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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z42
管理番号 1345018 
審判番号 取消2017-300731 
総通号数 227 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-11-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2017-09-25 
確定日 2018-10-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第4685633号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4685633号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成よりなり,平成13年4月18日に登録出願された商願2001-35797に係る商標法第10条第1項の規定による商標登録出願として,平成14年6月18日に登録出願,第16類「雑誌,書籍,新聞,ニューズレター,その他の印刷物」及び第42類「求人情報の提供」を指定商品及び指定役務として,同15年6月27日に設定登録されたものである。
そして,本件審判の請求の登録は,平成29年10月11日である(以下,当該登録前3年以内を「要証期間」という。)。

第2 請求人の主張
請求人は,商標法50条1項の規定により,本件商標の指定商品及び指定役務中,第42類「求人情報の提供」についての登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲1を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,上記指定役務について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用をした事実が存しないから,その登録は商標法50条1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)乙1?3について
ア 「求人情報の提供」についての使用か否か
被請求人は,乙1?3を提出して,要証期間内に株式会社TACプロフェッションバンク(以下「TACプロフェッションバンク社」という。)が本件商標を第42類「求人情報の提供」について使用している旨主張している。
ところで,商標法上の「役務」は,「他人のために行う労務又は便益であって,独立して商取引の目的たりうべきもの」(「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第20版〕」)であるから,第42類の「求人情報の提供」について商標の使用をしたことを証明するためには,単に求人情報を取り扱っていることを示すだけでは足りないのであって,「求人情報の提供」が独立した商取引の対象となっていることを証明しなければならない。
しかし,乙1?3によっては,被請求人が求人情報を取り扱っている程度のことは推測し得るとしても,「求人情報の提供」が独立した商取引の対象となっていることは何ら証明されていない。むしろ,乙1,2のTACプロフェッションバンク社の会社概要の記事における「社長メッセージ」では「人材紹介・人材派遣・求人情報のトータルな人材サービス業務を展開していきます。」と記載されているところ,人材紹介や人材派遣も,その業務には「求人情報」が不可欠であることを踏まえると,「求人情報の提供」が独立した商取引の対象として提供されているというよりも,人材紹介や人材派遣などの総合的な人材サービスに必要な工程である可能性を強くうかがわせるものである。
したがって,乙1?3をもって,TACプロフェッションバンク社が本件商標を第42類「求人情報の提供」について使用していたことについて,証明されたということはできない。
イ 使用の事実と時期について
被請求人は,乙1?3による商標の使用は,「『電磁的方法(電子的方法,磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。…)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為』(商標法2条3項7号)」に該当する旨主張している。
しかし,被請求人は,そもそも,当該映像面を介して「?役務を提供する行為」が行われた事実を始め,乙1?3のウェブサイトの映像面をいかに介して役務を提供しているのか,その役務は具体的に何なのか,その役務の提供が行われた時期はいつなのかなど,同号に該当する「使用」というために必要な説明や証拠の提出をしていない。
したがって,乙1?3をもって,要証期間内に商標法2条3項7号に該当する使用を行ったということはできない。
(2)乙4?7について
ア 「求人情報の提供」についての使用か否か
(ア)被請求人は,乙4?7を提出して,要証期間内にTACプロフェッションバンク社が本件商標を第42類「求人情報の提供」について使用している旨主張している。そして,被請求人は,同号証は,「発行部数からいって,単なる『会計業界合同就職説明会』の付随資料などではなく,広告物そのものである。」と主張している。
しかし,乙4?7は,その1枚目の表紙と思しき書面には「会計業界 合同就職説明会開催」としてその期日が記載されているほか,乙4の2枚目以降も,就職説明会や就職セミナーのスケジュールが続いているものである。そして,乙4において5頁と記載されている資料には「会計業界合同就職説明会参加票」が掲載され「会場受付にてご提出ください。誠に勝手ながら1?17にご回答の上,提出いただくことを当説明会参加の条件とさせて頂きます。」の説明が記載されている。7頁と記載されている資料には「自己紹介シート」が掲載され,説明会において「事務所・企業の方と面接する際に,1枚お渡しください。」の説明が記載されている。また,10頁と記載されている資料には「Step4」として「就職説明会は,2時間30分もしくは3時間です。・・・本誌の20ページから始まるスピードインデックスをご覧ください。使い方は,・・・その6社を2社ずつ3グループ程度,例えば,『第一優先で訪問したい法人』『訪問したい法人』『できれば訪問したい法人』に分けます。優先順位の高い法人から,順番にブースを訪問します。」などの記載があり,同号証のスピードインデックス以降は,説明会に参加している事務所や企業であり,それらと効率よく面接するためにスピードインデックス以降を利用するように説明し,その利用の仕方を説明していることが理解できるものである。そして,乙5?7については,被請求人は,表表紙と裏表紙しか提出していないが,これらについても,同様であろうことは容易に推測し得るといえる。
そうすると,乙4?7は,就職説明会に参加する条件となっている書面等を掲載するとともに,説明会に参加する企業を効率的に面接するためのインデックスなど掲載したものであることを踏まえるならば,説明会用の資料としか考えられないものといえる。
(イ)この点,被請求人は,「『会計業界合同就職説明会』自体も乙8の各ページの写真や説明から明らかなように,TACプロフェッションバンク社の主催の下『求人情報を掲載している税理士法人・会計事務所・コンサルティング会社などが個別面談ブースを出店』させる形式で,TACプロフェッションバンク社が『求人情報の提供』を行っているものである。」と主張する。すなわち,被請求人のこの主張は,TACプロフェッションバンク社の主催の就職説明会で同社は「求人情報の提供」を行っているというものであるが,これこそ,請求人の上述の主張を自認しているものといえる。
しかし,上記(1)で述べたとおり,商標法上の「役務」は,「他人のために行う労務又は便益であって,独立して商取引の目的たりうべきもの」(「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第20版〕」)であるから,単に求人情報を取り扱っていることだけでは,商標法上,「求人情報の提供」の役務の提供を行っているということはできない。そして,被請求人は,「求人情報の提供」が独立した商取引の対象となっていることについては,何ら証明していない。
加えて,被請求人は,乙8,9をもって,乙4?7について,「全国TAC校舎に積み置き」「TACの税理士通信講座受講生に送付」「TAC税理士講座ガイダンスにて配布」と配置場所を説明しており,その全てがTAC関連の場所であることを踏まえると,乙4?7はTACの講座受講生向けといえるところ,TACが受講生向けに就業説明会を含め,無料の就職サポートを行っていることから,余計に,「求人情報の提供」が独立した商取引の対象となっているとは考え難いといえる。
(ウ)したがって,乙4?7をもって,要証期間内に「求人情報の提供」という役務について,商標の使用を行ったということはできない。
イ 商標法2条3項5号及び同8号に該当する「使用」か否か
被請求人は,乙4?7をもって,商標法2条3項5号及び同8号に該当する「使用」をしている旨主張している。
しかし,乙4?7については,上記アのとおり,使用に係る役務が「求人情報の提供」という役務とはいえないのであって,乙4?7は「求人情報の提供」の役務の提供の用に供する物でもないし,「求人情報の提供」の役務に関する広告,定価表,取引書類でもないから,「求人情報の提供」について,商標法2条3項5号及び同8号に該当する「使用」をしていたということはできない。
(3)乙8,9について
被請求人は,乙8を「広告主募集企画資料」と,また,乙9を「社内配布記録」と説明していることから,これら乙号証は社内向けの企画書や記録と思われ,需要者に対する広告や取引書類でないこと明らかであるから,たとえ,乙8,9に本件商標と同一の「標章」が記載されていても,それをもって,商標の使用ということはできない。
次に,被請求人は,乙8をもって乙4,5の配布部数を主張しているところ,乙8には,「?部」と部数が記載されているだけで,それが配布部数であるか否かまでは記載されていない。
加えて,商標法2条3項5号及び同8号の観点から,これら乙号証をみるに,乙8は,社内向け企画書に「配布」の予定が記載されているだけであり,「頒布(配布)の事実」を証明するものではない。また,乙9及びそれに関する被請求人の主張によれば,乙9は「納品」となっているものであって,被請求人は「TACの校舎に積み置き」されたと説明していることを踏まえると,需要者に「頒布」されたことを証明するものでもないし,需要者が見られる状態に「展示」されたことまでが証明されたということはできない。このため,乙8,9は,乙4,5について,商標法2条3項5号及び同8号に該当することを証明するものとはなっていない。
さらに,被請求人は,「その発行部数からいって」就職説明会の付随資料でなく,広告物であると主張しているが,広告物であるならば,商標法2条3項5号に該当するものではないこと明らかといえる。また,請求人が主張しているのは,上記(2)のとおり,商標法上の役務としての「求人情報の提供」についての使用ではないという点にあり,それは独立した商取引の対象となっているか否かによるのであって,資料の発行部数で定まるものではないから,乙8,9は,上記(2)の請求人の主張を左右するものではない。
むしろ,これらの乙号証と被請求人の主張によれば,乙4?7の配置場所は,「全国TAC校舎に積み置き」,「TACの税理士通信講座受講生に送付」,「TAC税理士講座ガイダンスにて配布」とされ,その全てがTAC関連の場所となっているのは,上記(2)で述べたとおり,「求人情報の提供」が独立した商取引の対象となっているとは考え難いものとしている。
(4)乙10?13について
被請求人は,乙10,11を提出して,TACプロフェッションバンク社が本件商標を第42類「求人情報の提供」について使用している旨主張している。そして,被請求人は,同号証の納品に関して,乙12,13を提出し,要証期間内に使用していると主張している。
しかし,乙10,11は,その1枚目の表紙と思しき書面には「公認会計士受験生のための就職説明会」としてその期日が記載されているほか,その2枚目以降も,就職説明会のスケジュールが続いているものである。そして,1頁と記載されている資料には「TAC公認会計士受験生のための就職説明会 参加票」が掲載され「『公認会計士受験生のための就職説明会』の受付で提出してください。誠に勝手ながら当参加票に所定の事項を記入の上,提出いただけない方は,入場をお断りすることがあります。」の説明が記載され,4頁や6頁と記載されている資料にも同趣旨の記載がされている。また,3頁と記載されている資料には「TAC公認会計士受験生のための就職説明会用 自己紹介シート」が掲載され,説明会において「訪問を予定している法人数分をコピーしてお持ちください。」の説明が記載されている。そして,それら説明の後に,説明会に参加している事務所や企業の紹介をしている。
すなわち,乙10,11は,説明会に参加する条件となっている書面等を掲載するとともに,説明会に参加する企業を効率的に面接するための紹介欄などが掲載されたものであることを踏まえるならば,乙4?7と同様に,説明会用の資料としか考えられないものといえる。
そして,乙12,13についても,乙8,9と同様に,商標法2条3項5号及び同8号に該当することを証明するものとはなっていないし,「求人情報の提供」が独立した商取引の対象となっているとは考え難いものとしている。
(5)乙14,15について
被請求人は,「TACプロフェッションバンク社は,本件商標権者の100%子会社であり(乙14),かつ,『求人情報の提供』を担当している子会社である(乙15)」と述べるとともに,乙4が「全国TAC校舎に積み置き」,「TACの税理士通信講座受講生に送付」,「TAC税理士講座ガイダンスにて配布」されていること,乙15に本件商標が表示された「就職ガイド」が掲載されているから「本件商標権者がTACプロフェッションバンク社に本件商標の使用を認めていたことは明らかである。」と主張している。
しかし,乙14には,本件商標権者の議決権比率が100%である旨記載されているとしても,それは本件商標権者の議決権比率を示しているにすぎない。加えて,乙15についても,TACプロフェッションバンク社について同号証のいずれの記載部分からTACプロフェッショナルバンク社が「求人情報の提供」を担当する子会社であることが証明されているのかは何ら説明されていない。むしろ,乙14には,本件商標権者のTACプロフェッションバンク社に対する議決権比率とともに,主要事業内容としては,「人材事業」と記載されており,「求人情報の提供」を担当している子会社であることが証明されたとは到底いえない。
そもそも,乙14は,TACプロフェッションバンク社に対する本件商標権者の議決権比率を示しているにすぎないものであり,本件商標権者がTACプロフェッションバンク社に対して,本件商標の「求人情報の提供」についての使用権の許諾をしていたことを証明するものではない。仮に,親子の関係の会社であっても,法人格としては別人格であるし,使用許諾には許諾の範囲などを始めとした相応の条件などもあり得ることを考えると,むしろ,使用権の許諾契約をしていないのは不自然である。まして,被請求人は,なぜ100%子会社であると本件商標の「求人情報の提供」について使用権を許諾していたことが明らかといえるのかについて,説明さえしていない。
加えて,被請求人は,乙4が「全国TAC校舎に積み置き」などに納品されていることをもって,本件商標権者がTACプロフェッションバンク社に本件商標の使用を認めていたことは明らかであるとも主張しているが,乙4の納品場所が本件商標権者の関連施設であったとしても,それをもって商標権の使用許諾があったことになる理由も説明されていない。また,被請求人は,乙15に本件商標が表示された「就職ガイド」が掲載されているとも主張しているが,それは「就職情報誌」としてであり,それをもって,「求人情報の提供」についての使用権の許諾があったといえる理由も説明されていない。
(6)まとめ
以上のとおりであるから,乙各号証のいずれをもってしても,商標法50条2項で定める登録商標の使用を証明するに十分なものではなく,同項で定める登録商標の使用を証明したということはできないから,本件商標の「求人情報の提供」について商標登録は取り消されるべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙1?15を提出した。
1 本件商標権者の100%子会社であるTACプロフェッションバンク社のホームページにおける「TAC キャリアナビ」と題する画像(乙1)の右上には,本件商標の表記がある。この画像には,「新着求人」や「求人情報検索」の欄があるが,これらの欄に,具体的な求人情報が掲載されていて,実際に求人情報が提供されている。
乙1には,上記の「新着求人」情報として4社以上の写真入り求人案内が記載されている。なお,このデータは,ウェイバックマシーン(審決注:ウェイバックマシーンとは,アメリカの非営利団体インターネット・アーカイブが運用する,ある一時点でのウェブページの内容を記録・保存するサービスである。)のサイトから,過去のサイトを検索したもので,右上に「毎週火曜日・金曜日更新 2015/07/03更新」とあり,2015年(平成27年)7月3日に公開されていたサイトの記載であることがわかる。また,左下に20150704034735とあり,2015年(平成27年)7月4日03時47分35秒にこの画像が記録保存されていたことがわかる。乙2,3も,乙1と同旨の証拠であって,いずれも要証期間内であることを示している。
したがって,乙1?3は,要証期間内に,TACプロフェッションバンク社が,本件商標を「求人情報の提供」という役務に関し,「電磁的方法(電子的方法,磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。…)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為」(商標法2条3項7号)に当たる。
2 TACプロフェッションバンク社が平成27年11月25日付けで発行した「会計業界就職ガイドCAREER2015winter[東日本版]」(以下「本件冊子」という。乙4)の表紙の左下に,本件商標の表記がある。同社が平成27年11月25日付けで発行した「会計業界就職ガイドCAREER2015winter[東海・西日本版]」(乙5),同26年11月19日付けで発行した「会計業界就職ガイドCAREER2014winter[東日本版]」(乙6)及び同日付けで発行した「会計業界就職ガイドCAREER2014winter[東海・西日本版]」(乙7)も,乙4と同様である。
乙8は,TACプロフェッションバンク社が発行する「会計業界就職ガイド」の広告主募集企画資料であって,会計業界合同就職説明会そのものは,繰り返し行われており,平成27年12月20日には,乙8の添付資料のアンケートが就職希望者に配布された。
また,乙8の1頁目には,配布部数として「東日本版15000部」,「東海・西日本版10000部」とあり,乙4,5の「会計業界就職ガイド」が合計25000部配布されることになっている。そして,その2頁目左上には,「配布方法」として「1.全国のTAC校舎に積み置き」,「2.TACの税理士通信講座受講生に送付」,「3.TAC税理士講座ガイダンスにて配布」との記載があり,そのように配布されている。
乙9のTAC社内の資料の社内配布記録には,本件冊子が,平成27年11月12日に発注され,同月25日,同月26日及び同月27日に納品されて「1.全国のTAC校舎に積み置き」された事実が記録されている。
乙4?7の各「会計業界就職ガイド」は,その発行部数からいって,単なる「会計業界合同就職説明会」の付随資料などではなく,広告物そのものである。また,「会計業界合同就職説明会」自体も乙8の各頁の写真や説明から明らかなように,TACプロフェッションバンク社の主催の下「求人情報を掲載している税理士法人・会計事務所・コンサルティング会社などが個別面談ブースを出店」させる形式で,TACプロフェッションバンク社が「求人情報の提供」を行っているものである。
したがって,乙4?7は,要証期間内に,本件商標を「求人情報の提供」という「役務の提供の用に供する物(役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物を含む。…)に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為」(商標法2条3項5号),「役務…に関する広告,価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し,若しくは頒布…する行為」(同8号)に当たる。
3 同じく,TACプロフェッションバンク社が平成27年付けと同28年付けで発行した「公認会計士受験生のための就職ガイド」の表紙の左下にも,本件商標の表記がある(乙10,11)。なお,これらは色彩を反転させているが,なお社会的に同一性がある。
乙12のTAC社の資料の社内配布記録には,TACプロフェッションバンク社が「公認会計士受験生のための就職ガイド2015」(乙10)を,平成27年6月2日に発注し,同月25日,同月26日及び同月27日に納品されていること,乙13は,「公認会計士受験生のための就職ガイド2016」(乙11)をTACプロフェッションバンク社が同28年6月3日に発注し,同27日に納品されていること,及びそれぞれ「1.全国のTAC校舎に積み置き」された事実が記録されている。
4 使用主体
TACプロフェッションバンク社は,本件商標権者の100%子会社であり(乙14),かつ,「求人情報の提供」を担当している子会社である(乙15)。そして,本件商標権者は,本件商標が表紙に記載された本件冊子(乙4)その他を自らの「1.全国のTAC校舎に積み置き」,「2.TACの税理士通信講座受講生に送付」,「3.TAC税理士講座ガイダンスにて配布」させている。さらに,その会社案内(乙15)の36頁右下には,本件商標の記載された「会計業界就職ガイド」が見本として掲載されている。これらのことからいって,本件商標権者がTACプロフェッションバンク社に本件商標の使用を認めていたことは明らかである。

第4 当審の判断
1 認定事実
(1)証拠及び被請求人の主張によれば,以下の事実が認められる。
ア TACプロフェッションバンク社の業務内容等
本件商標権者は,昭和55年12月に設立された,国家試験その他資格試験等の教育などを目的とする株式会社である。
TACプロフェッションバンク社は,平成13年5月に,本件商標権者が全ての議決権を有する子会社として設立された株式会社であり,職業紹介事業,労働者派遣事業,求人広告サイト運営,求人情報誌の発行,就職支援イベント運営などを営んでいる。また,TACプロフェッションバンク社の代表取締役(2名)は,本件商標権者の取締役副社長及び取締役であり,他の役員(取締役1名,監査役1名)は,本件商標権者の代表取締役社長及び監査役である。本件商標権者は,人材紹介等の人材事業を本格的に立ち上げるために,TACプロフェッションバンク社を設立したものであり,同社を設立後,従来,本件商標権者本体で行っていた人材事業を全面的に同社に移管した。(以上につき,乙14,15)
イ 会計業界合同就職説明会の開催
TACプロフェッションバンク社は,平成27年12月18日から同月20日にかけて,東京,名古屋及び大阪において各1日ずつ,税理士試験合格者等を対象とする,会計業界合同就職説明会(以下「本件就職説明会」という。)を開催した(乙8)。
ウ 本件冊子の発行
TACプロフェッションバンク社は,平成27年11月25日頃,本件冊子(乙4)を発行した。本件冊子には,本件就職説明会の開催日時,会場,参加方法等が記載されているほか,「求人情報」として,合計60の税理士法人,公認会計士事務所等について,「社名,勤務地,本件就職説明会参加の有無,TACキャリアナビ(TACプロフェッションバンク社が運営する求人情報サイト)掲載の有無,雇用区分,実務経験の要否,応募資格」等が記載された「インデックス」,上記税理士法人等の募集要項の詳細等が掲載されている。
また,本件冊子は,税理士試験の合格者,科目合格者及び学習者,日商簿記試験の合格者,学習者等を読者対象とするものであり,全国の被請求人校舎に積み置く,TAC税理士通信講座の受講生に送付する,TAC税理士講座ガイダンスにて配布するなどの方法で,上記読者対象に配布された(乙4,8,9)。
本件冊子の表紙の右側下部には,本件商標が付されている(乙4)。
(2)請求人の主張について
請求人は,乙8は,社内向け企画書に「配布」の予定が記載されているだけであり,「頒布(配布)の事実」を証明するものではない,また,乙9及びそれに関する被請求人の主張によれば,乙9は「納品」となっているものであって,被請求人は「TACの校舎に積み置き」されたと説明していることを踏まえると,需要者に「頒布」されたことを証明するものでもないし,需要者が見られる状態に「展示」されたことまでが証明されたということはできない旨主張する。
しかし,乙8には,TACプロフェッションバンク社が平成27年11月27日に本件冊子を1万5000部発行する予定であること,本件冊子の「読者対象」を「税理士(合格者,科目合格者,学習者),日商簿記(合格者,学習者)など」とし,「配布方法」を「全国のTAC校舎に積み置き,TAC税理士通信講座受講生に送付,TAC税理士講座ガイダンスにて配布」とすることが記載されており,その内容に特段不自然な点はない。また,本件冊子は,現に発行されているところ,本件冊子が上記の方法で配布されなかったことをうかがわせる事情は存在しない。
したがって,上記(1)ウのとおり,本件冊子は配布されたものと認められ,請求人の主張は採用できない。
2 上記1の認定事実によれば,次のとおり判断できる。
(1)本件商標の通常使用権
上記1(1)のとおり,(a)TACプロフェッションバンク社は,本件商標権者が全ての議決権を有する子会社であり,本件商標権者の代表取締役社長,取締役副社長等の役員がTACプロフェッションバンク社の役員を兼務していること,(b)本件商標権者は,人材紹介等の人材事業を本格的に立ち上げるために,TACプロフェッションバンク社を設立したものであり,同社を設立後,従来,本件商標権者本体で行っていた人材事業を全面的に同社に移管し,TACプロフェッションバンク社は,職業紹介事業,労働者派遣事業,求人広告サイト運営,求人情報誌の発行,就職支援イベント運営などを営んでいること,(c)TACプロフェッションバンク社は,要証期間内である平成27年11月25日頃,本件就職説明会の開催日時や,税理士法人,公認会計士事務所等の求人情報が掲載された本件冊子を発行し,その表紙に本件商標が付されていることが認められる。
これらの事実関係によれば,本件商標権者は,本件冊子が発行される前に,TACプロフェッションバンク社に対し,指定役務「求人情報の提供」について,本件商標の通常使用権を,少なくとも黙示に許諾していたものと認められる。
したがって,TACプロフェッションバンク社は,本件商標の通常使用権者であると認めることができる。
(2)「求人情報の提供」としての使用の有無
ア 上記1(1)のとおり,(a)TACプロフェッションバンク社は,職業紹介事業,労働者派遣事業,求人広告サイト運営,求人情報誌の発行,就職支援イベント運営などを営んでいること,(b)TACプロフェッションバンク社は,要証期間内である平成27年11月25日頃,本件冊子を発行し,その表紙に本件商標を付していること,(c)本件冊子には,「求人情報」として,合計60の税理士法人,公認会計士事務所等について,「社名,勤務地,本件就職説明会参加の有無,TACキャリアナビ掲載の有無,雇用区分,実務経験の要否,応募資格」等が記載された「インデックス」,上記税理士法人等の募集要項の詳細等が掲載されていること,(d)本件冊子は,税理士試験の合格者,科目合格者及び学習者,日商簿記試験の合格者,学習者等を読者対象とするものであり,全国の被請求人校舎に積み置く,TAC税理士通信講座の受講生に送付する,TAC税理士講座ガイダンスにて配布するなどの方法で,上記読者対象に配布されたことが認められる。
これらの事実によれば,TACプロフェッションバンク社は,本件冊子の配布によって,「求人情報の提供」という役務を提供しているものと認められる。
イ 請求人の主張について
請求人は,本件冊子は,「求人情報の提供」の役務ではなく,本件就職説明会の開催のための付随的な資料であり,本件冊子に本件商標が付されたとしても,それは「求人情報の提供」についての使用ではない旨主張する。
しかし,TACプロフェッションバンク社の業務内容や,本件冊子の記載事項,読者対象,配布方法等に照らし,同社が本件冊子の配布によって「求人情報の提供」という役務を提供しているものと認められることについては,上記アのとおりである。
本件冊子に,本件就職説明会の開催日時,会場,参加方法等が記載されているとしても,上記認定事実や,本件冊子は,上記「インデックス」及び税理士法人等の募集要項の詳細のために多くの頁を割いていること(乙4)などに鑑みると,本件冊子は,本件就職説明会のための資料であるのみならず,「求人情報の提供」のための資料でもあるというべきであって,請求人の主張は採用できない。
(3)小括
以上によれば,本件商標の通常使用権者であるTACプロフェッションバンク社は,要証期間内に,日本国内において,本件商標の指定役務である「求人情報の提供」に係る本件冊子に,本件商標を付して頒布したものであり,かかる行為は,「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為」(商標法2条3項4号)に該当するものと認められる。
3 結語
以上のとおり,被請求人は,要証期間内に,日本国内において,本件商標の通常使用権者が,本件審判請求に係る指定役務について,本件商標の使用をしていたことを証明したものである。
したがって,本件商標の登録は,本件審判請求に係る指定役務について,商標法50条の規定により,取り消すことができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲 本件商標(色彩については,原本参照。)




審理終結日 2018-08-02 
結審通知日 2018-08-06 
審決日 2018-08-20 
出願番号 商願2002-50617(T2002-50617) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Z42)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 小俣 克巳 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 田村 正明
平澤 芳行
登録日 2003-06-27 
登録番号 商標登録第4685633号(T4685633) 
商標の称呼 シカクノガッコータック、タック、テイエイシイ、シカクノガッコー 
代理人 林 栄二 
代理人 名越 秀夫 
代理人 小野寺 隆 
代理人 正林 真之 
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