタイムで測定可能」とあり,また,甲第3号証によれば「ハイテク技術をもとに歩数,エネルギー消費量を測定。AIを活用し歩き方の特徴やバランスを分析」とあるように,着用者の姿勢の変化を測定するために角度測定の機能を有し,また,歩数を測定する機能を有するものである。
このように,イ号標章の使用商品は,姿勢の変化(角度)測定や歩数測定の機器として使用されるものであるため,当該商品は,本件の指定商品である第9類「測定機械器具」の範ちゅうに属する,若しくは,少なくとも第9類「測定機械器具」に類似する商品である。
イ 本件商標とイ号標章について
本件商標は,片仮名「シード」を上段に,欧文字「SEED」を下段に配した商標であり,その構成から,「シード」の称呼が生じることは明らかである。また,本件商標の当該構成,特に,欧文字「SEED」からなる英単語の意味から,「種,種子」の観念が生じるものである。
イ号標章は,「SEED」の欧文字からなるものであり,この構成から,「シード」の称呼,当該英単語の意味から,「種,種子」の観念が生じるものである。
ウ 類否
以上のとおり,本件商標とイ号標章とは,片仮名「シード」の有無において外観上異なるものの,その称呼,観念を共通にするものであるため,類似の商標であるというべきである。
また,上記アで述べたとおり,イ号標章の使用商品は,本件の指定商品である第9類「測定機械器具」の範ちゅうに属する,また,少なくとも,これと類似の商品である。
以上のとおり,イ号標章は本件商標と類似する標章であり,その使用する商品と本件の指定商品も類似する商品であるから,被請求人が商品「歩数測定・姿勢変化測定機能を有する測定機械器具」に使用するイ号標章は,本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。

4 被請求人の答弁
被請求人は,被請求人がイ号標章を使用する商品(以下「被請求人商品」という。)に使用するイ号標章は,本件商標の商標権の効力の範囲に属さないとの判定を求めると答弁し,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
(1)商標の類否について
本件商標は,上段に片仮名で「シード」と横書きしてなり,その下段に欧文字で「SEED」と横書きしてなる上下二段書きの構成よりなるのに対し,イ号標章は,欧文字「SEED」であるから,両商標は外観において相違する。また,称呼においては,本件商標からは「シードシード」の称呼が生じるのに対して,イ号標章からは「シード」の称呼が生じるから,両商標は称呼においても相違する。さらに,本件商標中の「シード」の片仮名部分からは「競技の勝抜き試合で,強い選手やチームを前もって想定し,それが初めに組み合わないようにスケジュールを作ること。」(乙1)の観念が想起され,本件商標中の「SEED」の欧文字部分からは「種・実・種子」(乙2)の観念が想起されるから,本件商標全体からは「競技の勝抜き試合で,強い選手やチームを前もって想定し,それが初めに組み合わないようにスケジュールされた種・実・種子」=「シード権を有する程に強い種・実・種子」という観念が想起されるのに対し,「SEED」の欧文字のみからなるイ号標章からは,単に「種・実・種子」の観念が生じるから,両商標は観念においても相違する。
してみれば,本件商標とイ号標章とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても互いに非類似であるから,両者は非類似の商標である。
(2)商品の類否について
本件指定商品は,第9類「理化学機械器具,光学機械器具,写真機械器具,映画機械器具,測定機械器具」及び第10類「医療用機械器具」である。これに対して,被請求人商品(甲1?甲3)は,使用者のウエスト部分に着用するウエアラブル端末と,当該ウエアラブル端末から送信された信号を受信して解析し,使用者の姿勢が良いと仮想の植物が成長するようにプログラムされたコンピュータアプリケーションとからなる商品である。
確かに,被請求人商品のウエアラブル端末には,使用者の姿勢を測定するセンサを内蔵しているが,ウエアラブル端末単体ではその測定結果を確認することはできない(測定結果を表示する部分がない)ため,被請求人商品のウエアラブル端末だけでは商品としての価値を有さず,附属のコンピュータアプリケーションにより測定結果を解析し,その解析結果を植物の成長になぞらえて(姿勢が良いと植物が美しく成長し,姿勢が悪いと枯れてしまう),使用者が植物育成ゲームを楽しみながら正しい姿勢を維持することを目的とする商品である。例えば,手に握ったコントローラーを振り下ろすことにより,ゲーム内の主人公が剣を振り下ろして敵を倒すような家庭用テレビゲームおもちゃと同様である。
このような家庭用テレビゲームおもちゃのコントローラーには,水平や垂直・スピードを感知する測定器が内蔵されているものの,そのコントローラーを測定機械器具として認識し,購入・利用する需要者・取引者は皆無であって,テレビゲーム機本体及びプログラムが存在しなければ用をなさず,コントローラーとゲーム機本体とのセットで初めて一つの商品として完結するものである。これと同様に,被請求人商品におけるウエアラブル端末には姿勢を測定するセンサが内蔵されてはいるが,ウエアラブル端末だけでは測定機械器具としての用をなさず,附属のコンピュータアプリケーションとセットで使用することによって,楽しみながら正しい姿勢を維持することができるという「ウエアラブル端末からの信号を受信し,使用者の現在の姿勢を解析して,その結果に応じて仮想の植物を美しく成長させて楽しむ植物育成ゲームおもちゃ」である。
したがって,第9類「理化学機械器具,光学機械器具,写真機械器具,映画機械器具,測定機械器具」及び第10類「医療用機械器具」である本件指定商品と,被請求人商品とは,使用態様・目的・用途・機能等が大きく異なる商品であって,仮に同一又は類似する商標が使用された場合であったとしても,需要者,取引者において商品の出所につき誤認混同が生じるおそれのない,互いに非類似の商標である。
(3)まとめ
以上のとおり,本件商標とイ号商標とは外観,称呼及び観念のいずれの点においても互いに非類似であるといえるから非類似の商標であって,本件指定商品と被請求人商品とは仮に同一又は類似する商標が使用された場合であったとしても,需要者,取引者において商品の出所につき誤認混同が生じるおそれのない互いに非類似の商標である。
したがって,被請求人商品に使用するイ号標章は,本件商標権の効力の範囲に属さないものである。

5 当審の判断
(1)本件商標について
本件商標は,別掲のとおり,上段に「シード」,下段に「SEED」の文字を上下二段に書してなるものであり,上段の「シード」の文字部分は,下段の「SEED」の文字部分の読みを特定したものと無理なく認識できるものであるから,本件商標は,その構成文字に相応して「シード」の称呼及び「種,種子」(株式会社研究社「新英和中辞典」)の観念が生じる。
(2)イ号標章について
イ号標章は,上記2のとおり「SEED」の文字を横書きしてなり,その構成文字に相応して「シード」の称呼及び「種,種子」(同上)の観念が生じる。
(3)本件商標とイ号標章の類否について
本件商標とイ号標章とを比較すると,まず,外観においては,「SEED」の文字を同じくするから,外観上,相紛らわしいものである。
次に,称呼及び観念においては,両者とも「シード」の称呼及び「種,種子」の観念を生じるから同一である。
そうすると,本件商標とイ号標章は,外観,称呼及び観念において,相紛れるおそれのある類似の商標といわざるを得ない。
(4)本件商標の指定商品とイ号標章の使用商品の類否について
ア 本件商標の指定商品について
本件商標の指定商品は,上記1のとおり,第9類「理化学機械器具,光学機械器具,写真機械器具,映画機械器具,測定機械器具」及び第10類「医療用機械器具」である。
イ イ号標章の使用商品について
請求人が提出した証拠によれば,イ号標章の使用商品は,以下のとおりである。
(ア)被請求人のウェブサイトの「(株)EFG取り扱い商品のご紹介」(甲1)において「10.体を整体する究極の方法!正しい姿勢を取る習慣を作ってくれるたった15g!SEED」の見出しの下,「高い精度の角度センシング技術/SEEDの角度測定精度実験で身体の角度の変化を±0.5°まで正確にリアルタイムで測定可能」の記載がある。
(イ)被請求人のウェブサイトにおいて「体を整体する究極の方法!正しい姿勢を取る習慣を作ってくれるたった15g!SEED」(甲2)の見出しの下「2.ハイテク技術をもとに歩数,エネルギー消費量を測定。」の記載がある。
(ウ)「makuake」のウェブサイトにおいて「体を整体する究極の方法!正しい姿勢を取る習慣を作ってくれるたった15g!SEED」(甲3)の見出しの下「2 ハイテク技術をもとに歩数,エネルギー消費量を測定。」,2頁目には「スマート万歩計のように,正確に歩みを測定」,8頁目には「高い精度の角度センシング技術/SEEDの角度測定精度実験で身体の角度の変化を±0.5°まで正確にリアルタイムで測定可能」及び10頁目には「*製品構成/セット:SEED本体+充電器+日本語製品説明書/アプリはアプリストアやグーグルストアで無料ダウンロード可能。日本語対応。」の記載がある。
ウ 上記ア及びイによれば,イ号標章の使用商品については,「身体の角度の変化を±0.5°まで正確にリアルタイムで測定可能」,「歩数,エネルギー消費量を測定」及び「スマート万歩計のように,正確に歩みを測定」と記載され,製品構成が,測定するための本体,充電器及びこれらを説明する製品説明書をセットとして,測定した数値を分析するためのアプリは別途ダウンロード可能である旨説明されていることからすれば,当該商品は,その性質・作用の主体が「身体の角度の変化を測定し、歩数、エネルギー消費量を測定する機器」であるというのが相当である。
そして,商品「測定器機械器具」は,「商品及び役務の区分解説」(国際分類第10版対応)[特許庁商標課編]によれば,「この商品は,『はかり』『照度計』等,ある量の大きさを,ある単位を標準として直接測定する装置・機器のほとんどが該当する」と記載されている。
そうすると,イ号標章の使用商品である「身体の角度の変化を測定し、歩数、エネルギー消費量を測定する機器」は,身体の角度の変化,歩数やエネルギー消費量を直接測定する装置・機器であるから,第9類の「測定機械器具」の範ちゅうの商品と認められる。
エ 本件商標の指定商品にイ号標章の使用商品が含まれるかについて
上記ウのとおり,イ号標章の使用商品は,第9類に属する「測定機械器具」の範ちゅうの商品と認められるものであるから,本件商標の指定商品中の「測定機械器具」に含まれる商品と認められる。
(5)まとめ
上記(3)のとおり,本件商標はイ号標章とは類似の商標であり,また,上記(4)のとおり,イ号標章の使用商品「身体の角度の変化を測定し,歩数,エネルギー消費量を測定する機器」は,本件商標の指定商品中「測定機械器具」の範ちゅうの商品であるから,商品「身体の角度の変化を測定し,歩数,エネルギー消費量を測定する機器」に使用するイ号標章は,本件商標の効力の範囲に属するものである。
よって,結論のとおり判定する。

別掲
別掲(本件商標)




判定日 2020-01-27 
出願番号 商願昭61-10036 
審決分類 T 1 2・ 9- YA (X09)
最終処分 成立  
特許庁審判長 薩摩 純一
特許庁審判官 榎本 政実
渡邉 あおい
登録日 1988-10-26 
登録番号 商標登録第2084923号(T2084923) 
商標の称呼 シード 
代理人 秋元 輝雄 
代理人 吉澤 大輔 
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所 

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