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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W16
管理番号 1351647 
異議申立番号 異議2017-900346 
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-11-16 
確定日 2019-04-22 
異議申立件数
事件の表示 登録第5975204号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5975204号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5975204商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成29年3月16日に登録出願,第16類「印刷物,文房具類,紙製包装用容器,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,紙類,書画,写真,写真立て」を指定商品として,同年8月1日に登録査定,同月25日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議の申立てに引用する商標は,別掲2及び3のとおりの構成からなるものであり(以下,これらをそれぞれ「引用商標1」及び「引用商標2」といい,両商標をまとめていうときは「引用商標」という。),関西地図協会が配布する一枚物の住宅地図及び同バス路線図等の各欄外に「企画・製作」の文字に続けて引用商標1が,一枚物のハザードマップの欄外に「企画・製作」の文字に続けて「関西地図協会」の文字が,また,関西地図協会のウェブサイトの左上部に引用商標2が,それぞれ表示されている(甲3,8)

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第7号,同項第8号,同項第10号,同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,取り消されるべきである旨申し立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第22号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第7号について
本件商標は,内場啓子の「関西地図協会」の名称を含む商標である。本件商標権者が「関西地図協会」の名称を使用した場合,内場啓子の「関西地図協会」と営業主体の誤認混同が生じる。また,本件商標権者が「関西地図協会」の名称を使用した場合,内場啓子の「関西地図協会」の関係者であるとの誤認混同が生じる。よって,本件商標は,不正競争防止法第2条第1項第1号,商法第12条第1項の要件に該当し,商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
2 商標法第4条第1項第8号について
本件商標は,他人の著名な「関西地図協会」を含む商標である。また,内場啓子は,本件商標権者に対して,登録出願時である平成29年3月16日,査定時である同年8月1日の両時において,承諾はしていない。よって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものである。
3 商標法第4条第1項第10号について
本件商標は,菱紋形状らしき図形と「関西地図協会」の商号とが結合した結合商標であるが,他人の周知な商号「関西地図協会」と,称呼・観念が共通し,漢字表記の部分が共通し,外観も近似するため,商標は近似する。また,他人の周知な商号「関西地図協会」と近似する商標を指定商品に使用された場合,営業主体の誤認混同が生じるため,商品類似に該当する。よって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。
4 商標法第4条第1項第15号について
他人の周知な商号「関西地図協会」と近似する本件商標を指定商品に使用された場合,営業主体の誤認混同が生じるため,商品の出所に誤認混同が生じる。よって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
5 商標法第4条第1項第19号について
本件商標は,菱紋形状らしき図形と「関西地図協会」の商号とが結合した結合商標であるが,他人の周知な商号「関西地図協会」と,称呼・観念が共通し,漢字表記の部分が共通し,外観も近似するため,商標は近似する。また,本件商標権者は,前職の就業先である内場啓子の「関西地図協会」が獲得してきた業務上の信用にフリーライドする不正競争の目的が推認され,登録を認めることができない。よって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。

第4 取消理由の通知
当審において,本件商標権者に対し,「本件商標は,商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから,同法第43条の3第2項の規定により,その登録を取り消すべきものである。」旨の取消理由を平成31年1月7日付けで通知した。

第5 取消理由に対する商標権者の意見
本件商標権者は,上記第4の取消理由に対して,指定した期間内に意見を述べなかった。

第6 当審の判断
1 証拠及び申立人の主張によれば,以下の事実が認められる。
(1)申立人は,平成21年7月1日から,京都府京都市伏見区にて,「関西地図協会」の屋号で地図製作を行っている個人事業主である(甲4の1・2,8)。なお,「関西地図協会」自体は,平成21年7月1日前から,件外個人事業主によって開業されていた。
(2)関西地図協会が作成する一枚物の住宅地図,同ハザードマップ及び同バス路線図等(以下,これらを総称して「一枚物の住宅地図等」という場合がある。)は,各地図に掲載される地域の広告主から広告収入を得て製作される,広告付きの一枚地図である。関西地図協会は,京都府を中心に,近隣の大阪府,奈良県にまたがって一枚物の住宅地図等を印刷,頒布しており,毎年,自治会からの依頼を受けて,京都府及びその近隣の大阪府,奈良県の各世帯に無料で配布している(甲5,10,14の1)。
(3)一枚物の住宅地図等は,地域の自治会が自主的に集まってできる「学区」の地元自治会長から依頼を受けて商品取引をしていることから,その普及率は,局所的に偏在するものの,京都府における一枚物の住宅地図等の年度別世帯配布数を各年10月1日現在の世帯総数で割った普及率は,平成27年度が55.7%,平成28年度が59.8%である(甲14の1)。
奈良県3市(奈良市,大和郡山市及び生駒市)における一枚物の住宅地図等の年度別世帯配布数を各年10月1日現在の世帯総数で割った普及率は,平成27年度が奈良市73.9%,大和郡山市78.8%,生駒市6.7%,平成28年度が奈良市81.2%,大和郡山市80.7%,生駒市103.1%である(甲14の1)。
大阪府3市町(熊取町,泉南市及び阪南市)における一枚物の住宅地図等の年度別世帯配布数を各年10月1日現在の世帯総数で割った普及率は,平成27年度が熊取町93.6%,泉南市66.0%,阪南市77.6%,平成28年度が熊取町93.6%,泉南市65.5%,阪南市78.4%である(甲14の1)。
(4)2013年人文地理学会大会研究発表要旨「学区別無料住宅地図の広告主とその広告圏」(愛知大学の近藤暁夫氏著)(甲10)において,一枚物の住宅地図に掲載されている広告に関する研究対象として,関西地図協会が作成した同地図が使用された。
(5)申立人が本件商標権者に内容証明郵便で通知した平成29年7月10日付け受任通知兼解雇通知(甲7。同月11日配達。)には,以下の記載がある。
「貴殿は,通知人に使用される者として,平成25年以来,通知人の京都事務所の営業責任者の任にあり,通称として『所長』という名称を使用してこられました。
しかし,貴殿は,通知人が平成28年11月に上記の任を解くまでの間,通知人の事業に関する経費を不正に取得され,その金額は1000万円を優に超えるものと理解しています。
つきましては,通知人としては,貴殿の平成24年以前の不正行為も含めて,貴殿の行為を看過することはできないと判断し,貴殿を解雇するとともに,貴殿との関係を一切絶つこととしました…(中略)…。
また,当然の話ですが,貴殿が,通知人の屋号である『関西地図協会』という名称を使用されることも一切禁止しますので,お気をつけください。
さらに,現在も,貴殿は,通知人の営業に関し,清算すべき金員を保管されていると思いますが,その明細を報告のうえ,清算をしていただけますようお願いいたします。」
(6)平成28年11月に関西地図協会の京都事務所の営業責任者の任を解かれた本件商標権者は,平成29年3月16日,申立人には無断で,本件商標につき商標登録出願し,申立人からの解雇通知(甲7)を受けた後も,そのことを秘密にしたまま,同年8月25日にその商標登録を受けた。
(7)本件商標権者は,同じく,関西地図協会の京都事務所の営業責任者の任を解かれた後であって,申立人からの解雇通知(甲7)を受ける前である,平成29年6月26日,「地図制作及び販売」及び「バス路線図,ハザードマップ製作及び販売」等を目的とする「株式会社関西特殊地図機構」(代表取締役は本件商標権者)を京都府京都市南区に設立した(甲6)。
本件商標権者が設立した「株式会社関西特殊地図機構」と申立人が事業主である「関西地図協会」とは,約4km,徒歩で約50分の範囲内である(甲20)。
2 引用商標の周知性について
上記1認定事実によれば,<1>申立人は,平成21年7月1日から,継続して,引用商標を一枚物の住宅地図等に使用してきたこと,<2>引用商標を付した一枚物の住宅地図等は,本件商標の登録出願時を含む,平成27年度及び同28年度においては,京都府並びに奈良県及び大阪府の一地方における世帯普及率が50%をはるかに超えて推移していることからすれば,引用商標は,本件商標の登録出願時において,関西地図協会の業務に係る一枚物の住宅地図等を表示するものとして,日本国内において,需要者の間に広く認識されていたとまではいい得ないが,京都府並びに奈良県及び大阪府の一地方における需要者の間に相当程度知られていたものと認められ,その状態は登録査定時においても継続していたものと認められる。
3 本件商標と引用商標との類似性について
本件商標と引用商標1の構成は,別掲1及び別掲2のとおりであって,左側に菱紋形状の同一図形(上部の左右の長方形内を黄色で配色してなる)を,右側に「関西地図協会」の漢字を配した構成からなるところ,図形部分からは,特定の称呼及び観念を生じないが,「関西地図協会」の文字部分からは,「カンサイチズキョウカイ」の称呼を生じ,「『関西地図協会』という名称の協会」の観念を生じるといえる。
そうすると,本件商標と引用商標1とは,外観において酷似し,その称呼及び観念も同じくするものであるから,本件商標は,引用商標1と極めて類似する商標といえる。
また,引用商標2の構成は,別掲3のとおり,模様の入った横長矩形内の,左側に本件商標と同じ菱紋形状の図形を,右側に「関西地図協会」の漢字を配し,当該漢字の下部に「-クリエイティブな感性と発想を形に-」の文字を小さく配した構成からなるところ,図形部分からは,特定の称呼及び観念を生じないが,「関西地図協会」の文字部分からは,「カンサイチズキョウカイ」の称呼を生じ,「『関西地図協会』という名称の協会」の観念を生じるといえる。
そうすると,本件商標と引用商標2とは,菱紋形状の図形部分と「関西地図協会」の文字部分とにおいて酷似し,その称呼及び観念も同じくするものであるから,本件商標は,引用商標2と類似する商標といえる。
4 商標法第4条第1項第7号該当性について
上記1ないし3によれば,<1>申立人は,平成21年7月1日から,京都府京都市伏見区にて,「関西地図協会」の屋号で地図製作を行っていた個人事業主であり,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,関西地図協会の業務に係る一枚物の住宅地図等を表示するものとして,京都府並びに奈良県及び大阪府の一地方における需要者の間で相当程度知られていたこと,<2>本件商標権者は,同25年以来,関西地図協会の京都事務所の営業責任者であったが,申立人の事業に関する経費1000万円を超える額を不正に取得したとして,同28年11月に役職を解かれたものの,本件商標の登録出願(同29年3月16日)当時においても,関西地図協会の従業員であったこと,<3>本件商標権者は,引用商標(要部を含む。)と外観が酷似し,その称呼,観念が同一である本件商標を同29年3月16日に,申立人に無断で登録出願し,同年8月25日にその商標登録を受けたこと,<4>本件商標権者は,同年6月26日に,申立人と同じく事業を「地図制作」とし,申立人が営業活動とする京都市内に,自らが代表取締役となって「株式会社関西特殊地図機構」を設立したこと,<5>本件商標権者は,同年7月10日付けで申立人から解雇されるとともに,清算すべき金員について清算を求められたこと,を認めることができる。
以上によれば,申立人においては,本件商標が登録出願(平成29年3月16日)されるはるか前(同21年7月1日)から引用商標を用いて一枚物の住宅地図等に係る事業を行っていたことを鑑みれば,自ら速やかに引用商標に係る登録出願を行うことが可能であったにもかかわらず,それを怠っていたことは否めない。
しかしながら,たとえそうであったとしても,本件商標権者においては,本件商標の登録出願の3年以上も前から関西地図協会の従業員であったところ,本件商標権者の不正が発覚したことにより京都事務所の営業責任者の役職を平成28年11月に解任され,当時まだ関西地図協会に在職中の同29年3月16日に,突如,引用商標と酷似する本件商標を申立人に無断で登録出願し,そのことを秘匿したまま,同じく,在職中の同年6月26日には,申立人が営業活動とする京都市内に,申立人と事業内容を同じくし,自らが代表取締役となって,「関西地図協会」とは名称を異にする「株式会社関西特殊地図機構」も設立した上で,その商標登録を受けたという本件商標の出願・登録に係る経緯からすれば,本件商標権者がその出願を行った目的については,他に合理的な説明がつかない限りは,何らかの不正な目的によるものであることが強く疑われるというべきである。その後,本件商標権者は,申立人から解雇,金員の清算を求められる状況に至っていることも鑑みれば,同人は関西地図協会における役職解任以降,申立人から今後何らかの処分・交渉に迫られるであろうことを予見して,申立人との交渉事を有利に進めるために,自らが使用する意図もない本件商標を出願するに至ったものと推測できるから,商標登録出願について先願主義を採用し,また,現に使用していることを要件としていない我が国の法制度を前提としても,そのような出願は,健全な法感情に照らし条理上許されないというべきであり,また,商標法の予定する秩序に反するものというべきであるから,本件商標は,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。
5 まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから,その余の申立ての理由について論及するまでもなく,同法第43条の3第2項の規定により,その登録を取り消すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲1 本件商標(色彩は,原本参照。)


別掲2 引用商標1(色彩は,原本参照。)


別掲3 引用商標2(色彩は,原本を参照。)


異議決定日 2019-03-12 
出願番号 商願2017-35042(T2017-35042) 
審決分類 T 1 651・ 22- Z (W16)
最終処分 取消 
前審関与審査官 福田 洋子小林 大祐 
特許庁審判長 小出 浩子
特許庁審判官 平澤 芳行
田村 正明
登録日 2017-08-25 
登録番号 商標登録第5975204号(T5975204) 
権利者 田中 伸嘉
商標の称呼 カンサイチズキョーカイ、カンサイチズ、チズキョーカイ 
代理人 佐野 寛幸 
代理人 特許業務法人みのり特許事務所 
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