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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W0514
管理番号 1359690 
審判番号 無効2018-890059 
総通号数 243 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-03-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-08-06 
確定日 2020-01-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第5933440号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5933440号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件商標第5933440号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成28年9月2日登録出願、第5類「医療用ネックレス,医療用ブレスレット,医療用アンクレット」及び第14類「身飾品(「カフスボタン」を除く。)」を指定商品として、同29年2月2日に登録査定、同年3月17日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由として引用する商標は、以下の1及び2に示すものである。
1 登録第5069804号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成18年11月17日に登録出願、第29類「キチンキトサンを主成分とする粉末状・顆粒状・錠剤状・カプセル状又は軟カプセル状の加工食品,スクワレンを主成分とする粉末状・顆粒状・錠剤状・カプセル状又は軟カプセル状の加工食品,メチルスルフォニルメタン・グルコサミン・カルシウム等を主成分とする粉末状・顆粒状・錠剤状・カプセル状又は軟カプセル状の加工食品,スピルリナを主成分とする粉末状・顆粒状・錠剤状・カプセル状又は軟カプセル状の加工食品,マカを主成分とする粉末状・顆粒状・錠剤状・カプセル状又は軟カプセル状の加工食品,コラーゲン・コエンザイムQ10等を主成分とする粉末状・顆粒状・錠剤状・カプセル状又は軟カプセル状の加工食品,αリポ酸・ウコン・牡蛎エキス・マリアアザミエキス・システイン等を主成分とする粉末状・顆粒状・錠剤状・カプセル状又は軟カプセル状の加工食品」を指定商品として、同19年8月10日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
2 引用商標1と同一の構成からなり、請求人が、「ゲルマニウムを使用したネックレス,ゲルマニウムを使用したブレスレット」に使用している商標(以下「引用商標2」という。)。
以下、上記の引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは、「引用商標」という。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第43号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 引用商標について
(1)引用商標1は、「新日本製薬株式会社」(以下「新日本製薬社」という。)名義で出願され、登録されたが、同社は、平成19年8月6日に、「株式会社日本観光公社」(以下「日本観光公社」という。)と合併し解散し、引用商標1の商標権者を「株式会社日本観光公社」にする合併による移転登録手続をとり、その後、同社は、住所及び名称を請求人である「株式会社JTC」に変更したことから、引用商標1の登録名義人の表示を変更する手続をとっている(甲2?甲4)。
新日本製薬社は、引用商標1以外にも、同じようにデザイン化した「+BK」(甲5)及び「Pure+BK」(甲6)を出願し、それぞれ登録され、引用商標1と同様に、請求人名義で存続している。また、請求人は、平成19年11月15日に、第18類の「かばん類、袋物ほか」を指定商品に、同じようにデザイン化した「+BK」(甲7)を自ら出願し、登録されている。
この新日本製薬社は、請求人の代表者が設立した法人で、主な事業は、化粧品・健康食品の製造販売であり(甲3)、化粧品、健康食品等のブランド化を図るべく、「BK」ブランドを立ち上げ、シリーズ化した。
「BK」ブランドの「BK」とは、「Beauty」と「Keeper」の各頭文字を組み合わせた造語であり、「Dr.+BK」は、さらに「健康」に関連する商品であることを強調するために、語頭に「Dr.(医者)」を加えて、「Dr.」+「BK」として商品の展開を図ったものである。
請求人は、新日本製薬社を吸収合併し、このシリーズ化した「BK」ブランドを、現在まで各種商品に継続して使用している。
(2)引用商標2は、引用商標1と同一であり、平成21年頃から現在に至るまで、「ゲルマニウムを使用したネックレス、ゲルマニウムを使用したブレスレット」に使用している。
2 引用商標の周知性について
(1)請求人について
請求人は、平成6年(1994年)3月に設立された会社であり、免税店事業を展開しており(甲4の2、甲8)、現在全国に24店舗(うち臨時店3店舗を含む。)の免税店を展開している(甲9)。
来店者は、主に韓国や中国からの訪日外国人観光客であり、韓国からの来店者数は、平成24年(2012年)3月から平成27年(2015年)2月までは年に40万人台であったが、平成27年(2015年)3月から平成29年(2017年)2月には年に60万人台になっている(甲10)。
また、中国からの来店者数は、平成24年(2012年)3月から平成26年(2014年)2月までは年に10万人台だったが、平成26年(2014年)3月から平成27年(2015年)2月には70万人台になり、平成27年(2015年)3月から平成28年(2016年)2月には一挙に230万人台、平成28年(2016年)3月から平成29年(2017年)2月には360万人台にまで増加し、ここ2期分の1日あたりの請求人店舗への平均来店者数は約9千人から1万人である(甲10)。
これに伴い、請求人の平成27年(2015年)の売上高も急激に伸び、売上高、増収額、増益額のいずれにおいても、大きく業績を伸ばした九州・沖縄の「元気印企業」のトップになっている実績がある(甲11)。
(2)引用商標の周知性について
請求人は、引用商標1を、平成19年(2007年)頃から「健康食品」に使用を開始し、また、引用商標2を、平成21年(2009年)頃から「ゲルマニウムを使用したネックレス、ゲルマニウムを使用したブレスレット」に使用を開始し、現在まで継続して使用しており、引用商標は、本件商標の登録出願時において、既に請求人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていた。
すなわち、請求人が経営する全国の免税店(その一例として「福岡店」を挙げる、甲12の1)においては、「健康食品」や「ゲルマニウムを使用した商品」のコーナーを設けて(甲12の2・3)、引用商標を使用した多種類の健康食品及び「ゲルマニウムを使用したネックレス、ゲルマニウムを使用したブレスレット」を販売し、インターネットでも大々的に宣伝し、販売している(甲13、甲14、甲21?甲23)。
そして、ゲルマニウムネックレス部門やゲルマニウムブレスレット部門でそれぞれ人気ランキング1位を獲得したこともあり、特にゲルマニウムブレスレット部門では上位を独占したこともある(甲23)。
また、主要な来店者は、韓国や中国からの訪日外国人観光客であるところ、請求人は、本件商標の登録出願より前の旧名称である日本観光公社時代から、韓国人の訪日観光客向けにカタログ(甲15)を配布するほか、それより前の平成24年6月頃には、外国人観光客向けに引用商標を使用した多種類の健康食品及びゲルマニウムを使用したネックレス、ゲルマニウムを使用したブレスレットが掲載されたチラシ等を配布していた(甲16の1)。
請求人は、上記チラシ及び甲第16号証の2の稟議書に基づき発注されたチラシを制作し、少なくとも数十万枚単位で配布していた。このように、本件商標の登録出願より前から多数の需要者がチラシを目にしていたことは明らかである。
さらに、請求人は、外国人観光客ばかりでなく、案内するガイドに対しても、国籍に応じて韓国語又は中国語の引用商標を使用した商品が掲載されているショッピングガイドを支給している(甲17の1?8)。また、甲第17号証の9は、ショッピングガイド制作に関する稟議書である。請求人が把握する限り、概ね、当時のガイドの登録数は3千人以上であり、バスの乗客数は1台当たり約40人であるので、登録されたガイドの全てがショッピングガイドに基づき広報したとすると、述べ12万人分以上の広告効果があったといえる。
加えて、本件商標の登録出願より前に作成、公開された多数の韓国や中国のブログからも、引用商標1を使用した「健康食品」及び引用商標2を使用した「ゲルマニウムを使用したネックレス、ゲルマニウムを使用したブレスレット」が、韓国や中国でもよく知られていることがわかる(甲18、甲24)。また、陳述書(甲36の1)からも明らかである。
このようなカタログ、チラシ等の宣伝広告やガイドによる紹介、ブログでの紹介等もあって、引用商標1を使用した「健康食品」の平成21年(2009年)1月から平成29年(2017年)2月までの売上高は、560億円にも上っており(甲19の1)、また、本件商標の登録出願の前から取引があったことを示す取引書類の一部(甲20)から、実際に「請求明細書控」(甲20の4)に記載のとおり、平成27年9月末日締切の金額は、2億7,703万3,176円にも上っている。また、引用商標2を使用した「ゲルマニウムを使用したネックレス、ゲルマニウムを使用したブレスレット」の平成21年(2009年)1月から平成26年(2014年)2月までの売上高は、108億円にも上っており(甲30)、その後、平成27年(2015年)2月までの1年間だけでも、30億円以上になっている(甲31、甲32)。このような額の売上高からも、引用商標が、本件商標の登録出願時において、請求人の業務に係る商品を表すものとして、需要者の間に広く知られていたといえる。
3 商標法第4条第1項第7号について
(1)請求人と被請求人との関係について
請求人は、平成6年(1994年)3月に設立された(甲4の2、甲8)のに対し、被請求人は、翌平成7年(1995年)6月に設立されている(甲34)。
両者は、共に免税店事業を中心としており、来店者は、主に韓国や中国からの訪日外国人観光客であるので、店舗展開のみならず取扱商品も非常に似ている。
そして、店舗展開地域の重なり(甲35)による顧客の取り合いは、東京都新宿、大阪市、札幌市、沖縄県那覇市、長崎県対馬市、福岡市等において、特に激しくライバル関係にある。
また、取扱い商品のうち、売れ筋商品も、健康食品、ゲルマニウム商品、化粧品等共通し、ガイドも共通していて、それぞれの商品等に関する情報も伝わりやすい。
甲第36号証の1は、韓国において、海外ツアーへ同行するガイドを養成するための専門学校である「ワールドガイド学院」の学院長A氏の「陳述書」である。甲第36号証の2の「株式会社ワールドジーアンドエイチの事業者登録証」及びその訳文のとおり、「ワールドガイド学院」は、A氏が代表者である「株式会社ワールドジーアンドエイチ」の支店として登録されている。なお、「株式会社ワールドジーアンドエイチ」は、2016年設立であるものの、学院長A氏は、法人化される前の2011年3月より現在支店として登記してある「ワールドガイド学院」を設立し、韓国における訪日観光の最大のエージェンシーとして免税店を含み、日本観光に精通し、事業を展開してきた。
この陳述書にも、請求人と被請求人は、同じ訪日外国人を主な顧客とする免税店であり、代表者が同じ韓国の出身ということもあってか、強いライバル関係であることがよく知られていることや、どちらも主なターゲットが訪日観光客であることから、そのニーズをとらえた商品の品揃え、価格帯等も自然と似てくることが陳述されている。
しかも、請求人の「Dr+BK」ゲルマニウム商品は、有名で売れ筋であることは、ワールドガイド学院を卒業したガイドだけでなく、ほとんどの旅行会社やガイドに広く知れ渡っていることや「Dr+BK」のシリーズ商品、ゲルマニウム商品は、請求人のオリジナルブランドであり、被請求人のブランドではなく、また、請求人の免税店で販売されてきたものであり、被請求人が自社ブランドとして販売していたことは聞いたことも見たこともないと陳述されている。
(2)請求人と被請求人は、上記のとおり、ライバル関係にあり、売れ筋商品については、両社とも互いに相手の商品に関心を寄せており、被請求人は、請求人の引用商標を使用した「健康食品」や「ゲルマニウム商品」の売れ行きが好調であることに目をつけ、一時期自社のホームページ上に、取り扱っている健康食品について、引用商標1に類似する「Dr.BK」を使用していた(甲37)。被請求人は、わずかに「+」だけを除いた「Dr.BK」を使用することにより、需要者の誤認を誘い、顧客を奪おうとしたものと疑われる。
請求人は、被請求人の使用を知らずにいたが、引用商標を使用した商品が請求人の商品であることをよく知っていたガイドが、被請求人も「Dr.BK」商品を取り扱っていることを不審に思い、請求人に尋ねてきて、初めて知ったのである。
そこで、請求人は、被請求人に限らず、「Dr.BK」商品の模倣を防ぐために、ホームページで警告を出すとともに(甲14の2)、一般社団法人添乗員ガイド協会に引用商標1を所有している旨伝えた。すると同協会は、「Dr.+BK」は、被請求人の創作したブランドではなく、請求人が独自で創作し、かつ、PB製品にも単独で使用している商標であることは公知の事実と判断したとのことであり、その結果の指導等により、被請求人は、一昨年の3月頃に自社のホームページから削除した。
このこともあり、請求人は、引用商標を使用している全商品について、再度商標登録の有無を確認したところ、上記のようなホームページから削除するといった対応とは別に、被請求人が「ゲルマニウムを使用したネックレス、ゲルマニウムを使用したブレスレット」と同一又は類似する商品について、本件商標を出願し、登録していることが判明した。
本件商標の指定商品については、被請求人は、本件商標の登録出願の1年位前に、書体は異なるものの引用商標と共通する「Dr.+」を含む「Dr.+Bio」(甲38の1)を出願し、登録しており、それにもかかわらず、今度は引用商標と酷似する本件商標の登録に及んだのである。
本件商標と引用商標とは、そのデザイン化された文字もあまりにも酷似しており、被請求人が自ら創案したとは到底考えられない。しかも、一見すれば全く同一に見えるが、細部にわたりよく観察すると、フォントを異にする等、若干の修正を加えており、より悪質であることがうかがえ、また、本件商標に瑕疵があることを自覚してか、設定登録料を5年分しか納付していないし(甲1の2)、実際に本件商標をその指定商品に使用している形跡もなく、使用しているのは「Dr.+Bio」である(甲38の2)。
したがって、本件商標を登録出願した被請求人の行為は、顧客吸引力や信用が蓄積している引用商標を盗用し、不正な利益を得る目的あるいは請求人に損害を与える目的をもってされたものといわざるを得ないから、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、このように酷似した商標の登録を認めることは、商標法の予定する秩序に反するものであって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
4 商標法第4条第1項第10号について
(1)引用商標2は、上記のとおり、本件商標の登録出願時において、既に請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた商標であり、本件商標は、引用商標2とほぼ同一の商標で、その商品と同一又は類似する商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。
審査基準では、需要者の認識につき、「全国的に認識されている商標のみならず、ある一地方で広く認識されている商標をも含む。」とされており、引用商標2は、少なくとも「ある一地方で広く認識されている商標」に十分該当する。
(2)商品が同一又は類似することについて
引用商標2の使用に係る商品「ゲルマニウムを使用したネックレス、ゲルマニウムを使用したブレスレット」は、第14類の「身飾品」に該当するばかりか、「ゲルマニウム」を使用しているという点において、第5類の「医療用ネックレス,医療用ブレスレット,医療用アンクレット」にも該当し、又は、類似するといえるので、「商品が同一又は類似する」といわざるを得ない。
以上より、本件商標は、引用商標2とほぼ同一の商標であり、第5類及び第14類のいずれにおいても、その商品と同一又は類似する商品について使用するものといえるから、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。
5 商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、上記のとおり、本件商標の登録出願時において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた商標である。
「Dr.+BK」と「Dr.BK」をインターネット検索ツールにより検索すると(甲42、甲43)、全て請求人が販売している「健康食品」又は「ゲルマニウムを使用したネックレス・ブレスレット」である。
しかも、引用商標が、造語よりなるものであり、かつ、構成上顕著な特徴を有する上、引用商標の使用に係る商品が、健康に関わる商品であり、本件商標の指定商品の取引者、需要者の相当部分は共通している。
加えて、共に免税店事業を中心としており、来店者も主に韓国や中国の訪日外国人観光客であり、このような需要者も共通している。
したがって、本件商標は、請求人の引用商標とほぼ同一であるので、被請求人が本件商標をその指定商品に使用する時は、その取引者、需要者において、その商品が請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について誤認混同を生ずるおそれがあるものといえ、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
6 商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、本件商標の登録出願時において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、韓国や中国で知られているばかりか、日本国内でも需要者の間に広く認識されている引用商標とほぼ同一であり、引用商標は、造語よりなり、かつ、構成上顕著な特徴を有するものであるから、「不正の目的をもって使用する」ことを推認することもできるので、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
7 むすび
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号に該当し、その登録は無効とすべきものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証及び乙第9号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 引用商標の周知性について
請求人は、引用商標が需要者、取引者の間で広く知られていると主張しているが、請求人が根拠として提出した証拠は、以下のとおり、その周知性を裏付けるものとはいえない。
(1)請求人店舗の来店数及び業績について
請求人の免税店の店舗一覧(甲9)は、平成30年8月3日現在のものであり、本件商標の登録出願時及び登録査定時の店舗数は不明であるから、そもそも本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標1が我が国及び外国の需要者の間で周知されていたことを基礎づけるものではない。
次に、来店数については、韓国、中国等からの来店者数一覧(甲10)を提出しているが、請求人が内部的に作成した一覧であり、どのような資料を根拠に作成したものか不明であって、信ぴょう性に欠き、客観的な証明とはいえない。仮にその来店数が正確であったとしても、市場における他社との比較などがないため、その多寡は不明である。
また、請求人店舗に訪れる来店客の多くは、韓国と中国からの訪日観光客であり、請求人店舗が免税店であることからすれば、免税の恩恵が受けられない日本人が請求人店舗を利用することは殆どないといえる。すなわち、請求人店舗は、日本人には馴染みがなく、韓国や中国から訪日する観光客の一部が来店するにすぎず、請求人が主張する周知性には限界がある。
そして何より、請求人店舗への来店客数や業績といったものは、会社全体としての実績であり、引用商標の周知性とは直接関係の無い数字であるから、その周知性の根拠となるものではない。
(2)引用商標の周知性に関する各証拠について
ア 請求人の免税店において、健康食品及びゲルマニウムを使用した商品の販売コーナーを設けて、引用商標を使用しているといった旨述べている。その根拠になっている店舗内外を撮影した写真(甲12)は、写真の撮影時期、撮影場所が不明であるから、本件商標の登録出願時に写真にあるような店舗・販売コーナーであったとはいえない。
仮に請求人が写真にあるような店舗を展開していたとしても、引用商標を大きく掲出した広告物といったものは見えない。特に店舗の外においては一切掲出がないから、入店しない我が国の一般需要者が引用商標を目にする機会は非常に限られている。
また、インターネット情報(甲14、甲22、甲23)は、プリントアウトの日付が2017年7月2日、同年5月11日及び同年7月16日となっており、本件商標の登録出願時より後の日付であるから、引用商標の周知性の根拠にならないことは明らかである。
ちなみに、被請求人が、同じショッピングサイトの「ゲルマニウムネックレスランキング」及び「ゲルマニウムブレスレットランキング」を確認したところ、本年(平成30年)10月17日現在、どちらのランキングにも引用商標2に係る商品は入っていない(乙4)。
イ 請求人は、訪日観光客向けにカタログ、チラシ及び観光ガイド向けのショッピングガイドを制作して配布している旨述べ、カタログについては、韓国語版カタログ写しと、その中国語版カタログ制作に関する稟議書(甲15の3)の写しを提出している。
元より当該稟議書に引用商標1の表示が見えず、提出されたカタログ(韓国語版)と稟議書(中国語版)が対応していないため、中国語版における引用商標1の表示が不明であるし、稟議書に基づくカタログが完成した時期も不明であるが、稟議書はあくまでカタログ制作に係る社内書類にすぎず、稟議書に基づき発注され、現に作成され納品されたかは不明である。
なお、社長欄に斜線が引いてある稟議書(甲16の2)があり、社長が最終決裁者でない場合には斜線が引かれているが、甲第15号証の3には斜線は引かれていないなど、請求人が提出した稟議書には決済欄が空欄なものがあり、稟議書が最終決裁者の決裁を得たものであるかさえ不明である。
また、請求人は、商品カタログを「日本観光公社」(請求人の旧商号)時代から訪日観光客向けに配布したと述べているが、その配布時期、配布枚数や配布方法などを客観的に証明する証拠の提出はされていない。
よって、周知性どころか商標の使用とみるべき根拠がない。ちなみに、提出された稟議書に添付の韓国語の見積書に記載の制作数は、僅か3000部にすぎない。
加えて、請求人は、平成23年3月1日に商号を「株式会社日本観光公社」から「株式会社ジェイティーシー」に商号変更しているところ(甲4の1)、稟議書(甲15の3)の決済日は「平成25年9月11日」であるにもかかわらず「Happy Shopping」と題する書面(甲15の1)には、「日本観光公社」と記載されているため整合しない。
チラシ(甲16)についても、おおむね同様のことがいえる。また、展示及び頒布の事実について請求人は、「少なくとも数十万枚単位で配布していた。」などと主張するが、その配布時期、配布枚数や配布方法などを客観的に証明する証拠がなく、商標の使用とみるべき根拠がない。
なお、「JAPAN TOURISM CORPORATION」の見出しがある商品一覧チラシ(甲16)には、大書されている文字情報に引用商標1と思しき表示はない。
商品写真の一部に引用商標1の表示があるとしても、あまりに微小及び不鮮明であり、商標として識別機能を果たし得る表示方法とは到底いえない。
また、請求人はショッピングガイドとその制作に係る稟議書を提出しているが(甲17)、やはり配布に関する事情を証明しているとはいえないから、引用商標1の周知性を認識できる証拠ではない。そもそも当該ショッピングガイドは、訪日観光客を案内するガイド向けに支給されているもので、商品の需要者が直接その内容を目にする機会はない。請求人が述べるガイドが行う広報は、日本観光の道中で口頭によるものと考えられるから、元より商標の使用とはいえない。
さらに、当該ショッピングガイド(甲17の1?8)は200?400頁近くにも及ぶ分厚い冊子とみられ、日本観光全般に関する旅行ガイドマニュアルといった内容である。
そのような長大な冊子の一部に引用商標1に係る商品情報の掲載があるからといって、ガイドが常にその内容を広報し、訪日観光客が知得すると考えるのは無理があり、請求人が主張するような広告効果は考えがたい。
なお、請求人は、「12万人以上の広告効果があった」と主張するところ、12万人という数字は登録ガイド数にバス1台当たりの乗客数を単純に乗じた数と考えられるが、そもそも登録ガイド数、バスの乗客数、実際のバスの稼働状況等は何ら立証されておらず、また、稟議書(甲17の9)によれば、「中国版のショッピングウエー-1,000冊」及び「韓国版のショッピングウエー-1,000冊」と記載されており、合計で2,000冊にすぎないから、仮に登録ガイドが3,000人以上いたとしても、その全員がショッピングガイドを用いてガイドしたとは到底考えられない。したがって、延べ12万人以上の広告効果があるという請求人の主張には理由がない。 ウ 請求人は、韓国や中国のブログから引用商標がそれぞれの国で良く知られていることが分かるといった旨述べている。しかし、各ブログの内容は、引用商標の周知性をうかがわせるものではない。
まず、韓国のブログ21件、同26件、及び中国のブログ21件、同5件(甲18、甲24)をまとめた一覧を乙第1号証及び乙第5号証として提出する。各ブログのアクセス数、閲覧数は一切不明である。
韓国のブログでは、当該一覧(乙1の1、乙5の1)の備考欄に記載のとおり、同一URLによる完全な重複、リンク切れ、本件商標の登録出願より後の日付、といった論外のブログも少なくないが、同一人(同一のユーザID)のブログにおける日付の異なる書き込みがみられる(乙2、乙6)。したがって、整理すれば20件強にすぎず、しかもブログの内容は、日本旅行から戻った個人が土産で購入した健康食品、ブレスレット等を紹介する内容か、その購入した商品を転売するといった内容であるから、引用商標の周知性を窺わせる内容ではない。
中国のブログでも同様であり、一覧(乙1の2、乙5の2)の備考欄に記載のとおり、リンク切れで確認不能なブログが多く、また、同一人とみられるブログ(乙3)、サイトの日付が本件商標の登録出願より後のもの(乙7)もみられ、商品紹介又は転売に関する個人ブログが健康食品については10件、ブレスレット等については3件といったところである。
以上、インターネットにおいて、20件ほどの個人の書き込みがキーワード検索でヒットするからといって、日本や韓国において、引用商標が周知であるなどと認定できない。
エ 引用商標を使用した健康食品の平成21年(2009年)1月から同29年(2017年)2月までの売上高は、560億円、ブレスレット等の平成21年(2009年)1月から同26年(2014年)2月までの売上高は、108億円に上っていると請求人は述べるが、あくまでこれは約8年間及び約5年間の合計売上高であるから、単年でみればさほど多いとはいえない。元より市場シェアなどではなく、単なる自社の実績にすぎないから、市場における多寡を量れるものではない。
また、本件商標の登録出願時より後の売上も含んでいるから証拠力に欠ける。
さらに、ブレスレットの平成26年(2014年)3月から同27年(2015年)2月までの売上高は、30億円以上になっていると主張するが、その裏付けとなる証拠(甲32)は、一部の売上に係る取引書類にすぎないから、請求人が主張する売上高の客観的正確性を担保しているとはいえない。
さらにまた、「陳述書」(甲19の2)は、請求人の社員(法務部長)が捺印したものにすぎず、自己の主張を自己で確認するようなもので、決して陳述内容の客観性を担保しているとはいえない。
監査法人の監査証明を得ていることを陳述しているが、通常監査法人は会社全体の会計情報の正確性は証明するが、商標別、商品別の売上高の正確性まで証明するものではない。
オ 以上、請求人が提出した証拠には、客観的に引用商標の周知性をうかがわせるようなメディア広告や、新聞、雑誌記事、権威あるインターネットサイトにおける記事の類は一切ない。
むしろ提出された証拠は、引用商標がごく限られた範囲と方法で使用される程度であり、訪日観光客のごく一部が個人ブログで紹介する程度にしか知られていないことを物語っている。
したがって、我が国はおろか、韓国と中国でも引用商標が本件商標の登録出願前から周知であるといった事実はないといわなければならない。
2 商標法第4条第1項第7号に関する主張について
請求人は、本件商標の出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、商標法の予定する秩序に反するものであるから、本件商標が商標法第4条第1項第7号に違反して登録されている、と主張する。
しかし、本件商標の異議決定(異議2017-900195)のとおり、本件商標と引用商標の構成態様が近いという事実のみによって、本件商標権者による本件商標の登録出願の経緯に、著しく「社会的」妥当性を欠くものがあるなどと断定することは決してできない。
当該異議決定に、「引用商標2の使用開始にあたって、(請求人が)その商標を登録出願する機会は十分にあったというべきであって、自ら登録出願しなかった責めを本件商標権者に求めるべき事情を見出すこともできない。」との認定があるが、正にそのとおりである。
引用商標2の商標出願を行わなかったのは一私人たる請求人の単なる落ち度にすぎない。商標法第4条第1項第7号の規定は、そのような一私人の落ち度の救済を予定するものでは決してなく、過去の判決(乙8、乙9)からも十分首肯できる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではない。
3 商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に関する主張について
引用商標1については、その指定商品である健康食品と本件商標の指定商品である医療用ネックレスや身飾品等とは、商品の取引の形態、商品の材料や構造、商品の使用の目的や用途などが全く異なるため、そもそも出所の混同のおそれはない。
その点をおくとしても、上記で詳述したように、請求人が提出したいずれの証拠をもってしても、引用商標が、本件商標の登録出願前の時点において、需要者の間で広く知られていたという事情は認められないから、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号の要件を満たしていない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものでない。

第5 当審の判断
1 本件審判の請求の利益について
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、当事者間に争いがないため、以下、本案に入って審理する。
2 商標法第4条第1項第7号について
商標法第4条第1項第7号は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標は、商標登録を受けることができない旨規定しているところ、同規定の趣旨からすれば、(a)当該商標の構成自体が矯激、卑猥、差別的な文字、図形である場合など、その商標を使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反する場合、(b)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(c)当該商標ないしその使用が特定の国若しくはその国民を侮辱し又は一般に国際信義に反するものである場合がこの規定に該当することは明らかであるが、それ以外にも、(d)特定の商標の使用者と一定の取引関係その他特別の関係にある者が、その関係を通じて知り得た相手方使用の当該商標をひょう窃したと認めるべき事情があるなど、当該商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合も、この規定に該当すると解するのが相当である(東京高等裁判所平成16年(行ケ)第7号、平成16年12月21日判決参照)。
3 当事者の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである
(1)請求人について
請求人は、平成6年(1994年)3月に設立された免税店業を業とする会社であり、平成23年(2011年)3月1日に「株式会社日本観光公社」から「株式会社ジェイティーシー」へ、平成27年(2015年)1月30日に「株式会社ジェイティーシー」から現在の名称である「株式会社JTC」へ社名変更している(甲4、甲8)。また、請求人は、札幌、新宿、名古屋、大阪、長崎、福岡、那覇等に外国人観光客向けの免税店を展開している(甲8、甲9)。
(2)被請求人について
被請求人は、平成7年(1995年)6月に設立された会社であり、免税店事業、インターネット販売等を業として行っており、札幌、新宿、大阪、長崎、福岡、那覇等に外国人観光客を対象とした免税店を展開している(甲34、甲35)。
(3)引用商標の使用について
ア 引用商標1の使用について
請求人は、2007年頃から「健康食品」(以下「請求人商品1」という。)に使用を開始し、現在まで継続して使用していると主張している。
(ア)甲第13号証の1は、原画像データの生成日時を2009年11月13日とする引用商標1が表示された6種類の請求人商品1の写真であるところ、この中には、引用商標1が表示され、「S」の文字を大きく表示し、これと一部重なるように「スピルリナ」の文字が表示された包装容器の商品がある。また、甲第13号証の2は、原画像データの生成日時を2013年11月4日とする引用商標1が表示された請求人商品1を並べた写真であるところ、この中の「スピルリナ」の文字を表示した包装容器の商品は、上記甲第13号証の1の商品とほぼ同じであり、2017年7月2日を印刷日とする「YAHOO!ショッピング」のウェブサイト(甲14の1)に同一の商品が掲載されている。
(イ)「株式会社アンズコーポレーション」は、請求人に、2010年2月10日から2016年2月25日の期間に、商品名に「DR.BK キチンキトサン」、「DR.BK スピルリナ」などのように「DR.BK」(「R」の文字が、小文字「r」のものを含む。)を冠した商品を納品していることがうかがえる(甲20の1?3)。
(ウ)甲第17号証の5及び甲第17号証の7は、2015年版の「Shopping Way」(韓国語、中国語)の表題の商品が多数掲載されているショッピングガイドとされるものであるところ、これには、前者は67ページに、後者は68ページに引用商標1が表示された甲第13号証の2と同じ「スピルリナ」の文字を表示した包装容器の商品が掲載されている。
(エ)ブログ(甲18)によれば、2010年11月頃から2016年7月頃までの期間に、韓国及び中国からの観光客に、引用商標1を使用した請求人商品1が販売されたことがうかがわれ、さらに、甲第18号証の2の○の中に4(以下、同様の表示については、「(4)」のように記載する。)のブログの商品及びレシートの写真によれば、引用商標1が包装容器に表示された請求人商品1が、2013年9月20日に請求人(以前の名称である「日本観光公社」)の名古屋免税店で販売されたものといえる。
(オ)以上によれば、引用商標1は、平成21年(2009年)11月頃から、請求人商品1へ使用が開始されたことがうかがえ、その後、当該商品は、平成25年(2013年)9月に請求人の名古屋免税店で販売され、平成27年(2015年)に韓国及び中国からの観光客向けの商品紹介のガイドブックに掲載され、本件商標の登録査定後の平成29年(2017年)7月頃に、インターネットを通じて販売されていたことが認められる。
イ 引用商標2の使用について
請求人は、引用商標1と同一の引用商標2を、2009年頃から現在に至るまで「ゲルマニウムを使用したネックレス、ゲルマニウムを使用したブレスレット」(以下、これらをまとめて「請求人商品2」という。)に使用していると主張しているところ、引用商標2は、平成21年(2009年)12月頃に請求人商品2の包装容器に表示されていたことがうかがわれ(甲21の1・2)、また、上記商品の「取扱説明書 保証書付」には引用商標2が表示され、これには、販売者として、「株式会社JTC」及び「株式会社日本観光公社」の表示がある(甲21の3)。
そして、2016年2月頃から同年8月頃までの期間に、請求人はインターネット通販サイト「楽天」の「everyshop」を通じて、商品名を「Dr.+BK ゲルマニウムブレスレット」、「Dr.+BK ゲルマニウムネックレス」とする商品を国内(京都、大阪、東京等)及び海外(中国)の顧客に販売したことがうかがわれ(甲33)、また、2017年5月及び7月頃には、引用商標2の表示とともに、上記「楽天」において請求人商品2が掲載されている(甲22、甲23)。
また、ブログ(甲24)によれば、2013年7月頃から2016年8月頃までの期間に、韓国及び中国からの観光客に、引用商標2を包装容器に表示した請求人商品2が販売されたことがうかがわれ、さらに、甲第24号証の1の(5)のブログには、引用商標2が表示された請求人商品2の包装容器の写真とともに、当該商品の「取扱説明書 保証書付」に、やや不鮮明ではあるものの、「JTC」、「15.4.17」及び「福岡店」の文字が丸い枠線の中に表示され、同号証の(7)のブログには、引用商標2が表示された請求人商品2の包装容器の写真とともに、「取扱説明書 保証書付」に、「(株)JTC」、「16.1.14」及び「福岡博多免税店」の表示があり、同様の表示は、日付と店名は異なるものの同号証の(13)及び(21)、甲第24号証の2の(1)にもある。
以上によれば、引用商標2は、平成21年(2009年)12月頃から、請求人商品2への使用が開始されたことがうかがえ、その後、当該商品は、平成27年(2015年)4月に請求人の福岡店、同28年(2016年)1月に福岡博多免税店で販売され、韓国及び中国からの観光客を顧客とする我が国の免税店で販売されたこと、及び同年2月頃から8月頃までインターネットを通じて販売されたことが推認でき、本件商標の登録査定後の平成29年(2017年)5月及び7月頃に、インターネットを通じて販売されていたことが認められる。
4 本件商標と引用商標の比較
別掲2に示した引用商標は、「Dr.」の文字と、左側に縦長の十字様の図形を有する特徴あるデザインを施した「B」とセリフ体を有する「K」の文字を配した構成からなるものである。一方、別掲1に示した本件商標は、その構成態様が、上記引用商標とほぼ同一又は酷似するものであることは明らかである。
5 商標法第4条第1項第7号該当性について
上記3及び4によれば、以下のとおりである。
(1)本件商標は、請求人が採択して使用している、独創的な特徴を有する引用商標とは、ほぼ同一又は酷似するものである。
(2)引用商標は、平成21年(2009年)頃から、請求人商品1及び請求人商品2に使用を開始されたことがうかがわれ、少なくとも、前者は、平成25年(2013年)9月に、後者は、平成27年(2015年)4月に請求人の店舗において販売されたことが認められ、また、引用商標1は、平成27年(2015年)に訪日観光客を案内するガイド向けとされるショッピングガイドに表示されていたことが認められ、さらに、平成28年2月頃から8月頃までインターネットを通じて請求人商品2が販売されたことが推認できる。
(3)被請求人は、請求人と同じく訪日外国人を顧客とする免税店業を行っており、その店舗を展開する地域も少なからず重複しており、被請求人は、請求人の引用商標を使用した請求人商品1及び請求人商品2を容易に知ることができたものといえる。
(4)上記(1)ないし(3)によれば、本件商標は、独創的な特徴を有する引用商標とほぼ同一又は酷似するといえるものであり、被請求人が引用商標を知り得ることなく、両者が偶然に一致したとは想定し難いものである。
また、請求人は、引用商標を平成21年(2009年)頃から使用を開始したことがうかがえ、その後、少なくとも、引用商標1を平成25年(2013年)9月に請求人商品1に、引用商標2を平成27年(2015年)4月に請求人商品2に使用していたことが認められ、さらに、請求人商品2は、平成28年2月頃から8月頃まで、インターネットにおいても販売されたことが推認できることから、請求人は、引用商標を継続して使用しているものといえる。
そして、被請求人は、請求人と同じく訪日観光客を対象とした免税店業を行っているところ、その店舗の存在する地域も少なからず重複していること、加えて、海外ツアーへ同行するガイドを養成するための専門学校の学院長が、請求人と被請求人は、同じ訪日外国人を主な顧客とする免税店であり、強いライバル関係であることがよく知られていることや、どちらも主なターゲットが訪日観光客であることなどを陳述している(甲36の1)ことなどを総合勘案すれば、被請求人は、請求人の販売に係る請求人商品1及び請求人商品2を通して、引用商標の存在を知った上で、これが、本件商標の指定商品について、商標登録出願及び商標登録されていないことを奇貨として、不正な目的をもってひょう窃的に出願したものと推認できるものである。
このような行為に係る本件商標は、上記2の(a)ないし(c)には該当するものではないものの、「(d)特定の商標の使用者と一定の取引関係その他特別の関係にある者が、その関係を通じて知り得た相手方使用の当該商標をひょう窃したと認めるべき事情があるなど、当該商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合」に該当するものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
6 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。なお、請求人は、上記理由のほか、本件商標が商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当する旨主張しているが、請求人の主張及び提出に係る証拠によっては、上記理由に該当するものと認めることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第46条第1項第1号により、その登録は無効とされるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1
本件商標



別掲2
引用商標1及び引用商標2



審理終結日 2019-11-22 
結審通知日 2019-11-26 
審決日 2019-12-11 
出願番号 商願2016-96400(T2016-96400) 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (W0514)
最終処分 成立  
前審関与審査官 白鳥 幹周 
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 中束 としえ
小松 里美
登録日 2017-03-17 
登録番号 商標登録第5933440号(T5933440) 
商標の称呼 ドクタービイケイ、ドクタープラスビイケイ 
代理人 松本 幸太 
代理人 市橋 卓 
代理人 松村 達紀 
代理人 一色国際特許業務法人 
代理人 特許業務法人英和特許事務所 
代理人 宮沢 奈央 
代理人 大塚 和成 

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