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審判番号(事件番号) データベース 権利
判定2018600010 審決 商標

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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) 009
管理番号 1350851 
判定請求番号 判定2018-600008 
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2019-05-31 
種別 判定 
2018-03-09 
確定日 2019-04-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第3274643号商標の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 商品「家庭用テレビゲームおもちゃ用ポーチ」に使用するイ号標章は,登録第3274643号商標の商標権の効力の範囲に属しない。
理由 第1 本件商標
登録第3274643号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおり,やや図案化された「SWITCH」の欧文字を横書きしてなり,平成5年3月16日登録出願,第9類「写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,遊園地用機械器具,自動販売機,金銭登録機,硬貨の計数用又は選別用の機械,浮き袋,水泳用浮き板,家庭用テレビゲームおもちゃ」を指定商品として同9年4月4日に設定登録され,その後,商標登録の取消し審判により,指定商品中「浮き袋,水泳用浮き板」について取り消すべき旨の審決がされ,同13年2月7日にその確定審決の登録がされ,現に有効に存続しているものである。

第2 イ号標章
被請求人が商品「家庭用テレビゲームおもちゃ用ポーチ」に使用する標章として,請求人が示したイ号標章は,別掲2のとおり,「SWITCH」とおぼしき文字を,「I」の文字の中央を境に「SWI」を青色の地に,「ITCH」の文字を赤色の地に白抜きで大きく表示し,その語尾の「H」の文字の下半分を覆うように,小さい文字で横書きした「用本体」の白抜き文字を内包する白枠で囲んだ赤色の長方形図形を配した構成からなるものである。

第3 請求人の主張
請求人は,イ号標章は本件商標の効力の範囲に属するとの判定を求める旨を申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。
1 判定請求の必要性
請求人は,平成29年11月22日に,被請求人が「SWITCH」を書してなる標章(以下「使用標章」という。)を付した商品(家庭用テレビゲームおもちゃ用のポーチ,カバー,充電器,ケーブル,ガラスフィルム,カードケース等。以下「使用商品」という。)が被請求人のホームページに掲載され,またヨドバシカメラを通じて販売されている事実を知った(甲3)。
なお,被請求人は,ヨドバシカメラ以外の販売先にも使用標章を付した商品を販売している可能性がある(甲4)。
使用標章の使用は本件商標を侵害することから,請求人は平成29年12月27日付で被請求人に対し警告書を送付した。
平成30年1月10日付で被請求人から,商品パッケージの表示を変更する旨の回答があり,請求人はそれに対して了承していなかったが,その後,平成30年1月25日にイ号標章が使用されていることを確認したものである(甲2)。
請求人は,被請求人によるイ号標章の使用は,請求人の商標権を侵害すると思料するので,イ号標章が本件商標の商標権の効力の範囲に属するか否かについて判定を求めるものである。
2 イ号標章の説明
イ号標章は「SWITCH」の文字を需要者に認識させるものであり,その使用は請求人の商標権を侵害するものである。
請求人は,平成29年3月3日より,「家庭用テレビゲームおもちゃ」について本件商標の使用を開始し,その後も継続して使用し現在に至っている(甲5)。同商品は平成29年12月現在で,国内販売台数372万台,全世界販売台数1486万台を記録しているほどのベストセラー製品であり,商標「SWITCH」はすでに需要者の間で周知著名となっている。
よって,本件商標は,被請求人に対し上記警告書を発した平成29年12月27日頃までに,全国各地において,請求人の製造・販売にかかる商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されるに至ったものである(甲5)。
イ号標章の使用は,請求人の商標「SWITCH」の著名性にただ乗りしようという意図に基づくものである。
さらに,被請求人は,平成30年3月8日現在においてもなお使用標章を使用した商品をインターネット上で販売している(甲6)。
3 イ号標章が商標権の効力の範囲に属するとの説明
本件商標は,影文字の欧文字である「SWITCH」からなるものであり,これより「スイッチ」の称呼及び「転換,変更,開閉器,切替器,(鉄道の)ポイント」の観念を生ずるものである。
なお,「SWITCH」の識別性については,本件商標の登録異議の申立てにおいて,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しないとの決定を受けている(甲7)。
他方,イ号標章は,商品と同梱される台紙に「SWITCH」の文字が表記され,「H」のあたりに重ねて「SWITCH」文字よりもかなり小さい文字で「用本体」と印刷されたシールを貼り付けた態様である。
イ号標章は,商品と同梱される台紙に印刷された「SWITCH」の文字と台紙から分離可能なシールに印刷された「用本体」の文字を組み合わせた態様からなり,書体及び文字の大きさも異なることから,一連一体のものと認識できず,「SWITCH」は依然として「SWITCH」と認識される。しかも,シールに印刷された「用本体」の文字部分は常に一定の箇所に貼り付けられる保証はなく,標章の態様として固定されたものとはいえない状態で販売されている。
さらに,上述のとおり,シール上の「用本体」の文字が「SWITCH」に比べて小さいため,到底一連一体のものとして読むことはできず,「SWITCH」と「用本体」とは分離して認識される。もしも被請求人が「SWITCH用本体」と表示しているつもりだとしても,この表示は需要者にとって何を意味するのか不可解な表記であり,全く理解できない。何が「本体」なのか意味がわからない表記である。「SWITCH」の本体だと誤認する需要者がいれば,品質誤認にあたるおそれも考えられる。
結局,需要者は,そこから請求人の著名なゲーム機「SWITCH」を想起し,包装用材に描かれている「SWITCH」の文字に着目するため,欧文字の「SWITCH」の外観,「スイッチ」の称呼及び「転換,変更,開閉器,切替器,(鉄道の)ポイント」の観念を有するものといえる。
したがって,本件商標とイ号標章とは,「スイッチ」の称呼及び「転換,変更,開閉器,切替器,(鉄道の)ポイント」の観念について同一であり,外観についても若干のフォントの相違はあるものの,欧文字の「SWITCH」からなる点で類似している。
かつ,本件商標にかかる指定商品中の第9類「家庭用テレビゲームおもちゃ」と,イ号標章の使用商品「家庭用テレビゲームおもちゃ用ポーチ」(以下「イ号商品」という。)とは,類似の商品である。
4 むすび
以上のとおり,イ号標章は,本件商標と類似する標章であり,その使用にかかるイ号商品と,本件商標にかかる指定商品も類似する商品であるから,被請求人がイ号商品に使用するイ号標章は,本件商標の商標権の効力の範囲に属するものである。

第4 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の判定を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第10号証を提出した。
1 答弁の理由の要約
被請求人による,イ号標章の使用は,商標法26条第1項第2号又は同第6号に該当するため,本件商標権が及ばず,よってイ号標章の使用は本件商標権の侵害とはならない。
2 イ号標章の態様
(1)イ号標章の外観
ア イ号標章は,アルファベットの白文字の「SWITCH」(ただし最後の1文字は下半分か隠れている)と,最後の文字「H」の下半分を覆うように,かつ「SWITCH」を構成する文字より小さい文字で「用本体」と印刷されたシールを貼り付けた態様である。そして,「SWITCH」の文字に使用される字体や,「用本体」の文字に使用される字体は,特別に工夫や装飾がなされているものではない,通常のゴシック体のフォントにとどまる。
イ なお,このシールはしっかりとした接着剤で貼り付けられていることから店頭において展示中に剥離されることもなく,需要者は,イ号商品を購入した後も当該シールを容易に剥離することはできない(そもそも剥離する理由もない)。
(2)イ号標章の称呼
イ号標章のうち,「SWITCH」と「用本体」は,相互にその一部が重なり合うほどに密接していることから,この両者は分離されることはなく,一連として「スイッチヨウホンタイ」という称呼が生じる。
(3)イ号標章の全体的な使用態様
ア 被請求人のイ号商品における,イ号標章の全体的な使用態様は甲第2号証のとおりである。
イ すなわち,イ号標章の直下に,二段でなる「カーボン調EVAポーチ耐久性が高く軽量」という表記がある。そしてその下に,請求人の商品である「SWITCH」というゲーム機の本体をイメージさせる画像(この画像は被請求人が独自に作成した画像である)があり,その下に,被請求人の商品の特徴が記載されている。
ウ また,商品パッケージの左肩には,「ALLONE」と,青地に白文字で,被請求人の会社名が記載されている。
(4)イ号商品の内容
イ号商品は,請求人の商品である「SWITCH」というゲーム機の本体を収納するポーチであり,ゲーム機の保管又は使用の際に使用される,いわゆるアクセサリー商品である。
また,イ号商品は,請求人も認めているとおり,家電量販店等の量販店で販売されているほか,インターネットで販売されている。
3 ゲーム機アクセサリー商品に関する取引の実情
(1)多数のサードパーティの存在
ア 前述のとおり,イ号商品は,ゲーム機収納用のポーチ,つまり,ゲーム機の周辺機器又はアクセサリーであって,特定のゲーム機に付随して使用される。
イ また,ゲーム機の周辺機器やアクセサリーを製造販売している事業者は,当該ゲーム機メーカー自身又はその関連会社とは限らない。むしろ,これらとは関係のない,いわゆるサードパーティが非常に多く存在する(乙1,乙2)。
(2)サードパーティ製アクセサリーの場合の商品の表示
ア サードパーティ製のアクセサリーの場合,商品に付される表示としては,適合機種としてのゲーム機の名称(商品名や機種名)と,当該アクセサリーを販売するサードパーティの名称が併記されることになるが,これはきわめて当然であるといえる。そうしなければ,需要者は,当該アクセサリーがどのゲーム機に適合するかを見分けることができないからである(乙4?乙9)。
イ そして,需要者は,これら商品に表示された「SWITCH」を見て,仮にこれに「For」や「用」が付されていないとしても,これだけで,当該商品が請求人の商品であると誤認することはない。それは,サードパーティ製の周辺機器・アクセサリーが多数出回っていることがよく知られている上に,通常は「SWITCH」という表示は適合機種の表示と解釈するからである。
ウ また,サードパーティ製のアクセサリーの中には,ゲーム機メーカーからライセンスを受けた「ライセンス品」のほか,ライセンスを受けていない商品(以下「非ライセンス品」という。)も多数販売されている。なお,イ号商品を含め,被請求人の商品は非ライセンス品である。
エ そして請求人の場合には,「ライセンス品」においては,ライセンス品である表示がなされているのに対し(乙10),非ライセンス品にはそのような表示はない。
4 取引の実情に照らした「SWITCH」表示と商標的使用
(1)以上のような取引の実情を考えると,サードパーティ製の,ゲーム機のアクセサリーを見た需要者は,ここに,ゲーム機の名称が表示されているとしても,またこれが登録された商標と同一であったとしても,これを商標として使用していると認識することはない。
(2)なぜなら,上記3(1)のとおり,同一のゲーム機に適合する周辺機器やアクセサリーがサードパーティから多数販売されているという事実がある以上,アクセサリー商品に示されたゲーム機の名称を見ても,需要者は自他商品を識別することはできず,かつ当該商品の出所を認識することもできないからである。つまり,こうしたゲーム機の名称の表示には,自他商品識別機能もなければ出所表示機能もない。
(3)また,アクセサリー商品のメーカーは,ゲーム機メーカーと資本関係にないところがほとんどであり,かつゲーム機メーカーからライセンスを受けていないところも多いことを考えれば,ゲーム機の名称の表示は,いわゆる広義の意味での出所表示機能(ゲーム機メーカーと何らかの関係があることを表示する機能)すらない。
(4)この場合,需要者は,当該アクセサリー商品の販売者すなわち出所を確認するためには,当該商品の外装に示される,アクセサリー商品のメーカー名や販売者名,又はこれらメーカーや販売者が独自に付す標章に着目する。こうしてはじめて,需要者は,当該アクセサリー商品の出所を認識する。
5 イ号標章についての検討
(1)請求人自身が認めているとおり,請求人のゲーム機である「SWITCH」は,爆発的といってもよいほどヒットし,非常に人気のある商品である。したがって,このゲーム機に使用できる周辺機器やアクセサリーについても,大きな市場規模をなしており(乙2),少なくとも200社から,無数の種類の商品が販売されている(乙1)。
(2)そして,イ号商品を含めた被請求人の商品も,こうした「SWITCH」用の,莫大な数のアクセサリー商品の一つにすぎない。そして,ここに「SWITCH」という表示がされたとしても,イ号商品を他の商品と区別するものとはならず,また狭義にも広義にもイ号商品の出所を表示することはない。
(3)この点,前述の取引の実情(3(2)イ)のとおり,サードパーティ製のSWITCH用アクセサリーにおいては,「用」などを使用せずに「SWITCH」とのみ表示されていることも多いが,それでも,需要者はこうした表示を用途として認識する。この点,被請求人は「SWITCH用本体」というイ号標章を使用している。被請求人は,この,「用本体」という文字によって,イ号商品は,「SWITCH」というゲーム機本体を収納するためポーチであるという点を,さらに明確に示しているのである。
(4)また,被請求人は,ことさらに請求人のロゴなどを使用するといったことは行っておらず,「SWITCH用本体」という文字を通常のフォントで使用しているだけであることも,イ号標章が,単なる用途の表示であるという主張を裏付けるものといえる。
(5)そして,被請求人は,前述のとおり,商品パッケージの左肩に,被請求人の会社名でありかつブランドでもある「ALLONE」という文字を明瞭に表示している。したがって,イ号商品を手にした需要者は,「ALLONE」という文字によって,さらには商品パッケージの裏面にさらに明示されている被請求人の会社名と連絡先によって,その出所を認識することができる。これによって,需要者は,イ号商品が,「SWITCH」に使用することのできるアクセサリーであって,被請求人とは関係のないサードパーティが販売者であることを明確に認識できるのである。
(6)なお,請求人は,被請求人の「SWITCH」の表示が,他社のアクセサリー商品における表示に比べ,サイズが大きくやや目立っているということを主張する。しかしながら,前述の取引の実情を考えれば,「SWITCH」(又は「SWITCH用」等)という表示には出所表示機能がないことは明らかであり,文字の大きさ等は結論に影響を及ぼすものではない。
(7)したがって,イ号標章は,商標法26条第1項第2号の「当該指定商品若しくはこれに類似する商品の・・・用途・・・使用の方法・・・を普通に用いられる方法で表示する商標」,又は,同第6号の「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標」に該当するというべきである。
よって,イ号標章は,本件商標の商標権の効力の範囲に属しない。

第5 当審の判断
1 イ号標章について
(1)ア イ号標章は,外観において,上記第2のとおり,大きく表示されている「SWITCH」と判読可能な文字と,当該文字上の「H」の文字の下半分にかかるように,小さく表示された「用本体」の文字を内包した長方形図形(甲第2号証並びに請求人及び被請求人の主張から,当該長方形図形は「シール」により貼付されたものと認められる。)を配した構成よりなるところ,「SWITCH」の文字と「用本体」の文字とは,同じくゴシック体で表示されているものである(甲2)。
イ イ号商品における表示について,イ号商品のパッケージ(甲2)には,商品とともに,左半分を青色,右半分を赤色の2色を地色とする台紙が同梱され,当該台紙の最上部及び中央部にそれぞれ以下のような白抜き文字を配した構成よりなる。
(ア)イ号商品最上部
イ号商品のパッケージ最上部左側には「ALLONE」の文字,同右側には小さな文字で「SWITCH用」の文字が表示されている。
(イ)イ号商品中央部
イ号商品のパッケージ中央に,商品の幅全体に大きくイ号標章が表示され,その下に,「カーボン調EVAポーチ」及び「耐久性が高く軽量」の文字が,二段に,それぞれの表示の中心をそろえるように表示されている。
そして,イ号標章中の「SWITCH」の文字は,それ以外の表示の文字の4倍程度の大きさの文字で書されている。
ウ また,「SWITCH」の表示が使用された請求人の家庭用テレビゲーム機は,平成29年3月に発売され,同年末までに1460万台を売上げていることから,イ号標章が使用された遅くとも平成30年1月25日には,家庭用テレビゲーム機に係る我が国の需要者に,ある程度広く知られていたものと認められる(甲5,当事者間に争いのない事実)。
(2)ゲーム機及びその周辺機器等を取り扱う業界における取引の実情について
ゲーム機及びその周辺機器等を取り扱う業界では,ゲーム機メーカー又はその関連会社のほか,ゲーム機メーカーとは直接又は間接的に関係を持たずに,ゲーム機の周辺機器等を製造又は販売する,いわゆるサードパーティが多数存在し,当該周辺機器等が適合するゲーム機名称を需要者に示すために,当該周辺機器等の商品パッケージには,ゲーム機名称に「FOR」や「(専)用」の文字を付加して商品に表示している実情がある(乙1,乙4,乙6,乙7)。
(3)検討
イ号標章は,「SWITCH」の文字に重なるように「用本体」の文字が,共に普通に使用されている書体であるゴシック体で表示されているところ,2つの文字の大きさが異なるとしても,いずれも特異な態様ではなく,普通に用いられる方法の範囲で表示されているというべきものであり,2つの文字が重ねて表示されていることを踏まえると,外観上,全体としてまとまりよく構成されている。
加えて,イ号標章は,(ア)イ号商品の商品パッケージの中央に,やや大きめの文字で表示されているとしても,イ号標章に近接して,イ号商品の品質等の表示として「カーボン調EVAポーチ」(「EVA」は「エチレン・酢酸ビニル樹脂」を意味するものと解される(広辞苑第7版))及び「耐久性が高く軽量」の文字が配されており,これらは単に商品の品質を示し適合機種を示す表示ではないこと,(イ)上記(2)のとおり,ゲーム機用の周辺機器等を取り扱う業界においては,ゲーム機の名称に「FOR」や「(専)用」の文字を付加し商品に表示して,適合するゲーム機名称を商品に表示することが普通に行われている実情があること,(ウ)イ号商品のパッケージには,その最上部の右側に「SWITCH用」の文字の記載があるとしても,小さな文字で表示されていることを踏まえると,これをイ号商品に使用した場合,これに接する需要者をして「家庭用テレビゲーム機であるSWITCH用の本体に使用するもの」程度の意味合いを看取させるものであって,イ号標章を,自他商品の識別標識としてではなく,イ号商品の適合するゲーム機名称,すなわち商品の用途を表示したものと理解させるというのが相当である。
そうすると,イ号標章は,イ号商品との関係において,自他商品の識別標識として機能するものではなく,当該商品の用途を普通に用いられる方法で表示したものといえる。
(4)請求人の主張
請求人は,「イ号標章は,商品と同梱される台紙に「SWITCH」の文字が表記され,「H」のあたりに重ねて「SWITCH」文字よりもかなり小さい文字で「用本体」と印刷された台紙から分離可能なシールを貼り付けた態様からなり,書体及び文字の大きさも異なることから,一連一体のものと認識できず,「SWITCH」は依然として「SWITCH」と認識される。しかも,シールに印刷された「用本体」の文字部分は常に一定の箇所に貼り付けられる保証はなく,標章の態様として固定されたものとはいえない状態で販売されている。さらに,上述のとおり,シール上の「用本体」の文字が「SWITCH」に比べて小さいため,到底一連一体のものとして読むことはできず,「SWITCH」と「用本体」とは分離して認識される。」旨を主張している。
しかしながら,イ号標章は,「SWITCH」の文字と「用本体」の文字の大きさが異なり,たとえ,「用本体」の文字部分がシールからなり,その貼り付けられた位置が多少異なる場合があるとしても,外観上,両文字が全体としてまとまりよく構成されていると認識されるというのが相当であるから,上記(3)のとおり,これに接する需要者をして,全体として「家庭用テレビゲーム機であるSWITCH用の本体に使用するもの」程度の意味合いを看取させるとみるのが自然であり,イ号商品の用途を理解させるものというのが相当である。
したがって,請求人の上記主張は採用できない。
2 まとめ
以上のとおり,イ号標章は,イ号商品との関係において,当該商品の用途を普通に用いられる方法で表示するものであり,商標法第26条第1項第2号に該当するから,本件商標の商標権の効力の範囲に属しないものである。
よって,結論のとおり判定する。
別掲 別掲1 本件商標




別掲2 イ号標章(色彩は原本参照)


判定日 2019-04-04 
出願番号 商願平5-25783 
審決分類 T 1 2・ 1- ZB (009)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平松 和雄鈴木 斎 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 薩摩 純一
大森 友子
登録日 1997-04-04 
登録番号 商標登録第3274643号(T3274643) 
商標の称呼 スイッチ 
代理人 江間 由実子 
代理人 永野 真理子 
代理人 塚田 美佳子 
代理人 渡辺 知博 
代理人 橋本 千賀子 
代理人 大貫 絵里加 
代理人 石下 雅樹 
代理人 山田 薫 
代理人 益弘 圭 
代理人 江間 布実子 

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