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審決分類 審判 全部取消 商53条使用権者の不正使用による取消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y16212425
管理番号 1345037 
審判番号 取消2016-300561 
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2016-08-16 
確定日 2018-10-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第1809362号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第1809362号商標の商標登録を取り消す。 審判費用は,被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第1809362号商標(以下「本件商標」という。)は,「TOP-SIDER」の欧文字を横書きしてなり,昭和53年3月28日に登録出願,第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として,同60年9月27日に設定登録されたものである。
そして,平成18年3月29日に,指定商品を第16類「紙製幼児用おしめ」,第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス」,第21類「家事用手袋」,第22類「衣服綿,ハンモック,布団袋,布団綿」,第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」及び第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,足袋,ショール,スカーフ,足袋カバー,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子」とする指定商品の書換登録がされ,その後,同27年8月11日に,第16類,第21類,第24類及び第25類について存続期間の更新登録がされたものである。
なお,本件商標は,「スペリ トツプ - サイダー インコーポレーテツド」を権利者として設定登録されたものであるが,その後,平成12年5月25日に「株式会社ビイエムプランニング」に本権の移転の登録がされ,同21年8月26日になされた申請により,現在の本件商標権者に登録名義人の表示の変更がされている。

第2 引用商標
登録第5462438号商標(以下「引用商標」という。甲3)は,別掲1のとおりの構成からなり,第25類「履物,運動用特殊靴」を指定商品として,平成23年2月21日に登録出願,同24年1月13日に設定登録され,現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第93号証を提出した。
1 請求の理由
(1)引用商標の周知性について
ア 請求人は,1935年(昭和10年)に靴底に細かい溝を設けた靴を開発し,「TOP-SIDER」と名付けてアメリカにおいて販売を開始した。第二次世界大戦ではアメリカ海軍の支給品として採用され,戦後はケネディ一家が愛用したことにより,アメリカンスタイルの象徴的なアイテムとなった。
その後,「プレッピーハンドブック」に掲載されたことにより,アメリカのアッパーミドルが好む趣味のよい靴として認知され,さらに,1987年(同62年)にデニス・コナー率いるアメリカ代表チームが国際的ヨットレースであるアメリカズカップで優勝して以来,アメリカズカップの公式シューズとなった(甲4)。
このように,「TOP-SIDER」ブランドの靴は,アメリカ全土で広く知られるようになった。
請求人は,若干のバリエーションはあるものの,発売当初から現在に至るまで,一貫して引用商標を請求人が製造・販売する靴に使用してきた。
イ 我が国においては,1971年(昭和46年)に東京・銀座で「TOP-SIDER」の靴の販売が開始され,1977年(同52年)にはファッション誌において紹介されるようになった(甲5)。
そして,1981年(同56年)頃には,ファッション誌のほか,その機能性がヨット専門誌においても紹介され,カジュアルシューズとしてのみならず,ヨット用の靴としても知名度を獲得したことがうかがえる(甲7)。
請求人は,代理店を通じて「TOP-SIDER」(トップサイダー)の靴を40年以上継続的に販売しており,当該商品は,たびたび新聞・雑誌等に掲載され(甲8?甲32),2007年(平成19年)以降に,雑誌「2nd(セカンド)」,「Lightening(ライトニング)」,「GRIND(グラインド)」等に掲載された(甲33?甲69,甲73)。
ウ 上記のとおり,「TOP-SIDER」,「トップサイダー」の靴は,発売から数十年を経てもなお,復刻版が販売されるなど,根強い人気を維持してきた。
したがって,「TOP-SIDER」,「トップサイダー」は,継続的かつ頻繁にファッション雑誌に取り上げられたことにより,歴史あるブランドとして需要者に広く知られていたことは明らかである。
エ 2005年(平成17年)に出版された「海辺のカフカ」(村上春樹著)では,育ちのよい少年のファッションの象徴として「トップサイダーのスニーカー」が描写されている(甲74)。
また,ランダムハウス英和辞典(第2版)には,商標「top-sider」が,請求人の靴を表す「柔らかい皮,布製でかかとが低いゴム底のカジュアルシューズ」として記載され(甲75),ウェブ辞書アルクで「トップサイダー」を検索すると,請求人の靴を表す「トップサイダーのモカシン」の記載がある(甲76)。
インターネットで「TOP-SIDER」を検索すると2004年(平成16年)から現在に至るまで約1,930,000件,「トップサイダー」を検索すると約853,000件のヒットがあった(甲77)。
請求人は,日本において,代理店であるABCマートを通じて順調に売上を伸ばしており,2015年(平成27年)の売上数量は21万9121足であった(売上額はライセンス料のみ)。さらに,アメリカ以外でも世界37か国以上の国で靴を販売している(甲78)。
オ 以上を総合すると,引用商標は,本件商標が付された商品が販売された時には,請求人が製造・販売する靴を表示する商標として取引者・需要者に広く知られていたことは明らかである。
(2)使用に係る商標について
東京都中野区所在の株式会社丸井(以下「丸井社」という。)が販売したシャツ(以下「本件使用商品」という。)には,タグが2種類取り付けられているところ,一方のタグには生成り地を背景に紺色で,もう一方のタグには紺色を背景に白抜きで,「TOP-SIDER」の欧文字とヨットと雲の図形が表示されている。
さらに,本件使用商品の襟下にも同一の欧文字と図形が表示されたタグが取り付けられている(別掲2,甲79,以下「本件使用商標」という。)。
(3)本件商標と本件使用商標の類否について
本件商標は,「TOP-SIDER」の欧文字を横書きしてなり,これからは,「トップサイダー」の称呼が生じ,「TOP-SIDER」には「(組織の)上層部,指導部,首脳部」といった意味があるが,本件商標の指定商品の品質等を直接表すものではないから,需要者にはむしろ造語として認識されるものであり,特定の観念は生じない。
本件使用商標は,「TOP-SIDER」の欧文字を横書きしてなり,「TOP-」と「SIDER」の間を貫くように中心にヨットの図形を配し,全体を雲形の図形で囲む構成からなる。そして,文字部分からは「トップサイダー」の称呼を生じ,図形部分からは「ヨット」及び「雲」の観念を生じる。
本件商標は,文字のみからなる商標であり,本件使用商標は,文字と図形からなる商標であるから,両商標は,外観において異なるものの,文字部分は,ほぼ同一である。
本件商標は,造語であるため,本件使用商標と観念において比較できない。
本件商標と本件使用商標の称呼は,同一である。文字商標を含む商標は,称呼をもって取引されることが多いため,称呼が同一である両商標は,相紛れるおそれのある類似の商標である。
(4)引用商標と本件使用商標の類否について
引用商標と本件使用商標とは,「SPERRY」の文字部分を除けば,「TOP-SIDER」の書体,図形,及び全体の構成が完全に一致する。
被請求人が本件使用商標を独自に採択した結果,文字の書体,図形,及び全体の構成が,引用商標と偶然一致するとは考えられない。
被請求人は,明らかに,本件使用商標を引用商標に近接させたものであり,本件使用商標は,引用商標の特徴をそのまま有しているものである。
したがって,引用商標と本件使用商標とは,相紛れるおそれのある類似の商標である。
(5)使用される商品間の関連性について
本件使用商標は,「シャツ」(本件使用商品)に使用されているものであり,当該商品は,本件商標の指定商品中,第25類「洋服」に含まれる。
引用商標は,請求人の「靴」の表示を表示するものとして需要者等に広く知られているところ,商品「靴」と「洋服」は,いずれも第25類に属する商品である。
「靴」と「洋服」は,いずれも身に着ける商品であり,同じブランドで統一したいという消費者の要望に応じて同じ店舗で販売するといったことも通常行われ,実際に請求人は,アメリカにおいて,「靴」,「被服」,「ベルト」等を同時に販売している。
したがって,本件使用商品と引用商標の使用に係る商品「靴」とは,その需要者において,互いに密接な関連性を有する商品といえる。
(6)出所の混同について
請求人は,80年以上一貫して同じ書体で表した「TOP-SIDER」及び同じデザインのヨットと雲の図形を使用してきたが,それ以外の部分にバリエーションを加えて使用することがあった。
また,請求人の名称は,「Sperry Top-Sider LLC」であり,「TOP-SIDER」は,請求人のハウスマークの一部をなすものである。
さらに,本件使用商品が販売されたウェブサイトでは,本件使用商品を「トップサイダー 1935年にアメリカで誕生して以来,『デッキシューズ』といえばこのブランド。」と,あたかも請求人が販売しているかのような表示を用いて混同を惹起していた(甲81)。
引用商標の著名性及び引用商標と本件使用商標の類似の程度に照らすと,被請求人が引用商標に極めて近似した本件使用商標を「洋服」に使用すれば,本件使用商品が,請求人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品ではないかと,その出所について誤認混同されるおそれがある。
(7)本件商標の通常使用権者について
本件商標に係る商標権には,専用使用権又は通常使用権の設定登録はされていないが,本件使用商品を販売した丸井社からの平成25年2月8日付け回答書によれば,本件使用商品は,岐阜県岐阜市所在の株式会社水甚(以下「水甚社」という。)から購入したものである(甲82)。
そして,被請求人は,平成25年2月4日付け回答書において,水甚社に本件商標を使用許諾したと述べている(甲83)。
したがって,本件商標の通常使用権者は,本件使用商品を製造・販売したものであり,これは,本件使用商標の使用に該当する。
(8)本件商標権者の善意及び監督義務について
本件商標権者は,水甚社に本件商標の使用許諾したものであり,同社の本件使用商標の使用を認識していたことは明らかであり,むしろ積極的に荷担していたと推認される。
なお,被請求人は,平成25年2月4日付け回答書において,請求人が引用商標に係る図形の使用を許諾したと述べているが,そのような事実はない。
確かに,請求人は,本件商標に係る商標権を平成12年に株式会社ビイエムプランニング(被請求人旧社名)へ譲渡したが,これは,被請求人が日本において先取り的に取得した商標登録第829144号を取り戻すために,やむを得ず譲渡に応じたものである。
被請求人が請求人の代理店又は使用権者であったことはなく,被請求人が請求人と同視されるような本件商標の使用方法を,請求人が容認したという事実はない。
商標法第53条は,使用許諾制度の濫用による一般需要者への弊害防止の規定であり,被請求人が請求人から本件商標を譲り受けた経緯があるからといって,出所の混同を生じさせるような使用が容認されるものではない。
(9)除斥期間について
本件使用商品は,2013年(平成25年)1月28日に販売されたものであるから,使用の事実がなくなった日から5年は経過していない(甲84)。
2 答弁に対する弁駁
(1)引用商標の周知性について
被請求人の主張は,以下の理由により,根拠のないものである。
ア 請求人は,引用商標以外に,文字のみの「SPERRY TOP-SIDER」,「TOP・SIDER」,「スペリートップサイダー」,「トップサイダー」を使用している。
しかしながら,引用商標は,図形と文字の結合商標であるから,その文字部分のみをもって雑誌等において紹介されることは自然である。
したがって,文字のみの商標が使用されていることは,引用商標があまり使用されていないことの根拠とはならない。
イ 引用商標が掲載された雑誌は,発行部数が極めて少ないマイナーな雑誌であり,これらの雑誌の購読者は日本の全人口に比べて極めて少ない。
しかしながら,引用商標の雑誌の購読者が日本の全人口に比べて極めて少ないとしても,そのことをもって,引用商標が需要者に周知でない根拠たり得ない。
引用商標の周知性は,日本の全人口ではなく,引用商標の主たる需要者を対象として判断されるべきである。
「TOP-SIDER」ブランドは,1970年代のトラッドファッションの流行とともに,ファッションに興味のある需要者層に広く知られるようになった。その当時から使用されていた引用商標は,当時若者であり,現在50?60代の需要者に記憶されていると考えることが自然である。
したがって,現在,引用商標を使用した商品の需要者は,1970年代のトラッドファッションブームを記憶している者が中心であると考えられる。
請求人が提出した証拠は,主にそういった需要者に向けた雑誌であり,雑誌の発行部数が多いといえない場合であっても,引用商標が需要者に広く知られることはあると考える。
周知性の判断には,取引の実情が考慮されるべきであり,主な需要者の範囲が周知性に与える影響が大きいことは,明らかである(甲85?甲88)。
ウ 請求人は,「セイルボートの図形」以外の図形も,使用したことがある。
しかしながら,ファッション業界において様々な図形のロゴを使用することは通常行われることであり,請求人は,新しい図形を使用することがあっても,「セイルボートの図形」の使用を中止することなく継続して使用してきた。
請求人は,創業者であるポール・スペリーが,1935年(昭和10年)に靴底に溝を設けたヨットの甲板でも滑らない靴を発明したことから始まった会社である。
滑らない靴が請求人の原点であり,「ヨット」が請求人の商品を象徴する図形であることから,「セイルボートの図形」を,1935年(同10年)の創業時から請求人の商品を表示する特別な商標として採用したものであり,当該図形は,請求人の歴史及びアイデンティティを表すものでもあるため,他の図形を採用することがあっても,廃止せず,現在に至るまで大切に使用し続け,現在も,靴底に溝を設けた靴に使用している(甲89?甲91)。
エ 「トップサイダー」又は「TOP-SIDER」は,2011年(平成23年)ないし2016年(同28年)の「ファッション企業・ブランドガイド」(繊研新聞発行)に掲載されていない。
しかしながら,「ファッション企業・ブランドガイド」に掲載されていないことのみをもって,引用商標が周知著名でないことを証明するものではない。
オ 「SPERRY TOP-SIDER」の日本における靴の販売数量が少ない。
しかしながら,「セイルボートの図形」及び「SPERRY TOP-SIDER」の欧文字を使用した商品「靴」は,本件商標の使用時である平成25年1月の数年前から日本において継続的に販売されていた。
2010年(平成22年)から2012年(同24年)までの「セイルボートの図形」及び「SPERRY TOP-SIDER」の欧文字を使用した「靴」のみの売上数量は,5万2572足で,売上額は,3億1499万9165円である(甲92)。
また,アメリカにおける「セイルボートの図形」を使用した「靴」のみの売上数量及び売上額は,2012年度(平成24年度)ないし2017年度(同29年度)において,合計69万1870足で,2587万594米ドルである。
日本,アメリカを含む全世界における「セイルボートの図形」を使用した「靴」のみの売上数量及び売上額は,2012年度(平成24年度)ないし2017年度(同29年度)において,合計99万2507足で,3563万167米ドルである。
「セイルボートの図形」を使用した「靴」が市場に出回っていた数量から考えて,需要者が,本件使用商品を,請求人が販売するものと混同した可能性は高いと考える。
(2)本件商標についての経緯について
「TOPSIDER」の欧文字からなる登録第829144号商標は,被請求人が,アメリカにおいて周知であった請求人の商標を,日本で登録されていないことを奇貨として先取り的に登録したものである。
当時は,商標法第4条第1項第19号がなかったため,請求人は,「被服類」について,本件商標を登録し,登録第829144号商標を取り戻すためにやむを得ず「商標譲渡契約」(乙2の1,その訳文は乙2の2。以下「本件譲渡契約」という。)を結んだものである。
本件譲渡契約には,「セイルボートの図形」の使用に関して何ら記載はなく,請求人と被請求人との本件譲渡契約と,「セイルボートの図形」の使用許諾とは何ら関係がない。
すなわち,本件譲渡契約があったことにより,請求人が被請求人に「セイルボートの図形」の使用を許諾したということにはならない。
被請求人が,本件譲渡契約の際に,米国代理人が述べたと主張する内容について,請求人は,全く認識しておらず,何の記録も残っていなかった。
本件譲渡契約の際に,請求人が,被請求人に口頭で「セイルボートの図形」の使用を許諾したという事実はない。
平成14年に当時の代理人であった日本弁理士とのやり取りについて,請求人は,当該弁理士から一切報告を受けていないし,「セイルボートの図形」の使用を許可してもいない。当該弁理士が請求人の承諾なしに応答したものである。当該弁理士には「セイルボートの図形」の使用を許諾する権限がないため,当該弁理士の認識には何の効力もない。
よって,請求人が被請求人に「セイルボートの図形」の使用を許諾したという事実はない。
請求人は,「セイルボートの図形」の使用を許諾していないにも関わらず,丸井社がウェブサイトにおいて「トップサイダー 1935年にアメリカで誕生して以来,『デッキシューズ』といえばこのブランド。」と記載し,「セイルボートの図形」を使用していたため,請求人の業務と混同するおそれがあると判断して通知書を送ったものである。
正当な使用であるとの被請求人の主張を受け,そのような事実があるかどうか,誠実に社内調査を行ったが,確認が取れなかったため,使用差し止めを要求したものである。
丸井社が「セイルボートの図形」の使用を中止したのは,通知書を受け取ったからであって,請求人の使用差し止めの要求がなければ使用を継続していたと思われる。
(3)むすび
本件使用商標と引用商標とは,比較的小さく記載された「SPERRY」の部分を除けば完全に同一である。需要者が「SPERRY」の部分を見落として請求人の商品であると混同した可能性は,極めて高い。
商標法第53条は,無責任な商標権者及び使用権者に対する制裁を課することとして,使用許諾制度の濫用による一般需要者への弊害防止の手段としている。
本件商標を取り消すことなく,被請求人が本件商標を所有し使用する場合,今後も需要者の利益が害されるおそれがあり,法の趣旨に照らせば,本件商標は,取り消されるべきである。

第4 被請求人の主張
被請求人は,本件商標の登録を維持する,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第15号証(枝番号を含む。)及び参考資料を提出した。
1 答弁の理由
(1)引用商標の周知性について
請求人は,引用商標は現在も周知著名であり,引用商標と類似の商標を引用商標の指定商品ではなく,「被服」について使用しても,取引者又は需要者は,出所の混同を引き起こすおそれがある,と指摘している。
しかしながら,引用商標は,本件使用商標の使用時である平成25年1月当時,周知著名な商標とはいえない。
請求人は,引用商標が1979年(昭和54年)より現在まで周知著名である旨主張しているが,甲第4号証ないし甲第77号証のうち,引用商標が記されたものはわずか10件であり(甲7,甲37,甲42,甲45,甲49?甲51,甲65?甲67),そのうち,甲第50号証及び甲第66号証は,従来の「セイルボートの図形」と多少異なる図形であり,また,甲第42号証及び甲第67号証は,「セイルボートの図形」の一部が表示されているようではあるが,「セイルボートの図形」かどうかは,不明である。
他の書証は,文字のみの「SPERRY TOP-SIDER」,「TOP-SIDER」,「スペリートップサイダー」,又は「トップサイダー」である。
このように,引用商標は,あまりメディアに公開されていない。
また,これらの書証のうちの雑誌「2nd」(甲33?甲53),「Lightning」(甲54?甲56),「GRIND」(甲57?甲60),「MEN’S NON-NO」(甲61,甲62),「Begin」(甲63,甲64),「Free Easy」(甲65),「Men’s EX」(甲66),「Safari」(甲67),「GQ JAPAN」(甲68),「Gainer」(甲69),「BE-PAL」(甲70),「FINE BOYS」(甲71),「ALL about USA」(甲72)は,発行が2009年(平成21年)ないし2013年(同25年)であるが,これらの雑誌の発行部数は,多いもので約16万部,少ないもので約4万部であり,いずれも発行部数が極めて少ないマイナーな雑誌である。
そして,これらの雑誌を購読する者は,我が国の1億人の国民の数から考えても極めて少ない数といえる。
また,これらの雑誌の中には,上記の「セイルボートの図形」ではない図形が付されているものがある(甲51)。これは,後述するように,請求人から被請求人に本件商標が譲渡された際,請求人側の代理人から,請求人は今後「セイルボートの図形」は使用せず,新しい図形を使用することを告げられたことと符合する。
このように,請求人は,1935年(昭和10年)以来,一貫して「セイルボートの図形」を使用していたわけではない。
また,2011年(平成23年)ないし2016年(同28年)の「ファッション企業・ブランドガイド」(繊研新聞社発行)には,「トップサイダー」又は「TOP-SIDER」ブランドは掲載されていない。
さらに,請求人が提出した請求人の「SPERRY TOP-SIDER」の我が国における靴の売上数量(甲78)をみても,2013年(平成25年)が1万3689足,2014年(同26年)が16万4401足,2015年(同27年)が21万9121足であり,上記本件商標の使用時の2013年(同25年)は,僅か1万3千足と少ない。
このような状況を考え合わせると,我が国においては,平成25年当時,請求人の引用商標が,その指定商品を越えて周知著名であるとはいえない。
(2)本件商標についての経緯について
ア 本件商標は,請求人の前身であるスペリートップサイダーインコーポレーテッド(以下「スペリートップサイダー社」という。)が,被服類等を指定商品として昭和53年に登録出願し,同60年9月27日に登録されたものである。
一方,被請求人は,「履物」を指定商品とした登録第829144号「TOPSIDER」及び登録第2213223号「NEW TOPSIDER」を所有していた。
イ このような状況で,上記スペリートップサイダー社の商標を管理しているストライドライト社(STRIDE RITE CORPORATION)の代理人である日本弁理士から,本件商標の商標権を被請求人に譲渡することを条件に,被請求人所有の上記2件の登録商標の譲り受けの申込みがあり,交渉の後,平成12年4月1日に本件譲渡契約が成立した。
その際,請求人側所有の登録第1768761号商標「SPERRY TOP-SIDER+セイルボート図形」第17類,登録第1768762号商標「SPERRY TOP-SIDER」第17類及び登録第3206150号商標「SPERRY+セイルボート図形」第25類の合計3件の商標権を放棄することも契約に盛り込まれた。
また,この本件譲渡契約は,ストライドライト社の米国代理人が来日し,上記の日本弁理士の立会いの下に日本で実行された。
そして,本件譲渡契約の際,上記米国代理人は,被請求人に対し,日本において,被請求人が商品を展開する上で「TOP-SIDER」ブランドのイメージを損なわないよう「セイルボート」について同じ図形を使用するよう依頼があり,また,創業者である「ポール スペリー」の名前は「靴」での展開のみに使用したいと要望があり,これを,被請求人は了承した。
また,その際,上記米国代理人から,請求人は,今後,従来の「セイルボートの図形」は使用せず,新しい図形を使用することを告げられた。
そして,本件商標権は,平成12年5月25日に被請求人に移転されたものである(甲2)。
ウ その後,被請求人は,本件商標について,平成14年に株式会社バイスコーポレーション(以下「バイスコーポレーション社」という。)とライセンス契約を結び,同社が「セイルボートの図形付きのTOP-SIDER」商標をカジュアルウエアに使用したところ,請求人の代理人であった日本弁理士から同社に質問状があった。
これに対し,被請求人は,当該日本弁理士等に,バイスコーポレーション社は,当社が許諾したライセンシーであることを説明し,後日,当該弁理士から謝罪があった。このことは,当時の請求人の日本における代理人は,被請求人が本件商標の譲り受けの際,いわゆる「セイルボートの図形」を使用しても良いと認識していたことを意味する。
エ 平成25年1月に,被請求人が使用権を与えた水甚社及び同社から商品を仕入れて販売していた丸井社に対して,本件商標の使用差し止め及び損害賠償請求の通知書が来た。
水甚社による本件商標の使用は,被請求人が,同社に対して,本件商標の本件譲渡契約時の口頭による「セイルボート図形」を使用するようにとの請求人側の依頼によるものであり,当該図形の使用を含めて使用を許諾したものである。
そこで,被請求人は,水甚社及び丸井社に代わり,請求人に答弁し,これらの使用は,請求人との本件譲渡契約に基づくものであり,正当な使用である旨を主張した。
また,その当時の請求人の管理会社のストライドライト社の米国代理人にも,上記の点を確認するよう依頼した。
しかしながら,請求人は,ストライドライト社の代理人との連絡が取れない旨を被請求人に通知し,被請求人側の本件商標の使用差し止め等を求めた。
一方,被請求人は,水甚社に本件譲渡契約の経緯を説明したが,上記通知書の到達後,同社は,本件商標を付した被服の生産を中止し,また,丸井社は,販売を止めた。
この後,これに対する請求人からの要求は一切なく,今日まで3年が経過した。一方,被請求人及び通常使用権者は,上記請求人の通知書を受けて以来,請求人指摘の「セイルボートの図形」は一切使用していない。
(3)被請求人及び使用者の故意について
上述のように,被請求人は,請求人の上記差し止め等を要求した通知書を受けるまでは,本件商標を使用するに際し,請求人の引用商標の「セイルボートの図形」を付して使用することは,請求人が了承している事項と思料しており,請求人からの本件商標の譲り受け以来,誠実に本件商標を使用していたものである。
そして,平成25年1月に上記通知書を受けた際も,誠実に対応し,かつ,請求人の要望によりやむなく上記使用を中止したものである。
それ故,被請求人及び通常使用権者は,本件商標の使用が,引用商標と誤認,混同を生ずるとの認識はなかったものである。
したがって,請求人が指摘している水甚社及び丸井社の本件商標の使用は,商標法第53条第1項の不正使用には明らかに該当しないものである。
(4)結語
以上のとおり,請求人の主張する引用商標は,平成25年当時において,周知著名とはいえないものであり,また,万一,著名であったとしても,被請求人等において,引用商標と誤認,混同を生ずることの認識は,なかったものである。
2 答弁書(第2回,平成29年9月19日付け)
(1)提出された雑誌について
提出された雑誌の発行部数が極めて少ない点について,請求人は,「引用商標の需要者が現在50?60代の,トラッドファッションブームを記憶している者が中心であり,請求人の提出した雑誌は主にそういった需要者に向けた雑誌であり,雑誌の発行部数が少ない場合であっても,引用商標が需要者に広く知られることはあると考えられる。周知性の判断には取引の実情が考慮されるべきであり,主な需要者の範囲が周知性に与える影響が大きい。」と主張している。
しかしながら,提出された雑誌,例えば「2nd」は男性ヤングアダルト向けのファッション誌であり,30?40代が主な対象であるから,50?60代が主に見る雑誌とは到底思えない。
また,引用商標の「デッキシューズ」は,ヨットやボートの甲板用のシューズであるが,若者から中年まで一般男性向けのカジュアルシューズとして購買されているものであり,50?60代のトラッドファッションブームを記憶している者が中心とは思えない。需要者の年齢層も若い人が中心であると思われる。
引用商標の「デッキシューズ」の需要者は,判例のように,特定の者に限られものではない(甲85?甲88)。
(2)販売数量について
請求人の「SPERRY TOP-SIDER」の我が国における靴の売上数量(甲92)をみても,2010年(平成22年)3月ないし2011年(同23年)2月の1年間で約9800足,2011年(同23年)3月ないし2012年(同24年)2月で1万2075足,2012年(同24年)3月ないし2013年(同25年)2月で3万716足であり,年平均1万7530足は,極めて少ない。
そして,全世界において,2012年(同24年)ないし2017年(同29年)の約5年半の売上数量の平均は年18万足であり,売上高は年7.1億円である。ちなみに,靴の「REGAL」を販売するリーガルコーポレイションの年間売り上げは,363億円である(ネット調べ)。

第5 当審の判断
1 商標法第53条第1項について
商標法第53条第1項の規定に基づく商標登録の取り消しは,(1)専用使用権者又は通常使用権者が,(2)指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について,(3)登録商標又はこれに類似する商標の使用をし,(4)商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずる行為を行ったことを要件とするものである。
2 本件商標と本件使用商標との類似性について
(1)本件商標について
本件商標は,「TOP-SIDER」の欧文字を横書きしてなり,これからは「トップサイダー」の称呼を生じ,当該欧文字は,「[組織の]上層部,[政府の]首脳部」等の意味を有する英語(甲75)であるから,「上層部,首脳部」の観念を生じるものである。
(2)本件使用商標について
本件使用商品には,本件使用商標が表示された襟タグ及び紙タグ等が取り付けられ(甲79),2013年(平成25年)1月28日に印刷された「マルイウェブチャネル」のウェブサイトにおいて,引用商標の由来といえる「トップサイダー(TOP-SIDER)」の表示の下,「トップサイダー 1935年にアメリカで誕生して以来,『デッキシューズ』といえばこのブランド。」の記載とともに紹介された(甲81)。
そして,本件使用商標は,別掲2のとおり,雲を想起させる図形の内側に,「TOP-」の欧文字と,ヨットの図形及び「SIDER」の欧文字とを表示した構成からなるものである(甲79,甲81)。
本件使用商標は,上記のとおり,雲を想起させる図形及びヨットの図形と,「TOP-」及び「SIDER」の欧文字からなるところ,その構成中,「TOP-SIDER」の欧文字部分は,上記の図形中に顕著に表されており,これからは「トップサイダー」の称呼を生じ,当該欧文字は「上層部,首脳部」の意味を有するものであるから,「上層部,首脳部」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と本件使用商標の類否について
本件商標は,「TOP-SIDER」の欧文字を横書きしてなり,本件使用商標は,別掲2のとおり,その構成中に「TOP-SIDER」の欧文字を含むものであるから,本件商標と本件使用商標とは,構成全体の外観において相違するとしても,「TOP-SIDER」の欧文字の外観,「トップサイダー」の称呼及び「上層部,首脳部」の観念を同じくする,類似の商標というべきである。
3 本件商標の使用者及び本件使用商品について
本件使用商標が表示された襟タグ及び紙タグ等が取り付けられた本件使用商品(甲79)は,丸井社が水甚社から仕入れた商品(甲82)であって,本件商標権者は水甚社に本件商標の使用権を与えたものであるから(甲83),水甚社は,本件商標の通常使用権者と認められる。
そうすると,本件使用商標は,本件商標の通常使用権者である水甚社が本件使用商品に付し丸井社に譲渡し又は引き渡したといえる。
そして,本件使用商品は,本件商標の指定商品中の第25類「ワイシャツ類」に含まれる商品である。
4 混同のおそれについて
(1)引用商標と本件使用商標との類似性の程度について
引用商標は,別掲1のとおり,雲を想起させる図形の内側に,「SPERRY」の欧文字をやや小さく表し,その下に「TOP-」の欧文字と,ヨットの図形及び「SIDER」の欧文字とを配した構成からなるものである。
そして,引用商標は,その構成中の雲を想起させる図形及びヨットの図形と,「SPERRY」,「TOP-」及び「SIDER」の欧文字とは,「SPERRY」の欧文字部分は特定の語義有さない一種の造語といえるのに対し,「TOP-」及び「SIDER」の欧文字部分は「上層部,首脳部」の意味を有するものであるから,それぞれ欧文字部分と図形部分とは観念上の結びつきはなく,また,「TOP-」及び「SIDER」の欧文字部分は構成上顕著に表されているものであるから,当該欧文字部分から「トップサイダー」の称呼を生じ,「上層部,首脳部」の観念を生じるものである。
引用商標と本件使用商標とは,「SPERRY」の欧文字の有無の差異を有するものの,別掲1及び2に示すとおり,雲を想起させる図形と,その内側に表した「TOP-」の欧文字,ヨットの図形及び「SIDER」の欧文字の態様を同じくし,かつ,その配置も同じくするものであるから,外観において,酷似する。
また,本件使用商標と引用商標とは,「トップサイダー」の称呼及び「上層部,首脳部」の観念を同じくする。
したがって,引用商標と本件使用商標とは,外観において酷似し,称呼及び観念を同じくする類似の商標であって,その類似性の程度は,極めて高いものと認められる。
(2)本件使用商品と引用商標が使用された商品との関連性の程度について
本件使用商品「シャツ」は,「上半身に着る肌着,ワイシャツなど,中着または上着として着るものをいう。」であるから,需要者は,一般消費者である。
他方,引用商標が使用された商品「靴(デッキシューズ)」は,「甲板(デッキ)などで履く靴。」(いずれも広辞苑第六版)であるが,当該商品は,一般のファッションに関する商品「靴」として紹介されているから(甲5,甲6,甲34,甲38,甲41,甲45,甲47,甲50他),その需要者は,一般の需要者である。
そうすると,本件使用商品及び引用商標が使用された商品は,いずれも身につけて日常に用いる服飾関連の商品であって,その需要者は,いずれも一般消費者であるから,その用途及び品質を異にするものの,販売場所及び需要者を共通にする関連性の高い商品と認められる。
(3)引用商標の独創性及び周知性の程度について
ア 独創性の程度について
引用商標は,その構成中の「TOP-SIDER」の欧文字部分は,「[組織の]上層部,[政府の]首脳部」等の意味を有する英語(甲75)であるから,独創性を有するものではないが,その構成中の,「SPERRY」の欧文字部分,雲を想起させる図形及びヨットの図形からなる全体の構成は,独創性が高いものといえる。
周知性について
(ア)請求人の主張及び同人が提出した証拠によれば,以下のとおりである。
請求人は,1935年(昭和10年)に靴底に細かい溝を設けた商品「靴(デッキシューズ)」を開発し,「TOP-SIDER」と名付けてアメリカにおいて販売を開始した(甲4,甲27,甲28,甲37,甲42,甲45,甲47,甲48,甲57,甲65,甲67)。
そして,日本国内においては,請求人の商品「靴(デッキシューズ)」は,1971年(昭和46年)頃に銀座の履物店で展示され(甲48),1974年(同49年)には日本国内での流通が開始された(甲65)。1988年には株式会社アシックスが販売を行い,1993年(平成5年)には,アキレス株式会社が日本国内独占販売権を取得し販売を開始した(甲14)。その後,2011年(平成23年)9月には,米国を中心にシューズ専門店を展開するコレクティブ・ブランズが日本における代理店契約を締結し,ABCマートが販売を行った(甲28?甲31)。
(イ)請求人が提出した新聞及び雑誌等(甲5?甲72)によれば,引用商標(これと社会通念上同一といえる商標を含む。)が,雑誌「POPEYE」の1977年7月号(甲5),雑誌「The KAZI」(1981年(昭和56年)4月1日発行,甲7),雑誌「2nd」の2007年(平成19年)7月1日発行(甲34),2009年(同21年)7月号の(甲42),同年8月号(甲43),2010年(同22年)7月号(甲45),2011年(同23年)8月号(甲49),同年9月号(甲50)及び2012年(同24年)7月号(甲51),雑誌「Free&Easy」の2010年(同22年)6月号(甲65),雑誌「MEN’S EX」の2011年(同23年)8月号(甲66),雑誌「Safari」2012年(同24年)6月号(甲67)に,商品「靴(デッキシューズ)」の内底に表示され,又は商品の紹介に表示された。
(ウ)上記甲各号証中には,「SPERERY TOP-SIDER」(甲34,甲42,甲45,甲47,甲51,甲52,甲54,甲57,甲59,甲60,甲62,甲67),「SPERERY TOP SIDER」(甲50,甲56),「TOP SIDER」(甲37,甲45,甲58,甲59,甲66,甲68,甲72),「トップ・サイダー(トップサイダー)」(甲5?甲8,甲11,甲13,甲20?甲25,甲33?甲37,甲39?甲41,甲43,甲44,甲46?甲48,甲50?甲52,甲55,甲57?甲59,甲61,甲66,甲70,甲72),「スペリートップサイダー」(甲10,甲14?甲19,甲26?甲32,甲38,甲42,甲49,甲50,甲52,甲53,甲56,甲60,甲64,甲65,甲67,甲69,甲71)の欧文字又は片仮名が,商品「靴」の紹介等に使用された。
(エ)請求人は,引用商標を付した商品「靴」の売上について,日本においては,平成22年から同24年まで,5万2572足,3億1499万9165円である旨,全世界においては,2012年(同24年)から2017年(同29年)まで,99万2507足,3563万167米ドルである旨述べた。
イ 上記アによれば,請求人は,1935年(昭和10年)に,商品「靴(デッキシューズ)」に,「TOP-SIDER」と名付けてアメリカにおいて販売を開始したものであり,当該商品は,1971年(同46年)頃から我が国に輸入され,その後,輸入代理店の変更があったものの,継続して販売されてきたものということができる。
そして,上記請求人の商品「靴(デッキシューズ)」には,引用商標(これと社会通念上同一といえる商標を含む。)が靴の内底に表示され,2007年(平成19年)7月以降,「SPERERY TOP-SIDER」,「SPERERY TOP SIDER」,「トップ・サイダー(トップサイダー)」,「スペリートップサイダー」などのように記載され,上記(1)アに記載の雑誌,新聞等に掲載され広告された。
また,請求人の商品「靴(デッキシューズ)」の売上の一部は,平成22年から同24年までの3年間において,約52万足であり,全世界における2012年(同24年)から2017年(同29年)までの6年間において,約100万足である。
そうすると,引用商標は,長年にわたって,請求人の商品「靴(デッキシューズ)」について使用をされた結果,本件使用商標が付されたシャツの写真が,「マルイウェブチャネル」のウェブサイト掲載された2013年(平成25年)1月28日(上記2(2))において,請求人の業務に係る商品「靴(デッキシューズ)」を表示するものとして,我が国の取引者及び需要者の間で,一定程度,知られていたものということができる。
(4)混同を生ずるものをしたかについて
ア 引用商標は,独創性の高いものであり,長年にわたり,請求人の商品「靴(デッキシューズ)」について使用をされた結果,本件使用商標が付されたシャツの写真が,「マルイウェブチャネル」のウェブサイト掲載された2013年(平成25年)1月28日時点において,請求人の業務に係る商品「靴(デッキシューズ)」を表示するものとして,我が国の「靴(デッキシューズ)」の取引者及び需要者の間で,一定程度,知られていたものということができる。
そして,本件使用商標は,引用商標に酷似する商標と認められ,これらの商標が使用される商品は,販売場所及び需要者を共通にする関連性の高い商品である。
イ 本件商標の通常使用権者(水甚社)は,上記2のとおり,本件商標を本件使用商標の構成態様により,上記3のとおり,その指定商品に含まれる本件使用商品について使用したものである。そして,本件使用商標は,その構成中の雲を想起させる図形及びヨットの図形は本件商標の構成には存在せず,意図的に付加したものと認められるから,本件商標の使用態様として,社会通念上,適正な使用の範囲内のものということができない。
また,本件使用商品は,上記2(2)のとおり,販売のために「マルイウェブチャネル」に掲載され,しかも,引用商標の由来といえる「トップサイダー 1935年にアメリカで誕生して以来,『デッキシューズ』といえばこのブランド。」(甲81)と記載して紹介されたものである。
ウ 以上よりすると,2013年(平成25年)1月28日時点において,本件商標の通常使用権者が,本件商標の指定商品に含まれる本件使用商品「シャツ」に,本件商標を引用商標と酷似した本件使用商標の構成態様により表示して譲渡し又は引き渡した行為,及び当該商品が,引用商標の由来とともに販売のためにウェブサイトに掲載された事実は,本件使用商品が,請求人の業務に係る商品「靴(デッキシューズ)」と関連を有する商品であることを連想させるものというべきである。
したがって,本件商標の通常使用権者による上記行為は,他人(請求人)の業務にかかる商品と混同を生ずるものをしたと認められる。
(5)本件商標権者がその事実を知っていたかについて
商標法第53条第1項は,その但書において,「ただし,商標権者がその事実を知らなかった場合において,相当の注意をしていたときは,この限りでない。」と規定され,同条項本文の適用を免れるためには,被請求人において,本件商標権者が,その通常使用権者による上記商品の混同を生ずる行為を知らなかったこと及び相当の注意をしていたことを主張立証すべきところ,被請求人は,審判答弁書において,「『セイルボート』について同じ図形を使用するよう依頼があった」ことを理由に,本件商標の通常使用権者が水甚社から仕入れた本件使用商品について,「水甚社による本件商標の使用は,被請求人が,同社に対して,・・・当該図形の使用を含めて使用を許諾したものである」旨述べている。
そうすると,本件商標権者は,その通常使用権者による本件使用商品への本件使用商標を使用の事実を,知っていたものと推認される。
5 被請求人の主張について
被請求人は,「本件譲渡契約の際,米国代理人から,日本において,被請求人が商品を展開する上で『TOP-SIDER』ブランドのイメージを損なわないよう『セイルボート』について同じ図形を使用するよう依頼があった」旨,主張するので検討する。
(1)本件商標の取得に関する経緯等について
本件商標は,2000年(平成12年)4月1日に,請求人の前身である「スペリ トツプ - サイダー インコーポレーテツド」(以下「旧スペリー社」という。)と株式会社BMプランニング(以下「BM社」という。)で締結された本件譲渡契約(乙2の1)が締結され,本件譲渡契約に基づき,平成12年5月25日にBM社に移転登録され,その後,平成21年8月26日受付で本件商標権者に登録名義人が変更された(甲2)。
また,本件譲渡契約に基づき,指定商品を「靴類」等とする登録第829144号商標「TOPSIDER」の商標権は,平成12年5月25日に「旧スペリー社」に移転登録され,その後,平成23年8月31日受付で請求人に登録名義人が変更された(職権調査)。
以上からすると,旧スペリー社とBM社は,「TOP-SIDER(TOPSIDER)」の文字からなる商標については,旧スペリー社は商品「靴類」等について使用し,BM社は「被服」等について使用することが合意されたといえる。
そして,被請求人は,旧スペリー社とBM社との本件譲渡契約の際に,旧スペリー社側の米国代理人により,BM社に対し,日本において,BM社が商品を展開する上で「TOP-SIDER」ブランドのイメージを損なわないよう「セイルボート」について同じ図形を使用するよう依頼があり,BM社はこれを了承した,と認識していた旨主張している。
(2)上記(1)によれば,本件商標権者と請求人は,過去において,「TOP-SIDER(TOPSIDER)」の文字からなる商標について,請求人は商品「靴類」等について使用し,本件商標権者は「被服」等について使用することが合意されていたといえるものの,本件譲渡契約には,被請求人が「『セイルボート』について同じ図形を使用するよう依頼があった」ことを認めるに足る記載はなく,他に被請求人はかかる事実を証する書面を提出していない。
そうすると,本件商標権者は,請求人が引用商標を商品「靴(デッキシューズ)」について使用をしていることを認識した上で,その通常使用権者に,本件商標を本件使用商標のように引用商標に酷似させて,商品「シャツ」に使用をさせていたものであって,かつ,請求人の承諾を得たものということはできない。
したがって,被請求人の上記主張は採用できない。
6 まとめ
以上のとおり,本件商標の通常使用権者は,本件商標に類似する商標をその指定商品に含まれる商品「シャツ」に使用し,請求人(他人)の業務に係る商品「靴(デッキシューズ)」と混同を生ずるものをしたものであり,かつ,本件商標権者がその事実を知らなかった場合において,相当の注意をしていたということはできないから,本件商標は,商標法第53条第1項に基づき,取り消すべきである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(引用商標)





別掲2(本件使用商標)





審理終結日 2018-02-26 
結審通知日 2018-03-01 
審決日 2018-03-22 
出願番号 商願昭53-20807 
審決分類 T 1 31・ 5- Z (Y16212425)
最終処分 成立 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 平澤 芳行
田中 亨子
登録日 1985-09-27 
登録番号 商標登録第1809362号(T1809362) 
商標の称呼 トップサイダー 
代理人 藤沢 昭太郎 
代理人 長谷 玲子 
代理人 藤沢 則昭 
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