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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W0918
審判 全部申立て  登録を維持 W0918
審判 全部申立て  登録を維持 W0918
審判 全部申立て  登録を維持 W0918
管理番号 1351636 
異議申立番号 異議2018-900255 
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-09-07 
確定日 2019-05-10 
異議申立件数
事件の表示 登録第6060316号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6060316号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6060316号商標(以下「本件商標」という。)は,「SAIPHONE」の欧文字を標準文字で表してなり,平成29年9月28日に登録出願,第9類「携帯電話機用の革製ケース,携帯電話機用ケース,携帯電話機用ホルダー,携帯電話機用革製ホルダー,スマートフォン用のケース,スマートフォン用の革製ケース,スマートフォン用ホルダー,スマートフォン用革製ホルダー,携帯電話機,スマートフォン」及び第18類「財布,名刺入れ,定期券入れ,パス入れ,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,皮革製包装用容器」を指定商品として,同30年6月14日に登録査定され,同年7月6日に設定登録されたものである。

2 引用商標
(1)登録異議申立人「アップル インコ-ポレイテッド」(以下「申立人1」という。)が引用する商標は次のとおりである。
ア 登録第808390号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 AIPHONE
指定商品 第9類「電気通信機械器具」
登録出願日 昭和41年11月18日
設定登録日 昭和44年2月19日
書換登録日 平成21年2月25日
イ 登録第5158180号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 AIPHONE
指定商品及び指定役務 第9類「配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,火災感知機,ガス漏れ警報器,盗難警報器,防犯警報装置」のほか第35類ないし第37類,第39類,第40類,第42類,第44類及び第45類に属する商標登録原簿に記載の役務
登録出願日 平成19年11月22日
設定登録日 平成20年8月8日
ウ 登録第5194974号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様 AIPHONE
指定役務 第35類「建築物における来訪者の受付及び案内(人材派遣によるものを含む。),経営診断又は経営に関する助言,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテル事業の管理,顧客情報の管理及びこれに関する情報の提供,電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」
登録出願日 平成19年11月26日
設定登録日 平成21年1月9日
エ 商願2017-107963商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様 AIphone(標準文字)
指定商品 第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品
登録出願日 平成29年8月18日
設定登録日 未登録(平成31年1月15日拒絶査定,同年4月16日拒絶査定に対する審判請求)
オ 登録第5147866号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の態様 iPhone(標準文字)
指定商品 第9類「ゲーム機能を有する携帯電話機,携帯電話,携帯電話の部品及び附属品,テレビ電話,インターネット接続機能・電子メール送受信機能・映像及びデータ情報送受信機能を有する携帯電話機」
登録出願日 平成18年9月19日
設定登録日 平成20年7月4日
なお,引用商標1,引用商標2,引用商標3及び引用商標5に係る商標権は現に有効に存続しているものであり,引用商標4に係る登録出願は特許庁に係属しているものである。
(2)登録異議申立人「アイホン株式会社」(以下「申立人2」という。)が引用する商標は,上記引用商標1,引用商標2及び引用商標5である。
なお,以下,申立人1及び申立人2をまとめて「申立人」といい,引用商標1ないし引用商標5をまとめて「引用商標」という。

3 登録異議の申立ての理由
(1)申立人1の登録異議申立ての理由
申立人1は,本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから,その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第17号証(枝番号を含む。以下「甲1-1」?「甲1-17」のようにいう。)を提出した。
ア 申立人1の商標「iPhone」の著名性について
米国カリフォルニア州に本社を置く申立人1は,「iMac」等のパーソナルコンピュータ,スマートフォン「iPhone」等を製造販売し,音楽・映像配信サービス「iTunes」等を提供する米国の法人であり,その存在は日本を含む世界中で知られていることは周知の事実である(甲1-7)。
上記製品のうち,「iPhone」は,申立人1が製造販売する唯一のスマートフォンであり,主力製品であって,スマートフォン市場開拓の先兵となった(甲1-8)。当該製品は,世界的なヒット商品であり,特に日本のスマホ市場の人気が突出しており(甲1-9),スマートフォンのメーカー別シェアでは,2017年には6年連続の首位を獲得し(甲1-10),2016年には54.1%のシェアを占めている(甲1-11)ことから,著名であることは明らかである。
また,2015年末のインターネット利用者数などを考慮すると,日本人の4人に1人が申立人1のiPhoneを使用していることになる(甲1-11,甲1-13)。
特許庁においても,異議2017-900319の決定で「iPhone」は,申立人1の商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものであり,周知著名性の程度は極めて高いものとみるのが相当である旨判断されている(甲1-14)。
以上から,我が国において「iPhone」が申立人1のスマートフォンを示すものとして広く認識されていることは顕著な事実である。
イ 商標法第4条第1項第11号該当性
(ア)商標の対比
引用商標1ないし引用商標4は「AIPHONE」の欧文字を,引用商標5は「iPhone」の欧文字からなり,いずれも「アイフォン」の称呼が生ずる。
これに対し,本件商標は,「SAIPHONE」の欧文字からなり,その構成文字全体に相応して「サイフォン」の称呼が生ずる。
そこで,本件商標と引用商標の類否について検討すると,両商標は語頭の「S」ないし「SA」の文字において相違するにすぎず,引用商標の文字を全て取り込んでいることを考慮すると,これに接した取引者,需要者に対し,外観上,近似した印象を与えるものである。加えて,称呼においては,語頭の「ア」の音と「サ」の音に差異を有するところ,該差異音は母音「a」を共通とする清音という近い音の関係にあり,この音の有無が両称呼全体に与える影響は大きいものとはいえず,両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは,全体の音感が互いに近似し聞き誤るおそれがあるものである。
したがって,本件商標と引用商標は,外観だけでなく,称呼においても,互いに相紛らわしい商標であるから,両者は類似の商標というべきである。
(イ)指定商品の対比
本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は,電気通信機械器具を中心に類似の商品が指定されている。
(ウ)小括
以上から,本件商標は,引用商標と同一又は類似の商標であり,かつ,指定商品も同一又は類似のものを指定するため,商標法第4条第1項第11号に該当する。
ウ 商標法第4条第1項第15号該当性
(ア)本件商標は,「SAIPHONE」の文字からなり,その構成要素に申立人1の著名な商標「IPHONE」の文字を含む。
特許庁の商標審査基準において「他人の著名な商標と他の文字又は図形等と結合した商標は,その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものなどを含め,商品等の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認して取り扱うものとする。」(「商標審査基準〔改訂第13版〕第3 十三,第4条第1項第15号 2.」)と規定されていることから考えても,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当することが明らかである。
(イ)加えて,同審査基準で挙げている考慮事項について検討すると,次のとおりその全てに該当し,出所混同が生じると総合的に判断されるべきものである。本件商標が使用されると,出所の混同が生じるおそれや,申立人1から公認を受けているとの誤認あるいは,申立人1の著名商標「iPhone」の希釈化汚染化が生じるおそれがある。
a 出願商標とその他人の標章との類似性の程度
申立人1の著名商標「iPhone」は,「アイフォーン」(「アイフォン」と称呼される場合を含む。以下同じ。)の称呼が生ずる。
本件商標は,「SAIPHONE」の文字からなるところ,スマートフォンの分野では,欧文字一文字又は二文字が製品の型番・品番を表示するために一般に使用されている実情があること(甲1-15),申立人1の商標「iPhone」の著名性を鑑みれば,本件商標の指定商品との関係においては,本件商標の語頭の「SA」は単なる型番等を表す表示にすぎず,「IPHONE」の文字部分が強い出所表示機能を有することは疑いない。
事実,申立人1の「iPhone」はバージョン名として欧文字2文字や数字と欧文字の組み合わせを用いている。
したがって,本件商標の要部が「IPHONE」の部分にあることは明らかであるから,本件商標は,引用商標と同一の称呼「アイフォーン」の称呼を生じさせ,かつ,アップル社が提供する「iPhone」製品の観念を生じさせる。
以上より,本件商標と申立人1の著名商標「iPhone」は,外観,称呼及び観念を同一にするものであるから,両者は互いに相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
b その他人の標章の周知度
「iPhone」商標が周知であることは前記のとおりである。
c その他人の標章が創造標章であるかどうか
「iPhone」商標は既存の言葉にはなく,申立人1が創作した造語商標である。
d その他人の標章がハウスマークであるかどうか
申立人1のハウスマーク(社標)には該当しないが,需要者・消費者の認知度は非常に高い。
e 企業における多角経営の可能性
申立人1は,上記のとおりコンピュータの分野以外にも音楽事業等様々な事業分野で商品・役務展開している。例えば,マグカップやTシャツ,文房具等も販売している(甲1-16)。したがって,多角経営の可能性は十分に認められる。
f 商品間,役務間又は商品と役務間の関連性
「iPhone」商標はスマートフォン分野で広く知られているものであるから,第9類のスマートフォン,スマートフォン用のケース等の商品を指定商品とする本件商標における「SAIPHONE」の文字は,即座に申立人1を想起させ,本件商標に接する需要者・取引者は,本件商標から「申立人1に関係する何らかの商品・役務」をイメージすると考えられ,その出所を混同するおそれが高い。
g 商品等の需要者の共通性その他取引の実情
「iPhone」は,スマートフォンの機種の名称であるから,本件商標の指定商品「スマートフォン,スマートフォン用のケース」等とは,関連性の程度は高いものであり,取引者及び需要者の範囲は共通するといえる。事実,申立人1は,スマートフォン用のケース,ホルダーを製造・販売している(甲1-17)。
(ウ)また,商標法第4条第1項第15号は,いわゆる「広義の混同」を生ずるおそれのある商標を含むものである(最高裁判決 平成10年(行ヒ)第85号)。
したがって,引用商標5の著名性の程度,本件商標と引用商標5の類似性,需要者の共通性,申立人1の事業,本件商標と引用商標5の商品間の共通性等を総合的に勘案すれば,申立人1の著名商標「iPhone」(引用商標5)に,単なる型番と認識されるアルファベット2文字「SA」を付加したにすぎない本件商標を商標権者がその指定商品に使用した場合には,少なくとも,申立人1と何らかの関係にある営業主の業務に係る商品と誤認されるおそれがあることは明らかである。
さらに,本号は,単純な「出所の混同」のみならず「ただ乗り」,「希釈化」をも防止しようとする規定であるとの解釈が前記最高裁判例であるから,「ただ乗り」,「希釈化」により,申立人1の業務上の信用が損なわれる状況となっているのである。
以上のとおり,本件商標が,商標法第4条第1項第15号に該当することは明らかというべきである。
(2)申立人2の登録異議申立ての理由
申立人2は,本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから,その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第40号証(以下「甲2-1」?「甲2-40」のようにいう。)を提出した。
ア 引用商標1及び引用商標2の周知著名性
申立人2は,昭和23年6月に設立された合資会社を前身とするものであり,昭和34年にアイホン株式会社に名称変更を行った。申立人2は,昭和29年に製品商標を「アイホン(AIPHONE)」に改称し,ドアホンの発売を開始した(甲2?5,甲2-6)。
申立人2は,その後,インターホンの製造販売を本格的に開始し,昭和39年には同時通話可能なインターホン,昭和41年には同時通話可能なドアホンの製品を発売する等,インターホンのパイオニアとして,常に我が国インターホン業界をリードし続けて来た(甲2-6)。現在では,世界約70か国に製品の輸出及び販売を行っており,アメリカのホワイトハウスを始め,フランスのモン・サン・ミッシェルやスペインのサグラダ・ファミリアにおいても使用されるまでにシェアを拡大している(甲2-7)。
そして,申立人2は,平成5年にISO9001(品質マネジメントシステム),平成11年にISO14001(環境マネジメントシステム)の認証を取得した。また,平成20年には「愛知ブランド企業」に認定され,昭和56年及び平成30年には,総合的品質管理に関する世界最高位ランクの賞である「デミング賞」を受賞した(甲2-6,甲2-8)。
上述のように,申立人2は,インターホンからスタートし,今日では,ドアホン・テレビドアホン,ナースコールシステム,インターホンシステムと,多数多様のインターホン関連機器を製造・販売している(甲2-9)。申立人2の製品売上高は,平成25年度425億円ないし平成29年度451億円である(甲2-10)。そして,申立人2の製品は,国内インターホン業界においてトップシェアを継続しており,平成30年3月期時点のシェアは51.6%に達している(甲2-11)。
引用商標1及び引用商標2は,申立人2のハウスマークである「アイホン」の英文字商標として,昭和29年の商標採択以来,継続的かつ盛大に使用されてきた(甲2-12?甲2-24)。
申立人2は,テレビCMを従前に行っており,現在では文化放送をキー局に全国34局ネットのラジオコマーシャルを行い,また,申立人2は米国等において音の商標登録を取得しており,引用商標1及び引用商標2と共に企業告知動画として紹介している(甲2-25)。
申立人2の製品は,グッドデザイン賞を始め多数の受賞を受けており(甲2-6),また,様々な企業とタイアップして斬新な製品開発を進めてきたことから,その製品開発や新製品に注目が集まり,各種マスコミ・メディアにより取り上げられてきた(甲2-26?甲2-29)。
以上のように,申立人2の絶え間ない営業努力と業界を常にリードする製品開発とが相俟った結果,引用商標1及び引用商標2は,需要者及び取引者の間で広く認知されるに至っている。ちなみに,申立人2は,引用商標1及び引用商標2以外にも,「AIPHONE」に係る登録商標を多数保有している(甲2-30?甲2-35)。
してみれば,引用商標1及び引用商標2は,本件商標の登録出願時には申立人2の業務に係る商品(インターホン機器)を表示する商標として広く認識されるに至っており,本件商標の登録時及びそれ以降もその周知性を高めている。
イ 引用商標5の周知著名性
引用商標5については,申立人2が登録権利者であり,アップル インコーポレイテッド(以下「アップル社」という。)が専用使用権者である。引用商標5は,アップル社の事業に係る商品を表示する商標として,また,同社のスマートフォンブランドとして,著名なものであることは顕著な事実である(甲2-36?甲2-39)。
すなわち,引用商標5は,アップル社の製造・販売するスマートフォンの商標(ブランド)であり,平成20年の発売開始以来,世界的にも類を見ない程の大ヒット商品となっているのである。「iPhone」は,発売開始前から高い話題性を有しており,多くの需要者が発売を心待ちにしていた。そして,平成22年7月の発売後,瞬く間にトップブランドの地位を獲得することになり,その後も,優れた製品開発(モデルチェンジ)及び多額の宣伝広告費が費やされた結果,平成24年度以降6年連続で携帯電話のシェア第1位の地位を占めており,現在では,スマートフォンの販売数の約50%を占めるに至っている(販売台数は,年間1500万台以上。甲2-40)。
したがって,引用商標5は,本件商標の登録出願日において,高い著名性を獲得していたことは明らかである。
ウ 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は,「SAIPHONE」の文字を標準文字で書してなるものであり,引用商標1及び引用商標2である「AIPHONE」をそのまま含む態様であって語頭に「S」の文字を付加したに過ぎない態様である。また,本件商標は,引用商標5である「iPhone」についてもそのまま含む態様である。引用商標1,引用商標2及び引用商標5(以下,これらをまとめて「申立人2引用商標」という。)は,上述のとおり,申立人の業務に係る商品を表示するものとして広く認識されている商標であり,当該文字部分が,取引者,需要者に対し商品役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであり,そして,申立人2引用商標は既成の語の一部となっているものではないため,本件商標と申立人2引用商標とは,混同を生じる程に相紛れるおそれのある商標というべきである。
また,本件商標から生じる「サイホン」又は「サイフォン」の称呼と申立人2引用商標から生ずる称呼「アイホン」又は「アイフォン」とは,相紛れるおそれがある程に近似するものと考えられる。
以上より,本件商標と申立人2引用商標とは,混同を生じる程に類似する商標であって,本件商標の指定商品は,申立人2引用商標の指定商品・役務と同一又は類似のものであるから,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
エ 商標法第4条第1項第15号について
上述したとおり,引用商標1及び引用商標2は,本件商標の登録出願日及び登録査定日の両時点において,申立人2の業務に係る商品を表示する商標として,そして,引用商標5は,アップル社の業務に係る商品を表わす商標として,同時点において高い周知・著名性を獲得していたことは明らかである。
本件商標は,申立人2引用商標をその構成中にそのまま含む態様であって,外観及び称呼においても近似することも考慮すれば,本件商標と申立人2引用商標とは高い類似性を有するものである。
そして,本件商標の指定商品中,第9類の商品は,申立人2引用商標の指定商品である「インターホン機器,スマートフォン」と同一又は類似するものであり,第18類の商品についても,申立人2引用商標の指定商品と需要者及び販売場所が一致することがあるため,一定の関連性を有するものである。
してみれば,本件商標を,その指定商品に使用した場合,取引者・需要者は,商品の出所について混同を生じるおそれがあり,あるいは,申立人と経済的・組織的に関係を有する者が提供する商品であるかのように誤認するおそれがあるといわざるを得ない。
以上より,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当するものである。

4 当審の判断
(1)引用商標5の周知性について
申立人1提出の甲各号証及び同人の主張並びに職権調査(インターネット情報など)によれば,申立人1が販売するスマートフォンは全てに商標「iPhone」が使用されていること(職権調査),同スマートフォンの我が国における出荷台数は2016年1,591万台(シェア44.1%),2017年1,558.9万台(シェア41.7%)で,2012年から6年連続で1位であること(甲1-10,甲1-11)が認められる。
そして,申立人1は「iPhone」の文字からなる引用商標5の専用使用権者であること(職権調査)を併せみれば,引用商標5は,本件商標の登録出願(出願日:平成29年9月28日)の時ないし登録査定時はもとより現在においても,申立人1の業務に係る商品(スマートフォン)を表示するものとして需要者の間に広く認識され,その周知性の程度は極めて高いものと認めることができる。
(2)引用商標1及び引用商標2の周知性について
ア 申立人2提出の甲各号証及び同人の主張並びに職権調査(インターネット情報など)によれば,次の事実を認めることができる。
(ア)申立人2は,昭和23年の創業以来,インターホンなどの通信機器の製造・販売を行っている会社であり,昭和29年から商標を「アイホン(AIPHONE)」としてドアホンの発売を開始し,昭和34年にアイホン株式会社に名称変更した(甲2-5?甲2-7)。
(イ)申立人2は,現在,テレビドアホン,ナースコールシステム,インターホンシステムなど多種多様のインターホン関連機器を製造・販売し,世界約70か国に製品の輸出及び販売を行っている(甲2-7,甲2-9)。
(ウ)申立人2の製品売上高は平成25年度425億円ないし平成29年度451億円であり,同製品の平成30年3月期における国内インターホン業界のシェアは51.6%でトップを維持した(甲2-10,甲2-11)。
(エ)申立人2のウェブページ及び2011年10月頃以降に作成された各種カタログには,いずれも「アイホン」の文字が大きく表示されている(甲2-5,甲2-9?甲2-20)。
(オ)2011年10月頃以降に作成されたカタログ(甲2-15 ほか)に,「AIPHONE」の文字が付されたインターホン機器の写真がいくつか確認でき,また,申立人2及び関連会社の社名の一部に「AIPHONE」の文字が用いられている(甲2-5)。
(カ)申立人2の商品を「アイホン aiphone」と表示しているインターネットの通販サイトがあり(甲2-23),また,申立人2はインターネット記事において「アイホン」と表記されている(甲2-26?甲2-29)。
イ 上記アの事実からすれば,「アイホン」の文字は,申立人の業務に係る商品(インターホン など)を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとしても,「AIPHONE」の文字は,それが一部の機器に付されてされていることが確認できるにすぎず,かつ,該文字が使用されている機器の売上額など販売実績を示す証左は見いだせないから,社名の一部に用いられていることや通販サイトでの「aiphone」の表示を考慮してもなお,申立人2の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
他に,「AIPHONE」に係る商標登録を多数保有していること,申立人2が各種受賞等していることなどを考慮しても,上記判断を覆すに足る事情は見いだせない。
(3)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標
本件商標は,上記1のとおり「SAIPHONE」の欧文字を標準文字で表してなり,該文字に相応し「サイフォン」,「サイホン」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標
(ア)引用商標1ないし引用商標3は,上記2(1)アないしウのとおり「AIPHONE」の欧文字からなり,該文字に相応し「アイフォン」,「アイホン」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
(イ)引用商標4は,上記2(1)エのとおり「AIphone」の欧文字を標準文字で表してなり,該文字に相応し「エイアイフォン」,「エイアイホン」の称呼を生じ,「AIを活用した電話」の意味合いを想起させるものである。
(ウ)引用商標5は,上記2(1)オのとおり「iPhone」の欧文字を標準文字で表してなるものであって,上記(1)のとおり需要者の間に広く認識されているものであるから,「アイフォーン」,「アイフォン」の称呼を生じ,「(申立人1のブランドとしての)iPhone」の観念を生じさせるものである。
ウ 本件商標と引用商標の類否
(ア)本件商標と引用商標1ないし引用商標3の類否
本件商標「SAIPHONE」と引用商標1ないし引用商標3「AIPHONE」の類否を検討すると,両者は,外観において,文字商標における外観の識別上重要な要素である語頭において,「S」の文字の有無の差異を有し,その差異が両商標の外観全体から受ける視覚的印象に与える影響は少なくなく,両者を離隔的に観察しても,相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
次に,本件商標から生じる「サイフォン」,「サイホン」の称呼と引用商標1ないし引用商標3から生じる「アイフォン」,「アイホン」の称呼を比較すると,まず前者の「サイフォン」と後者の「アイフォン」,及び前者の「サイホン」と後者の「アイホン」は,どちらも称呼の識別上重要な要素である語頭において,「サ」と「ア」の音に差異を有するものであり,該差異が共に4音という短い音構成である称呼全体に与える影響は少なくなく,両者をそれぞれ一連に称呼しても相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
そして,両者の他の称呼それぞれの比較においては,より相紛れるおそれがないものといえる。
さらに,観念においては,両者は共に特定の観念を生じないものであるから,比較できないものである。
そうすると,本件商標と引用商標1ないし引用商標3は,外観,称呼において相紛れるおそれのないものであり,観念において比較できないものであるから,両者の外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すれば,両者は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
(イ)本件商標と引用商標4の類否
本件商標「SAIPHONE」と引用商標4「AIphone」の類否を検討すると,両者は,外観において,前者が全て大文字で一体に表され,後者が大文字「AI」と小文字「phone」で表わされているという差異を有するばかりでなく,つづり字の比較においても,文字商標における外観の識別上重要な要素である語頭において「S」の文字の有無の差異を有するから,それらの差異が両商標の外観全体から受ける視覚的印象に与える影響は少なくなく,両者を離隔的に観察しても,相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
次に,称呼においては,本件商標から生じる「サイフォン」,「サイホン」の称呼と引用商標4から生じる「エイアイフォン」,「エイアイホン」の称呼を比較すると,両者は全体の音構成,構成音数の相違により明確に聴別できるものであり,仮に「アイフォン」,「アイホン」と称呼される場合があるとしても,上記(ア)と同様に相紛れるおそれがないものといえる。
さらに,観念においては,前者が特定の観念を生じないものであるのに対し,後者は「AIを活用した電話」の意味合い(観念)を想起させるものであるから,両者は相紛れるおそれのないものである。
そうすると,本件商標と引用商標4は,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
(ウ)本件商標と引用商標5の類否
本件商標「SAIPHONE」と引用商標5「iPhone」の類否を検討すると,両者は,外観において,前者が全て大文字で一体に表され,後者が2文字目の「P」が大文字で表され,他の文字が小文字で表わされているという差異を有するばかりでなく,つづり字の比較においても,文字商標における外観の識別上重要な要素である語頭において「SA」の文字の有無の差異を有するから,それらの差異が両商標の外観全体から受ける視覚的印象に与える影響は少なくなく,両者を離隔的に観察しても,相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
次に,本件商標から生じる「サイフォン」,「サイホン」の称呼と引用商標5から生じる「アイフォーン」,「アイフォン」の称呼を比較すると,まず前者の「サイフォン」と後者の「アイフォン」とは,称呼の識別上重要な要素である語頭において,「サ」と「ア」の音に差異を有するものであり,該差異が共に4音という短い音構成である称呼全体に与える影響は少なくなく,両者をそれぞれ一連に称呼しても相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
そして,両者の他の称呼のそれぞれの比較においては,より相紛れるおそれがないものといえる。
さらに,観念においては,前者が特定の観念を生じないものであるのに対し,後者は「(申立人1のブランドとしての)iPhone」の観念を生じさせるものであるから,両者は相紛れるおそれのないものである。
そうすると,本件商標と引用商標5は,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
エ 申立人の主張について
申立人は,本件商標は周知著名商標である引用商標1,引用商標2及び引用商標5をその構成中に含むものである,そのため本件商標はその構成中の「AIPHONE」及び「IPHONE」の文字部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与える,本件商標の全体の外観,称呼は引用商標のそれと相紛れるおそれがあるなどとして,本件商標と引用商標は類似する旨主張している。
しかしながら,上記(2)のとおり引用商標1及び引用商標2は申立人2の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり,また,引用商標5は申立人1の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていると認められものであって,2文字目の「P」のみが大文字で表され,他の文字が小文字で表わされているという特徴を有するものであることに加え,本件商標は構成文字全てが大文字で同書,同大,同間隔で一体に表され,本件商標の称呼「サイフォン」,「サイホン」は4音と短くよどみなく一連に称呼し得ることをあわせみれば,本件商標は,これに接する取引者,需要者をして,その構成中の「AIPHONE」又は「IPHONE」の文字部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるというより,むしろ全体が一体不可分のものとして認識させると判断するのが相当である。
そして,上記ウのとおり,本件商標は引用商標のいずれとも相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
したがって,申立人のかかる主張は採用できない。
オ 小括
以上のとおりであるから,本件商標は,その指定商品中の第9類の指定商品が,引用商標の指定商品又は指定役務と同一又は類似するとしても,引用商標のいずれとも非類似の商標であるから,商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。
(4)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標5との関係について
上記(3)のとおり本件商標は,引用商標5と外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であり,これに接する取引者,需要者をして,その構成中「IPHONE」の文字部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるというより,むしろ全体が一体不可分のものとして認識させるものである。
そうすると,引用商標5が,申立人1の業務に係る商品等を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとしても,本件商標は,これに接する取引者,需要者をして,引用商標5を連想又は想起させるものということはできない。
してみれば,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品について使用しても,その商品が他人(申立人1)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。
したがって,本件商標は,引用商標5との関係において,商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
イ 引用商標1及び引用商標2との関係について
上記(2)のとおり引用商標1及び引用商標2は,申立人2の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり,上記(3)のとおり本件商標は,引用商標1及び引用商標2と非類似の商標である。
そうすると,本件商標は,これに接する取引者,需要者が,引用商標1及び引用商標2を連想又は想起するものということはできない。
してみれば,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品について使用しても,その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって,本件商標は,引用商標1及び引用商標2との関係において,商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
ウ 小括
以上のとおり,本件商標は,引用商標1,引用商標2及び引用商標5との関係において商標法第4条第1項第15号に該当するものといえず,他に本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
(5)むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するものではないから,その登録は,同条第1項の規定に違反してされたものとはいえず,他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
異議決定日 2019-04-25 
出願番号 商願2017-129365(T2017-129365) 
審決分類 T 1 651・ 263- Y (W0918)
T 1 651・ 271- Y (W0918)
T 1 651・ 261- Y (W0918)
T 1 651・ 262- Y (W0918)
最終処分 維持  
前審関与審査官 齋藤 健太浦崎 直之 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 薩摩 純一
大森 友子
登録日 2018-07-06 
登録番号 商標登録第6060316号(T6060316) 
権利者 スタイル株式会社
商標の称呼 サイフォン、サイホン、サイ、エスエイアイ 
代理人 塩谷 信 
代理人 特許業務法人大島・西村・宮永商標特許事務所 
代理人 岩瀬 ひとみ 

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