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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない W21
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W21
管理番号 1348811 
審判番号 不服2017-17044 
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-17 
確定日 2019-01-17 
事件の表示 商願2016-98872拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は,「浮絵盃」の漢字3文字を標準文字で表してなり,第21類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として,平成28年9月9日に登録出願された。
そして,願書記載の指定商品については,原審における平成29年3月23日付けの手続補正書により,第21類「飲料用食器,盃」と補正されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
(1)本願商標の商標法第3条第1項第3号の該当性
本願商標は,「西洋の透視画法を応用し,誇張された奥行感の中に像を浮き立たせる絵。」を意味する「浮絵」の文字と,「さかずき。酒を注ぎ入れて飲む器。カップ。」を意味する「盃」の文字とを一連に「浮絵盃」と標準文字により表示してなるところ,その構成全体として「像が浮き立つ絵(浮絵)が描かれた盃や飲料用カップ」という程度の意味合いを無理なく理解,認識させるものである。また,「像が浮き立つ絵(浮絵)」をデザインとして施した「盃」が商品として実際に販売されていることや,同様の商品として,水に濡れると像が浮き立つ絵(浮絵)が施された傘を指して「浮絵傘」と称した商品が実際に流通していることが事実として確認できる。よって,本願商標をその補正後の指定商品「飲料用食器,盃」に使用しても,これに接する取引者,需要者は,前記意味合いに照応する「像が浮き立つ絵(浮絵)が描かれた飲料用食器や盃」であることを理解,認識するにとどまるものであり,単に商品の内容や品質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であって自他商品の識別機能を有しないものというのが相当である。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)本願商標の商標法第3条第2項の該当性
出願人は,本願商標を使用した出願人商品の我が国における販売数量,市場占有率等について具体的かつ客観的な証拠を提出しておらず,本願商標の使用状況を示すものとしては不十分である。
したがって,本願商標は,使用された結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できるに至ったものとは認められず,商標法第3条第2項には該当しない。

3 当審における証拠調べ通知
本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて,職権に基づく証拠調べを実施した結果,別掲に示すとおりの事実を発見したので,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき,請求人に対し,平成30年5月10日付けで証拠調べの結果を通知し,相当の期間を指定して意見を求めるとともに,本願商標に係る商標法第3条第2項の主張を裏付ける追加証拠の有無を確認したところ,請求人は,当該証拠調べの結果については,特に意見を述べず,同法第3条第2項の主張を裏付ける追加証拠(甲15?17)を提出した。

4 当審の判断
(1)本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は,「浮絵盃」の漢字3文字を標準文字で表してなり,その指定商品を第21類「飲料用食器,盃」とするものである。
本願商標の構成中,最後にある「盃」は,指定商品である「盃」そのものを表す語であり,また,「浮絵」は,「西洋の透視画法を応用し,誇張された奥行感の中に像を浮き立たせる絵。」(広辞苑第6版)の意味を有する語であるところ,本願商標の指定商品を取り扱う業界においては,絵柄入りの食器があることは周知の事実であり,また,そのような商品を商取引においては,例えば,別掲(1)ないし(17)のとおり,「蒔絵盃」,「浮世絵ぐい飲み」,「椿絵皿」,「桜絵盃」,「錦椿絵盃」,「美人絵盃」,「春画盃」などのように表記すなわち当該商品を指称する一般的な名称(…盃,…皿,…ぐい飲みなど)の前に,当該商品に描かれている絵やその種類を表す語を冠して一連に表記して使用している実情も多数認められることからすると,本願商標の構成全体からは,「浮絵(像が浮き立つ絵)が描かれた盃」程の意味合いを容易に認識させるものであるといえる。
そうすると,「浮絵盃」の文字を標準文字で表してなるにすぎない本願商標をその指定商品「飲料用食器,盃」に使用しても,これに接する取引者,需要者は,当該商品が「浮絵(像が浮き立つ絵)が描かれた盃」であることを理解,認識するにとどまるというべきであるから,本願商標は,商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認めるのが相当である。
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。
なお,請求人は,本件審判の請求の理由において,本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性については特に反論しておらず,専ら同法第3条第2項該当性を主張しているから,以下,この点について検討する。
(2)本願商標の商標法第3条第2項該当性について
証拠及び請求人の主張によれば,以下の事実が認められる。なお,平成29年3月23日付けの意見書に添付された第1号証ないし第6号証は,甲第18号証ないし甲第23号証と読み替える。
ア 本願商標の使用実績
(ア)請求人及びそのグループ会社である株式会社丸モ高木陶器(以下「丸モ高木陶器社」という。)は,本願商標と実質的に同一と認め得る「浮絵盃」の漢字3文字を商品「盃」(以下「請求人商品」という。)について使用している(甲1,5,6,12等)。
(イ)請求人商品は,東京都,岐阜県,愛知県,福岡県,愛媛県,鹿児島県,福井県及び大分県の取引先に,平成28年は881個(2個セット320箱,バラ241個),平成29年は84個,平成30年は71個が納品された(甲7,13?15。なお,甲15の5頁の左側の伝票については,個数及び納入金額の印字が不鮮明なため,計上できない。)。
平成28年に納品された881個のうち660個(2個セット320箱,バラ20個)は,国際的なサッカーイベントであるFIFA(国際サッカー連盟)クラブワールドカップジャパン2016における景品として使用された(甲7?9,19)。
(ウ)丸モ高木陶器社は,東京都及び岐阜県に実店舗を有し,ウェブサイト上でも販売を行っている(甲2,18,職権調査)。
(エ)イオンドットコム株式会社が平成28年12月に東北地方及び中四国地方のイオンで開催した見本市に請求人商品が出品され(甲3?5),また,展示会「外食ビジネスウィーク2017」にも請求人商品が出品され,当該展示会では請求人商品を紹介するチラシ(甲6)も頒布されたが,当該見本市等への来訪者の数等は明らかでなく,当該チラシの頒布数も明らかでない。
(オ)請求人は,請求人商品がテレビ番組(テレビ東京の番組「ガイアの夜明け」(平成28年2月2日放送)及びBS日テレの番組「森クミ食堂」(平成28年3月5日))にも取り上げられた旨を主張し,そのビデオ映像の一部の画像を提出しているが(甲20,21),これらの画像からは,請求人商品が,当該番組においてどのように紹介されたのかは確認できない。
(カ)岐阜新聞(掲載日不明,請求人は,平成28年8月に掲載されたものと主張。)及び平成28年12月22日付け中日新聞において請求人商品が,それぞれ,「丸モ高木陶器は,・・・酒を注ぐと盃(さかずき)の底に文字が浮かび上がる『浮絵盃』(うきえさかずき)を販売する。」及び「特性さかずきW杯の記念品に 丸モ高木陶器・・・さかずきは,・・・底には水の屈折作用を利用した仕掛けがあり,酒を注ぐと絵が浮かび上がる。」と紹介された(甲22,23)。
(キ)請求人は,各地で開催されている和酒の展示会「和酒フェス」において請求人商品を累計8回出展した旨主張し,そのうちの海外(香港)で開催された展示会の写真(甲10,11)を提出しているが,いずれの展示会もその来訪者の数等は明らかでない。
イ 判断
上記アの認定事実によれば,請求人及びそのグループ会社である丸モ高木陶器社は,本願商標と実質的に同一と認め得る「浮絵盃」の文字を使用した請求人商品を1都8県の取引先を含む地域及びインターネットにおいても販売していたことは認められるものの,請求人商品の販売時期は,証拠上確認できるものは,平成28年からの3年分であって,その販売個数も,平成28年に881個であり,翌年以降は毎年100個にも達していない。また,FIFA(国際サッカー連盟)クラブワールドカップを運営した株式会社ジェブに対して,請求人商品が販売され,国際的なサッカーイベントにおいて,景品として使用されたとしても,当該事実をもって,請求人商品が国際的なイベントに係る関係者,当該イベントの観戦者等に知られていたということはできない。
宣伝及び広告においては,請求人商品は,ウェブサイト上での販売が認められるとしても,当該ウェブサイトでの売上げは明らかでなく,見本市等に出品されたことは認められるとしても,その回数は十数回程度にすぎず,その来訪者数等も明らかでない。また,テレビ番組において紹介されたとしても,どのような内容で請求人商品が紹介されたのかは確認できないし,さらに,新聞における請求人商品の紹介記事もわずか2回にすぎない。
以上よりすると,本願商標は,請求人商品である「盃」に使用された結果,需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することが至ったものとは認められない。
したがって,本願商標は,商標法第3条第2項の要件を具備しない。
(3)まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,かつ,同条第2項の要件を具備しないから,これを登録することはできない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲 本願商標の指定商品を取り扱う業界における商品表示の例(「○○(当該商品に描かれている絵やその種類を表す語)+当該商品の一般名称」の使用例)
(1)「宮内庁御用達 漆器 山田平安堂 WEB本店」のウェブサイトにおいて,「【継承工房 蒔絵盃】」の項に,「こちらの『蒔絵盃』は,職人が一つ一つ『高蒔絵』と呼ばれる技法で仕上げております。蒔絵(まきえ)とは,漆器に漆を用いて絵や文様を描き,金銀粉を蒔いた後,さらに磨き上げる漆芸を代表する伝統技法のことを言います。」との記載とともに,「【継承工房】 蒔絵盃 龍/亀」の見出しの下,龍又は亀の蒔絵が描かれた盃の商品の掲載がある。
(2)「和音 ANTIQUE GALLERY WANON」のウェブサイトにおいて,「大正?昭和初期 鶴亀の図 木製蒔絵盃2客(漆器・杯)」の見出しの下,「漆塗りに美しい蒔絵が映える,和製アンティークの盃2客です。縁起の良い鶴亀と太陽の意匠が施されたお品です。」との記載がある。
(3)「Buyee」のウェブサイトにおいて,「★加賀蒔絵 松竹梅日の出鶴蒔絵盃台 風景蒔絵三組盃 研出蒔絵 高蒔絵 極上蒔絵」の見出しの下,鶴の蒔絵が描かれた盃台及び風景の蒔絵が描かれた三組の盃の商品の掲載がある。
(4)「Pinkoi」のウェブサイトにおいて,「浮世絵皿(富士山と五十塔)」の見出しの下,「浮世絵風に描かれた富士山と桜,五重塔が美しい絵皿です。・・・食器としてもお使いいただけます。」との記載がある。
(5)「伝統の器 織部」のウェブサイトにおいて,「浮世絵皿」の見出しの下,「葛飾北斎の冨獄三十六景。尾州不二見原を模倣した絵皿です。」との記載がある。
(6)「amazon.co.jp」のウェブサイトにおいて,「浮世絵マグカップ 写楽」の見出しの下,「浮世絵の絵が描かれたマグカップです。」との記載がある。
(7)「amazon.co.jp」のウェブサイトにおいて,「酒器 浮世絵ぐい飲み5個セット 東海道」の見出しの下,浮世絵が描かれた「ぐい飲み」の商品の掲載がある。
(8)「宮内庁御用達 陶香堂 東京・赤坂」のウェブサイトにおいて,「御本手魯山人写椿絵皿 有田焼」の見出しの下,「ぽってりとした筆遣いで3色の椿を描きだした,魯山人の代表といわれる意匠です。」との記載がある。
(9)「新・古美術 熊谷道具處」のウェブサイトにおいて,「諸道具類」の見出しの下,「商品名 九谷焼 龍絵 盃」との記載とともに,龍の絵が描かれた盃の商品の掲載がある。
(10)「ヤフー・ショッピング」のウェブサイトにおいて,「伝統工芸 有田焼の陶芸家が丹精込めて造った盃 染錦黄金桜絵盃 有田焼 陶芸家 藤井錦彩 作」の見出しの下,「■染錦黄金とは,1300度で焼成した白磁の上に金で彩色し800度で金を焼付けた藤井錦彩独自の技法です。・・・■桜・日本の花といえば桜,といえるほど親しまれており,日本の国花です。その華麗なたたずまいから,古くより絵画や工芸品など多種多様にその意匠は用いられています。満開に咲き誇り,はらはらと花弁を散らす桜,華やいだ雰囲気で大変人気がある文様です。」との記載がある。
(11)「いい白鶴ネットショップ」のウェブサイトにおいて,「商品No.4078 真葛・京焼 宮川香斎作 乾山写松喰鶴の絵盃(送料無料)」の見出しの下,「真葛焼 当代宮川香斎氏の手による『乾山写 松喰鶴の絵盃(ケンザンウツシ マツクイヅルノ エサカズキ)』です。」との記載とともに,松を食う鶴の絵が描かれた盃の商品の掲載がある。
(12)「ICHIBANKAN online-shop」のウェブサイトにおいて,「今右衛門窯 作 錦椿絵盃」の見出しの下,「商品名:錦椿絵盃」との記載とともに,椿の絵が描かれた盃の商品の掲載がある。
(13)「セレクトジャパン」のウェブサイトにおいて,「九谷焼 組盃セット・時代絵」の見出しの下,「5つの時代絵盃がセットになった九谷焼です。お酒を飲んでも,飾り物としても楽しめます。」との記載がある。
(14)「高木酒造株式会社」のウェブサイトにおいて,「美人絵盃」の見出しの下,「『豊能梅』人気の『美人絵盃』をネットでも販売することに致しました。」との記載とともに,浮世絵美人の絵が描かれた盃の商品の掲載がある。
(15)「ヤフオク!」のウェブサイトにおいて,「ぐい呑 お猪口 5客セット 酒器 春画盃」との記載とともに,春画の描かれた盃の商品の掲載がある。
(16)「ヤフー・ショッピング」のウェブサイトにおいて,「酒器 永楽善五郎造 桜の絵 盃」の見出しの下,桜の絵が描かれた盃の商品の掲載がある。
(17)「R Rakuten ラクマ」のウェブサイトにおいて,「ミレー 名画 皿」の見出しの下,「ジャン=フランソワ・ミレーの 油彩作品 落ち穂拾い デザインがプリントされた焼物のお皿になります。」との記載がある。
審理終結日 2018-10-31 
結審通知日 2018-11-13 
審決日 2018-12-05 
出願番号 商願2016-98872(T2016-98872) 
審決分類 T 1 8・ 17- Z (W21)
T 1 8・ 13- Z (W21)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 謙司 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 庄司 美和
田村 正明
商標の称呼 ウキエサカズキ、ウキエハイ、ウキエ 
代理人 田中 信介 

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