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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W3541
管理番号 1351646 
異議申立番号 異議2018-900168 
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-07-05 
確定日 2019-04-26 
異議申立件数
事件の表示 登録第6032761号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6032761号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第6032761号商標(以下「本件商標」という。)は、「ワークライフデザイン」の片仮名を標準文字で表してなり、平成29年7月10日に登録出願、第35類「経営の診断又は経営に関する助言,事業の管理及び組織に関する指導及び助言」及び第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催」を指定役務として、同30年2月23日に登録査定、同年4月6日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同第6号及び同法第4条第1項第16号に該当するため、同法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第28号証を提出した。
1 本件商標の意味合いについて
本件商標は、「ワークライフデザイン」の文字を書してなるところ、その構成中の「ワーク」の文字部分が「仕事、労働」(甲1)を、「ライフ」の文字部分が「生活」(甲2)を、また、「デザイン」の文字部分が「目的をもって具体的に立案・設計すること。『快適な生活をデザインする』」(甲3)を意味する語として親しまれたものである。
そして、本件商標後半部の「ライフデザイン」の文字が「〔生活設計の意〕生活を個々人が主体性と創造性をもって設計し、積極的に実現させていくこと。」(甲4)を意味するものとして親しまれていること、さらに、下記2で詳述するとおり、昨今、「ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)」と称し、働くすべての人々が「仕事」と育児や介護、趣味や学習、休養、地域活動といった「仕事以外の生活」との調和をとり、その両方を充実させる働き方・生き方の実現に向けて、国と地方公共団体、企業、働く者が一体となって取り組んでいた(甲5)ことを勘案すると、本件商標に接する者は、「仕事と生活とを個々人が設計し、積極的に実現させていくこと。」程度の意味合いを容易に理解、認識し得るものといえる。
2 「仕事」と「生活」を巡る昨今の社会情勢の推移について
ワークライフバランスの実現は、国民一人ひとりが、仕事だけでなく家庭や地域生活などにおいても、ライフステージに応じた自らの望む生き方を手にすることができる社会を目指すものであり、労働力確保等を通じた我が国社会経済の長期的安定の実現や持続可能性の確保にとって重要な課題であることから、官民が一体となって、ワーク・ライフ・バランスの実現に取り組むため、経済界、労働界、地方の代表者、関係会議の有識者から構成される「ワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議」(甲6)が開催され、平成19年12月18日、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」(甲7)及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」(甲8)が策定された。加えて、その後の施策の進捗や経済情勢の変化を踏まえ、上述の「憲章」と「行動指針」に新たな視点や取組を盛り込み、また、政労使トップの交代を機に、仕事と生活の調和の実現に向けて一層積極的に取り組む決意を表明するため、平成22年6月29日、政労使トップによる新たな合意が結ばれた。
そして、ワーク・ライフ・バランスを推進していく中で、政府が重要視したのが「働き方改革」であり、平成28年9月に始まった「働き方改革実現会議」では、安倍首相が自ら議長を務め、経団連や連合などのトップが参加し、「非正規雇用の処遇改善」「賃金引上げと労働生産性向上」「長時間労働の是正」「柔軟な働き方がしやすい環境整備」など9つの分野について、議論を行い、「働き方改革実行計画」(甲9)が平成29年3月28日にまとめられ、その計画に基づき「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が成立した(平成30年7月6日公布:甲10)。
3 本件商標の指定役務における状況について
本件商標は、第35類「経営の診断又は経営に関する助言,事業の管理及び組織に関する指導及び助言」及び第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催」を指定役務にするものであり、これらは、いわゆる経営コンサルタントや事業コンサルタントといった事業者向けの支援サービスやいわゆる教育サービスといったものであるところ、ワーク・ライフ・バランスや働き方改革が国と地方公共団体、企業、働く者などの様々な者に影響を与えるものであるから、それら関係者の間では、仕事と生活について、以下のとおり、研修やセミナーが実施され、経営コンサルタントによって情報が発信され、各企業が取り組みを進めているところであり、それらにおいては、ワーク・ライフ・バランスに関する取り組みもなされているほか、「仕事と生活とを個々人が主体性と創造性をもって設計し、積極的に実現させていくこと。」を「ワークライフデザイン」と称している実情がある。
(1)「児童養護施設つつじが丘学園」のウェブサイト(甲11)
「児童養護施設つつじが丘学園」のウェブサイトにおいて、「【研修】ワーク・ライフ・デザイン」の見出しの下、「平成30年3月5日(月)」として「長野県県民文化部とのコラボレーション研修『ワーク・ライフ・デザイン』についての研修を開きました。高校生・来年度採用職員・現役職員が集まり学習会になりました。これからの時代ワークプラン&ライフプランのイメージ作りは大切ですね。皆さんいっしょに学びましょう。」の記載がある。
(2)「TOCHIGI WOMAN NAVI」のウェブサイト(甲12)
「TOCHIGI WOMAN NAVI」のウェブサイトにおいて、「ワーク&ライフデザイン講座」の見出しの下、「大学生等を対象に、固定的性別役割分担意識にとらわれず、自分自身のキャリアビジョンを描くことができるよう、講座・子育てインターンシップ・ロールモデルとの交流等を実施し、ワークライフバランスや仕事と子育ての両立について考えてもらうために実施しています。」とあり、「平成29年度の取組」として「ワーク&ライフ デザイン講座(全5回)日程:平成29年6月から7月(全5回)」の記載がある。
(3)「TOCHIGI WOMAN NAVI」のウェブサイト(甲13)
「TOCHIGI WOMAN NAVI」のウェブサイトにおいて、「プレスリリース」として、「【高校生・大学生向け】ワーク&ライフ デザインブックができました!」の見出しの下、「県と(公財)とちぎ男女共同参画財団では、平成28年度に、宇都宮文星短期大学1年生を対象に『ワーク&ライフデザイン講座』を実施し、その成果をまとめた『ワーク&ライフ デザインブック』を作成しました。高校生から大学生が、将来のライフデザインやワーク・ライフ・バランスについて考えるために、記入式のワークシートや、子育てインターンシップの報告が掲載されています。このデザインブックを使って、自分の未来宣言をしてみましょう!」の記載がある。
(4)「えなワークライフデザインプロジェクト」のウェブサイト(甲14)
「えなワークライフデザインプロジェクト」のウェブサイトにおいて、「プレスリリース」として、「働き方と働く場の可能性を広げる」の見出しの下、「岐阜県恵那市明智町。・・・ICT(情報通信技術)を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方が可能となった今、都市部で働く人たちに人生の新たな価値を提案するため『えなじ?オフィス展開プロジェクト』がスタート。都市部で働く人たちとの交流の中で、テレワーク推進を通じ、地元の人たちにも新しいワークライフをデザインしてもらうため、『SOZO Trial space AKECHI』は、さまざまなアクションを起こしていきます。」の記載がある。
(5)「中央大学」のウェブサイト(甲15)
「中央大学」のウェブサイトにおいて、「自己成長(ワーク・ライフデザイン)支援講座」の見出しの下、「『自分を活かして、社会で自分なりに活躍していきたい』そんな思いを持つあなたのための講座です。世の中はどんどん変化し続けます。その変化の中で仕事をし続けていくためには、『自分を活かす』ことが必須条件となります。『自分を活かす』ためには、自分のことをどれだけ深く理解できているかが、キーポイントになります。」の記載がある。
(6)「JBCCユーザー会」のウェブサイト(甲16)
「JBCCユーザー会」のウェブサイトにおいて、「公開日:2016年5月2日」として、「【女性セミナー】”ありたい姿”を描くワークライフデザイン研修」の見出しの下に、「今回は、女性が自身の将来的なキャリアイメージ(人生)について、結婚や出産、子育て、介護等のライフイベントを理由に持ちづらいこともある中で、この『女性セミナー』の開催を機会に一度立止まって頂き、あらためて『仕事』・『ライフ』・『マネーバランス』をじっくりと考えて頂く機会を目的とし企画いたしました。また、昨年度成立した『女性活躍推進法』に対する各企業の取組みのひとつとして、今回の研修が、女性が仕事を頑張りながらより輝けるためのお役立ちのセミナーとなれば幸いです。」の記載がある。
(7)「大和総研 大和総研ビジネス・イノベーション」のウェブサイト(甲17)
「大和総研 大和総研ビジネス・イノベーション」のウェブサイトにおいて、レポート又はコラムとして、「ワーク・ライフ・バランスの前にワーク・ライフ・デザインを」の見出しの下、「自分が描いたワーク・ライフ・デザインがあれば、支援する制度をタイミングよく活用することができる。また、上司との面談やアドバイスもこれまで以上に効果的になるはずだ。仕事と生活における選択のよりどころとなるワーク・ライフ・デザインがあってこそ、ワーク・ライフ・バランスが真価を発揮すると考える。2025年は団塊世代が後期高齢者になる。日本の労働人口は減少し続け、大都市や一部の業界では人材の需給が逼迫する可能性が高い。現役の従業員はもちろん、高齢者の活用と新卒者をはじめとする若年層の確保は人事戦略の要である。一方でIT技術やロボット技術の進歩が単純作業や重労働、危険作業をかなり代替してくれるであろう。そして従業員には計画を練る、企画立案を行う、顧客とコミュニケーションをとる仕事がますます求められると予測される。ワーク・ライフ・デザインを通して自分はどのような価値を提供していきたいのかを考えることが重要ではないだろうか。」の記載がある。
(8)「ダイバーシティ推進・女性活躍促進のWoomax」のウェブサイト(甲18)
「ダイバーシティ推進・女性活躍促進のWoomax」のウェブサイトにおいて、「仕事とプライベート両立のコツをつかむ!」をテーマとする「?女性リーダーサポートプログラム・第2弾?『ワークライフデザイン』公開講座」が開催された旨の記載がある。
(9)「筑波大学ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター」のウェブサイト(甲19)
「筑波大学ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター」のウェブサイトにおいて、「仕事とプライベート両立のコツをつかむ!」をテーマとする「【第2回ダイバーシティセミナー(2月24日)】『ワークライフデザインセミナーI?自己実現編?』」が開催された旨の記載がある。
(10)「筑波大学ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター」のウェブサイト(甲20)
「筑波大学ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター」のウェブサイトにおいて、「仕事、子育て、父親としての自分、母親としての自分。想像したことはありますか?理想通りですか?お二人のゲストスピーカーと共に、子育ても仕事も楽しむ方法、家庭と職場での男女の役割分業の見直し方等々について、父親、母親の立場から考えます。」をテーマとする「【第3回ダイバーシティセミナー(2月25日)】『ワークライフデザインセミナーII?パパ・ママ編?』」が開催された旨の記載がある。
(11)「国際プロジェクト・プログラムマネジメント学会誌」のウェブサイト(甲21)
「国際プロジェクト・プログラムマネジメント学会誌」のウェブサイトにおいて、「顧客目線を育む『ワークライフデザイン』と事業価値創造」と題した論文が「顧客目線を活かすには複眼的な視点を持つことが必要であり、さまざまな観点からの価値や問題課題に気づくことが必要と言え、その創出には、たとえば時間的『ゆとり』とそれを生む『ワークライフデザイン』をとることが重要である。ここでの『ワークライフデザイン』とは、個人の時間を有効にマネジメントしてその結果を仕事に活かすチャンスを生み出す仕組みである。」と紹介されている。
(12)「神戸新聞 RECRUIT2019」のウェブサイト(甲22)
「神戸新聞 RECRUIT2019」のウェブサイトにおいて、「ワーク・ライフ・デザイン宣言」の見出しの下、「変化の激しい時代に対応し、発展を続けていくためには、多様性のある社員一人一人の活躍が欠かせません。そのため、性別や年齢、障害の有無などにとらわれない人事配置や育成を重要な経営戦略と位置づけます。育児や介護などの事情で制約がある社員も、意欲や能力に応じてキャリアを重ねることのできる環境をつくります。こうした取り組みを点検、検証する仕組みを整えます。すべての社員が自分の仕事をデザインしていけるような、自律的で新しい働き方を進めていきます。」の記載がある。
(13)株式会社クレディセゾンの報道向け資料(甲23)
株式会社クレディセゾンの2015年12月16日付けの報道向け資料において、「『SAISON CHIENOWA』を開設!?自分らしい働き方、暮らし方を社会と共創するプラットフォームをめざします?」の見出しの下、「当社では今年4月に育児中の社員を中心に構成されたプロジェクトチーム『セゾン・ワークライフデザイン部』を立ち上げ、育児などが理由で働き方に制約がある社員の『社会に貢献できる自分らしい働き方』について検討してきました。」の記載がある。
(14)「Career PALS」のウェブサイト(甲24)
「Career PALS」のウェブサイトにおいて、「第11回就活BAR開催しました!【2017年1月13日】」の見出しの下、「2017年一発目のテーマは、ワークライフバランスについてでした。就職活動の解禁を目前に、・仕事のやりがい・社会人の1日の流れ・プライベートの時間の使い方や過ごし方・今後の目標などを知りたいという声が多数ありましたので、今回も外資系から国内ベンチャー企業まで様々な業界の方を交えてパネルディスカッションを行いました。」の記載がある。
(15)「ワークライフデザインの実現★ワーキングマザーのポジティブマインドセット」のウェブサイト(ブログ)(甲25)
「ワークライフデザインの実現★ワーキングマザーのポジティブマインドセット」のウェブサイト(ブログ)において、「2010年12月に女の子の双子ちゃんを出産し、一気に三児の母になりました。子供を産むたび、守るものが増えてパワーアップ!!育児も仕事も妥協しないのが私のスタイル。ロールモデルがいないのなら、私がロールモデルになろう!!2度目の育児休暇を経て、2012年4月末、職場復帰しました。自分らしいライフスタイルが当たり前に実現出来る社会を目指してチャレンジを続けます。***ワークライフデザイン***一度きりの人生に意味をもたせるために自分らしく出来ることを妥協せずに精一杯チャレンジすること」の記載がある。
(16)「雛形 hinagata」のウェブサイト(甲26)
「雛形 hinagata」のウェブサイトにおいて、「残席わずか!トークイベント『移住とこれからの暮らし方?ワークライフデザインの時代?』開催!」の見出しの下、「地域のキーパーソンのトークショーやウェブインタビューを展開するこのプロジェクトの第四弾のテーマは、『移住とこれからの暮らし方?ワークライフデザインの時代?』。7月9日(木)、EDIT LIFE TOKYOにてトークショーが開催されます。」の記載がある。
(17)「文京区」のウェブサイト(甲27)
「文京区」のウェブサイトにおいて、「ライフデザイン交流事業補助事業(終了しました)」の見出しの下、「ライフデザインを考える交流事業を支援します!ワーク・ライフ・バランスやライフデザインなどのセミナーと交流会をセットにした事業に、補助金を交付します。」の記載がある。
(18)「ニッセイ基礎研究所」のウェブサイト(甲28)
「ニッセイ基礎研究所」のウェブサイトにおいて、「ワークライフバランスとライフサイクル」の見出しの下、「ワークライフバランスという言葉が社会に浸透してきている。インターネットはもとより、テレビや新聞・雑誌にこの言葉が出現する頻度も高まってきたが、その中身を見ると、「働く女性の子育て支援」の色彩がやや強いように見える。・・・本来的には、ワークライフバランスは、仕事を持つ人が、仕事と家庭あるいは、仕事と社会といった複数の要素をいかに上手くバランスさせるかというものである。・・・したがって、多様なライフデザインを描こうと思えば、ワークライフバランスに関しての自由度が予め確保されていることが必要である。そして、この自由度の確保は、どの程度までワークライフバランスを支援する環境が整備されているかという点に依存してくる。」の記載がある。
4 本件商標の商標法第3条第1項第3号及び同第6号並びに同法第4条第1項第16号の該当性について
本件商標は、上記1のとおり、その構成文字が有する意味合いを踏まえると、「仕事と生活とを個々人が主体性と創造性をもって設計し、積極的に実現させていくこと。」程度の意味合いを容易に理解、認識し得るものといえる。
ところで、昨今の社会情勢を見れば、上記2のとおり、「仕事」と「生活」、すなわち、「ワーク」と「ライフ」を両立させていくことに官民が国をあげて取り組んで来ているところであり、本件商標の指定役務である第35類「経営の診断又は経営に関する助言、事業の管理及び組織に関する指導及び助言」及び第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催」に係る事業においても、上記3のとおり、「仕事」と「生活」、すなわち、「ワーク」と「ライフ」を如何に両立させていくかが重要なテーマとなってきている。そして、それらの事業分野においても、仕事と生活とを設計し、積極的に実現させていくことを「ワークライフデザイン」と称している実情がある。
このため、本件商標は、需要者をして「仕事と生活とを個々人が設計し、積極的に実現させていくこと。」程度の意味合いを容易に理解、認識させるものといえる。
したがって、本件商標は、その指定役務中、例えば、仕事と生活の設計に関する指導や助言、仕事と生活の設計に関する知識の教授やセミナーの企画・運営又は開催について使用するときは、その役務のテーマ、すなわち、その役務の質又は特徴を表示するものであって、自他役務の識別標識としては機能し得ないものであるから、商標法第3条第1項第3号又は同第6号に該当するものである。
また、本件商標は、その指定役務中、仕事と生活の設計に関係しないものについて使用するときは、あたかも、仕事と生活の設計に関するものであるかのごとく、その役務の質について誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当するものといえる。

第3 取消理由の通知
当審において、商標権者に対し、「本件商標は、役務の質、内容を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨の取消理由を平成30年12月13日付けで通知し、相当の期間を指定して意見を提出する機会を与えた。

第4 商標権者の意見
上記第3の取消理由に対し、商標権者は、何ら意見を述べるところがない。

第5 当審の判断
1 「ワークライフデザイン」の語について
(1)「仕事」と「生活」を巡る社会情勢について
「厚生労働省」のウェブサイトにおいて、「仕事と生活の調和実現のための取組」として、「平成19年12月に、『ワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議』において、『仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章』及び『仕事と生活の調和推進のための行動指針』が策定されました。その後、施策の進捗や経済情勢の変化を踏まえ、『憲章』と『行動指針』に新たな視点や取組を盛り込み、また、政労使トップの交代を機に、仕事と生活の調和の実現に向けて一層積極的に取り組む決意を表明するため、平成22年6月29日、政労使トップによる新たな合意が結ばれました。」との記載及び「これらを受けて、厚生労働省では、企業などに対する支援事業を実施し、労使の自主的取組を推進することにより、長時間労働の抑制、年次有給休暇の取得促進、特に配慮を必要とする労働者に対する休暇の普及等、労働時間等の設定の改善に向けた取組を推進しています。」との記載がある(甲6)。
そして、ワーク・ライフ・バランスが推進される中、政府が「働き方改革」を重要課題として検討した、「『働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱』参考資料」における「『働き方改革実行計画』(平成29年3月28日 働き方改革実現会議決定)(抄)」には、「今後の取組の基本的考え方」として、「ワーク・ライフ・バランスが改善し、女性や高齢者も仕事に就きやすくなり、労働参加率の向上に結びつく。」との記載、「『時間外労働の上限規制等について』(建議)(平成29年6月5日労働政策審議会)(抄)」には、「勤務間インターバル」について、「ワーク・ライフ・バランスを保ちながら働き続けることを可能にする制度であり、その普及促進を図る必要がある。」との記載がある(甲9)。
その後、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案(働き方改革関連法案)は、平成30年6月29日午前の参議院本会議で可決、成立した(甲10)。
以上からすると、本件商標の登録査定時には、仕事と生活について、官民をあげて仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の普及推進、改善を図る社会情勢にあり、厚生労働省では、企業等に対する支援事業を実施していたものである。
(2)「ワークライフデザイン」の文字の使用について
ア 「TOCHIGI WOMAN NAVI」のウェブサイトにおいて、「ワーク&ライフデザイン講座」について、「・・・自分自身のキャリアビジョンを描くことができるよう、講座・子育てインターンシップ・ロールモデルとの交流等を実施し、ワークライフバランスや仕事と子育ての両立について考えてもらうために実施しています。」との記載、「ワーク&ライフ デザイン講座(全5回)」が平成28年6月から7月及び平成29年6月から7月に開催されている(甲12)。また、同ウェブサイトのプレスリリースには、「ワーク&ライフ デザインブックができました!」の項に「県と(公財)とちぎ男女共同参画財団では、平成28年度に、宇都宮文星短期大学1年生を対象に『ワーク&ライフデザイン講座』を実施し、その成果をまとめた『ワーク&ライフ デザインブック』を作成しました。高校生から大学生が、将来のライフデザインやワーク・ライフ・バランスについて考えるために・・・このデザインブックを使って、自分の未来宣言をしてみましょう!」との記載がある(甲13)。
イ 「JBCCユーザー会」のウェブサイトにおいて、「【女性セミナー】“ありたい姿”を描くワークライフデザイン研修」(開催2017/02/21)の見出しの下、「イベント詳細」に「女性が自身の将来的なキャリアイメージ(人生)について、結婚や出産、子育て、介護等のライフイベントを理由に持ちづらいこともある中で、この『女性セミナー』の開催を機会に一度立止まって頂き、あらためて『仕事』・『ライフ』・『マネーバランス』をじっくりと考えて頂く機会を目的とし企画いたしました。また、昨年度成立した『女性活躍推進法』に対する各企業の取組みのひとつとして、今回の研修が、女性が仕事を頑張りながらより輝けるためのお役立ちのセミナーとなれば幸いです。」との記載がある(甲16)。
ウ 「大和総研 大和総研ビジネス・イノベーション」のウェブサイトにおいて、レポート又はコラムとして「ワーク・ライフ・バランスの前にワーク・ライフ・デザインを」(2014年6月4日 人事制度)の見出しの下、「自分が描いたワーク・ライフ・デザインがあれば、支援する制度をタイミングよく活用することができる。・・・仕事と生活における選択のよりどころとなるワーク・ライフ・デザインがあってこそ、ワーク・ライフ・バランスが真価を発揮すると考える。・・・ワーク・ライフ・デザインを通して自分はどのような価値を提供していきたいのかを考えることが重要ではないだろうか。」との記載がある(甲17)。
エ 「ダイバーシティ推進・女性活躍推進のWoomax」のウェブサイトにおいて、株式会社Woomax主催の「『ワークライフデザイン』公開講座」(2015年12月16日)の案内がある(甲18)。
オ 「筑波大学ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター ダイバーシティ部門」のウェブサイトにおいて、「ワークライフデザインセミナーI?自己実現編?」(平成26年2月24日)及び「ワークライフデザインセミナーII?パパ・ママ編?」(平成26年2月25日)の案内があり、そこには、「あなたのキャリアメイキング一緒に考えてみませんか?・・・どのような人材やキャリアメイキング意識を持つ人材が求められているのかなど、学生の皆さんとのトークセッションを交えながらお話いただきます。」「お二人のゲストスピーカーと共に、子育ても仕事も楽しむ方法、家庭と職場での男女の役割分業の見直し方等々について、父親、母親の立場から考えましょう。」との記載がある(甲19及び甲20)。
カ 「国際プロジェクト・プログラムマネジメント学会誌」のウェブサイトにおいて、「顧客目線を育む『ワークライフデザイン』と事業価値創造」(2009年4巻1号)の見出しの下、抄録の中に「・・・さまざまな観点からの価値や問題課題に気づくことが必要と言え、その創出には、たとえば時間的『ゆとり』とそれを生む『ワークライフデザイン』をとることが重要である。ここでの『ワークライフデザイン』とは、個人の時間を有効にマネジメントしてその結果を仕事に活かすチャンスを生み出す仕組みである。」との記載がある(甲21)。
キ 株式会社クレディセゾンが報道関係者に宛てた資料(2015年12月16日)において、「『SAISON CHIENOWA』を開設!」の見出しの下、「当社では今年4月に育児中の社員を中心に構成されたプロジェクトチーム『セゾン・ワークライフデザイン部』を立ち上げ、育児などが理由で働き方に制約がある社員の『社会に貢献できる自分らしい働き方』について検討してきました。」との記載がある(甲23)。
(3)上記(1)及び(2)からすれば、本件商標の登録査定時には、官民をあげて仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の普及推進、改善を図る社会情勢にあり、本件商標の指定役務の分野においても、仕事と生活についての研修やセミナーの実施・経営コンサルタントによる情報の発信・各企業の取り組みが進められていたところであり、これらにおいて、「仕事と家庭の両立」「個人の時間を有効にマネジメントしてその結果を仕事に活かすチャンスを生み出す」「子育ても仕事も楽しむ」等、「(個々人にあった)仕事と生活の設計」の意味合いで「ワークライフデザイン」の語が使用されていたものということができる。
そして、「ワークライフデザイン研修」や「ワークライフデザインセミナー」等と称する研修、セミナーが実施されていることが認められる。
2 本件商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
本件商標は、「ワークライフデザイン」の片仮名を標準文字で書してなるところ、「仕事」の意味を有する「ワーク」の文字(甲1)、「生活」の意味を有する「ライフ」の文字(甲2)及び「目的をもって具体的に立案、設計すること」の意味を有する「デザイン」の文字(甲3)を結合したもの、又は「ワーク」の文字と「生活を個々人が主体性と創造性をもって設計し、積極的に実現させていくこと」を表す「生活設計」の意味を有する「ライフデザイン」の文字(甲4)を結合したものと容易に理解され、その構成文字全体から、「仕事と生活を個々人が主体性と創造性をもって設計すること」程の意味合いが容易に認識されるものというのが相当である。
そして、上記1(1)ないし(3)の認定事実からすれば、本件商標の登録査定時には、「ワークライフデザイン」の文字は、「仕事と家庭の両立」「個人の時間を有効にマネジメントしてその結果を仕事に活かすチャンスを生み出す」「子育ても仕事も楽しむ」等、(個々人にあった)仕事と生活の両立を図り、それを実現させていくことを内容とする「仕事と生活の設計」を表す語として、使用されているものといえる。
そうすると、本件商標からは、(個々人にあった)仕事と生活の両立を図り、それを実現させていくことを内容とする「仕事と生活の設計」の意味合いが容易に認識されるものである。
してみれば、本件商標を、その指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「仕事と生活の両立を内容とした生活設計」の意を理解するにすぎないというべきであるから、例えば、「セミナーの企画・運営又は開催」におけるセミナーのテーマ、「事業の管理及び組織に関する指導及び助言」における助言の内容等を表示したもの、すなわち、その役務の質、内容を表示したものと認識するにとどまるとみるのが相当である。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、役務の質、内容を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当し、その登録は、同条の規定に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2019-03-15 
出願番号 商願2017-97675(T2017-97675) 
審決分類 T 1 651・ 13- Z (W3541)
最終処分 取消  
前審関与審査官 安達 輝幸 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 冨澤 美加
鈴木 雅也
登録日 2018-04-06 
登録番号 商標登録第6032761号(T6032761) 
権利者 ソルローズ株式会社
商標の称呼 ワークライフデザイン、ワークライフ、ワーク、ライフデザイン、ライフ、デザイン 

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