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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない W0941
審判 全部無効 観念類似 無効としない W0941
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W0941
審判 全部無効 外観類似 無効としない W0941
管理番号 1356938 
審判番号 無効2018-890056 
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-07-20 
確定日 2019-10-21 
事件の表示 上記当事者間の登録第6035322号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第6035322号商標(以下「本件商標」という。)は,「大三国志」の文字を標準文字で表してなり,平成29年6月14日に登録出願,第9類「コンピュータ用ゲームソフトウェア,ダウンロード可能な携帯電話用のゲームプログラム,インターネット経由でダウンロード可能なコンピュータゲーム用プログラム,業務用テレビゲーム機用プログラム,携帯型電子端末用ゲームソフトウエア,携帯用液晶画面ゲーム機用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,ゲームに関する電子出版物,その他の電子出版物,アニメーションを内容とする記録済み媒体及び動画ファイル,バーチャルリアリティゲーム用ソフトウエア」及び第41類「オンラインゲームの提供,インターネット又はその他の通信ネットワークによる電子ゲームの提供,ゲーム大会の企画・運営又は開催,オンラインゲーム大会の企画・運営又は開催,ゲームに関する知識の教授及び訓練,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),娯楽施設の提供,オンラインによる電子出版物の提供(ダウンロードできないものに限る。),オンラインによる仮想現実ゲームの提供」を指定商品及び指定役務として,同30年3月29日に登録査定され,同年4月13日に設定登録されたものである。

第2 参加の申請
本件審判については,平成30年8月10日付けで株式会社コーエーテクモゲームスから参加申請書(請求人側への参加)の提出があり,当審において,同31年1月9日付けで当該参加の申請を許可する旨の決定を行った。

第3 引用商標
請求人が引用する商標は次のとおりであり(以下,それらをまとめて「引用商標」という。),いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
1 登録第2535359号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 三国志
指定商品 「電子計算機,ワードプロセッサ,電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・CD-ROM・ROMカートリッジ・光ディスク・DVD・磁気ディスク・磁気テープ・磁気カード・磁気カートリッジ,電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品」を含む第9類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 昭和61年4月25日
設定登録日 平成5年5月31日
書換登録日 平成16年12月22日
2 登録第4555279号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 三國志 (標準文字)
指定役務 「コンピュータネットワークを介したゲーム・音楽の演奏・映画の上映に関する情報の提供,コンピュータネットワークを介したゲーム・音楽の演奏・映画用映像・音声の提供,移動体電話による通信を用いたゲーム・映像・音楽又は音声の提供,コンピュータネットワークを介した教育情報の提供,インターネットによる知識の教授,技芸・スポーツ又は知識の教授,図書及び記録の供覧,娯楽施設の提供,ゲームショーの企画・運営又は開催,テレビゲームイベントの企画・運営又は開催」を含む第41類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成12年12月18日
設定登録日 平成14年3月29日
3 登録第1692034号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様 三国志
指定商品 「家庭用テレビゲームおもちゃ,家庭用ビデオゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させたROMカートリッジ・磁気テープ・磁気カード・磁気ディスク・その他の記憶媒体,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路・CD-ROM・その他の記憶媒体,レコード」を含む第9類及び「おもちゃ,人形,遊戯用カード,トレーディングカードゲーム用カード」を含む第28類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 昭和56年8月18日
設定登録日 昭和59年6月21日
書換登録日 平成17年7月6日
4 登録第4363510号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様 三國志曹操伝 (標準文字)
指定商品 第9類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成10年9月14日
設定登録日 平成12年2月25日
5 登録第4607586号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の態様 三國志戦記 (標準文字)
指定商品 第9類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成13年9月20日
設定登録日 平成14年9月27日
6 登録第4698131号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の態様 三國志英傑伝 (標準文字)
指定商品 第9類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成14年12月18日
設定登録日 平成15年8月8日
7 登録第4710522号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の態様 三國志BattleField (標準文字)
指定役務 第41類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成14年3月28日
設定登録日 平成15年9月19日
8 登録第4720111号商標(以下「引用商標8」という。)
商標の態様 三國志Online (標準文字)
指定役務 第41類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成14年10月1日
設定登録日 平成15年10月24日
9 登録第4740416号商標(以下「引用商標9」という。)
商標の態様 三國志 撃天 (標準文字)
指定商品 第9類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成15年3月31日
設定登録日 平成16年1月16日
10 登録第4849907号商標(以下「引用商標10」という。)
商標の態様 三國志戦記 (標準文字)
指定役務 第41類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成16年7月13日
設定登録日 平成17年3月25日
11 登録第4854486号商標(以下「引用商標11」という。)
商標の態様 Mobile三國志 (標準文字)
指定役務 第41類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成16年7月13日
設定登録日 平成17年4月8日
12 登録第5408563号商標(以下「引用商標12」という。)
商標の態様 100万人の三國志 (標準文字)
指定役務 第41類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成22年10月13日
設定登録日 平成23年4月22日
13 登録第5715865号商標(以下「引用商標13」という。)
商標の態様 三國志レギオン (標準文字)
指定商品及び指定役務 第9類及び第41類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
登録出願日 平成26年6月3日
設定登録日 平成26年11月7日
14 登録第5807380号商標(以下「引用商標14」という。)
商標の態様 妖怪三国志 (標準文字)
指定商品及び指定役務 第9類,第16類,第28類及び第41類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
登録出願日 平成27年4月8日
設定登録日 平成27年11月20日
15 登録第5830286号商標(以下「引用商標15」という。)
商標の態様 三國志ぱたぱた (標準文字)
指定商品及び指定役務 第9類及び第41類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務
登録出願日 平成27年9月28日
設定登録日 平成28年2月26日
16 登録第5840537号商標(以下「引用商標16」という。)
商標の態様 俺たちの三國志 (標準文字)
指定役務 第41類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成27年11月27日
設定登録日 平成28年4月8日

第4 請求人の主張
請求人は,本件商標の登録は無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第36号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから,同法第46条第1項第1号に基づき,その登録は無効とされるべきである。
2 具体的な理由
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標の構成
(ア)本件商標は「大三国志」の漢字4文字より構成されている(甲1)。
この4文字のうち後方の3文字「三国志」については,「二十四史の1つ。魏・呉・蜀三国の正史。65巻。魏を正統王朝とする。西晋の陳寿撰。」(甲2)とあるように,ある固有の歴史書の名称である。この「三国志」の語は,本件商標の指定商品,役務の分野において普通に用いられている語ではないことは自明である。
したがって,本件商標中「三国志」の語の部分は十分な識別力を有する。
(イ)「大」の文字については,「おおきいこと,おおきいもの,おおきさ。最上級のもの。程度の甚だしいこと,おおいに。美称また敬称として用いる。」(甲3)とあり,一般の需要者に意味が容易に理解される基本的な語である。この語は「大ピンチ」,「大ヒット」,「大冒険」などの語に見られるように,後に続く名詞の程度・規模・大きさなどが甚だしいことを示す修飾語,又は「大英帝国」のように後に続く名詞についての美称と容易に理解され,日本語では識別力が非常に低い語であるといえる。
したがって本件商標は,「大」と固有名詞である「三国志」の2つの部分に分けられ,それぞれ称呼,観念が生じる。
よって,本件商標は,「ダイサンゴクシ」又は「サンゴクシ」の称呼を生じると共に,単に「(大きな)三国志」といった観念を生ずる。
イ 引用商標の構成及び識別力
引用商標1ないし3は,「三国志」又は「三國志」の文字よりなるものであるから,旧字体の使用はあるものの明確に印象が相違するほどのものではなく,「サンゴクシ」の称呼,歴史書「三国志」といった観念を生ずるものである(甲4)。
引用商標1ないし3は,コンピュータゲームの草創期に,請求人の発意と創意工夫により初めて実現された「歴史シミュレーションゲーム」の代表的なタイトルの1つである(甲5)。それまで歴史書「三国志」を題材としたゲームは存在しなかった。
また,それまでは単なる短期の戦闘を題材としたゲームが多く,引用商標に係る製品のように,多数の登場人物,内政,計略,外交などの要素を盛り込んだゲームは初めてのものであり(甲6),これが大ヒットとなった。
その後30年以上も継続して13作品ものシリーズが制作され,累計800万本以上を販売するほどとなり(甲7),さらに派生製品も大ヒットするなど(甲8),引用商標1ないし3(なお,引用商標3について請求人は使用許諾を得ている。)はきわめて周知著名であり,数多くの固定ファンを有し,現在も極めて高い識別力を有している。
ウ 指定商品及び指定役務
本件商標の指定商品及び指定役務中,第9類「コンピュータ用ゲームソフトウェア,ダウンロード可能な携帯電話用のゲームプログラム,インターネット経由でダウンロード可能なコンピュータゲーム用プログラム,携帯型電子端末用ゲームソフトウェア,バーチャルリアリティゲーム用ソフトウェア,携帯用液晶画面ゲーム機用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,バーチャルリアリティゲーム用ソフトウェア」及び第41類「オンラインゲームの提供,インターネット又はその他の通信ネットワークによる電子ゲームの提供,オンラインによる仮想現実ゲームの提供,ゲーム大会の企画・運営又は開催,オンラインゲーム大会の企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),ゲームに関する知識の教授及び訓練,オンラインによる電子出版物の提供(ダウンロードできないものに限る。),アニメーションを内容とする記録済み媒体及び動画ファイル」は,引用商標1ないし3の指定商品及び指定役務と重複又は類似している。
エ 類否
上記のように,本件商標は「大三国志」の文字よりなり,「大」の文字については識別力が弱く,「ダイサンゴクシ」又は「サンゴクシ」の称呼,「(大きな)三国志」といった観念を生ずる。また引用商標1ないし3は,「三国志」又は「三國志」の文字よりなり,「サンゴクシ」の称呼,「三国志」といった観念を生ずるものである。
本件に近い事例に係る審決例(甲9)に照らしても,本件商標と引用商標1ないし3は類似と判断されるのが妥当である。
したがって,本件商標と引用商標1ないし3とは,識別力の強い「三国志」の称呼,観念を共通にしており,相紛らわしい類似の商標であるといえる。また,指定商品及び役務も同一又は類似である。
オ 取引の実情
(ア)引用商標は,コンピュータ用ゲームソフトウェア,家庭用ゲーム機用ソフトウェアの分野において非常に高い知名度を有しており,以下の(2)の項で述べるように,コーエーの「三國志」といえば知らぬ者のないほど周知著名である。よって,混同のおそれが強く,類似範囲はより広く解釈されるべきである。
本件の場合,きわめて周知著名な引用商標が需要者に常に意識されるともいえる状態であり,これに単に「大」を付しただけの本件商標はきわめて類似性が高いといえる。
また,請求人は引用商標4ないし16の「三國志」の語を含む商標を多数保有していることから(甲11),本件商標も請求人の商品のシリーズの1つであるかのように認識されやすく,混同のおそれが強く類似するというべきである。
(イ)本件商標に係る製品は,以下の(2)の項で述べるように,引用商標及び請求人のソフトウェア製品のタイトルロゴ・登場人物の外観・設定等を剽窃的に使用しており,より混同のおそれが高い(甲21,甲22)。
特に,本件商標の実際の使用態様(甲12)は,「大」の部分が一体化されておらず,かえって「三国志」の部分が目立つような態様である。したがって,より混同のおそれが高く,類似性が強いと解されるべきである。
(ウ)コンピュータ用ゲームソフトウェア及び家庭用ゲーム機用ソフトウェアの市場においては,「魔界村」と「大魔界村」,「逆転裁判」と「大逆転裁判」,「海物語」と「大海物語」のように続編又は拡大版について,タイトルに「大」を付けて発売することが行われてきた(甲13)。
よって,本件商標の指定商品のうち特に「コンピュータゲームプログラム」の分野においては,引用商標の続編又は関連製品であるかもしれないという混同を生じるおそれが高い。
カ 小括
本件商標は「大三国志」の文字よりなるものであり,「大」の文字については識別力が無く,「ダイサンゴクシ」又は「サンゴクシ」の称呼,「(大きな)三国志」といった観念を生ずる。
引用商標1ないし3は,「三国志」又は「三國志」の文字よりなるものであるから,「サンゴクシ」の称呼,「三国志」といった観念を生ずるものである。
したがって,本件商標と引用商標1ないし3とは,外観,称呼及び観念において相紛らわしい類似のものである。また,指定商品及び指定役務も同一又は類似のものである。
さらに,取引実情も類似性を著しく高めている。
したがって,本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号ついて
本号に係る最高裁判決(平成10年(行ヒ)第85号)の判示要素について検討する。
ア 「当該商標と他人の表示との類似性の程度」について
本件商標は,新旧の字体の相違はあるが,引用商標に「大」の漢字を付しただけのものである。
「三国志」の語は本件商標の指定商品及び指定役務の分野において十分な識別力があることは,上記(1)アの項目で述べたとおりである。
また,「大」の文字について識別力が弱いことも,さきに述べたとおりであり,後に続く名詞の程度・規模・大きさなどが甚だしいことを示す修飾語,又は後に続く名詞についての美称として一般的に理解される。
よって,両商標は「サンゴクシ」の称呼と「三国志」の観念を共通にしており,類似性は相当に高いといえる。
イ 「他人の表示の周知著名性及び独創性」について
請求人は,1985年(昭和60年)以来,商品「電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品」及び「家庭用テレビゲーム機用プログラム」等について「三國志」の商標を30年以上にわたって広く使用してきた(甲14の2?4)。
請求人のコンピュータゲーム(家庭用テレビゲーム,電子計算機端末用プログラム,オンラインゲームサービスを含む。)「三國志」シリーズは代々大ヒットを記録し,現在までにシリーズ13作品が発売され,三國志派生シリーズを含めると24作品に及ぶ。
2017年(平成29年)までの,日本国内での累計販売本数は760万本以上,全世界では800万本を超えるまでになっている(甲7,甲8,甲28)。
請求人は,コンピュータゲームの草創期に歴史シミュレーションゲームという分野を開拓し,「信長の野望」などの大ヒット作を生み出してきた。
中でも「三國志」シリーズは,広大なマップ等により実現される広大な世界観,多数の登場人物(武将)とその能力を表す数値,発生するイベント,計略,内政などの独創的なシステムにより,「正史三国志」や小説「三国志演義」の人間ドラマと世界観を見事に再現しており(甲5,甲6),多数の熱烈なファンを有し(甲15),現在は請求人を代表するゲームタイトルの1つとなっている。
このような人間ドラマと世界観を再現する独創的なシステムは,その後の様々なシミュレーションゲームやストラテジーゲームに取り入れられ,この業界の発展に大きく貢献してきた。この点を示すために,請求人及び引用商標についての受賞履歴を挙げる(甲16)。コーエーの三國志,といえばコンピュータゲーム業界において知らぬ者のないほどの知名度である。
また,このゲーム「三國志」における魅力的な登場人物(武将)を利用した,スピンオフ作品であるアクションゲーム「三國無双」も大ヒットを記録し,このシリーズの売上本数は1,870万本を超えるほどとなった(甲8)。
また,オンラインの分野においても,2008年(平成20年)より「三國志Online」,2009年(平成21年)より「三國志TOUCH」,2010年(平成22年)より「100万人の三國志」といったシリーズ製品及びオンラインゲームサービスを展開している(甲16の2?4)。特に「三國志Online」は好評を博し,サービス終了後も復活を望まれて有志によるウェブサイトが作られたほどであった(甲16の5)。
この請求人による引用商標の周知性を示すものとして,さきに挙げた売上本数等の他に,配布したパンフレット及びプレスリリース,ゲームイベント・展示会での出展,販売された関連書籍,掲載された雑誌記事,新聞記事に係る証拠の一部を提出する(甲17?甲20)。
これらから,引用商標は日本国内外において少なくとも延べ数百万人,スピンオフ作品も含めれば延べ二千万人近くに知られている周知著名な商標であることは間違いない。
また,独創性についても,上記のとおり請求人が独創的なシステムを考案し,コンピュータソフトウェア等に初めて実現させたものであり,それまで「三国志」に関するソフトウェアは無かったことからも,独創性は非常に高いといえる。
ウ 「当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質,用途,又は目的における関連性の程度」について
上記(1)ウのとおり,本件商標の指定商品及び指定役務と,引用商標の指定商品及び指定役務は相互に重複している。よって,性質,用途,目的は同一であり,関連性は非常に高い。
エ 「指定商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情等」について
(ア)本件商標の実際の使用態様におけるロゴ(甲21,甲12)の「三国志」部分は,引用商標の使用態様の1つのロゴ(甲14)に字体が非常に近く,非常に紛らわしい態様で使用されている。
また,本件商標に係るゲーム作品は,当初は異なるタイトルだったもの(甲12)を,あえて引用商標に近いタイトルに変更したことがうかがわれる。
(イ)さらに,タイトルの表示態様ばかりでなく,登場人物(武将)についても,請求人の作品と似通った表現がなされている。
「正史三国志」や小説「三国志演義」の記述のみからでは導き出すことの出来ないこのような人物の外見的表現は,請求人が創作したものであり,偶然これに一致するということはあり得ない。
本件商標に係る商品における描写は,周知著名となった請求人の作品を参考として似せていることは明らかである。
このように,登場人物についても非常に似通った表現がなされており,剽窃的であるというしかない(甲22,甲34)。
このような使用がすでになされている本件商標は,周知著名な引用商標の信用及びゲーム作品のアイデアに便乗しようとしたものであることが明らかである。
(ウ)また,ウェブサイトにおいて,本件商標に係る商品が請求人の商品と誤解され(甲23),すでに混同が生じ始めており,請求人の信用は毀損されつつある。
オ 混同が生じるおそれの有無
以上のアないしエで各要素を検討したとおり,本件商標と引用商標1ないし3との類似性は非常に高く,引用商標の周知性は非常に高く独創性も十分であり,指定商品及び指定役務は重複し,取引実情では引用商標に対する類似性が高まっており,さらに登場人物の画像等においても剽窃的な表現がなされ,また,すでに混同が発生している事例もある。
以上のように,混同を生じるおそれの判断にあたり,全ての要素で混同を生じるおそれを強める結果となっている。
よって,本件商標は,引用商標1ないし3に対し混同のおそれがある。
したがって,本件商標は,引用商標に蓄積した信用を毀損し,希釈化し,あるいは請求人に何らかの関連性を有すると誤認させるおそれがあり,非常に大きな混同のおそれがあるといえる。
特に請求人の意図に沿わない他人のソフトウェアが請求人のものとして紹介されるなど,断じて許すことは出来ない。
カ 小括
「三國志」は,請求人の提供するゲームに係る商標として,広く知られているから,これと類似する本件商標がその指定商品又は役務に使用された場合,商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれがある。
また,本件商標の実際の使用状況も剽窃的で混同のおそれを著しく高めており,実際に混同が生じている例もある。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 答弁に対する弁駁
(1)「三国志」の語の識別力について
ア 被請求人は,答弁書において本件商標の構成中「三国志」の語は,本件商標に係る指定商品,役務の分野において識別力を有しない旨主張している。
しかしながら,被請求人の主張は,以下に述べるとおり失当である。
(ア)第三者による「三国志(三國志)」の語を含む商標の登録例
いずれも本件商標とは構成を異にするものであり,かつ,これらが出願された背景に特殊事情が存在している可能性も考慮されていないので,これらの存在をもって「三国志」の語の識別力を否定する根拠とするには短絡的である。
(イ)第三者による「三国志(三國志)」の語を含む商標の使用例
いずれも本件商標とは構成を異にするものであり,これらが「三国志」の語の識別力を否定する根拠とはなりえない。
ゲーム開発においては企業間に取り決めがなされている場合があり,ゲームタイトルの存在を表面的に見ることは適切ではない。
また,スマートフォン用アプリゲームを個人の独断と偏見でランキング付けした資料(乙5)であるが,スマートフォン用アプリゲームには,家庭用ゲーム機やパソコン用のパッケージ版ゲームソフトを製造,販売する大規模なゲーム製造会社が提供するもののみならず,その作成が容易なことから個人が趣味の範囲で作成したゲームまで様々であり,その内容も独自の創作にかかるものから他者のゲーム模倣したものまで様々である。
その結果,アプリゲームの世界でも商標権侵害に該当するゲームが横行しているというのが実情である。
したがって,「三国志(三國志)」の語の使用したスマートフォン用アプリゲームが存在するからといって,これが「三国志」の語の識別力を否定しうる根拠とはなりえない。
第三者による「三國志」をタイトルに含むゲームが存在していることは請求人も承知しているが,どれもシリーズ化することはなく,単発で販売終了している。
三國志をタイトルとしてシリーズ化し,長年継続して販売しているのは請求人のみであり,ゲーム市場において他に類を見ない。
かかる企業努力こそ評価されるべきであり,保護に値する業務上の信用である。
(ウ)「三国志」は歴史書,小説等の名称として周知著名であるという被請求人の主張について
「三国志」は,そもそも西晋の時代に著された歴史書を指すのか,明の時代に著された「三国志演義」を指すのか不明であり,同語が特定の内容を示しているものでないことは明らかである。
また,我が国においても,著者・作者が独自の解釈や工ヒソードを含んだ様々な「三国志」作品が存在する(乙7?乙9)。
つまり,「三国志」は,「魏」,「蜀」,「呉」の三国を中心とする三世紀頃の中国を舞台とした様々なエピソードを漠然と示すものであって,ある特定の内容を表すものではない。
したがって,我が国において「三国志」の語が知られていることが,ゲームソフトウェアやオンラインゲームの提供といった本件商標の指定商品及び指定役務の分野において識別標識として機能しないとの根拠にはなりえない。
(エ)ゲームタイトルは「書籍」の題号と同列であること
被請求人は,ゲームタイトルは「書籍」の題号の場合と同列であるかのような主張をしているが,そのような主張は,ゲーム業界の開発現場及び取引実情と反している。
被請求人は著作権法を根拠にゲーム用プログラムは著作物として認められるべきである旨主張されているが,ここにいうプログラムとは,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう。」(著作権法第2条第1項第10の2号)であり,著作物たるゆえんは,その指令の組み合わせで表現される技術的・機能的側面に創作的価値を捉えるもので,被請求人はゲーム用プログラムとゲームストーリーを混同して論じている。
したがって,著作権法の解釈を商標法域に引用することは失当である。
そもそも,ゲームのタイトルが題号か否かの議論は本事案を審理する上で実益の無いものであり,これ以上の議論は必要としない。
(オ)過去の侵害事件において「三国志」の表示の使用が侵害ではないと認められたこと
被請求人は,「三国志」の語が識別機能を有しない趣旨の判示がなされた裁判所判決として平成5年(ヨ)第702号事件(乙11)を挙げているが,同事件は仮処分事件であって,その内容は「裁判所判決」ではなく,「決定」にすぎない上に,侵害事件にかかるものであって,本件とは事案を異にする。そして,同事件に関し,請求人は本案訴訟も提起しているところ,本訴において,被告は,請求人が「三国志」の商標登録を有することを認め,「三国志武将争覇」を販売しないという趣旨で和解をするに至っている(甲25,甲26)。
したがって,乙第11号証は「三国志」の識別力を否定する根拠とはなりえない。
イ 請求人による「三國志」商標の使用
(ア)宣伝広告の程度
三國志1?4に限っても1タイトルにつき少なくても100万円以上(復刻版三國志II),多いものでは4億5千万円以上(三國志II)をかけてプロモーション活動を行っている(甲27)。
また,期間を2010年度(平成22年度)から2018年度(平成30年度)の8年間に限っても請求人の「三國志」シリーズにかけた宣伝広告,販売促進費は215,175,157円である。この事実は,同ゲームシリーズがいかに消費者に宣伝され,請求人の会社を代表する人気ゲームとして知られているかを裏付けるものである。
その後も請求人のゲーム「三國志」は続々とシリーズ・派生作品がリリースされ,請求人は1985年(昭和60年)以降30年以上にわたって,請求人の「三国志」ゲームの広告宣伝を大々的に行っているのである。
(イ)市場データ
ファミ通ゲーム白書2017(2017年(平成29年)6月8日発行)シミュレーションゲーム販売数TOP30ランキング表(甲29)には,請求人の「三國志13」が8位・12位にランクインした他,関連作品である「妖怪三国志」は1位を獲得している。
ファミ通ゲーム白書2018(2018年(平成30年)6月25日発行)2017年ゲームソフト推定販売本数TOP1000ランキング表(甲30)には,「三國志」ゲームシリーズ作品が複数ランクインしている。
そして,請求人の「三國志」ゲームシリーズ以外で,「三国志(三國志)」の名前を掲げるゲームソフトは1つもない。
この事実からもゲームの「三国志」といえば請求人を示すことは明らかである。
上記のとおり,請求人の「三国志」商標がゲーム業界で周知著名なことは明らかであって,請求人を示す識別標識として「三国志」商標は十分に機能している。
上記前提を踏まえた上で,本件商標と引用商標の類似性(商標法4条第1項第11号)及び出所の混同可能性(商標法第4条第1項第15号)にかかる被請求人の主張に対し,以下のとおり反輪する。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標及び引用商標の構成について
(ア)「大」の文字について
被請求人は,「大三国志」は既成語ではないので,請求人の例は,不適切である旨主張している。
しかしながら,請求人が挙げた例は,「大」の文字が,単に後に続く名詞の程度・規模・大きさなどが甚だしいことを示す修飾語,または後に続く名詞についての美称と容易に理解されており,極めて識別力が弱い部分であることを示す一例として挙げたものであって,「大三国志」が既成語でないことと「大」の文字に識別力がないことは何ら関係がない。
なお,上記のとおりの「大」が有する修飾的意味合いから,現に請求人が発行した書籍「大三國志倶楽部」(甲31)や志茂田景樹著「大三國志」(甲32)のように「大三國志」の語の使用例が存在する。
(イ)「大三国志」は全体で一つの造語であるという主張について
被請求人は「大三国志」は特殊で不思議な印象を与え,特定の観念を想起しない造語である旨主張しているが,上記のとおり,「大三國志」の語の使用した書籍が存在していることからも(甲31,甲32),「大三国志」は,被請求人自らが創作した造語でないことは明らかであって,また,請求人の「三國志」ゲームの著名性からも本件商標の指定商品,役務分野において「三国志」の観念を容易に想起させるものである。
(ウ)引用商標2「三國志」の「國」の文字について
被請求人は,引用商標2の「國」の文字について述べているが,そもそも,引用商標1及び3は,新字体の「三国志」の文字からなるのであって,引用商標2の構成において「国」が旧字体の「國」と表記されていることで,本件商標を無効にすべきではないとはいえないものであって,意味のない反論である。
被請求人は「国」と「國」の違いが本件商標と引用商標2の類否判断において重要な要素であるかのように述べているが,旧字体の「國」は,現在も姓名の「國分」や大学名「國學院大學」,神社名「靖國神社」,漫画・映画のタイトル「帝一の國」のように広く使用され,日常生活で頻繁に目にする文字であって,「國」=「国」であることは容易に理解される。
したがって,「三国志」か「三國志」かの差異は商標の類否判断において重要な要素とはならない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 請求人商標の周知性について
被請求人は,請求人の使用に係る商標に周知著名性が認められるとしても,それは「三國志」という言葉ではなく,請求人の使用態様という固有の毛筆書体に限られるべきであって,上記毛筆書体においてのみ,請求人商標の特異性・固有性の発露がある旨主張している。
しかしながら,毛筆書体に限らず,たとえばゲームソフトのバッケージに通常書体で請求人の「三國志」商標は使用されている。
したがって,毛筆書体においてのみ,請求人商標の特異性・固有性があらわれるという被請求人主張は失当であって,標準文字でも請求人の「三國志」商標は周知著名である。
イ 請求人の「三國志」ゲームシリーズの独創性及びその周知著名性について
被請求人は,請求人のゲームの独創性は,商標法第4条第1項第15号の該当性の判断において無関係であるかのような主張をしているが,この点こそが両商標の混同可能性を引き起こす重要なポイントであり,請求人の「三國志」商標の著名性及び引用商標との混同可能性につながるものである。
これに関し,商標「遠山の金さん」について,同登録を一私人に独占させることは公序良俗に該当するかが争われた結果,登録維持とされた知財高裁平成26年3月26日判決(平成25年(行ケ)第10233号)(甲33)と同様に,請求人の「三國志」ゲームシリーズのリリース数や販売数,宣伝広告の圧倒的な量・数を踏まえれば,本件商標の登録査定時においては,本件商標の指定商品,役務分野において「三国志(三國志)」は,請求人の制作にかかるゲームタイトルを想起させるものと認められる。
さらに,請求人は長い時間と費用をかけてゲーム関連商品,役務について「三国志(三國志)」商標に化体する業務上の信用や顧客吸引力を獲得したのであるから,請求人が同商標にかかる信用等を守るため,これと相紛らわしい商標を排除しようとするのは当然認められるべき権利である。
以上のとおり,請求人の「三国志(三國志)」ゲームの独創性は,引用商標の識別カ,周知性ないし引用商標と請求人との結びつきを高めるものであって,ひいては本件商標との混同のおそれを強めるものである。
ウ 被請求人が提供するゲームと請求人が提供するゲームにおける登場人物(武将)の近似性について
本件商標にかかるゲームの紹介ページでも「コーエー系のビジュアルに近くて馴染みやすい」と紹介されており(甲35),本件商標にかかるゲームは請求人のゲームを模したものと解される。
ひるがえって,この事実は,請求人の「三國志」シリーズはゲーム業界で模倣されてしまうほど著名であることを裏付けるものである。
実際に,請求人の「三國志」ゲームシリーズは,その人気及び周知著名性から,模倣ゲームが数多く横行している。
2017年(平成29年)度に行われた請求人の「三國志」ゲームシリーズの中国における侵害調査をまとめたリスト(甲36)は,アプリゲーム分野における侵害チェックを行ったもので,膨大な数の侵害が疑われるアプリが発見されており,同調査の結果,137のアプリに侵害を発見し,このうち106アプリが削除された。
このように請求人ゲームの模倣品が数多く出回っている事実もいかに請求人の「三國志」ゲームが周知著名であるかを示すものである。

第5 被請求人の答弁
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第18号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号の非該当性について
(1)本件商標の構成について
本件商標は「大三国志」の漢字4文字を標準文字にて同書,同大,同間隔で表してなるものである。
本件商標中,後半の「三国志」の語は,中国大陸において覇を競った魏・呉・蜀の三国の興亡を描いた歴史書(三国時代の後,西晋の陳寿により撰述された正史)の名称,又はさらに後世の明の時代に羅貫中によって前述正史「三国志」を基に著された「三国志演義」の略称である(甲2)。
請求人は,語頭の「大」の文字について,上記第4の2(1)ア(イ)のとおりの識別力が非常に低い語であると主張している。
この点,請求人は,例として,「大ピンチ」,「大ヒット」,「大冒険」及び「大英帝国」等を挙げているが,これらの語は,慣用語又は既成語であり,具体的かつ明確な観念を伴うのに対して(乙1の1?3,乙2),本件商標は,被請求人による造語であり,一般的な既成語として使用されている事実はない(乙1の4)。
すなわち,本件商標における「大」の語は,後ろの「三国志」と結びつき,全体として,ある種特殊で不思議な印象を与える「大三国志」という造語を形成するという意味において,その果たす役割は大きく,上記の例における「大」の果たす役割とは事情を全く異にする。つまり,本件商標における「大」は決して識別力が低い語ではなく,むしろ固有名詞である「三国志」の語と結びついて,「大三国志」という一体不可分の造語を作り出す重要な語である。すなわち,本件商標を「大」と「三国志」に分けてその外観,称呼,観念を判断することは失当である。
上記のとおり,本件商標は一体不可分とのみ認識されるべき商標であることを鑑みれば,本件商標からは「ダイサンゴクシ」の称呼のみが生じる。該称呼は全体で7音構成であり,よどみなく一連に称呼し易いものである。
観念においては,本件商標は特定の観念を想起しない造語,あるいは,本件商標に接した取引者,需要者をして被請求人の商品,役務を想起せしめるものである。
(2)引用商標の構成及び識別力について
引用商標1ないし3のうち,引用商標2は旧字体を使用した「三國志」である。この点,請求人は「明確に印象が相違するほどのものではな(い)」と主張しているが,構成文字3文字のうち,ちょうど真ん中の目立つ場所に位置する文字が新字体の「国」か,旧字体の「國」であるかの相違は,看過できる程度のささいな相違とは決していえない。ましてや,旧字体の「國」は画数が11もあり,視覚的に非常に目立つ漢字であることも考慮すると,新字体・旧字体の相違は,本件商標と引用商標の類否判断において,より一層顕著な要素となる。また,後述するが,請求人の提供にかかる商品のゲームタイトルのほとんどは旧字体であり,この点,本件商標は新字体を使用している。
よって,本来,新字体の「三国志」と旧字体の「三國志」は,同列に並べて論ずるべきではないが,いずれも,歴史書「三国志」の名称,又は「三国志演義」の略称を指称するものであるという共通点をもってして,便宜上,以下同列に論ずる。
ア 本件商標に係る指定商品,役務の分野における,第三者による「三国志(三國志)」の語を含む商標の登録例
本件商標に係る指定商品,役務と同一,類似の商品,役務を含む登録商標であり,商標中に「三国志(三國志)」を有するものが,特許庁において「群雄三国志」「三国志群雄伝」「三国志英雄伝」など数多く併存して登録となっている(乙3,乙4)。
イ 本件商標に係る指定商品,役務の分野における,第三者による「三国志(三國志)」の語を含む商標の使用例
本件商標の指定商品,役務の分野において,「三国志(三國志)」の語を含む商標が使用されている例(スマートフォン用アプリのゲームタイトル)も,請求人,被請求人の提供にかかる商品役務も含め,枚挙にいとまがない(乙5)。スマートフォン用アプリ以外にも,家庭ゲーム機用ゲームソフトに「三国志」が使用されている(乙6)。
そもそも我が国において,「三国志」は歴史書,小説等の名称として非常に周知著名である(乙7?乙9)。さらに,近年においては,いわゆるスマホゲーム(スマートフォン用ゲーム)人気により,上記のとおり,三国志を題にとったゲームが乱立している状況である(乙10)。
このような「三国志(三國志)」の語を含む商標の併存登録状況,及び本件商標に係る指定商品,役務の分野における取引の状況を鑑みると,「三国志」の語は,本件商標に係る指定商品,役務の分野において,通常に用いられている語であり,自他商品役務の識別標識としての機能を果たすものではなく,識別力を有さないことが明らかである。
ウ 「三国志(三國志)」という表示に対する過去の裁判所の認定
請求人,被請求人の提供に係る商品であるコンピュータ用ゲームソフトウェア,ゲーム用プログラム等は,「書籍」と同様,著作物として認められるべきものである(著作権法第10条第1項第9号)。そして,コンピュータ用ゲームソフトウェア等のタイトル等に「三国志」の語を使用した場合,これら商品は,その登場人物,舞台背景,筋立て等を,西晋の陳寿により編纂された「三国志」正史,あるいは羅貫中による小説「三国志演義」に題材を取り制作されたことを示すのみにすぎない。すなわち,「三国志」の語は商標の本来の機能である自他商品役務の識別標識機能を果たすものではない。
したがって,この点において「商標審査基準 五(第3条第1項第3号),3.(エ)」に記載の「書籍」の題号の規定と何ら変わるところはない(乙11)。
(3)本件商標と引用商標の類否について
ア 「三国志」の語の識別力の欠如について
上記のとおり,本件商標に係る指定商品,役務の分野において「三国志(三國志)」の語に識別力は認められない。よって,本件商標と引用商標の類否判断において,識別力のない「三国志」の語のみを抽出し,その共通性をもってして両商標の類否を判断するのではなく,両商標をそれぞれ一体不可分の商標とし,全体でその類否を判断すべきである。
イ 称呼について
本件商標から生じる「ダイサンゴクシ」の称呼と,引用商標から生じる「サンゴクシ」の称呼を比較すると,称呼識別上,最も影響が大きい語頭において「ダイ」の有無による2音の相違があり,それぞれ7音,5音構成という比較的短い音数の称呼長において,上記差異音が両称呼に及ぼす影響は大きく,全体の称呼をそれぞれ一連に称呼した場合,全体の語調,語感は大きく相違したものになる。
よって,両称呼は十分聴別し得るものであり,両商標は,称呼上相紛れるおそれはない。
ウ 観念について
本件商標は,特定の観念を想起しない造語,又は被請求人の提供にかかる商品役務を想起するものであるところ,引用商標は,我が国で周知著名な歴史書「三国志(三國志)」を想起するものであるので,両商標は観念上相紛れるおそれはない。
エ 外観について
本件商標は「大三国志」よりなるところ,引用商標は「三国志(三國志)」よりなり,外観上,最も影響が大きい語頭において「大」の字の有無による相違があり,該差異点は,上記称呼上,観念上の相違とあいまってより一層明確に認識される。
よって,本件商標と引用商標の外観上の相違は明確である。
したがって,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
なお,引用商標において新字体のものと旧字体のものとを同列で論じたが,旧字体の引用商標「三國志」は,新字体「三国志」と比べて,本件商標との外観上の相違の程度が大きく,より一層,本件商標とは非類似であることを付言する。
オ 「大+○○」商標と「○○」商標の併存登録例
本件商標と引用商標の類否判断に関連し,同一,類似の商品,役務を指定し,文字構成において語頭の漢字「大」の有無のみ相違する商標が併存登録している(乙12?乙16)。
これら併存登録例からも,本件商標と引用商標が非類似の商標であるとの被請求人の主張が失当でないことは明らかである。
なお,請求人が挙げた審決例(甲9の1?5)は,「大」の役割が異なるなどいずれも本件とは事例を異にするので,参考にならない。
(4)取引の実情について
請求人は,「請求人が引用商標4ないし16の『三國志』の語を含む商標を多数保有していることから,本件商標も請求人の商品のシリーズの1つであるかのように認識されやすく」と主張しているが,上記のとおり,「三国志(三國志)」の語を含む商標は,請求人,被請求人のものに限らず,他者保有によるものも多数存在している(乙3?乙6)。
また,請求人は,「本件商標に係る製品は,引用商標及び請求人のソフトウェア製品のタイトルロゴ・登場人物の外観・設定等を剽窃的に使用しており」と主張しているが,そもそも,本件においては,登録商標である標準文字の「大三国志」と毛筆書体ではない「三国志(三國志)」の類否を判断すべきものであり,請求人の主張は,本件とは無関係である。
その上で,本件商標の使用態様と請求人の使用に係る商標とを比較するに,両商標における書体は全く異なる書体であると判断する程度に相違するものである。
さらに,請求人は,コンピュータ用ゲームソフトウェア,及び家庭用ゲーム機用ソフトウェアの市場においては,続編又は拡大版についてタイトルに「大」を付けて発売されることが行われてきたと主張し3つの例(甲13)を挙げているが,当該主張は全くの失当である。
まず,「魔界村」と「大魔界村」及び「海物語」と「大海物語」の例であるが,「魔界村」及び「海物語」の語は両方とも造語であり,それぞれの商標権者の提供に係る商品を指称するものとして強い識別力を有する。
よって,これらに「大」を付加した「大魔界村」及び「大海物語」は,それぞれ,「魔界村」及び「海物語」の商標権者及びこれらの商品名を想起して当然である。
ひるがえって,「三国志」の語自体は,本件商標に係る指定商品,役務の分野において識別力を有しておらず,特定の商標保有者を想起させるには至らず,「大」を語頭に付加した場合,「大三国志」全体で,被請求人の提供にかかる商品役務を指称する一体不可分の造語としか認識し得ない。
次に,「逆転裁判」と「大逆転裁判」の例であるが,「逆転」との語句に「大」を付加して「大逆転」とすることは,連語関係の観点から見て何ら不自然なところはなく,「大逆転」との語句は通常に使用される語句である。
ひるがえって,「大三国志」は通常に使用される語句ではなく,被請求人の創作に係る造語であるので,「(大)逆転裁判」の例は,本件とは事案を全く異にする。
以上より,これら3例は全て本件とは事案を異にするものである。
(5)小括
以上のとおり,文字構成上,本件商標と引用商標とは相紛れるおそれのない非類似の商標であり,さらに,第三者の登録,使用に係る「三国志(三國志)」の語を含む商標も多数存在する取引実情,及び本件商標に係る指定商品,役務の分野において「三国志」の語は自他商品等識別力を有さないと判じた判決例の存在等に鑑みれば,本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当しないことは明らかである。
2 商標法第4条第1項第15号の非該当性について
請求人は最高裁判決(平成10年(行ヒ)85号)を引用し4つの要素に分けて検討しているので,それに倣い,以下検討する。
(1)「当該商標と他人の表示との類似性の程度」について
上記1のとおり,本件商標と引用商標は互いに相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(2)「他人の表示の周知著名性及び独創性」について
まず,大前提として,上記1のとおり,本件商標に係る指定商品,役務の分野において,「三国志」の語は自他商品役務の識別機能を果たすものではない。
請求人の使用に係る商標は,ほとんどが旧字体を使用した「三國志」の方であり,さらに,取引の実際においては,その表示態様のほとんどが,毛筆体である。
請求人の使用に係る商標に周知著名性が認められると仮定するならば,「三國志」という語句そのものではなく,実際の使用態様における毛筆書体に限られるものである。
さらに,請求人は,独創性について,「それまで『三国志』に関するソフトウェアは無かったことからも,独創性は非常に高いといえる」と述べているが,本要素における「独創性」とは,商標自体の構成の独創性の有無を問題にするものであって,当該商標に係る商品等に独創性があるか否かが問題となっているものではない。
(3)「当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との性質,用途,又は目的における関連性の程度」について
本件商標に係る指定商品及び指定役務と,引用商標に係る指定商品及び指定役務との性質,用途又は目的において関連性が非常に高いことについては争わない。
(4)「指定商品等の取引者及び需要者の共通性その他の取引実情等」について
上記判決における「その他の取引実情」とは,ある2つの商標の類否判断に際して,当該商品及び役務の取引の実情を考慮に入れる場合も有り得る,という趣旨を含意しているのであり,該当商標の現状での使用態様,表示態様を指して「取引の実情」としているわけではない。
本号の判断において,判断対象となるのは,あくまでも商標登録となっている標準文字による表示態様であり,使用態様ではない。
上記前提を踏まえた上で,敢えて請求人主張に反論するが,上記1(4)のとおり,両商標の使用態様の書体は全く異なる書体であると判断せしめる程度に相違する。
さらに,請求人は,取引の実情の検討において,登場人物(武将)の近似性についても言及しているが,これも本論から外れること甚だしい。
最後に,取引の実情において,本件商標に係る商品が請求人の商品と誤解されて紹介されていると主張し証拠(甲23)を提出しているが,当該主張もこじつけである。
(5)混同が生じるおそれの有無
以上の(1)ないし(4)の各要素の検討をまとめる。
(1)本件商標と引用商標は相紛れるおそれのない非類似商標である。
(2)本件商標に係る指定商品,役務の分野において,「三国志(三國志)」の語自体は識別力を有さず,独創性もない。
(3)指定商品,指定役務は重複している。
(4)請求人の主張はいずれも本論から外れており失当である。指定商品,指定役務の取引者,需要者には共通性がある。
上記のとおり,要素(3)及び(4)は,本号該当性を肯定するものであるが,要素(3)及び(4)を判断する大前提となるべき,商標自体に係る要素(1)及び(2)においては,本号該当性を否定するものとなっている。
さらに,請求人が主張するような,既に混同が生じているような事実も立証されておらず,各要素を総合的に勘案して判断するに,本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとすべき根拠はない。
よって,請求人の主張は失当である。
3 結語
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものではない。

第6 当審の判断
1 請求人及び被請求人提出の証拠,両人の主張並びに職権調査によれば,次の事実を認めることができる。
(1)請求人は,「三國志」の文字を毛筆体で表した商標(別掲)及び当該商標を縦書きで表した商標(以下,これらを「使用商標」という。)を,請求人の業務に係る「コンピュータ用ゲームプログラム」及び「家庭用テレビゲーム機用プログラム」(以下,これらを「使用商品」という。)について,1985年(昭和60年)から現在まで継続して使用している(甲5,甲14の2?4,職権調査)。
(2)使用商標を付した使用商品は,シリーズ13作品が販売されている(甲5,甲14の2?4)。
(3)請求人は,「コンピュータ用ゲームプログラム」,「家庭用テレビゲーム機用プログラム」,「携帯電話・スマートフォン用ゲームプログラム」及び「オンラインゲームプログラム(の提供)」(以下,これらをまとめて「ゲームプログラム」という。)について,使用商標をその構成中に含む複数の標章を使用している(甲14の2,以下,請求人の業務に係るゲームプログラムを「請求人ゲームプログラム」という。)。
(4)使用商品の昭和60年(1985年)より1996年(平成8年)6月までの販売実績は,約330万本である(甲25)。
(5)「2016年 SLG TOP30」において,8位はPS4版「三国志13」で販売本数は3万7837本,12位はPS3版「三国志13」で販売本数は3万1426本であった(甲29)。
(6)「2017年ゲームソフト推定販売本数TOP1000(集計期間:2016年12月26日?2017年12月31日)」において,217位はPS4版「三国志13 with パワーアップキット」で推定年間販売本数は2万1012本,339位はVita版「三国志13 with パワーアップキット」で推定年間販売本数は9691本,922位はPS4版「三国志13」で推定年間販売本数は1178本,933位はPS3版「三国志13」で推定年間販売本数は,1126本であった(甲30)。
(7)1995年(平成7年)7月5日付け「『三国志』シリーズAM関連の広告宣伝費について」において,「4.タイトル別総金額(専門誌・新聞・TV)」の広告費は,「三國志」は約1億4千万円,「三國志II」は約4億5千5百万円,「三國志III」は約2億1千万円,「三國志IV」は約9千6百万円,「復刻版三國志II」は,180万円であった(甲27)。
(8)「三国志」の文字(語)は,「二十四史の1つ。魏・呉・蜀三国の正史。」(以下「(歴史書)三国志」という。)を意味する語であって,我が国においてこれに係る書籍が多数出版されている(甲2,甲32,乙8?乙10,職権調査)。
(9)タイトルに「三国志」の文字を含む又は「(歴史書)三国志」を題材とした内容の請求人以外の者の業務に係る家庭用テレビゲーム機用プログラムが,遅くとも1992年(平成4年)には発売されている(乙6)。
(10)2018年(平成30年)12月時点において,請求人以外の者の業務に係るものであって,タイトルに「三国志」の文字を含むゲームプログラム又は「(歴史書)三国志」を題材とした内容のゲームプログラムが相当数存在する(乙5,乙10)。
2 請求人が使用する商標の周知性について
上記1(1)ないし(7)によれば,請求人は,使用商標を使用商品について1985年(昭和60年)から現在まで30年以上継続して使用しており,相当な額の宣伝広告費をかけていることが認められ,2017年(平成29年)においてもその販売本数は,約3万3000本であること,また使用商標は,使用商品以外の請求人ゲームプログラムにおいてもその構成中に使用されていることからすると,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,請求人ゲームプログラムを表示するものとして需要者の間にある程度認識されているものということができる。
3 「三国志」の文字について
その一方,上記1(8)ないし(10)より「三国志」の文字自体は,固有の歴史書の名称あり,関連の書籍も多数出版されていることから,当該歴史書を認識されるものして,広く親しまれているところ,請求人以外の者の業務に係るものであって,タイトルに「三国(國)志」の文字を含むゲームプログラム又は「(歴史書)三国志」を題材とした内容のゲームプログラムが本件商標の登録出願以前より発売されており,本件商標の登録出願時及び登録査定時には,相当数存在することが推認できる。
4 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標
本件商標は,上記第1のとおり,「大三国志」の文字を表してなるところ,その構成文字は,同書,同大,同間隔で,まとまりよく一体的に表され,当該文字から生じる「ダイサンゴクシ」の称呼も,格別冗長というべきものなく,よどみなく一連に称呼し得るものである。
また,「大三国志」の文字は,特定の意味を有しない造語であると認められることから,本願商標は,「ダイサンゴクシ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないというべきである。
(2)引用商標1ないし3
引用商標1ないし3は,上記第2の1ないし3のとおり,「三国志」又は「三國志」の文字からなり,該文字に相応し,いずれも「サンゴクシ」の称呼を生じ,「(歴史書)三国志」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標1ないし3の類否
本件商標と引用商標1ないし3の類否を検討すると,両者は,外観において,文字商標における外観の識別上重要な要素である語頭において「大」の文字の有無という差異を有し(本件商標と引用商標2とは,さらに中間部における「国」と「國」の文字の差異もある。),その差異が4文字及び3文字という少ない文字構成である両商標の外観全体から受ける視覚的印象に与える影響は大きく,両者を離隔的に観察しても,相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
次に,本件商標から生じる「ダイサンゴクシ」と引用商標1ないし3から生じる「サンゴクシ」の称呼を比較すると,両者は称呼の識別上重要な要素である語頭において「ダイ」の音の有無という差異を有し,その差異が称呼全体に与える影響は大きく,両者をそれぞれ一連に称呼しても,相紛れるおそれのないものというのが相当である。
さらに,観念においては,本件商標が特定の観念を生じないのに対し,引用商標1ないし3は,「(歴史書)三国志」の観念を生じるものであるから,両者は相紛れるおそれのないものである。
そうすれば,両商標は,外観,称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標というべきものである。
(4)請求人の主張について
ア 請求人は,本件商標の構成中「大」の文字は修飾語又は美称と理解され識別力が弱い,「大」の文字はゲームプログラムにおいて続編等に付されている,「大三國志」を使用した書籍の題号が存在する,「三国志」は請求人の周知著名な商標であるなどとして,本件商標は「サンゴクシ」の称呼,「(大きな)三国志」の観念が生じるから,引用商標1ないし3と類似する旨主張している。
しかしながら,「大」の文字が修飾語又は美称と理解され,識別力が弱い又はゲームプログラムにおいて続編等に付されているものであるとしても,上記3のとおり,「三国志」の文字(語)自体が「(歴史書)三国志」を認識させる親しまれた語であり,また,本件商標の登録査定時においても,タイトルに「三国(國)志」の文字を含むゲームプログラム又は「(歴史書)三国志」を題材とした内容のゲームプログラムが相当数存在していたことが推認できることから,ゲームプログラムにおいては,「三国(國)志」の文字は,出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとまでは認めることができない。
また,本件商標の指定商品及び指定役務中,ゲームプログラムに関する商品以外の商品及び役務において「大」の文字が修飾語又は美称と理解されていること示す証拠の提出はない。
そうすると,本件商標は,その構成中の「三国志」の文字部分だけを引用商標1ないし3と比較して,本件商標と引用商標1ないし3の類否を判断することは許されないというべきであるから,その構成文字全体に相応して,「ダイサンゴクシ」の称呼のみを生じ,特定の観念を生じないものというべきである。
イ 請求人は,本件商標の使用態様や審決例などを挙げ,本件商標と引用商標は類似する旨主張しているが,商標法第4条第1項第11号における商標の類否判断は,願書に記載された商標について判断すべきであるし,査定時又は審決時における一般的,恒常的な取引の実情を勘案し個別具体的に判断されるべきものであるから,かかる主張によっては上記(3)の判断を覆し得ない。
ウ したがって,請求人のかかる主張はいずれも採用できない。
(5)小括
上記のとおり,本件商標と引用商標1ないし3は非類似の商標であるから,本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標1ないし3の指定商品及び指定役務が同一又は類似するとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
なお,他に,本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するというべき事情は見いだせない。
5 商標法第4条第1項第15号について
(1)使用商標の周知性について
上記2のとおり,使用商標は,請求人ゲームプログラムを表示するものとして需要者の間にある程度認識されているものということができる。
(2)使用商標及び「三國志」の文字自体の独創性
使用商標である「三國志」の文字を毛筆体で表した商標は,そのデザインにおいてある程度の独創性(デザイン性)を有しているものと認められる。
しかしながら,上記3のとおり,「三國志」の文字自体は,「(歴史書)三国志」を認識する文字であり,タイトルに「三国(國)志」の文字を含むゲームプログラム又は「(歴史書)三国志」を題材とした内容のゲームプログラムが本件商標の出願時には相当数存在することが推認できる。
そうすると,「三国(國)志」の文字自体は,本件商標の出願時におけるゲームプログラムとの関係では独創性は高いとはいえない。
(3)本件商標と使用商標の類似性
使用商標は,毛筆体であって,引用商標1ないし3とその構成文字を同一にするものである。
そうすると,本件商標と使用商標は,上記4の理由に加え,書体及び字形の差異により外観上,より明確に区別できるものであるであるから,外観,称呼及び観念において非類似のものであって,別異のものといえるから,類似性の程度は極めて低い。
(4)本件商標の指定商品と使用商品との関連性
本件商標の指定商品には,「ゲームプログラム」を含むものであるから,請求人ゲームプログラムと,商品の品質,用途及び需要者の範囲は共通する。
(5)出所混同のおそれについて
使用商標は,上記(1)ないし(4)のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の取引者,需要者において,請求人ゲームプログラムを表示する商標としてある程度認識され,本件商標の指定商品が,請求人ゲームプログラムと販売部門や流通経路,また需要者層において一定程度関連があることは認められる。
しかしながら,(デザイン化されていない)「三国(國)志」の文字自体は,本件商標の出願時において,ゲームプログラムとの関係では独創性が高いものとはいえないことに加え,上記4(4)のとおり,「三国志」の文字が,出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとも認めることができない。
そして,本件商標と使用商標とは,別異のもので,類似性の程度は極めて低いものであるから,本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば,本件商標をその指定商品に使用しても,これに接する取引者,需要者が,請求人使用商標を連想又は想起することは考え難い。
そうすると,本件商標は,これをその指定商品について使用しても,その取引者及び需要者をして,当該商品が請求人の業務に係る商品であると誤信させるおそれがある商標ではなく,また,当該商品が請求人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信させるおそれがある商標ともいえないから,請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,商品の出所について混同を生じるおそれがある商標ではない。
(6)請求人の主張について
ア 請求人は,本件商標と使用商標とは類似性の程度が相当高い,使用商標等は周知著名であり独創性の程度が高いなどとして,また,本件商標の使用態様や本件商標が,使用されている商品(ゲームプログラム)の登場人物などが剽窃的である,請求人の商品と被請求人の商品は実際に混同を生じているなどとして,本件商標は出所の混同を生じるおそれがある旨主張している。
しかしながら,使用商標が,需要者の間にある程度認識されているとしても,上記4のとおり,本件商標と使用商標は,非類似のものであって別異のものであり,また上記(2)のとおり,使用商標にデザイン性が認められるとしても,「三國志」の文字自体は,本件商標の出願時におけるゲームプログラムとの関係において,独創性の程度が高いとはいえない。
そして,商標法第4条第1項第15号の判断は,願書に記載された商標について,一般的,恒常的な取引の実情を勘案し判断すべきであるから,本件商標の使用態様や本件商標が使用されている商品の登場人物などによっては,上記判断を覆し得ない。
さらに,請求人提出の証左(甲23)のみによっては,本件商標と使用商標等との間で実際に混同が生じているものと認めることはできない。
イ 請求人は,判決例を挙げ,「三国(國)志」の文字は請求人のゲームタイトルを想起させるものであるから,本件商標は,使用商標と混同を生じる旨主張している。
しかしながら,上記2のとおり,毛筆体の使用商標が請求人のゲームタイトルを想起させるものとして,ある程度認識されていることは認め得るとしても,上記4(4)アのとおり,「三国(國)志」の文字自体は,「(歴史書)三国志」を認識する文字であって,ゲームプログラムとの関係では出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものでなく,実際にタイトルに「三国志」の文字を含むゲームプログラム又は「(歴史書)三国志」を題材とした内容のゲームプログラムが本件商標の出願時には相当数存在することが推認できることからすると,本件商標は,使用商標と混同を生じるおそれはないといえる。
そして,当該判決は,商標法第4条第1項第7号該当性について判示したものであり,本件とは事案を異にする。
ウ したがって,請求人のかかる主張はいずれも採用できない。
(7)小括
以上のとおりであるから,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
6 むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するものでなく,その登録は,同条第1項の規定に違反してされたものとはいえないから,同法第46条第1項の規定に基づき,その登録を無効にすべきでない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲(使用商標(横書き))


審理終結日 2019-08-28 
結審通知日 2019-08-30 
審決日 2019-09-10 
出願番号 商願2017-78861(T2017-78861) 
審決分類 T 1 11・ 261- Y (W0941)
T 1 11・ 263- Y (W0941)
T 1 11・ 262- Y (W0941)
T 1 11・ 271- Y (W0941)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 川崎 萌未箕輪 秀人 
特許庁審判長 薩摩 純一
特許庁審判官 大森 友子
榎本 政実
登録日 2018-04-13 
登録番号 商標登録第6035322号(T6035322) 
商標の称呼 ダイサンゴクシ、サンゴクシ 
代理人 特許業務法人大島・西村・宮永商標特許事務所 
代理人 特許業務法人大島・西村・宮永商標特許事務所 
代理人 杉村 憲司 
代理人 門田 尚也 
代理人 杉村 光嗣 
代理人 中山 健一 
代理人 西尾 隆弘 
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