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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W03 審判 全部申立て 登録を維持 W03 |
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管理番号 | 1353373 |
異議申立番号 | 異議2018-900073 |
総通号数 | 236 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2019-08-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-03-23 |
確定日 | 2019-07-04 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第6009213号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第6009213号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第6009213号商標(以下「本件商標」という。)は、「Pジェルコート」の文字を標準文字で表してなり、平成29年5月15日に登録出願、第3類「歯磨き,歯用漂白剤,口内洗浄剤及び口内すすぎ剤(医療用のものを除く。),せっけん類,化粧品,香料,口臭用消臭剤」を指定商品として、同年12月5日に登録査定、同30年1月5日に設定登録されたものである。 2 使用標章 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由に引用する標章は、「ジェルコートF」の文字からなるもの(以下「使用標章」という。)であり、申立人の子会社であるウエルテック株式会社(以下「ウエルテック」という。)が商品「歯磨き用ジェル(歯磨き剤)」(以下「歯磨き剤」という場合がある。)に使用した結果、取引者及び需要者の間に広く認識されるに至っていると申立人が主張するものである。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第41号証を提出した。 (1)商標法第4条第1項第10号について ア 使用標章の周知、著名性について ウエルテックは、申立人の子会社であり、使用標章は、ウエルテックが商品「歯磨き用ジェル(歯磨き剤)」について長年使用した結果、取引者及び需要者の間に広く認識されるに至っている。 イ 本件商標と使用標章との類否 本件商標は、その構成中の欧文字1文字の「P」の部分は、商品の品番・型番等を示す記号と認識され、自他商品識別機能を発揮しないものであるから、その全体の構成に相応して「ピージェルコート」の称呼が生じるほか「ジェルコート」の称呼も生じること明らかである。 一方、使用標章は、その構成中の欧文字1文字「F」の部分は、商品の品番・型番を示す記号と認識され、自他商品識別機能を発揮しないものであり、その構成文字全体から生じる「ジェルコートエフ」の称呼は7音とやや冗長であることから、その全体の構成に相応して「ジェルコートエフ」の称呼が生じるほか「ジェルコート」の称呼も生じること明らかである。 本件商標と使用標章とを対比をしてみると、両者は片仮名「ジェルコート」を共通にし、これに欧文字1字が付加されたにすぎないことから、全体の外観が近似し、また、両者は、「ジェルコート」の称呼を共通にする類似する商標である。 加えて、使用標章が、実際の取引の場において広く認知されていることを踏まえると、使用標章には大きな信用が化体し、非常に強い識別力があるといえ、使用標章と本件商標とは、「ジェルコート」の文字を共通にするばかりでなく、商品の品番や型番等を示す欧文字1字が付加されている点でも共通しており、本件商標中の「P」と使用標章の「F」は品番や型番の違いを示すにすぎないと認識される可能性が高いことから、本件商標と使用標章は「出所を同じくする商品に使用される商標」と認識される程に類似した商標である。 ウ 以上に加え、本件商標と使用標章とは、使用される商品においても、抵触するものである。 エ まとめ したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第15号について 使用標章は、「歯磨き剤」の取引者及び需要者において広く知られるに至っている(甲2?甲41)。 そして、本件商標が「ピージェルコート」のほか「ジェルコート」の称呼をもって取引に資される一方、使用標章は「ジェルコートエフ」のほか「ジェルコート」の称呼を生じることから、本件商標と使用標章はその称呼において共通し、類似することは明らかである。 また、本件商標が、周知、著名な使用標章の要部「ジェルコート」を含んでいることにより、本件商標は、これを使用した商品が、使用標章が使用される商品と出所を同じくするものであると、需要者に誤った認識を与えるおそれがある。 そうすると、本件商標がその指定商品について使用された場合には、それがあたかも申立人あるいは申立人の子会社であるウエルテックに係る商品であると、もしくは、申立人やウエルテックと経済的、組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると、取引者及び需要者において、誤認混同を生じる蓋然性が非常に高いものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 4 当審の判断 (1)使用標章の周知性について ア 申立人の提出した甲各号証によれば、以下の事実を認めることができる。 (ア)ウエルテックは、1967年に申立人の事業部として創業し、その後、申立人のグループ会社(子会社)として、予防歯科製品の販売の事業を行っている(甲2、甲3)。 (イ)ウエルテックは、使用標章を付した「歯磨き剤」(以下「使用商品」という。)を平成14年3月21日から発売しており、使用商品を紹介するウエルテックのウェブサイトには、「ムシ歯、歯周病を予防したい方へ」、「内容量:90g」、「本体価格:1,000円(税抜)」の記載及び入手方法として「『ジェルコートF』のお求めは、お近くの歯科医院へ。」の記載がある(甲4、甲5)。 また、使用商品は、歯科医院のウェブサイトにおいて、紹介されている(甲6?甲12) (ウ)A社が発行した「歯科機器・用品年鑑」(2016年版(26版))によれば、2012年度から2015年度における歯磨剤のメーカー別販売実績において、ウエルテックの販売金額及びそのシェアは、それぞれ、6億2千5百万円ないし10億7千万円及び27.2%ないし32.8%であり、同時期の販売数量及びそのシェアは、97万5千本ないし165万本及び15%ないし19.5%であり、第2位にランクされている。また、2014年(平成26年)度のウエルテックの販売実績において、使用商品が約7割を占める旨の記載がある(甲13)。 (エ)2015年及び2016年に発行された、「nico」、「DHstyle」、「別冊Quintessence 小児歯科・デンタルホーム YEARBOOK 2016」、「歯界展望 別冊」、「DENTAL DIAMOND 増刊号」、「デンタルハイジーン別冊」(甲22?甲33)の歯科向けの医療系専門雑誌には、使用商品の広告が掲載されている。 (オ)2015年10月及び2016年3月に開催されたセミナーのパンフレット(甲36)には、来場者向けのプレゼント商品として、使用商品が掲載されている。 (カ)歯科医院以外のインターネットのウェブサイトにおいて、使用商品が紹介されており(甲37?甲41)、これらには、例えば「一番売れている歯磨き粉。コンクール ジェルコートFとは!?」(甲37)、「ハンズでの歯みがき粉部門売り上げ第1位」(甲39)、「ベストセラー1位」(甲40)及び「売り上げランキング2位 注目ランキング1位」(甲41)の記載とともに、使用商品の写真が掲載されている。 イ 上記アからすれば、使用商品は、平成14年(2002年)から現在に至るまで、主に歯科医院を通じて販売されていること及び「歯科機器・用品」の歯磨剤の市場(2012年度から2015年度)における販売金額、販売実績では、ウエルテックは、第2位にランクされており、販売実績のうちの約7割が使用商品であるとの記載があることは認められるものの、使用商品のシェア及び販売数量について記載された、2013年12月から2015年12月までの期間の「『ジェルコートF』の日本全国におけるシェアが高いことを示す予防歯科用品取扱い調査『WEB編』」(甲14?甲20)及び2008年4月から2016年3月までの期間の「『ジェルコートF』の売上げ数量が年々増加していることを示す資料」(甲21)は、その作成者、出典も明らかではなく、これらの記載内容を客観的に裏付ける証拠の提出はない。 また、広告宣伝の実績について、申立人は、歯科医院等の医療機関へのDMによる宣伝広告を年間12回、「nico」等の医療系専門雑誌への広告掲載を年間約30回行っている旨などを主張しているが、提出されている証拠は、歯科向けの医療系専門雑誌へ掲載されたもののみであり、その内容も2015年及び2016年に僅か12回の広告しかなく、その回数は決して多いものとはいえないばかりか、当該雑誌の販売地域、販売数などは明らかではない。加えて、2015年及び2016年に開催されたセミナーのパンフレットをみても、当該セミナーの内容に使用商品に関する記載はなく、使用商品が、来場者向けのプレゼント商品として掲載されているのみである。 さらに、使用商品は、内容量が90gで価格が1,000円という薬局やコンビニエンスストアで販売されている一般的な商品に比べて高額な商品といえるものであって、虫歯や歯周病の予防に特に高い注意を払う者向けの商品といえ、インターネットのウェブサイトにおいて「一番売れている歯磨き粉」や「ベストセラー1位」のように紹介されているとしても、これらは、特定のウェブサイトにおけるランキングにすぎないものであり、加えて、使用商品が紹介されているウェブサイトのうち、本件商標の登録出願日前のものは、わずか2件(甲37、甲38)にすぎない。 そうすると、使用商品に使用されている使用標章は、歯科医院の関係者及びその看者並びに虫歯や歯周病の予防に特に高い注意を払う一部の需要者間においてはウエルテックの取扱いに係る商品を表すものとして、一定程度知られているとしても、商品「歯磨き剤」に関する一般の需要者の間において広く知られているということはできない。 したがって、申立人の提出に係る証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、使用標章がウエルテックの業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 (2)商標法第4条第1項第10号該当性について 使用標章は、上記(1)のとおり、ウエルテックの業務に係る商品(歯磨き剤)を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標とは認められないものであるから、その他の要件の該当性について論ずるまでもなく、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第15号該当性について ア 使用標章の周知性について 使用標章は、上記(1)のとおり、ウエルテックの業務に係る商品(歯磨き剤)を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標とは認められないものである。 イ 本件商標と使用標章との類似性の程度 (ア)本件商標 本件商標は、「Pジェルコート」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、同書、同大、等間隔で表されているものであり、視覚上、その構成全体をもって、まとまりある一体的なものとして看取、把握されるといえるものである。 また、本件商標は、その構成全体から生じる「ピイジェルコート」の称呼も、格別冗長というべきものでなく、無理なく一連に称呼し得るものであり、当該文字は、辞書類に載録されている既成の語ではなく、特定の意味合いを表す語として知られているものともいえないことから、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として理解されるとみるのが相当である。 したがって、本件商標は、「ピイジェルコート」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。 なお、申立人は、本件商標の構成中の「P」の文字部分は、商品の品番・型番を示す記号と認識され、自他商品識別機能を発揮しないものであることから、「ジェルコート」の称呼も生じる旨主張している。 しかしながら、上記のとおりの構成からなる本件商標において、当該「P」の文字部分が商品の品番・型番を示す記号等であると理解されるとはいい難く、また、本件商標に接する需要者等が、殊更「P」の文字を捨象して「ジェルコート」の文字部分のみをもって、取引に当たるべき格別の事情は見いだせないものであり、本件商標は、上記のとおりまとまりある一体的なものとして看取、把握されるというのが相当である。 したがって、申立人の上記主張は、採用することができない。 (イ)使用標章 使用標章は、「ジェルコートF」の文字を横書きしてなり、その構成文字は、同書、同大、等間隔で表されているものであり、視覚上、その構成全体をもって、まとまりある一体的なものとして看取、把握されるといえるものである。 なお、申立人は、使用標章から「ジェルコート」の称呼も生じる旨主張しているが、提出された証拠は、あくまでも「ジェルコートF」の文字が一体として使用されているものであり、その他、「ジェルコート」の文字部分のみを捉え、当該文字から生じる称呼をもって、取引に資されているなどの実情があることを認めるに足る証拠も見いだせない。 そうすると、使用標章からは、その構成文字全体に相応した「ジェルコートエフ」の称呼を生じ、上記称呼は、無理なく一連に称呼し得るものであり、当該文字は、辞書類に載録されている既成の語ではなく、特定の意味合いを表す語として知られているものともいえないことから、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として理解されるとみるのが相当である。 したがって、使用標章は、「ジェルコートエフ」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。 (ウ)本件商標と使用標章の類似性 本件商標と使用標章とを比較すると、外観においては、語頭の「P」の文字及び語尾の「F」の文字の有無という明らかな差異を有するものであるから、両者は、外観上、相紛れるおそれはない。 次に、称呼においては、本件商標から生じる「ピイジェルコート」の称呼と使用標章から生じる「ジェルコートエフ」の称呼とは、語頭の「ピイ」及び語尾の「エフ」の音の有無という明らかな差異があり、その音構成が相違するものであるから、両者は、称呼上、相紛れるおそれはない。 さらに、観念においては、本件商標及び使用標章からは特定の観念を生じないものであるから、両者は、比較できないものである。 以上からすれば、本件商標と使用標章とは、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼が明らかに相違することから、相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標であるから、その類似性の程度は低いものである。 ウ 小括 上記アのとおり、使用標章は、ウエルテックの業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものである。 また、上記イのとおり、本件商標と使用標章とは別異の商標であり、両者の類似性の程度は低いものである。 そうすると、本件商標は、これをその指定商品について使用をしても、取引者及び需要者がウエルテックの業務に係る商標を連想又は想起することはなく、その商品が、ウエルテック及びその親会社である申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、商品の出所について混同を生じるおそれがある商標とは認められない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 (4)まとめ 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2019-06-24 |
出願番号 | 商願2017-66059(T2017-66059) |
審決分類 |
T
1
651・
271-
Y
(W03)
T 1 651・ 25- Y (W03) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 大橋 良成 |
特許庁審判長 |
岩崎 安子 |
特許庁審判官 |
中束 としえ 小松 里美 |
登録日 | 2018-01-05 |
登録番号 | 商標登録第6009213号(T6009213) |
権利者 | 西尾 秀俊 |
商標の称呼 | ピイジェルコート、ジェルコート |
代理人 | 岩田 啓 |
代理人 | 特許業務法人三枝国際特許事務所 |
代理人 | 貝塚 亮平 |