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審決分類 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W37
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W37
管理番号 1357862 
審判番号 無効2018-890057 
総通号数 241 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2020-01-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-07-23 
確定日 2019-12-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第5864577号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5864577号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5864577号商標(以下「本件商標」という。)は、「Android Care」の文字を標準文字で表してなり、平成27年12月18日に登録出願、同28年6月16日に登録査定、第37類「コンピュータハードウエア・コンピュータ周辺装置・コンピュータネットワーク用ハードウエアの保守・修理及び設置工事,コンピュータハードウエア・コンピュータ周辺装置・コンピュータネットワーク用ハードウエアの保守に関する助言」及び第42類「コンピュータハードウエア・コンピュータ周辺装置及びコンピュータソウトウエアに関連する問題解析のための技術的援助,インターネット・音声電気通信ネットワーク経由でのコンピュータハードウエア・コンピュータ周辺装置及びコンピュータソフトウエアに関連する問題解析のための技術的援助,コンピュータハードウエア・コンピュータ周辺装置・コンピュータソフトウエア及びコンピュータネットワークの性能及び機能の最適化を含むコンピュータ技術に関する助言」を指定役務として、同年7月8日に設定登録され、その後、登録異議の申立てにより、その指定役務中第37類「コンピュータハードウエア・コンピュータ周辺装置・コンピュータネットワーク用ハードウエアの保守・修理,コンピュータハードウエア・コンピュータ周辺装置・コンピュータネットワーク用ハードウエアの保守に関する助言」について商標登録を取り消すべき旨の決定がされ、その確定登録が同29年8月17日にされ、さらに、一部無効の審判の請求により、その指定役務中第42類「コンピュータハードウエア・コンピュータ周辺装置及びコンピュータソウトウエアに関連する問題解析のための技術的援助,インターネット・音声電気通信ネットワーク経由でのコンピュータハードウエア・コンピュータ周辺装置及びコンピュータソフトウエアに関連する問題解析のための技術的援助,コンピュータハードウエア・コンピュータ周辺装置・コンピュータソフトウエア及びコンピュータネットワークの性能及び機能の最適化を含むコンピュータ技術に関する助言」についての登録を無効とする旨の審決がされ、その確定登録が同31年2月8日にされているものであって、残存する指定役務は、第37類「コンピュータハードウエア・コンピュータ周辺装置・コンピュータネットワーク用ハードウエアの設置工事」のみである。

第2 引用商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由について、商標法第4条第1項第15号及び同第19号に該当するとして引用する商標は、以下のとおりであって、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第5554053号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:「ANDROID」(標準文字)
登録出願日:平成23年11月4日
優先権主張日:2011年(平成23年)5月9日 アルゼンチン共和国
設定登録日:平成25年2月1日
指定商品・役務:第11類、第16類、第28類、第35類、第38類、第41類及び第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務 2 登録第5544724号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:「アンドロイド」(標準文字)
登録出願日:平成24年7月10日
設定登録日:平成24年12月21日
指定役務:第35類、第38類及び第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務
3 登録第5527600号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲のとおりの構成
登録出願日:平成23年11月8日
優先権主張日:2011年(平成23年)5月9日 アルゼンチン共和国
設定登録日:平成24年10月12日
指定商品及び役務:第9類、第11類、第16類、第28類、第35類、第38類、第41類及び第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務
4 登録第5132404号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:「ANDROID」(標準文字)
登録出願日:平成19年11月9日
優先権主張日:2007年(平成19年)10月31日 アメリカ合衆国
設定登録日:平成20年4月25日
指定商品:第9類「電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具」
5 登録第5132405号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:「アンドロイド」(標準文字)
登録出願日:平成19年11月9日
設定登録日:平成20年4月25日
指定商品:第9類「電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具」
6 登録第5853597号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成:「ANDROID」(標準文字)
登録出願日:平成27年7月17日
優先権主張日:2015年(平成27年)2月23日 トンガ王国
設定登録日:平成28年5月27日
指定商品及び役務:第9類及び第36類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務
以下、これらをまとめて「引用商標」という。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第19号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 引用商標の周知・著名性について
引用商標は、請求人が、携帯電話用ソフトウェアプラットフォーム(携帯電話用プログラム)について使用し、日本及び世界において広く知られるに至っている著名商標である。
引用商標に係る「ANDROID(アンドロイド)」は、米国に本拠地をおき、全世界で事業を展開するIT関連企業であり、インターネット上で検索エンジン「Google(グーグル)」を提供している請求人が、規格団体のOHA(Open Handset Alliance)を通じて2007年(平成19年)11月5日(米国時間)に無償による提供を発表した、携帯電話向けのオープンソースライセンスによるソフトウェアプラットフォームの名称である(甲4)。
OHAは、「ANDROID(アンドロイド)」の普及のために請求人が中心となって世界の主要な携帯電話メーカーや通信事業者の33社と組んで設立した業界団体である。わが国の企業としては株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ、KDDI株式会社が設立当初より参加しており(甲4)、後にソフトバンクモバイル株式会社が参加している。
「ANDROID(アンドロイド)」は、2007年(平成19年)11月の発表と同時に世界中のモバイル業界で爆発的に話題となり、我が国を含む世界中のインターネットや業界誌等で大々的に取り上げられた(甲5)。
請求人は、OHAを通じて2007年(平成19年)11月12日(米国時間)に「ANDROID」のソフトウェア開発キット(SDK)の早期版を公開し、OHAのWebサイトなどを経由してダウンロードできるよう提供した(甲5)。また、請求人は、これと同時に「ANDROID」のアプリケーション開発コンテスト「Android Developer Challenge」の開催を発表した。
「ANDROID(アンドロイド)」は、ITの世界的企業であるグーグルが仕掛ける、携帯電話用ソフトウェアプラットフォームであり、さらにそれらが無償で提供され今日では一般的なものといえるまでに市場に浸透した「ケータイのパソコン化」を目指したものであったところから当初より大変注目を集め、IT関連誌や経済誌において「ANDROID(アンドロイド)」を取り上げた特集記事やコラムが多数発表されている(甲7)。
こうした記事やコラムが発表される中で、「ANDROID」は、請求人が提供する携帯電話の開発プラットフォームを表す用語として各種雑誌等に掲載されるようになり、着実に市場に浸透していった(甲8)。
さらには、「ANDROID(アンドロイド)」が使用される商品は、携帯電話やそのプログラムの中でも「スマートフォン」と呼ばれる商品群に属するものであるところ、先行する他社の製造、販売する「iPhone」及びそのソフトウェアプラットフォームである「iOS」に続き、外国製のスマートフォンを販売していたが、2009年11月に国内メーカーがソフトウェアプラットフォームに「ANDROID(アンドロイド)」を採用した高機能携帯電話(スマートフォン)を発表した(甲9)。
その後、ソフトウェアプラットフォームに「ANDROID(アンドロイド)」を採用したスマートフォンやタブレット型コンピュータは、着実に市場に浸透していき、「iPhone(ソフトウェア「iOS」)」を競合商品として人気を二分するまでになり、そのことが大変話題となって、実に多くの新聞、雑誌(IT関連誌や経済誌など)においてその話題が特集記事やコラムとして取り上げられた(甲10)。
スマートフォンが普及するにつれて、携帯電話全体の売上高におけるスマートフォンが占める割合が急速に高まっており、請求人の携帯電話プラットフォーム「ANDROID(アンドロイド)」を用いたスマートフォンの販売開始時期の関係で、他社製品「iPhone」を追随する形となっているが、年々シェアを高めてきている(甲11)。
2011年頃には、他社の携帯電話プラットフォームとして人気の高い「iPhone」用のソフトウェアプラットフォームである「iOS」を追い抜き、スマートフォンにおけるソフトウェアプラットフォームの代表格となった(甲12、甲13)。
また、オペレーションソフトウェア「Android」は、グーグル社の販売に係るタブレットPC「NEXUS7」(ネクサスセブン)に採択され、タブレット型コンピュータの急速な普及に相まってユーザーの間で大きな話題となり、その人気の高さから、携帯電話プラットフォーム「ANDROID(アンドロイド)」の利用方法や、「ANDROID(アンドロイド)」で使用可能なアプリケーションソフトウェアを紹介する書籍・雑誌が数多く出版されている(甲14)。
このように、本件商標の出願前から、「ANDROID(アンドロイド)」は請求人が開発し、無償で提供している携帯電話・タブレット型コンピュータ向けのオープンソースライセンスによるソフトウェアプラットフォームの名称として広く知られており、世界的な著名商標としての地位を獲得していた事実は疑いようがないのであり、本件商標の査定時においても継続してその著名性を維持していたと優に推認できるものである。
2 本件商標と引用商標の類似性について
(1)本件商標は、「Android Care」の文字からなるところ、これは既成語ではなく、「Android」と「Care」という、複数の文字を組み合わせた結合商標を構成するものである。
(2)本件商標の前半部をなす「Android」と後半部の「Care」は、その意味内容において、馴染まれた熟語的意味合いを有しているなど、密接あるいは自然な牽連性は全くなく、その他両者を常に一体のものとして把握されなければならない格別の事情も見当たらない。
むしろ、「Android」の文字が、請求人が長年にわたって使用を継続し、我が国において周知著名なものになっているという取引の実情にかんがみれば、本件商標の構成にあって、「Android」の部分こそが本件商標に接する取引者、需要者をして、脳裏に印象付けられるのであり、商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分である。
その余の「Care」の文字部分は、「心づかい。配慮。世話すること」等を意味する外来語「ケア」に通じる我が国で馴染まれた英語であり(小学館「デジタル大辞泉」)、商品・役務を提供するあらゆる業界において、商品の保守・修理、役務の技術的援助・インフラ構築(設置工事を含む)・助言サービスとの関係で「アフターケア」の言葉が普通に用いられているところである。
そうしてみると、本件商標の指定役務中の第37類「コンピュータハードウエア・コンピュータ周辺装置・コンピュータネットワーク用ハードウエアの設置工事」との関係では、単に役務の質(内容)を端的に示すために使用しているにすぎず、単に役務の質を普通に用いられる方法で表示するものであって、出所識別標識としての機能を果たすものではない。
したがって、本件商標の文字部分のうち「Care」の部分を除いた「Android」の部分が自他役務の識別標識としての機能を果たす要部である。
(3)これに対して、引用商標は、それぞれ「ANDROID」を普通に用いられる文字で表したものや、これをやや図案化したもの、又はこれを片仮名で表した「アンドロイド」の文字で構成されてなるところ、「ANDROID(アンドロイド)」の文字が、請求人によって長年にわたって使用を継続され、我が国において周知著名なものになっているという取引の実情にかんがみれば、引用商標からは構成文字に照応した「アンドロイド」の称呼とともに、「米国グーグル社の提供に係る、スマートフォン・タブレット型コンピュータ向けの実行環境」に関連する商品・役務を想起、連想する。
(4)そこで、本件商標と引用商標とを比較対照して観察すると、まず、本件商標は「Android(ANDROID)」の文字列を含んでいることが明らかであり、外観において、少なくとも引用商標1、3、4及び6と類似している。
また、本件商標のうち、「Android」の部分が需要者に対し出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部といえるのに対し、「Care」の部分が本件商標の指定役務との関係で、役務の質を表すものであって、自他役務の識別機能を有しないことに照らすと、本件商標は「アンドロイド」との称呼も生じるものといえる。したがって、本件商標の称呼も、引用商標の称呼「アンドロイド」と類似する。
そして、観念においても、本件商標は既成語ではなく、特定の観念を生じるとはいえないのであるが、請求人の周知・著名商標を含んでいるところから、「請求人である米国グーグル社の提供に係る、スマートフォン・タブレット型コンピュータ向けの実行環境」に関連する役務を想起、連想する点において、観念上も、引用商標と相当程度類似する。
(5)さらに、両者は、いずれも携帯電話・情報携帯端末・携帯型コンピュータ、並びに、それらに使用されるソフトウェアに関するサービスに使用される商標であるので、取引の実情に照らしても彼此紛れるおそれが極めて高いといえ、その上、いずれの商標の需要者も一般消費者を含むものであって、特別高い注意力をもって常に商標に接するとはいえない点をも考慮すれば、本件商標が引用商標と全体として類似していることは明らかであり、混同を生じさせるおそれが極めて高いものである。
3 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標と引用商標との類似性について
本件商標は「Android Care」の文字構成よりなるが、これは既成語ではなく、馴染まれた熟語的意味合いを有しないものであり、観念上、密接な牽連性を見いだすことができないものである。
むしろ、本件商標の構成に含まれる「Android」の文字が、我が国において周知・著名な商標であることにかんがみれば、これに接する需要者・取引者をして、本件商標が「Android」の文字を顕著に含むことを容易に理解させるだけでなく、これが強く印象付けられて特に注目される場合も少なくない。
よって、「米国グーグル社が発表した、スマートフォン・タブレット型端末向けの実行環境」に関連する商品との観念を生ずる場合もあり、少なくとも、「請求人である米国グーグル社の提供に係る、スマートフォン・タブレット型コンピュータ向けの実行環境」である「アンドロイド」を想起、連想するので、観念上も引用商標と類似する。
特に、本件商標は、引用商標1、3、4及び6との関係においては、構成文字の大部分をなす「Android(ANDROID)」の文字を共通にしており、外観上も紛れるおそれが高い。
よって、本件商標と引用商標の類似性は高いといわなければならない。
(2)引用商標の著名性及び独創性
引用商標に係る「ANDROID」又は「アンドロイド」の文字が、請求人の商標として、日本はもちろんのこと世界中で著名である事実は前述したとおりである。そして、その著名性は、携帯電話ソフトウェアプラットフォームの代表格として取り扱われている程高いものである(甲4?甲14)。
「ANDROID」又は「アンドロイド」は、「SFなどに登場する、高い知性をもつ人間型ロボット。ヒューマノイド。」の意をも有する既成語であって、造語商標ほどの独創性があるとまではいえないとしても、請求人の商標としてあまりにも著名であって、国語辞書において「(Android)2007年に米国グーグル社が発表した、スマートホン・タブレット型端末向けの実行環境。オペレーティングシステムのほか、ユーザーインターフェース、ブラウザー、動画や音声の再生機能などを含む。この実行環境を搭載した携帯電話はアンドロイド携帯と呼ばれる。」と掲載されているほどである(小学館「デジタル大辞泉」)。
しかも、引用商標の指定商品・指定役務との関係で何ら直接的に商品の品質等の内容を示唆するものではなく、このような文字を採択すること自体、高い顕著性を有しているのであり、十分に独創的であるといえる。
(3)本件商標と引用商標の指定商品の関連性の程度
本件商標の指定役務は、第37類「コンピュータハードウエア・コンピュータ周辺装置・コンピュータネットワーク用ハードウエアの設置工事」であるところ、以下に詳述するような、モバイル機器を取り扱う業界の取引実情に照らせば、請求人の事業とは関連性が極めて高く、また、取引者及び需要者の共通性も高いものであることが明らかである。
すなわち、引用商標「アンドロイド」及び「ANDROID」は、「携帯電話・タブレット型コンピュータ用のソフトウェアプラットフォーム(プログラム)」及び「(そのプログラムを記憶した)携帯電話・タブレットコンピュータ」との関係で周知又は著名なものとなっているが、これら商品は、本件商標の上記各指定役務との関係において、極めて密接な関係にある。
引用商標が使用される商品は、「携帯電話・タブレット型コンピュータ」や「携帯電話・タブレット型コンピュータ用のプログラム」であるところ、前記詳述したように、いわゆるスマートフォンと呼ばれる商品、タブレット型コンピュータに使用されるものであるが、スマートフォンはいわば小さなパソコンともいうべき商品であり、タブレット型コンピュータはコンピュータそれ自体である。そうして、スマートフォンは(携帯型)パソコンと比べてもはるかに小さく、携帯性に優れ、(携帯型)パソコンのように使用する場所・時間を選ばず、いつでも手軽に使用できるところから、急速に利用者数が増加しており、かつてパソコンが有していたシェアを大きく侵食している状況にある。
特に、パソコンが、アプリケーションソフトの利用・インターネットへの接続のための主要な端末であった時代を知らない若年層の間ではスマートフォンが「最も使用する機器」となっている(甲15)。
ところで、スマートフォンやタブレット型コンピュータは、「パーソナルコンピュータなみの機能をもたせた携帯型情報携帯端末であり、スマートフォンが通話機能を有する他、両者はウェブページの閲覧、インターネット上の各種サービスやビジネスアプリケーションの使用、音楽や動画などマルチメディアの利用など、多彩な機能をもち、さまざまなアプリケーションソフトウェアをインストールすることで、さらに機能強化が可能となっている、超小型精密電子機器である。
上記のような事情から、スマートフォンやタブレット型コンピュータは我が国において急速に普及することとなった。
ところが、スマートフォン等の普及にともない、従来型の音声通話による通信のみならず、インターネットによる通信を通じたウェブページの閲覧、インターネット上の各種サービスやビジネスアプリケーションの使用、音楽や動画などマルチメディアの音声ファイル、映像ファイルのダウンロード等に伴う、データ通信トラフィックが急激に増加していることは自明の事実である。そして、その勢いはとどまるところを知らず、通信事業者においても、通信事業の自由化は多くの新規通信事業者の参入・通信料の値下げ競争は激化の一途である。通信事業者各社は、一定量のデータ通信の定額制を導入するなど、ネットワーク環境の向上やそれに伴うネットワーク設備の設置工事は、通信事業者の大きな課題の一つである(甲16)。
また、企業における社内通信ネットワーク、電話網の構築においても、従業員が使用するスマートフォンやタブレット型コンピュータなどの移動式端末機器は従来よりも重要性が増しており、多くの事業者により、スマートフォンやタブレット型コンピュータと会社内のコンピュータ端末、サーバーコンピュータとの連携のため、ネットワーク構築・電話網構築のためのコンピュータハードウェア等の設置工事に係るサービスが提供されている(甲17)。
したがって、本件商標の上記指定役務は、引用商標が周知・著名となっている商品「携帯電話用のソフトウェアプラットフォーム(プログラム)」及び「(そのプログラムを記憶した)携帯電話」との関係では、いずれも「ソフトウェア(主に携帯型端末用のもの)」を対象とする点が共通しており、商品・役務の性質(質)において、密接な関連性がある。
してみると、本件商標の上記指定役務は、引用商標が周知・著名となっている商品「携帯電話用のソフトウェアプラットフォーム(プログラム)」及び「(そのプログラムを記憶した)携帯電話」との関係において、商品・役務の目的を共通にするなど、関連性が非常に高いといえる。
(4)需要者・取引者の共通性
本件商標の取引者・需要者は、紛れもなく、請求人の提供する携帯電話用のソフトウェアプラットフォーム「アンドロイド(ANDROID)」を採用した携帯電話・コンピュータの利用者となり、両商標の取引者・需要者は完全に同じとなる。
(5)取引の実情
上記(3)「本件商標と引用商標の指定商品の関連性の程度」で詳述したように、多くの事業者より、ネットワーク構築・電話網構築のためのコンピュータハードウェア等の設置工事に係るサービスの提供を行っている(甲17)。
また、請求人が提供する携帯電話・タブレット型コンピュータ用のソフトウェアプラットフォーム(プログラム)を備えた(そのプログラムを記憶した)携帯電話・タブレットコンピュータを製造、販売する電子機器メーカーにより、ITインフラの構築と維持管理のためのサービスが行われている事例があり(甲17)、また、その事業者による当該サービスの提供に際して、役務の内容を端的に表す「Care」の文字を用いた「lnfraCare」という商標を用いて提供されている(甲18)。
そうしてみると、請求人であるグーグル社とは何らの関係も有しない本件商標の商標権者により、グーグル社の周知・著名商標と同じ文字からなる「Android」に「Care」の文字を付加したにすぎない「Android Care」を用いて、「コンピュータハードウェア・コンピュータ周辺装置・コンピュータネットワーク用ハードウェアの設置工事」が提供された場合、あたかも、請求人であるグーグル社、あるいはその経済的・組織的に関連する会社により提供される、「ANDROID」プラットフォームをインストールした携帯電話・タブレット型コンピュータ用を端末装置として用いる通信ネットワーク網、社内用コンピュータネットワークシステムを構築するための、コンピュータハードウェア・コンピュータ周辺装置・コンピュータネットワーク用ハードウェアの設置工事に関するサービスであるかのごとく、誤認を生じさせるおそれがある。
(6)事業の多角化の可能性
請求人の提供に係る「ANDROID」は、通信事業者や携帯電話機メーカーが独自の機能を自由に組み込み可能なプラットフォームであり、それを請求人が無償提供し、スマートフォンやタブレット型コンピュータ等のモバイル製品メーカーが端末装置を自由に開発できる点を特色としてきた。
請求人は、ANDROIDのアプリケーションソフトウェアを利用した、遠隔地にいる従業員や、固定の座席をもたない従業員との通信にANDROIDプラットフォームを用いたスマートフォンやタブレット型コンピュータの利用を提唱している(甲19)。
してみると、事業多角化の一環として、請求人自らが企画・開発したモバイル端末に関連して、「コンピュータハードウェア・コンピュータ周辺装置・コンピュータネットワーク用ハードウェアの設置工事」又は、それに伴うソフトウェア面でのサポートを提供することも充分に考えられるというべきである。
(7)まとめ
以上の事情を総合的に勘案すれば、本件商標は、これに接する需要者・取引者に対して、引用商標を連想させて役務の出所について誤認を生じさせ、その登録を認めた場合には、引用商標の持つ顧客吸引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)や、その希釈化(いわゆるダイリューション)を招くという結果を免れない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれがある商標」に当たるというべきである。
4 商標法第4条第1項第19号について
引用商標が我が国の需要者間で広く知られた商標であること、さらに、本件商標がその著名な引用商標と類似する商標であることは、前記したとおりである。そこで、本件商標が不正の目的で使用されるものか否かが問題となる。
この点、請求人とは何らの関係を有しない他人が著名な引用商標と類似する本件商標を採択することは、本来自らの営業努力によって得るべき業務上の信用を、著名商標に化体した信用にただ乗り(フリーライド)することによって得ようとするものであり、同時に、著名商標「アンドロイド(ANDROID)」に化体した莫大な価値を希釈化させるおそれがある。
してみると、本件商標は不正の目的をもって使用をするものということができる。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
5 むすび
以上の理由により、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号に該当し、同法第46条第1項第1号により取り消されるべきものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、請求人の上記主張に対し、何ら答弁していない。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)「Android」の文字の周知性について
請求人の主張及びその提出に係る甲各号証によれば、以下の事実が認められる。
ア 「Android」の文字(以下「引用標章」という。)は、請求人が提供する「携帯情報端末向けのオープンソースライセンスによるソフトウェアプラットフォーム(以下『スマートフォン用プラットフォーム(プログラム)』という。)」の名称であり、2007年(平成19年)11月5日に米国において、請求人が中心となって設立した業界団体であるOHA(Open Handset Alliance)を通じて、無償で提供されることが発表され、その報道は、世界のモバイル業界で話題となり、引用標章が使用される「スマートフォン用プラットフォーム(プログラム)」について、IT関連分野の雑誌、経済誌、インターネット、一般紙を含めた様々なメディアを介して繰り返し報道され、特集記事が掲載された(甲4?甲7、甲8の1?4)。
イ 引用標章が主に使用される商品は、「スマートフォン」であり、2009年(平成21年)11月頃には、国内の携帯電話のメーカーが、請求人が提供する「スマートフォン用プラットフォーム(プログラム)」を採用したスマートフォンを発表し、市場に浸透し、新聞、雑誌などで取り上げられた(甲9の1及び2、甲10)。
ウ 2010年末には、携帯電話に占めるスマートフォンの販売台数構成比が48.1%に達し、「アンドロイド」を搭載した機種が、世界シェアの首位となり、2010年度のスマートフォンの国内出荷台数で、米アップルのiOSを使った「iPhone」を上回った(甲11の2、甲11の3、甲11の5)
エ 以上からすれば、引用標章は、本件商標の登録出願時(平成27年12月18日)には既に、我が国において、請求人の業務に係る「スマートフォン用プラットフォーム(プログラム)」を表示する商標として、取引者、需要者の間に広く認識され、その状態は本件商標の登録査定時(平成28年6月16日)においても継続していたものと認められる。
(2)本件商標と引用標章との類似性の程度について
本件商標は、上記第1のとおり、「Android Care」の文字からなるところ、その構成は、「Android」の語と「Care」の文字との間に一文字程度のスペースをもって表されていることからすれば、「Android」の語と「Care」の文字の2語からなることを認識するものであって、構成全体として特段の意味合いを想起しないものである。
そして、その構成中の「Android」の文字は、上記(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る「スマートフォン用プラットフォーム(プログラム)」を表示する標章として、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されている引用標章と同じ文字のつづりであることからすれば、本件商標に接する需要者は、該文字部分に特に着目して商標を記憶するものといい得るから、その構成中の「Care」の文字部分に比べ、「Android」の文字部分が、取引者、需要者に対して、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
そうすると、本件商標中、取引者及び需要者間に、強く支配的な印象を与える「Android」の文字部分と引用標章は、同一の文字からなるものであるから、本件商標と引用標章の類似性の程度は高いということができる。
(3)引用標章の独創性について
引用標章は、「SFに登場する、人間そっくりのロボット」(「広辞苑第7版」岩波書店発行)の意味を有する既成語であるとしても、スマートフォン用プラットフォーム(プログラム)との関係で何ら直接的に商品の品質等の内容を表すものではないことからすれば、独創性は高いとみるのが相当である。
(4)本件商標の指定役務と引用標章に係る商品「スマートフォン用プラットフォーム(プログラム)」との関連性について
「Android」は、コンピュータネットワークを通じて、通信及び情報の共有をすることができるスマートフォン用プラットフォーム(プログラム)であるところ、スマートフォンによる通信等をするためには、「コンピュータネットワーク用ハードウエア」は不可欠である。
そうすると、「スマートフォン用プラットフォーム(プログラム)」である「Android」は、「コンピュータネットワーク用ハードウエア」と密接な関連性があるといえ、ひいては、本件商標の指定役務中「コンピュータネットワーク用ハードウエアの設置工事」との関係においても、一定の関連性があるとみるのが相当である。
よって、本件商標の指定役務と、引用標章に係る商品「スマートフォン用プラットフォーム(プログラム)」は、一定の関連性を有する役務と商品の関係にあるということができる。
(5)本件商標と引用標章の需要者の共通性について
引用標章に係る商品「スマートフォン用プラットフォーム(プログラム)」の需要者は、携帯電話やスマートフォンを利用する一般需要者であるのに対し、本件商標の指定役務の需要者は、コンピュータ関連商品の設置工事に関係する者であることから、両者の需要者の共通性は低いというべきである。
(6)出所の混同のおそれについて
以上のとおり、本件商標と引用標章とは、類似性の程度は高く、引用標章は、本件商標の登録出願時には既に、我が国において、請求人の業務に係る「スマートフォン用プラットフォーム(プログラム)」を表示する標章として、取引者、需要者の間に広く認識され、その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたものと認められる。
また、引用標章は、その使用される商品「スマートフォン用プラットフォーム(プログラム)」との関係からすれば、独創性が高いものである。
さらに、本件商標の指定役務と、引用標章が使用される「スマートフォン用プラットフォーム(プログラム)」とは、一定の関連性を有するものである。
そうすると、本件商標は、これを本件商標権者が、その指定役務について使用をしたときは、これに接する取引者、需要者が、請求人が使用をする引用標章を想起又は連想し、該役務が請求人又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように誤認し、役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるものというべきである。
(7)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
2 商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標は、前述のとおり、引用商標と類似性が高く、引用標章が請求人の業務に係る商品についての商標として、その需要者間に広く知られるに至っているとしても、本件商標権者が本件商標を、不正の目的をもって使用をするものであると断ずべき明確な理由及び的確な証拠は見いだせない。
してみると、本件商標は、不正の目的をもって使用をするものはいい難く、商標法第4条第1項第19号に該当するものとは認められない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しないとしても、同第15号に該当するものであり、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(引用商標3)


審理終結日 2019-10-03 
結審通知日 2019-10-07 
審決日 2019-10-21 
出願番号 商願2015-124812(T2015-124812) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (W37)
T 1 11・ 222- Z (W37)
最終処分 成立 
前審関与審査官 堀内 真一 
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 鈴木 雅也
山田 正樹
登録日 2016-07-08 
登録番号 商標登録第5864577号(T5864577) 
商標の称呼 アンドロイドケア、アンドロイド、ケア 
代理人 石田 昌彦 
代理人 右馬埜 大地 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 田中 克郎 
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