ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 117 |
---|---|
管理番号 | 1356947 |
審判番号 | 取消2018-300579 |
総通号数 | 240 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2019-12-27 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2018-07-30 |
確定日 | 2019-10-24 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2165531号の2商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第2165531号の2商標(以下「本件商標」という。)は、「ACE」の欧文字を横書きしてなり、昭和59年3月28日に登録出願され、第17類「被服、布製身回品」を指定商品として、平成元年8月31日に設定登録されたものであるが、その後、同29年2月14日に分割移転がなされた結果、本件商標の指定商品は、第17類「指定商品である被服,布製身回品の内、寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,キャミソール,ティーシャツ,アイマスク,エプロン,えり巻,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆いを除く他の全ての指定商品」となったものである。 なお、平成11年8月24日及び同21年8月11日に商標権の存続期間の更新登録がされているものである。 そして、本件審判の請求の登録は、平成30年(2018年)8月10日にされている。 また、本件審判請求の登録前3年以内の期間である平成27年(2015年)8月10日から同30年(2018年)8月9日までの期間を、以下、「要証期間」という。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標の指定商品である第17類「指定商品である被服,布製身回品の内、寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,キャミソール,ティーシャツ,アイマスク,エプロン,えり巻,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆いを除く他の全ての指定商品」(以下これを「請求に係る指定商品」という。)について登録を取り消す、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証(以下、証拠については、「甲1」のように表す。)を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品について、本件商標の商標権者によって継続して3年以上日本国内において使用されておらず、現在も使用されている事実は見いだせない。 加えて、商標登録原簿において、通常使用権及び専用使用権の設定登録がなされておらず、使用権者が使用していることも考えられない(甲2)。 したがって、本件商標はその請求に係る指定商品について、商標法50条1項の規定により取り消されるべきものである。 2 答弁に対する弁駁 (1) 乙1及び乙4について 乙1の写真に写り込んでいる手袋の袋には、「Safety Working」と記載されており、何らかの作業に用いる安全手袋であることは推測できるが、当該手袋と、乙3の物品受領書及び乙4の得意先取引明細照会との関係が不明である。 また、透明な包装袋及び橙色のヘッダーに付されているデザイン文字部分は、複数本の線が組み合わされたデザイン性の高い構成となっており、語頭の文字は「A」か「R」か判別しづらい態様であることから、一般的な書体からなる本件商標「ACE」の「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」には該当しない。 (2) 乙3、乙5及び乙6について 乙5の写真に写り込んでいる手袋の袋には、「Safety Working」と記載されており、何らかの作業に用いる安全手袋であることは推測できるが、当該手袋と、乙3の物品受領書及び乙6の得意先取引明細照会との関係が不明である。 また、透明な包装袋及び橙色のヘッダーに付されているデザイン文字部分は、複数本の線が組み合わされたデザイン性の高い構成となっており、語頭の文字は「A」か「R」か判別しづらい態様であることから、一般的な書体からなる本件商標「ACE」の「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」には該当しない。 (3) 乙7ないし乙9について 乙7の写真に写り込んでいる手袋と被請求人との関係が不明であり、当該手袋と乙8の納品書(控)及び乙9の商品取引明細照会との関係も不明である。 また、当該手袋及びその包装袋に内封されているエフに付されているデザイン文字部分は、複数本の線が組み合わされたデザイン性の高い構成となっており、語頭の文字は「A」か「R」か判別しづらい態様であることから、一般的な書体からなる本件商標「ACE」の「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」には該当しない。 また、片仮名部分についても、エフには「エースゴム 工手」と表示されており、使用されているのは「エース」ではなく「エースゴム」であることから、同片仮名部分は、本件商標を片仮名文字に変更した社会通念上同一の商標とはいえない。 (4) 乙10ないし乙12について 乙10の写真に写り込んでいる手袋と被請求人との関係が不明であり、当該手袋と乙11の納品書(控)及び乙12の商品取引明細照会との関係も不明である。 また、当該手袋及びその包装袋に内封されているエフに付されているデザイン文字部分は、複数本の線が組み合わされたデザイン性の高い構成となっており、語頭の文字は「A」か「R」か判別しづらい態様であることから、一般的な書体からなる本件商標「ACE」の「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標」には該当しない。 また、片仮名部分についても、エフには「エースゴム 工手」と表示されており、使用されているのは「エース」ではなく「エースゴム」であることから、同片仮名部分は、本件商標を片仮名に変更した社会通念上同一の商標とはいえない。 以上より、本件商標が被請求人により要証期間内に指定商品の一について使用されたことは、被請求人提出の各証拠からは認めることができない。 第3 被請求人の主張 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙1ないし乙24を提出した。 1 審判事件答弁書(平成30年9月28日付け)の内容 (1) 本件商標の使用の要点 被請求人である本件商標の商標権者は、要証期間内に、その請求に係る指定商品中「家事用手袋」について、本件商標と社会通念上同一認められる商標を使用している。 (2) 本件商標の使用の事実 ア 被請求人について 被請求人(本件商標権者)である小野商事株式会社(以下「小野商事」という。)は、家事用手袋等の販売のときに、カタログの裏表紙に示すとおり「エースグローブ本舗」の名称を使用している(乙2)。 イ 使用に係る商品 溶接作業等の耐熱作業用途に使用される家事用手袋である商品名「溶接床5本指」(乙1)、同商品名「溶接床3本指」(乙5)、一般作業・土木・建設・機械・鉱山・漁業・農業・林業での作業時に使用される家事用手袋である商品名「ゴムエ手25」(乙7)及び同商品名「ゴムエ手40」(乙10)が、本件商標の使用に係る「家事用手袋」である。 これら家事用手袋のうち「溶接床5本指」及び「溶接床3本指」は、譲渡の際に透明な包装袋に封入され、橙色のヘッダーを付けられている。また、「ゴムエ手25」及び「ゴムエ手40」は、譲渡の際に橙色のエフとともに透明な包装袋に封入されている。 ウ 商標の使用 「溶接床5本指」及び「溶接床3本指」が封入された透明な包装袋及び橙色のヘッダーに、本件商標の書体を変更した社会通念上同一である英大文字商標「ACE」を付している(乙1及び乙5)。 上記透明な包装袋の下方には、製造販売元を示す「TOKYO SETAGAYA エースグローブ本舗」と3段書きで表示されており、上記橙色のヘッダーにおいて取付時裏側で表示される部分には「エースグローブ本舗」と表示されている。 また、「ゴムエ手25」及び「ゴムエ手40」の本体甲側手元に本件商標の書体を変更した社会通念上同一である英大文字商標「ACE」を付している。併せて、当該手袋が封入された透明な包装袋に内封されている橙色のエフに、本件商標の書体を変更した社会通念上同一である英大文字商標「ACE」及び本件商標を片仮名に変更した社会通念上同一の片仮名商標「エース」を付している(乙7及び乙10)。 エ 商品の販売の事実 (ア) 「溶接床5本指」について 乙3は、株式会社ドンキホーテ(以下「ドンキホーテ社」という。)が発行した、平成30年7月24日、同月20日、同月18日、同年6月22日、同月9日付けの物品受領書(控)、乙4は、小野商事の得意先取引明細照会であり、これらにより、乙1に係る「家事用手袋」がそれぞれ小野商事からドンキホーテ社に譲渡されたこと、同29年(2017年)3月13日から現在まで継続してドンキホーテ社に譲渡していることがわかる。 (イ) 「溶接床3本指」について 乙3(2頁と5頁)は、ドンキホーテ社が発行した平成30年7月20日及び同年6月9日付けの物品受領書(控)、乙6は、小野商事の得意先取引明細照会であり、これらにより、乙5に係る「家事用手袋」がそれぞれ小野商事からドンキホーテ社に譲渡されたこと、同29年(2017年)6月30日から現在まで継続してドンキホーテ社に譲渡していることがわかる。 (ウ) 「ゴムエ手25」について 乙8の納品書(控)に示すとおり、「ゴム工手25」の家事用手袋を、小野商事から平成30年6月29日ミドリ安全用品株式会社に、同年6月8日京葉ミドリ株式会社に、同年6月1日株式会社フクヨシにそれぞれ譲渡した。 乙9の商品取引明細照会に示すとおり、小野商事は「ゴム工手25」の家事用手袋を、平成29年(2017年)3月3日より現在まで継続して譲渡している。 (エ) 「ゴムエ手40」について 乙11の納品書(控)に示すとおり、「ゴム工手40」の家事用手袋を、小野商事から平成30年7月4日有限会社シモダ商店に、同年6月29日有限会社ワークショップやまとに、同月26日福島ミドリ安全株式会社(郡山)、クロノ株式会社、名古屋吉田株式会社、株式会社丸保繊維(池袋)に、同年6月7日あんぜん意匠株式会社に、同年6月1日に中国産業株式会社、イシイ株式会社に譲渡した。 乙12の商品取引明細照会に示すとおり、小野商事は、「ゴム工手40」の家事用手袋を平成29年(2017年)3月2日より現在まで継続して譲渡している。 オ まとめ 以上のとおり、被請求人(本件商標権者)である小野商事は、要証期間内に日本国内において、請求に係る指定商品中の「家事用手袋」に本件商標と社会通念上同一の英大文字商標を付し、更に、上記「家事用手袋」の包装に本件商標と社会通念上同一の英大文字商標を付し、あるいは、包装に内封されているエフに本件商標と社会通念上同一の英大文字商標及び本件商標「ACE」を片仮名に変換した社会通念上同一の片仮名商標を付し、譲渡している。 したがって、被請求人は審判請求登録前3年以内に日本国内において、本件商標を請求に係る指定商品中の一の商品に使用している。 2 審判事件答弁書(令和元年7月3日付け)の内容 商標法第50条第2項の規定による被請求人の証明について、審判事件答弁書の内容についての釈明及び更なる主張立証を求めた令和元年6月14日付け審尋に対し、被請求人は同年7月3日付け答弁書において、以下のとおり回答している。 (1) 本件商標と英語大文字商標の社会通念上同一性について 乙1、乙5、乙7及び乙10で表された英大文字商標は、多少図案化したロゴ文字商標であっても3文字と字数が少なく、しかも「ACE」は日本人に馴染みのある英語であり、容易に「ACE」の文字を認識できるから、本件商標と自他商品識別標識としての実質的な差異はなく、本件商標と社会通念上の同一である。 また、「ゴム工手」は商品名を普通に用いられたものであって識別力がなく、「エース」の片仮名部分のみが分離されて商標として看取、認識されるのであるから、乙7及び乙10で表された片仮名の商標は、本件商標の英大文字「ACE」を片仮名文字「エース」に変更して同一の称呼及び観念が生じる商標であって、本件商標と社会通念上同一の商標と解すべきである。 (2) 「ゴム工手」について 「ゴム工手」は、ゴム製の耐アルカリ・耐酸で、消毒、清掃、水仕事等の用途に主に用いられる家事用手袋の内のー品種の商品名であって、家事用手袋を扱う業界において広く用いる。「ゴム工手」が商品名であることは、「グーグル」の検索ページで「ゴム工手」と検索すると、中部物産貿易株式会社、ホーケン、コクゴ等多くの業者が「ゴム工手」という商品を扱っていることがリストアップされることからも明らかである(乙13)。被請求人においても、カタログ(乙2の11頁の上から5段目左から4列目及び上から6段目左端)に示すとおり、商品名として表示している。 よって、乙7及び乙10で表された「エースゴム工手」は、商標「エース」と、商品名「ゴム工手」が連続的に表示されたものと解するのが自然であるから、乙7及び乙10で表された片仮名の商標は、本件商標の英大文字「ACE」を片仮名「エース」に変更して同一の称呼及び観念が生じる商標であり、本件商標と社会通念上同一の商標と解すべきである。 (3) 被請求人のホームページについて 被請求人のホームページにおいて、ホーム画面の左上に片仮名商標「エース」が付され、家事用手袋を含む商品ラインナップ画面の内の一画面中、家事用手袋が表示されている画面の左上に、片仮名商標「エース」が付され、家事用手袋の広告がされている。 被請求人のホームページは、平成28年9月28日からリニューアルの検討を開始し、現在使用されているリニューアル後のホームページの画面は、同29年2月15日に修正が終了し、アップロードされている。 よって、被請求人である小野商事は、本件請求に係る指定商品中の家事用手袋に関する広告を内容とする情報に、本件商標「ACE」の英大文字の表示を片仮名に変更して同一の称呼及び観念が生じる社会通念上同一の片仮名商標「エース」を付して電磁的方法により提供している(乙14ないし乙21)。 (4) 「ゴム引き手袋」について 被請求人は、家事用手袋の一品種である商品名「ゴム引き手袋」が封入された半透明な包装袋の上部中央に、片仮名商標「エース印」を付している(乙22)。当該商品は、被請求人の商品カタログ(乙2)の11頁の上から5段目左から3列目に掲載されている商品と同一であるから、被請求人である小野商事は、本件商標の英大文字「ACE」を片仮名に変更した同一の称呼及び観念が生じる商標「エース」を商品の包装に付している(乙2及び乙22)。 (5) 乙1の写真の手袋と乙3及び乙4の書類との関係について 乙23は、乙1の右側のヘッダーの拡大写真であり、バーコードの上側の「AGO51Y 溶接用床革手5本指」の表示は、乙3及び乙4の書類に表示されている商品「溶接床5本指」と同一であるから、乙1の写真の手袋と乙3及び乙4の書類との関係は明確である。 また、乙2のカタログ5頁の上から2段目中央に「AGO51Y 溶接床5本指」が掲載されている。 よって、被請求人は、本件商標と社会通念上同一である英大文字商標「ACE」を商品の包装に付したものを譲渡(乙1ないし乙4及び乙23)、及び本件商標と社会通念上同一である英大文字商標「ACE」を商品の包装に付した(乙1、乙2及び乙23)。 (6)乙5の写真の手袋と乙3及び乙6の書類との関係について 乙24は、乙5の左側のヘッダーの拡大写真であり、バーコードの上側の「AGO31Y 溶接用床革手3本指」の表示は、乙3及び乙6の書類に表示されている商品「溶接床3本指」と同一であるから、乙5の写真の手袋と乙3及び乙6の書類との関係は明確である。 また、乙2のカタログ5頁の上から2段目左端に「AGO31Y 溶接床3本指」が掲載されている。 よって、被請求人は、本件商標と社会通念上同一である英大文字商標「ACE」を商品の包装に付したものを譲渡(乙2、乙3、乙5、乙6及び乙24)及び本件商標と社会通念上同一である英大文字商標「ACE」を商品の包装に付した(乙2、乙5及び乙24)。 (7) 乙7の写真の手袋と乙8及び乙9の書類との関係について 乙7の写真に示されている手袋は、乙2のカタログ11頁の上から5段目右端に掲載されている商品と外観が同一であり、商品名「ゴム工手」も同一であるから、乙7の写真の手袋は、被請求人が取り扱っている商品名「ゴム工手」の手袋であることは明らかである。 乙7の写真に示されている手袋は、乙8及び乙9の書類に表示されている商品「ゴム工手」であり、乙7の写真の手袋と乙8及び乙9の書類との関係は明確である。 よって、被請求人は、本件商標と社会通念上同一である英大文字商標「ACE」を商品に付したものを譲渡し、並びに本件商標の英大文字「ACE」を片仮名「エース」に変更した同一の称呼及び観念が生じる商標「エース」を商品の包装に付したものを譲渡した(乙1、乙2、乙5、乙7ないし乙9及び乙13)。 また、被請求人は、本件商標と社会通念上同一である英大文字商標「ACE」を商品に付し、並びに本件商標の英大文字「ACE」を片仮名「エース」に変更した同一の称呼及び観念が生じる商標「エース」を商品の包装に付した(乙1、乙2、乙5、乙7及び乙13)。 (8) 乙10の写真に示されている手袋は、乙2のカタログ11頁の最下段左端に掲載されている商品と外観が同一であり、商品名「ゴム工手」も同一であるから、乙10の写真の手袋は、被請求人が取り扱っている商品名「ゴム工手」の手袋であることは明らかである。乙10の写真に示されている手袋は、乙11及び乙12の書類に表示されている商品「ゴム工手」であり、乙10の写真の手袋と乙11及び乙12の書類との関係は明確である。 よって、被請求人は、本件商標と社会通念上同一である英大文字商標「ACE」を商品に付したものを譲渡し、並びに本件商標の英大文字「ACE」を片仮名「エース」に変更した同一の称呼及び観念が生じる商標「エース」を商品の包装に付したものを譲渡した(乙1、乙2、乙5、乙10ないし乙13)。 また、被請求人は、本件商標と社会通念上同一である英大文字商標「ACE」を商品に付し、並びに本件商標の英大文字「ACE」を片仮名「エース」に変更した同一の称呼及び観念が生じる商標「エース」を商品の包装に付した(乙1、乙2、乙5、乙10及び乙13)。 (9) まとめ 以上のことから、被請求人は、審判請求登録前から現在まで本件商標を継続して日本国内で使用している。 第4 当審の判断 1 被請求人の主張及びその提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。 (1) カタログについて 乙2は、「Safety Working Glove Product List vol.3」と題する作業用手袋製品等の商品カタログであり、裏表紙中央下部には「エースグローブ本舗」及びURLアドレスの記載とともに、「小野商事株式会社」の文字及び東京都世田谷区の住所が記載されている。また、同裏表紙右下隅には、2014.09の記載がある。そして、当該法人名及び住所は、本件商標権者の名称及び住所と一致する。 そうすると、乙2は、本件商標権者である小野商事が2014年9月に発行した、作業用手袋製品等を内容とするカタログであると認められる。 当該カタログの11頁の上から5段目右端には、茶色の手袋の写真とともに「AG880 ゴム工手25cm」の記載があり、また、同頁の上から6段目左端に、茶色の手袋の写真とともに「AG885 ゴム工手45cm」の記載がある。 (2) 「ゴム工手」について 被請求人の主張によれば、「ゴム工手」は、ゴム製の耐アルカリ・耐酸で、消毒、清掃、水仕事等の用途に主に用いられる手袋の内のー品種の商品名であって、当該手袋を扱う業界において広く用いられている(乙13)。 なお、被請求人も、カタログ(乙2)において、商品名として「ゴム工手」を用いている。 (3) 「ゴムエ手25」について ア 乙7は、茶色の手袋及び透明な袋にエフとともに包装された茶色の手袋の写真であり、手袋の甲の下端に白線でデザイン化された「ACE」の文字(以下「デザイン化されたACE文字」という。)を内包する横長長方形、また、橙色のエフには、「デザイン化されたACE文字」の下に「エースゴム工手」及び「#No25」が表示され、水平に引かれた二重線の下には、「用途」として、「一般作業、土木、建設、機械、鉱山、漁業、農業、林業」の記載がある。 そうすると、乙7は「エースゴム工手#No25」とする商品の写真であり、それら商品は、一般作業、土木、建設、機械、鉱山、漁業、農業及び林業に用いる手袋であるから、当該商品は「作業用手袋」と認められる。以下、当該「作業用手袋」を「ゴム工手25」という。 そして、乙7の写真に示されている「作業用手袋」(ゴム工手25)は、小野商事に係る商品カタログ(乙2)11頁の上から5段目右端に掲載されている商品と外観が同一であり、商品名「ゴム工手」も同一であるから、乙7の写真の「作業用手袋」(ゴム工手25)は、小野商事が取り扱っている商品名「AG880 ゴム工手25cm」の手袋であると見て差し支えない。 イ 乙8は、小野商事が発行した納品書(控)である。 乙8中の伝票番号1078683は、2018年(平成30年)6月29日付けでミドリ安全用品株式会社宛てであり、1行目の品番・品名の欄には「AG880 ゴム工手 25」の記載、数量50双、単価及び金額がそれぞれ記載され、右隅には二名の押印がある。 乙8中の伝票番号1072607は、2018年(平成30年)6月8日付けで京葉ミドリ株式会社宛てであり、3行目の品番・品名の欄には「AG880 ゴム工手 25」の記載、数量10双、単価及び金額がそれぞれ記載され、右隅には二名の押印がある。 乙8中の伝票番号1070400は、2018年(平成30年)6月1日付けで株式会社フクヨシ宛てであり、2行目の品番・品名の欄には「AG880 ゴム工手 25」の記載、数量10双、単価及び金額がそれぞれ記載され、右隅には二名の押印がある。 そして、乙8に表示された品番・品名の「AG880 ゴム工手 25」は、上記乙2のカタログに示された表示と略一致する。 ウ 以上のことから、小野商事は、2018年(平成30年)6月29日にミドリ安全用品株式会社に50双、同月8日に京葉ミドリ株式会社10双及び同月1日に株式会社フクヨシに10双の作業用手袋「ゴム工手25」を、それぞれ納品(譲渡)したものと認められる。 (4) 「ゴムエ手40」について ア 乙10は、茶色の手袋及び透明な袋にエフとともに包装された茶色の手袋の写真であり、手袋の甲の下端に「デザイン化されたACE文字」を内包する横長長方形、また、橙色のエフには、「デザイン化されたACE文字」の下に「エースゴム工手」及び「#40」が表示され、水平に引かれた二重線の下には、「用途」として、「一般作業、土木、建設、機械、鉱山、漁業、農業、林業」の記載がある。 そうすると、乙10は「エースゴム工手#40」とする商品の写真であり、一般作業、土木、建設、機械、鉱山、漁業、農業及び林業に用いる手袋であるから、当該商品は「作業用手袋」と認められる。以下、当該「作業用手袋」を「ゴム工手40」という。 そして、乙10の写真に示されている「作業用手袋」(ゴム工手40)は、小野商事に係る商品カタログ(乙2)11頁の上から6段目左端に掲載されている商品と外観が同一であり、商品名「ゴム工手」も同一であるから、乙7の写真の「作業用手袋」(ゴム工手40)は、小野商事が取り扱っている商品名「AG885 ゴム工手45cm」の手袋であると見て差し支えない。 イ 乙11は、小野商事が発行した納品書(控)である。 乙11中の伝票番号1079978は、2018年(平成30年)7月4日付けで有限会社シモダ商店宛てであり、1行目の品番・品名の欄には「AG885 ゴム工手 40」の記載、数量10双、単価及び金額がそれぞれ記載され、右隅には二名の押印がある。 乙11中の伝票番号1078682は、2018年(平成30年)6月29日付けで有限会社ワークショップやまと宛てであり、1行目の品番・品名の欄には「AG885 ゴム工手 40」の記載、数量20双、単価及び金額がそれぞれ記載され、右隅には二名の押印がある。 乙11中の伝票番号1077597ないし107600は、2018年(平成30年)6月26日付けで、それぞれ株式会社丸保繊維(池袋)、名古屋吉田株式会社、福島ミドリ安全株式会社(郡山)及びクロノ株式会社宛てであり、1行目の品番・品名の欄には「AG885 ゴム工手 40」の記載、数量、単価及び金額がそれぞれ記載され、右隅には二名の押印がある。 乙11中の伝票番号1072244は、2018年(平成30年)6月7日付けであんぜん意匠株式会社宛てであり、1行目の品番・品名の欄には「AG885 ゴム工手 40」の記載、数量20双、単価及び金額がそれぞれ記載され、右隅には二名の押印がある。 乙11中の伝票番号1070212及び1070209は、2018年(平成30年)6月1日付けで中国産業株式会社及びイシイ株式会社宛てであり、1行目の品番・品名の欄には「AG885 ゴム工手 40」の記載、数量、単価及び金額がそれぞれ記載され、右隅には二名の押印がある。 そして、乙11に表示された品番・品名の「AG885 ゴム工手 40」は、上記乙2のカタログに示された表示と略一致する。 ウ 以上のことから、小野商事は、2018年(平成30年)7月4日に有限会社シモダ商店に10双、同6月29日に有限会社ワークショップやまとに20双、同月26日に株式会社丸保繊維(池袋)、名古屋吉田株式会社、福島ミドリ安全株式会社(郡山)及びクロノ株式会社にそれぞれ50双、10双、5双及び10双、同月7日にあんぜん意匠株式会に20双、同月1日に中国産業株式会社及びイシイ株式会社に30双、40双の作業用手袋「ゴム工手40」を、それぞれ納品(譲渡)したものと認められる。 2 上記1で認定した事実を総合すると、以下のとおり判断することができる。 (1) 本件商標と本件使用商標の同一性について ア 本件商標について 本件商標は、「ACE」の欧文字を表してなるところ、当該文字は、「エース(トランプ・さいころの1の札)」(リーダーズ英和辞典 (株)研究社)の意味を有する英語として我が国で親しまれているものであるから、これより「エース」の称呼及び「エース(トランプ・さいころの1の札)」の観念が生じるものである。 イ 本件使用商標について 「ゴム工手25」及び「ゴム工手40」の作業用手袋(以下「使用商品」という。)と共に透明な袋に包装された橙色のエフには、「エースゴム工手」(乙7、乙10)の文字を横書きした標章が表されているところ(以下「本件使用商標」という。)、その構成中の「エース」の文字部分、は「エース」と発音し、「エース(トランプ・さいころの1の札)」の意味を有する英語「ACE」の読みを表したものと容易に理解できる。これに対し、その構成中の「ゴム工手」の文字部分は、上記1(2)のとおり「ゴム製の耐アルカリ・耐酸で、消毒、清掃、水仕事等の用途に主に用いられる手袋」を表す語として、当該手袋の分野で使用されているものであって、使用商品との関係においては商品の普通名称を表示するにすぎないものである。 そうすると、本件使用商標は、構成各語の直接的な観念上のつながりもないため、「エース」の文字部分が、自他商品の識別標識として独立して表記されてなるとの印象を観念上与えるものである。 してみれば、本件使用商標は、その構成中の「ゴム工手」の文字部分が、使用商品との関係において、自他商品の識別標識としての機能を有するとはいえず、語頭に表された「エース」の文字部分が、使用商品に係る出所識別標識としての機能を果たし得るというべきである。 そして、本件使用商標は、当該「エース」の文字部分から「エース」の称呼及び「エース(トランプ・さいころの1の札)」の観念が生じる。 ウ 本件商標と本件使用商標の同一性 上記ア及びイを踏まえて、本件使用商標のうち、出所識別標識としての機能を果たし得る部分として把握される「エース」の文字部分を、本件商標「ACE」と比較すると、両者は欧文字と片仮名という文字種の相違はあるものの、「エース」の称呼及び「エース(トランプ・さいころの1の札)」の観念をいずれも共通するものであることから、本件使用商標は、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標である。 したがって、本件使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。 (2) 使用商品について 使用商品は、上記(1)のとおり、「作業用手袋」であるから、請求に係る指定商品に含まれるものと認められる。 そして、使用商品と共に透明な袋に包装された橙色のエフには、本件使用商標が表されているから、使用商品の包装(エフ)に本件使用商標が付されていたといえる。 (3) 使用者及び使用時期について 本件商標権者である小野商事は、包装に本件使用商標を付した使用商品「ゴム工手25」を、2018年(平成30年)6月29日にミドリ安全用品株式会社に50双、同月8日に京葉ミドリ株式会社10双及び同月1日に株式会社フクヨシに10双を、それぞれ譲渡したものと認められる。 また、本件商標権者である小野商事は、包装に本件使用商標を付した使用商品「ゴム工手40」を、2018年(平成30年)7月4日に有限会社シモダ商店に10双、同年6月29日に有限会社ワークショップやまとに20双、同月26日に株式会社丸保繊維(池袋)、名古屋吉田株式会社、福島ミドリ安全株式会社(郡山)及びクロノ株式会社にそれぞれ50双、10双、5双及び10双、同月7日にあんぜん意匠株式会に20双、同月1日に中国産業株式会社及びイシイ株式会社に30双及び40双を、それぞれ譲渡したものと認められる。 したがって、本件使用商標の使用者は、本件商標権者であり、その使用時期はいずれも要証期間内である。 (4) 小括 以上によれば、要証期間において、本件商標の商標権者である小野商事は、請求に係る指定商品中の「作業用手袋」の包装に、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる本件使用商標を付したものを譲渡したものということができ、かかる行為は、商標法第2項第3項第2号にいう「商品の包装に標章を付したものを譲渡する行為」に該当する。 3 まとめ 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標権者が、本件審判の請求に係る指定商品について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をした事実を証明したものと認めることができる。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2019-08-14 |
結審通知日 | 2019-08-16 |
審決日 | 2019-09-12 |
出願番号 | 商願昭59-31365 |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Y
(117)
|
最終処分 | 不成立 |
特許庁審判長 |
木村 一弘 |
特許庁審判官 |
山田 啓之 小出 浩子 |
登録日 | 1989-08-31 |
登録番号 | 商標登録第2165531号の2(T2165531-2) |
商標の称呼 | エイス、エース、エイシイイイ |
代理人 | 特許業務法人三枝国際特許事務所 |
代理人 | 長島 繁樹 |