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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W3943
管理番号 1359805 
異議申立番号 異議2019-900146 
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2020-03-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-05-13 
確定日 2020-02-10 
異議申立件数
事件の表示 登録第6122761号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6122761号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6122761号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおり、金色のグラデーションで表した「エースJTB」、「プレミアムホテル」及び「-東京-」の文字を三段に配してなり、平成30年4月6日に登録出願、第43類「宿泊施設の提供及びこれに関する情報の提供」を含む、第39類及び第43類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定役務として、同年12月14日に登録査定され、同31年2月15日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりであり(以下、それらをまとめて「引用商標」という。)、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
(1)登録第5559714号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 ACE HOTEL(標準文字)
指定商品及び指定役務 第25類、第35類及び第43類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
登録出願日 平成24年5月14日
設定登録日 平成25年2月22日
(2)登録第5931166号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 エースホテル(標準文字)
指定役務 第43類及び第45類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成28年8月1日
設定登録日 平成29年3月10日

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標はその指定役務中第43類「宿泊施設の提供」(以下「申立役務」という。)について、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)申立人の商標「ACE HOTEL」及び「ACE」の著名性について
申立人は、米国を中心にホテルを運営する米国法人であり、1999年に米国のシアトルに第一店舗を設立して以来、現在に至るまで米国、英国及びパナマ共和国において9軒のホテルを運営している(甲3)。
申立人のホテルは、そのデザイン性の高さから日本でも話題を呼び、現に多数の需要者に利用、紹介等され(甲4)、日本の需要者が利用する多数の海外ホテルの予約サイトにも掲載されている(甲5)。
そして、申立人は、2020年に10軒目となる「Ace Hotel Kyoto」を日本に設立する予定であり(甲6)、開業以前から既に注目をされている(甲7)。
このような事実から、申立人のホテル及び申立人を指標する「ACE HOTEL」及び「エースホテル」が日本の需要者において広く知られていることが分かる。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性
ア 商標審査基準の考慮事項について
「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」について、商標審査基準で挙げている考慮事項について、以下検討する。
(ア)出願商標とその他人の標章との類似性の程度
a 本件商標は、金色で描かれた「エースJTB」、「プレミアムホテル」及び「東京」の文字を三段に横書きした構成からなる。
本件商標の構成中「プレミアムホテル 東京」の文字部分は、「東京に所在する一段上等・高級であるホテル」程の意味合いを容易に認識させ、自他役務の識別力が無いか極めて弱いものというべきであり、本件商標において、取引者、需要者に強く支配的な印象を与えるのは「エースJTB」の文字部分であるといえる。そして、「エースJTB」の文字部分は、片仮名と欧文字の異なる書体で表示されていることから「エース」及び「JTB」部分が視覚上分離されて観察することができる。
b 引用商標は、それらの構成中「HOTEL」及び「ホテル」の語は宿泊施設の普通名称であり、申立役務との関係で出所識別標識として機能し得ないから、出所識別機能として機能しているのは「ACE」又は「エース」の文字部分である。
c そこで、両者の類否を検討すると、本件商標の構成中、強く支配的な印象を与え、かつ、視覚上分離して観察し得る「エース」部分からは、その文字部分に相応して「エース」の称呼を生じ得る。そして、上述のとおり、申立人がホテル・宿泊施設業界において周知著名であることを考慮すると、該「エース」の文字部分から「申立人のエースホテル」の観念が生ずるといえる。そうすると、引用商標2の要部である「エース」とは、外観及び称呼が同一であり、かつ「申立人のエースホテル」の観念を共通にする。
さらに、引用商標1との類否を検討すると、外観において文字種を異にするものの、「エース」の称呼及び「申立人のエースホテル」の観念を共通にする。
したがって、両者の類似度は非常に高いものであり、同一の役務「宿泊施設の提供」に使用される場合、役務の出所混同が生ずるおそれのある類似の商標というべきである。
(イ)その他人の標章の周知度
申立人の引用商標が周知であることは、上記(1)のとおりである。
(ウ)その他人の標章が創造標章であるかどうか
「ACE HOTEL」は、「最高のホテル」という意味に理解されるが、「WONDERFUL HOTEL」といった誉め言葉を通常は商標には採用しないところ、そのような真正面の誉め言葉を自己のホテルの商標としたところに独創性があるといえる。
(エ)その他人の標章がハウスマークであるかどうか
引用商標は、いずれも申立人のハウスマークである。
(オ)企業における多角経営の可能性
申立人は、ホテルの運営以外にも他社ブランドと共同で、スリッパ、帽子等の製造販売を行っており(甲9)、多角経営の可能性は十分に認められる。
(カ)商品間、役務間又は商品と役務間の関連性
本件商標は、申立人の引用商標が特に周知である分野「宿泊施設の提供」を指定している。
(キ)商品等の需要者の共通性その他取引の実情
本件指定役務及び申立人の周知商標に係る指定役務である「宿泊施設の提供」に係る需要者は、主に旅行者であり共通する。
(ク)小括
以上のとおり、本件商標は上記審査基準の考慮事項の全てに該当し、出所混同が生じると総合的に判断されるべきものである。また、本件商標が使用されると、申立人から公認を受けているとの誤認あるいは、引用商標の希釈化が生じるおそれがある。
イ 最高裁判決の判示事項との関係について
最高裁判決(平10年(行ヒ)第85号)によれば、商標法第4条第1項第15号には、いわゆる「広義の混同」、すなわち、ある他人の業務に係る商品等であると誤信されるおそれのある商標のみならず、その他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれがある商標を含むものである。
そうすると、本件商標と引用商標との高い類似性、申立人及び引用商標の周知著名性、役務間の関連性及び需要者の共通性等を考慮すれば、本件商標がその指定役務「宿泊施設の提供」に使用された場合、これに接する取引者・需要者は「申立人が運営する宿泊施設」、「申立人の新コンセプトによる宿泊施設」、「申立人の子会社・関連会社が提供する宿泊施設」等を想起することは必至であって、その出所について混同を生じさせるおそれが極めて高く、本件商標が、商標法第4条第1項第15号に該当することは明らかというべきである。
ウ 商標権者の商標「エースJTB」について
商標権者の商標「エースJTB」は国内ツアー商品については使用実績があるが、商標権者自身がホテル業を営んだことはない。
しかしながら、本件商標の場合は、「プレミアムホテル東京」の部分より、「ホテル」サービスそのものについて使用されると理解される商標である。2020年の東京オリンピック開催を前に、日本国内の観光業には更なるインバウンド需要が見込まれるところ、特に海外の「ACE HOTEL」を知る外国人旅行者には、「エース」の読みと「ホテル」の語を含む本件商標は、本件商標が英語併記で使用されることが想定されることから、引用商標と紛らわしくなると考えられる。
特に、国内旅行パック商品の販売を行う企業として周知な商標権者が、申立人がまさに京都に国内第一号ホテルを開業するというタイミングで「エース」を含む商標を「宿泊施設の提供」について登録することについて、申立人としては、商標権者と申立人がコラボして事業を行うといった誤認を払拭したいと憂慮している。

4 当審の判断
商標法第4条第1項第15号における「混同を生ずるおそれ」の有無は、ア)当該商標と他人の表示との類似性の程度、イ)他人の表示の周知著名性及び独創性の程度、ウ)当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度、エ)並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、オ)当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである(最高裁判決 平成10年(行ヒ)第85号)。以下、かかる基準に沿って検討する。
(1)本件商標と引用商標との類似性の程度
ア 本件商標
本件商標は、別掲のとおり、金色のグラデーションで表した「エースJTB」、「プレミアムホテル」及び「-東京-」の文字を三段に配してなるものであり、それら文字に相応し「エースジェイティービープレミアムホテルトウキョウ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
また、本件商標は、その構成中「プレミアムホテル」及び「-東京-」の文字部分は金色のグラデーションで表されているものの、申立役務との関係において全体として「東京所在の高級なホテル」程の意味を表したものと認識させ、自他役務識別標識としての機能がないか極めて弱く、「エースJTB」の文字部分が独立して自他役務識別標識としての機能を果たし得るものと判断するのが相当である。
さらに、当該「エースJTB」の文字部分は、文字の種類は異なるものの、同書同大等間隔でまとまり良く一体に表され、それから生じる「エースジェイティービー」の称呼は格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものであるから、全体が一体不可分のものと認識させるものと判断するのが相当である。
そうすると、本件商標は「エースJTB」の文字に相応し「エースジェイティービー」の称呼も生じるものといわなければならず、また、該文字からは特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
イ 引用商標
引用商標1は、前記2(1)のとおり、「ACE HOTEL」の欧文字からなり、引用商標2は、前記2(2)のとおり、「エースホテル」の片仮名からなるところ、いずれもそれら構成文字に相応し「エースホテル」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標の類似性
本件商標と引用商標の類否を検討すると、まず、本件商標の構成中それ自体独立して自他役務識別標識としての機能を果たし得る「エースJTB」の文字部分と引用商標を比較すれば、両者は外観において、前者の構成文字「エースJTB」と後者の構成文字「ACE HOTEL」及び「エースホテル」とは明らかに構成文字が異なり、相紛れるおそれのないものである。
次に、前者の称呼「エースジェイティービー」と後者の称呼「エースホテル」とは、両者は語頭において「エース」の音が共通するものの、それに続く音に「ジェイティービー」と「ホテル」という差異を有するから、その差異が両者の称呼全体に与える影響は極めて大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても相紛れるおそれのないものというのが相当である。
さらに、観念については、両者はいずれも特定の観念を生じないものであるから、比較することはできない。
そうすると、両者は、観念において比較できないものであるとしても、その外観及び称呼において明らかに異なるものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
そして、本件商標が、引用商標2を構成する「エース」及び「ホテル」の各文字をその一部に有するものであるとしても、該文字部分が格別目立つ態様で表示されているものではなく、それぞれ「エースJTB」、「プレミアムホテル」という一連の文字の一構成要素として表示されているものであって、加えて、引用商標1との比較においては、両者の文字種が異なるものであるから、本件商標と引用商標の類似性の程度は低いとみるのが相当である。
エ 申立人の主張について
申立人は、本件商標は「エースJTB」の文字部分が需要者に強く支配的な印象を与え、片仮名と欧文字で表されているから「エース」と「JTB」の文字に視覚的に分離される、引用商標は申立役務との関係において「HOTEL」、「ホテル」の文字部分が出所識別標識として機能せず、申立人の出所識別標識として機能しているのは「ACE」、「エース」の文字部分である、申立人がホテル・宿泊施設業界において周知著名であるから両商標は「申立人のエースホテル」の観念が生じるなどとして、本件商標と引用商標が類似する旨主張している。
しかしながら、本件商標は、その構成中「エースJTB」の文字部分が需要者に強く支配的な印象を与えると認め得るとしても、該「エースJTB」の文字部分は、上記アのとおり、全体が一体不可分のものと認識させるものと判断するのが相当であり、また、次の(2)のとおり、申立人のホテル、引用商標及び「ACE」「エース」の文字が、申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであるから、申立人のかかる主張は採用することができない。
(2)他人の表示(引用商標)の周知著名性及び独創性の程度
ア 引用商標の周知性の程度について
申立人提出の甲各号証、同人の主張によれば、申立人は、1999年に設立された米国法人であり、現在、米国を中心に引用商標1を使用して9軒のホテルを運営していること、2020年に10軒目のホテル「Ace Hotel Kyoto」を京都に設立予定であること、及びそれら申立人のホテルは「Ace Hotel」「エースホテル」などとして、日本語の複数の海外ホテル予約サイトに掲載され、インターネットでも複数紹介されていることが認められるものの(甲4、甲5、甲7、甲9)、申立人のホテルは現在まで我が国に存しないこと、米国を中心に9軒に限られていること、及び申立人ホテルを利用した我が国の需要者の利用実績(利用者数など)に係る主張、立証はないことから、申立人のホテルは、我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
そうすると、申立人のホテルに使用されている引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、いずれも申立人の業務に係る役務(ホテルの運営、宿泊施設の提供など)を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
また、「ACE」及び「エース」の文字は、それらが申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めるに足りる証左は見いだせないから、いずれもそのように認識されているものとは認められない。
イ 引用商標の独創性の程度
引用商標は、それぞれ既成語である「ACE」と「HOTEL」、及び「エース」と「ホテル」を単に結合してなるものとみるのが相当であるから、独創性の程度は低い。
(3)当該商標の指定商品等(申立役務)と他人の業務に係る商品等(ホテルの運営、宿泊施設の提供など)との間の性質、用途又は目的における関連性の程度
本件商標の申立役務と申立人の業務に係る役務は、「宿泊施設の提供」において共通するから、両役務の性質、用途又は目的における関連性の程度は高い。
(4)商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情など
申立役務と申立人の業務に係る役務は、「宿泊施設の提供」において共通するから、両者の取引者及び需要者の共通性の程度は高い。
(5)出所混同のおそれ
上記(1)ないし(4)に照らし、本件商標の指定役務等(宿泊施設の提供)の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すれば、本件商標の申立役務と申立人の業務に係る役務の性質、用途又は目的における関連性の程度、及び両者の取引者及び需要者の共通性の程度は高いものであるが、本件商標と引用商標の類似性の程度は低く、引用商標は申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであるから、本件商標は、商標権者がこれを申立役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当せず、同条第1項の規定に違反して登録されたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。

別掲 別掲(本件商標)(色彩は原本参照。)


異議決定日 2020-01-31 
出願番号 商願2018-43891(T2018-43891) 
審決分類 T 1 652・ 271- Y (W3943)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大島 康浩 
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 鈴木 雅也
山田 正樹
登録日 2019-02-15 
登録番号 商標登録第6122761号(T6122761) 
権利者 株式会社JTB
商標の称呼 エースジェイテイビイプレミアムホテルトーキョー、エースジェイテイビイ、エース、ジェイテイビイ、プレミアムホテル、プレミアム 
代理人 福士 智恵子 
代理人 角渕 由英 
代理人 特許業務法人大島・西村・宮永商標特許事務所 
代理人 秋山 敦 

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