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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0521
審判 全部申立て  登録を維持 W0521
審判 全部申立て  登録を維持 W0521
審判 全部申立て  登録を維持 W0521
管理番号 1352488 
異議申立番号 異議2018-900288 
総通号数 235 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-07-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-09-28 
確定日 2019-06-05 
異議申立件数
事件の表示 登録第6060261号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6060261号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6060261号商標(以下「本件商標」という。)は「FROM EARTH」の欧文字を標準文字で表してなり、平成29年8月8日に登録出願、第5類「医療用毛髪用剤,毛髪用剤,ふけ発生抑止剤,医療用入浴剤,防臭剤(人用及び動物用のものを除く。),医療用ローション剤,医療用油,ビタミン剤,薬剤,医療用洗浄剤」及び第21類「化粧用具,ヘアブラシ,くし,くし用容器,ヘアブラシケース」を指定商品として、同30年6月20日に登録査定、同年7月6日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する登録商標は以下のとおり、「アース」「EARTH」「Earth」の文字のみからなる商標又はそれらの文字を構成中に含んでなる商標であり、いずれも現に有効に存続しているものである。
登録第0248908号商標(以下「引用商標1」という。)
登録第0258476号商標(以下「引用商標2」という。)
登録第0270496号商標(以下「引用商標3」という。)
登録第1674262号商標(以下「引用商標4」という。)
なお、引用商標4に係る商標権には、防護標章登録がされている(甲10)。
登録第1674263号商標(以下「引用商標5」という。)
登録第2235736号商標(以下「引用商標6」という。)
登録第2353757号商標(以下「引用商標7」という。)
なお、引用商標7に係る商標権には、防護標章登録がされている(甲14)。
登録第2353758号商標(以下「引用商標8」という。)
登録第2488180号商標(以下「引用商標9」という。)
登録第0369817号商標(以下「引用商標10」という。)
登録第0369818号商標(以下「引用商標11」という。)
登録第1085293号商標(以下「引用商標12」という。)
登録第1668872号商標(以下「引用商標13」という。)
登録第1668873号商標(以下「引用商標14」という。)
登録第3234062号商標(以下「引用商標15」という。)
登録第4061824号商標(以下「引用商標16」という。)
登録第4454745号商標(以下「引用商標17」という。)
登録第6037488号商標(以下「引用商標18」という。)
登録第6037489号商標(以下「引用商標19」という。)
上記引用各商標は、いずれも願書に記載のとおりの構成からなり、それぞれの指定商品及び指定役務並びに登録出願日及び設定登録日は、商標登録原簿に記載のとおりである(以下、これらの登録商標をまとめて「引用商標」という場合がある。)。
なお、申立人が引用する登録商標のうち、登録第243638号商標は、当審において職権をもって調査したところ、平成25年5月24日に存続期間が満了し、その商標権の登録の抹消の登録が同26年2月19日になされている。

3 登録異議の申立ての理由(要旨)
申立人は、登録異議の申立ての理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第67号証を提出した。
(1)申立人の業容について
申立人は、1892年(明治25年)大阪難波で創業され、現在、日本及び海外において、家庭用殺虫剤、家庭用品(入浴剤、洗口液など)の製造、販売を主たる業として事業活動を行い、2017年の売上高は1,797億円(2017年12月期)に至る(甲2)。また、申立人は、現在、殺虫剤にとどまらず、入浴剤「バスロマン」・「温泡」・「ウルモア」、芳香洗浄剤「セボン」・「ToWhite」、口中清涼剤「モンダミン」等様々な商品の製造販売を行っている(甲3)。申立人における殺虫剤のシェアは特に高く、2016年度は56.3%(甲4)、2017年度は56.7%(甲2)となっており、常に50%以上の高いシェア率を維持している。家庭用品の分野でも、入浴剤「温泡」の新商品や、芳香消臭剤「スッキーリ!」、口中清涼剤「モンダミン」の新商品が売り上げに寄与している(甲2)。
これらのことから、申立人は、殺虫剤メーカーとしてはもちろんのこと、家庭用品の総合メーカーとして確固たる地位を築き上げているものといえる。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標と引用商標の類似性について
(ア)本件商標と引用商標1?引用商標9並びに引用商標18及び引用商標19は、同一の商品「薬剤」又はそれに含まれる商品を指定している。また、本件商標は「化粧用具」を指定し、引用商標10?引用商標19は化粧用具に含まれる「歯ブラシ」と備考類似にあたる「歯磨き」を指定している。
(イ)本件商標の「FROM」と「EARTH」の間には明らかに空間を有しており、前半部の「FROM」と後半部の「EARTH」に分断される。前半部の「FROM」は「?から」という意味の前置詞であり、本件商標の指定商品との関係では、単なる出所を表わす語にすぎず、「FROM」は識別性を有しないものであるから、本件商標は後半部の「EARTH」がメインとなることは明白である。よって、後半部の「EARTH」は「アース」と発音されるのであるから、引用商標と称呼が完全に一致する。
(ウ)外観についてみると、本件商標と「EARTH」(引用商標8、引用商標9、引用商標11、引用商標15及び引用商標18)は、主要部分である「EARTH」が共通する。よって、本件商標と引用商標とは外観において近似する。
(エ)観念についてみると、後述のとおり、「EARTH」は申立人の著名な標章であるから、本件商標からは全体として「アース社から」との意味合いを生じる。他方、引用商標は、いずれも申立人の製品やカタログ等で使用されており、「アース社から」世界に向けて、製品や情報を送り出す際の標識となっている。よって、本件商標と引用商標とは観念において共通する。
(オ)したがって、本件商標は、引用商標と類似する商標であり、かつ、これらの引用商標と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標と引用商標とは、同一の商品「薬剤」又はそれに含まれる商品を指定している。また、本件商標は「化粧用具」を指定し、引用商標10?引用商標19は化粧用具に含まれる「歯ブラシ」と備考類似にあたる「歯磨き」を指定している。
イ 本件商標と引用商標とが類似することは、上記(2)で述べたとおりである。
(ア)申立人は、上記3(1)で述べたとおり相当に古くしてかつ広範囲にわたり実績を有するものであって、その創業当初より「アース」及び「EARTH」の各文字を多くの製品に使用し、新聞、雑誌、CM、カタログ等で宣伝し現在に至っている(甲27?甲48)。現に、「『アース』の文字からなる商標は、申立人の業務に係る商品『家庭用殺虫剤』について、その出所を表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至っていたとはいえる」という特許庁の判断もある(甲49?甲56)。
また、2017年1月5日より、欧文字表記の「EARTH」を用いた新コーポレートロゴ(甲57)の使用を開始した。新コーポレートロゴと経営理念の発表は大々的に行っており、2017年度申立人グループの方針発表会や、株主総会でも新コーポレートロゴは多くの聴衆の目に触れている(甲58?甲65)。
新コーポレートロゴ発表後は、冒頭に「EARTH」を含む新コーポレートロゴが登場するCMの制作・放映を行い、新コーポレートロゴを浸透させている。(甲66、アースCMライブラリhttps://www.earth.jp/cm/index.html)。特に、2017年4月より放映している「おすだけノーマット 再浮遊篇」、2017年5月より放映している「お風呂の防カビ剤 ふろカベ氏、語る篇」及び2017年6月より放映している「キッチンの排水口 セレブとSP篇」は、最初と最後の画像の左上に新コーポレートロゴが表示されており、視聴者の記憶に新コーポレートロゴが残る工夫がされている。CMリスト参照のとおり、CMは日本全国で放映され、合計の費用は約40億円に上る。
さらに、大人から子供まで集まる野球イベントでは、胸部に新コーポレートロゴを付けた「アースくん」(アース社のキャラクター)が来場者とふれあい、新コーポレートロゴをアピールしていた(甲67)。
これらの事実と、上記3(1)において述べた市場シェア率及び売上額を併せて考慮すると、「アース」としての著名性は、新コーポレートロゴを通じて「EARTH」に引き継がれているといえる。ゆえに、「アース」又は「EARTH」といえば少なくとも本件商標の出願日たる2018年8月8日以前において申立人の製造販売する商品であることが全国で広く知られて周知著名な商標となっていたといえる。
(イ)カタログやCM等から明らかなとおり、申立人は家庭用殺虫剤だけでなく、口腔清涼剤「モンダミン」や入浴剤「温泡」・「バスロマン」、芳香消臭剤「スッキーリ!」及びトイレ洗浄剤「ToWhite」を製造販売し、消費者の支持を得ている家庭用品の総合メーカーである。ゆえに、申立人であれば、新規ビジネスとして、本件商標の指定商品である「医療用毛髪用剤」等に進出すると消費者が受け取るのも自然なことと考えられる。
(ウ)以上のとおりであるから、本件商標を「薬剤」又は「化粧用具」について使用したときは、これに接する取引者・需要者は、申立人の引用商標を連想又は想起し、この商品が申立人の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)むすび
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号に違反してなされたものであるから、取り消されるべきものである。

4 当審の判断
(1)「アース」の文字及び「EARTH」の文字の周知性について
申立人は、創業当初から現在に至るまでの間、「アース」及び「EARTH」の各文字を多くの商品に使用し、新聞や雑誌等で宣伝していることから、「アース」及び「EARTH」は、少なくとも本件商標の登録出願日以前において、申立人の製造、販売に係る商品であることを表示するものとして、全国で広く知られた著名商標となっている旨主張し、その主張に係る証拠として、甲第2号証ないし甲第67号証を提出している。
そこで、提出された証拠をみると、これらは、発行年が確認できるもので昭和34年1月から平成30年頃までの間に発行された新聞、書籍、雑誌及び申立人の製品カタログ並びに同29年に開催されたイベント及びテレビで放映されたCMの概要に関するものであって、そこに掲載されているのは、大半は申立人の業務に係る商品の広告であるところ、入浴剤や口中清涼剤などの商品も散見されるが、当該広告に係る商品の多くは、「家庭用殺虫剤」である。
そして、これらの広告において、商品の出所を表すものとして用いられているのは「アース」の文字からなる商標である。
一方、「EARTH」の文字は、1982年頃から5年毎に製作された申立人の製品カタログの表紙に使用されていることは確認できるものの、カタログの発行部数、頒布先、頒布地域等が不明である。また、「EARTH」の文字は、平成29年1月以降、申立人のコーポレートロゴの構成中に含まれて、テレビCMやイベント等で使用されていることはうかがえるとしても、当該文字が単独で使用された事実は確認できない。
その他、申立人の提出に係る甲各号証を総合してみても、本件商標の登録出願時(平成29年8月8日)及び登録査定時(同30年6月20日)において、「EARTH」の文字が、申立人の業務に係る商品であることを表示するものとして、需要者の間に広く認識されるに至っていると認めるに足る事実は見い出せない。
なお、申立人は、2017年1月から英語表記の「EARTH」の文字を用いたコーポレートロゴの使用を通じて、「アース」の著名性が「EARTH」に引き継がれている旨主張するが、これを認め得る事実を見い出せないことは上記のとおりである。
そうすると、申立人の提出に係る証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「アース」の文字からなる商標は、申立人の業務に係る商品「家庭用殺虫剤」を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と認められるものの、「EARTH」の文字からなる商標については、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標とは認められない。
(2)本件商標について
本件商標は、「FROM EARTH」の欧文字を標準文字で表してなるところ、「FROM」と「EARTH」の文字の間に空白はあるものの、同じ書体及び大きさによって外観上まとまりよく表されており、その構成全体から生じる「フロムアース」の称呼も無理なく一連に称呼できるものである。そして、本件商標構成中の「FROM」の文字は「?から」の意味を、「EARTH」の文字は「地球」の意味を、それぞれ有する平易な英語からなるものであるから、全体として、「地球から」の観念を生じるものである。
以上のとおり、本件商標の構成並びに本件商標から生じる称呼及び観念からすれば、本件商標は、その構成全体を一体のものとして看取、把握されるとみるのが自然であって、殊更、その構成中の「EARTH」の文字部分が、商品の出所識別標識として需要者に強く支配的な印象を与えるとか、「FROM」の文字部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないなどといった事情は見当たらないことから、本件商標から「EARTH」の文字部分のみが分離して看取されることはないとみるのが相当である。
したがって、本件商標は、その構成全体から「フロムアース」の称呼のみを生じ、「地球から」の観念を生じるものである。
(3)商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標は、上記(2)のとおり、「FROM EARTH」の欧文字を標準文字で表してなり、「フロムアース」の称呼のみを生じ、「地球から」の観念を生じるものである。
他方、引用商標は、上記2のとおり「アース」「EARTH」「Earth」の文字のみからなる商標又はそれらの文字を構成中に含んでなる商標であるが、それぞれの外観、称呼及び観念を総合勘案してみても本件商標との比較において、相紛れるおそれがあると認めるに足るものは見いだせない。 そうすると、本件商標と引用商標とは、非類似の商標というべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
申立人は、上記3(3)のとおり、本件商標を「薬剤」又は「化粧用具」に使用したときは、本件商標に接する取引者・需要者は、申立人の商標を連想、想起し、申立人の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるとして、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する旨主張する。
しかしながら、申立人による上記主張に関し、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品(家庭用殺虫剤)を表示するものとして、需要者の間に広く認識されるに至っていたと認められる商標は、上記(1)のとおり、「アース」の文字からなる商標であって、「EARTH」の文字からなる商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとは認められない。
そうすると、本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性を判断するに当たり、本件商標と比較の対象となるのは、「アース」の文字からなる商標であるところ、これからは、「アース」の称呼を生じ、「(家庭用殺虫剤のブランドとしての)アース」といった観念を生じるものである。
他方、本件商標は、上記(2)のとおり、「FROM EARTH」の欧文字を標準文字で表してなり、これからは「フロムアース」の称呼のみを生じ、「地球から」の観念を生じるものである。
そこで、これらを踏まえ、本件商標と「アース」の文字からなる商標とを比較すると、外観については、欧文字と片仮名の差異から区別できるものであり、また、称呼については、本件商標から生じる「フロムアース」と、「アース」の文字からなる商標から生じる「アース」とでは、構成音数の差異により明らかに異なり、さらに、観念については、「アース」の文字からなる商標から生じる「(家庭用殺虫剤のブランドとしての)アース」に対して、本件商標は「地球から」の観念を生じるものであるから、観念においても区別できるものである。
以上のことからすれば、「アース」の文字からなる商標と本件商標とを比較しても、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異のものであることから、両者の類似性の程度は極めて低いものである。
そうすると、本件商標は、これを「薬剤」及び「化粧用具」を含む本件商標の指定商品について使用しても、需要者をして、申立人の業務に係る商標(「アース」又は「EARTH」の文字からなる商標)を連想、想起させることはなく、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2019-05-24 
出願番号 商願2017-104022(T2017-104022) 
審決分類 T 1 651・ 262- Y (W0521)
T 1 651・ 271- Y (W0521)
T 1 651・ 261- Y (W0521)
T 1 651・ 263- Y (W0521)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小林 稜早川 真規子 
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 中束 としえ
岩崎 安子
登録日 2018-07-06 
登録番号 商標登録第6060261号(T6060261) 
権利者 Wackプランニング株式会社
商標の称呼 フロムアース、フロム、アース 
代理人 加藤 道幸 
代理人 木村 満 
代理人 松嶋 さやか 
代理人 吉松 こず恵 
代理人 塘口 絢子 
代理人 椎名 智子 

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