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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
管理番号 1357060 
異議申立番号 異議2018-900342 
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-12-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-11-20 
確定日 2019-11-18 
異議申立件数
事件の表示 登録第6083093号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6083093号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6083093号商標(以下「本件商標」という。)は、「桜スカイホテル」、「サクラスカイホテル」及び「SAKURA SKY HOTEL」の文字を三段に表してなり、平成30年1月10日に登録出願、第43類「宿泊施設の提供」を指定役務として、同年9月3日に登録査定、同月21日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する登録商標は、以下の7件であり、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第3103765号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:「サクラホテル」
登録出願日:平成4年9月30日(特例商標)
設定登録日:平成7年12月26日
指定役務:第42類「宿泊施設の提供」
最新の更新登録日:平成28年1月26日
(2)登録第4860263号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:上段に「SAKURA HOSTEL」、下段に「サクラホステル」の文字を書した二段書き
登録出願日:平成16年9月14日
設定登録日:平成17年4月28日
指定役務:「宿泊施設の提供」ほか第43類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務
更新登録日:平成27年7月21日
(3)登録第6086596号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:別掲1のとおり
登録出願日:平成29年11月22日
設定登録日:平成30年10月5日
指定役務:「宿泊施設の提供」ほか第43類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務
(4)登録第6087210号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の構成:「SAKURA HOTEL」(標準文字)
登録出願日:平成29年11月10日
設定登録日:平成30年10月5日
指定役務:「宿泊施設の提供」ほか第43類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務
(5)登録第6094629号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の構成:上段に「SAKURA」、下段に「さくら」の文字を書した二段書き
登録出願日:平成30年1月24日
設定登録日:平成30年11月2日
指定役務:「宿泊施設の提供」ほか第43類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務
(6)登録第6094630号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成30年1月24日
設定登録日:平成30年11月2日
指定役務:「宿泊施設の提供」ほか第43類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務
(7)登録第6087417号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の構成:別掲3のとおり
登録出願日:平成30年1月26日
設定登録日:平成30年10月5日
指定役務:「宿泊施設の提供」ほか第43類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務
以下、引用商標1ないし引用商標7をまとめていうときは「引用商標」という。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標について、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標の指定役務は、引用商標の指定役務と同一である。また、引用商標1及び引用商標2は、本件商標の先願である。
本件商標は、「桜スカイホテル」(上段部分)、「サクラスカイホテル」(中段部分)及び「SAKURA SKY HOTEL」(下段部分)の三段書きの構成態様からなる結合商標であって、中段部分は下段部分の称呼を特定するために付記されたものと解するが、中段部分も下段部分も上段部分があることで、花の種類の意味を想起させる「桜」と、超高層ホテルの意味合いを想起させる「スカイホテル」と称呼を特定したものと解することができる。
そうすると、「桜」と「スカイホテル」を一体的に結びつける意味合いなど想起できず、また「桜」と「スカイホテル」は、書体が相違するため、該部分同士で分離すると看取し認識できる。
加えて、中段部分で本件商標の読みを特定していても、称呼音数が9音と冗長であるため、称呼上からも「桜」と「スカイホテル」は分離すると理解できる。
本件商標の上段、中段、下段の各部分の構成要素である「スカイ/SKY」、「ホテル/HOTEL」は指定役務との関係で「空を超す程高い建物」、「超高層ホテル」、「有料で宿泊と食事ができる施設」を意味するにすぎず、いずれも特段自他役務識別力が強いとは言い切れない(甲3)。
さらに、本件商標の上段部分及び中段部分の「スカイホテル」、下段部分の「SKY HOTEL」の語は、本件商標の指定役務の業界、すなわち、ホテルや宿泊施設の業界では、多くの同業者に好まれ自己の施設表示に当然のごとく採用されている実情がある。
このことは日本に限らず世界においても「SKY(スカイ)」や「SKY HOTEL(スカイホテル)」が自己の施設名として採用される傾向が強く、当該事業者においては独占適応性がない部分といっても過言ではない(甲4?甲6)。
ちなみに、「さくらスカイホテル(大阪)」(甲5の1)は、本件商標権者と関係のないホテル事業者によるもので、本件商標と同一名称のホテルが既に存在していることからも、この主張を根拠づけるものである。
また、本件商標の採択の経緯は、本件商標権者は、図形「桜の花びら」と漢字「桜」を構成要素とした商標を、本件商標の登録出願前に出願するも、上記引用商標1ないし6が拒絶理由として通知されたとたんに意見書等で反論もせずに、出願取下げを行った事実からも本件商標が引用商標と類似することが容易に理解できる(甲7)。
したがって、本件商標の構成部分である上段・中段・下段各部分の漢字「桜」、片仮名「サクラ」及び欧文字「SAKURA」の部分は取引者、需要者に対し、本件指定役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであり、片仮名「スカイホテル」、欧文字「SKY HOTEL」は、自他役務識別標識としての称呼及び特段の観念が生じないと認められるため、本件商標は、引用商標1及び2と類似し、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号及び同第19号について
申立人の商標の歴史は古く、平成4年頃より引用商標1を付した外国人向けの宿泊施設の提供を営んでいる。
特に、昨今では外国人トラベラーの日本観光が盛んになっていたことから、申立人は、諸外国からの多くの旅行者に対してリーズナブルで簡易な宿泊スペースを提供することで、より豊かな国際交流の可能性を追求すべく、本件商標の登録出願前より、池袋、日暮里、幡ヶ谷、浅草、神保町の東京都内5店舗で「宿泊施設の提供」を現在にわたり行ってきたものである。
引用商標に共通する「サクラ」、「SAKURA」、「桜」は、古くから申立人の宿泊施設に使用されてきたことに加え、外国人向けの簡易宿泊施設において、該文字の名称を採用する宿泊施設は全く存在していなかったことから引用商標の採択の一つとなったものである。
そして、現在も多くの需要者に申立人の引用商標を付した宿泊施設の提供を行っており、国内のみならず、これまで100か国以上の外国人に利用され高い名声を維持している。また、インターネットの普及により世界がより近いことになってきたことから、申立人の引用商標が付されたホテルは、海外でも著名になっており、多くの外国人から予約や問い合わせが殺到している。
さらに、申立人の引用商標が付されたホテル&ホステルでは、飲食物の提供を営んでおり、飲食店情報検索サイトでは、「サクラホテル○○周辺のお勧めレストラン」等と称して検索結果が確認できることから、申立人のホテル施設は、既にその地域のシンボル的存在になっていることも想起でき、加えて、テレビや新聞等でも引用商標が付された施設が話題になっており、これらの取材等を通じて業務上の信用が化体している(甲9)。
これらに対して、本件商標権者は、本件商標の登録出願前に、申立人の商業圏内において、わざわざ引用商標と紛らわしい商標を付してホテルビジネスを行っていた経緯があり、登録出願前から意図的に出所混同を惹起させ、申立人の高い名声にフリーライドするかのように事業展開を行っていたものである。
特に、申立人が調査したところ、平成29年11月7日付で、本件商標の登録出願前に、申立人の登録商標を模倣した商標を本件商標権者が使用していた事実を確認できたものである(甲10)。
そして、最近まで、「サクラホテル」を名乗っていたことから、申立人は、これらの不正行為を差し止めるべく、本件商標権者に再三警告を行ってきた経緯があり、さらに、本件商標権者は、本件商標の登録出願を行い、ホテル事業行為を継続していたことから、申立人は、本件商標権者を被告とした商標権等侵害訴訟を提起している(審理継続中)。
すなわち、本件商標は、登録出願前からこのような事情を抱えながら商標採択をされたもので、不正の意図をもって商標登録されたものであり、また、仮に類似関係になくとも、本件商標の登録時においても出所混同を生じさせていることから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号に該当するものである。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知著名性について
ア 申立人の提出した証拠(甲9)によれば、以下のことが確認できる。
(ア)申立人のホームページ
申立人は、事業内容をホテル業とし、1999年に設立され、ページの左上に花びら様の図形と「SAKURA」及び「HOTEL&HOSTEL」の二段書きの欧文字が赤色で表示されており、「ホテル所在地」として、「サクラホテル 日暮里」、「サクラホテル 池袋」、「サクラホテル 幡ヶ谷」、「サクラホテル 神保町」及び「サクラホステル 浅草」が記載されている。
また、申立人の「サクラホテル」がテレビ、雑誌等で紹介された旨が記載されている。
(イ)日本経済新聞(インターネットサイト:2010年12月16日)
「外国人客が9割のホテル その秘密」の見出しの下、「サクラハウスは『サクラホテル神保町』(1993年開設)、『サクラホステル浅草』(2006年開設)、『サクラホテル池袋』(07年開設)など都内4か所に低料金のホテルを所有・運営している。月間5000?6000人の旅行者が宿泊し、9割以上が海外からの旅行者という。」の記載がある。
(ウ)ライブドアニュース(2012年9月6日)
「日本にあって宿泊者がほぼ外国人のホテル」の見出しの下、「宿泊客の8?9割を海外からの客が占めるという宿が東京にある。その名はサクラホテル。」の記載がある。
(エ)「Sakura Hotel & Cafe in Japanese」(サクラホテル・サクラカフェ日本語ページ)
ページ左上に花びら様の図形及び「SAKURA HOTEL&CAFE」の欧文字が赤色で表示されている。
(オ)「matome.naver」のウェブサイト
「訪日外国人にお勧め!外国人が喜ぶリーズナブルなホテル・旅館」(更新日:2017年8月15日)の見出しの下、「【サクラホテル SAKURAHOTEL】」として「サクラホステル 浅草」、「サクラホテル 神保町」、「サクラホテル 幡ヶ谷」、「サクラホテル 池袋」が掲載されている。
(カ)その他
「グルメプレス」、「講談社BOOK倶楽部」、「ぐるなび」、「Retty」、「トリップアドバイザー」、「TABIZINE」及び「バスサガス」等のウェブサイトにおいて、「サクラカフェ」やサクラホテル周辺の飲食店等の紹介記事が掲載されている。
イ 周知著名性の判断
以上によれば、申立人は、ホテル業を行っており、少なくとも「サクラホテル/サクラホステル」及び「SAKURA HOTEL/SAKURA HOSTEL」の文字を宿泊施設の名称に採択し、また、申立人のホームページにおいて、引用商標3及び引用商標7の構成中の花びら様の図形及び文字とほぼ同一の図形及び文字を表示して、本件商標の登録出願時前から使用していることがうかがわれる。
しかしながら、申立人の宿泊施設は、東京都内に5店舗しかなく、申立人のホームページ及びブログに、テレビ取材を受けた旨の紹介はあるが、放映内容の詳細は不明で、引用商標がどのように紹介されたのかも不明であり、申立人の宿泊施設に係る宣伝広告、市場シェア等については、明らかにされていない。
また、申立人の宿泊施設周辺の情報を併せて紹介したものもあるが、いずれも単発的に記事が掲載されているにすぎず、相当の期間にわたって継続的に紹介されているものはない。
さらに、申立人が提出した証拠からは、引用商標1ないし引用商標4及び引用商標7が、「桜」、「さくら」、「サクラ」又は「SAKURA」と略称されている事情も見いだせない上、引用商標5及び引用商標6については、その使用事実も確認できない。
その他、引用商標の周知著名性を客観的に把握することができる証拠は見いだせないことから、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標について
本件商標は、前記1のとおり、「桜スカイホテル」、「サクラスカイホテル」及び「SAKURA SKY HOTEL」の文字を三段に横書きしてなるところ、該構成文字に相応して、「サクラスカイホテル」の称呼が生じるものといえる。
そして、本件商標は、ホテルの名称であることを理解させるものであるが、全体として具体的な意味合いを認識させるものとはいい難いことから、これに接する需要者は、本件商標の構成文字全体をもって、特定の意味合いを想起させることのないホテルの名称の一を表したものと理解するというのが相当である。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「サクラスカイホテル」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標について
引用商標中、本件商標の商標登録出願の日前の商標登録出願に相当するものは、引用商標1ないし引用商標4である。
(ア)引用商標1
引用商標1は、「サクラホテル」の片仮名からなるところ、該文字に相応して「サクラホテル」の称呼を生じるものであり、構成文字全体からホテルの名称であることを理解させるものであるが、具体的な意味合いを認識させるものとはいい難いことから、これより特定の観念は生じない。
(イ)引用商標2
引用商標2は、「SAKURA HOSTEL」の欧文字及び「サクラホステル」の片仮名を上下二段に横書きしてなるところ、下段の片仮名は、上段の欧文字の読みを特定したものと無理なく理解できるものであって、該構成文字に相応して「サクラホステル」の称呼を生じるものであり、構成文字全体からホステル(簡易宿泊所)の名称であることを理解させるものであるが、具体的な意味合いを認識させるものとはいい難いことから、これより特定の観念は生じない。
(ウ)引用商標3
引用商標3は、別掲1のとおり、5弁の花びら様の図形と「SAKURA HOTEL&HOSTEL」の欧文字を赤色で横一列に配してなるところ、図形部分と文字部分は、視覚上分離して看取できる上、常に一体のものとしてみなければならない格別な事情があるものとはいえず、それぞれが独立して識別標識としての機能を果たすものといえる。そして、図形部分は、桜の花弁を図案化したものとみることができるとしても、特定の称呼及び観念をもって親しまれた図形であるとはいい難く、これより特定の観念及び称呼は生じないというのが相当であって、引用商標3においては、その文字部分に相応して「サクラホテルアンドホステル」の称呼を生じるものであり、構成文字全体からホテルとホステルの名称であることを理解させるものであるが、具体的な意味合いを認識させるものとはいい難いことから、これより特定の観念は生じない。
(エ)引用商標4
引用商標4は、「SAKURA HOTEL」の欧文字からなるところ、該文字に相応して「サクラホテル」の称呼を生じるものであり、構成文字全体からホテルの名称であることを理解させるものであるが、具体的な意味合いを認識させるものとはいい難いことから、これより特定の観念は生じない。
ウ 本件商標と引用商標1ないし引用商標4との類否について
本件商標と引用商標1ないし引用商標4とを比較すると、両者は、上記ア及びイのとおりの構成からなるところ、外観においては、本件商標と引用商標1ないし引用商標4とは、「サクラ」及び「SAKURA」の文字を有する点において共通するものの、構成文字の全体及び態様において相違し、引用商標3との比較においては、図形及び色彩の有無という差異を有するものであるから、両者は、外観上、明確に区別できるものである。
次に、称呼においては、本件商標から生じる「サクラスカイホテル」の称呼と引用商標1ないし引用商標4から生じる「サクラホテル」、「サクラホステル」及び「サクラホテルアンドホステル」の称呼とは、その構成音、音数などが明らかに相違するものであるから、称呼上、明瞭に聴別できるものである。
そして、観念においては、いずれも特定の観念を生じないものであるから、比較することができない。
そうすると、両商標は、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において、明確に区別できるものであるから、これらを総合して判断すれば、両商標は、非類似の商標とみるのが相当である。
エ 申立人の主張について
申立人は、本件商標の構成中、「スカイホテル/SKY HOTEL」は、「空を超す程高い建物」、「超高層ホテル」を意味し、また、本件商標の指定役務の業界では、同業者に好まれ自己の施設表示に採用されている実情から独占適応性がない部分であり、「桜」、「サクラ」及び「SAKURA」の文字部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与える旨主張している。
しかしながら、「スカイホテル/SKY HOTEL」の文字が、超高層ホテルを意味するものであることを裏付ける証拠はない。
また、「スカイホテル/SKY HOTEL」の文字は、本件商標の指定役務に係る業界において、施設の名称の一部に使用されている例(甲5、甲6)があるとしても、該文字を除いた文字部分で略称されている等の事情は把握できず、それぞれのホテルは、その名称全体として認識され、他のホテルと区別されているとみるべきである。
そして、本件商標は、これを構成する各文字が、同じ書体、同じ大きさで、まとまりよく表されており、上記のとおり、構成文字全体としてホテルの名称を表したものと理解されるものであって、「桜」、「サクラ」及び「SAKURA」の文字部分が他の構成文字に比べて強く支配的な印象を与えるものとみることはできない。
したがって、申立人の主張は採用することができない。
オ 小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標1ないし引用商標4と非類似の商標であるから、指定役務の類否について判断するまでもなく、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標の周知著名性について
上記(1)イのとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る宿泊施設の提供を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識されていたとはいえない。
イ 役務の関連性、需要者の共通性について
本件商標と引用商標は、いずれも、「宿泊施設の提供」について使用をするものであるから、両者の役務は関連性を有するものであり、その取引者、需要者を共通にするものといえる。
ウ 引用商標の独創性について
引用商標は、その文字部分は、我が国において親しまれている「桜」(バラ科サクラ属の落葉高木または低木の一部の総称。日本の国花:広辞苑第六版(岩波書店))に通じる「サクラ」、「さくら」、「SAKURA」の文字、あるいは、これと「宿泊施設」、「簡易宿泊所」又は「飲食店」の意味を有する「ホテル/HOTEL」、「ホステル/HOSTEL」、「HOTEL&HOSTEL」又は「HOTEL&CAFE」の文字との結合であり、図形部分は花びら様の5片の花弁を図案化したにすぎず、格別特徴的な図形ということもできないから、その独創性はそれほど高いものとはいえない。
エ 本件商標と引用商標の類似性の程度について
上記(2)のとおり、本件商標と引用商標1ないし引用商標4は、非類似の商標であって、その印象が明らかに異なる別異の商標というべきものである。
また、引用商標5ないし引用商標7は、それぞれ、「『SAKURA』及び『さくら』の二段書き」、「四角形の輪郭内に『赤色に着色された花びら様の図形』と上下二段に表された『SAKURA』及び『サクラ』の文字との並記」及び「『赤色に着色された花びら様の図形』の下に赤色で『SAKURA HOTEL&CAFE』の文字を配置」した構成よりなるところ、引用商標5及び引用商標6からは、該構成文字に相応して、「サクラ」の称呼、「桜」の観念を生じ、引用商標7の構成文字からは、「サクラホテルアンドカフェ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものであり、引用商標6及び引用商標7の構成中の図形は、桜の花弁を図案化したものとみることができるとしても、特定の称呼及び観念をもって親しまれた図形であるとはいい難く、これより特定の観念及び称呼は生じないというのが相当である。
そうすると、本件商標と引用商標5ないし7とは、外観において、「サクラ」及び「SAKURA」の文字を有する点において共通するものの、全体の文字構成が相違し、引用商標6及び引用商標7との比較においては、図形の有無という差異を有し、外観上、明確に区別できるものである。
次に、称呼においては、本件商標から生じる「サクラスカイホテル」と引用商標5ないし引用商標7から生じる「サクラ」又は「サクラホテルアンドカフェ」の称呼とは、その構成音、音数などが明らかに相違するものであるから、称呼上、明瞭に聴別できるものである。
そして、観念においては、本件商標は特定の観念を生じないものであるから、両者は、観念上、紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標5ないし引用商標7は、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても紛れるおそれのない、非類似の商標とみるのが相当である。
したがって、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であり、類似性の程度は低いというべきである。
オ 出所混同のおそれについて
上記アないしエによれば、本件商標と引用商標は、使用をする役務及びその取引者、需要者を共通にするとしても、引用商標は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く知られているとはいえず、その独創性はそれほど高くない上、本件商標と引用商標は、明らかな差異を有する別異の商標である。
してみれば、本件商標をその指定役務に使用した場合、これに接する取引者、需要者が、引用商標を想起、連想して、該役務を申立人の業務に係る役務、あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第19号該当性について
引用商標は、上記(1)のとおり、申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く知られているとはいえず、本件商標と引用商標とは、上記(2)ウのとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第19号に該当するための要件を欠くものである。
また、商標権者が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的を持って本件商標を出願し、登録を受けたものと認めるに足りる具体的事実を見いだすこともできない。
そうすると、本件商標権者は、不正の意図をもって登録出願し、申立人の名声にフリーライドさせるなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
なお、申立人は、本件商標権者が「サクラホテル」を名乗っていたことから、その不正行為を差し止めるべく、本件商標権者に警告を行ってきた経緯がある旨主張しているが、本件商標と相違する「SAKURA HOTEL」に係る内容のものであり、その事情をもって、本件商標が不正の目的をもって使用するものと判断することはできないから、申立人の主張は採用できない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号のいずれにも該当するものではなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(引用商標3:色彩については原本参照。)

別掲2(引用商標6:色彩については原本参照。)

別掲3(引用商標7:色彩については原本参照。)


異議決定日 2019-11-08 
出願番号 商願2018-2380(T2018-2380) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W43)
T 1 651・ 222- Y (W43)
T 1 651・ 26- Y (W43)
最終処分 維持  
前審関与審査官 根岸 克弘 
特許庁審判長 冨澤 美加
特許庁審判官 山田 正樹
鈴木 雅也
登録日 2018-09-21 
登録番号 商標登録第6083093号(T6083093) 
権利者 株式会社みずほ
商標の称呼 サクラスカイホテル、サクラスカイ、サクラ、スカイ、エスケイワイ 
代理人 特許業務法人 松原・村木国際特許事務所 
代理人 水崎 慎 
代理人 高橋 克宗 
代理人 福田 伸一 

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