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審決分類 審判 全部無効 観念類似 無効としない W1821
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない W1821
審判 全部無効 称呼類似 無効としない W1821
審判 全部無効 外観類似 無効としない W1821
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W1821
管理番号 1356049 
審判番号 無効2018-890032 
総通号数 239 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-11-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-05-02 
確定日 2019-08-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第5946766号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5946766号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成28年11月18日に登録出願、第18類「トートバッグ,ショルダーバッグ,ブリーフケース,買物袋(車付きのものを含む。),リュックサック,弁当箱を収納できる汎用性のあるバッグ(かばん),巾着,ポーチ,その他のかばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,革ひも,皮革製包装用容器,愛玩動物用被服類」及び第21類「弁当箱,弁当箱専用の巾着,弁当箱の付属品としての袋,弁当箱用ゴムバンド,クーラーバッグ,携帯用クーラーボックス,弁当箱専用の保冷・保温バッグ,はし,はし箱,重箱,飲料又は食品保存用の保冷・保温容器,携帯可能なペットボトル又は水筒用の保冷・保温用カバー,コースター(紙製及び織物製のものを除く。),その他の台所用品(「ガス湯沸かし器・加熱器・調理台・流し台」を除く。)」を指定商品として、同29年4月10日に登録査定、同年5月12日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するとして引用する商標は、別掲2のとおりの構成からなるものであって、これに白抜きを含めた様々な色彩からなる商標(以下「引用商標」という。)である。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第87号証(枝番号を含む。以下「甲1」等、省略して表示する。)を提出した。
なお、後記4の商標法第4条第1項第2号該当性についての理由は、本件審判請求日後の平成31年3月16日付け手続補正書(自発)により追加されたものである。
1 商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)引用商標の周知性
ア 申立人が引用商標を使用するようになった経緯
引用商標の「GRANDE」ロゴは、2000年(平成12年)頃にデザイナーA氏がサッカーユニホームのロゴとして作り、これをウェアに表示して販売していた。最初は個人で販売していたが、2004年(平成16年)に有限会社エル・グラフィカ(代表者A、以下「エルグラフィカ社」という。)を設立し、エルグラフィカ社で販売し、その販売しているウェアの大半は、有限会社イーズ(以下「イーズ社」という。)が製作請負をしていた。イーズ社は、2009年(平成21年)頃から浦和パルコの催事で時々「GRANDE」ロゴを表示した製品を出店販売するようになった。ところがエルグラフィカ社は、イーズ社に対する製作請負代金を滞納するようになっていた。
2011年(平成23年)の東日本大震災の影響でイーズ社及びエルグラフィカ社は事業継続が困難となり、同年4月に支払ができないということで、イーズ社の代表者とエルグラフィカ社の代表者が請求人の代表者を訪れ、資金を出して事業を引き受けてほしいと頼んできた。
そこで、請求人の代表者は、エルグラフィカ社に「GRANDE」事業譲渡代金として、金400万円を渡した(甲67、甲72)。エルグラフィカ社は、その代金でイーズ社に滞納金を返済した。
請求人は、2011年(平成23年)4月に引用商標に関する一切の事業を譲り受けて、フットボールアパレル商品の製造・販売事業を開始した。
以来、請求人は、現在に至るまでホームページ(甲3)のアドレスを商取引窓口として事業を行っている。
また、商品カタログ(甲2ないし甲24)から明らかなように、請求人は、引用商標を使用した取扱商品として、フットボールに使用するウェアやソックスなどのフットボール用品と、一般的な洋服、コート、ワイシャツ類、ティーシャツ、下着、運動用特殊衣服、靴下、帽子、サッカー用具だけでなく(甲2ないし甲55)、かばん類、袋物(甲2ないし甲24、甲54及び甲55)、弁当箱、クーラーボックス、弁当箱専用の保冷・保温バック、はし、はし箱、重箱、飲料又は食品保存様の保冷・保温容器、携帯可能なペットボトル又は水筒用の保冷・保温バック等の台所用具やランチシリーズ用品など(甲8、甲10、甲18、甲19、甲23及び甲53)を商品開発し、販売している。
イ 請求人による引用商標の使用実態
(ア)商品カタログに基づく引用商標を使用した商品販売
請求人は、事業譲渡を受けた2011年(平成23年)以降、現在まで毎年継続的に商品カタログを作成して、引用商標を付した商品の販売をしている(甲2ないし甲24)。
(イ)請求人は、平成23年(2011年)に、イーズ社が定期建物賃貸者契約していた浦和パルコ店の契約名義を請求人に変更して、同店4階に「GRANDE」ロゴを付した店舗を出店して、商品の販売を開始した。同店での商品の販売は、平成26年(2014年)3月まで継続して行われた(甲69の1及び甲69の2)。
請求人は、イーズ社の定期建物賃貸者契約が満了となった際に、平成26年(2014年)3月20日付けで、浦和パルコと新たな定期建物賃貸者契約を締結し、店舗をリニューアルして、同月21日からオープンした(甲70ないし甲70の2の3)。
(ウ)イベント参加による引用商標の周知活動
請求人は、毎年様々なイベントに参加して、引用商標の周知と関連商品の拡販に努めてきた(甲25ないし甲38)。
(エ)コラボ企画による引用商標の周知活動
請求人は、他社の有名ブランドとコラボレーションにより、引用商標を付した新しい商品を開発することを企画し、その開発された商品を販売して売上を高めると共に、引用商標の周知性を高める努力をしてきた(甲39ないし甲44)。
(オ)宣伝・広告掲載による引用商標の周知活動(甲45ないし甲50)
(カ)サプライヤー契約(チーム・選手)による引用商標の周知活動
請求人は、現在6チームと7名の選手とオフィシャルサプライヤー契約が成立して、ユニホームその他のフットボール用品を提供している(甲51の1及び甲51の2)。
(キ)「○○GRANDEチーム」の名称使用許諾による引用商標の周知活動
請求人は、現在「○○GRANDEチーム」の名称を使用することを許諾したサッカーチームを全国で49チームと契約し、それらのチームに対して引用商標を付したユニホームやウェア、その他のフットボール用品を提供している。
(ク)インターネット通販契約による引用商標の周知活動
請求人は、インターネット上のホームページ(甲52)直販以外に、WEB上の「Amazon Fashion」(甲53)や「ZOZOTOWN」(甲54)や「YAHOO!JAPANショッピング」(甲55)等のオンラインショッピングサイトと通信契約し、引用商標を付した商品群を広く通信販売している。
(ケ)その他の引用商標の拡販活動
請求人は、300万DL突破「BFB2015-サッカー育成ゲーム」と人気サッカーアパレルブランド「GRANDE」とタイアップした(甲56)。
サッカーゲームの中で引用商標を使用したユニホームやその他のフットボール用品を出現させ、サッカーブランドとしての周知活動をした。
請求人は、2017年6月1日、武蔵浦和に「GRANDE」フットサルコートとアパレルショップが融合した施設をオープンした(甲57)。
ウ 引用商標の総売上高
請求人は、2011年(平成23年)に事業譲渡を受けて以来7年間、引用商標を使用した商品群の総売上高は、4億2千5百万円以上にもなっている(甲80)。
エ 引用商標は未登録ではあるが、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品であることが需要者の間で広く知られた周知商標になっていること明らかである。
(2)引用商標と本件商標との類否
引用商標と本件商標とを比較すると、その外観、称呼、観念ともに類似する商標である。
また、本件商標の指定商品は、引用商標を付して販売している商品と同一又は類似である。
(3)したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして一般に広く認識されている商標(引用商標)であるから、本件商標をその指定商品に使用された場合、需要者が請求人の業務に係る商品と出所の混同を起こすおそれのある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第19号該当性について
株式会社イエロースタジオ(以下「イエロースタジオ社」という。)は、請求人との間で取引関係を結んでいた深い関わりがあるため、引用商標は請求人が長年それを使用してきた周知商標であることを充分承知している。イエロースタジオ社は、請求人との取引が始まった直後(約1か月後)に引用商標と同一又は類似する商標について、無断で住所架空のエルグラフィカ社との共同名義で、商標登録出願(冒認出願)をしており、2件の商標権(登録第6003074号、登録第5946766号)を取得している(甲1及び甲61)。
このようなイエロースタジオ社とエルグラフィカ社の行為は、請求人が商標権を取得していないことを知った上で、周知商標の所有者の承諾を得ることなく商標登録出願し、権利取得したものであり、不正競争行為である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
4 商標法第4条第1項第2号該当性について
本件商標は、パリ条約の同盟国であるグレートブリテン及び北アイルランド連合王国の記章であって、経済産業大臣が指定するもの(平成30年6月29日経済産業省告示第128号)と同一又は類似のものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第2号に該当する。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証を提出した(以下「乙1」等、省略して表示する。)。
1 商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)本件商標の作成者
本件商標(「GRANDE」ロゴ)の作成者は、エルグラフィカ社の代表者である(乙1)。
(2)エルグラフィカ社の設立
A氏は2004年(平成16年)にエルグラフィカ社を設立するまでの間は、個人として本件商標の知名度向上のため諸種の営業活動を行ない(乙2ないし乙4)、エルグラフィカ社の設立後は、2009年(平成21年)5月21日付けブログ記事(乙5)に示すとおり、当該法人として本件商標を使用した商品の販売活動を積極的に行なってきた。
なお、エルグラフィカ社は、現在事項全部証明書(乙6)のとおり、衣料用繊維製品やスポーツ用品、日用雑貨品等の販売を目的とし、東京都渋谷区を本店所在地として平成16年12月3日に設立された。現在は、埼玉県さいたま市を事実上の拠点として、共有の商標権者であるイエロースタジオ社と共に、GRANDEブランドの各種商品の営業・販売活動を行っている。
(3)請求人が主張する「GRANDE」の事業譲渡について
エルグラフィカ社の代表社A氏は、請求人の代表者から事業譲渡代金として金銭を受領した覚えは一切ない。
(4)請求人が主張する引用商標の周知性について
エルグラフィカ社は、2011年(平成23年)4月以降、請求人との間で特に明確な取り決めをすることなしに、請求人による「GRANDE」ロゴ使用商品の販売業務の一翼を担ってきたのは事実であるが、これらの販促活動は請求人の従業員として行ったものではなく、あくまでも本件商標の浸透を図るためのものであった。
(5)小括
以上のように、被請求人は2000年(平成12年)10月頃、自身で本件商標に係る標章のデザインを考案し、2001年(平成13年)頃から本件商標と同一の「GRANDE」を冠した衣料品の販売を行ない、2004年(平成16年)以降は、エルグラフィカ社として「GRANDE」商品の営業活動を行なってきたものであり、Jリーグチームのサポーターグループ「URAWABOYS」のリーダーとして活躍していたA氏の知名度もあって、各種媒体を介し需要者に一定程度認知されるに至っていたのである。
また、本件「GRANDE」事業は、前記したとおり請求人には何ら譲渡しておらず、2004年(平成16年)以降現在まで本件商標を使用した商品を「GRANDE」として販売を行なってきており、請求人が自ら引用商標についての周知性を主張するのはきわめて失当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものでない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標は、Jリーグ所属のサッカーチームのサポーターグループ・リーダーとして活躍した知名度のあるA氏の「GRANDE」として周知著名となっており、請求人の取扱いに係る商品と混同するおそれは皆無であるし、請求人は混同を生ずるとする具体的証拠を何ら提出していない。
このように、本件商標は商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録された事実はない。
3 商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標は、エルグラフィカ社の代表者であるA氏により2000年(平成12年)10月頃考案され、2001年(平成13年)頃から、スポーツ衣料のブランドとして正当に使用されてきた実績があり、そこには何ら不正の意図は存在しない。
したがって、本件商標が商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたとする請求人の主張は失当である。

第5 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
証拠(本件商標の登録査定時以前のものに限る。)及び請求人の主張によれば、以下のとおりである。
(1)請求人は、引用商標を付したウェア、バッグ等に関する販売事業を行っている(甲9等)。
(2)2011年(平成23年)から2016年(同28年)までの商品カタログの表紙及び裏表紙(甲2、甲4ないし甲13及び甲15ないし甲17)には、引用商標が付されているが、請求人の住所及び名称が記載されている商品カタログは、「2014 SPRING-SUMMER」(甲9)、「2014 AUTUMN-WINTER」(甲10)、「2015 SPRING-SUMMER」(甲11)、「2016 SPRING-SUMMER」(甲12、13)、「2016 Autumn Winter APPAREL LINE」(甲16)及び「2016-2017.Collection. APPAREL LINE」(甲17)である。
そして、これらのカタログには、「Tシャツ、ハーフパンツ、かばん、シューズケース、カードホルダー、タンブラー、帽子、パーカー、靴下、マグカップ、湯飲み、タオル、財布」等の商品(以下「使用商品」という。)が掲載されている。しかしながら、これら商品カタログの作成部数や頒布先を示す証左は見いだせない。
(3)請求人は、2014年(平成26年)3月21日から2019年(同31年)3月20日まで浦和パルコの4階に引用商標を表示した店舗を設け、商品の販売を行った(甲70ないし甲70の2の3)。
(4)「BEliEVE JAPAN CUP」(甲25)及び「GRANDE×FFC CUP 2014」(甲29)のイベントにおいて、引用商標が表示されていることは推認できるものの、請求人に係る記載がなく、引用商標の表示と請求人との関係は明示されていない。
(5)「週刊サッカーダイジェスト」(2015年(平成27年)2月5日発行、甲45)には、引用商標が表示された広告が掲載されているが、請求人に係る記載がなく、この広告と請求人との関係は明示されていない。
また、「高校サッカーダイジェスト」(2016年(平成28年)5月25日発行、甲47)には、引用商標の表示とともに「今年で創立15周年を迎えたサッカーブランド『グランデ』。」と紹介され、併せて引用商標を付したジャージー製シャツ等の商品が掲載されているが、請求人に係る記載がなく、この紹介記事及び記載商品と請求人との関係は明示されていない。
(6)請求人が、2015年(平成27年)12月27日及び同年11月1日に締結したサプライヤー契約書(甲51の1及び甲51の2)は、具体的なチーム名やスポーツ選手名がマスキングされているだけでなく、これらの契約者(チーム、選手)が、引用商標を付した商品を着用し、どの程度テレビや雑誌等に取り上げられ、一般人の目に触れる機会があったかは不明である。
(7)株式会社サイバードが2015年(平成27年)6月24日に配信した「BFB 2015-サッカー育成ゲーム」のリリース記事(甲56)において、「GRANDEオリジナルユニフォームが購入できます。」の記載とともに、引用商標が付されたTシャツの画像が掲載されているが、請求人に係る記載がなく、この照会記事及び記載商品と請求人との関係は明示されていない。
(8)請求人の主張及び「GRANDE年度別売上(税込)」と題する各年度別、月別の納品額の表によれば、引用商標を使用した商品群の総売上高は、2011年(平成23年)から7年間で、4億2千5百万円以上と記載されている(甲80)。
(9)前記(1)ないし(8)によれば、請求人は、遅くとも平成26年(2014年)から引用商標を使用商品に使用をしていること及びその商品の売上げが一定程度あることは認められる。
しかしながら、引用商標が表示されたイベント、雑誌に掲載された広告及び配信されたゲームには、請求人に係る記載がなく、請求人との関係が不明である。
また、請求人が締結したサプライヤー契約書については、契約相手が不明であり、これが引用商標の周知性にどの程度関係したのかも推し量ることができない。
そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表すものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
2 本件商標と引用商標との類否について
本件商標は、別掲1のとおり、「GRANDE」の欧文字を太い書体で大きく表し、該欧文字の「G」の文字の真上に三つの同心円の図形、「DE」の文字の上部に星が二つ並んだ図形及び「E」の文字の右下に極めて小さい円形の図形をそれぞれ配置した構成からなるものである。
他方、引用商標は、別掲2のとおり、「GRANDE」の欧文字を太い書体で大きく表し、その下に「FOOTBALL PRODUCTS」の欧文字を細い書体で小さく表し、「GRANDE」の欧文字の「G」の文字の真上に三つの同心円の図形、「DE」の文字の上部に星が二つ並んだ図形及び「E」の文字の右下に極めて小さい円形の図形をそれぞれ配置した構成からなるものである。
そこで、本件商標と引用商標とを比較すると、異なるところは、下部における細い書体で小さな文字で表された「FOOTBALL PRODUCTS」の欧文字の有無の差のみであり、太い書体で大きく表した「GRANDE」の欧文字を始め、他の全ての構成要素を共通にするものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、類似する商標というべきである。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
前記2のとおり、本件商標は、引用商標と類似する商標である。
また、引用商標の使用商品には、「かばん、シューズケース、タンブラー、マグカップ、湯飲み、財布」が含まれており、これらの商品は、本件商標の指定商品中、第18類「トートバッグ,ショルダーバッグ,ブリーフケース,買物袋(車付きのものを含む。),リュックサック,弁当箱を収納できる汎用性のあるバッグ(かばん),巾着,ポーチ,その他のかばん類,袋物」及び第21類「弁当箱,弁当箱専用の巾着,弁当箱の付属品としての袋,弁当箱用ゴムバンド,弁当箱専用の保冷・保温バッグ,重箱,その他の台所用品(「ガス湯沸かし器・加熱器・調理台・流し台」を除く。)」と同一又は類似する商品である。
しかしながら、引用商標は、前記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
前記2のとおり、本件商標は、引用商標と類似する商標であるから、両者の類似性の程度は高いといえる。
また、引用商標は、その構成からして独創性の程度は高いといえる。
さらに、前記3のとおり、本件商標の指定商品には、引用商標の使用商品と同一又は類似する商品が含まれているものであるから、両者の関連性は高く、需要者を共通にするといえる。
しかしながら、引用商標は、前記1のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
そうすると、たとえ本件商標と引用商標との類似性の程度、引用商標の独創性の程度及び本件商標の指定商品と引用商標の使用商標との関連性がそれぞれ高く、需要者を共通にするとしても、本件商標は、これに接する取引者、需要者が、引用商標又は請求人を連想又は想起するものとはいえない。
してみれば、本件商標は、これをその指定商品に使用する場合、これに接する取引者、需要者が、該商品を請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について、混同を生じるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第19号該当性について
前記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
してみれば、本件商標は、他人の業務に係る商品又役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標ということはできない。
また、請求人が提出した証拠からは、本件商標が不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認めることはできず、他にこれを認めるに足りる具体的事実を見いだせない。
なお、請求人は、イエロースタジオ社は、請求人との間で取引関係を結んでいた深い関わりがあり、引用商標が請求人の周知商標であることを十分承知していたといえ、商標権者らは、請求人が商標権を取得していないことを知った上で、周知商標の所有者の承諾を得ることなく商標登録出願し、権利取得した旨主張する。
しかしながら、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないから、請求人の主張は、その前提において採用することはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
6 商標法第4条第1項第2号該当性について
請求人は、平成31年3月16日付け手続補正書(自発)により、審判請求書における請求の理由を補正し、本件商標は、商標法第4条第1項第2号に該当するので、商標法第46条第1項第1号により、無効にすべきである旨の主張を追加している。
しかしながら、この請求の理由の補正は、当初の審判請求書における請求の理由について、新たに無効理由を追加するものであってその要旨を変更するものであるから、商標法第56条第1項において準用する特許法第131条の2第1項の規定により認めることができない。
請求人は、当初の審判請求書に不記載であっても合理的な理由のある場合は、要旨変更の補正が認められる場合がある旨主張すると共に、本件商標は審判請求後に商標法第4条第1項第2号に該当するものとなったものであり、当初の審判請求書に無効理由を記載できなかったことに合理的な理由があり、請求の理由の追加補正は許容される旨主張している。
ところで、商標法第56条第1項において準用する特許法第131条の2第1項は、審判請求書の補正は、その要旨を変更するものであってはならない旨規定しているが、合理的な理由のある場合は要旨変更の補正が認められるとは規定されていない。そして、同規定は、審判当事者間の衡平と審理期間の短縮を図る趣旨で規定されたものである(知的財産高等裁判所 平成20年(行ケ)第10086号判決)。
請求人の行った請求の理由の補正は、当初の審判請求書に記載された請求の理由とは内容の異なる理由を追加するものであり、被請求人の防御に大きな影響を与え、再度反論の機会を与えないと防御の機会を失わせるおそれのあるものということができる。
そうすると、請求の理由の追加補正は、そもそも商標法第56条第1項において準用する特許法第131条の2第1項において許容されるものではなく、また、同項の趣旨にも反するものである。
したがって、請求人の主張は採用できない。
7 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項のより、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 本件商標



別掲2 引用商標




審理終結日 2019-06-19 
結審通知日 2019-06-21 
審決日 2019-07-02 
出願番号 商願2016-130392(T2016-130392) 
審決分類 T 1 11・ 253- Y (W1821)
T 1 11・ 271- Y (W1821)
T 1 11・ 251- Y (W1821)
T 1 11・ 252- Y (W1821)
T 1 11・ 222- Y (W1821)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 敦子 
特許庁審判長 小出 浩子
特許庁審判官 木村 一弘
山田 啓之
登録日 2017-05-12 
登録番号 商標登録第5946766号(T5946766) 
商標の称呼 グランデ、オオグランデ 
代理人 大津 洋夫 
代理人 八鍬 昇 
代理人 八鍬 昇 

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