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審決分類 審判 全部無効 商標の周知 無効としない W37
審判 全部無効 外観類似 無効としない W37
審判 全部無効 称呼類似 無効としない W37
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W37
審判 全部無効 観念類似 無効としない W37
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない W37
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない W37
管理番号 1351521 
審判番号 無効2017-890032 
総通号数 234 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-06-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-06-01 
確定日 2019-04-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第5825231号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5825231号商標(以下「本件商標」という。)は,「mainmark」の欧文字を書してなり,平成27年8月25日に登録出願,第37類「コンクリートスラブ・床・道路・舗装等の建造物の修理工事・リフティング工事・再ならし工事・再支持工事,土木一式工事,コンクリートの工事」を指定役務として,同28年1月7日に登録査定,同28年2月12日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が,引用する商標は,「建物やコンクリートの床の傾きの修正,既存建物の地盤改良工事等の土木工事」の役務について使用する「メインマーク」(以下「引用商標1」という。)の片仮名及び「mainmark」(以下「引用商標2」といい,これらを併せて「引用商標」という。)の欧文字からなる商標である。

第3 請求人の主張
請求人は,本件商標の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第75号証を提出した。
1 請求の理由
(1)請求人について
請求人の1人であるフィリップ チャールズ トムリンソン マック(以下「マック氏」という。)は,オーストラリアにおいて,地盤対策エンジニアリング会社であるMainmark Corporationを1988年に創立した。その後,日本において,Mainmark Corporationの事業を展開するために,平成13年(2001年)7月にメインマーク・ジャパン株式会社(以下「メインマーク・ジャパン社」という。)を設立した(甲2,甲3)。これが,もう一方の請求人であるメインマーク株式会社(以下「メインマーク社」という。)の前身である。
メインマーク・ジャパン社は,「ウレテック工法」(特殊ウレタンを注入して建物等の傾きを修正する工法)の名称を日本国内に広めるために,平成19年(2007年)6月に社名をウレテックジャパン株式会社(以下「ウレテックジャパン社」という。)に変更した。その後,平成27年(2015年)7月に,順調に工事の受注が増えてきたことに加え,業界では「メインマーク」の「ウレテック工法」として,既に「グッドウイル」が蓄積されていることから,Mainmark Corporationの世界戦略の一環として,社名をメインマーク社に変更した(甲3)。
Mainmark Corporationの関連会社は,総称してメインマーク・グループと呼ばれ(日本のメインマーク社も含まれる),このメインマーク・グループは,平成23年(2011年)2月に発生したニュージーランドのカンタベリー地方の地震によって,甚大な被害を受けたクライストチャーチ・アート・ギャラリーの復旧工事において,「最優秀国際プロジェクト賞」を受賞した(甲4)。このようにメインマーク・グループの有する技術は世界的に高い評価を受けており,この受賞によってメインマーク・グループの名は一層知られることとなった。
日本において,ウレタン樹脂を注入して建物等の傾きを修正する工事を提供しているのは,メインマーク社と被請求人が経営するアップコン株式会社(以下「アップコン社」という。)の2社であり,メインマーク社はこの業界の約75%のシェアを有している。
(2)商標法第4条第1項第10号該当について
ア 本件商標と引用商標について
本件商標は,「mainmark」の欧文字を書してなり,同文字に相応して「メインマーク」の称呼が生じる。引用商標1は,片仮名の「メインマーク」からなり,引用商標2は,「mainmark」の欧文字からなるから,それぞれその構成文字に相応して「メインマーク」の称呼が生じる。なお,本件商標及び引用商標は造語であり,観念を比較することはできない。
したがって,本件商標と引用商標1とは称呼を同一とする類似の商標であり,本件商標と引用商標2とは外観及び称呼を同一とする同一の商標である。
イ 本件商標に係る指定役務と引用商標が使用される役務について
引用商標は,「建物やコンクリートの床の傾きの修正,既存建物の地盤改良工事等の土木工事」に使用されているから,本件商標の指定役務と引用商標が使用される役務は同一又は類似である。
ウ 引用商標の周知性について
(ア)メインマーク・ジャパン社時代について(平成13年?平成19年)
請求人の前身であるメインマーク・ジャパン社は,日本において「メインマーク・ジャパン」を自己の業務全般に係る出所表示標識(ハウスマーク)として使用してきた。「メインマーク・ジャパン」中の「ジャパン」は国名(日本)を表すにすぎないため,識別力は強くないので,「メインマーク・ジャパン」の要部は「メインマーク」である。迅速を貴ぶ取引社会においては,商標の一部をもって取引に用いられることは顕著な事実であり,実際,新聞記事において「メインマーク・ジャパン株式会社」は「メインマーク(mainmark)」と記載されている(甲9,甲12,甲17)。
したがって,メインマーク・ジャパン社によって商標「メインマーク・ジャパン」が使用され,その活動がメディアで幾度も取り上げられた結果,「メインマーク」は,メインマーク・ジャパン社の業務に係る役務を表示するものとして取引者・需要者の間に広く認識されていた(甲5?甲26)。
また,メインマーク・ジャパン社の本社は東京都江戸川区にあり,福岡県福岡市及び大阪府大阪市にも営業所を有していた(甲3)。さらに,工事を施行した地域は日本全国に及んでおり,例えば,秋田県大仙市(甲5),茨城県つくば市(甲6)で,メインマーク・ジャパン社によりウレテック工法による工事が施行され,引用商標1は,メインマーク・ジャパン社の業務に係る役務を表示するものとして,日本国内において周知著名となっている。
(イ)ウレテックジャパン社時代について(平成19年?平成27年)
メインマーク・ジャパン社は,その有する独自工法「ウレテック工法」の名前を広めるために,社名を変更したが,ウレテックジャパン社がオーストラリアのMainmark Corporationの系列会社であることに変わりなく,既に同業者の間では「メインマーク」の「ウレテック工法」として広く知られていたので,「メインマーク」の周知著名性は維持されていたといえる。
(ウ)メインマーク社時代について(平成27年?現在)
メインマーク社は,引用商標を自己の業務全般に係る出所表示標識(ハウスマーク)として使用してきており,その活動は平成27年(2015年)7月に社名変更してから現在に至るまで,メディアで幾度も取り上げられてきた(甲27?甲61)。この結果,引用商標は,メインマーク社の業務に係る役務を表示するものとして取引者・需要者の間に広く認識されている。
エ まとめ
以上より,本件商標は,請求人の業務に係る役務を表示するものとして周知著名な引用商標と同一又は類似であって,その指定役務と同一又は類似の役務に使用されるものであるので,商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。
(3)商標法第4条第1項第15号該当について
ア 「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」について
(ア)本件商標と引用商標との類似性の程度
前記のとおり,本件商標と引用商標1とは称呼を同一とする類似性の程度が極めて高い商標であり,本件商標と引用商標2とは外観及び称呼を同一にする同一商標である。
(イ)引用商標の周知度について
前記(2)のとおり,メインマーク・ジャパン社及びメインマーク社は数多くの新聞,雑誌で継続的に取り上げられており,また,引用商標を使用した宣伝広告を積極的に行った結果,引用商標はメインマーク・ジャパン社及びメインマーク社の業務を表示するものとして周知著名となっている。
(ウ)商標「mainmark」が造語であることについて
「mainmark」(メインマーク)は,マック氏がオーストラリアで聞いたアボリジニ族の言葉「Manymark」(「素晴らしい」,「最良」の意味)に由来する造語である(甲53)。
(エ)引用商標がハウスマークであることについて
「メインマーク」はメインマーク・ジャパン社のハウスマークの一部であり,「メインマーク」及び「mainmark」はメインマーク社のハウスマークである。
(オ)本件商標の指定役務と請求人の業務に係る役務の関連性について
請求人の業務に係る役務は,建物やコンクリート床の傾きの修正,既存建物下の地盤改良工事等の土木工事であることから,本件商標の指定役務と請求人の業務に係る役務の関連性は極めて高いといえる。
(カ)本件商標に係る役務及び請求人の業務に係る役務の需要者の共通性について
本件商標に係る役務及び請求人の業務に係る役務の需要者は,いずれも建物やコンクリート床の傾きの修正,既存建物下の地盤改良工事等を求める人である。
したがって,本件商標に係る役務及び請求人の業務に係る役務の需要者は同一である。
イ まとめ
これらを総合すれば,本件商標がその指定役務に使用された場合,需要者において,請求人又は同人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る役務であると誤認し,その役務の需要者が役務の出所について混同するおそれがあるといえる。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(4)商標法第4条第1項第19号該当について
ア 本件商標が,請求人の業務に係る役務を表示するものとして,日本国内において周知著名の商標と同一又は類似であることについて
前記(2)のとおり,引用商標は請求人の業務に係る役務を表示すものとして日本国内において周知著名であり,また,本件商標と引用商標は同一又は類似の商標である。
イ 本件商標が不正の目的をもって出願されたことについて
(ア)本件商標の出願時期について
本件商標の出願日は,平成27年(2015年)8月25日であり,請求人が,社名をウレテックジャパン社からメインマーク社に変更したのは,同年7月1日(甲3)であって,社名がメインマーク社に変更されたことは,インターネット上でも報道されている(甲62)。被請求人は,メインマーク・ジャパン社の初代社長を務めた人物であり,マック氏とは多少の禍根を残して同社を退職し,独立した経緯がある(甲63)。
これらのことを考えると,被請求人はウレテックジャパン社がメインマーク社に社名変更したことを知ったうえで,意図的に本件商標を出願したことが容易に推測できる。
(イ)本件商標の指定役務と請求人の提供する役務について
本件商標の指定役務は,前記第1のとおりであり,請求人の提供する役務は,建物やコンクリート床の傾きの修正,既存建物下の地盤改良工事等の土木工事であって,被請求人は請求人とは同業者であることから請求人が引用商標を請求人の業務に使用することを十分知っていながら,先取り的に本件商標を出願し,登録を得たものといえる。
このことから,被請求人は,請求人が引用商標を使用して業務を行うことを妨害するという不正の目的で,本件商標を出願したことは明らかである。
(ウ)メインマーク・グループが「最優秀国際プロジェクト賞」を受賞したことについて
前述のとおり,メインマーク・グループは,「最優秀国際プロジェクト賞」を受賞し(甲4),この受賞によって,メインマーク・グループが持っている「専門的な知識」と「綿密なプロジェクト管理能力」,そして「革新的な技術力による卓越した問題解決力」が証明され,また,発注者に積極的な協力を仰ぎ,プロジェクトの成果を最大限引き出すためにメインマーク・グループが行ったあらゆる努力も評価されて,世界的にその名を知らしめることとなった。
このように,世界的評価を受けて広く知られた商標「メインマーク」を,メインマーク・グループとは何ら関係のない第三者(被請求人)が使用した場合,「メインマーク」に化体していた信用,名声及び顧客吸引力等は毀損されるおそれがある。
(エ)被請求人の業務について
被請求人は,自己の新会社設立に絡んでメインマーク・ジャパン社の社長を辞任した後,平成15年(2003年)6月にアップコン社を設立し,メインマーク社と競業する事業(ウレタン樹脂を注入して床沈下等を修正する工事)を行ってきた。被請求人は,メインマーク・ジャパン社と決別し,アップコン社の名称で長年業務を行っているにもかかわらず,今になって商標「メインマーク」を自己の業務に使用するとは考え難いといわざるを得ない。また,アップコン社のウェブサイトを見ても,本件商標は使用されていない。
このような状況に鑑みると,本件商標は使用する意思が無いにもかかわらず,請求人が引用商標を使用することを妨害する目的で出願されたことは容易に推測される。
なお,日本において「ウレテック工法」(特殊ウレタンを注入して建物等の傾きを修正する工法)についての施行許可を受けているのはメインマーク社だけであり(甲15),アップコン社の工事工法はメインマーク社の知的財産権との関係においてトラブルが生じている。
(オ)引用商標が造語であることについて
引用商標は,マック氏がオーストラリアで聞いたアボリジニ族の言葉「Manymark」に由来する造語である(甲53)。このような造語からなる商標が偶然出願されたとは考えられない。また,被請求人はメインマーク・ジャパン社の初代社長であることから,「mainmark」の由来を知っていた人物である。
(カ)マック氏の国際登録出願(国際登録番号第1308175号)の指定役務と本件商標に係る指定役務が酷似することについて
マック氏は,日本を領域指定した国際商標登録出願(甲64)をしている。
a 本件商標とマック氏の出願に係る商標について
本件商標とマック氏の出願に係る商標は同一であり,マック氏がオーストラリアで聞いたアボリジニ族の言葉「Manymark」に由来する造語である(甲53)。このような造語からなる商標が偶然出願されたことは考えられない。また,被請求人はメインマーク・ジャパン社の初代社長であることから,「mainmark」の由来を知っていた人物である。
b 本件商標に係る指定役務とマック氏の出願に係る指定役務について
本件商標に係る指定役務とマック氏の出願に係る指定役務とは酷似している。本件商標において積極表示された指定役務「コンクリートスラブ・床・道路・舗装等の建造物の修理工事・リフティング工事・再ならし工事・再支持工事」と他人(マック氏)の出願に係る指定役務とが酷似するのは偶然とは考えられない。被請求人はメインマーク・ジャパン社の初代社長であること,マック氏の国際登録出願の基礎出願(オーストラリアでの出願)が平成27年(2015年)11月26日になされたことを考えると,被請求人はこのオーストラリアでの出願を参考にしたことが強く疑われる。
ウ まとめ
以上より,本件商標は,請求人の業務に係る役務を表示するものとして日本国内において周知な商標と同一又は類似の商標を不正の目的をもって使用するものであるから,商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
(5)商標法第4条第1項第7号該当について
ア メインマーク・グループが受賞した「最優秀国際プロジェクト賞」は,国際舞台で地盤技術における革新的なプロジェクトを行ったチームに授与され,最終選考には,オーストラリア,サウジアラビア,チェコ共和国,カタール,ロシア,ペルーなど複数のプロジェクトが残った(甲4)。その中から,メインマーク・グループが最優秀賞に選ばれたことは,メインマーク・グループの技術力の高さを示し,メインマーク・グループの名前を全世界に知らしめることになった。
このように,世界的評価を受けて広く知られた商標「メインマーク」が,メインマーク・グループとは何ら関係のない第三者(被請求人)に登録されたことにより,メインマーク・グループの創設者のマック氏が国際商標登録第1308175号を登録できず,またメインマーク・グループの一員であるメインマーク社が引用商標を使用できないことは健全な法感情に反するといわざるを得ない。
イ 被請求人は,メインマーク・ジャパン社の初代社長であり,メインマーク社をよく知る立場にあるといえる。このような被請求人が,請求人が社名をウレテックジャパン社からメインマーク社に変更した直後に,請求人が提供する役務と同一又は類似の役務を指定して本件商標を出願したことは,本件商標が登録されていないことを奇貨として,先回りして剽窃的に出願したと認められ,本件商標の出願の経緯は社会的相当性を欠くものである。
ウ 被請求人は,アップコン社を設立し,メインマーク社と競業する事業を行っている。アップコン社の名称で業務を行っているにもかかわらず,前の会社名(メインマーク)を使用して被請求人が業務を行うと思えない。また,アップコン社のウェブサイトを見ても,本件商標は使用されていない。
このような状況を鑑みると,被請求人には,本件商標の指定役務について使用する意思があるとは思われず,少なくとも,その可能性は限りなく低いと思われる。それにもかかわらず,本件商標を出願した目的は,請求人が引用商標を使用することを妨害する目的であったと容易に推測される。
エ まとめ
以上のとおり,本件商標は,メインマーク・ジャパン社(現メインマーク社)の社長であった被請求人が,請求人が引用商標を商標として使用することを知ったうえで,先回りして,剽窃的に出願したものと認められ,そのような出願の経緯は社会的相当性を欠くものである。また,本件商標の登録を認めることは,世界的賞を受賞したメインマーク・グループの一員であるメインマーク社が商標「メインマーク」及び「mainmark」を使用できないという結果をもたらし,これは健全な法感情に照らし条理上許されないというべきである。
これらのことを考えると,本件商標の登録を認めることは,商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものといえるので,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)検索結果について
被請求人は,「Google」による検索結果,「G-Search」中のデータベース「新聞雑誌記事横断検索」による検索結果,及び「G-Search」中のデータベース「企業情報横断検索」による検索結果を持って,「メインマーク・グループ」,「最優秀国際プロジェクト賞」及び「メインマーク(mainmark)」の周知性を否定しているが,インターネット上で提供される検索エンジンや特定のデータベースを使用して,特定の言葉を検索した結果,多数ヒットした場合には,周知性がある,という主張の一定の根拠にはなり得るが,少数しかヒットしなかったことのみを持って,周知性がない,という事実を示す根拠にはなり得ない。
「メインマーク・グループ」は,オーストラリアのシドニーをヘッドクォーターとするMainmark Corporationの関連会社の総称であり,また取り扱う業務も地盤改良工事など特殊であるため,積極的に一般のメディア等で使用されるという種類のものではない。しかしながら,実際の取引においては,Mainmark Corporationの関連会社は,「メインマーク・グループ」という総称で呼ばれているため,被請求人のいう「市場」が何を指しているのか不明である。
また,請求人が受賞したのは,「2016年グランドエンジニアリングアワード(Ground Engineering Awards 2016)」の「最優秀国際プロジェクト賞(International Project of the Year Award)」であるが,例えば,ノーベル賞やアカデミー賞のように,世界中の誰もが知っているような賞ではないものの,平成30年(2018年)に10周年を迎える栄えある賞である。請求人がこの賞を受賞したのは平成28年(2016年)であるが,受賞の理由は,平成23年(2011年)2月に発生したニュージーランドのカンタベリー地方の地震によって,甚大な被害を受けたクライストチャーチ・アート・ギャラリーの復旧工事が評価されたものであり,平成23年(2011年)から平成28年(2016年)までの間に,その復旧工事に関わる世界中のエンジニアの間で,その提供する技術力の高さから「メインマーク(mainmark)」はよく知られたものになっていたというのが自然である。
したがって,検索エンジン「Google」や「G-Search」のデータベース検索の結果のみをもって,商標「メインマーク(mainmark)」の周知性を否定することなどできないことは明らかである。
(2)「メインマーク(mainmark)」の周知性について
請求人は,ウレタン樹脂の注入による床・地盤等の沈下・傾斜の修正工事という特殊な業務を行う企業である。したがって,請求人が使用する商標「メインマーク(mainmark)」は,一般の最終消費者まで広く認識されている商標というよりは,地盤改良工事等に関する業界における取引者等の間に広く認識されている商標ということができる。
請求人は,日本において,平成13年(2001年)にメインマーク・ジャパン社を設立以来,日本全国の様々な場所で,沈下修正等の工事を行っている(甲52)。平成23年(2011年)3月に発生した東日本大震災に際しては,宮城県,福島県,千葉県を中心に,多くの工場・倉庫・店舗の床の沈下,不陸,たわみ,段差の修正,住宅の傾きや沈下の修正を行い,地域復興の一端を担ったという実績がある。また,海外においても,韓国ソウルの金浦空港における沈下修正工事(甲15)や,クライストチャーチ・アート・ギャラリーの復旧工事を行うなど,請求人の提供する技術力への評価は非常に高いことから,請求人が使用する商標「メインマーク(mainmark)」は,当該業界における取引者等の間に広く認識されている商標といえる。
その事実を示す証拠として,当該業界の取引者等による陳述書(甲65?甲72)を提出する。さらに,ニュージーランドに所在するGeotech Consulting Engineering(NZ)Ltdの地盤エンジニア主任のニコラス・ジョン・トレイン氏による陳述書(STATEMENT)及びその訳文を提出する(甲73,甲74)。
陳述書(甲65?甲72)によれば,地盤改良工事等に関する業界の取引者である彼らのいずれもが,「メインマーク(mainmark)」は請求人を示すものとして,平成27年(2015年)7月頃には既に広く知られた商標であったと述べており,被請求人が本件商標を使用した場合,取引者等の間で出所の誤認や混同が生ずることを非常に危惧している。
また,陳述書(STATEMENT:甲73)によれば,トレイン氏は,ニュージーランドにおいて,「メインマークグループ」はMainmark Corporationの関連会社(メインマーク社を含む)の総称として理解され,地盤工学業界においてよく知られた「mainmark」と同義語として認識されていることを述べている。そして,ニュージーランド国政府への助言等,工学的コンサルタントサービスを提供し,多数の地盤プロジェクトを手掛けていることから,ニュージーランドの当該業界において「mainmark」は極めてよく知られており,その時期は2015年よりもかなり以前からであったと陳述している。
これらの陳述書によって,日本及びニュージーランドにおいて,遅くとも平成27年(2015年)7月頃には,「メインマーク(mainmark)」は,請求人の提供する役務を表示する商標として,当該業界における取引者等の間に広く認識されていたことが証明されたものである。
(3)被請求人の主張について
ア 被請求人は,メインマーク社の平成28年(2016年)6月期の年間売上額と,アップコン社の平成29年(2017年)1月時の年間売上額とを比較して,その比率は4対3程度であると主張するが,比較対象の時期を共通にしなければ,公正な比較はできない。
メインマーク社の平成29年(2017年)1月時の年間売上額は,未公開ではあるが,約15億1千万円である。アップコン社の平成29年(2017年)1月時の年間売上額は,約7億2千万円であるから,平成29年(2017年)1月時においては,メインマーク社が市場シェアの約70%を占めているということができる。
イ 被請求人は,「本件商標の出願時(平成27年(2015年)8月25日)又は登録査定時(平成28年(2016年)1月15日)において,引用商標は周知でなかった。したがって,引用商標の周知性を要件とする商標法第4条第1項第10号,同第15号及び同第19号は本件には適用されない。」と主張するが,先に述べたとおり,商標審査基準における商標法第4条第1項第10号及び同第19号の「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標」については,「取引者の間に広く認識されている商標を含む」とされ,また「取引形態が特殊な商品又は役務の場合」及び「外国において周知であること」について十分に考慮して周知性を判断する旨が規定されている。
請求人が提供する役務は,ウレタン樹脂の注入による床・地盤等の沈下・傾斜の修正工事という特殊な業務に係るものであって,取引形態が特殊な役務に相当する。そして,陳述書(甲65?甲73)からもわかるとおり,日本及びニュージーランドにおいて,遅くとも平成27年(2015年)7月頃には,「メインマーク(mainmark)」は,請求人の提供する役務を表示する商標として,当該業界における取引者の間に広く認識されていたということができる。
以上により,引用商標は,本件商標の出願時及び登録査定時において,日本国及びニュージーランドにおける周知性を有していたことは明らかなので,商標法第4条第1項第10号及び同第19号に規定する周知性の要件を十分に満たすものである。
ウ 審判請求書における請求人の「アップコン社の工事工法はメインマーク社の知的財産権との関係においてトラブルが生じております」との主張に対し,「被請求人には思い当たることがない」と主張するが,請求人は,平成17年(2005年)10月25日付及び平成18年(2006年)6月8日付で,被請求人の行為は不正競争行為に該当するとして,被請求人に対し通知書を送付している。
これに対し,被請求人からは平成18年(2006年)8月30日付で回答書が送付されている。このような事情がありながら,「被請求人には思い当たることがない」と主張することは,事実に反しており,誠実さに欠けるものである。
また,被請求人は,「日本の需要者が『メインマーク(mainmark)』という語に接すれば,『主要な商標』という一般的な英語又は音訳であると認識する」と主張し,その事実を示す証拠として,乙第12号証ないし乙第21号証を提出した。
この被請求人の主張は,本件商標の希釈化を意図したような主張ともみられ,実際に使用する意思のある商標に対する主張としては,非常に奇異に思われる。「メインマーク(mainmark)」から「主要な商標」程の意味合いを暗示させる場合があったとしても,請求人の提供する役務との関係においては,自他商品・役務識別機能を十分に発揮する造語であることは明らかである。
請求人は,商標「メインマーク(mainmark)」を,自社の業務を示すストロングマークとするべく,社名にも使用してブランディングしているところであり,このような希釈化を促すような主張は非常に遺憾である。
エ 被請求人は,同人がメインマーク・ジャパン社の代表取締役だった2001年から2003年の2年間について,「同社のブランド戦略は,商標『ウレテック(URETEK)』をハウスマークとして強調することであった」旨を主張するが,被請求人が在籍していた上記の2年間に,どのようなブランド戦略を取っていたかは,本事件とは何ら関係がない。
オ 被請求人は,「メインマーク・ジャパン社は『ウレテック(URETEK)』をハウスマークとして積極的に宣伝広告していたが,『メインマーク(mainmark)』又は『メインマーク・ジャパン(Mainmark Japan)』の語は商標として積極的に使用せず,自己の名称を示す必要がある場合に普通に用いられる方法で表示していたにすぎない。このような商標の使用方針は平成27年(2015年)まで続いた」旨を主張し,その事実を示す証拠として,カンパニーウェブサイトの写し(乙26?乙30)を提出した。
しかしながら,当時のメインマーク・ジャパン社は,「ウレテック工法」を日本に紹介するために設立された会社であるため,それを自社のウェブサイト等で積極的に表示するのは,マーケティング上当然のことである。これのみをもって,全ての媒体において「自己の名称を示す必要がある場合に普通に用いられる方法で表示していたにすぎない」などといえるはずもない。また,「このような商標の使用方針は平成27年(2015年)まで続いた」との主張は,既に在籍していない被請求人に,請求人による商標の使用方針などわかるはずもなく,妥当ではない。
被請求人が提出した証拠によれば,「ウレテック(URETEK)」が周知であったと主張することはできるが,これをもって「メインマーク(mainmark)」の周知性を否定する根拠とすることはできないものである。
なお,請求人は,平成27年(2015年)7月1日にメインマーク社に社名を変更することを知らせるダイレクトメール(甲75)を,事前に取引関係者に送付して,周知徹底を図っている。また,平成27年(2015年)7月1日発行の「あんしんLife」7月号(甲29)において,メインマーク社が取り上げられ,メインマーク・ジャパン社が「ウレテック工法」を紹介するために設立されたこと,この度ウレテックジャパン社からメインマーク社に社名を変更し,再び「メインマーク」を社名として使用することになったこと,メインマーク社の有する技術力の高さ,全国における施行実績などが詳しく説明されている。なお「あんしんLife」は,一般社団法人あんしん財団の会員(平成27年(2015年)3月時点会員数188,690件)に向けて発送されている。
したがって,「ウレテック(URETEK)」が広く知られていたとするならば,その相乗効果によって,より一層「メインマーク(mainmark)」の周知度が高まったといえる。
カ 被請求人は,「『メインマーク(mainmark)』という商標に愛着があり,将来的に機会があれば,たとえば請求人の名称変更や解散などがあった場合は,『メインマーク(mainmark)』と同一又は類似の商標を使用したいと考えていた」旨を主張するが,被請求人は,「メインマーク(mainmark)」という商標に愛着があり,将来的に機会があれば使用したいと本当に考えていたのであれば,請求人が社名を「ウレテックジャパン株式会社」に変更した際に,なぜ商標出願をしなかったのか,請求人が「メインマーク株式会社」に社名を変更して間もなく,被請求人はその事実を知った上で,本件商標を出願しているが,なぜこのタイミングなのか疑問である。
そして,被請求人は,本件商標について,「ストック商標」として登録しておくと述べている。しかしながら,「ストック商標」とは,在庫として所有する不使用商標を意味し,不使用を前提として出願することは,商標法の立法趣旨に反する行為であり,断じて許されるものではない。
また,「我が国において,ウレタン樹脂の注入による床・地盤等の沈下・傾斜の修正工事を主業務とする企業は,現在はメインマーク社とアップコン社の2社のみである」として,被請求人は請求人がコンペティターであると認識しており,その唯一のコンペティターが社名変更したことを知った上で,その新名称を出願し,登録することは,不正な目的があると容易に推測され,公正な商慣習や信義にもとる行為であるといわざるを得ない。
被請求人は,以下の理由によって,本件出願について,公正な商慣習や信義にもとる行為ではない,と答弁しているが,いずれも妥当でない。
(ア)請求人が「メインマーク(mainmark)」を積極的に使用していないという被請求人の答弁に対しては,理由がない旨を既に述べたところであるが,仮にそうだと仮定したとしても,社名に変更したのであるから,積極的に使用しようとしているであろうことは当然に想定されることである。
(イ)被請求人は,「特許庁データベースを確認しても,依然として請求人は『メインマーク(mainmark)』を商標出願していなかった」として,自身の出願を正当化しようとしている。
しかしながら,被請求人自身は,「ストック商標」としてただ所有するために出願し,しかも,請求人により商標出願がされていなかったことを事前に特許庁データベースで確認し,変更したばかりの新社名が使用されるであろうことを見越したうえで,意図的に出願しており,その出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものである。
(ウ)被請求人は,「本件商標が登録されても,請求人に対し商標権の行使や買取請求などの行為を行うつもりはなかった」とし,「被請求人が本件商標を所有していても,請求人は安全に『メインマーク(mainmark)』の表示を使用できる」と主張するが,この主張の真偽のほどは不明であるが,「ストック商標」と称して,コンペティターの社名変更のタイミングを見計らって,その社名を出願して権利を取得する行為は,適正な商道徳に反する行為といわざるを得ない。陳述書にもあるとおり,「メインマーク(mainmark)」は,請求人を示す商標として取引者等の間でよく知られたものとなっているところ,ウレタン樹脂の注入による床・地盤等の沈下・傾斜の修正工事を行う企業が2社しかないところに,被請求人が本件商標を当該役務に使用した場合,出所の混同を招くのは必須であり,請求人にこの行為を阻止するすべはない。
これは,著しく社会的妥当性を欠く行為というべきであり,被請求人を権利者と認めることは,公正な取引秩序の維持の観点からみても不相当であって,商標法第1条に規定する法の目的にも違反するというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものといえる。

第4 被請求人の答弁
被請求人は,結論同旨の審決を求める,と答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第30号証を提出した。
1 被請求人について
(1)被請求人は,メインマーク社の設立から2年間(平成13年?平成15年),同社の代表取締役であり,メインマーク社は平成13年(2001年)7月5日に設立され,設立時の名称は「メインマーク・ジャパン株式会社」であった。
被請求人は,平成15年(2003年)3月21日に同社を退職した後,同年6月18日にアップコン社を設立し,現在に至っている。被請求人は,メインマーク社の主業務が,設立当時から現在に至るまで,ウレタン樹脂の注入による床・地盤等の沈下・傾斜の修正工事であることを知っている。アップコン社の主業務も同様である。
(2)被請求人は,メインマーク社の設立時,「マック氏」が「Mainmark Corporation Pty.Ltd.」というオーストラリア籍の地盤対策会社を運営していたことは知っている。ただし,同社の設立時について及び同社が現存するかについては知らない。
(3)被請求人は,請求人が平成19年(2007年)6月5日に「メインマーク・ジャパン株式会社」から「ウレテックジャパン株式会社」に名称変更し,さらに平成27年(2015年)7月1日に「メインマーク株式会社」に名称変更して現在に至っていることは知っている。ただし,名称変更の理由については知らない。
(4)被請求人は,「メインマーク・グループ」という呼称が広く知られているという事実を知らない。「Google」によるインターネットの検索結果においても,検索されたウェブサイトは2件にすぎないから,「メインマーク・グループ」という呼称が市場でほとんど知られていないことが分かる(乙1,乙2)。
また,「最優秀国際プロジェクト賞」及び引用商標の周知度については,この受賞によりメインマーク社の周知度が高まったという請求人の主張は否認する。理由は,「G-Search」中のオンラインデータベース「新聞雑誌記事横断検索」による検索結果が示すように,上記の賞及び引用商標の周知度が低いためである(乙4?乙7)。
そして,請求人を指称する「メインマーク」の語が言及された記事は,「月刊食品工場長」の2件及び「HACCP:Hazard analysis and critical control point」の1件で計3件のみである。また,いずれの記事も,請求人が喧伝する「最優秀国際プロジェクト賞」には言及していない。さらに,直近の記事は平成28年(2016年)5月1日の「月刊食品工場長」であるから,同月2日から検索日(平成29年(2017年)7月19日)までの1年以上の間,全国約150の主要紙誌が,請求人を指称する「メインマーク」という語に一切言及していない。この検索結果から,上記の「最優秀国際プロジェクト賞」及び引用商標が周知でないことは明らかである。
(5)被請求人は,我が国において,ウレタン樹脂の注入による床・地盤等の沈下・傾斜の修正工事を主業務とする企業は,現在はメインマーク社とアップコン社の2社のみである点は認める。
被請求人は,メインマーク社が当該業界の75%のシェアを有しているとの主張については,メインマーク社とアップコン社の年間売上額に基づき否認する。
アップコン社は,事業の決算書を県に提出するなどして毎年公開しており,その詳細は,東京商工リサーチ調べの「企業財務情報」(乙9)によっても公開され,該「企業財務情報」が示すとおり,アップコン社の平成29年(2017年)1月時の年間売上額は,約7億2千万円(721,442千円)である。
一方,メインマーク社は,東京商工リサーチ調べの「企業財務情報」(乙10)によれば,平成27年(2015年)6月時(当時はウレテックジャパン社)の年間売上は約11億5千万円(1,152,124千円)とされている。また,同じく東京商工リサーチ調べの「企業情報」(乙11)によれば,平成28年(2016年)6月期の年間売上は,約9億6千万円(960,000千円)とされている。
以上のとおり,メインマーク社とアップコン社の直近の年間売上額は4対3程度の比率であり,メインマーク社が市場のシェアの75%を占めるとの主張は事実に反する。
2 商標法第4条第1項第10号,同第15号及び同第19号について
(1)周知性の要件欠如
上述のとおり,本件商標の出願時又は登録査定時において,引用商標は周知ではなかった。したがって,引用商標の周知性を要件とする商標法第4条第1項第10号,同第15号及び同第19号は本件には適用されない。
(2)その他
ア 禍根
請求人は,被請求人がメインマーク・ジャパン社を退職する際に「マック氏とは多少の禍根を残した」と主張しているが,被請求人には思い当たることがない。
イ 知的財産権のトラブル
請求人は,「アップコン社の工事工法はメインマーク社の知的財産権との関係においてトラブルが生じている」と主張しているが,被請求人には思い当たることがない。
ウ 引用商標が造語商標であるとの主張について
請求人は,引用商標2がアボリジニ語の「Manymark」とうい語に由来する造語であると主張するが,被請求人が初めて聞く情報である。いずれにせよ,英語を最も馴染み深い外国語とする日本の需要者が「メインマーク(mainmark)」という語に接すれば,「主要な商標」という意味の一般的な英語又はその音訳であると認識する。「朝日新聞」(乙6)の記事においても,JR等が販促に使用するメインの商標が「メインマーク」と言及されていた(乙6,乙12?乙21)。
3 商標法第4条第1項第7号について
(1)請求人によるハウスマーク(URETEK)の決定と商標登録について
「URETEK」とは,フィンランド籍の企業「URETEK Worldwide Oy」が開発した,ウレタン樹脂の注入による床・地盤等の沈下・傾斜を修正する工法名である。この工法は,世界中の多数の企業にライセンスされている(乙22,乙23)。
被請求人は,メインマーク社(当時の名称はメインマーク・ジャパン社)の設立から2年間(平成13年(2001年)?同15年(2003年)),同社の代表取締役であった。そのとき,同社のブランド戦略は,商標「ウレテック(URETEK)」をハウスマークとして強調することであった。このため,会社設立の直前及び直後の平成12年(2000年)ないし同14年(2002年)にかけて,マック氏の名義で4件の商標「ウレテック」又は「URETEK」が商標登録出願され,その後4件とも商標登録された(乙24)。一方,マック氏及びメインマーク社は,「メインマーク(mainmark)」の語を含む商標について出願も登録も行わなかった。
なお,上記の商標登録(乙24)の指定役務の表記は,当時,メインマーク・ジャパン社の代表取締役であった被請求人が決定したものである。請求人は,本件商標とマック氏の国際登録出願における指定役務表記が酷似していることを理由に,被請求人がマック氏の国際登録出願の基礎出願(オーストラリア:平成27年(2015年)11月26日出願)を知っていたと主張しているが,マック氏は,上記の商標登録の指定役務を採用したと思われる。そもそも,マック氏の国際登録出願の基礎出願は,本件商標の出願より後に行なわれたため,被請求人は,本件商標の出願時にマック氏の国際登録出願の基礎出願を知り得ない。
(2)請求人によるハウスマークの使用状況
メインマーク・ジャパン社は,「URETEK」工法のライセンスを受け,カンパニーウェブサイトのURLとして「www.uretek.co.jp/」を採用した(乙25)。そして,メインマーク・ジャパン社は「ウレテック(URETEK)」をハウスマークとして積極的に宣伝広告していたが,「メインマーク(mainmark)」又は「メインマーク・ジャパン(Mainmark Japan)」の語は商標として積極的に使用せず,自己の名称を示す必要がある場合に普通に用いられる方法で表示していたにすぎない。このような商標の使用方針は平成27年(2015年)まで続いた(乙26?乙30)。
(3)請求人が本件商標を登録した動機及び理由
被請求人は,メインマーク社の設立時の代表取締役であったことから,「メインマーク(mainmark)」という商標に愛着があり,将来的に機会があれば,例えば請求人の名称変更や解散などがあった場合は,「メインマーク(mainmark)」と同一又は類似の商標を使用したいと考えていた。
被請求人は,本件商標の出願時,ウレテックジャパン社の名称が平成27年(2015年)7月1日からメインマーク社に変更されたことは知っていたが,下記ア?オの事情を考慮したうえで,本件商標を被請求人がストック商標として登録しておくことが公正な商慣習や信義にもとることはないと考えて本件商標を出願し,登録した。
ア 請求人は,会社の設立から十数年の間,「メインマーク(mainmark)」という表示を商標として積極的に使用せず,自己の名称を示す必要がある場合に普通に用いられる方法で表示していたにすぎない。請求人の名称がメインマーク社に変更された後も,しばらくの期間は同様であった。
イ 請求人は,会社の設立から十数年の間,「メインマーク(mainmark)」という表示を商標登録により保護する意思を有していなかった。被請求人が本件商標を出願したのは平成27年(2015年)8月25日であり,請求人の名称がメインマーク社に変更された日(同年7月1日)から約2ヶ月が経過していたが,その時点で特許庁データベースを確認しても,依然として請求人は「メインマーク(mainmark)」を商標出願していなかった。
ウ 本件商標の出願時,「メインマーク(mainmark)」という表示は,請求人の商標としての周知性や顧客吸引力を備えていなかった。
エ 「メインマーク(mainmark)」は独自な造語ではなく,「主要な商標」という意味の英語又はその音訳と認識される。
オ 被請求人は,本件商標が登録されても,請求人に対し商標権の行使や買取請求などの行為を行なうつもりはなかった。
なお,被請求人が,請求人に対し商標権の行使や買取請求などの行為を行なうつもりがないことは,現在も同様である。被請求人が本件商標を所有していても,請求人は安全に「メインマーク(mainmark)」の表示を使用できる。
(4)まとめ
以上の理由から,本件商標を出願及び登録した被請求人の動機及び行為には公序良俗に違反するところがないから,本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当することはない。

第5 当審の判断
1 引用商標の周知性について
請求人の提出した証拠及び同人の主張によれば,以下のとおりである。
(1)請求人について
マック氏は,「ウレテック工法」による地盤対策エンジニアリング会社として,1988年(昭和63年)にオーストラリアにおいて「Mainmark Corporation」を創立した。
そして,メインマーク社は,上記「Mainmark Corporation」の事業展開のため,2001年(平成13年)7月に日本において「メインマーク・ジャパン社」として設立され,2002年(平成14年)8月に「ウレテック工法」が初めて日本で施工され,その後,2007年(平成19年)6月に「ウレテックジャパン社」に社名変更し,さらに,2015年(平成27年)7月に「メインマーク社」に社名変更している(甲3)。
(2)引用商標について
ア 甲第17号証について
甲第17号証の2006年(平成18年)9月4日付け「THE DAILY YOMIURI」において,「BUSINESS」の見出しの下,「Mainmark boss offers TLC for concrete fioors」の記載がある。
イ 甲第5号証について
甲第5号証の2007年(平成19年)1月10日付け建設通信新聞において,「メインマーク・ジャパン」,「特殊樹脂で地盤沈下補修」の見出しの下,「・・・このうち,地盤沈下工事等をメインマークが施工した。・・・」の記載がある。
ウ 甲第12号証について
甲第12号証の2007年(平成19年)1月10日付け日刊工業新聞において,「地盤沈下補修技術/名称指定文化財に適用」,「メインマーク」の見出しの記載がある。
エ 甲第9号証について
甲第9号証の2007年(平成19年)4月9日付け化学工業新聞において,「研究所床沈下の補修法」,「メインマークが確立」及び「特殊ウレタン注入」の見出しの記載がある。
オ 甲第29号証について
甲第29号証の2015年(平成27年)7月1日に発行された雑誌「あんしんLife 7月号」において,その28頁に「日本とオーストラリアの縁から生まれた」の見出しの下,「メインマーク(株)は,2015年7月に社名を変更した。元々は01年にメインマーク・ジャパン(株)として開業。07年6月にはウレテックジャパン(株)に社名変更している。・・・『ウレテック』は,フィンランドで開発された地盤沈下の修正工法『ウレテック工法』からとられたものだ。」の記載があり,その下部に,「メインマーク(株)(旧社名:ウレテックジャパン(株))」の記載がある。
カ 甲第38号証について
甲第38号証の2015年(平成27年)7月28日付け日本経済新聞において,下部の広告欄に広告として「床を壊さず沈下修正 工場 倉庫 店舗 建物を壊さず地盤改良」の見出しの下,「2001年創業 ウレテック工法のメインマーク株式会社」の記載がある。
キ 甲第39号証について
甲第39号証の2015年(平成27年)8月5日付け日本経済新聞において,下部の広告欄に広告として「床を壊さず沈下修正 工場 倉庫 店舗 建物を壊さず地盤改良」の見出しの下,「2001年創業 ウレテック工法のメインマーク株式会社」の記載がある。
ク 甲第62号証について
甲第62号証の共同通信PRワイヤーのウェブページにおいて,「2015年7月2日」,「メインマーク/建物の傾きを修正するウレテックジャパン株式会社が社名を『メインマーク株式会社』に変更」の見出しの下,「2015年7月1日/メインマーク株式会社」の記載,その下に「営業を止めずに建物の傾きを修正するウレテックジャパン株式会社が社名変更,『メインマーク株式会社』として事業を拡大」の表題において,「・・・当社はウレタン注入工法『ウレテック工法』による建物の傾き修正工事を主な業務として今年7月に創業以来15周年を迎えました。この間,傾き修正工事,沈下防止工事の施工件数は2,170件を超えました。現在,『ウレテック工法』による傾き修正業務は売上げの60%であり,『ウレテック工法』以外の工事の受注が増えてきています。・・・」の記載がある。
ケ その他の甲各号証について
(ア)請求人の看板(甲45?甲50)において,「mainmark」の欧文字及び「メインマーク株式会社」の文字の表示があり,「沈下修正」,「空洞充填」等についての広告がされているが,該看板の設置工事が完了したのは,2015年(平成27年)8月26日ないし11月26日である。
(イ)パンフレット(甲52)には,表紙に縦長に大きく「mainmark」の欧文字及び下部に「メインマーク株式会社」の文字が表示され,裏表紙にも「mainmark」の欧文字と「メインマーク株式会社」の文字が表示され,その内容は「ウレテック工法」についての紹介である。
また,パンフレット(甲53)には,表紙に縦長に大きく「mainmark」の欧文字が表示され,裏表紙にも「mainmark」の欧文字と「メインマーク株式会社」の文字が表示され,「ウレテック工法」等の建物を壊さずに水平に戻す工法等が紹介され,また,会社の概要や経営理念等が紹介されている。
なお,両パンフレットともその作成日は不明である。
(ウ)陳述書(甲65?甲74)には,引用商標「メインマーク(mainmark)」が,本件商標の登録出願時において,すでに,地盤改良工事等に関する業界における需要者等の間に広く認識されている商標である旨が陳述されているが,その作成日は本件商標の登録出願後に作成されたものであり,書式及び内容はほぼ同一のものである。
(エ)その他,請求人が提出した新聞記事及び雑誌には,「ウレテック工法」についての説明はあるものの,引用商標の表示がなく,「建物やコンクリートの床の傾きの修正,既存建物の地盤改良工事等の土木工事」における引用商標の使用を裏付ける証拠となり得ないもの,又は,本件商標の登録出願後に印刷,発行されたものである。
(3)上記(2)からすれば,以下のとおりである。
メインマーク社は,2001年(平成13年)より我が国において,ウレタン注入工法「ウレテック工法」による建物の傾き修正工事等を行っていることが新聞記事,新聞広告及び雑誌等に掲載されていることが認められる。
しかしながら,請求人が提出した証拠において,引用商標である「メインマーク」又は「mainmark」の表示があるものはほとんどなく,引用商標が表示されている本件商標の登録出願前のものは,上記(2)アないしクの8件のみであり,これらのうちアないしエは,2006年(平成18年)9月から2007年(平成19年)4月までの約7か月間にわずか4件の新聞記事のみであり,一方,オないしクは,被請求人が「メインマーク社」に社名変更した以降(2015年(平成27年)7月)の新聞記事等であって,会社が設立されてから,現在まで15年以上の期間の間に上記8件の新聞記事等では,引用商標が,取引者,需要者の間に広く知られているとはいい難いものである。
また,これら以外の証拠は本件商標の登録出願後に印刷又は発行されたものである。
そして,請求人の1人であるメインマーク社については,乙第11号証の「企業情報横断検索」によれば,「営業種目」の項には「沈下修正工事,地盤改良工事,空洞充填工事」の記載があり,また,「業績」の項には「2012年6月期 1,534,100千円,2013年6月期 1,180,134千円,2014年6月期 1,008,470千円,2015年6月期 1,152,124千円及び2016年6月期では,960,000千円」の売上があり,メインマーク社は,ある程度の売上高はあるものの,上記3つの工事の市場規模全体の売上高が不明であるから,同社のこれらの工事における市場シェアは不明である。
また,「業界内売上高順位」(総合工事業)の項には,「全国 7295位/171421社」と記載されていることからすれば,総合工事業におけるメインマーク社の「業界内売上高順位」は,全国で,上位5%以内に入ることがうかがい知ることはできるが,同社の我が国における拠点は,本社が東京都,営業所等が宮城県,愛知県,大阪府及び福岡県にあるがその数は少なく,上記順位のみをもって,メインマーク社が上記業界内において広く知られているとまではいい難いものである。
以上のとおり,上記の新聞記事等,請求人の各年の売上金額及び「業界内売上高順位」(総合工事業)の証拠からは,引用商標が,我が国の取引者,需要者の間に広く知られていた事実を裏付けることはできない。
その他,引用商標が,請求人の業務に係る役務を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時に,我が国及び外国において,周知著名性を獲得していたと認めるに足りる証拠は見いだせない。
したがって,上記の証拠では,引用商標が,請求人の業務に係る役務に使用され,取引者,需要者の間において広く知られているとは認められないから,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,請求人の業務に係る役務を表示するものとして,我が国及び外国の取引者,需要者の間に,広く認識されていたと認めることはできないものである。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)本件商標と引用商標との類否について
ア 本件商標
本件商標は,前記第1のとおり,「mainmark」の欧文字からなるところ,その構成態様は,同書,同大,同間隔に表されており,外観上,まとまりよく一体的に看取,把握されるというのが相当である。
そして,本件商標は,我が国において親しまれた英語読み又はローマ字読みに倣って称呼されることからすれば,その構成文字に相応して,「メインマーク」の称呼を生じるものである。
また,「mainmark」の文字は,辞書等に載録のない語であって,一般に親しまれた意味を有する成語ということもできないから,その構成全体をもって一体不可分の造語を表したものと認識されるとみるのが相当である。
したがって,本件商標は,「メインマーク」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標
(ア)引用商標1
引用商標1は,「メインマーク」の片仮名からなるところ,その構成態様は,同書,同大,同間隔に表されており,外観上,まとまりよく一体的に看取,把握されるというのが相当である。
そして,「メインマーク」の文字は,辞書等に載録のない語であって,一般に親しまれた意味を有する成語ということもできないから,その構成全体をもって一体不可分の造語を表したものと認識されるとみるのが相当である。
したがって,引用商標1は,「メインマーク」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
(イ)引用商標2
引用商標2は,「mainmark」の欧文字からなるところ,上記アのとおり,「メインマーク」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標との類否について検討するに,外観においては,本件商標と引用商標1とは,片仮名と欧文字の差異があることから,外観上,十分区別できるものであり,本件商標と引用商標2は,同一のつづりからなるものであるから,外観上,同一又は類似するものである。
次に,称呼においては,両商標は,共に「メインマーク」の称呼を生じるから,称呼上,同一のものである。
また,観念においては,両商標は,共に特定の観念を生じないものであるから,観念上,比較することができない。
そして,本件商標と引用商標1とは,観念においては,比較できず,外観においては,相違するとしても,商標の使用においては,商標の構成文字を同一の称呼を生じる範囲内で平仮名,片仮名及びローマ字相互に変更したり,デザイン化したりすることが一般に行われる取引の実情があることに加え,特定の観念を有していない文字商標においては,観念において商標を記憶できず,称呼において記憶し,これを頼りに取引にあたることが少なくないというのが相当である。
以上のことを総合的に考慮すると,本件商標と引用商標1とは,観念において比較できないとしても,称呼を共通にする類似の商標であり,また,本件商標と引用商標2とは,観念において比較できないとしても,外観及び称呼が同一又は類似であるから,類似の商標というべきである。
したがって,本件商標と引用商標とは,同一又は類似の商標というのが相当である。
(2)引用商標の独創性
引用商標は,前記第2のとおりであり,引用商標1及び引用商標2は,共に辞書に載録のない語であって,その構成全体をもって一体不可分の造語を表したものと認識されるとみるのが相当であるから,その構成全体は,特徴的で独創的な商標である。
(3)需要者の共通性
本件商標の指定役務は,「コンクリートスラブ・床・道路・舗装等の建造物の修理工事・リフティング工事・再ならし工事・再支持工事,土木一式工事,コンクリートの工事」であり,その取引者,需要者は,床・道路・舗装等の建造物の修理工事等を行う土木工事業界の者及び当該工事を依頼する者であり,一方,引用商標の使用に係る役務は,「建物やコンクリートの床の傾きの修正,既存建物の地盤改良工事等の土木工事」であって,その取引者,需要者は,上記の者と同様であることから,両商標の取引者,需要者は共通する。
(4)出所の混同について
以上のとおり,本件商標と引用商標とは,上記(1)のウのとおり,同一又は類似の商標であり,また,引用商標は,上記(2)のとおり,その構成全体をもって一体不可分の造語を表したものと認識されるから,その構成全体は,特徴的で独創的な商標である。
さらに,上記(3)のとおり,両商標の取引者,需要者は,共に土木工事業者及び当該工事を依頼する者で共通している。
しかしながら,引用商標は,上記1(3)のとおり,いずれも,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の取引者,需要者の間で,請求人の業務に係る役務を表すものとして,広く認識されていたとは認められないものである。
そうすると,以上のことを勘案すれば,引用商標は,取引者,需要者に広く認識されていたとは認められないものであるから,引用商標に独創性があり,引用商標が本件商標と同一又は類似し,提供に係る役務を共通にし,取引者,需要者が共通するとしても,本件商標をその指定役務について使用した場合に,これに接する取引者,需要者が,本件商標から引用商標を連想,想起するようなことはなく,その指定役務が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように,その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
本件商標と引用商標とは,上記2(1)のウのとおり,同一又は類似の商標ではあるものの,引用商標は,上記1(3)のとおり,いずれも,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の取引者,需要者の間で,請求人の業務に係る役務を表すものとして,広く認識されていたとは認められないものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
本号は,「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって,不正の目的(不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。
そうすると,上記1(3)のとおり,引用商標は,いずれも,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国及び外国の取引者,需要者の間で,請求人の業務に係る役務を表す語として,広く認識されていたとは認められないものであるから,上記2(1)のウのとおり,引用商標は,本件商標と同一又は類似の商標であるとしても,商標法第4条第1項第19号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ない。
そして,不正の目的についても,請求人は,引用商標が周知著名であることを前提に,引用商標を使用して業務を行うことを妨害するという不正の目的で出願された旨を主張しているが,引用商標の周知著名性は上記1(3)のとおり認められないものであり,請求人が提出した甲各号証を総合的にみても,被請求人が,本件商標を使用して請求人の業務を妨害しているなどの事実は見いだせないし,他に,本件商標が不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足る具体的事実を見いだすことができない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第7号該当性について
商標法第4条第1項第7号は,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は商標登録をすることができないとしているところ,同号は,商標自体の性質に着目したものとなっていること,商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については,同法第4条第1項各号に個別に不登録事由が定められていること,商標法においては,商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば,商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法第4条第1項第7号に該当するのは,その登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである。そして,同号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは,商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので,特段の事情のある例外的な場合を除くほか,許されないというべきである。そして,特段の事情があるか否かの判断に当たっても,出願人と,本来商標登録を受けるべきと主張する者との関係を検討して,例えば,本来商標登録を受けるべきであると主張する者が,自らすみやかに出願することが可能であったにもかかわらず,出願を怠っていたような場合や,契約等によって他者からの登録出願について適切な措置を採ることができたにもかかわらず,適切な措置を怠っていたような場合は,出願人と本来商標登録を受けるべきと主張する者との間の商標権の帰属等をめぐる問題は,あくまでも,当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから,そのような場合にまで,「公の秩序や善良の風俗を害する」特段の事情がある例外的な場合と解するのは妥当でない(平成14年(行ケ)第616号,平成19年(行ケ)第10391号)。
請求人は,「本件商標は,メインマーク・ジャパン社(現メインマーク社)の社長であった者が,請求人が『メインマーク』及び『mainmark』を商標として使用することを知った上で,先回りして,剽窃的に出願したものと認められるので,そのような出願の経緯は社会的妥当性を欠くものである。」旨を主張している。
確かに,請求人の主張及び同人の提出に係る甲各号証によれば,被請求人が2003年(平成15年)3月21日にメインマーク・ジャパン社の取締役を辞任したこと及び被請求人は,「mainmark(メインマーク)」がメインマーク社の商号の一部であると承知していたことから,被請求人は,本件商標の登録出願時には請求人及び引用商標の存在を知っていたものといえる。
しかしながら,このことのみをもって本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあるとまではいえない。
そして,請求人の提出した証拠からは,具体的に,被請求人がメインマーク社の事業の遂行を妨害しようとしているとか,本件商標の登録出願が剽窃に当たることなどを裏付ける事実は見いだせない。
しかも,請求人は,引用商標の使用開始にあたって,その商標を自ら登録出願する機会は十分にあったというべきであって,自ら登録出願しなかった責めを被請求人に求めるべき事情を見いだすこともできない。
以上からすると,本件商標について,商標法の先願登録主義を上回るような,その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあるということはできないし,そのような場合には,あくまでも,当事者間の私的な問題として解決すべきであるから,公の秩序又は善良の風俗を害するというような事情があるということはできない。
もとより,「mainmark」の欧文字からなる本件商標は,その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではなく,その構成自体がそのようなものではなくとも,それを指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するものともいえない。
また,本件商標は,他の法律によって,その商標の使用等が禁止されているものではないし,特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反するものでもない。
その他,本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標と認めるに足る証拠もない。
してみると,被請求人が,引用商標と同一又は類似する本件商標の登録出願をし,登録を受ける行為が「公の秩序や善良の風俗を害する」という公益に反する事情に該当するものということはできない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
6 請求人の主張について
(1)請求人は,「平成27年(2015)年7月1日発行の『あんしんLife』7月号(甲29)において,メインマーク社が取り上げられ,メインマーク・ジャパン株式会社が『ウレテック工法』を紹介するために設立されたこと,この度ウレテックジャパン株式会社からメインマーク株式会社に社名を変更し,再び『メインマーク』を社名として使用することになったこと,メインマーク社の有する技術力の高さ,全国における施行実績などが詳しく説明されている。・・・したがって,『ウレテック(URETEK)』が広く知られていたとするならば,その相乗効果によって,より一層『メインマーク(mainmark)』の周知度が高まったといえる。」旨の主張をしている。
確かに,上記1(2)のとおり,特殊樹脂による地盤沈下を補修する工事において,「ウレテック工法」や「ウレテック」の文字が当該工事の取引者や当該工事を依頼する者の一部において知られているとしても,それは,工事の名称又は工法の名称として知られているものであって,会社名の一部である「メインマーク(mainmark)」の文字が知られているものではない。
また,メインマーク社に社名変更したのは,平成27年(2015年)7月1日であって,本件商標の登録出願前の約2か月前であるため,たとえ,工事の名称又は工法の名称が取引者,需要者の一部において知られていたとしても,それが,その工事又は工法を扱っている企業の名称の周知度に影響を与えるとは一概にいえないものである。
(2)請求人は,「・・・メインマーク・ジャパン社は,日本において『メインマーク・ジャパン』を自己の業務全般に係る出所表示標識(ハウスマーク)として使用してきた。『メインマーク・ジャパン』中の『ジャパン』は国名(日本)を表すにすぎないため,識別力は強くないので,『メインマーク・ジャパン』の要部は『メインマーク』である。迅速を貴ぶ取引社会においては,商標の一部をもって取引に用いられることは顕著な事実であり,実際,新聞記事において『メインマーク・ジャパン株式会社』は『メインマーク(mainmark)』と記載されている(甲9,甲12,甲17等)。」旨を主張している。
しかしながら,メインマーク・ジャパン株式会社は,法人格を表す語(株式会社)を含むことから,その構成文字全体として商号を表示したものと認識されるものである。
そして,メインマーク・ジャパン株式会社の文字は,簡易迅速を尊ぶ商取引においては,法人格を表す語(株式会社)の部分を省略して「メインマーク・ジャパン」と略称されることが一般的であることからすれば,「メインマーク・ジャパン」という企業名(会社名)として認識されるというのが自然である。
また,請求人の提出した証拠によっても「ジャパン」の文字を冠した企業名等において,「ジャパン」の部分を省略して称呼する場合があることが,一般的であるとまでいうことはできない。
よって,請求人の上記主張は,採用できない。
7 まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号,同第10号,同第15号及び同第19号に違反して登録されたものではないから,同法第46条第1項の規定により,その登録を無効とすることはできない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2018-03-28 
結審通知日 2018-04-10 
審決日 2018-05-17 
出願番号 商願2015-86339(T2015-86339) 
審決分類 T 1 11・ 253- Y (W37)
T 1 11・ 271- Y (W37)
T 1 11・ 222- Y (W37)
T 1 11・ 22- Y (W37)
T 1 11・ 252- Y (W37)
T 1 11・ 255- Y (W37)
T 1 11・ 251- Y (W37)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 渡邉 あおい 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 榎本 政実
中束 としえ
登録日 2016-02-12 
登録番号 商標登録第5825231号(T5825231) 
商標の称呼 メインマーク、メーンマーク 
代理人 村上 晃一 
代理人 龍華国際特許業務法人 
代理人 穂坂 道子 
代理人 龍華国際特許業務法人 
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