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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W25
管理番号 1357033 
異議申立番号 異議2018-900085 
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-12-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-04-06 
確定日 2019-10-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第6010765号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6010765号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第6010765号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成29年7月25日に登録出願,第25類「下着,靴下,保温用サポーター,バンド,ベルト,運動用特殊衣服」を指定商品として,同年12月25日に登録査定,同30年1月12日に設定登録されたものである。

第2 引用商標及び申立人使用商標
1 引用に係る登録商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,本件登録異議の申立ての理由において,本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標は,次のとおりであり(以下,それらをまとめて「引用商標」という。),いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
(1)登録第633578号商標(以下「引用商標1」という。)は,別掲2のとおりの構成からなり,昭和36年5月24日に登録出願,第17類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,同39年1月10日に設定登録,その後,平成16年12月22日に指定商品を第16類「紙製幼児用おしめ」,第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス」,第21類「家事用手袋」,第22類「衣服綿,ハンモック,布団袋,布団綿」,第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」及び第25類「被服」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(2)登録第1008267号商標(以下「引用商標2」という。)は,「ELLE」の文字を横書きしてなり,昭和46年3月25日に登録出願,第24類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,同48年4月9日に設定登録,その後,平成16年10月6日に指定商品を第9類「ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,運動用保護ヘルメット,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター」,第25類「運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。),乗馬靴」及び第28類「運動用具,釣り具」とする指定商品の書換登録がされたものである。
(3)登録第1793479号商標(以下「引用商標3」という。)は,「ELLE」の文字を横書きしてなり,昭和54年7月17日に登録出願,第21類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,同60年7月29日に設定登録,その後,平成18年1月4日に指定商品を第3類「つけづめ,つけまつ毛」,第8類「ひげそり用具入れ,ペディキュアセット,まつ毛カール器,マニキュアセット」,第10類「耳かき」,第14類「身飾品(「カフスボタン」を除く。),カフスボタン,貴金属製のがま口及び財布,宝玉及びその模造品,貴金属製コンパクト」,第18類「かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ」,第21類「化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。)」,第25類「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」及び第26類「腕止め,衣服用き章(貴金属製のものを除く。),衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。),衣服用バックル,衣服用ブローチ,帯留,ボンネットピン(貴金属製のものを除く。),ワッペン,腕章,頭飾品,ボタン類,造花(「造花の花輪」を除く。),つけあごひげ,つけ口ひげ,ヘアカーラー(電気式のものを除く。)」とする指定商品の書換登録がされたものである。
2 申立人使用商標
申立人が,本件登録異議の申立ての理由において,本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する標章は,「ELLE」の文字を別掲3のとおりの態様で表した構成からなるものである(色彩の異なるものを含む。以下「申立人使用商標」という。)。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第10号,同項第11号及び同項第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,取り消されるべきである旨申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第72号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 「ELLE」の文字を含む本件商標については,著名な商標「ELLE」と類似するものであることは明らかである。本件商標と引用商標とは,「エル」の称呼を共通にし,第25類の指定商品との関係において,「ファッションブランドのELLE」という相紛らわしい観念が生じる類似の商標である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 本件商標がその指定商品について使用された場合,本件商標に接する取引者・需要者は,本件商標から,これと類似する著名な商標である引用商標を容易に想起・認識し,申立人又はこれに関連する者の業務に係る商品であるかのごとく,その出所について混同して認識するおそれは高いというべきである。
本件商標の登録が維持されると,申立人と何ら関係のない者により,申立人の意図とは無関係に,申立人が現にその商標を付して使用している商品及び提供している役務とその取引者層・需要者層を同一にする商品に係る小売等役務について,引用商標と類似する商標,すなわち本件商標が自由に使用されてしまうことになる。その結果として,劣悪な品質の商品が引用商標と類似する商標によって提供されるという事態が生じ得ることも否定できない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当する。
3 商標法第4条第1項第10号該当性が認められないとしても,申立人の著名な商標である「ELLE」を含む本件商標は,他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標に該当する。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 取消理由の通知
当審において,本件商標権者に対し,「本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから,同法第43条の3第2項の規定により,その登録を取り消すべきものである。」旨の取消理由を令和元年5月16日付けで通知した。

第5 商標権者の意見
本件商標権者は,上記第4の取消理由の通知に対して,何ら意見を述べていない。

第6 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)申立人使用商標の周知著名性について
ア 証拠及び申立人の主張並びに職権調査によれば,以下のとおりである。
(ア)申立人は,女性向けファッション雑誌「ELLE」を始め各種雑誌を発行し,同時にファッション関連商品などの製造販売や紹介を行うフランスの企業である(甲3)。
同雑誌「ELLE」には,衣料品・身の回り品・化粧品・家具・食器等,世界的に有名なファッションブランドの商品に関する記事を女性向けに多数掲載されている。
そして,我が国において,昭和57年(1982年)に株式会社マガジンハウスが雑誌「ELLE」の日本版として雑誌「ELLE japon(エル・ジャポン)」を発行した(甲7)。以後,雑誌「ELLE japon(エル・ジャポン)」の出版は,株式会社ハースト婦人画報社により承継され,月刊誌として登録出願時(平成29年7月25日)及び登録査定時(同年12月25日)まで継続して発行されていた(甲7?10,52ほか)。
(イ)雑誌「ELLE japon(エル・ジャポン)」の表紙の上部には,申立人使用商標が表示されている(甲7?10,52,ほか)。
(ウ)雑誌「ELLE japon(エル・ジャポン)」の発行部数は,平成11年(1999年)頃が22.8万部,同26年(2014年)頃が9.4万部であった(甲8,10の2)。
(エ)申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者(以下,ライセンシーを含め「申立人ら」という。)は,昭和62年(1987年)頃から登録出願時及び登録査定時においても,継続して被服,ハンカチ,バッグ,眼鏡,食器,傘,テニスシューズ,リストバンドなどファッション関連商品など多種の商品を販売している(甲13?20,22?43,52?54)。
(オ)申立人のライセンシーの数は平成28年(2016年)11月現在で27社,同29年(2017年)11月現在で31社,その取扱商品は,婦人服及び服飾雑貨,パジャマ及び下着,眼鏡類,バッグ,靴下類,靴,帽子など多種に及んでいる(職権調査及び甲67,68)。
(カ)また,申立人らが販売する各商品,及びその広告の多くには申立人使用商標が表示されている(甲7?10,13?16,ほか)。
(キ)「ELLE」の文字を含む標章を付した商品の売上げは,平成27年(2015年)が65億9000万円,同28年(2016年)が56億6300万円,同29年(2017年)が47億5800万円に達する(職権調査及び甲63の1?65の29)。
イ 上記アの事実からすれば,申立人使用商標は,申立人の発行する雑誌及び申立人らが被服などのファッション関連商品について使用する商標として,本件商標の登録出願時には,既に我が国において取引者,需要者の間に広く認識されていたものというべきであり,その状態は,本件商標の査定時においても継続していたというのが相当である。
(2)本件商標と申立人使用商標との類似性の程度
ア 本件商標
本件商標は,別掲1のとおり,上段に「ELLEROSE」の文字,中段に「STYLE」の文字と「人の下肢」のシルエット及び「UP」の文字,下段に小さく「BODY SHAPE WEAR」の文字を3段に横書きしてなるところ,構成が分離していることに加え,各段に表された文字の大きさ及び書体の相違並びに図形の有無等から,それぞれが視覚上分離して看取されるものである。
そして,「ELLEROSE」の文字,「STYLE」の文字と「人の下肢」のシルエット及び「UP」の文字並びに「BODY SHAPE WEAR」の文字が,観念的に密接な関連性を有しているともいい難く,一連一体となった何かしらの称呼が生じるともいえないことから,3段に表された部分に称呼及び観念上のつながりはなく,それぞれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえない。
また,その構成中の「STYLE UP」の文字が「スタイルをよくする」ほどの意味合いを看取させることから,「人の下肢」のシルエットと「STYLE UP」の文字部分全体は,指定商品との関係において,スタイルをよくすることと人の下肢を印象づけるものであり,「BODY SHAPE WEAR」の文字部分は,別掲4によれば「体型補正機能のある商品」ほどの意味合いを認識させることから,いずれの文字部分も自他商品の識別機能は弱い部分といえる。
そうすると,本件商標は,その構成中「ELLEROSE」の文字部分が独立して自他商品識別標識としての機能を果たすものといえる。
そして,「ELLEROSE」の文字部分についてみると,「ELLE」及び「ROSE」が,「彼女」,「バラの花」の意味をそれぞれ有するフランス語として知られていることからすれば,当該文字部分は「ELLE」と「ROSE」の2語が結合されたものと理解されるものであって,とりわけ冒頭の「ELLE」の文字部分は,指定商品との関係においては,上記(1)イのとおり,「ELLE」の文字からなる申立人使用商標が需要者の間に広く認識されているものであることからすれば,本件商標に接する取引者,需要者は,その構成中上段に,かつ語頭に位置する「ELLE」の文字部分に着目することが少なくないものといえる。
そうすると,本件商標は,構成中の「ELLE」の文字部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであって,該文字部分を抽出し,他人の商標と比較することが許されるものといえる。
してみれば,本件商標は,その構成中,「ELLE」の文字部分に相応し,「エル」の称呼をも生じ,「(申立人らのブランドとしての)ELLE」の観念を生じるものである。
イ 申立人使用商標
申立人使用商標は,別掲3のとおり,「ELLE」の文字からなり,該文字に相応し「エル」の称呼を生じるものである。
そして,上記(1)イのとおり,「ELLE」の文字からなる申立人使用商標が需要者の間に広く認識されているものであることからすれば,「(申立人らのブランドとしての)ELLE」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と申立人使用商標との類似性の程度について
本件商標の要部である「ELLE」の文字部分と申立人使用商標とは,書体が相違するとしても,そのつづりが同一であって,外観が近似し,「エル」の称呼及び「(申立人らのブランドとしての)ELLE」の観念を共通にするから,両商標の類似性の程度は高いものといえる。
(4)本件商標の指定商品と申立人らの業務に係る商品との関連性並びに商品の取引者及び需要者の共通性について
本件商標の指定商品は,上記第1のとおり,「下着,靴下,保温用サポーター,バンド,ベルト,運動用特殊衣服」であるところ,「下着,靴下,保温用サポーター,バンド,ベルト」は人が身につける衣料品であり,「運動用特殊衣服」はスポーツをする際に身につける特殊な衣服であって,いずれも人が身につけるものである。そして,下着,靴下,バンド,ベルトは,ファッションの一環として着用されることもあり,本件商標の指定商品の需要者は一般の消費者のほかにスポーツを行う者も含まれるといえ,本件商標の指定商品は,主に衣料品売場やスポーツ用品売場で販売されるものである。
他方,申立人らの業務に係る商品(雑誌「ELLE」及び被服などファッション関連商品)は,ファッション関連商品として使用されるものであり,その主な需要者は,ファッションに関心の高い一般消費者であるといえ,雑誌は書店を始めスーパー等でも販売されるものであり,被服などファッション関連商品は衣料品売場及び雑貨売場で販売されるものである。
以上のことからすれば,「下着,靴下,保温用サポーター,バンド,ベルト,運動用特殊衣服」及び「申立人らの業務に係る商品(雑誌「ELLE」及び被服などファッション関連商品)」は,いずれも人が身につけたり,ファッションとして用いられる関連の商品であるといえる。
そうすると,本件商標の指定商品と申立人らの業務に係る商品とは,相当な部分において取引者,需要者を共通にするといえることから,関連性を有する商品といえるものである。
(5)出所の混同を生ずるおそれについて
上記(1)イのとおり,申立人使用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人らの業務に係る商品を表すものとして,我が国のファッション関連分野の需要者の間に広く認識されていたものである。また,上記(3)のとおり,本件商標と申立人使用商標との類似性の程度は高いものといえる。
そして,本件商標の指定商品と申立人らの業務に係る商品とは,上記(4)のとおり,関連性を有し,それらの取引者,需要者も共通にする場合が多いといえることを併せ考慮すれば,本件商標をその指定商品について使用した場合には,これに接する需要者は,周知著名となっている申立人使用商標を連想,想起し,該商品が申立人ら又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認し,その出所について混同を生じるおそれがあるものというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
2 まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから,同法第43条の3第2項の規定により,その登録を取り消すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲1 本件商標


別掲2 引用商標1


別掲3 申立人使用商標


別掲4 「BODY SHAPE WEAR」の片仮名表記である「ボディシェイプウェア」又は「ボディシェイプ」の文字の使用例
(1)株式会社ワコールのウェブサイトにおいて,「ビヨンセも愛用/アメリカのボディシェイプウェアのトップブランド/『SPANX(スパンクス)』日本上陸」の見出しの下,「株式会社ワコールは,アメリカのボディシェイプウェア(体型補整機能商品)のトップブランド「SPANX(スパンクス)」商品の発売を2011年4月13日から順次開始します。」の記載がある。
(https://www.wacoalholdings.jp/news/newsfile/49542_1.pdf)
(2)「Amazon Fashion」のウェブサイトにおいて,「uxcell ボディーシェイプウェア 補整下着 女性用 セクシー 花のフロント オープンバスト しっかりコントロール」の見出しの下に,「しっかりコントロールできる補正下着を着れば,お腹を小さくして,脂肪を締め付けて,セクシーな体型を作る。」の記載がある。
(https://www.amazon.co.jp/uxcell-%E3%83%9C%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BC-%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%83%97%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%A2-%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%97%E3%83%B3%E3%83%90%E3%82%B9%E3%83%88-%E3%81%97%E3%81%A3%E3%81%8B%E3%82%8A%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%AB/dp/B072Q3NGML)
(3)「式会社ZOZOテクノロジーズ」のウェブサイトにおいて,「[補正下着]ボディシェイプ補正インナー【CHUU】」の見出しの下,「アイテム説明」の項に「補整力抜群インナーがスリムなボディラインをサポート!伸縮性の優れた素材の採用で,毎日ラクに着用できます。」の記載がある。
(https://wear.jp/item/4324080/ )

異議決定日 2019-08-29 
出願番号 商願2017-98416(T2017-98416) 
審決分類 T 1 651・ 271- Z (W25)
最終処分 取消  
前審関与審査官 高橋 謙司 
特許庁審判長 小出 浩子
特許庁審判官 平澤 芳行
木村 一弘
登録日 2018-01-12 
登録番号 商標登録第6010765号(T6010765) 
権利者 株式会社エル・ローズ
商標の称呼 エルローズスタイルアップ、エルローズ、スタイルアップ、アップ、ボディシェープウエア、ボディシェープ、シェープウエア、シェープ 
代理人 稲垣 朋子 
代理人 竹中 陽輔 
代理人 達野 大輔 
代理人 中山 真理子 
代理人 川崎 好昭 

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