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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W12
管理番号 1348917 
審判番号 取消2017-300762 
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2017-10-10 
確定日 2019-02-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第5651428号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5651428号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5651428号商標(以下「本件商標」という。)は、「iSeat」の文字を標準文字により表してなり、2013年5月31日に域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠)においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、平成25年11月29日に登録出願、第12類「乗物用座席」を指定商品として、同26年2月21日に設定登録されたものである。
なお、本件審判の請求の登録は、平成29年10月23日にされている。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書及び審判事件弁駁書において、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)存在するとされる各書類の「取引書類」該当性について
被請求人は「これらの契約書及び提案書は、商標法第2条第3項第8号に規定する『取引書類』に該当」と主張する。
しかしながら、当該主張は、2016年付契約書及び2017年提案書が実在するという事実も含めて、実質的に、乙第1号証のみに依拠している。
乙第1号証は、2016年付契約書及び2017年提案書を見た被請求人の英国代理人(以下「英国代理人」という。)の記憶に基づく陳述が混じっており、正確性の観点で疑問があり、また、客観性に欠けるものである。
そして、英国代理人の陳述内容が真実であると仮定して、各書類が指定商品「乗物用座席」に関する取引書類に該当するかについて議論する。
ア 2016年付契約書について
乙第1号証ないし乙第7号証に記載された内容、被請求人の事業形態や「T.40」の開発の経緯に鑑みれば、2016年付契約書は、「乗用車の設計・受託製造役務」に関する取引書類に該当するとしても、指定商品「乗物用座席」に関する取引書類には該当しない。
イ 2017年提案書について
2017年5月に被請求人がヤマハ発動機に対して提案した上記スポーツカーのインテリア・デザインに関する提案書は、被請求人が2016年付契約書で包括的に請負った「乗用車の設計・受託製造役務」に関連してヤマハに提示された多数の進捗レポートの1つにすぎず、2016年付契約書を端緒とする、「乗用車の設計・受託製造役務」に関する取引書類の1つに該当すると解するのが自然である。
したがって、2017年提案書は、「乗用車の設計・受託製造役務」に関する取引書類の1つに該当するとしても、指定商品「乗物用座席」に関する取引書類には該当しない。
(2)本件商標は「乗物用座席」の識別表示として使用されておらず、被請求人の主張する「乗物用座席」は、独立した「商品」でもないことについて
乙第1号証の記載によれば、契約書中の標章「iSeat」は、指定商品「乗物用座席」自体の出所又は内容を表示するというよりむしろ、「乗物用座席の設計技術の呼称」にとどまるか、又は、「iStream」、「iLink」とともに、「乗用車の設計・受託製造役務」の出所又は内容を表示するものとして使用されているといえる。
したがって、本件商標が指定商品である「乗物用座席」に使用されたとはいえない。
また、商標法第50条の適用上、「『商品』というためには、市場において独立して商取引の対象として流通に供される物でなければならず」と判示されている(甲2)。
その点、本件商標が付されたとされる乗物用座席は、2016年の上記契約当初から「T.40」の構成要素の一部となることが予定されており、市場において独立して商取引の対象として流通に供される物ではない。
したがって、指定「商品」についての登録商標「iSeat」の使用ということはできない。
以上のように、指定商品「乗物用座席」が、独立して商取引の対象として流通に供される「商品」であった事実は確認されず、当該商品の識別表示として使用された事実も確認できないことから、商標法第50条の適用上「指定商品についての登録商標の使用」があったとはいえない。
(3)「構成部品の取引が行われている」旨の主張について
被請求人は、「被請求人とヤマハ発動機との間で、本件商標が使用される座席を含む、『T.40』と称されるプロトタイプスポーツカーの構成部品の取引が行われている」と主張する。
しかしながら、本件審判において争点となるのは、契約にしたがって実行されたヤマハ発動機に対する「T.40」の引渡し(乙1)をもって、本件商標が付されたとされる指定商品「乗物用座席」が独立して商取引の対象として流通に供されたことになるか否かである。
その点、上記(2)で述べたように、本件商標を付した「乗物用座席」が、独立して商取引の対象としてヤマハ発動機に対して実際に販売されたことを裏付ける事実は一切確認できない。
(4)契約締結の場所及び提案書開示の場所について
法は、登録商標の使用に関し、日本国内における使用を要件としている(商標法第50条第2項)ところ、答弁書及び乙第1号証では、2016年付契約が締結された場所及び2017年提案書が開示された場所について何ら言及していない。
一般に、取引書類が海外で手渡されたものである場合、それが日本の需要者を対象とするものであっても、日本国内における使用とは認められない(甲3)。
(5)役務提供の場所は英国であり、日本国内使用に非該当であること
「日本国内における使用」が認められるためは、「標章の使用の時点で、商品の譲渡等又は役務の提供が日本国内で行われているか、日本国内で行う意思があること」を要するものと解される。
乙第6号証の記事におけるヤマハ発動機の社長の「ロンドンに数名の技術者が駐在して、プロトタイプの開発と実験の段階。」という言明から、被請求人の英国での設計・受託製造のプロセスにヤマハ発動機の技術者が出向いて関与していることが窺われる。すなわち、「iSeat」なる語を含む2016年付契約書及び2017年5月の提案書等の頒布の時点で、被請求人の「乗用車の設計・受託製造」に係る役務の提供の場所は、英国内で行うことを当然の前提としており、日本国内で当該役務の提供をする意思も全く窺えない。
したがって、役務の提供が日本国外で行われており、かつ日本国内で行う意思がない以上、日本国内における使用には該当しない。
(6)乙第7号証は審判請求登録日より後であること
乙第7号証は、2017年10月24日に公開されており、本件審判請求登録日より後であるので、採用すべきでない。また動画の内容についても、本件商標の使用事実を裏付けるものではない。
(7)乙第2号証ないし乙第6号証は、本件商標の使用を直接示す証拠ではないこと
乙第2号証ないし乙第6号証は、「被請求人とヤマハ発動機がスポーツカーの共同開発を行っていること」ことを言及する記事にすぎず、本件商標の指定商品についての使用事実を示すものではない。
3 まとめ
以上のように、被請求人の答弁書の内容及び提出した証拠を考慮しても、本件商標が、日本国内において、本件審判請求登録前3年以内に、その指定商品について使用されているとはいえない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第8号証を提出した。
1 使用の事実
(1)被請求人について
被請求人は、自動車デザイナーであるゴードン・マレー氏によって2007年に設立されたイギリスの法人である。
被請求人は、日本法人ヤマハ発動機株式会社(以下「ヤマハ発動機」という。)と四輪自動車の共同開発を行っており、ヤマハ発動機は、例えば、2013年に開催された東京モーターショー2013において、被請求人が、そのiStream技術(被請求人が提唱するパーソナルモビリティを開発するシステム)に基づきフレーム設計を行った四輪自動車「MOTIV(モティフ)」の公開を行った(乙1、乙2)。また、ヤマハ発動機は、東京モーターショー2015では、同様にiStream構造のスポーツカーの試作品を公開した(乙3)。
被請求人とヤマハ発動機は、スポーツカー開発のために、2016年10月に契約を交わし、両社のスポーツカーの共同開発は、現在も継続しており(乙1、乙4?乙6)、同共同開発に係るスポーツカーは「T.40」とのコードネームで称されている(以下「T.40」という。)(乙7)。
(2)本件商標の本件指定商品についての使用について
被請求人は、上述のとおり、自動車の設計を手掛けるイギリス法人であり、その設計は、iStreamと呼ばれる技術ないしコンセプトに基づくものである。
本件商標は、iStreamに基づいて開発された車両構造に最適、かつ不可欠なシート(座席)の名称として使用されるものである。被請求人とヤマハ発動機が合意した2016年の上記契約においても、「T.40」の試験の一環として「iSeat comfort assessment」(「iSeat」快適性評価)の実施が規定されており、ヤマハ発動機が開発するスポーツカーに本件商標を使用した座席が使用されることが確認された(乙1)。
2017年5月には、被請求人からヤマハ発動機に対して、スポーツカーのインテリア・システム・デザイン・コンセプトに関する提案がなされ、これは、同年6月にヤマハ発動機によって承認された(乙1)。
すなわち、被請求人とヤマハ発動機との間で交わされた2016年付契約書及び2017年5月に被請求人がヤマハ発動機に対して提案した上記スポーツカーのインテリア・システム・デザインに関する提案書において、同スポーツカーを構成する座席に関して、本件商標が使用されている。ヤマハ発動機より承諾を得られなかったため、これらの契約書や提案書の提出を今回行うことはできなかったが、乙第1号証において、被請求人の英国代理人であるマイケル ダウニング氏が陳述するように、これらの書類において「iSeat」は現に使用されていた。
これらの契約書及び提案書は、商標法第2条第3項第8号に規定する「取引書類」に該当し、これらには、本件商標が使用されるシート(座席)が言及されているから、本件商標が審判請求登録日である2017年10月19日前3年以内に、本件指定商品に関して使用されたことは明らかである。
被請求人とヤマハ発動機が共同開発する「T.40」は、被請求人によるiStream技術・コンセプトを利用したスポーツカーであり、「T.40」の構成部品(座席を含む。)は両社間の契約に基づき、被請求人よりヤマハ発動機に譲渡又は引渡しがされている。「T.40」は、プロトタイプ(試作品)であり、まだ市販されるものではないが、「T.40」がモーターショーで展示され、またテスト走行がされている(乙1、乙3、乙7)。
してみれば、被請求人とヤマハ発動機との間で、本件商標が使用される座席を含む、「T.40」と称されるプロトタイプスポーツカーの構成部品の取引が行われていることは明らかである。
2 まとめ
以上のとおり、本件商標が、日本国内において、本件審判請求登録前3年以内に、その指定商品について使用されていることは明らかである。

第4 当審における審尋
審判長は、被請求人に対し、平成30年6月19日付けで、合議体の暫定的見解を示し、請求人が提出した審判事件弁駁書に対する意見及び、さらなる証拠方法の提出を求める旨の審尋を行ったが、かかる審尋に対し、被請求人は、何ら回答していない。

第5 当審の判断
1 認定事実
被請求人の提出した証拠及びその主張によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証及び乙第8号証ついて
乙第1号証及び乙第8号証は、被請求人の本英国代理人による「陳述書」とのことであるが、当該陳述書にはおよそ以下の内容が陳述されている。
ア 被請求人はその主たる業務を乗物の設計及び受託製造とするイギリスの法人であること。
イ 被請求人は、自社における「iStream」、「iLink」、「iSeat」(剛性その他の機械的性質を達成するためにパネルを搭載したフレームワークを利用した座席)等と称するテクノロジーを利用して乗物の設計を行い、顧客に対して、必要な設計図及び試験をすることが可能な試作車と共に引き渡していること。
ウ 被請求人は、我が国のヤマハ発動機と契約し、被請求人の「iStream」を主としたテクノロジーを利用して、シティーカー「MOTIV.e」を共同開発し、当該自動車を、2013年東京モーターショーにおいて展示したこと。
エ 被請求人とヤマハ発動機は、ヤマハ発動機のスポーツカー(コードネーム「T.40」)の開発をするため、2016年10月に新たな契約を交わし、その契約書中に「iSeat」に関する評価が挙げられていること。
オ 被請求人は、ヤマハ発動機に対し、上記エの契約に基づき、2017年5月に進捗レポートを(提案書)送付し、これには「iSeat」が開発するスポーツカーのために引き渡されたことが説明、記載されていること。
カ 開発されたスポーツカーは、ヤマハ発動機に引き渡され、2017年10月27日から同年11月5日に開催された東京モーターショー2017に展示されたこと。
キ 上記カのスポーツカーには本件商標が付された座席が使用されていること。
(2)乙第2号証ないし乙第7号証について
乙第2号証、乙第4号証及び乙第5号証によれば、上記(1)ウの内容が、乙第3号証、乙第5号証及び乙第7号証によれば、上記(1)カの内容が推認できるものであるが、これらの証拠には、本件商標及びその指定商品についての記載が確認できない。
乙第6号証については、被請求人とヤマハ発動機とが4輪開発プロジェクトにおいて何らかの関係を有することは推認できるが、この証拠には、本件商標及びその指定商品についての記載が確認できない。
2 判断
(1)使用商標について
被請求人が提出した証拠からは、実際に、本件商標がどのような態様で、その指定商品である「乗物用座席」について使用されたのかを確認することができない。
(2)使用商品について
被請求人が、本件商標を使用したと主張する「乗物用座席」は、乙第1号証及び乙第8号証の「陳述書」によれば、上記1(1)の記載内容から、被請求人とヤマハ発動機の間で契約された「自動車の設計及び試作車の作成」の役務における試作車に使用された「乗物用座席」であることから、これが、一般市場で流通に供されることを目的として生産され又は取引され、独立した商取引の対象とする商標法上の商品であるとは認めることができない。
(3)その他
被請求人が乙第1号証及び乙第8号証の「陳述書」において主張する、被請求人とヤマハ発動機との間で交わされた2016年10月付契約書及び該契約書に基づく2017年5月付け進捗レポート(提案書)(以下、これらをまとめて「契約書等」という。)が存在する事を確認できる資料の提出は無い。
また、契約書等が仮に存在するとしても、その内容は「自動車の設計及び試作車の作成」の役務であって、商品「乗物用座席」の取引に係る書類とは認められない。
さらに、契約書等に「iSeat」の記載があった場合であっても、商標法第2条第3項第8号にいう「取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し」とは、広告的使用であることが前提であるといえるところ、契約書等は被請求人とヤマハ発動機との間で交わされた書類であることから、その記載中の「iSeat」の文字が「乗物用座席」についての広告的使用であったとは認められない。
(4)小括
上記(1)ないし(3)によれば、被請求人は、要証期間内に、我が国において、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標を、本件審判請求に係る指定商品に使用していたとは認められないものである。
3 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが請求に係る指定商品について、本件商標の使用をしていたことを証明し得なかったのみならず、使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2018-09-07 
結審通知日 2018-09-11 
審決日 2018-10-01 
出願番号 商願2013-93752(T2013-93752) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (W12)
最終処分 成立 
前審関与審査官 冨澤 美加 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 田中 幸一
榎本 政実
登録日 2014-02-21 
登録番号 商標登録第5651428号(T5651428) 
商標の称呼 アイシート 
代理人 北口 貴大 
代理人 城山 康文 
代理人 永岡 愛 
代理人 岩瀬 吉和 
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