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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W34
審判 全部申立て  登録を維持 W34
管理番号 1352491 
異議申立番号 異議2018-900345 
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-07-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-11-21 
確定日 2019-06-13 
異議申立件数
事件の表示 登録第6077732号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6077732号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第6077732号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成よりなり,平成29年11月27日に登録出願,第34類「電子たばこ用香味料(精油を除く),電子たばこに用いる液状の化学的香味料が充填された状態で販売される電子たばこカートリッジ,電子たばこ専用ニコチン溶液,たばこ,電子たばこ,喫煙用具」を指定商品として,同30年7月20日に登録査定され,同年9月7日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は,以下の3件の登録商標であり,いずれも現に有効に存続しているものである(以下,これらの商標をまとめていうときは「引用商標」という。)。
1 登録第5379390号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:「MONSTER」(標準文字)
登録出願日:平成22年7月8日
設定登録日:平成22年12月24日
指定商品:第32類「アルコール分を含まない飲料,清涼飲料,果実飲料」
2 登録第5393681号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:「MONSTER ENERGY」(標準文字)
登録出願日:平成22年7月8日
設定登録日:平成23年2月25日
指定商品:第32類「アルコール分を含まない飲料,清涼飲料,果実飲料」
3 登録第5844119号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:「MONSTER ENERGY」(標準文字)
登録出願日:平成27年1月30日
設定登録日:平成28年4月22日
指定役務:第35類及び第41類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は,その指定商品の第34類の「全指定商品」について,商標法第4条第1項第15号及び同項第7号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申し立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第384号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 申立人の使用に係る商標「MONSTER」(以下「申立人商標」という場合がある。)の著名性
(1)申立人による商標の使用
申立人の使用に係る「MONSTER」は,申立人が2002年に創設したエナジードリンク(エネルギー補給飲料)事業のブランド「MONSTER ENERGY」の基軸商標として2002年から現在に至るまでの長年にわたり継続して使用されているものであり,同ブランドのエナジードリンクは,2002年に米国で最初に販売を開始後,日本では2012年5月から販売を開始し,現在では日本を含む世界100以上の国及び地域で販売中である。申立人は2002年以降,現在まで継続して,当該ブランドから発売された数多くの異なる種類のドリンクの個別商品名のすべてに「MONSTER」の文字を採択しており,当該各種ドリンクの缶の正面に「MONSTER」の文字を特徴的なデザインの太字を用いて大きく目立つ態様で表示して使用している。
このように「MONSTER」を基調とする商標を用いた申立人のエナジードリンク事業の成功は,経済界でも高い評価を受けている(甲2?33,51?58)。
現在までに国内発売された「MONSTER」エナジードリンクのシリーズは,「MONSTER ENERGY」,「MONSTER KHAOS」,「MONSTER ABSOLUTELY ZERO」,「MONSTER ENERGY M3」,「MONSTER COFFEE」,「MONSTER ENERGY ULTRA」,「MONSTER ENERGY THE DOCTOR」,「MONSTER CUBA LIBRE」である(甲5?7,10,12?15,59?62,101?103,118,127?131,252?264,291,323?326)。
(2)広告及び販売促進活動
申立人による当該エナジードリンクの広告及び販売促進活動は,世界の有名アスリート,レーシングチーム,スポーツ競技会,アマチュアスポーツ選手,音楽祭及びミュージシャンに対するスポンサー提供,スポーツ,音楽,コンピュータゲーム(eスポーツ)などの娯楽イベントの開催,米国ラスベガスの公共交通機関モノレールの「モンスター列車」の走行,これらのイベント開催などと関連して頻繁に実施されるエナジードリンク販売キャンペーン,各イベント会場におけるサンプリング(サンプル配布),2013年2月から2018年11月までの約5年9月の期間に国内で実施された販売プロモーションキャンペーンの応募当選者に対する様々な「モンスター限定グッズ」(Tシャツ,帽子,ダウンジャケット,リストバンド,キーホルダー,ステッカー,ギター,バッグパック,エナジードリンク,クーラーボックス,冷蔵庫,自動車など総計75万点を超えるアイテム)の提供,「MONSTER」の文字を付したポスター,商品ネームプレート,チラシ,陳列棚,冷蔵庫などの店舗用什器の使用及び展示,遅くとも2013年から現在に至るまで約1?2月の頻度で定期的に発行されている新商品発売・懸賞キャンペーン・イベント開催情報などを掲載したプレスリリース,申立人ウェブサイト並びにソーシャルメディアを通じた情報発信を介して,2002年から現在まで世界規模で継続的に実施されている。これらの広告物及び販売促進物には,「MONSTER」及びその音訳「モンスター」の文宇が独立の商品出所識別標識として認識される態様で使用されてきた(甲7?17,34?91,101?133,136?168,225?274,279?296,323,324,335?352,別紙3)。
(3)申立人は,2002年から,ブレスレット,ラペルピン,キーホルダー,Tシャツ,スウェットシャツ,帽子,レーシングジャケット,手袋などのアパレル製品,運動用ヘルメット,バッグ類,ステッカー,傘,ビデオゲームなどの「MONSTER」ライセンス商品の製造販売を第三者に使用許諾している。当該ライセンス商品のカタログやオンラインショッピングサイトは,ブランド名及び個別商品名として「MONSTER」,「Monster」の文字を単独で表示し,販売及び宣伝広告している。これらのライセンス商品は,国内の実店舗のほか,オンラインショップや通信販売を介して国内の一般消費者にも販売されている(甲47,48,58,92?100,134,135)。
(4)需要者におけるこれらのライセンス商品の人気の高さに便乗して,海外で製造された模倣品が日本の税関で輸入差止される事案が遅くとも平成25年7月から現在に至るまで継続して度々発生している(甲169?224,別紙2)。
また,申立人は,世界規模での継続的使用に基づき,エナジードリンク等の飲料製品及び上記ライセンス商品等について,引用商標をはじめ,「MONSTER」の文字を基調とする様々な構成の商標について,日本を含む世界115以上の国及び地域で商標出願し,登録を取得している(甲58,353?359,別紙1)。
(5)第三者による市場調査報告書やエナジードリンクの市場に関する記述によれば,2013年時点で申立人の「MONSTER」エナジードリンクの国内市場占有率は既に25%を超えており,それ以降も着実に売上を伸ばし,男子若年層を中心とした従来の主要需要者層に止まらず,女性層にも知名度,人気を拡大している。また,実際の市場で申立人の「MONSTER」エナジードリンクは「モンスター」と呼ばれ,「モンスター」の表記で認知されている(甲311?322)。
(6)以上の事柄に照らせば,「MONSTER」及びその表音「モンスター」は,本件商標の登録出願時及び登録査定時には,申立人の業務に係る商品及び役務の出所識別標識として国内外の取引者,需要者の間で広く認識されていた。
2 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)本件商標は,オレンジの濃淡色を配色した地模様を背景として,黒色で縁取りされ,オレンジの濃淡色で縦書きした「ザ オレンジモンスター」の文字,灰色のプルタブ付の蓋を有し,目,牙,口と思しき図形及びオレンジ色の稲妻様の模様を付したオレンジの濃淡色の地模様を有する飲料缶の図柄,黒色で縦書きした「KAMINARI」及び「VAPE CO.」の文字,黒色の文字で小さく「THE」と横書きしたものと大きく「ORANGE」及び「MONSTER」と横書きしたものを二段に表示した文字から構成されるものであり,これらの各文字部分及び飲料缶の図柄は外観的及び観念的に不可分一体のものとはいえないから,それぞれが独立の出所識別標識として機能する。
上記構成中,「THE ORANGE MONSTER」及びその音訳として把握される「ザ オレンジモンスター」の文字部分において,「THE」及び「ザ」は英語の定冠詞の「the」及びその音訳「ザ」を意味するもの(甲381,382),また,「ORANGE」及び「オレンジ」は英語で「オレンジ・だいだい・みかんなどみかん属の樹木,その食用果実,オレンジ色」等を意味するもの(甲383,384)として容易に把握され,自他商品識別力を欠くことが明らかである。これに対して,外来語の「モンスター」として親しまれている「MONSTER」及びその音訳「モンスター」(甲379,380)は,十分な商品出所識別力を有する。
したがって,本件商標は,構成中の「MONSTER」及び「モンスター」の文字部分が独立の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるから,申立人の使用に係る「MONSTER」及びその音訳「モンスター」と類似性の程度が極めて高い。
(2)本件商標の構成中の飲料缶の図柄は,オレンジの濃淡色の唐草風の地模様を付した缶を表示している(甲376)。この配色及び模様は,申立人が「MONSTER」エナジードリンクシリーズの個別製品「MONSTER KHAOS」(モンスターカオス)の缶に採用しているオレンジの濃淡色の唐草風の地模様を描いた缶のデザインとそっくりである(甲128,130,235,259,378)。
さらに,比較画像(甲377)から明らかなとおり,本件商標を構成している背景の地色,飲料缶の図柄及び文字部分に用いられているオレンジの濃淡色,白及び黒からなる配色並びにこれらの色調は,申立人が上記の「MONSTER KHAOS」(モンスターカオス)缶及びその広告物に採択しているオレンジの濃淡色,白及び黒の配色からなる製品イメージカラーと酷似する(甲235,259,378)。
(3)本件商標の指定商品中,「電子たばこ用香味料(精油を除く)」,「電子たばこに用いる液状の化学的香味料が充填された状態で販売される電子たばこカートリッジ」といった商品は,一般に,様々な味,フレーバーが付けられており,その中にはエナジードリンク(エナジー飲料)の風味の商品も存在する(甲367)。したがって,本件商標の指定商品は,申立人の取り扱いに係るエナジードリンクと,極めて密接な関連性を有する。
しかも,本件商標権者が実際に本件商標を使用して販売している電子たばこ用リキッドは,「オレンジをメインとした複数のフルーツ」のエナジードリンク風味であることが,商品情報欄の記載から明らかである(甲374,375)。
(4)申立人の「MONSTER KHAOS」(モンスターカオス)缶は,「30%混合果汁入り飲料(炭酸ガス入り)」及び「エナジー成分×30%果汁の新感覚のエナジードリンクで,フルーティーですっきりとした味・・・」との記載(甲130)から明らかなとおり,複数のフルーツ果汁を加味したエナジードリンクである。
したがって,本件商標権者が本件商標を使用して販売している電子たばこ用リキッドは,製品のイメージカラーのみならず,そのフルーツ風味のエナジードリンク味もまた,申立人の「MONSTER」エナジードリンクシリーズの「MONSTER KHAOS」(モンスターカオス)缶を強く想起,連想させる。
(5)本件商標の指定商品の最終的な需要者は一般消費者であるから,通常の需要者の注意力の程度は高いものとはいえない。
(6)上記のとおり,申立人の使用に係る「MONSTER」は,申立人の製造販売に係るエナジードリンクの出所識別標識として長年継続して使用されており,本件商標の登録出願時及び登録査定時には需要者の間で広く認識されていた。
(7)したがって,本件商標がその指定商品に使用された場合,取引者,需要者は,その構成中の「MONSTER」及び「モンスター」の文字とオレンジの濃淡色の唐草模様を付した飲料缶の図柄,並びにオレンジの濃淡色,白及び黒の配色並びにその色調から申立人の製造販売に係る「MONSTER」エナジードリンクの「MONSTER KHAOS」(モンスターカオス)の缶を直ちに想起,連想し,当該指定商品が申立人又は申立人と経済的又は組織的関係を有する者の取り扱いに係るもの(例えば,申立人商標の使用許諾を受けたライセンシーの製造販売に係る商品,あるいは,申立人との共同開発事業による商品)であると誤信し,その出所について混同を生じるおそれがある。
(8)また,商標法第4条第1項第15号の規定は,出所の混同防止のみならず,著名商標の顧客吸引力へのフリーライド,その出所表示力のダイリューションを防止する趣旨も含むものであると解される(平成16年(行ケ)第85号,平成16年10月20日東京高裁判決)。
上記のとおり,本件商標は構成中に,申立人の「MONSTER」エナジードリンクの出所識別標識として長年継続使用されている「MONSTER」及びその音訳「モンスター」の文字,並びに申立人の当該「MONSTER」エナジードリンク製品シリーズの「MONSTER KHAOS」(モンスターカオス)缶を容易に想起連想させるオレンジの濃淡色の唐草模様を付した飲料缶の図柄とオレンジの濃淡色,白及び黒の配色を顕著に含むものであり,かつ,「エナジードリンク」の味の電子たばこ用リキッドに実際に使用されている。しかも,上記電子たばこ用リキッドは,「オレンジをメインとした複数のフルーツエナジー風味」と広告されており(甲374,375),需要者に対して,申立人の取り扱いに係る「MONSTER KHAOS」(モンスターカオス)缶を極めて容易に連想させ,あたかも当該商品が申立人と経済的ないし組織的な関係を有するかのような印象を持たせ,誤信させる宣伝文句を使用している。
さらに,本件商標権者は,構成中に「MONSTER」及び「モンスター」の文字並びに飲料の缶の図柄を顕著に包含する件外商標登録第6038276号(甲365)も登録出願している。また,本件商標権者は,構成中に「MONSTER」及び「モンスター」の文字並びに飲料の缶の図柄を顕著に包含する件外商標登録第6038321号(甲366)も登録出願している。

これらの事柄を総合すれば,本件商標権者が申立人の製造販売に係る「MONSTER」エナジードリンクシリーズ製品及び当該製品の缶のデザインについて不知で,偶然に本件商標を採択したとは到底考えられない。
(9)本件商標権者による本件商標の採択使用は,日本を含む世界のエナジードリンク市場で広く認識されている申立人の製造販売に係る「MONSTER」エナジードリンクの名声,並びにその出所識別標識として広く認識されている「MONSTER」の信用力,顧客吸引力にフリーライドせんとする不正な目的でなされたものといわざるを得ない。また,本件商標権者による本件商標の使用は,申立人の商品出所識別標識として広く認識されている「MONSTER」の出所表示力を希釈化するものである。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は,申立人の使用に係る商標「MONSTER」及び当該商標を出所識別標識に使用して長年継続販売している「MONSTER」エナジードリンクの名声にフリーライドする不正な目的で本件指定商品に登録出願され,使用されるものといわざるを得ず,社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神並びに国際信義に反することが明らかであるから,公の秩序を害するおそれがある。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 当審の判断
1 申立人商標の周知性について
(1)申立人の主張及び同人提出の証拠によれば,以下の事実が認められる。
ア 申立人は,米国の飲料メーカーであり,2002年にエナジードリンクの新ブランド「MONSTER ENERGY」を創設し,米国において販売を開始した(甲7)。
イ 申立人のエナジードリンク(以下「申立人商品」という。)は,我が国においては,2012年5月8日から「Monster Energy」(モンスターエナジー)及び「Monster KHAOS」(モンスターカオス)の販売が開始され(甲7,8),その後,2013年5月7日から「モンスター アブソリュートリー ゼロ」(甲10),2014年8月19日から「モンスターエナジー M3」(甲59),同年10月7日から「モンスターコーヒー」(甲60),2015年7月21日から「モンスター ウルトラ」(甲101),2017年6月27日から「モンスターロッシ」(甲257)が販売されている。
ウ アサヒ飲料株式会社のニュースリリースには,申立人商品の発売及び販売と関連して,「アサヒ飲料 国内独占販売権取得!・・・『Monster Energy(モンスターエナジー)缶355ml』『Monster KHAOS(モンスターカオス)缶355ml』・・・アサヒ飲料株式会社(本社 東京,・・・)は・・・エナジードリンク『モンスターエナジー』ブランドの日本国内における独占販売権を取得しました。」(甲7),「・・・5月8日(火)から新発売したエナジードリンク『モンスターエナジー』ブランドの販売が好調・・・」(甲8),「・・・『モンスター アブソリュートリー ゼロ 缶355ml』・・・本商品は・・・『モンスターエナジー』ブランドの中でも,・・・2番目に人気のあるカテゴリー,ダイエット系エナジーです。・・・」(甲10),「2013年度の『モンスターエナジー』ブランドの販売数量は大変好調であり,『モンスターエナジー』『モンスターカオス』『モンスターアブソリュートリーゼロ』の3品で前年比150%となる237万箱を販売し・・・」(甲59),「『モンスターエナジー』ブランドの販売は大変好調に推移しています。・・・本年は・・・『モンスターエナジーM3』,『モンスターコーヒー』をラインナップに追加・・・」(甲60),「『モンスターウルトラ』をラインアップに加えることにより,・・・更に『モンスターエナジー』ブランドの強化を図ってまいります。」(甲101),「『モンスターエナジー』ブランドからの新商品『モンスターロッシ』を・・・発売します。」(甲257)の記載がある。
エ 申立人商品の容器の側面には,以下のような表示がある。
(ア)「Monster Energy(モンスターエナジー)缶355ml」の容器下部には,「MONSTER」の文字(「O」の文字部分には,それを貫く縦線が描かれている。以下,申立人商品の容器上の表示をいうときは,同じ。),その下には「ENERGY」の文字が表されている(甲14,17)。
(イ)発売当初の「Monster KHAOS(モンスターカオス)缶355ml」の容器下部には,「MONSTER」の文字,その下には「KHAOS」の文字,さらにその下には「ENERGY」及び「+果汁」の文字が表されている(甲14,17)。そして,2016年にリニューアル発売された同商品の容器には,上部に「KHAOS」の文字,その下に図形を配し,下部に「MONSTER」の文字,その下に「ENERGY」の文字が表されている(甲130)。
(ウ)「モンスター アブソリュートリー ゼロ 缶355ml」の容器下部には,「MONSTER」の文字,その下には「ENERGY」の文字,さらにその下には「ABSOLUTELY ZERO」の文字が表されている(甲13)。
(エ)「モンスターエナジー M3 ワンウェイびん150ml」の容器下部には,「MONSTER」の文字,その下には「ENERGY」の文字,さらにその下には「M-3 SUPER CONCENTRATE」の文字が表されている(甲61)。
(オ)「モンスターコーヒー 缶250g」の容器下部には,「COFFEE」の文字,その下には「MONSTER」の文字,さらにその下には「COFFEE」,「+」及び「ENERGY」の文字が表されている(甲62)。
(カ)「モンスターウルトラ 缶355ml」の容器下部には,「MONSTER」の文字,その下には「ENERGY」の文字,さらにその下には「ULTRA」の文字が表されている(甲101)。
(キ)「モンスターロッシ 缶355ml」の容器中央部には,「MONSTER」の文字,その下には「ENERGY」の文字,さらにその下には「THE DOCTOR」の文字が表されている(甲257)。
オ 申立人商品の販売促進キャンペーン広告中の宣伝文句の中で,申立人商品の写真とともに,「モンスターを飲んで・・・に行こう」,「モンスターを飲んで・・・に会おう」,「モンスターの対象商品を2本ご購入につき・・・をプレゼント」,「モンスターを買って・・・を当てろ」,「モンスターを飲んで・・・が当たる」,「モンスターを買って・・・に行こう」などと表示することがある(甲63,64,79,113,159,162)。
他方,上記と同様のキャンペーン広告中の宣伝文句の中には,「モンスターエナジーを飲んで・・・に行こう」,「モンスターエナジーを買って・・・当てろ」,「モンスターエナジーを買って・・・ゲットしろ」(甲143,236,268)などと表示するものもある。
カ 申立人商品は,我が国において,2012年5月の発売開始以降,2012年末までの約8か月で157万箱販売された(甲9)。
キ 申立人の最高経営責任者の宣誓供述書(甲58)によれば,申立人商品は,我が国において,2012年5月の販売開始から2015年6月30日までの約3年間で,約2億3,600万缶販売され,その総販売額は1億7,500万米ドル以上,日本円で170億円以上であるとされる。
ク 上記供述書(甲58)によれば,申立人は,申立人商品の広告,マーケティング及び販売促進活動のために,全世界では,2002年以来,30億米ドル以上を支出しているが,「モンスター社のマーケティング戦略は,従来の方法とは異なり,MONSTER商標及び爪の図柄を広めるための広告を,直接テレビやラジオで行わない」とされ,広告などの予算の多くは,「競技選手への支援及び競技大会やその他イベントへのスポンサー活動」に当てている。特に,マーケティングの焦点は,「主要なターゲットとする若年成人層,主に男性が多くの時間を費やすインターネット上で,ネット配信されるイベント」であり,具体的には,ロードレース世界選手権グランプリ(MotoGP),MotoGPレーシングチーム,F1レーシングチーム,モトクロスチーム,アルティメット・ファイティング・チャンピオンシップ(UFC),音楽祭,音楽イベント,ミュージシャン及びビデオゲームチームへのスポンサー活動及び促進活動などである。
ただし,我が国においては,2012年5月及び6月に申立人商品の販売開始を支援するために,主要テレビ局のテレビ広告枠を購入し,視聴者にウェブサイトで更なる情報を得るように促す広告を行い,それに約190万米ドルを支出したとされる。
ケ 2016年3月31日付けのアサヒ飲料株式会社のニュースリリース(甲129)によれば,申立人商品につき,「『モンスターエナジー』ブランドは・・・ブランド力とファッション性で世界中の若者からの圧倒的な支持を背景に,急成長しているエナジードリンクです。」と紹介し,「エナジードリンク市場は,『モンスターエナジー』などの海外ブランドの浸透により,最近では10代,20代が『炭酸の刺激を楽しみたい』や『気分転換』を目的に飲用する傾向」との記載がある。
(2)上記(1)の認定事実によれば,申立人商標の使用と関連して,以下のような実情がうかがえる。
ア 申立人商品は,2012年5月の我が国における発売以降,その販売額は,約3年間(2012年5月?2015年6月)で約170億円以上とされ,その販売期間は,発売から本件商標の登録出願時までは約5年間程度と長期にわたるものではないが,ある程度継続した販売実績があることがうかがえる。
しかし,申立人は,テレビなどの一般的なメディアを通じた広告宣伝をそもそも行わない方針であることもあり,我が国におけるテレビCMは,2012年の発売当初の1か月程度の短期間であって,その費用も約1億5,000万円(190万米ドル;80円/米ドルで計算)程度のものであり,また,継続的に行われているスポンサー活動や販売促進キャンペーンについても,我が国における広告宣伝費は明らかではない。そして,その広告宣伝の多くは,主に比較的若い世代が集まるようなモータースポーツ,格闘技,音楽イベントやミュージシャン,ビデオゲームなどと関連したスポンサー活動やプロモーション活動であり,申立人商品の紹介に当たっても,10代や20代の需要者層における支持が言及されていることからすると,申立人商品の主要な需要者層や,広告などを通じて申立人商品を目にする需要者層の範囲も,自ずと若年層を中心としたものとみるのが相当である。
イ 我が国で販売されている申立人商品の容器の側面には,文字配置のレイアウトにバリエーションはあるものの,概ね「MONSTER」の文字の下に「ENERGY」の文字を,比較的近接して配置している。そして,これら申立人商品の個別名称は,「Monster Energy」(モンスターエナジー),「Monster KHAOS」(モンスターカオス),「モンスター アブソリュートリー ゼロ」,「モンスターエナジー M3」,「モンスターコーヒー」,「モンスター ウルトラ」及び「モンスターロッシ」であるが,これら一連の商品を指称する際は,「モンスターエナジー」ブランドと総称されている。
ウ 申立人商品の販売促進キャンペーン広告などの宣伝文句においては,申立人商品を「モンスター」と略称する場合はあるが,必ずしも統一的に使用されているものではない。
(3)上記(2)において述べた実情を踏まえると,申立人商品の販売期間は,比較的短いものであり,また,申立人商品について,幅広い需要者層が目にする機会の多い一般的なメディアを通じた広告宣伝の実績は乏しい上,その広告宣伝などを通じた商品名の露出も,主に若年層に向けた活動を通じて行われているものであり,さらに,我が国で販売されている清涼飲料の市場における申立人商品のシェアも明らかとはいい難いことから,申立人商品は,本件商標の登録出願日前までには,その取引者や若い世代を中心とした需要者の間では,ある程度認知されていたということができても,幅広い需要者層を有する清涼飲料の分野一般においては,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されるに至っていたとまでは認めることができない。
そして,申立人商品は,その容器に「MONSTER」及び「ENERGY」の各文字が比較的近接して表示されており,また,当該商品が「モンスターエナジー」ブランドと総称されている実情があることも踏まえると,申立人商品の獲得した上記認知度は,「Monster Energy」(モンスターエナジー)を中心とした「モンスターエナジー」ブランドのエナジードリンクとして,集合的に生じているというべきである。
なお,申立人商標である「MONSTER」の語は,宣伝文句などにおいて申立人又は申立人商品の略称として用いられる場合があるとしても,必ずしも統一的に使用されているものではなく,上記のとおり,「モンスターエナジー」ブランドと総称されることもあるものであり,また,申立人商品の認知度を紹介するインターネット記事情報においても,飽くまで「モンスターエナジー」(MONSTERENERGY)(甲311,319)の認知度が紹介されており,申立人商標単独での認知度は示されていない。
そのため,申立人商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時に,我が国の取引者,需要者において,申立人商品を表示する商標として,広く認識されているものということはできない。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)申立人商標の独創性及び周知性
申立人商標である「MONSTER」は,既成の語であって,独創性が高いものとはいえず,上記1のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時に,我が国の取引者,需要者において,申立人商品「エナジードリンク」を表示する商標として,広く認識されているものでもない。
(2)本件商標と申立人商標との類似性
ア 本件商標について
本件商標は,別掲のとおり,正方形(オレンジ色で彩色)の枠内に,中央部に擬人化した缶の図形(濃淡のあるオレンジ色で彩色)を配し,右側に「ザ オレンジモンスター」の文字(白抜き文字で内側をオレンジ色に彩色)を縦書きし,下側に「THE」及び「ORANGE MONSTER」の文字を上下二段に表し,左側に「KAMINARI」(語尾に小さく「TM」の文字を配置)及び「VAPE CO.」の文字を縦方向に回転させて二列で表し,右下側には横長長方形の枠内に「15ML」と思しき文字を表してなるものである。
そして,本件商標の構成中,「THE」(ザ)の文字は「その」の意味を有する定冠詞,「ORANGE」(オレンジ)の文字は「オレンジ色」の意味を,「MONSTER」(モンスター)の文字は「怪物。化け物。」の意味を有する平易な英語であるが,当該文字に近接して擬人化したオレンジ色の缶の図形が配置されていることもあって,構成全体として「THE ORANGE MONSTER」(ザ オレンジモンスター)というキャラクターの名称(固有名詞)を表してなるものとも看取できるから,当該文字部分に相応して,「ザオレンジモンスター」の称呼を生じ,「そのオレンジ色の怪物。そのオレンジ色の化け物。」程度の観念を生じる(参照:「ジーニアス英和辞典 第5版」大修館書店)。また,「KAMINARI」及び「VAPE CO.」の文字部分に相応して,「カミナリベープコ」の称呼を生じるが,特定の観念は生じない。なお,その他の文字部分(「TM」の文字は「商標」の意味を有する「trademark」の略語と看取され,「15ML」の文字は「15ミリリットル」の容量(商品の内容量)を示す語であると看取され,いずれも自他商品の識別標識としての機能を有さない。)及び図形部分からは,特定の称呼及び観念は生じない。
そうすると,本件商標は,構成文字に相応して「ザオレンジモンスター」及び「カミナリベープコ」の称呼を生じ,「そのオレンジ色の怪物。そのオレンジ色の化け物。」の観念を生じるものである。
イ 申立人商標について
申立人商標は,「MONSTER」の文字を標準文字で表してなるところ,当該文字は「怪物。化け物。」(前掲書参照)の意味を有する平易な英語である。
そうすると,申立人商標は,「モンスター」の称呼及び「怪物。化け物。」の観念を生じるものである。
ウ 本件商標と申立人商標との比較
本件商標と申立人商標とは,その外観は,「MONSTER」の構成文字を共通して含むが,当該文字部分は,本件商標においては「THE ORANGE MONSTER」という一連の固有名詞に含まれているにすぎず,構成文字全体としては明らかに異なる語を表してなると認識されるものであり,また,その他の構成要素(文字及び図形)の有無にも差異があることから,互いに異なる印象を与えるものである。
また,両商標の称呼は,「モンスター」の称呼を共通して含むが,本件商標より生じる称呼は「ザオレンジモンスター」なる一連の称呼であり,構成音全体としては明確に相違するもので,また,その他の構成音(カミナリベープコ)の有無にも差異があるため,互いに相紛れるおそれはない。
さらに,両商標の観念は,本件商標より生じる「そのオレンジ色の怪物。そのオレンジ色の化け物。」の観念は,特定のキャラクターとの関連を想起させるものだから,申立人商標より生じる抽象的な「怪物。化け物。」の観念とは,記憶に残る印象において差異があるもので,観念において異なる印象を与えるものである。
以上のとおり,本件商標と申立人使用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても,相紛れるおそれはなく,又は異なる印象を与えるものだから,互いに別異の商標というべきである。
(3)本件商標の指定商品と申立人商品との関連性
本件商標の指定商品は,たばこや喫煙用具の一種である一方,申立人商品は,清涼飲料の一種であるから,一般的には,その商品の性質,用途又は目的において直接的な関連性もなく,その商品の製造者,販売者及び需要者層も,重複又は密接に関連しているものとはいえない。
なお,申立人は,本件商標の指定商品は,一般に様々なフレーバーが付けられ,エナジードリンク風味の商品も存在するため,申立人商品とは極めて密接な関連性を有する旨を主張するが,上記のとおり,両商品が直接的な関連性を有するものとはいえず,また,両商品が通常同一営業主により製造又は販売されている等の具体的な証拠はないため,その主張を採択することはできない。
(4)出所の混同のおそれについて
申立人商標は,上記(1)のとおり,独創性が高いものとはいえず,また,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人商品を表示する商標として周知,著名とはいえない上,上記(2)のとおり,本件商標とは,別異の商標であり,上記(3)のとおり,本件商標の指定商品と申立人商品とは,その商品の性質,用途,目的又は取引者若しくは需要者も密接に関連しているものではないから,本件商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば,本件商標をその指定商品に使用しても,これに接する取引者,需要者が,申立人商標を連想又は想起することは考え難い。
そうすると,本件商標は,これをその指定商品について使用しても,その取引者及び需要者をして,当該商品が申立人の業務に係る商品であると誤信させるおそれがある商標ではなく,また,当該商品が申立人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信させるおそれがある商標ともいえないから,申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,商品の出所について混同を生じるおそれがある商標ではない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)本件商標は,上記2(2)アのとおりの構成よりなるもので,その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。
また,本件商標は,これをその指定商品に使用することが社会公共の利益や社会の一般的道徳観念に反するものではなく,さらに,その使用が他の法律によって禁止されているもの,外国の権威や尊厳を損なうおそれがあって,国際信義に反するものでもない。
加えて,本件商標の商標登録出願の経緯について,社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合等,その出願経緯などに公序良俗に反するおそれがあることを具体的に示す証拠の提出もない。
(2)申立人は,本件商標は,その構成中の文字部分(「MONSTER」及び「モンスター」),缶の図形及びその色彩(オレンジ色の濃淡),並びに本件商標の使用実態(エナジードリンク味の商品に使用されている。)及び本件商標の宣伝文句等を踏まえると,申立人商品のうち「モンスターカオス」缶を容易に連想させるもので,申立人商品について不知で商標を採択されたとは到底考えられず,申立人商品の信用力,顧客吸引力に便乗しようとする不正の目的で出願されたものである旨を主張する。
しかしながら,仮に他人の商標を認識しながら,それと類似する商標を採択し,出願,登録したとしても,そのような出願経緯だけをもって不正の目的(不正の利益を得る目的又は他人に損害を与える目的)があると認めるには足りないこと明らかである。さらに,上記2(2)のとおり,本件商標と申立人商標とは別異のものであることも鑑みると,本件商標は申立人との間で経済的又は組織的な関連性を想起させるものとは考えにくく,その登録出願が申立人商標を剽窃する意図をもってなされたとも理解し難いから,その主張は採択できない。
(3)以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,本件商標の指定商品について,商標法第4条第1項第15号及び同項第7号のいずれにも該当せず,同項の規定に違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲 (本件商標。色彩は原本を参照。)


異議決定日 2019-05-30 
出願番号 商願2017-161984(T2017-161984) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W34)
T 1 651・ 22- Y (W34)
最終処分 維持 
前審関与審査官 内田 直樹 
特許庁審判長 木村 一弘
特許庁審判官 阿曾 裕樹
小出 浩子
登録日 2018-09-07 
登録番号 商標登録第6077732号(T6077732) 
権利者 株式会社ideal
商標の称呼 ザオレンジモンスター、ジオレンジモンスター、オレンジモンスター、モンスター、カミナリベープカンパニー、カミナリベープシイオオ、カミナリベープコー、カミナリベープ、カミナリ、ベープ 
代理人 柳田 征史 
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