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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W09163541
管理番号 1349778 
審判番号 無効2018-890029 
総通号数 232 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-04-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-04-27 
確定日 2019-02-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第5932334号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5932334号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5932334号商標(以下「本件商標」という。)は、「百年の計」の文字を標準文字で表してなり、平成28年4月12日に登録出願、第9類、第16類、第35類及び第41類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同29年3月17日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第33号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 無効審判請求に至った理由
請求人は、都心の中規模オフィスをフロアや区画毎に販売する「区分所有オフィス」を提案し、不動産投資を通じて内部留保の拡大、事業承継対策、財務戦略に関するコンサルティングサービスを提供する平成11年4月13日設立の株式会社であり(甲2)、自己の不動産投資事業の広告プロモーションのために、「100年以上存続する企業(長寿企業)」を主題とした広告プロジェクトを企画・立案し、その名称として「百年の計(百計)」を採択した。
被請求人は、請求人がTV番組及び広告の制作・企画等を委託していた株式会社チエノワ(以下「チエノワ」という。)の代表者のT氏が平成28年2月29日に設立した会社であり、同氏が代表取締役を務めている(甲3、甲4)。被請求人の会社名称及び目的に「商標権、著作権、出版権等の無体財産権の取得、譲渡及び貸与」が記載されていることからも明らかなように、本件商標及び関連商標の出願名義人(登録名義人)となるために設立された会社であると考えられる。請求人が把握する限り、被請求人は、何らの事業の活動実績はなく、チエノワと被請求人とは実質的に同一というべきである。
被請求人は、請求人に無断で本件商標の登録出願を行い、商標登録を取得した。請求人が、商標登録の存在を知り、商標権の返還を求めたところ、1億5,000万円という法外な対価を要求されたため(甲26)、やむなく本件商標登録無効審判の請求に至った。
本件商標は、請求人が商標出願を行っていないことを奇貨として、無断で登録出願された剽窃的なものであって、請求人に損害を与える等不正な目的を持って行われたものであるから、商標法第4条第1項第7号が規定する「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものである。
2 請求人の事業
請求人は、都心の中規模オフィスをフロアや区画毎に販売する「区分所有オフィス」を提案し、不動産投資を通じて内部留保の拡大、事業承継対策、財務戦略に関するコンサルティングサービスを提供する企業であり(甲2)、それまで誰も注目しなかった「オフィスを区分所有する」ことの価値を見抜き、「区分所有オフィス」のビジネスモデル化に成功し、事業として成果を上げることで、業界の革命児的存在として広く知られている。
請求人は、インバウンドでの新規顧客獲得を目的とし、平成27年10月、平成28年度広告プロジェクトのプレゼン会(コンペ)を実施し、チエノワと株式会社日本経済社(共催)が落札することになった(当初、チエノワがプロジェクトの企画及び広告制作等を担当し、日本経済社は、広告媒体を提供する等、後方的支援を行っていた。)。
平成27年10月頃、請求人は、平成28年度の広告プロジェクトを進行すべく、社内に営業企画部・広報PR課「未来展望」運営チーム(以下「チーム」という。)を設置した。チームが作成した平成27年12月付広告プロジェクト資料「『未来展望』の今後の展開」には、広告コンテンツとして、TV放送の名称「未来展望?トップリーダーの集い?」、表彰式等のイベント名称「100年企業EXPO」、ウェブサイトの名称「未来展望online」、雑誌(画像)名称「未来展望冊子」が各々記載されている(甲6)。また、チームは、同時に各コンテンツを具体化した「100年企業EXPO」、「未来展望online」、「未来展望冊子」の概要案を作成し(甲7)、これらの資料を平成27年12月8日付のメールにて、チームリーダーのA氏からチエノワに送付した(甲8)。
その後、請求人の従業員、かつ、チームメンバーのF氏が、当該プロジェクトの名称として「百年の計」を発案、「百年の計」プロジェクトの名称でスタートすることになった。「百年の計」プロジェクトの名称は、平成28年1月26日のキックオフミーティングにおいて、「百年の計プロジェクト/メディア全体設計」と題する資料とともに参加メンバーであるチエノワに提示された(甲9、甲20)。当該資料は、チームが作成したものであり、イベント名称「THE EXPO?百年の計?」、雑誌名称「百年の計」、ウェブ名称「百年の計 Online[百計(ひゃっけい)Online]」、テレビ番組名称「未来展望?百年の計?」、そして、プレミアム会員用サイト名称「百計Premium」が記載されている。その後、チームにチエノワのスタッフ数名が加わり、「百年の計実行委員会」(以下「委員会」という。)が組織され、委員会の下で、EXPO開催及び雑誌発行の準備、並びにウェブサイトの立ち上げ等、プロジェクトの各活動が進められた(甲9)。
請求人から広告戦略に関連して「百年の計」プロジェクトの全体設計図がチエノワに示され、共有される中、チエノワの代表のT氏は、平成28年2月29日に、請求人に無断で被請求人「株式会社百年の計」を設立(甲3)、チエノワは、請求人に何らの断りもなく被請求人を介して、平成28年4月12日付で、本件商標を含む、「百計ONLINE」「百計PREMIUM」「THE EXPO百年の計」の4件(以下、4件の商標を「百年の計関連商標」という。)の被請求人名義の商標登録出願を行った(甲1、甲10?甲12)。
一方、請求人は、平成28年3月28日、第1回目のEXPOを福岡で開催、その後、第2回EXPOを広島で、第3回EXPOを大阪で、第4回EXPOを宮城で、第5回EXPOを名古屋で、第6回EXPOを横浜で、第7回EXPOを大阪で、第8回EXPOを金沢で開催している。
請求人のEXPOは、創業100年を超える企業の経営者によるパネルディスカッションが話題性を生み、企業経営者を始めとする多くの参加者が集まった(甲13)。
また、請求人は、平成28年4月には、季刊誌「百年の計」(第1号)を発行(甲14)、TV番組「未来展望?トップリーダーの集い?」を「未来展望?百年の計?」にリニューアルし、自社のウェブサイトの名称「Vortex online」を「百計ONLINE」に変更した(甲15)。
「百年の計」プロジェクトは、現在も、請求人の主要な事業の一つとして継続されており、また、請求人は、「百年の計」プロジェクトに関し、イベント「THE EXPO?百年の計」、雑誌「百年の計」、ウェブ「百計ONLINE」についての費用を含めて、少なくとも、平成28年度は約3,130万円、平成29年度は約5,540万円の宣伝広告費等を投じている(甲20)。本件商標は、平成28年4月以来、請求人のEXPO及び雑誌の名称として継続的に使用されており、請求人の積極的な宣伝広告活動も相侯って、今日では、取引者・需要者の間で広く認識されるに至っている。
3 本件商標の発案
当該プロジェクトに関する名称については、上記2のとおりの経緯を経て、「百年の計」「THE EXPO?百年の計?」「百年の計 Online[百計(ひゃっけい)Online]」等が決定され、「百年の計」プロジェクトがスタートすることになった。そして、「百年の計プロジェクト/メディア全体設計」(甲9)は、同年1月26日のキックオフミーティングにおいて、請求人からチエノワに伝えられた(甲17、甲20)。
その後、2月1日に、F氏はチエノワのO氏にメールを送付し、雑誌「百年の計」の見積りとデザイン案の作成を依頼した(甲18)。同年2月10日にF氏からO氏に宛てたメール中に、チエノワより提出された雑誌「百年の計」のデザイン案についての評価や詳細な指示が記載されている(甲19)。
以上より、広告プロモーションプロジェクトの名称「百年の計」「百計」は、請求人が発案したものであり、請求人がプロジェクトの主催者であって、終始プロジェクトの進行を主導していたことは明らかである(甲20)。
4 被請求人の出願行為
被請求人は、前記2のとおり、平成28年4月12日付で本件商標を含む4件の商標登録出願を行った。
これらの商標は、チームが平成28年1月に作成した「百年の計プロジェクト」全体設計図(甲9)に表示されている雑誌、WEB、プレミアム会員限定用サイト及びイベントの各名称と完全に一致するものであり、当該全体設計図に記載されている事業に関連する商品及び役務を指定商品及び指定役務として出願されている。被請求人は、請求人に無断でこれらの登録出願を行い、事後においても積極的に出願の事実を請求人に伝えることはなかった。
チエノワは、被請求人を介して請求人の「百年の計」プロジェクト全体設計図に記載されている事業に関連する商品及び役務を指定商品及び指定役務として出願して商標登録している一方で、自らが実際に事業として行っているプロジェクト名称「智慧の燈火」、ウェブ名称「燈火サイト」、地方創生フォーラム名称「伝燈と志命」、雑誌名称「一燈照隅」については、登録出願すら行っていない(甲21、甲22)。チエノワは、商標出願及び商標登録を一切保有しておらず、被請求人名義で百年の計関連商標を登録しているのみであって、甚だ不自然な状況である(甲21)。
5 被請求人の行為
平成28年4月からEXPOが開催されたが、チエノワは、第1回の福岡EXPO及び第2回の広島EXPOにおいて、EXPOの主催者が請求人であることを、協賛企業に伝えておらず、そのため協賛企業から請求人に苦情が寄せられた。また、チエノワは、自社のホームページに、第1回の福岡でのEXPOの内容を、あたかも同社が主催者と見えるような掲載を行った。請求人からの指摘により、ホームページは改訂されることになったが、その後も、請求人の許諾を得ずに進行したり、必要な報告を怠る等、不誠実な行為は改善されなかった。そこで、平成28年10月14日、請求人は、日本経済社のN氏の仲裁のもと、チエノワの代表者であるT氏、A氏と3者での会談を開催した。チエノワ代表者のT氏は、同会議の場で、EXPOの主宰者は請求人であり、「百年の計」プロジェクトに関する権利が請求人にあることを認め、今後の運営を請求人に返すことを約束した(甲20)。同日にチエノワのT氏が作成し、請求人らに送付したミーティングアジェンダには、「2016年上半期に御社の広告・PRすべてをお任せ頂いた上で、報連相の遅れや不備によりご迷惑をおかけしたこと、また思い描いた通りにテレビ番組やEXPO等のプロジェクトにおける御社への付加価値が生み出せなかったこと、改めて深謝申し上げます。」などといった請求人に対するお詫びと、「2017年度以降の運営に関しましては、全て御社にお返しいたします。」等、今後の「百年の計」プロジェクトの運営を全て請求人に戻す(返す)との記載がある(甲23)。
平成28年末を以て、チエノワは、「百年の計」プロジェクトから離脱し、その後は、日本経済社が当該プロジェクトの企画・運営を担うことになった。請求人と日本経済社は、平成28年12月27日に広告出演契約を締結し、平成29年8月10日に広告基本契約を締結した。
チエノワは、「百年の計」プロジェクトを離脱した後、創業100年を超える長寿企業を題材とした「智慧の燈火」プロジェクトを立ち上げ、当該プロジェクトの下、ウェブサイト「燈火サイト」、地方創生フォーラム「伝燈と志命」、雑誌「一燈照隅」と、請求人の「百年の計プロジェクト」とほぼ同一といえる事業を行っている。各事業の名称こそ異なるものの、事業のコンセプトや実際の活動内容は、請求人の「百年の計プロジェクト」の内容を完全に模倣したものである。チエノワは、雑誌「100年の計 最終号 Vol.3」を発行した際、「チエノワが運営する『百年の計』は、2017年度、『智慧の燈火』に生まれ変わります」と表紙に書き、あたかも「100年の計EXPO」が同社の主催する事業であって、「智慧の燈火」に変更するかのような文書を作成し、配布した(甲24)。日本経済社からの指摘を受け、チエノワは、平成29年3月に訂正とお詫び書面を作成し、送付した(甲25)。当該事実からも、チエノワは、請求人の事業(「100年の計EXPO」)の顧客や協賛企業を不当に奪い取り、あわよくば事業そのものを乗っ取らんとする不正な目的を有していたことが明らかである。
請求人は、平成29年11月、「百年の計」プロジェクトに関する商標調査を実施し、被請求人が百年の計関連商標の登録出願を行い、登録を取得している事実を認識した。これら商標登録は、請求人の商標出願の障害となり、また、事業継続の障害となり得るため、これらの商標登録に係る商標権についての問い合わせを行った。チエノワのO氏は、商標の権利は、チエノワのグループ企業(被請求人)が保有しているが、チエノワが委託を受けて管理しており、「商標権の譲渡におきましては、1.5億を希望しております」とのメールを送付してきた(甲26)。請求人は、1億5,000万円という額に驚き、「百年の計」は、請求人の社員のF氏が発案したものである旨を伝えたところ、O氏は、本プロジェクトは、チエノワのT氏が平成27年に企画・立案し、請求人のスポンサーの下運営してきたとの不実な主張を行った(甲27)。チエノワは、百年の計関連商標に係る商標権を、請求人に不当な高額で買い取らせようとする不正な目的を有していたことは明らかである。
6 請求人と被請求人との関係
請求人とチエノワは、平成26年8月8日に機密保持契約を締結し(甲28)、請求人は、テレビ番組「未来展望?トップリーダーの集い?」及びCM制作を依頼した(甲29)。TV番組「未来展望?トップリーダーの集い?」は、平成27年4月より放映が開始され、当該番組の継続に伴い、平成27年9月1日付でテレビ番組の企画制作及び放送に関する契約を締結した(甲30)。さらに、「百年の計」プロジェクトの推進のため、平成28年2月1日付で広告基本契約が締結された(甲31)。
チエノワは、広告基本契約の下、請求人の依頼によりテレビ番組及びCMを制作し、また、広告及びマーケティングの企画・調査、セールスプロモーションを行っていた。「百年の計」プロジェクトにおいては、請求人のチームがプロジェクト全体の企画及び立案、スケジュール進行の主導を行い、チエノワは、請求人の指示に従い、TV番組の制作、EXPO会場の手配、CM及び広告物のデザイン及び制作、イベントのキャスティング・プロモーション等を担当していたにすぎず、請求人が、主催者として、プロジェクトに関する全ての決定権を有し、全ての費用を負担していた(甲20、甲32)。
なお、EXPO等の準備を進める中で、チエノワは、請求人を事業に協賛しているスポンサーと考えているかのような態度や表現があったため、請求人は、平成28年3月8日にメールを送付し、(ア)請求人とチエノワとの関係は業務委託者と受託者という関係であること、(イ)本プロジェクトの目的を設定、企画を発展させ、資金投下したのは請求人であること、(ウ)冊子、イベント、webも全て請求人がオーダーしたものであること、(エ)本プロジェクトは請求人のプロジェクトであり、請求人がチエノワに一部の業務を委託し、その業務委託の対価も支払っていること、の確認を求めたのに対し、T氏は、「A様の考え、全て理解させていただいております。」と、上記事実を承認するような回答を行っている(甲33)。
7 商標法第4条第1項第7号該当性
被請求人は、請求人の「百年の計」プロジェクトの広告制作を担当していたチエノワの代表者が設立した会社であって、チエノワとは実質的に同一の会社である。被請求人は、広告制作会社という立場を利用し、百年の計関連商標の商標登録出願を請求人に無断で行った。百年の計関連商標は、請求人の「未来展望」運営チームが平成28年1月に作成した「百年の計プロジェクト」全体設計図(甲9)に記載されている雑誌・WEB・プレミアム会員用限定サイト及びイベントの各名称と完全に一致するものである。そして、被請求人は、これらの商標出願の事実を、事後においても積極的に請求人に告げることはなかった。
本件商標の登録出願当時、請求人とチエノワは、機密保持契約及び広告基本契約を締結しており、委託者と広告制作等を行う受託者という関係にあった。機密保持契約第4条は、当事者の機密情報の開示は、相手方に対する商標権等の知的財産権に関わるいかなる権利の付与、譲渡又は許諾を意味するものではない旨を規定している。そして、かかる広告基本契約の下、受託者であるチエノワは、請求人の事業に関連する商標について、権利化を許諾されていたものではなく、無断で権利化等しないとの義務を負っていたというべきである。しかるに、チエノワは、ダミー会社である被請求人を介して、本件プロジェクト事業に係る第9類の商品、第35類及び第41類の役務を指定商品、指定役務として、請求人に無断で百年の計関連商標の登録出願を行ったものである。百年の計関連商標が登録されると、請求人の「百年の計」プロジェクトの事業継続を困難にするなどの影響を与えるものであるから、このような出願を行うことは、契約違反であるとともに信義則に反する行為である。
さらに、チエノワは、平成29年初頭に、請求人の「100年の計EXPO」が終了し、あたかも同社の主催する事業に変更するかのような文書を顧客に配布し、請求人の事業の顧客や協賛先を不当に奪おうとし、事業継続の妨害を企てた。そして、同年12月に、請求人がチエノワに商標権の返還を求めた際、「百年の計」はチエノワの代表者が企画・立案したものであるとの不実な主張を行い、1億5,000万円という法外な譲渡対価を求めた(甲26)。被請求人と実質一体であるチエノワのこのような一連の行為(事実)を考慮すれば、被請求人は、請求人の「百年の計」事業の顧客や協賛企業を不当に奪い取り、事業継続を困難にする目的を有しており、また、百年の計関連商標の登録に係る商標権を請求人に買い取らせ、金銭的利益を得る目的を有していたことは明らかである。
被請求人は、請求人の事業の妨害や過大な金銭的利益を得ようとする不正な目的を持って、剽窃的に本件商標を含む4件もの登録出願を行ったものであり、かかる行為は、請求人との間の契約上の信義誠実義務違反となるのみならず、適正な商道徳に反し、著しく社会的妥当性を欠く行為である。
以上より、本件商標は、不正な目的を持って出願されたものであって、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、その登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして容認し得ないというべきであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、請求人の主張に対し何ら答弁していない。

第4 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係について争いがないから、本案について判断する。
1 本件商標の出願の経緯等について
請求人提出の証拠及び同人の主張によれば、次の事実を認めることができる。
(1)被請求人は、請求人がTV番組及び広告の制作・企画等を委託していたチエノワの代表取締役であるT氏が平成28年2月29日に設立した会社である(甲3、甲4)。
(2)請求人とチエノワは、平成26年8月8日に機密保持契約を締結し(甲28)、請求人は、チエノワにテレビ番組「未来展望?トップリーダーの集い?」及びCM制作を依頼した(甲29、甲30)。当該番組は、平成27年4月より同年7月まではBS12 TwellVで、同年8月から平成28年9月までの間、TOKYO MX1で放映された(甲5)。
(3)請求人は、平成27年10月、平成28年度広告プロジェクトのプレゼン会(コンペ)を実施し、チエノワと株式会社日本経済社(共催)が落札した。この頃、請求人は、平成28年度の広告プロジェクトを進行すべく、社内にチームを設置した。チームが作成した平成27年12月付広告プロジェクト資料「『未来展望』の今後の展開」には、広告コンテンツとして、TV放送の名称「未来展望?トップリーダーの集い?」、表彰式等のイベント名称「100年企業EXPO」、ウェブサイトの名称「未来展望online」、雑誌(画像)名称「未来展望冊子」が各々記載されている(甲6)。また、チームは、同時に各コンテンツを具体化した「100年企業EXPO」、「未来展望online」、「未来展望冊子」の概要案を作成し(甲7)、これらの資料を平成27年12月8日付のメールにて、チームリーダーのA氏からチエノワに送付したことがうかがえる(甲8)。
(4)平成28年1月、チーム員のF氏の発案により、イベント名称「THE EXPO?百年の計?」等を含む当該プロジェクトの名称が「百年の計」に決定し、同年1月26日のキックオフミーティングにおいて、請求人からチエノワに伝えられた(甲17、甲20)。
(5)第1回「THE EXPO?百年の計?」の開催(平成28年3月28日)をはじめ、雑誌「百年の計」の発行、TV番組「未来展望?百年の計?」の放送(甲13?甲15)等、「百年の計」プロジェクトが進行する中、平成28年4月12日に、被請求人は、本件商標を含む百年の計関連商標の登録出願を行った。
(6)EXPO等の準備を進める中、請求人は、当該プロジェクトの運営主体等に関するチエノワの対応について、平成28年3月8日、メールで確認を求めた(甲33)。また、平成28年10月14日には、EXPOを含む当該プロジェクトの運営に関して、日本経済社のN氏、チエノワ代表のT氏、請求人のメディア事業部長A氏との会談を行った。この会談において、EXPOの運営等に関するチエノワの連絡の不備、業務委託者である請求人に対して当該プロジェクトに関する結果を出せなかったこと等の事情を踏まえ、平成29年以降のEXPOの運営は請求人に返還、雑誌「百年の計」第3号のチエノワによる発刊、「百年の計」ONLINEの運営は請求人に返還(平成28年10月末日)等の事項を含む議事が進行され、同年12月末をもって、チエノワが当該プロジェクトから離脱することとなった(甲20、甲23)。
(7)チエノワは、雑誌「百年の計 最終号 Vol.3」を、平成28年冬に発行した(甲24)。当該雑誌の表紙には「チエノワが運営する『百年の計』は、2017年度、『智慧の燈火』に生まれ変わります」との記載があり、雑誌中にも「2016年に始動し、チエノワが事務局として推進して参りました『百年の計』は、2017年より体制を一新し、『智慧の燈火』に生まれ変わります。」との記載がある。この記載に関して、チエノワは、日本経済社からの指摘を受け、2017年3月吉日付けで表現内容に不備があった旨の「百年の計 Vol.3送付に関する訂正とお詫び」と題する書面を作成した。当該書面には、「『百年の計』が終了し、『智慧の燈火』へと生まれ変わる記載があった部分」は誤りで、「『百年の計』は終了しておらず、弊社外の企業様が運営を引き継ぎ、継続して参ります。」とするのが正しい旨の記載がある(甲25)。
(8)チエノワは、ウェブサイト「燈火サイト」、地方創生フォーラム「伝燈と志命」、雑誌「一燈照隅」等を内容とする長寿企業に関連する「智慧の燈火」プロジェクトを立ち上げたことがうかがえる(甲22)。
(9)請求人は、平成29年11月に、被請求人が、百年の計関連商標の商標権を取得していることを知り、チエノワにメールにて問い合わせたところ、平成29年12月15日に、チエノワから「当該商標権については、チエノワのグループ企業が保有し、チエノワが管理している。当該商標権の譲渡については、1.5億を希望している。」旨の返信があった(甲26)。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
上記1からすると、被請求人は、チエノワの代表者によって設立され、本件商標を含む百年の計関連商標の管理を含め、チエノワと実質的に同一の者であるといい得るものである。
そして、請求人とチエノワは、請求人の事業に係る広告プロジェクトである「百年の計」プロジェクトの業務委託者と受託者という関係にあったものと認められる。
当該プロジェクトの名称は、平成28年1月に請求人の社内において決定され、同年1月26日にチエノワに伝えられたところ、チエノワの代表者T氏は、同年2月29日に被請求人である「株式会社百年の計」を設立し、同年4月12日付けで百年の計関連商標の登録出願を行った。この一連の流れをみるに、設立後まもない被請求人が、請求人のプロジェクトに係る百年の計関連商標を採択したことが偶然の一致とはいい難く、また、被請求人が百年の計関連商標の権利を取得すべき蓋然性も見いだせない。
また、「百年の計」プロジェクトの運営に関し、請求人とチエノワの間で認識の相違があり、この点に関する前記1(6)のとおりの経緯を経て、チエノワが当該プロジェクトから離脱したものであるが、その後の雑誌「百年の計 最終号 Vol.3」の発行に係る前記1(7)のとおりの経緯及び百年の計関連商標に関する請求人からの問い合わせに関して、「商標権の譲渡については、1.5億を希望している」旨の回答を行ったという前記1(9)のとおりの経緯を総合してみれば、被請求人は、請求人の「百年の計」に係る事業の継続を困難にする目的を有し、また、百年の計関連商標を請求人に買い取らせ、過大な金銭的利益を得る目的を有していたと推認せざるを得ない。
そうすると、本件商標は、出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあったといわざるを得ないから、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものといえる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものであり、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2018-12-13 
結審通知日 2018-12-17 
審決日 2019-01-08 
出願番号 商願2016-41840(T2016-41840) 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (W09163541)
最終処分 成立 
前審関与審査官 鈴木 斎 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 鈴木 雅也
冨澤 美加
登録日 2017-03-17 
登録番号 商標登録第5932334号(T5932334) 
商標の称呼 ヒャクネンノケー 
代理人 福岡 真之介 
代理人 大向 尚子 
代理人 岩瀬 ひとみ 
代理人 塩谷 信 
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