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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X11
管理番号 1348787 
審判番号 取消2016-300764 
総通号数 231 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-03-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2016-10-27 
確定日 2019-01-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第5168501号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5168501号商標(以下「本件商標」という。)は,「Spore」の欧文字を横書きしてなり,平成19年10月31日に登録出願,第11類「暖冷房装置,冷凍機械器具,電球類及び照明用器具,家庭用電熱用品類,浴槽類,あんどん,ちょうちん,ガスランプ,石油ランプ,ほや」を指定商品として,同20年9月26日に設定登録されたものである。
本件審判の請求の登録(予告登録)は,平成28年11月9日になされている。

第2 請求人の主張
請求人は,商標法50条1項の規定により,本件商標の指定商品中,第11類「暖冷房装置,冷凍機械器具,家庭用電熱用品類,浴槽類」についての登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲1?28(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,本件審判の請求に係る指定商品について,継続して3年以上日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用された事実がないから,商標法50条1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内(以下「本件要証期間内」という。)に,本件商標を本件審判の請求に係る指定商品に含まれる「イオン発生器,空気清浄機,業務用空気清浄機」に使用していると主張している。
しかしながら,以下のとおり,被請求人は,本件審判の請求に係る指定商品についての本件商標の使用を立証していないから,商標法50条2項により,その登録の取消しを免れない。
(1)乙2は,本件商標に係る商標使用許諾契約書(乙1)の被許諾者である有限会社TA-TILE(以下「TA-TILE社」という。)による商品販促用ダイレクトメール(以下「本件DM」という。)であり,本件商標に係る使用態様を証明している。しかし,本件DMに示す商品(審決注:本件DMには,暗闇の中で,半透明のランプシェードにより光源部全体が覆いかぶされ,明かりが点灯している状態の商品の写真が掲載されている。以下「本件使用商品」という。)は,あくまでも「電球類及び照明用器具」の下位概念である「空気清浄機能付きの照明用器具」である(甲4?8)。
また,甲9?14は,本件商標権者及びTA-TILE社が提供している照明用器具「Spore」及び「Spore New」を紹介するウェブサイトであるが,これらは全て「照明用器具」に該当する商品として掲載されており,空気清浄機能についての記載を確認することができない。さらに,甲15は,当該商品の中古品がインターネットで販売されている事実を示すものであるが,当該商品についても「照明用器具」として取り扱われている。
以上のことから,本件商標権者又はTA-TILE社は,本件商標を「照明用器具」の商標として使用していることは明らかである。
したがって,本件DMに示される証拠は,「照明用器具」又は「空気清浄機能付き照明用器具」を対象とする広告用ダイレクトメールであるとしても,本件審判の請求に係る指定商品についての使用証拠として採用できるものではない。
(2)乙3?5は,本件DMの注文履歴及びその発送の事実を示す証拠である。確かに,本件DMの出荷済通知,配送完了日,代引書類は,全て本件要証期間内ではあるものの,これらによっては,実際に本件DMが配布された事実,その数量及び配布の時期を証明することはできない。
(3)乙6は,本件商標権者及びTA-TILE社が本件商標を使用する本件使用商品についての説明書であると見受けられる。当該説明書により,被請求人は,本件商標を使用する商品「Spore New」の一部品としてシャープ株式会社(以下「シャープ社」という。)の「プラズマクラスターイオン発生機(IG-GTA20)」(乙7。以下「シャープ製イオン発生機」という。)を,本件使用商品のLED光源として組み込み,使用している旨主張する。
しかし,シャープ社のウェブサイト(甲17)及びシャープ製イオン発生機の取扱説明書(甲18)には,「主にトイレ空間用途」,「火災の原因となるシェード等の紙や布で覆うことができず,吸込口・吹出口をふさがない」及び「水平な天井に設置し,付属のアダプター以外は使用しない」とのシャープ社からの注意や警告がある。
一方,本件使用商品は,本件DM,ウェブサイトの記事(甲12)等からも明らかなように,安定した天井設置型ではなく,かつ,意匠的なシェードで覆われている。シャープ製イオン発生機の空気清浄の機能を発揮させず,かつ,火災原因になる使用方法で取引されているようであることや,シャープ社との取引書類が提出されていないことから,シャープ製イオン発生機を部品として採用していること自体に疑義が残る。特に,このような付加的機能を有する商品については,通常,従来品との違いをアピールするのが通例であるところ,ウェブサイトの記事(甲12)にあるように「小さい光源としてLED電球が使用されている」としか表現されていないことから,シャープ製イオン発生機が組み込まれた本件使用商品の流通の真偽は不明である。
仮に,シャープ製イオン発生機が本件使用商品に使用されていたとしても,当該説明書(乙6)の中で被請求人自らが主張するように「『Spore』へ組み込み」される一部品であり,独立して取引される商品は「シャープ製イオン発生機とシェード(メッシュ生地)からなる」ことから,シャープ製イオン発生機は本件使用商品である照明用器具に組み込まれた一部品にすぎず,商品としての独立性は失っており,本件使用商品の使用が「イオン発生機,空気清浄機,業務用空気清浄機」と解することはできない。過去の判決や審決においても,組み込まれた部品の使用は独立の商取引の目的物たる商標を使用していることにはならない,と判断されている(東京高判昭和63年4月12日,昭和62年(行ケ)第150号/取消2006-31003/取消2014-300621等)。
(4)本件使用商品について
ア 本件使用商品が本件要証期間内に実在せず流通していないことについて
被請求人は,本件使用商品にシャープ製イオン発生機が組み込まれている旨主張する。
しかし,以下に説明するとおり,機能面からして,本件使用商品にシャープ製イオン発生機が組み込まれていると考えることには極めて無理がある架空の品である。
(ア)照明機能について
請求人が調査したところ,シャープ製イオン発生機の点灯保持時間は30秒,1分又は3分を選択することができるのみであって(甲18の2),また,同製品のライトを常時点灯させる設定はなく,人の在室時もその動きが検知されないと,規定時間(30秒,1分又は3分)で消灯する(甲24)。
そうすると,本件使用商品は,恒常的に一定範囲を照らすのではなく,使用者の意思によらないで点灯と消灯とを繰り返すことになり,インテリア空間で使用する「照明」としては全く機能しない架空の品であることが明白である。
あくまでもシャープ製イオン発生機は,天井付けのトイレ用空気清浄機なのであって,天井から150cm程の長さでつるされる極めて意匠的なランプシェードの中に組み込まれる電球の代わりにはなり得ない。
(イ)空気清浄機能について
本件DM中には,本件使用商品が「空気清浄機」として機能することの説明があるが,本件使用商品におけるシャープ製イオン発生機は,全体が電気絶縁性のポリエチレンを使用したシェードに覆われていることから,イオンが空気中に拡散されず,空気清浄機としての機能は果たさない架空の品であることが明白である。
以上より,本件使用商品は,その構成からして,本件DMで説明されているような機能を発揮し得ず,商品として不完全である。かかる不完全な商品が実際に市場において流通したと考えるには無理があり,本件使用商品が,商標法上の商品,すなわち,流通性があり市場で取引の対象となるものとも認められない(甲25)。
さらに,本件使用商品は,照明機能に加えてイオン発生機能や空気清浄機能を有する多機能商品であるが,かかる多機能商品の場合,使用上の注意点やメンテナンス方法などが記載された取扱説明書が最終消費者に配られるのが通常である。仮に本件要証期間内に同商品が存在したのであれば,最終消費者向けの本件使用商品の取扱説明書が提出されるべきである。
イ 本件DMに係る本件使用商品について
本件DMには,暗室の中で明かりを点灯している状態の商品写真が掲載されており,「照明用器具」の使用状態が紹介されているとみるのが自然である。また,「浮遊感のある照明は,やわらかな空間を演出します。」の記載及び「内側の光源システムはイオン発生機能付き。」の記載は,商品「家庭用又は業務用のイオン発生機ないし空気清浄機」の特徴を説明しているというよりも,商品「照明用器具」の特徴を説明している。さらに,「店舗など多灯使いすることで,業務用としてもお使いいただけます。」との記載は,商品「照明用器具」についての説明であると考えられる。
そうすると,「空気清浄機としてご使用いただけます。」の記載及び「LED照明器具付きの空気清浄機です。」の記載があるとしても,その内容全体からすれば,本件DMは,商品「空気清浄機能付き照明用器具」に係るものと考えられる。
したがって,本件DMに係る本件使用商品は,「空気清浄機能付き照明用器具」であって,これは,「空気清浄機」としての商品性を肯定できず,「暖冷房装置,家庭用電熱用品類」に含まれる商品ではない。
よって,仮に,本件DMにより本件商標が使用されたとしても,商品「暖冷房装置,家庭用電熱用品類」についての本件商標の使用とは認められない。
また,本件使用商品における「空気清浄機」について使用されている商標は,商標「SHARP」であって,本件商標「Spore」ではなく,仮に,本件使用商品が市場において流通していたとしても,一般需要者が「空気清浄機」として購入を求めるのは,シャープ製イオン発生機であって,「Spore空気清浄機」ではない。
(5)乙8?12は,本件DMを第三者である5名の自然人が頒布用のために受け取ったことを示す受領証明書である。しかし,実際に本件DMが商標法2条3項8号に係る「頒布」が行われたかは,実際に本件DMが一般公衆の閲覧可能な状態に置かれることを要するところ,これが立証されていない。
また,同各号証については,以下のとおり信ぴょう性について疑義が残る。
ア 株式会社三越伊勢丹 伊勢丹新宿店インテリアセールスマネージャーのA氏による宣誓書(乙8)について
A氏は当時セールスマネージャーではなく,平成28年4月1日付けで同役職に着任しており,当時の役職において同社の責任者ではない(甲19)。
請求人は,当時の状況と実在した商品を確認すべく,平成29年6月6日に同店舗にてA氏と面談した。A氏からは,当時,アシスタントセールスマネージャーとして本件DMを頒布用として受領したこと,また,その受領した本件DMを一般需要者が任意で入手可能な状態に置いたと思うとの回答を得た。確かに,A氏の説明のとおり,平成27年10月21日から同年11月2日において,伊勢丹新宿店本館5階「リビングデコール」で,照明器具を取り扱った「Light Couture by CHIHIRO TANAKA」が開催されていた事実は確認できる(甲20)。しかし,A氏は,本件DMに係る商品が展示されていたことは認めておらず,また,「家庭用又は業務用のイオン発生機ないし空気清浄機」(本件使用商品)であるとの理解はしていない。総合百貨店である三越伊勢丹の担当者が,商品理解が不十分なままに本件DMを50部受領し,実際に配布したのは極めて不自然である。加えて,本件DMの受領後に,平成28年4月の同社の系列店舗である銀座三越7Fにおいて,同様の商品について開催された展示販売会(甲12)では,本件DMの配布がないことも極めて不自然でもある。また,当初,A氏は請求人側との面談に際し,本事件については全く知らない様子であったが,突如,請求人に関して言及し,当方に質問を投げかけた。そのため,A氏は予め本件審判について被請求人から協力を求められ同号証に署名したものであり,A氏との通謀が推認される。
このことから,乙8は偽証の可能性が高く,客観的な証拠として採用されるべきではない。
また,前述のとおり,A氏は当時の役職において株式会社三越伊勢丹 伊勢丹新宿店の責任者ではなかったため,本件DMを同社が受領したことを証明するには,少なくとも,当時の責任者によって署名がなされた同社の宣誓書を求める。
イ B氏及びC氏による各宣誓書(乙9,10)
商品の販売促進を目的としたダイレクトメールは,通常,不特定多数に頒布するものであるところ,両氏に本件DMを一部のみその頒布用に受領することは不自然である。特に,B氏は,本件DMの作成者であることから,乙9の提出により被請求人とB氏との結託が疑われ,更には本件DMひいては本件DMの受注データ(乙3,4)の内容の信ぴょう性と客観性が否定される。
ウ LINDA代表のD氏による宣誓書(乙11)
D氏が代表を務める「LINDA」は,主として美容室又は飲食店であって(甲21),本件使用商品である「イオン発生機ないし空気清浄機」を取り扱っていたと考えるのは不自然である。
エ 株式会社桜製作所・桜ショップ銀座店のE氏による宣誓書(乙12)
同桜ショップ銀座店は,家具を販売しているが,主に木製のデザイン家具を取り扱っており(甲22),本件使用商品である「イオン発生機ないし空気清浄機」を取り扱っていたと考えるのは不自然である。また,他の宣誓書の信ぴょう性に疑義が生じていることから,乙12についても,単に知り合いによる宣誓書の作成であるかのごとく,その信ぴょう性には疑義が生じる。
オ 被請求人は,「商標使用の立証のための受領証明書は,本件審判が請求されていることを説明し,各受領者に署名捺印をして頂いた」と主張する。しかし,被請求人から依頼を受けた署名者は,いずれも被請求人の知人であり,本件DMが頒布されたことの客観的な証拠として採用できない。また,乙11の受領証明書については,「受領日を確認し署名捺印をして頂いた」と主張するのみで,受領日を確認できた理由が一切説明されていない。さらに,頒布用であるにもかかわらず,1部(乙9,10)しか引き渡さなかった理由として,印刷した部数が少なかったことを説明しているが,部数が少なく貴重な本件DMを,あえて本件DM作成者であるB氏に配布したのは不自然である。
カ 以上より,本件DMの受領証明書(乙8?12)については,いずれもその信ぴょう性について強い疑義があり,本件DMが頒布されたことの客観的な証拠として採用できない。
3 まとめ
以上のように,被請求人は,本件商標が本件要証期間内に日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかによって,本件審判の請求に係る指定商品の一について使用されていることを立証しておらず,本件審判請求による取消しを免れない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙1?15(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件商標の使用事実
ア 使用商標及び使用商品
使用商標: 本件DMにおける「Spore」の文字からなる商標
使用商品: イオン発生機,空気清浄機,業務用空気清浄機
イ 商標の使用者
本件商標権者は,自身が取締役を勤める日本法人のTA-TILE社に対し,平成20年11月20日付けの商標使用許諾契約書(乙1)をもって本件商標の使用を許諾した。
したがって,TA-TILE社は,本件商標の通常使用権者である。
ウ 商標の使用時期及び使用場所
TA-TILE社は,平成27年10月19日,シャープ製イオン発生機(乙7)とシェード(メッシュ生地)とからなるLED照明器具付きの空気清浄機(乙6,13の1?4,14の1?4)に係る本件DMに「Spore」の文字からなる標章を付したものを100部作成し(乙2?5),以下のとおり配布した。
(ア)平成27年10月21日,株式会社三越伊勢丹・伊勢丹新宿店のA氏に,本件DMを頒布用として50部配布した(乙8)。
当該配布日は,同店本館5階リビングデコールで開催された,会期が平成27年10月21日から同年11月2日までの「Light Couture by CHIHIRO TANAKA」の店頭販売開催初日である。
(イ)平成27年10月27日,B氏に,本件DMを頒布用として1部配布した(乙9)。
上記(ア)の店頭販売開催期間中に受領者が来店した際に配布したものである。1部しか渡さなかった理由は,100部しか印刷しなかったこともあり,複数部渡すことができなかったためで,要望があれば,再度印刷し渡すつもりであった。
(ウ)平成27年11月2日,C氏に,本件DMを頒布用として1部配布した(乙10)。
配布理由は,上記(イ)と同じである。
(エ)平成27年11月11日,神奈川県川崎市所在のLINDA代表のD氏に,本件DMを頒布用として10部配布した(乙11)。
(オ)平成27年11月13日,株式会社桜製作所・桜ショップ銀座店のE氏に,本件DMを頒布用として30部配布した(乙12)。
桜ショップ銀座店にて,「CHIHIRO TANAKA」の商品を展示するための打合せをE氏と行った。その際に本件DMを手渡した。受領日を具体的に記載できたのは被請求人宛のメールで,打合せを行った日を確認することができたためである。
2 請求人の主張に対して
(1)請求人は種々述べているが,主張を立証する証拠が提出されておらず,いずれも請求人の主観的推測にすぎない。
(2)本件使用商品について
<安全面>
店頭でシャープ製イオン発生機を見かけ,既存の照明器具への応用を熟考し,その結果,Spore製品への組み込みの検討を開始した。
TA-TILE社は,電気絶縁性のポリエチレン素材のシェードを採用した照明器具を平成19年から製造販売しているが,今日までトラブルを起こしたことはない。また,本件使用商品を製造販売するに当たり,シャープ製イオン発生機を同ポリエチレン製のシェードで覆い,被請求人の自宅のリビングにて4週間ほど試験的につるし使用してみたが,電気的なトラブルはなかった。
さらに,シェードとシャープ製イオン発生機との間には,耐熱性に優れた透明色のポリカーボネートのフレーム(乙14の1・2)があるため,シャープ製イオン発生機にシェードが直接触れることはなく(乙14の3・4),シェード内の空間が確保されるので放熱性も良いことを確認した。
同ポリエチレン素材のシェードを使用したSpore照明器具は,財団法人電気安全環境研究所から平成18年3月28日付けで試験成績書(乙15)の試験結果の適合を受けており,この検査は,シャープ製イオン発生機を使用した本件使用商品よりも安全上さらに厳しい試験となるので,安全は確保されている。
以上により,シャープ製イオン発生機をポリエチレン製のシェードで覆った場合,安全上問題がないという結論に至った。
<性能面>
本件商品は,シェードで覆ったことにより,空気清浄機能を発揮する商品となる。被請求人の自宅のリビングにて試験的に4週間ほどつるして使用した後,シェード部分を観察すると細かいほこりが付着しており,シェードを取り外し,手洗いするとほこりが取れ,元の状態に戻すことができた。
空気清浄作用のメカニズムは,シャープ製イオン発生機から発生したイオンが絶縁性に優れ帯電しやすいポリエチレンからなるシェードにマイナスイオンとして付着帯電し,そこに空気中に浮遊するほこりでプラスに帯電したものが静電気的に引き寄せられ,シェードに付着したものと考えられる。このことから空気清浄機能があることを確認できたと考えている。なお,帯電したシェードを人間が触っても問題はなかった。
ポリエチレンを使用したシェードのメッシュ状の網目は約1mmであり,写真(乙13の3・4)でわかるようにメッシュ状の生地を立体的な構造のシェードに仕上げることで,よりほこりが吸着しやすくなっている。
また,シャープ製イオン発生機のみで使用する場合と同様に,メッシュ状の網目が約1mmのポリエチレンのシェードで覆った場合でも,赤外線(熱)の変化を検知するため,主に人体の熱で容易に反応し,人感センサーが検知動作することを確認した。
なお,シャープ製イオン発生機を採用するに当たっては,シャープ社との事前確認はしていない。
<販売実績,販売する際の商品の包装状態,取扱説明書の有無について>
本件使用商品を販売しているが,まだ売れていない。
一般的な量販店で取り扱っている大量生産の商品とは異なり,受注生産の商品であるため,受注の際には,商品説明をしっかり行い,設置する場所や取付けの条件等を詳細にお客様と確認をした上で,お客様の設置条件に合う部品を同梱し,コード長の変更(乙13の2)などの加工を施し,箱(乙13の1)に同梱し出荷する予定であった。
なお,販売する際の商品の包装状態は,下記を想定していた。
ア Spore製品に使用しているポリエチレンのシェード
イ 当該イオン発生機及びイオン発生機の取扱説明書
ウ ポリカーボネートのフレーム
エ ソケットコード
オ Spore製品の取扱説明書
3 まとめ
上記事実より明らかなように,本件商標は,本件要証期間内に日本国内で,本件商標の通常使用権者により,本件審判の請求に係る指定商品中「イオン発生機,空気清浄機,業務用空気清浄機」について販売標として使用されているものであるから,商標法50条1項の規定により取り消されるべきものではない。

第4 当審の判断
1 証拠及び当事者の主張によれば,以下のとおり認めることができる。
(1)本件商標権者は,照明デザイナーであって,かつ,神奈川県川崎市所在のTA-TILE社の取締役である(甲12,13,被請求人の主張)。
(2)本件商標権者とTA-TILE社は,平成20年11月20日,本件商標に関して商標使用許諾契約を締結した(乙1)。当該契約は,本件商標権者がTA-TILE社に対し,本件商標の全指定商品について本件商標の使用を許諾するものであって,当該契約の有効期間は,平成20年11月20日から同30年9月26日までとされた。
(3)TA-TILE社及び本件商標権者は,遅くとも平成19年から,ファブリックを使用し仕立てたランプシェードを使用した照明器具「Spore」を製造,販売していたが,平成26年11月,シャープ社から,天井設置型LED付きプラズマクラスターイオン発生機(シャープ製イオン発生機。乙7)が販売されたことを知り,当該「Spore」にシャープ製イオン発生機を組み込むことを検討し始め,平成27年10月,シャープ製イオン発生機とランプシェード(メッシュ生地)とからなるLED照明器具付き空気清浄機「Spore」を完成させた(乙6,7,13の1?4,14の1?4)。なお,TA-TILE社らは,同製品にシャープ製イオン発生機を採用するに当たり,シャープ社とは事前確認等を行ってはいないが,製品の安全面及び性能面に関しては,独自に検証を行った(被請求人の主張)。
(4)シャープ製イオン発生機は,LEDライトを搭載し,トイレの床などに付着している「ニオイ原因菌」を除菌し,消臭する,天井設置型のプラズマクラスターイオン発生機であって,人感センサーを搭載し,人が居ないときはLEDライトを消灯して,プラズマクラスターの強運転で除菌・消臭し,人が入ると,LEDライトを点灯しプラズマクラスターは風を押さえた運転に自動的に切り替わる機能を有するものである(甲17,18の1・2,乙7)。
(5)TA-TILE社(発注者は本件商標権者自身である。)は,平成27年10月16日,B氏に対し,本件使用商品に係る広告用の本件DMの作成を100部発注し,同月19日,その納品を受けた(乙2?5)。
本件DM(乙2)は,ポストカードであって,一方の面には,上半分に,暗闇の中で,半透明のランプシェードにより光源部全体が覆いかぶされ,明かりが点灯している状態の本件使用商品の写真が掲載されており,下半分に,「Spore^(TM) New スポア ニュー」の見出しの下,本件使用商品について「空中に漂う胞子をイメージした作品。内側のシステムのみでも使用できます。浮遊感ある照明は,やわらかな空間を演出します。内側の光源システムはイオン発生機能付き。高密度ランプシェードがフィルターの役割をし,空気清浄機としてご使用いただけます。店舗など多灯使いすることで,業務用としてもお使いいただけます。空気中のホコリを吸着したランプシェードは,手洗いが可能です。」との商品説明文,本件使用商品にはサイズ違いの種類として「MM」と「LL」の2種ある旨の記載,「E26 LED電球型イオン発生機」(当該イオン発生機の写真も小さく掲載されている。),「電球込み価格:MM ¥76,000(税別) LL ¥95,000(税別)」,「※ランプシェードのみ取り外して手洗いすることができます。」,「※仕様の変更及びコード延長等のご相談承ります。」,「※LED照明器具付きの空気清浄機です。」等の記載があり,最下行に「有限会社TA-TILE・・・2015年10月現在」の記載がある。他方の面には,全面にわたって上記と同様の商品写真が掲載され,左下部に「Spore^(TM) New」との記載がある(以下,本件DMにおける「Spore」の欧文字部分を「本件使用標章」という。)。
(6)平成29年5月16日ないし同月19日の間でそれぞれ作成された,本件DMの受領証明書(乙8?12)によれば,TA-TILE社(配布者は本件商標権者自身である。)は,本件DMを以下のとおり配布した。なお,被請求人は,当該証明書を作成してもらうに当たり,各受領者に本件審判事件が請求されていることを説明したと述べている。
ア 平成27年10月21日,株式会社三越伊勢丹・伊勢丹新宿店のA氏に,本件DMを頒布用として50部配布した(乙8)。
平成27年10月21日から同年11月2日まで,伊勢丹新宿店の本館5階=リビングデコールにおいては,本件商標権者がデザインした照明器具の展示会「Light Couture by CHIHIRO TANAKA」が開催されており(甲20),当該配布日は,当該展示会の開催初日に当たる。
また,請求人代理人所属のX弁理士及びY弁理士は,平成29年6月6日,伊勢丹新宿店でA氏と面談し(甲27),上記配布が事実であるか確認したところ,A氏は,当時,アシスタントセールスマネージャーとして,本件DMを頒布用として受領後,一般需要者が任意で入手可能な状態に置いたと思うと回答した旨主張している(請求人提出の平成29年6月8日付け口頭審理陳述要領書及び同年8月1日付け上申書)。
イ 平成27年10月27日,上記アの展示会に来場したB氏に,本件DMを頒布用として1部配布した(乙9,被請求人の主張)。なお,B氏は,本件DMの受注者である(乙3,5)。
ウ 平成27年11月2日,上記アの展示会に来場したC氏に,本件DMを頒布用として1部配布した(乙10,被請求人の主張)。
エ 平成27年11月11日,神奈川県川崎市所在のサロン店「LINDA」の代表であるD氏に,本件DMを頒布用として10部配布した(甲21,乙11)。
オ 平成27年11月13日,株式会社桜製作所・桜ショップ銀座店にて,「CHIHIRO TANAKA」の商品を展示するための打合せを行った際,同店のE氏に,本件DMを頒布用として30部配布した(乙12,被請求人の主張)。
2 上記1の認定事実によれば,次のとおり認めることができる。
(1)本件使用商品について
ア 本件使用商品は,平成26年11月に,シャープ社から販売された天井設置型LED付きプラズマクラスターイオン発生機(シャープ製イオン発生機)を,TA-TILE社及び本件商標権者が,従来から販売していたファブリック製のランプシェードを使用した照明器具「Spore」に応用できないかと検討等してきた結果,同27年10月,シャープ製イオン発生機とランプシェード(メッシュ生地)とからなるLED照明器具付き空気清浄機「Spore」として完成させた商品(乙6,7,13の1?4,14の1?4)であると認められる。そして,本件DMの商品説明文によれば,本件使用商品を業務用として使用してもらうことも想定していたことがうかがえるから,本件DMに係る本件使用商品は,本件審判の請求に係る指定商品中の「暖冷房装置,家庭用電熱用品類」に含まれる商品「業務用又は家庭用の空気清浄機」であると認めることができる。
イ 請求人の主張について
(ア)請求人は,本件DMには,明かりを点灯している本件使用商品の写真や照明に関する記載もあるから,本件DMに係る本件使用商品は,「空気清浄機能付き照明用器具」であって,「暖冷房装置,家庭用電熱用品類」に含まれる商品ではない旨主張する。
しかしながら,シャープ製イオン発生機それ自体は,イオンを放出し,除菌・消臭等の空気清浄を主なる目的とする商品であって,人感センサー(人の動きが検知されなくなると一定時間経過後に消灯する。)による照明機能も有しているものである。本件使用商品は,TA-TILE社及び本件商標権者が,シャープ製イオン発生機をランプシェード(メッシュ生地)で覆っても,空気清浄機能及び人感センサーによる照明機能を確保できるとの結論に至って開発した商品であるから,本件使用商品をLED照明付き空気清浄機として販売すること自体は,何ら不自然ではない。そうすると,本件DMにおける本件使用商品の説明文中に,空気清浄機に関する説明だけでなく,照明に関する説明等が付いていたとしても,本件使用商品がLED照明器具付きの空気清浄機であることを否定する理由にはならない。
(イ)請求人は,本件使用商品は,機能面からして,これにシャープ製イオン発生機が組み込まれていると考えることは極めて無理がある架空の品であると主張する。
しかしながら,本件使用商品の主なる目的が空気清浄機能であることを踏まえれば,常時,空気清浄機能が働いてさえいればよく,恒常的に一定範囲を照らす照明機能は必須のものとは解されないし,空気清浄機能についても,独自に検証した結果,一定の効果が認められたというのであるから,本件使用商品が機能的に架空の品であるとまでは認めることができない。このことは,本件使用商品が実際に市場に流通しているか否かによって左右されるものではないし,請求人は当該機能を果たさない商品であることを何ら立証もしていない。
(ウ)請求人は,本件使用商品における「空気清浄機」について使用されている商標は,商標「SHARP」であって,本件商標「Spore」ではなく,仮に,本件使用商品が市場において流通していたとしても,一般需要者が「空気清浄機」として購入を求めるのは,シャープ製イオン発生機であって,「Spore空気清浄機」ではないと主張する。
しかしながら,本件使用商品は,上記アのとおり,シャープ製イオン発生機とランプシェード(メッシュ生地)とからなるLED照明器具付きの空気清浄機なのであって,シャープ製イオン発生機自体を単体で販売するものではないから,請求人の主張は理由がない。
(エ)したがって,請求人の上記主張は,いずれも採用できない。
(2)本件商標と本件使用標章の同一性について
本件商標は「Spore」の欧文字を横書きしてなるものである。
そして,本件使用標章は,「Spore」の欧文字を横書きしてなるところ,その右肩にトレードマーク(商標)を意味すると解される「TM」の欧文字が付されており,本件DMにおける本件使用標章は独立した商標として認識され得るものであるから,本件商標とは同一の商標であると認められる。
(3)使用者について
ア 本件商標権者は,TA-TILE社に対し,本件商標の全指定商品について,平成20年11月20日から同30年9月26日までの間,本件商標の使用を許諾していたことが認められるから(乙1),TA-TILE社は,本件商標の通常使用権者であると認められる。
TA-TILE社は,平成27年10月19日,本件使用商品に係る広告用の本件DMに本件使用標章を付したものを100部作成し,同年10月21日ないし同年11月13日の間において,本件DMを第三者である5名の者に対し,合計92部を頒布用として配布したものと認められる。
したがって,当該行為に係る本件使用標章の使用者は,本件商標の通常使用権者である。
イ 請求人の主張について
(ア)請求人は,本件DMが商標法2条3項8号に係る「頒布」が行われたかは,実際に本件DMが一般公衆の閲覧可能な状態に置かれることを要するところ,被請求人は,この点を立証していないと主張する。
しかしながら,TA-TILE社は,本件DMを第三者である5名の者に対し,合計92部を頒布用として配布したものと認められるから,5名の受領者が,その後,本件DMを頒布ないし一般公衆の閲覧可能な状態に置いていたか否かにかかわらず,当該受領者に対し,商標法2条3項8号に係る「頒布」を行ったということができる。なお,特に,伊勢丹新宿店のA氏(乙8)が本件DMを受領したことについては,請求人代理人所属の弁理士らもA氏と直接会って確認したと述べているところである。
(イ)請求人は,総合百貨店である伊勢丹新宿店のA氏が,本件使用商品の理解が不十分なまま,本件DMを50部受領し,一般需要者が任意で入手可能な状態に置いたというのは極めて不自然であるし,同社の系列店舗で開催された同様の展示販売会(甲12)では,本件DMの配布がないことも極めて不自然である,また,請求人代理人側がA氏と面談した際に,A氏が,突如,請求人に関連する質問をしたことは,予め本件審判について被請求人から協力を求められ受領証明(乙8)したものであって,A氏との通謀が推認される旨主張する。
しかしながら,伊勢丹新宿店のA氏が本件DMを受領した日は,同店で本件商標権者がデザインした照明器具の展示会が開催された初日でもあり,そのような展示会において照明器具「Spore」を応用して開発した新製品である本件使用商品(LED照明器具付きの空気清浄機)「Spore」を広告するために,TA-TILE社が本件DMを頒布用として50部配布したというのは十分考えられることであって,何ら不自然ではない(その後における同種展示会で本件DMが頒布用として配布されていなくても,それ自体は,TA-TILE社の広告方針にすぎず,A氏への配布を否定する理由にはならない。)。また,総合百貨店である伊勢丹新宿店において,当時,アシスタントセールスマネージャーであったA氏が,被請求人と殊更通謀しなければならない合理的な理由はなく,何らの証拠に基づかない請求人の憶測にとどまるものといわざるを得ない。
(ウ)請求人は,本件DMの受領者の中には,本件使用商品を取り扱っていたとは考えられない美容室又は飲食店(乙11,甲21),家具の販売店(乙12,甲22)に携わる者に本件DMを配布したのは不自然である旨,また,頒布用であるにもかかわらず,本件DMを1部しか配布しないのは不自然である旨主張する。
しかしながら,本件使用商品を直接取り扱っていない店舗であっても,その店舗を訪れる顧客等に頒布してほしいとの趣旨で,本件DMを配布することは何ら不自然ではないし,被請求人の展示会に訪れた来場者個人に,TA-TILE社の立場で本件DMを1部配布し,頒布を託すのも全くあり得ないとまではいえない。
(エ)したがって,請求人の上記主張は,いずれも採用できない。
(4)使用時期について
TA-TILE社が本件DMを配布(平成27年10月21日?同年11月13日)した時期は,いずれも本件要証期間内である。
(5)小括
以上によれば,本件商標の通常使用権者であるTA-TILE社は,本件要証期間内である平成27年10月21日ないし同年11月13日の間において,本件審判の請求に係る指定商品中の「暖冷房装置,家庭用電熱用品類」に含まれる本件使用商品(LED照明器具付きの空気清浄機)について,その広告用の本件DMに,本件商標を付して頒布したものと認めることができる。
そして,上記行為は,商標法2条3項8号にいう「商品に関する広告に標章を付して頒布する行為」に該当する。
3 まとめ
以上のとおり,被請求人は,本件要証期間内に日本国内において,本件商標の通常使用権者が,本件審判の請求に係る指定商品について,本件商標の使用をしていたことを証明したものと認められる。
したがって,本件商標の登録は,本件審判の請求に係る指定商品について,商標法50条の規定により,取り消すことができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2018-04-24 
結審通知日 2018-04-27 
審決日 2018-08-30 
出願番号 商願2007-115094(T2007-115094) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (X11)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 豊泉 弘貴 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 田村 正明
平澤 芳行
登録日 2008-09-26 
登録番号 商標登録第5168501号(T5168501) 
商標の称呼 スポア、スポール 
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所 
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