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審決分類 審判 査定不服 商64条防護標章 取り消して登録 W051035
審判 査定不服 標章の同一 取り消して登録 W051035
審判 査定不服 商品(役務)の混同 取り消して登録 W051035
管理番号 1356925 
審判番号 不服2018-15620 
総通号数 240 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-12-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-26 
確定日 2019-11-18 
事件の表示 商願2017-39741拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の標章は,登録第4470873号の防護標章として登録をすべきものとする。
理由 第1 本願標章
本出願に係る標章(以下「本願標章」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,第3類,第5類,第10類及び第35類に属する願書に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務とし,平成28年7月28日に登録第4470873号商標(以下「原登録商標」という。)の防護標章登録出願として登録出願された商願2016-80867に係る商標法第68条第1項において準用する同法第10条第1項の規定による防護標章登録出願として,同29年3月23日に登録出願されたものである。
その後,本願標章の指定商品及び指定役務については,原審における同年4月14日付け及び同年11月17日付けの手続補正書及び当審における令和元年9月30日受付の手続補正書により,最終的に,第5類「歯科用材料,食餌療法用飲料,食餌療法用食品,医療用腕環」,第10類「人工鼓膜用材料,補綴充てん用材料(歯科用のものを除く。),医療用手袋,しびん,病人用差込み便器」及び第35類「食餌療法用食品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,医療用機械器具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と補正されたものである。

第2 原登録商標
登録第4470873号商標は,本願標章と同一の構成からなり,平成12年5月19日に登録出願,第5類「パップ剤,その他の貼付用薬剤,ばんそうこう,包帯,ガーゼ」を指定商品として,同13年4月27日に設定登録され,その商標権は,現に有効に存続しているものである。

第3 原査定の拒絶の理由
原査定は,「本願標章が,商品『貼付用薬剤』に使用して相当程度の売り上げがあることは認められるが,本願標章が使用されているのは,専ら『テープ状の貼付用薬剤』であることからすれば,その構成中の『テープ』の文字は,商品の形状を表しているものであり,その構成中において高い識別力を有しているのは,『モーラス』の文字部分にあるということができるから,本願標章に接する取引者,需要者は,これを『モーラス』シリーズの内のテープ状の商品と理解するにすぎないものであり,標章全体をもって,商品又は役務が類似していない場合であっても,なお商品又は役務の出所の混同を来す程の強い識別力を備えて,そのような程度に至るまでの著名性を有しているとまでは言い難いものである。したがって,本願標章は,商標法第64条に規定する要件を具備しない。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

第4 当審の判断
原登録商標は,上記第2のとおり,本願標章と同一の構成からなり,平成13年4月27日に設定登録され,当該商標権は有効に存続するものであること及び当該商標権が請求人の所有に係るものであることは,その標章を表示する書面及び当庁備え付けの商標登録原簿の記載から明らかである。
そして,本願標章の指定商品及び指定役務は,当審において上記第1のとおり補正された。
また,請求人の主張及び同人が当審において提出した甲第1号証ないし甲第31号証,原審において平成29年4月14日付けで提出した上申書の資料2,資料6ないし資料10及び資料17,資料18,資料20(以下,資料2を甲第32号証,資料6ないし資料10を甲第33号証ないし甲第37号証,資料17,資料18,資料20を甲第38号証,甲第39号証,甲第40号証とそれぞれ読み替える。)及び職権調査によれば,以下の事実が認められる。
(1)原登録商標の周知・著名性について
ア 請求人の企業の概要及び規模
請求人は,1847年に創業し,昭和19年(1944年)に設立した医薬品,医薬部外品,医療機器等の製造,販売及び輸出入を行う会社であり,東京都及び佐賀県を拠点として,日本各地及び海外に11の支店,日本各地に6の営業所,2の工場,2の研究所を持つ(請求人のウェブサイト http://www.hisamitsu.co.jp/company/)。
請求人は,平成7年(1995年)に,請求人の業務に係る医薬品のうち,「モーラステープ」の名称を用いた「貼付用薬剤」(以下「使用商品」という。)の販売を開始したが(甲32),使用商品は,請求人の代表的な商品の一つである。
イ 使用商品及び使用期間
原登録商標は,平成7年(1995年)に,商標権者である請求人により,その指定商品中の「貼付用薬剤」について,使用を開始され(甲1,甲32),その後,現在に至るまで我が国において継続して使用されているものである(甲1?甲9ほか)。
そして,当該「貼付用薬剤」は,薬事法第29条に基づき厚生労働大臣の指定する医薬品であり,薬局又は一般販売業において薬剤師による取り扱いを必要とし,薬種商販売業においては販売することができない医薬品を指す指定医薬品(厚生労働省 資料No.5 一般用医薬品の指定医薬品解除について https://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/06/dl/s0608-6q.pdf)として,製造,販売されているものである。
ウ 使用地域
使用商品は,医師によって患者に処方され,薬剤師による取り扱いを必要とする貼付用薬剤の一種であるところ,これを処方する医療機関の数や地域は不明であるが,上記アのとおり,請求人の本社,支社,営業所等が,日本各地に所在していることに加え,下記エのとおり,使用商品が,外皮消炎鎮痛剤の市場全体の多くを占めていること,また,平成26年(2014年)度の処方枚数が約14億7000万枚もあること(甲37)から,使用商品の使用地域は日本全国に及ぶものと推認できる。
エ 使用商品等の販売実績等
請求人は,平成7年(1995年)に,使用商品の販売を開始したところ(甲32),その販売開始から平成31年(2019年)までの25年間のうち,使用商品の売上高は,平成26年(2014年)2月期は757億3300万円(甲33),平成27年(2015年)2月期は692億900万円(甲34),平成28年(2016年)2月期は643億9800万円(甲35),平成29年(2017年)2月期は526億500万円(甲21)である。
また,使用商品のシェアは,平成26年(2014年)は50%以上(甲38),平成28年(2016年)2月期は41%(甲36),平成29年(2017年)2月期は38.1%(甲36)であり,平成26年(2014年)度の処方枚数は,約14億7000万枚である(甲37)。
オ 使用商品の広告宣伝等又は普及度
(ア)受賞歴
平成26年(2014年)に使用商品にかかる包装がグッドデザイン賞を受賞し(甲40),使用商品に係る「皮膚吸収性に優れた消炎鎮痛貼付剤」の発明が,平成26年(2014年)度に「全国発明表彰」特許庁長官賞を受賞し(甲38),使用商品にかかる「皮膚吸収性に優れた消炎鎮痛貼付剤の開発」が,平成28年(2016年)度に「文部科学大臣表彰」科学技術賞(開発部門)を受賞した(甲14,甲39)。
(イ)雑誌等による紹介
a 2013年10月25日付け雑誌「薬業時報」のNO.110号において,雑誌の表紙及び「特集 貼付剤そのポジショニング」の項の画像において,使用商品の写真が掲載されているとともに,「これまでの貼付剤の“代表格”は全身性の疾患ではなく局所への作用だが,売上げは順調に推移している【図】。『モーラステープ』『モーラスバップ』は両剤合わせると製品別国内売上高の第4位に位置している。」の記載があり,使用商品が,貼付剤の中で2013年時点において,国内売上高が上位にあったことが認められる(甲9)。
b 2013年(平成25年)9月25日発行の雑誌「Monthlyミクス2013増刊号」において,「CHAPTER2 医薬品ランキング」の見出しの下,「2012年度製品別国内売上高」の項において,「編集部は,製薬会社へのアンケートや取材により12年度国内売上高100億円以上の医療用薬を集計した。」の記載,及び掲載された医療用薬の国内売上高第1位から第42位のうち,第4位に請求人及び使用商品が掲載されており,使用商品が,医療用薬の中で,2012年時点において,国内売上高が第4位と上位にあったことが認められる(甲13)。
(ウ)インターネット情報
a 平成29年6月16日付けの「リスファクス」(第6833号)において,「GE学会・学術大会 モーラス『患者の要望で先発品』,MRの力も」の見出しの下,「・・・横浜市内で薬局を運営するミナミファーマシーの山田真幸取締役(横浜市薬剤師会理事)は講演で,切り替えが進まない外用剤の例に久光製薬の『モーラステープ』を挙げた。要因には『患者の要望』が大きいことがあり,モーラスの副作用である光線過敏症を避けるため,第一三共の『ロキソニンテープ』など他の先発品に変更した場合でも『患者の要望が多くて元に戻すことがある』とした。」の記載があり,使用商品が,需要者である患者によって支持されていることが認められる(甲10)。
b 平成25年10月10日付けの「リスファクス」(第6426号)
「久光・第2四半期 モーラスバップは売上減,市場がテープ剤へ」の見出しの下,「・・・医療用医薬品の主力製品は,『モーラステープ』が▲1.1%の389億39百万円で,・・・・『モーラスバップ』は,効能すべてをモーラステープが有し,また市場全体としてもバップ剤からテープ剤への移行が見られるとし,▲11.6%の36億79百万円の減収となった。後発品推進の影響も受けているが,『後発品は剥がれやすく,先発品に戻す患者も多い』と分析した。」の記載があり,使用商品が,需要者である患者によって支持されていることが認められる(甲11)。
(エ)請求人による宣伝広告
請求人は,平成7年(1995年)の発売当初から継続して,医療情報担当者や医療品卸売業者の営業担当者を通じて,医師や薬剤師などの医療関係者に対して,使用商品のパンフレットの頒布(甲2,甲3),医師や薬剤師向けの冊子への使用商品の広告の掲載(甲4?甲8)を通じて,「モーラステープ」商標の経皮鎮痛消炎剤についての紹介・広告を行い,その広告量は,2012年から2017年の5年間で150万部を超える(請求人の主張)。なお,当該広告においては,原登録商標がいずれも掲載されている。
カ 小括
以上によれば,請求人は,平成7年(1995年)から現在に至るまで,原登録商標を,請求人の業務に係る貼付用薬剤の包装に付すなどして,継続的に使用しているものである。
そして,当該「モーラステープ」の名称を用いた使用商品は,請求人に業務に係る代表的な商品であって,原登録商標の使用を開始した平成7年(1995年)以降,医療機関において医師によって処方される貼付用薬剤の一つとして,その市場の中で継続して,上位の売上高及びシェアを誇るものであること,グッドデザイン賞,「全国発明表彰」特許庁長官賞,「文部科学大臣表彰」科学技術賞など多数の表彰を受けたほどの商品であること,また,雑誌,インターネット等において請求人の販売実績が高いこと等にかかる多数の掲載があること,パンフレットや冊子広告を通じて医師や薬剤師などの医療関係者に継続して広告を行っていることなど,その市場を牽引する継続的な活動がなされてきたことから,請求人商品は,医師,薬剤師,病院等の医薬品購入担当者などの医薬品取扱業者等や需要者である患者又は患者の介助者等間に広く認識されているものと認めることができる。
(2)混同を生じるおそれ
さらに,原登録商標の使用商品と本願の補正後の指定商品・指定役務とは,いずれも専ら医療機関で扱われる,又は扱われる可能性が高い商品・役務であって,その生産者,販売者,需要者,材料,用途,性質,目的等を共通にする場合がある。
そうすると,上記使用商品と本願の補正後の指定商品・指定役務を取り扱う者は,共に,医師,薬剤師,病院等の医薬品購入担当者などの医薬品取扱業者等であり,需要者は,共に,患者又は患者の介助者等であること,また,使用商品は,たとえば,アナフィラキシー様症状,ぜんそく発作の誘発(アスピリンぜんそく)(甲1)など,使用によって患者に副作用が起こる可能性があることから,このような医療用薬剤は,医師や薬剤師の正しい指導のもと,極めて慎重に取り扱わなくてはならない性質をもつ商品であること等をも考慮すれば,上記のとおり広く認識された原登録商標と同一の構成からなる本願標章が,他人によって本願の補正後の指定商品・指定役務について使用された場合には,これに接する需要者は,その商品・役務があたかも請求人,又は,同人と何等かの関係を有する者の業務に係る商品・役務であるかの如く,その出所について混同を生じるおそれがあるものというべきである。
以上によれば,原登録商標は,請求人の業務に係る指定商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されており,原登録商標に係る指定商品及びこれに類似する商品以外の専ら医療機関で扱われる,又は,扱われる可能性が高い商品・役務について他人が本願標章の使用をしたときは,その商品・役務と請求人の業務に係る指定商品とに混同を生じるおそれがあるものである。
したがって,本願標章が商標法第64条に規定する要件を具備しないものとして本願を拒絶した原査定は,取消しを免れない。
その他,本願について拒絶の理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本願標章)



審決日 2019-11-05 
出願番号 商願2017-39741(T2017-39741) 
審決分類 T 1 8・ 81- WY (W051035)
T 1 8・ 82- WY (W051035)
T 1 8・ 8- WY (W051035)
最終処分 成立  
前審関与審査官 今田 尊恵 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 大森 友子
山根 まり子
商標の称呼 モーラステープ、モーラス 
代理人 永岡 慶 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 工藤 莞司 
代理人 黒川 朋也 

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