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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない W20
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W20
管理番号 1347809 
審判番号 不服2016-12541 
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-19 
確定日 2018-12-12 
事件の表示 商願2015-29155拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第20類「介護用マットレス,介護用ベッド,介護用マットレス付きベッド」を指定商品として、平成27年3月31日に立体商標として登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由(要点)
原査定は、「本願商標は、上体部分と膝の部分が持ち上がり、ベッドの土台部分の上体側が持ち上がったベッドとマットレスを組み合わせた立体的形状を表示してなるものであるところ、本願の指定商品については、背上げや膝上げ、高さ調節などの介護のための機能がついた商品が製造、販売されている実情がある。そうすると、本願商標は、その商品に採用し得る一形状を表したものと認識される立体的形状のみからなるものといえるから、これをその指定商品中、「介護用マットレス付きベッド」について使用しても、単に商品の形状そのものを普通に用いられる方法をもって表示してなるにすぎない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、提出された証拠を総合勘案するも、本願商標は、商標法第3条第2項に該当するとは認められない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審における手続の経緯
審判長は、請求人に対し、平成29年5月17日付け及び同年9月28日付け審尋で、本願商標は、その指定商品との関係において、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、請求人の提出した証拠によっては、本願商標は、同条第2項に該当するとは認められない旨の見解を示すとともに、本願商標の使用に関する事実について立証すべきことを例示し、回答を求めた。
請求人は、上記審尋に対して、平成29年6月28日受付回答書(以下「回答書(1)」という場合がある。)及び同年11月8日付け回答書(以下「回答書(2)」という場合がある。)を提出した。

4 当審の判断
(1)本願の指定商品について
本願の指定商品は、「介護用マットレス,介護用ベッド,介護用マットレス付きベッド」であるところ、それぞれの指定商品の内容を次のとおりの商品とみて、以下判断する。
ア 「介護用マットレス」:介護用のマットレスのみの商品
イ 「介護用ベッド」:介護用のベッドフレームのみの商品
ウ 「介護用マットレス付きベッド」:介護用のマットレスとベッドフレームが組み合わされた商品
(2)本願商標について
本願商標は、別掲1のとおり、ヘッドボード、フットボード及び上体側が斜めに持ち上がった土台から構成されるベッドフレームに、マットレスを組み合わせた立体的形状からなるものである(ベッドフレーム及びフットボードの一部は木目調である。)。
そして、本願商標は、本願の指定商品中、「介護用マットレス付きベッド」というべきものである。
(3)商標法第3条第1項第3号該当性について
商品「介護用マットレス付きベッド」は、被介護者のベッド上での起き上がりや、ベッドから立ち上がる際の動作を補助、支援し、介護者の負担を軽減することを目的とするもので、その目的を達するための機能を有することが求められるものであるところ、本願商標に表された商品の形状は、当該商品が、その機能を有するものであること及びその機能を発揮させるための当該商品の使用の方法を示すために一般的に採用し得る形状にすぎず、これを見た需要者をして、その機能、使用の方法から予測し難いような特異な形状や特別な印象を受ける装飾的形状等を備えているものとはいい難い。
そうすると、本願商標をその指定商品中、「介護用ベッド,介護用マットレス付きベッド」に使用しても、需要者に対して、介護用ベッド又は介護用マットレス付きベッドとしての機能を備えた形状からなるもの又はその機能を発揮させるための使用の方法を示すものであると認識されるにすぎず、また、指定商品中、「介護用マットレス」に使用しても、介護用ベッドと組み合わせて使用するものとの用途を示すものであると認識されるにすぎず、当該形状が商品の出所識別標識としての機能を果たし得ないものというのが相当であるから、本願商標は、商品の形状、使用の方法及び用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
なお、請求人は、「本願商標(請求人の商品)は、他の一般的な介護用ベッドが有する機能(ベッドの土台の水平上下動機能とベッドの背上げ・膝上げ機能)に加え、ベッドの土台の上体部分が斜めに持ち上がる機能を備えている点で特徴的で、そのため形状が極めて斬新でユニークなものとなっており、自他商品識別機能を有する。」旨主張しているが、この主張が認められない理由は、以下のとおりである。
本願商標に表された商品の形状は、本願の指定商品との関係において、予測し難いような特異な形状や特別な印象を受ける装飾的形状等を備えているものとはいい難い。
そして、商品の形状に係る商標権による保護については、「商品等が同種の商品等に見られない独特の形状を有する場合に、商品等の機能の観点からは発明ないし考案として、商品等の美観の観点からは意匠として、それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定める要件を備えれば、その限りおいて独占権が付与されることがあり得るが、これらの法の保護の対象になり得る形状について、商標権によって保護を与えることは、商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有することができる点を踏まえると、特許法、意匠法等による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり、自由競争の不当な制限に当たり公益に反する」(知的財産高等裁判所 平成18年(行ケ)第10555号判決、平成19年(行ケ)第10215号判決、平成22年(行ケ)第10253号判決 参照)と判示されている。
(4)商標法第3条第2項該当性について
請求人は、「本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するとしても、使用をされた結果、需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識することができるものとなっており、商標法第3条第2項に該当するものである。」旨主張し、証拠として、回答書(2)において、甲第1号証ないし甲第13号証、甲第15号証及び甲第17号証ないし甲第27号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。甲第14号証及び甲第16号証は欠番である。)を提出している。
そして、請求人は、「回答書(2)において提出した証拠は、原審における平成27年9月10日付け手続補足書、当審における同28年8月19日付け手続補足書及び同29年6月29日付け手続補足書により提出した証拠の差替版である。」旨述べているから、当審においては、回答書(2)において提出した証拠により本願商標の商標法第3条第2項該当性を判断することとする。
ア 商標法第3条第2項について
商標法第3条第2項は、商標登録出願された商標が、同条第1項第3号に該当する商標であっても、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できるに至った場合、すなわち、使用により自他商品識別力を獲得するに至った場合には、商標登録を受けることができることを規定するところ、当該商標が、同条第2項に該当するか否かについては、使用に係る商標ないし商品、使用開始時期及び使用期間、使用地域、商品の販売数量、広告宣伝のされた期間・地域及び規模などの諸事情を総合考慮して判断するのが相当であり、その場合、使用に係る商標ないし商品等は、原則として、出願に係る商標及び指定商品等と同一であることを要するというべきである(知的財産高等裁判所平成23年(行ケ)第10359号)。
そこで、上記の観点から、本願商標が使用により自他商品の識別力を獲得するに至っているか否かを判断する。
イ 本願商標が商標法第3条第2項に該当するか否かについて
(ア)請求人の使用に係る商標
本願商標は、上記(2)のとおりの立体的形状からなるところ、請求人が本願商標の使用の事実を示す証拠として提出した甲各号証には、(a)マットレスのないベッド(別掲2 例えば、甲第1号証の5葉目の右上、甲第2号証の3葉目、甲第4号証、以下「A商標」という場合がある。)、(b)人が横たわっているマットレス、枕及び掛け布団付きのベッド(別掲3 例えば、甲第1号証の2葉目下方、甲第13号証の2、以下「B商標」という場合がある。)、(c)マットレスがなく土台部分が水平なベッド(別掲4 例えば、甲第1号証の2葉目右上方、甲第6号証の2、以下「C商標」という場合がある。)、(d)マットレス、枕及び掛け布団が付いているベッド(別掲5 例えば、甲第11号証の25、以下「D商標」という場合がある。)、(e)側面から見た人(又はイラストで表した人)が横たわっているマットレス付きのベッド(別掲6 例えば、甲第15号証の2、甲第18号証の2の2葉目右下、以下「E商標」という場合がある。)(f)マットレスの足元側にカバーを付けたベッド(別掲7 例えば、甲第21号証、甲第22号証、以下「F商標」という場合がある。)及び(g)F商標に車輪が付いたもの(例えば、甲第18号証の1の2葉目、以下「G商標」という場合がある。)が掲載されている(以下、A商標ないしG商標を合わせていうときは、「使用商標」という場合がある。)。
そして、本願商標の形状と使用商標とを比較すると、A商標はマットレスを組み合わせていない点、B商標は人が横たわり掛け布団が付いている点、C商標は土台の上体側が斜めに持ち上がっていない点、D商標は枕及び掛け布団が付いている点、E商標はフットボードの構成態様が特定できない点、F商標はマットレスの足元側にカバーが付いている点、G商標は車輪が付いている点で、本願商標と同一とはいえない。
(イ)請求人の使用に係る商品
本願商標は、その形状から、その使用に係る商品は、本願の指定商品中の「介護用マットレス付きベッド」に限定される。
他方、請求人の使用商標は、上記(ア)の(a)ないし(g)のとおりの各構成態様からなり、その使用に係る商品は、当該各構成態様に相応し、限定されるところ、請求人の使用商標は、いずれも本願商標と同一とはいえないものであるから、請求人の使用に係る商品も、本願の指定商品中の「介護用マットレス付きベッド」と同一とはいえない。
また、本願の指定商品中、「介護用マットレス」については、請求人による商標の使用がみられない。
そうすると、請求人の使用に係る商品は、本願の指定商品と同一とはいえない。
なお、請求人は、回答書(2)において、本願の指定商品について、「『介護用ベッド』に補正したい。」旨述べているが、本願商標は、上記のとおり、その形状から、その使用に係る商品は、本願の指定商品中の「介護用マットレス付きベッド」に限定されるから、仮に本願の指定商品を「介護用ベッド」に補正しても、当該商品は、請求人の使用に係る商品(「介護用マットレス付きベッド」)と同一とはならず、本願商標についての商標法第3条第2項該当性に係る判断を覆すことはない。
(ウ)使用開始時期及び使用期間
甲第3号証は、請求人の2013年11月13日付け「NEWS RELEASE」であり、請求人が在宅向け電動介護用ベッドの新製品を開発し、介護用ベッドの主力製品として、2014年1月6日に発売する予定である旨の記載とともに、A商標が掲載されている。
(エ)使用地域
甲第5号証は、請求人のウェブサイトの「ショールーム・支店のご案内」に関するページであり、請求人が本社(東京)及び主要8都市の支店にショールームを設置し、在宅介護製品や病院・施設向けの製品等を展示している旨の記載があるが、当該ショールームで、本願商標を使用した商品の展示や販売活動等がされていることを示す証拠はない。
(オ)販売実績
甲第6号証の1は、2013年度ないし2017年度の請求人の商品に係る販売数量を製品コード別に一覧にしたものであるところ、上記販売数量の数値の根拠となる資料の提示はなく、同じ製品コード(例えば「KQ-7200」、「KQ-7300」等)が重複して掲載されているなど、その集計方法も不明確である。
また、甲第6号証の1の製品コードに対応する商品を明らかにするものとして提出している甲第6号証の2をみると、本願商標に係る商品と同様の機能を有する製品の種類として、別掲8のとおり、本願商標からマットレスを除いた商品「セーフティーラウンドボード(樹脂製・木目調)」のほか、本願商標とは態様を異にする「セーフティーラウンドボード(樹脂製)」、「木製ボード」及び「木製ボード(ハイタイプ)」があることからすると、「セーフティーラウンドボード(樹脂製・木目調)」にマットレスを付けた商品のみが格別、需要者の目に留まったとはいえない。
(カ)市場占有率
甲第7号証は、「マーケットシェアとは」と題する資料であるところ、審判請求書において、請求人は、当該資料を根拠に、介護ベッドの市場占有率は1位が請求人、2位がB社で、両社で8割近くのシェアを占めていると述べている。
しかしながら、平成29年5月17日付け審尋で述べたとおり、上記資料は、請求人が本願商標の使用を開始したと主張する2013年11月13日以前の2001年ないし2009年の介護ベッドに関する市場占有率を示すものであるから、これからは、本願商標を使用した商品の市場占有率を確認することができない。さらに、上記資料は、その出所も不明である。
また、請求人は、回答書(1)において、「介護ベッドにはベッドが上下するものを含めて種々のものがあるが、本願商標に係るものは、ベッドが上下するのは勿論、斜めに傾斜する点に特徴があり、競合品は市場には存在しない。したがって、本願商標に係る製品の市場占有率(シェア)は100パーセントである。」旨主張しているが、上記(3)のとおり、本願の指定商品については、背上げや膝上げ、高さ調節などの介護のための機能がついた商品が製造、販売されている実情があり、本願商標を「介護用マットレス付きベッド」に使用しても、需要者に対して、当該商品の機能を備えた形状からなるもの又はその機能を発揮させるための使用の方法を示すものであると認識されるにすぎないことからすれば、本願商標を使用した商品と同じ機能を有する商品が市場に存在しないことを前提とした請求人の主張は採用できない。
(キ)広告宣伝
甲第11号証ないし甲第13号証、甲第15号証及び甲第18号証ないし甲第20号証は、2013年11月16日から2017年4月27日までに新聞、雑誌に掲載された請求人の商品の広告の写しであり、甲第21号証及び甲第22号証は、請求人の商品のテレビCMの静止画像であるところ、これらに掲載された商品は、上記(ア)のA商標ないしG商標のいずれかを使用した商品であり、本願商標とは同一とはいえないものであるから、本願商標を使用した商品の広告宣伝であるとは認められない。
また、甲第8号証ないし甲第10号証は、「国際福祉機器展H.C.R.2014」に係る資料であり、請求人が当該展示会に甲第10号証の2に記載された製品番号の商品を展示したことがうかがえるものの、当該製品番号に対応する商品が本願商標と同一の形状からなる商品であることを明らかにする証拠もない。
(ク)判断
上記(ア)ないし(キ)からすると、請求人の使用に係る商標は、本願商標と同一とはいえず、請求人の使用に係る商品は、本願の指定商品と同一とはいえない。
そして、請求人の商品の販売活動及び広告宣伝活動における請求人の使用に係る商標は、本願商標とは同一とはいえないものであり、本願商標を使用した商品の販売活動及び広告宣伝活動を行っていたことを証明する証拠もない。
さらに、請求人は、本願商標を使用した商品の市場占有率も明らかにしていない。
以上のとおりであるから、本願商標は、使用をされた結果、その使用に係る商品(「介護用マットレス付きベッド」)について、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものといえず、その他の指定商品(「介護用マットレス,介護用ベッド」)についてはなおさら、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとはいえない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項に該当しない。
(5)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同法第3条第2項に該当するものではないから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 本願商標 ※色彩及び縮尺は原本参照
(1図)

(2図)

(3図)


別掲2 A商標 ※色彩は原本参照


別掲3 B商標 ※色彩は原本参照


別掲4 C商標 ※色彩は原本参照


別掲5 D商標 ※色彩は原本参照


別掲6 E商標 ※色彩は原本参照


別掲7 F商標 ※色彩は原本参照


別掲8 本願商標に係る商品と同様の機能を有する請求人の製品
※色彩は原本参照



審理終結日 2018-03-02 
結審通知日 2018-03-09 
審決日 2018-03-22 
出願番号 商願2015-29155(T2015-29155) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W20)
T 1 8・ 17- Z (W20)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松田 訓子 
特許庁審判長 大森 健司
特許庁審判官 小松 里美
松浦 裕紀子
代理人 櫻木 信義 

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