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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2017890008 審決 商標

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審決分類 審判 一部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない W03
管理番号 1346172 
審判番号 無効2017-680002 
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-09-15 
確定日 2018-09-10 
事件の表示 上記当事者間の国際登録第1238820号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件国際登録第1238820号商標(以下「本件商標」という。)は、「Marie-Antoinette」の欧文字を横書きしてなり、2014年8月22日にBeneluxにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、2014年(平成26年)12月5日に国際商標登録出願、第3類「Bleaching preparations[decolorants]for cosmetic purposes;perfumery,essential oils,cosmetics,hair lotions;dentifrices;cosmetic soaps,soaps for personal use;douching preparations for personal sanitary or deodorant purposes[toiletries].」並びに第9類、第18類及び第25類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、平成28年11月7日に登録をすべき旨の審決がされ、同29年2月10日に設定登録されたものである。
第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中、第3類「Bleaching preparations[decolorants]for cosmetic purposes;perfumery,essential oils,cosmetics,hair lotions;dentifrices;cosmetic soaps,soaps for personal use;douching preparations for personal sanitary or deodorant purposes[toiletries].」についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第29号証を提出した。
1 請求人の主張する本件商標の無効理由
本件商標は、「Marie-Antoinette」の欧文字を通常用いられる字体で表してなり、その態様に照応した「マリーアントワネット」の称呼及びフランス国王ルイ16世の妃である「マリー・アントワネット」の観念を生じるもので、本件商標はフランス国王ルイ16世の妃の名称そのものを表している。
「マリー・アントワネット」は、故人ではあるものの、フランスはもとより我が国を含めた世界中の人々の間で美を象徴する王妃として今日においても極めて著名であるから、何ら無関係の者に本件商標の登録を認め、その指定商品についての独占排他的使用を認めることは、「マリー・アントワネット」の名誉・名声を毀損するのみならず、同人を敬愛する人々の社会的感情を毀損するばかりか、公正な取引秩序を乱すことは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(1)「マリー・アントワネット」の周知・著名性について
マリー・アントワネットは、フランス国王ルイ16世の妃であり、フランスはもとより我が国を含めた世界中の人々の間で美を象徴する王妃として今日においても極めて著名である。例えば、「フランス王妃列伝」(昭和堂)(甲2)、「フランス革命事典2」(みすず書房)(甲3)では生い立ちから死去に至るまでの詳細が記載されている。
また、「世界史用語集」(山川出版社)(甲4)にも「マリ=アントワネット」の記載があり、「広辞苑」(第六版 岩波書店)(甲5)にはマリー・アントワネットがフランス国王ルイ16世の妃であるとの記載がある。
また、「王妃 マリーアントワネット 美の肖像」(世界文化社)(甲6)及び「最新マリー・アントワネット美の肖像」(世界文化社)(甲7)には、マリー・アントワネット王妃が好んだファッション、装飾品、化粧品、香水、花などの記載があり、「マリー・アントワネット華麗なる激動の人生」(宝島社)(甲8)では、歴代フランス王妃の中で一番有名である点、フランスでは20?30年くらい前からマリー・アントワネットとルイ16世の見直し作業が進んでいて数多くの本が出版されている点が紹介されるとともにマリー・アントワネットをモデルとして数々の肖像画も紹介されている。
さらには、展示会「ヴェルサイユ宮殿監修 マリー・アントワネット展 美術品が語るフランス王妃の真実」(会期:2016年10月25日(火)から2017年2月26日(日))のカタログ(甲9)には、マリー・アントワネットの生誕(1754年8月23日)から死去(1793年10月16日)までの出来事が年表形式で紹介されている。
その他インターネット検索によれば多くのマリー・アントワネット関連ページ・サイトを見つけることができる(甲10?甲13)。
(2)「マリー・アントワネット」に対する国民又は地域住民の認識について
マリー・アントワネットは、フランス革命において処刑されたがゆえに、そのイメージは「浪費家」、「悪女」といったネガティブな認識もあるが、上記各号証に記載のとおり、マリー・アントワネットは、ファッション、装飾品、化粧品、香水、花などを愛した人物であり、我が国においては「美を象徴する王妃」として認識され、現在は歴史の再検証の末に「悲劇の王妃」として再評価がなされている。
このような事情はフランスにおいても同様で、フランスでは20?30年くらい前からマリー・アントワネットとルイ16世の見直し作業が進んでいて数多くの本が出版されている点が紹介されている(甲8、甲14)。
(3)「マリー・アントワネット」の名称の利用状況について
ア 展示会・展覧会について
(ア)「ヴェルサイユ宮殿監修 マリー・アントワネット展 美術品が語るフランス王妃の真実」(http://www.ntv.co.jp/marie/)(会期:2016年10月25日(火)から2017年2月26日(日))
(イ)「マリー・アントワネット生誕250周年 マリア・テレジアとマリー・アントワネット展」主催:NHKサービスセンター(http://limoges-box.jp/det214.htm)
(ウ)「マリー・アントワネット:証拠物件」主催:パリ国立公文書館(http://www.newsdigest.fr/newsfr/archive/art/1315-galeries-nationales-du-grand-palais.html)2008年6月30日まで
(エ)「マリー・アントワネット&伊勢丹フランス展」(http://riemiyata.com/movie/372/)
イ マリー・アントワネットが実際に愛したとされる食器、時計、花(庭園)、菓子、紅茶などに関連して、「マリーアントワネット」もしくは「Marie Antoinette」の語が使用されている(甲15?甲20)。
ウ マリー・アントワネットは、ファッション、装飾品、化粧品、香水、花などを愛し、需要者間には「美の象徴」という認識があるので、「マリーアントワネット」もしくは「Marie Antoinette」の語は、被服、化粧品、香水などに関連して使用されている実情もある(甲21?甲26)。
(4)「マリー・アントワネット」の名称の利用状況と指定商品との関係について
前述のとおり、「マリーアントワネット」もしくは「Marie Antoinette」の語は、マリー・アントワネットにゆかりのある商品等について使用されているが、それら商品が、仮に本件商標の指定商品と同一又は類似の関係にあれば、それら商品についての使用が制限されるといった影響が考えられる。
実際に、フランス法人であるNINA’S INTERNATIONAL社の関連企業である請求人が保有する商標登録第5733567号は、被請求人より無効審判請求を受けている(無効2017-890041)。
なお、NINA’S INTERNATIONAL社は、ヴェルサイユ「王の菜園」唯一の契約企業として、王の菜園の希少な果実を使用した飲料や食品、化粧品等を広く提供する企業である。
(5)出願の経緯・目的・理由について
被請求人は、そのウェブ情報によれば、自身での商標使用を意図せず各国において登録された商標権に基づいて第三者に使用許諾を行うことで収益をあげる、いわばブローカー的企業であることが推認される。
このことからすると、本件商標についても、国際商標登録制度を利用し(67か国の指定国)各指定国において自身は使用する意図がないにも関わらず、第三者による使用が期待される商標として著名な歴史上の人物名である「Marie-Antoinette」を採択したものと推認され、実際にウェブサイト上で使用者を募っている(甲27?甲29)。
(6)「マリー・アントワネット」と被請求人との関係について
被請求人は、オランダの企業であり、マリー・アントワネット王妃、フランス政府、パリ市、ヴェルサイユ宮殿等と何らの関係もない者であると推認される。
2 結語
上記のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その指定商品中、第3類「Bleaching preparations[decolorants]for cosmetic purposes;perfumery,essential oils,cosmetics,hair lotions;dentifrices;cosmetic soaps,soaps for personal use;douching preparations for personal sanitary or deodorant purposes[toiletries].」について無効とすべきものである。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を答弁書において、要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第19号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)「マリー・アントワネット」の周知・著名性について
請求人は、甲第2号証ないし甲第13号証をもって、マリー・アントワネットが、フランス国王ルイ16世の妃であり、フランスはもとより我が国を含めた世界中の人々の間で美を象徴する王妃として極めて著名である旨主張するが、マリー・アントワネットに対する世間の評価は、必ずしも、「美を象徴する王妃」といったポジティブなものに固定・定着しているわけではない。マリー・アントワネットには、「浪費家」とのレッテルや、民衆を蔑視した無思慮な行動で国民の反感を買い、フランス革命中にギロチン処刑された「悪女」としてのイメージも、いまだフランス国民を始め、我が国を含む世界中に根強くあることも事実である。
実際、請求人提出の証拠資料にもかかる実情が顕著に示されている。
甲第2号証では、「・・・彼女のおこなったことをネガティヴに評価すれば、・・・ポジティヴに評価すれば、・・・」とあり、マリー・アントワネットの評価については賛否両論あることが示唆されている。
甲第3号証には、「事実であったにしろ捏造であったにしろ、・・・長いあいだごく凡庸な人だったマリー=アントワネットが、歴史上の犯罪者の神話のなかに堂々と位置を占めるにいたったのはなぜだろう。」とあり、マリー・アントワネットに対して、歴史上の犯罪者としての立ち位置が確立している事実が存することが示唆されている。
甲第4号証では、「派手好きで浪費家。」と記載されている。
甲第8号証には、「フランス革命とマリー・アントワネット(2) なぜフランス国民から嫌われたのか」との標題の章があるように、マリー・アントワネットが実際に「浪費家」、「淫蕩」、「放漫」であったのかは別論にして、フランスにおいてそのような評価が現に存することが示唆されている。
甲第12号証には、マリー・アントワネットに関して、「浪費癖と無思慮な行動で民衆の反感を買い、・・・」(デジタル大辞泉)や「乱費と民衆蔑視で国民の反感を招く。」(大辞林)などの記載がある。
以上のとおり、マリー・アントワネットという人物に関しては、賛否両論あり、いまだその評価は定まっていない。請求人の提示する甲第2号証ないし甲第13号証をもってしては、マリー・アントワネットの名声、評価、顧客吸引力の高さは、何ら証明されておらず、むしろ、これらの証拠から帰納法的に導き出せる事実は、必ずしも、マリー・アントワネットの名声、評価、顧客吸引力は高いとはいえないとの現状である。
なお、2017年10月に、高校と大学の教員らで作る「高大連携歴史教育研究会」が、大学入試で歴史の細かい用語が出題され、高校の歴史授業が暗記中心となっている現状を改善するため、歴史用語の精選案を発表した(乙1)。同研究会の報告書によると、精選案にリストアップされた歴史用語は、「教科書本文に掲載し、入試で必須暗記事項として扱う」用語のみであり、現在の3,500語程度から約半分に削減する提案がなされている。削減された用語は、例えば、「近年の研究で評価が変化し、適切ではないまだは重要ではないと判断された用語」等であり、マリー・アントワネットの名も削除対象となっている(乙2)。
このような我が国における歴史教育を取り巻く状況からも、マリー・アントワネットの名をして直ちに歴史上の人物名として十分な名声、評価、顧客吸引力の高さを有するとするのは失当であることが理解できる。
(2)「マリー・アントワネット」に対する国民又は地域住民の認識について
上記(1)のとおり、マリー・アントワネットという人物に関しては、賛否両論あり、未だその評価は定まっていない。そもそも、マリー・アントワネットの出生地はオーストリア、ウィーンであり、ルイ16世との政略結婚で、フランス王妃となった。該事情も踏まえると、フランス国民全体に「共有財産」のごとく認識されているといえる程度にまで、マリー・アントワネットが、広くフランス国民の敬愛を集めているとはいえないのが実情である。さらに、マリー・アントワネットが、フランス国民全体に「共有財産」のごとく認識されていることを示す証拠は何ら請求人から提出されていない。
(3)「マリー・アントワネット」の名称の利用状況について
ア 請求人は、請求書に示す展示会・展覧会の開催をもって「公益的な機関が当該人物に関連する祭り・イベントの開催、博物館・展示館の運営、当該人物をシンボルとした観光案内等をおこなっているなどの事情」、「それら機関の振興策の下で当該人物名を使用する事業者が多数存在するなどの事情等」に該当すると主張するが、その全てが純粋に公益的な機関によって運営されたものではなく、ましてやそれら機関の振興策の下で行われたものでもなく、請求人の主張は失当である。
(ア)展示会「ヴェルサイユ宮殿監修マリー・アントワネット展」は、主催に「ヴェルサイユ宮殿」とあるが、その他の主催者として、我が国の民間企業「日本テレビ放送網」、「読売新聞社」、「BS日テレ」、「森アーツセンター」が名を連ね、その他、「協賛」、「協力」にも多くの民間企業が加わっている(乙3)。
(イ)「マリー・アントワネット生誕250周年 マリア・テレジアとマリー・アントワネット展」の主催は、我が国の財団法人、「そごう美術館」及び「NHKサービスセンター」であり、フランス国の公益的な機関とは何ら関係ない(乙4)。
(ウ)「マリー・アントワネット&伊勢丹フランス展」は、伊勢丹120周年を記念して小売店の伊勢丹が企画したものである(乙5)。
以上のとおり、上記イベントの開催をもってして、マリー・アントワネットの名称が、そのゆかりの地であるフランス国において観光振興や地域興しのために利用されているということはできず、マリー・アントワネットが、一歴史上の人物としてフィーチャーされ、我が国の民間企業主導で、展示会が企画・開催された、との事実以上のものを証するものではない。
よって、本件商標が当該事情に該当しないことは明らかである。
イ 請求人は、甲第15号証ないし甲第20号証によって、「マリーアントワネット」が、「コーヒーカップ&ソーサー」(甲15)、「デザートプレート」(甲16)、「時計」(甲17)、「バラ」(甲18)、「デザートブッフェ」(甲19)、「紅茶」(甲20)等との関連で使用されている旨、主張している。
しかしながら、これら事実は本件商標が当該事情に該当するか否かの検討に何ら資することはなく、請求人が何の意図をもって甲第15号証ないし甲第20号証を提出したのか不明である。
ウ 甲第21号証ないし甲第26号証についても、当該事情に該当するか否かの検討との関係においては、その有効性・妥当性が不明である。
さらに、「リキッドアイライナー」(甲22)、「ボリュームマスカラ」(甲23)、「密着マスク」(甲24)、「カール&ボリュームマスカラ」(甲25)への「マリー・アントワネット」の語の使用については、そもそも「マリー・アントワネット」が商標的態様としての使用がされているのか甚だ疑問である。甲第22号証ないし甲第25号証に示される商品は、我が国で人気の漫画作品「ベルサイユのばら」の登場人物をフィーチャーした商品パッケージを特徴としており、「マリー・アントワネット」の他にも、「(レディー)オスカル」バージョンもあり(乙6、乙7)、「マリー・アントワネット」は、単に商品の特徴・内容を示しているだけといえ、商標的使用態様ではない。また、甲第26号証に示される「マリーアントワネット」の語の使用も商標的使用態様ではない。
したがって、請求人の提出する甲第15号証ないし甲第26号証によっては、本件商標が、当該事情に該当することは何ら証明されていない。
(4)「マリー・アントワネット」の名称の利用状況と指定商品との関係について
上記(3)で検討したように、本件商標に係る指定商品と同一又は類似の商品・役務への「マリー・アントワネット」又は「Marie-Antoinette」の語の商標としての使用事実はなく、また、フランス国等による観光推進策等において、「マリー・アントワネット」又は「Marie-Antoinette」の語が、本件商標に係る指定商品と同一又は類似の商品・役務について商標として使用されている事実もない。
(5)出願の経緯・目的・理由について
被請求人は、「Marie-Antoinette」の名前をブランドに冠することによって、その名前と評判を高める意図をもって本件商標の登録出願を行ったものであり、当該人物に関連する公益的な施策に便乗し、その遂行を阻害する等公共の利益を損なう等の意図をもってしたものではない。また、本件商標の使用により、公正な競業秩序を害し、社会公共の利益に反するおそれはないことが明らかである。
(6)「マリー・アントワネット」と被請求人との関係について
被請求人は、マリー・アントワネットとは何ら関係のないものではあるが、マリー・アントワネットは1793年に37才で処刑されており、死後、既に200年以上経過している。また、マリー・アントワネットは、ルイ16世との間に4人の子供をもうけたものの、その4人のうち3人は夭折。長女のみ72才まで生きたが、その長女も夫との間に子はおらず、マリー・アントワネットの子孫は現存していない(乙8、甲10)。よって、被請求人による本件商標の使用が、故人の遺族を不当に傷つけたり、遺族の感情を害するおそれは一切ない。
したがって、被請求人による本件商標のその指定商品についての使用が、故人の名声・名誉を毀損したり、同人を敬愛する人々の社会的感情を毀損したり、さらには、公正な取引秩序を乱し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれはないのである。
(7)他の歴史上の人物名の登録例について
そもそも、歴史上の人物名については、かねてより商標として採択され商標登録が実際になされている例が多数ある(乙9?乙19)。これらの登録例からも明らかなように、当該商標が歴史上の人物名からなることのみをもって、直ちに、商標法第4条第1項第7号に該当すると判断されるものではなく、同号に該当するか否かは、上述した(1)ないし(6)を総合的に勘案するとともに、特に、「歴史上の人物の名称を使用した公益的な施策等に便乗し、その遂行を阻害し、公共的利益を損なう結果に至ることを知りながら、利益の独占を図る意図をもってした商標登録出願」と認められるか否かが重要な判断材料となる。
そうすると、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当しないのは明らかである。
2 請求人所有の商標登録に対する無効審判及び本件請求との関係について
請求人の主張のとおり、被請求人は、請求人所有の登録第5733567号商標「マリーアントワネット」に対して、平成29年6月30日付で無効審判(無効2017-890041)を請求している。請求理由は、請求人所有の登録第5733567号商標の優先日が平成26年9月4日である一方で、本件商標の優先日が平成26年8月22日であるところ、両商標は類似の商標であり、同一又は類似の商品を指定するものであるから、登録第5733567号商標は、商標法第8条第1項に違反して登録されたものである、との理由である。
請求人は、請求人所有の登録第5733567号商標がいずれ無効になることを見越して、被請求人による本件商標権に基づいた権利行使を防ぐ目的で、あるいは、単なる意趣返しとして、本件請求をなしたものと推測される。
請求人は、本件請求において、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当する旨、種々主張しているが、万が一、請求人によるこのような主張が妥当なものであるとしたら、該主張は請求人所有の登録第5733567号商標にも同様に当てはまることは明白である。
このことからも、請求人の主張がいかに失当であるか理解できるところである。
3 結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項第1号に該当せず、その登録は無効とされるべきではない。
第4 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係を有する者であることについては、当事者間に争いがないので、本案に入って審理し、判断する。
1 商標法第4条第1項第7号について
商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(1)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(2)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(3)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(4)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(5)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきであると判示されている(知的財産高等裁判所平成17年(行ケ)第10349号判決)。
そこで、以上の観点から本件について検討する。
2 本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)本件商標は、上記第1のとおり、「Marie-Antoinette」の欧文字を横書きしてなるものであるところ、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではないことは明らかである。
(2)また、本件商標を構成する「Marie-Antoinette」の文字は、フランス国王ルイ16世の王妃マリー・アントワネット(1755年?1793年)の氏名を表すものであり、我が国又はフランスにおいて、広く一般に知られているといえる。
しかしながら、請求人が提出した証拠からは、本件商標の登録すべき旨の審決時において、我が国又はフランスの公益的な機関が、地域興しや観光振興のために「Marie-Antoinette」の文字を商標として使用したなどの事実は見いだすことができない。
そうすると、本件商標をその指定商品中、第3類「Bleaching preparations[decolorants]for cosmetic purposes;perfumery,essential oils,cosmetics,hair lotions;dentifrices;cosmetic soaps,soaps for personal use;douching preparations for personal sanitary or deodorant purposes[toiletries].」に使用しても社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するとはいうことはできないし、フランス国若しくはフランス国民を侮辱し、又は国際信義に反するものということはできない。
さらに、本件商標は、他の法律によって、本件商標の使用等が禁止されているものではなく、また、本件の登録出願の経緯に、社会的相当性を欠くところがあるというべき事情も見いだせない。
その他、本件商標が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に当たるといえる具体的な事情を見いだすこともできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、本件審判の請求に係る指定商品について、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定によって、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2018-07-13 
結審通知日 2018-07-18 
審決日 2018-08-06 
審決分類 T 1 12・ 22- Y (W03)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 佐藤 丈晴浜岸 愛 
特許庁審判長 大森 健司
特許庁審判官 中束 としえ
小松 里美
登録日 2014-12-05 
商標の称呼 マリーアントワネット、マリー、マリエ、アントワネット 
代理人 アクシス国際特許業務法人 
代理人 杉村 光嗣 
代理人 杉村 憲司 
代理人 中山 健一 
代理人 西尾 隆弘 
代理人 門田 尚也 
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