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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W01
審判 全部申立て  登録を維持 W01
管理番号 1350844 
異議申立番号 異議2018-900183 
総通号数 233 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2019-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-07-17 
確定日 2019-04-04 
異議申立件数
事件の表示 登録第6035924号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第6035924号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6035924号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり,平成29年7月24日に登録出願,第1類「肥料」を指定商品として,同30年3月20日に登録査定,同年4月13日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する登録商標は,以下のとおりであり,いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第4721653号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:平成15年4月15日
設定登録日:平成15年10月24日
指定商品 :第1類「肥料」のほかの第1類ないし第4類,第6類ないし第8類,第11類ないし第15類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品
(2)登録第1503705号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲2のとおり
登録出願日:昭和53年6月28日
設定登録日:昭和57年3月31日
指定商品 :第1類「植物成長調整剤類」,第5類「農業用薬剤(植物成長調整剤類を除く。)」
以下,これらをまとめていうときは「引用商標」という。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標について,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第19号証(枝番号を含む(甲3,甲4,甲8,甲10,甲13?甲15)。枝番号の全てを引用するときは,枝番号を省略して記載する。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標と引用商標1の外観を対比すると,両商標はいずれも略円輪郭の内側に双葉の図形を配してなる点で一致する。一方,双葉を構成する葉の大きさが,本件商標の方が大きく引用商標1の方が小さい点,円輪郭の下部が,本件商標は円弧状に切り欠かれているのに対し,引用商標1は分断されつつもほぼ円形である点,本件商標は色付き(緑色)であるのに対し,引用商標1はモノクロである点で相違する(ただし,引用商標1は実際には緑色で使用されることが多い(甲5,甲6,甲9?甲13)。)。
ここで,図柄によって構成される商標について,取引者,需要者は,必ずしも,図柄の細部まで正確に観察し,記憶し,想起してこれによって商品の出所を識別するとは限らず,商標全体の主たる印象によって商品の出所を識別する場合が少なくない。
また,商標の使用は,種々の態様によって行われ,大きさ,色,媒体(ホームページ,カタログ,肥料袋など)等によって多様であり得ることはいうまでもない。
これらのことを前提にして考えると,本件商標と引用商標1について,時と所を違えて離隔的観察をした場合,外観上,最も看者に強い印象を与えるのは,円輪郭とその内側に配置された双葉の図形である。この構成は「フタバ印」ともいうべき構成であって,本件商標と引用商標1に共通する基本的かつ主要な特徴である。
したがって,時と所を違えて離隔的観察をした場合,取引者,需要者は,両商標の「フタバ印」ともいうべき上記一致点について強い印象を受け,これを記憶し,想起することになるから,両商標は,外観上の印象が互いに紛らわしいものである。
また,本件商標と引用商標1は,前記構成より,「フタバ印」の観念が生じ,「フタバジルシ」ないし「フタバマーク」の称呼が自然に生じるものであるから,観念上及び称呼上も類似する。
さらに,指定商品について比較すると,本件商標と引用商標1はいずれも「肥料」を指定するものであるから,両者の指定商品は同一又は類似する。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 申立人について
申立人は,農薬とファインケミカル製品の製造,販売を主な事業内容とする化学メーカーで,1950年(昭和25年)2月に設立され(甲5),農薬分野では,日本における出荷金額が年間230億円を超え,海外メーカーを含めても第5位に位置するなど(甲7),業界で有数のメーカーとして知られる。
また,申立人は,化学メーカーとして,その技術開発の実績,安全管理や環境面からの地域貢献等が評価され,各賞を受賞し(甲13の2,6,9?11,13,15),国際的な展示会,学会への出展,参加等その活動は国内に止まらない(甲13の3,4,7,8,甲16)。
イ 双葉マークについて
創立後まもなく申立人の社章の制定がとりあげられ,選考のすえ採用されたのが双葉マーク(以下「フタバ印」ともいう。),すなわち,引用商標である。
フタバ印は,1958年(昭和33年)に登録第516003号として商標登録され,それ以来,申立人のシンボルマークとして需要者にアピールし,「フタバの北興」と愛称されるようになった(甲8)。
また,登録第516003号はその後,書換申請時に再出願され,引用商標2として存続し,防護標章登録もされている。
ウ 引用商標の周知・著名性
フタバ印すなわち引用商標は,申立人会社設立後まもなく採用され,今日に至るまで60年間以上,ハウスマークとして,広告類,カタログ類,報告書類等に使用されてきた結果(甲9?甲17),農薬・化学業界内での周知・著名性は,揺るぎないものとなっている。
エ 本件商標と引用商標の類似性
前記(1)のとおり,本件商標は,引用商標と類似する。
オ 引用商標の独創性
引用商標は,フタバ印であり,申立人のオリジナルの社章である。シンプルな構成でありつつ「円輪郭」と「双葉」が印象に残る,独創的なデザインといえる。
カ 商品の関連性と需要者の共通性
防護標章登録を有する引用商標2に係る指定商品は,第1類の植物成長調整剤類と第5類の農業用薬剤であって,ここに肥料は含まれない(甲3)。
しかしながら,肥料及び植物成長調整剤類・農薬は,いずれも農作物の生産に必要なものである点において一致し,加えて,その需要者はいずれも農業従事者である。よって,これらの商品が相互に関連性の高い商品である。例えば,全農の価格調査や購入先調査においても,「肥料・農薬価格」「肥料・農薬購入先」の如く,肥料と農薬が一括りにされている(甲7)。
キ グループ会社
申立人のネットワークは全国に広がる(甲6)。さらに,申立人は国内外の複数の会社ともグループを形成し,グループ各社の事業内容は多岐にわたる(甲18)。うち,申立人の完全子会社である北興産業株式会社は,肥料を製造販売している(甲19)。
混同を生ずるおそれ
以上を総合すると,引用商標に類似する本件商標をその指定商品(肥料)について使用するときは,その取引者,需要者に引用商標を想起,連想させ,該商品が,申立人の業務に係る商品であると誤信されるか,若しくは申立人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であると誤信され,これにより商品の出所について混同を生じさせるおそれがある。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知著名性について
ア 申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば,本件商標の登録出願前には,以下のことが確認できる。
(ア)申立人は,農薬とファインケミカル製品の製造・販売を主な事業内容とする化学メーカーで,1950年(昭和25年)2月に設立された。東京に本社を構え,全国に支店,研究所,試験農場,工場を擁するほか,ドイツ・中国・アメリカにも拠点を有し,農薬分野では,日本における出荷金額が年間230億円を超え,海外メーカーを含めても第5位に位置している(甲5?甲7)。
そして,申立人は化学メーカーとしてその技術開発について,「平成25年度日本ファインセラミックス協会・技術振興賞」(甲13の6),「2011年度日本植物細胞分子生物学会・技術賞」(甲13の9),「農林水産技術会議会長賞」(甲13の10)を受賞し,安全管理や環境面からの地域貢献等についての賞も受賞している(甲13の11,13,15)。
(イ)ホクコー30年史(昭和56年6月30日発行)及びホクコー50年史(平成13年4月25日発行)(いずれも非売品)をみると,「社章の由来」として,引用商標が表示され,「北を図案化した“双葉”である。・・・社章は当社のシンボルマークとして,豊作日本をも象徴したものとして需要者にアピールし,『フタバの北興』と愛称されるようになった。」と記載があり(甲8),会社案内(甲11,甲12),決算説明資料(甲10の1,3,4),プレスリリース(甲13の4?15)や新聞広告(甲15の1,2)等に社名とともに引用商標が表示されていることから,引用商標は,申立人の社章として認識されているものというべきである。
イ 周知著名性の判断
以上によれば,申立人は,1950年(昭和25年)2月に設立され,農薬とファインケミカル製品の製造・販売を主な事業内容とする化学メーカーであって,各種表彰を受けていることや農薬についての日本における出荷金額において,海外メーカーを含めて第5位に位置していることから,農薬を製造販売している会社としては,相当程度知られているといえる。
そして,申立人は,引用商標を社章として制定しているところ,社章の由来については,非売品である社内史において,「北を図案化した“双葉”」や「フタバの北興」と愛称されると記載されているが,広く一般に引用商標が双葉(フタバ)と愛称されていると判断できる具体的な証拠は見いだせない。
また,引用商標は,カタログや会社紹介において社名とともに使用される社章と認識されているところ,本件商標の登録出願前の新聞(甲15の1,2)における除草剤についての広告2件に使用していることが確認できるのみであって,その他,商品に使用して広く知られているとする証拠は見いだせない。
そうすると,引用商標は,具体的な商品に使用して広く知られているものとは確認できないから,申立人の業務に係る商品を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,需要者の間に広く認識されていたとはいえない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標について
本件商標は,別掲1のとおり,全体が緑で配色され,下部が内側に湾曲した略円輪郭を描き,その内側の湾曲した部分から略円輪郭内中央へ向かって茎様の縦線を表し,その先端には,左右に大きさの異なる葉様の図形を有するところ,茎様の左側の葉様の図形は略円輪郭に接し,右側の葉様の図形は,光沢様の線を有し,略円輪郭から3分の1程度突出して描いてなる図形であり,その構成中,左右対称でない葉様の図形が構成全体に占める割合が大きいものである。
そして,本件商標からは,特定の称呼及び観念を生じるとはいえない。
イ 引用商標1について
引用商標1は,別掲2のとおり,略円輪郭の一部輪郭が途切れた下部中央から略円輪郭内中央へ3分の1程度伸びる縦に長い二等辺三角形の図形を配し,その先端よりやや下の位置に左右対称に葉様の図形を表してなるところ,円輪郭内に占める空間が広く,円輪郭内の下方に表された葉様の図形は円輪郭と調和のとれた図形と看取されるものである。
そして,引用商標からは,特定の称呼及び観念を生じるとはいえない。
ウ 本件商標と引用商標1との類否について
本件商標と引用商標1とを比較すると,両者は,略円輪郭及び葉様の図形を有する点で共通するとしても,上記のとおり,本件商標が左右対称でない葉様の図形が構成全体に占める割合が大きいものであるのに対し,引用商標が円輪郭内に占める空間が広く,円輪郭内の下方に表された葉様の図形が円輪郭と調和のとれた図形である点に相違があることから,全体から受ける印象が明らかに相違するものであり,外観上,相紛れるおそれはない。
また,本件商標と引用商標1からは,いずれも特定の称呼及び観念が生じないから,両者は,称呼及び観念において比較することはできない。
してみれば,本件商標と引用商標1とは,相紛れるおそれのない非類似の商標である。
なお,申立人は,本件商標と引用商標1との構成から,「フタバ印」の観念が生じ,「フタバジルシ」又は「フタバマーク」の称呼が生じる旨主張するが,該主張を裏付ける具体的,客観的な証拠が見いだせないから,この点についての申立人の主張は採用できない。
エ 小括
本件商標の指定商品「肥料」は,引用商標1の指定商品に包含されているとしても,上記アないしウによれば,本件商標は,引用商標1と非類似の商標であるから,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標の周知著名性について
上記(1)イと同様に,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品を表示するものとして,需要者の間に広く認識されているものということはできない。
イ 本件商標と引用商標の類似性の程度について
上記(2)ウと同様に,本件商標と引用商標とは,全体から受ける印象が明らかに相違する商標であって,相紛れるおそれのない非類似の商標である。
ウ 出所混同のおそれについて
上記ア及びイによれば,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の業務に係る商品を表示するものとして,需要者の間に広く知られているものとはいえず,本件商標と引用商標とは,全体から受ける印象が明らかに相違する商標であって,相紛れるおそれのない非類似の商標である。
してみれば,本件商標をその指定商品に使用した場合,これに接する需要者が,引用商標を想起,連想して,当該商品を申立人の業務に係る商品,あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,商品の出所について混同を生じさせるおそれがある商標ということはできない。
エ 小括
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するものでないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,本件商標登録を維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。

別掲1(本件商標:色彩については原本参照。)


別掲2(引用商標1及び2)

異議決定日 2019-03-27 
出願番号 商願2017-98178(T2017-98178) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W01)
T 1 651・ 261- Y (W01)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大橋 良成 
特許庁審判長 大森 健司
特許庁審判官 金子 尚人
小松 里美
登録日 2018-04-13 
登録番号 商標登録第6035924号(T6035924) 
権利者 江本 隆一
代理人 特許業務法人SSINPAT 

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