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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W1044 審判 全部申立て 登録を維持 W1044 審判 全部申立て 登録を維持 W1044 審判 全部申立て 登録を維持 W1044 |
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管理番号 | 1356268 |
異議申立番号 | 異議2019-900109 |
総通号数 | 239 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2019-11-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-04-05 |
確定日 | 2019-10-10 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6112467号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6112467号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6112467号商標(以下「本件商標」という。)は,「スプリントデンチャー」の文字を標準文字で表してなり,平成30年3月9日に登録出願,第10類「義歯並びにその部品及び附属品,歯科補綴器具,歯科用インプラント」及び第44類「補綴物の調整,インプラント治療を含む歯科医業,口腔外科医業,審美歯科医業,歯科医業」を指定商品及び指定役務として,同30年12月3日に登録査定,同31年1月11日に設定登録されたものである。 2 登録異議申立人が引用する商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,登録異議の申立ての理由において,本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するとして引用する登録第5338531商標(以下「引用商標」という。)は,「Mini-Sprint」の文字を標準文字で表してなり,平成21年12月24日登録出願,第10類「歯列矯正用ブラケット及びその部品」を指定商品として,同22年7月16日に設定登録されたものであり,現に有効に存続しているものである。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。 (1)商標法第4条第1項第11号について 本件商標は,「スプリントデンチャー」の標準文字からなる文字商標である。ここで,義歯を意味する「デンチャー」は識別力を持たないので,要部は「スプリント」であり,「スプリント」の称呼を生ずるものである。 これに対し引用商標は,「Mini-Sprint」の標準文字からなる文字商標である。ここで,「Mini-」は小さいことを表す接頭語であるので,要部は「Sprint」であり,本件商標と同じ「スプリント」の称呼を生ずるものである。 そうすると,本件商標の要部と引用商標の要部とは,共に「スプリント」の称呼を共通にするものであり,また,本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は,同一又は類似のものである。 してみれば,本件商標と引用商標とは,「スプリント」の称呼を共通にする類似の商標であって,また,その指定商品も同一又は類似のものである。 したがって,本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反してなされたものである。 (2)商標法第4条第1項第15号について 申立人は,2008年(平成20年)8月フォレスタデント・ジャパン株式会社(以下「フォレスタデント・ジャパン社」という。)発行の「フォレスタデント歯列矯正器材カタログVol.01」(甲3),2010年(平成22年)3月フォレスタデント・ジャパン社発行の「フォレスタデント歯列矯正器材カタログVol.02」(甲4),2012年(平成24年)4月フォレスタデント・ジャパン社発行の「フォレスタデント歯列矯正器材カタログVol.03」(甲5),2015年(平成27年)7月フォレスタデント・ジャパン社発行の「フォレスタデント歯列矯正器材カタログVol.04」(甲6),2007年(平成19年)8月14日付けの株式会社トップラン宛てインボイスNo.20714670(甲7),2013年(平成25年)2月7日付けのフォレスタデント・ジャパン社宛てインボイスNo.21305254(甲8)に記載されているように,「スプリント」という商標を使用し今日に至っている。 したがって,本件商標の指定商品の分野の需要者は,「スプリント」の文字を含む本件商標が,本件商標の指定商品について使用された場合,その商品の需要者が申立人の業務に係る商品と出所について混同するおそれがあるから,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反してなされたものである。 4 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第11号該当性について ア 本件商標 本件商標は,上記1のとおり,「スプリントデンチャー」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成文字は,それぞれ同じ書体,同じ大きさ,等間隔で全体として外観上の構成がまとまりよく表されており,また,これより生ずる「スプリントデンチャー」の称呼も格別冗長というべきものではなく,よどみなく一連に称呼できるものである。 申立人は,本件商標の構成中の「デンチャー」の文字部分が,「義歯」の意味を有する語であるから,本件商標の指定商品及び指定役務との関係において自他商品識別標識として機能せず,要部は「スプリント」の文字部分にある旨主張しているが,本件商標は,その構成中の「デンチャー」の文字部分が,「denture」の語を表音で表し,「義歯,入れ歯」を意味する語として知られているとしても,その構成中の「スプリント」の文字が,指定商品及び指定役務を取り扱う業界である歯科医業の分野においては,後掲のとおり,顎関節症の治療に使用される「マウスピース」を指称する語として使用されていることから,識別力が高い語とはいえず,いずれかの文字部分が取引者,需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めるに足る事情は見出せない。 さらに,上記のとおり,まとまりよい構成態様からなる本件商標においては,「スプリント」と「デンチャー」の各文字のいずれかが強く支配的な印象を受けるような構成ではないことから,各文字間における軽重の差はないといえる。 そうすると,かかる構成においては,本件商標は,「スプリントデンチャー」の文字が不可分一体のものとして認識,把握されるとみるのが自然である。 そして,本件商標は,当該文字が,辞書等に掲載されていないものであるから,特定の語義を有しない一種の造語として理解されるとみるのが相当であって,その構成文字全体に相応した,「スプリントデンチャー」の一連の称呼のみを生じ,特定の観念を生じないものである。 イ 引用商標 引用商標は,上記2のとおり,「Mini-Sprint」の文字を標準文字で表してなるところ,「Mini」と「Sprint」の2つの単語の間に「-」(ハイフン)を介して結合した構成態様よりなるが,その構成文字は,それぞれ同じ書体,同じ大きさで等間隔にまとまりよく一体に表されているものであって,その構成文字全体から生ずる「ミニスプリント」の称呼も,無理なく一連に称呼し得るものである。 申立人は,引用商標の構成中の「Mini」の部分が,小さいことを表す接頭語であるから,要部は「Sprint」の文字部分にある旨主張している。 しかしながら,その構成中の「Mini」の文字が,「小さい,小型の」を意味する接頭語として知られているとしても,引用商標の指定商品との関係においては,商品の品質を具体的に表示するものとして直ちに理解されるものといい難いところであり,他に本件商標から上記文字部分を捨象して考察しなければならない理由も見出すことができない。 さらに,引用商標は,その構成中「Sprint」の文字部分が取引者,需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものではないから,その構成全体を一体不可分のものとして認識し,把握されるとみるのが自然である。 そして,引用商標は,当該文字が,辞書等に掲載されていないものであるから,特定の語義を有しない一種の造語として理解されるとみるのが相当である。 したがって,引用商標は,その構成文字全体に相応して「ミニスプリント」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。 ウ 本件商標と引用商標との類否 本件商標と引用商標とを対比するに,本件商標と引用商標とは,それぞれの構成に照らし,外観においては,判然と区別し得る差異を有するものである。 次に,称呼においては,本件商標から生じる「スプリントデンチャー」の称呼と引用商標から生じる「ミニスプリント」の称呼とは,「スプリント」の称呼部分を共通にするとしても,「デンチャー」及び「ミニ」という顕著な差異により,それぞれを一連に称呼するときは,全体の語調,語感が著しく相違し,明瞭に聴別することができるものである。 さらに,観念においては,両者は特定の観念を生じない造語であるから,本件商標と引用商標とは比較することはできない。 してみれば,本件商標と引用商標とは,観念において比較できないとしても,外観及び称呼の点において相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。 エ 小括 以上のとおり,本件商標は,引用商標とは非類似の商標であるから,本件商標の指定商品が引用商標の指定商品と同一又は類似のものであるとしても,商標法第4条第1項第11号に該当しない。 (2)商標法第4条第1項第15号該当性について ア 引用商標の周知性について (ア)申立人の提出に係る証拠及び申立人の主張によれば,以下の事実が認められる。 a フォレストデント・ジャパン社は,2008年(平成20年)8月フォレスタデント・ジャパン社発行の「フォレスタデント歯列矯正器材カタログVol.01」,2010年(平成22年)3月フォレスタデント・ジャパン社発行の「フォレスタデント歯列矯正器材カタログVol.02」,2012年(平成24年)4月フォレスタデント・ジャパン社発行の「フォレスタデント歯列矯正器材カタログVol.03」,2015年(平成27年)7月フォレスタデント・ジャパン社発行の「フォレスタデント歯列矯正器材カタログVol.04」において,「スプリント」,「ミニスプリント」,「Sprint」及び「Mini Sprint」の標章を使用して,歯列矯正器材の販売をしている(甲3?甲6)。 b 申立人から株式会社トップラン宛ての2007年(平成19年)8月14日付けインボイス(No.20714670)において,「Sprint」及び「Mini Sprint」を付したBracket等が輸出されている(甲7)。 また,フォレスタデント・ジャパン社宛ての2013年(平成25年)2月7日付けのインボイス(No.21305254)において,「Sprint」及び「Mini Sprint」を付したBracket等が輸出されている(甲8)。 (イ)判断 上記(ア)において認定した事実によれば,「スプリント」,「ミニスプリント」,「Sprint」及び「Mini Sprint」の語は,フォレスタデント・ジャパン社の歯列矯正器材の商品名として,また,申立人が我が国の企業に輸出した商品名であることは認められるとしても,我が国においてその周知性の度合いを客観的に判断するための資料,すなわち,申立人の業務に係る商品(歯列矯正器材)を広告・宣伝した時期,回数及びその方法,あるいは,該商品をどの時期に,どの地域で,どの程度の台数を販売したものか等,その取引状況を具体的に示す取引書類等の提出はないから,申立人提出の上記証拠によっては,引用商標の使用状況を把握することができず,引用商標の周知著名性の程度を推し量ることができない。 申立人は,引用商標をフォレストデント・ジャパン社の「フォレスタデント歯列矯正器材カタログ」において,使用している旨主張する。 しかしながら,当該カタログ(甲4?甲6)には,「ドイツFORESTADENT社 日本総代理店 フォレスタデント・ジャパン株式会社」の記載があり,「ドイツの矯正歯科器材メーカーであるフォレスタデント社(FORESTADENT,Bernhard Forster GmbH)」(甲4)及び「FORESTADENT,Bernhard Forster GmbH」の名称及び住所(甲5,甲6)が記載されており,「FORESTADENT,Bernhard Forster GmbH」の住所(甲5,甲6)が申立人と同じ住所であるとしても,当該「FORESTADENT,Bernhard Forster GmbH」は,申立人の名称と同じ名称とは認められず,当該カタログと申立人との関連を把握することができないから,その主張を認めることはできない。 さらに,インボイスにおいて,引用商標を付した商品が我が国に輸出されていることは見受けられるとしても,当該商品が我が国で販売されていることを裏付ける証拠の提出はない。 その他,申立人の提出に係る甲各号証を総合してみても,引用商標が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の需要者の間で,申立人の業務に係る商品(歯列矯正器材)を表示するものとして広く認識されているものと認めるに足る証左は見いだせない。 したがって,提出された証拠によっては,引用商標が,我が国において,申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識され,本件商標の登録出願時及び登録査定時に著名性を獲得していたとは認められないものである。 イ 出所の混同について 引用商標は,上記アのとおり申立人又は申立人の業務に係る商品を表示するものとして,本件商標の登録出願日前より,我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認められないものである。 また,上記(1)ウのとおり,本件商標と引用商標とは非類似の商標であり,全体として異なる視覚的印象や記憶を与え,看者に全く別異のものとして認識されるものといえるものであって,類似性の程度は決して高いとはいえないものである。 そうすると,本件商標をその指定商品及び指定役務について使用した場合に,これに接する需要者は引用商標又は申立人を連想,想起するようなことはないというべきである。 してみれば,本件商標権者が,本件商品をその指定商品及び指定役務について使用しても申立人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品及び役務であるかのように,商品及び役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものと判断するのが相当である。 その他,本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (3)まとめ 以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものではなく,その登録は同条第1項の規定に違反してされたものとはいえないものであり,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきものである。 よって,結論のとおり決定する。 後掲 歯科医業の分野で「スプリント」の文字が,顎関節症の治療に使用される「マウスピース」を指称する語として使用されている例 (1)メディカルメディア株式会社が運営する「ドクターぷらざ デンタルサーチ」のウェブサイト中の,「歯科用語ライブラリ」における「スプリント」の項目に,「顎関節症の治療に使われる透明の樹脂製マウスピースのこと」との記載がある。 https://www.dr-plaza.net/ha/yougo/yougo_su_09.html (2)厚生労働省が提供する「e-ヘルスネット」のウェブサイト中の「健康用語辞典」における「歯・口腔の健康」のカテゴリ中の「スプリント」の項目に,「顎関節症などの治療に用いられる、口の中に入れるプラスチックの装置(ボクサーのマウスピースを小さくしたような形)。・・・本邦では、スプリント・マウスピース・シーネ・アプリアンス・オクルーザルプレートなどいろいろな名前でよばれています。・・・」との記載がある。 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/teeth/yh-013.html (3)社会医療法人明和会が運営する中通歯科診療所のウェブサイト中の「歯科通信」における「2014年5月号 顎関節症について 顎関節症の治療7」の記事中の「スプリント療法(前歯接触型、全歯列接触型、特殊型)」の項目に,「・・・顎関節症の治療法、そして治療のアイテムとしてよく使われる『スプリント』についてお話しします。」及び「5.スプリント療法 マウスピース、アプライアンス、シーネなどといろいろな名称がつけられている歯科用プラスチックである『レジン』などで作られた可撤式の『装具』のことを、スプリントと言います。・・・」との記載がある。 http://www.meiwakai.or.jp/n_sika/archive/sika/1442 (4)公益社団法人日本歯科医師会が運営する「歯とお口のことなら何でもわかるテーマパーク8020」のウェブサイト中の「お口の病気と治療」における「顎関節症」の項目に,「4.顎関節症の治療はどのようにするのですか・・・それはスプリント(マウスピース)、開口訓練、マッサージや湿布、習慣や癖を修正する行動療法などです。」及び「(1)歯科医院での治療 一般的にはスプリント(マウスピース)による治療を行います。これは上顎あるいは下顎の歯列に被せるプラスチックの装置です・・・」との記載がある。 https://www.jda.or.jp/park/trouble/index04_02.html (5)医療法人社団後藤歯科医院が運営する同医院のウェブサイト中の「診療案内 口腔外科」における「顎関節症」の項目に,「症状によって治療法は異なりますが、初期治療としては筋肉のマッサージやスプリント(マウスピース)などを用います。」との記載があり,「スプリント(マウスピース)の取り扱い」という説明書がダウンロードできる。 http://www.gotosika.com/surgery/index.html http://www.gotosika.com/images/download/explanation_sheet_sprint.pdf (説明書) |
異議決定日 | 2019-10-02 |
出願番号 | 商願2018-28528(T2018-28528) |
審決分類 |
T
1
651・
261-
Y
(W1044)
T 1 651・ 262- Y (W1044) T 1 651・ 271- Y (W1044) T 1 651・ 263- Y (W1044) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 赤澤 聡美 |
特許庁審判長 |
榎本 政実 |
特許庁審判官 |
大森 友子 薩摩 純一 |
登録日 | 2019-01-11 |
登録番号 | 商標登録第6112467号(T6112467) |
権利者 | 古谷 彰伸 |
商標の称呼 | スプリントデンチャー、スプリント |
代理人 | 藤田 崇 |
代理人 | 松山 圭佑 |
代理人 | 高矢 諭 |
代理人 | 高橋 菜穂恵 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 須藤 修三 |