• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2020890017 審決 商標
無効2020890016 審決 商標
無効2018890072 審決 商標

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W30
審判 一部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W30
審判 一部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W30
審判 一部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W30
管理番号 1358811 
審判番号 無効2018-890034 
総通号数 242 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-02-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-05-10 
確定日 2020-01-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第5917935号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5917935号の指定商品中、第30類「ふ,みそ汁・すまし汁の具として用いられるふ」についての登録を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5917935号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成28年3月3日に登録出願、第29類及び「ふ,みそ汁・すまし汁の具として用いられるふ」を含む第30類に属する商標登録原簿記載の商品を指定商品として、同年12月28日に登録査定、同29年1月27日に設定登録されたものである。

第2 請求人が引用する商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由として引用する商標は、以下の6件であり、いずれも登録商標として現に有効に存続しているものである(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)。
1 登録第2312832号商標(以下「引用商標1」という。)は、「宝」の漢字からなり、昭和58年3月3日に登録出願、第32類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、平成3年6月28日に設定登録され、その後、同16年5月26日に、第29類、「穀物の加工品」を含む第30類、第31類及び第32類にそれぞれ属する商標登録原簿に記載の商品とする指定商品の書換登録がされたものである。
2 登録第2312833号商標(以下「引用商標2」という。)は、「タカラ」の片仮名からなり、昭和58年3月3日に登録出願、第32類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、平成3年6月28日に設定登録され、その後、同16年5月26日に、第29類、「穀物の加工品」を含む第30類、第31類及び第32類にそれぞれ属する商標登録原簿に記載の商品とする指定商品の書換登録がされたものである。
3 登録第2312834号商標(以下「引用商標3」という。)は、「TAKARA」の欧文字からなり、昭和58年3月3日に登録出願、第32類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、平成3年6月28日に設定登録され、その後、同16年5月26日に、第29類、「穀物の加工品」を含む第30類、第31類及び第32類にそれぞれ属する商標登録原簿に記載の商品とする指定商品の書換登録がされたものである。
4 登録第2491034号商標(以下「引用商標4」という。)は、「タカラ」の片仮名からなり、昭和57年4月22日に登録出願、第32類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、平成4年12月25日に設定登録され、その後、同17年2月2日に、第29類、「穀物の加工品」を含む第30類、第31類及び第32類にそれぞれ属する商標登録原簿に記載の商品とする指定商品の書換登録がされ、さらに、同24年10月30日に商品及び役務の区分を第29類、第30類及び第31類に減縮する商標権の存続期間の更新登録がされているものである。
5 登録第4066233号商標(以下「引用商標5」という。)は、「TaKaRa」の欧文字からなり、平成5年6月29日に登録出願、「穀物の加工品」を含む第30類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同9年10月9日に設定登録されたものである。
6 登録第5896399号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成27年12月17日に登録出願、「穀物の加工品」を含む第30類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同28年11月11日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証?甲第36号証(枝番号を含む。)を提出した。以下、証拠の記載については、甲1のように表記する。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、本件商標の指定商品中第30類「ふ,みそ汁・すまし汁の具として用いられるふ」(以下、「無効請求商品」という。)について、商標法第46条第1項第1号により、その登録は無効とされるべきである。
2 具体的な理由
(1)商標法第4条第1項第11号について
結合商標類否判断について
(ア)結合商標類否判断に関し、「つつみのおひなっこや事件」(最高裁平成19年(行ヒ)第223号)では、「複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないというべきである」とされており、要部抽出が許されるのは、この例示されている2つの場合に限定されないことは明らかである。
(イ)商標審査基準における商標法第4条第1項第11号結合商標類否判断について、「結合商標は、商標の各構成部分の結合の強弱の程度を考慮し、各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど強く結合しているものと認められない場合には、その一部だけから称呼、観念が生じ得る。」として、商標の構成の一部だけを抽出した類否判断も許されるとされており、また、類否判断の際には、「指定商品又は指定役務との関係から、普通に使用される文字、慣用される文字又は商品の品質、原材料等を表示する文字、若しくは役務の提供の場所、質等を表示する識別力を有しない文字を有する結合商標は、原則として、それが付加結合されていない商標と類似する。」と明示されている。
イ 本件商標と引用商標の比較
(ア)本件商標は、「宝」、「の」、「麩」の三語よりなる結合商標であって、その下に小さく表された「TAKARA」と「FU」の文字は、「宝」と 「麩」の文字の読みをそれぞれ英文字で表記したものと解されるところ、当該文字は、全体として既成語ではないから、その結合の程度は強いとはいえず、構成全体を常に一体不可分のものとしてみなければならない特段の事情も存しない。
(イ)当該構成中、「麩」の文字は、「小麦粉から取り出したグルテン(麩素)を主材料とする食品。生麩と焼麩とがある。」(広辞苑第六版)の意味で日常良く親しまれており、「FU」の文字は、その読みの英文字表記であるから、これらの文字は、無効請求商品との関係においては、商品の普通名称にすぎないことは明らかである。
そして、「の」の文字は、所有や所属、作者・行為者を表す格助詞であって、それ自体、独立して自他商品識別標識たり得るものではない。
そうとすれば、「の麩(FU)」の文字部分は、商品の普通名称又は品質を表したものにすぎず、この部分からは、出所識別標識としての称呼・観念は生じない。
これに対し、「宝」の文字及びその読みの英文字表記の「TAKARA」の文字は、商品の品質とは全く関係のない語であって、それ自体、強い識別力を有することに加え、後述のとおり、「宝」及び「TAKARA」商標は、請求人及び請求人のグループ会社のハウスマーク・商標として周知・著名なものである。
してみれば、本件商標中、語頭部に位置する「宝」及び「TAKARA」の文字部分が、商品の出所識別標識として圧倒的に強く支配的な印象を与え、それ以外の部分からは出所識別標識としての称呼・観念は生じないから、前記判決及び審査基準による結合商標類否判断の考え方に照らしてみても、本件商標は、「宝」及び「TAKARA」の部分を要部抽出した分離観察が妥当である。
したがって、本件商標は、その要部である「宝」及び「TAKARA」の文字部分から、これに相応した「タカラ(宝)」の称呼及び観念を生じる。(ウ)他方、引用商標は、それぞれ前記したとおりの構成よりなるから、「宝」、「タカラ」、「TAKARA」、「TaKaRa」及び「寶」の構成文字に相応して、「タカラ(宝)」の称呼及び観念を生じることは明らかである。
(エ)してみれば、本件商標は、引用商標と、「タカラ(宝)」の称呼及び観念と、「宝」及び「TAKARA」の構成文字を共通にする、出所混同のおそれのある類似の商標であり、かつ、その指定商品も類似する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(オ)商標権者による過去の「宝の麩」商標の出願について
(a)本件商標と、引用商標が類似することは、本件商標の商標権者がこれまでに行った、「宝の麩」商標の出願が、前記引用商標の「宝」「タカラ」「TAKARA」等の登録商標と類似すると審査されていることからも明らかである。
(b)また、過去の審決例をみても、「の」の文字と指定商品の普通名称又は品質を表す語が続けて表された、「の○○」の文字の有無の差を有する商標間の類否について、類似すると判断されている。
本件商標は、これらと同様の条件下にあるものであって、これらの例に照らしてみても、本件商標が引用商標と類似することは、明らかである。
(カ)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 請求人の「寶(宝)」「タカラ」「TaKaRa」商標の周知・著名性について
(ア)請求人は、大正14年(1925年)9月に「寶酒造株式会社」として設立され、以来、我が国屈指の酒類及び調味料・飲料・食料品、並びに醗酵・醸造技術に裏付けられたバイオ関連製品の総合メーカーとして成長を遂げ、平成14年(2002年)4月1日付けで、持株会社「宝ホールディングス株式会社」へと移行したものであって、子会社として新たに設立し国内の酒類・調味料事業を担う「宝酒造株式会社」や、海外で日本食材卸事業や酒類事業を展開する「宝酒造インターナショナルグループ」、バイオ事業を推進する「タカラバイオグループ」のほか、健康食品事業を行う「宝ヘルスケア株式会社」などを傘下に置き、宝グループ全体の経営を統括するものである。
宝ホールディングス株式会社及びその子会社の会社概要・事業内容・沿革について、甲8?甲13を提出する。
(イ)これらの宝グループの製品にはいずれも、「寶(宝/タカラ)」印と称呼観念される、「寶(宝)」「タカラ」「TaKaRa」の文字からなる商標、あるいはこれらを要部とする商標が、ハウスマーク及びその業務に係る商品の商標として永年に亘って使用されており、これらの商標は、本件商標の出願前には既に、取引者・需要者において広く認識されるに至っていたものである。
(ウ)「寶(宝)」商標は、設立当時から現在に至るまで焼酎及び味醂について使用されており、早くに著名性を獲得していることは、東京高裁昭和36(行ナ)第65号判決(甲16)及びその上告審である最高裁昭和38年(オ)第914号判決(甲17)によって法律的判断が確立しているところであり、さらにその後の東京高裁昭和55年(行ケ)第234号判決(甲18)及びその上告審である最高裁昭和56年(行ツ)第141号判決(甲19)においても確認されている。
そして、これらの判決においては、焼酎・味醂について、請求人の「寶(宝)」商標の著名性が認められているとともに、当該商標出願の指定商品である旧々第45類「他類に属せざる食料品及加味品」(又は旧々第45類 「他類に属しない食料品及び加味品」)について、食料品及び加味品は、酒類とともに酒類食料品店において販売されていることが多いという顕著な事実があるとして、これらの指定商品に使用する場合は、商品の出所について、誤認・混同を生ずるおそれがある旨、認定されている。
(エ)片仮名の「タカラ」商標も、前記「寶(宝)」商標と並んで、味醂、焼酎、料理用清酒、チューハイ等のソフトアルコール飲料等について永年使用され、著名な商標となっている。
(オ)さらに、英文字の「TaKaRa」商標は、チューハイ等のソフトアルコール飲料や、タカラバイオ株式会社・宝ヘルスケア株式会社の業務に係る大多数の商品に使用され、日本国内外に広く知られている。
(カ)そして、上記の「寶(宝/タカラ)」印と称呼観念される「寶(宝)」「タカラ」「TaKaRa」商標は、特許情報プラットフォームの「日本国周知・著名商標検索」データ(甲14の1及び甲14の2、甲15の1及び甲15の2)や、AIPPI・JAPAN発行「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN/日本有名商標集」(甲20)にも収録されており、これらの商標が周知・著名なものであることは、特許庁においても顕著な事実として確立している。
イ 使用される商品については、請求人の周知・著名な「寶(宝/タカラ)」印商標の主な商品範囲である酒類と、本件商標の指定商品を含む食料品全般は、密接に関連する商品であり、前記甲16?甲19の判決により、判示され、両者は、同一店舗・同一取引業者において取り扱われることが多く、需要者も共通にする。
また、企業の経営多角化により同一事業者によって商品が製造・販売されることも多く、実際に、請求人グループの業務範囲も、キノコや健康食品、調味料等の食品分野に広く及んでいる。
ウ 本件商標の構成中、「の」の文字は、所有や所属、作者・行為者を表す格助詞であるから、本件商標からは、全体として、「(請求人及び請求人グループの)『宝』の所有する(ブランドの)『麩』」、「(請求人及び請求人グループの)『宝』に属する(ブランドの)『麩』」、「(請求人及び請求人グループの)『宝』の作った『麩』」のような意味合いが想起される。エ これらの点を総合して考察すると、本件商標が、無効請求商品について使用された場合、これに接する取引者・需要者は、周知・著名な「宝」「TAKARA」の文字部分に着目して、あたかも当該商品が請求人及び請求人グループの業務に係る商品であるかのように認識して取引に当たる蓋然性が高く、商品の出所につき混同を生ずるおそれがあるといわざるをえない。
オ したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標は、無効請求商品について、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当し商標登録を受けることができないにも拘らず誤って登録されたものであるから、商標法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙1の1?乙3の6を提出した。
1 被請求人は、社名に「麩」の文字(更に「不」の文字も)を使用していることからも明らかなように、指定商品「ふ」に関連する商品を製造販売している。
その商品の一つが「宝の麩」であり、この商品は被請求人の一番の商品であり、乙1の1?乙1の6からも明らかなように、指定商品「ふ」との関連で「宝の麩」を使用しているものである。「宝の麩は、『ふ』で容器を形つくり、また、お湯で壊れやすくして、その中に具材を入れた商品「宝の麩」であり、お湯を注ぐだけで、即席みそ汁、スープが出来上がるものである。2 被請求人は、「宝の麩」(商標登録第5047318号)を保有している(乙2)。この商標登録の構成と本件商標との相違は、英文字部分があるか否かの違いがあるだけである。
本件商標は「宝の麩」(商標登録第5047318号)の周知・著名度の認識の高まりに対応し、外国人観光客等にも認識されやすいように考慮して、「TAKARA FU」の英文字を追加して商標登録されたものであるが、いずれの登録商標も、適法に登録されたものであり、無効理由が存在するようなものではない。
なお、上記「宝の麩」(商標登録第5047318号)は、その出願経過で拒絶理由が通知された経緯はあるが、本件商標については、拒絶理由もなく適法に登録されている。この点、請求人は、本件商標についても拒絶理由が通知されたかのような主張になっているが、正確な主張ではない。
本件商標は、「宝の麩」の部分全体として一連一体的に認識されるものであって、分離されるような構成ではなことは明らかであるから、無効理由に該当するものではない。
3 本件商標の構成は、「宝の麩」と「TAKARA FU」の二段構成とするところ、二段表記については、読みを特定する意味を有する等の役割がある。そして、上記のように外国人観光客等にも認識されやすくする意義を有するとともに、不自然な読みを付したようなものではなく、自然な読みの英文字を付したものである。
したがって、本件商標も上記「宝の麩」(商標登録第5047318号)も適法に登録されたことに何の問題もないものであるから、無効理由に該当するとする請求人の主張は妥当ではない。
4 請求人は、本件商標の指定商品を含む食料品全般について、請求人の商標が周知・著名であるかのような主張をし、一方で、「密接に関連する商品であり、」として、本件商標の無効請求商品に関連する商品について周知・著名の説明をするにすぎず、具体的な周知・著名である証拠を挙げていない。
したがって、本件商標の無効請求商品に関連する商品について具体的な周知・著名である証拠が挙げられておらず、無効理由にも該当するものではない。なお、請求人が何ゆえに無効請求商品のみについて無効審判を請求するのか、その理由が明らかでないが、仮に不使用取消審判と勘違いされているとすれば、それは、権利の濫用・誤用でしかない。
5 被請求人は、麩の会社として創業されており、「宝の麩」の部分は、第29類と第30類の指定商品との関係で周知・著名商標である(乙2)。
すなわち、全国の有名デパートでも販売している(乙1の1?乙1の10)とともに、各種のパンフレットを配布し、テレビCMされているのみならず(乙3の1)、ネット販売も各社を通じて行われており、ヤフーショッピングや楽天では、ヒット商品の上位にランクインしているなど(乙3の2)、インターネットでの宣伝活動を広く行っている(乙3の3?乙3の6)。6 以上のように、本件商標は、「宝の麩」の部分全体として一連一体的に認識されるものであって、分離されるような構成ではなことは明らかであり、本件商標は、それに小さな英文字部分「TAKARA FU」を付加した構成であるから、無効理由に該当するものではない。
また、請求人は、本件商標の指定商品を含む食料品全般について、請求人の商標が周知・著名であるかのような主張をし、一方で、「密接に関連する商品であり、」として、本件商標の無効請求商品に関連する商品について、具体的な周知・著名である証拠を挙げていないことから、無効理由にも該当するものではない。
以上のように、本件商標は、適法に登録されたように、無効理由に該当するものではないので、請求人の請求には理由がない。

第5 当審の判断
1 利害関係
請求人が本件審判を請求することの利害関係の有無については当事者間に争いがなく、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。
2 本件商標の商標法第4条第1項第11号の該当性について
(1)本件商標は、別掲1のとおり、「宝の麩」の文字並びに「宝」及び「麩」の漢字の下部に、それぞれ小さく「TAKARA」及び「FU」の欧文字を書してなるところ、欧文字部分は漢字部分の読みを特定するものであることを無理なく理解できるものである。
また、「宝」は「貴重な品物。大切な財物。」を意味する語であり、無効請求商品との関係では、商品の品質を表すものではなく、十分に自他商品識別標識としての機能を果たすものであるのに対し、「麩」は「小麦粉から取り出したグルテン(麩素)を主材料とする食品。」の意味を有することから、無効請求商品との関係においては、対象となる商品の普通名称を表すものであるから、両語が所有を意味する格助詞「の」を介して「宝の麩」と表されても、該構成中の「宝」及び「TAKARA」の文字部分が独立して取引に資される場合があるものとみるのが相当であり、本件商標は、「宝」及び「TAKARA」の文字部分から、「タカラ」の称呼及び「貴重な品物。大切な財物。」の観念を生じるものというべきである。
他方、引用商標1は「宝」の文字及び引用商標6は「宝」の旧字体である「寶」を顕著に含むものであり、引用商標3は「TAKARA」及び引用商標5は「TaKaRa」の欧文字からなるものであるから、それぞれ「タカラ」の称呼及び「貴重な品物。大切な財物。」の観念を生じるものであり、本件商標と引用商標1及び6とは、その「宝」の漢字部分において外観を共通にするか又は旧字体か否かの違いであって近似し、本件商標と引用商標3及び5とは、その欧文字部分において一部に大文字と小文字の差があるものの、そのつづりを同じくすることから、外観を共通にするか近似するものである。
そうすると、本件商標と引用商標1、3、5及び6とは、外観が近似し、称呼及び観念を共通にする同一又は類似する商標というべきである。
また、引用商標2及び4は、それぞれ「タカラ」の片仮名からなるところ、これらと本件商標の「宝」の漢字部分及び「TAKARA」の欧文字部分とは文字種が異なるものの、特徴のない書体であることに加え、我が国の商取引においては、漢字からなる商標をその読みに対応した片仮名や欧文字で代替的に表記したり又はその逆にしたりすること、また、商標の構成文字を片仮名及び欧文字の相互に変更することが、一般に行われていることからすると、両者の外観における差異は、取引者、需要者に対して特段印象付けられるものではない。
そうすると、本件商標と引用商標2及び4とは、「タカラ」の称呼及び「貴重な品物。大切な財物。」の観念を共通にし、外観においても格別の差異を強く与えるとまではいえないことから、これらは相紛らわしい類似の商標というべきである。
そして、本件商標の無効請求商品である第30類「ふ,みそ汁・すまし汁の具として用いられるふ」は引用商標の指定商品中第30類「穀物加工品」に含まれる商品である。
以上からすると、本件商標と引用商標とは、互いに相紛れるおそれのある類似の商標であり、また、無効請求商品も引用商標の指定商品に含まれるものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)被請求人の主張について
ア 被請求人は、「宝の麩」の文字からなる登録第5047318号商標を保有し、適切に登録されているものであるから、本件商標も同様に無効事由には該当しない旨主張している。
しかしながら、該登録商標は、無効請求商品である第30類「ふ,みそ汁・すまし汁の具として用いられるふ」について商標登録されたものではないから、該登録商標の存在によって、上記判断が左右されるものではない。
イ 被請求人は、本件商標の構成中「宝の麩」の部分は、周知・著名商標であると主張している。
被請求人の提出に係る証拠によれば、被請求人は、「宝の麩」の文字からなる商標を無効請求商品に使用をし、被請求人のウェブサイト、テレビCM及び製品パンフレットにより広告宣伝していることが認められる。
しかしながら、上記広告宣伝について、テレビCMはいずれも本件商標の登録査定後のものであり、ウェブサイトの掲載日及び製品パンフレットの作成日は明らかではなく、また、「宝の麩」の文字からなる商標の使用をした商品の販売数量等の実績も不明である。
そうすると、「宝の麩」の文字からなる商標が本件商標の登録査定時において周知・著名であったものと認めることはできない。
ウ 被請求人は、請求人は不使用取消審判と勘違いされている余地があり、それは権利の濫用・誤用である旨主張している。
しかしながら、請求人は、審判請求書において、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当する旨並びに同法第46条第1項の規定によりその登録は無効とされるべきである旨、明確に主張し、その具体的な理由を記載するとともに証拠を提出しているものであるから、請求人が不使用取消審判と勘違いをして本件審判の請求をしたものとみる余地は見当たらない。
また、引用商標は、商標権として現に有効に存続しているものであって、当該権利を引用して本件審判を請求している以上、これをもって権利の濫用に当たると解することはできない。
エ 以上のとおり、被請求人の主張はいずれも採用できない。
3 本件商標の商標法第4条第1項第15号の該当性について
上記2のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、同項第15号の括弧書きの規定により、同項第15号に該当するとはいえない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号に基づき、その指定商品中、結論掲記の商品についての登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 本件商標


別掲2 引用商標6

審理終結日 2019-10-30 
結審通知日 2019-11-01 
審決日 2019-11-25 
出願番号 商願2016-23063(T2016-23063) 
審決分類 T 1 12・ 262- Z (W30)
T 1 12・ 271- Z (W30)
T 1 12・ 263- Z (W30)
T 1 12・ 261- Z (W30)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大島 康浩 
特許庁審判長 小出 浩子
特許庁審判官 木村 一弘
山田 啓之
登録日 2017-01-27 
登録番号 商標登録第5917935号(T5917935) 
商標の称呼 タカラノフ、タカラフ、タカラ 
代理人 特許業務法人みのり特許事務所 
代理人 木森 有平 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ