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審決分類 審判 査定不服 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 登録しない W05
管理番号 1356089 
審判番号 不服2018-15696 
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-27 
確定日 2019-09-18 
事件の表示 商願2017-104333拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「息らくらく」の文字を書してなり、第5類「薬剤,医療用試験紙,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,綿棒,歯科用材料,おむつ,おむつカバー,はえ取り紙,防虫紙」を指定商品として、平成29年7月27日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『息らくらく』の文字を書してなるところ、これよりは『息をするのがたやすいさま』ほどの意味合いを容易に認識するものであり、また、本願の指定商品中、『衛生マスク』を取り扱う業界において、呼吸をしやすくしたマスクが製造、販売され、これら商品に当該文字が使用されている実情がある。そうすると、本願商標は、これをその指定商品中、『衛生マスク』に使用しても、需要者をして、商品の広告、宣伝を表示したものの一類型として理解されるにとどまり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できない商標であるといわざるを得ない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第6号該当性について
本願商標は、前記1のとおり、「息らくらく」の文字を書してなるところ、その構成中、「息」の文字は、「口や鼻から呼吸する空気。呼気または吸気、特に呼気をさす。また、呼吸作用。」などの意味を、「らくらく」の文字は、「たやすいさま」などの意味を、それぞれ有する語(各語の意味については、「広辞苑 第六版」(株式会社岩波書店)から引用。)として慣れ親しまれており、本願商標は、その構成全体から、「息(呼吸)がたやすい」ほどの意味合いを容易に理解、認識させるものである。
ところで、本願の指定商品には「衛生マスク」が含まれているところ、マスクは、「病菌・埃などを防ぐために鼻・口を覆うもの。」(「広辞苑 第六版」(株式会社岩波書店))であって、近年、ウイルス対策や花粉対策などで、市場が拡大しており、その機能性、装着感などについて、素材、形状などの開発、改良が進められている。そして、マスクは、上記のとおり、呼吸をする器官を覆って使用するものであることから、その開発、改良に際しては、防御力の向上などのほか、通気性の向上や呼吸のしづらさなどについても、課題の一となり得るものである。
また、商品の広告、宣伝の際には、商品の特徴として改良点などを掲げることが広く一般に行われており、このことは、本願の指定商品中の「衛生マスク」についても該当するといえる。
さらに、マスクを取り扱う業界においては、該商品の改良点といえる通気性のよさや呼吸のしやすさを商品の特徴としてうたった商品が製造、販売されており、このような特徴を簡潔に表す語として、「息らくらく(ラクラク)」などの文字が使用されている実情がある(別掲参照)。
そうすると、「息らくらく」の文字からなる本願商標は、これをその指定商品中の「衛生マスク」に使用するときは、取引者、需要者をして、その商品の特徴をうたう宣伝などをする際に用いられている語の一類型と認識されるにとどまり、商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識されることはないというべきである。
したがって、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であり、商標法第3条第1項第6号に該当する。
(2)使用による識別力獲得の有無
請求人は、本願商標は使用された結果、自他商品識別力を獲得するに至っている旨主張し、証拠として、原審及び当審を通じて、資料1ないし資料8及び甲第1号証ないし甲第91号証を提出した(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)。
そこで、請求人の主張及び同人提出の証拠から、以下検討する。
ア 請求人は、2012年に、「息らくらくマスク」と称する商品の販売を開始した(甲35、甲37)。
イ 請求人のウェブページの紹介ページによると、請求人の製造に係るマスク(以下「使用マスク」という。)の商品パッケージに、「息らくらく」の文字が付されていることが認められる(甲9ないし甲14)。また、新聞における記事又は広告(甲24ないし甲61)などにおいても、「息らくらく」の文字が付された使用マスクが掲載されている。
ウ 請求人は、表題に「息らくらくマスクの売上金額推移」の記載がある「年」(2013年から2018年9月まで)と「売上金額」からなる表を作成し、提出しているが(甲22)、当該標題に記載された「息らくらくマスク」と称する商品の詳細やその商品に付された標章と本願商標との関係及びその具体的な販売数、市場占有率等は不明である。
エ 請求人は、テレビ埼玉のゴルフ番組において、使用マスクのテレビCMを行ったと主張し、資料5、甲第62号証及び甲第63号証を提出している。該CMは、使用マスクの商品パッケージの画像が表示され、「息らくらくシリーズ」の文字が字幕表示されるものの、画面右上に請求人の名称が常に表示されているものである(資料5)。しかしながら、該CMと、放映期間等が記載された「『息らくらくマスク』テレビ放映のご案内」(甲62)との関係は、明らかでない。
オ 請求人は、YouTubeにおいて、商品パッケージに「息らくらく快適マスク」などの文字が請求人の名称とともに表示されている画像などを動画配信したことがうかがえるものの(甲64、甲65)、その具体的な時期、期間及び閲覧回数などは不明である。
カ 請求人は、電車内において、使用マスクの商品パッケージの画像などが請求人の名称とともに表示されているつり革広告を行ったことがうかがえるものの(資料4、甲66)、広告を行った具体的な路線、時期、期間などは不明である。
キ 使用マスクは、平成25年(2013年)8月から平成30年(2018年)8月まで、「日本医療衛生新聞」、「日用品化粧品新聞」、「薬粧タイムズ」や流通情報紙に、年1回から6回ほど、使用マスクの商品パッケージの画像やその拡大画像などが、請求人の名称とともに記載されている記事又は広告が掲載された(資料6、甲24ないし甲61)。
ク 請求人は、平成25年(2013年)から平成30年(2018年)まで、「ドラッグストアショー」(平成25年、平成26年、平成30年、それぞれ3日間の開催)、「産業交流展」(平成27年、平成28年、平成29年、それぞれ3日間の開催)、「東京医療衛生用品フェア」(平成25年2月及び8月、平成27年、平成28年、平成29年)、「東流社 春の商談会」(平成30年)などの展示会で、使用マスクの商品パッケージなどを掲示したものの(甲69ないし甲85)、一部の展示会については、開催期間、開催場所、入場者数やその内訳等、詳細が不明である。
ケ 以上によると、請求人は、2012年に、「息らくらくマスク」と称する商品を販売したものの、該商品の販売期間は長いものとはいえず、請求人は、食品スーパーを中心に全国で販売し、年間売上高は2億円を超えていると主張するが、その具体的、客観的な販売数、販売地域、市場占有率等は不明である。そして、該商品のテレビCMは、客観的な放映地域などが明らかでなく、仮に、甲第62号証に記載された、平成28年(2016年)5月21日から6月25日の毎週土曜日、23時から23時半の時間帯のとおりの放映がされたとしても、およそ1か月の間に週1回、深夜の時間帯に放映され、その回数もわずか6回と、極めて限定的なものである。また、動画配信及びつり革広告は、行われた時期、期間などが不明であり、かつ、これらは請求人の名称と共に配信、掲示されたものである。さらに、新聞広告や新聞、雑誌等による紹介記事は、専門紙による掲載のみであって、その掲載回数も多いものとはいえず、マスクの需要者である一般の消費者が、広くこれらの広告等に接する機会があったとはいえないし、該記事は常に請求人の名称とともに該商品を紹介するものである。加えて、展示会などにおける出展は、その回数、期間や地域が限定的であって、一般の消費者が広く接する機会があったものとはいえず、かつ、一部の展示会については詳細が不明である。
その他、請求人の主張及びその提出に係る証拠を総合してみても、「息らくらく」の文字部分のみが独立して自他商品識別力を有するに至っていると認めるに足る証拠は見いだせない。
したがって、本願商標は、取引者、需要者にとって、請求人の出所を表示するものとして認識されているとは認められず、自他商品識別力を獲得していると認めることはできない。
(3)まとめ
以上より、本願商標は、使用により自他商品識別力を獲得したとは認められず、何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標であるから、商標法3条第1項第6号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (別掲)
1 原審において示した使用例(審決時において照会できないものを除く。)。
(1)「日本バイクリーン」のウェブサイトにおいて、「息らくらく!/選べるマスク2タイプ。」、「すーっと息が通り、らくに呼吸できること。」の記載がある。
(http://www.vicre.co.jp/product/pdf/fm5800.pdf)
(2)「イトーヨーカドー」のウェブサイトにおいて、「新感覚やわふわ快適マスク 60枚入」の見出しの下、「ぴったりフィットで息らくらく」の記載があり、「商品の説明」欄に、「息苦しさを軽減しつつも、しっかりガード」の記載がある。
(https://iyec.omni7.jp/detail/4562355190844)
(3)「UNIFORM1」のウェブサイトにおいて、「PM2.5対策アレルキャッチャーマスク(キッズサイズ)(30枚入)」の見出しの下、「素材特長 抗ウイルス:ウイルスを含む粒子飛沫(3ミクロンM以上)99%カット・・・●通気性がいいので息らくらく」の記載がある。
(https://www.uniform1.com/u1/item_page/HK/SI2/itemSI2_ACM3.php?b1_code=HK)
(4)「amazon.co.jp」のウェブサイトにおいて、「Lautechco PM2.5 風邪・花粉症対策 フィルター マスク 息らくらくマスク コットン ふつうサイズ 3枚入 (ブラック)」の商品が掲載されている。
(https://www.amazon.co.jp/dp/B01N3S9RVO)

2 当審で示す使用例
(1)「KOKUBO」のウェブサイトにおいて、「口元快適マスク レギュラーサイズ」に、「息らくらく 会話スムーズ」の文字の付された商品パッケージの画像が掲載され、「・・・息がらくにできて会話もスムーズにできます。」と記載されている。
(https://kokubo.co.jp/goods/km-304.html)
(2)「amazon.co.jp」のウェブサイトにおいて、「イヅハラ産業 マスク [ 花かご柄/ピンク / 約10.5×18.0cm ]」に、「息らくらく」の文字が付された商品パッケージの画像が掲載され、「・・・花粉やPM2.5の微粒物質をも通さない目の細かさですが、呼吸はラクラク!」の記載がある。
(https://www.amazon.co.jp/dp/B07K64PTWS)
(3)「タマガワエーザイ」のウェブサイトにおいて、「フィッティ 7DAYSマスク レモンミント 通気性が良い 7枚入」の見出しの下、「約9倍の通気性で息らくらく」の文字が付された画像が掲載されている。また、「姉妹品『7DAYSマスク』と比較して約9倍の通気性で息らくらく。」の記載がある。
(https://www.tamagawa-eizai.co.jp/product/mask/lemon/)
(4)「Malliah」のウェブサイトにおいて、「【不織布マスク】 高密着エアクリーンマスク ふつうサイズ 50枚入」に、「口元に空間を作り息らくらく」の文字が付された商品パッケージの画像が掲載されている。また、「●高反発センターバーが口元に空間を作りますので、息らくらく。」の記載がある。
(http://www.malliah.jp/shopdetail/000000007064/)
(5)「YAOKOネットスーパー」のウェブサイトにおいて、「YAOKO 日本製不織布マスク ふつう」の見出しの下、「息らくらく日本製薄型フィルター使用」の文字が付された商品パッケージの画像が掲載されている。また、「日本製薄型フィルターを使用することにより、細菌・花粉の捕集効率そのままで通気性を大幅にアップしました。」の記載がある。
(https://www.ns.yaoko-net.com/front/app/commodity_detail/1109/4937768113061/?isJustLooking=1)
(6)「エスピーフレンズ」のウェブサイトにおいて、「立体フェイス フィットマスク3枚入」に、「息らくらく。お化粧うつりなし」の文字が付された商品パッケージの画像が掲載されている。また、「立体型で息らくらく」の記載がある。
(http://www.sp-friends.com/index.php?module=pubItem&action=Display&vsho_cd=P03-0168)

審理終結日 2019-07-19 
結審通知日 2019-07-22 
審決日 2019-08-05 
出願番号 商願2017-104333(T2017-104333) 
審決分類 T 1 8・ 16- Z (W05)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 寺澤 鞠子加藤 百宇小田 昌子 
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 有水 玲子
小松 里美
商標の称呼 イキラクラク 
代理人 工藤 莞司 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 井上 博人 
代理人 黒川 朋也 

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