• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W26
審判 全部申立て  登録を維持 W26
審判 全部申立て  登録を維持 W26
管理番号 1344095 
異議申立番号 異議2017-900243 
総通号数 226 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2018-10-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-08-03 
確定日 2018-09-06 
異議申立件数
事件の表示 登録第5945284号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5945284号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5945284号商標(以下「本件商標」という。)は、「SALONIA」の欧文字を標準文字で表してなり、平成28年7月21日に登録出願、第26類「衣服用き章(貴金属製のものを除く。),衣服用バックル,衣服用バッジ(貴金属製のものを除く。),衣服用ブローチ,帯留,ボンネットピン(貴金属製のものを除く。),ワッペン,腕章,頭飾品,ボタン類」を指定商品として、同29年3月28日に登録査定され、同年5月12日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりであり(以下、両商標をまとめて「引用商標」という。)、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
(1)登録第5494318号商標
商標の態様 SALONIA(標準文字)
指定商品 第9類「電気式ヘアーアイロン,電気式ヘアカーラー」
登録出願日 平成23年12月2日
設定登録日 平成24年5月18日
(2)登録第5880854号商標
商標の態様 SALONIA(標準文字)
指定商品 第3類「ヘアオイル,ヘアスプレー,シャンプー,ヘアコンディショナー,せっけん類,化粧品,香料,薫料,歯磨き,つけづめ,つけまつ毛,口臭用消臭剤,動物用消臭剤」及び第11類「家庭用ヘアドライヤー,ヘアドライヤー,家庭用電熱用品類,美容院又は理髪店用の機械器具(「椅子」を除く。),シャワー器具,浴槽類,電球類及び照明用器具,家庭用浄水器,乾燥装置,換熱器,蒸煮装置,蒸発装置,蒸留装置,熱交換器」
登録出願日 平成28年4月4日
設定登録日 平成28年9月9日

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第15号、同項第19号及び同項第7号に基づく取消理由を有しており、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第19号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)本件商標について
本件商標は、「SALONIA」の文字を標準文字で表してなるが、申立人が保有する引用商標と同一の文字からなる。なお、引用商標を構成する「SALONIA」の語は、申立人が創造した造語である。
(2)引用商標の著名性
ア 申立人事業の内容・規模
申立人は、平成23年11月に引用商標をブランド名とするヘアアイロンを発売し、現在に至るまで5年半以上にわたって「SALONIA」ブランドを冠して営業を行ってきている。「SALONIA」ブランドでは、ヘアアイロンだけでなく、ヘアドライヤー、ヘアクリーム、ヘアオイル等、理容・美容関係の商品を取り扱い、幅広くヘアケア事業を展開している(甲4)。
また、申立人は、引用商標を付した「SALONIA(サロニア)」ブランドの商品(以下「申立人商品」という。)を日本全国の家電量販店、ドン・キホーテ等で販売しているほか、インターネット販売もしている(甲4)。
かかる全国的な展開により、「SALONIA」ブランドの売上規模は極めて大きなものになっており、平成27年度の年間売上は約13.1億円、平成28年度の年間売上は約15.8億円と、直近2年間の年間売上が10億円を超える程のブランドに成長している(甲5)。
イ 申立人商品の市場占有率
「美容家電・化粧雑貨マーケティングトレンドデータ2014-2015」によれば、「SALONIA」ブランドの、ヘアアイロンの市場占有率は2012年に4.7%、2013年に5.0%、2014年に5.1%を占め、第5位にランクインしている(甲6)。
また、コメント欄には、「メインラインは『SALONIA』を通信販売をメインチャネルに展開、サロンと同等の仕上がりを訴求することで高い機能性を求める消費者を中心に需要を獲得し、口コミによるブランド認知の拡大も加わり、新規需要拡大が続いていることから実績は伸長傾向にある。」と記載されている(甲6)。
なお、メーカー名に「メインライン」との記載があるのは、当初、「SALONIA」ブランドは、株式会社メインラインが取扱っていたが、同社は平成28年7月に申立人に吸収合併され、現在は申立人が取り扱っている。
ウ 通販サイトにおける売上ランキングなど
(ア)楽天市場におけるランキング等
申立人商品は、若者を中心に人気ブランドとなっており、楽天市場において、以下の賞を受賞している(甲7の1、2)。
・ショップ・オブ・ザ・イヤー2016 サービス賞(ラ・クーポン賞)
・ショップ・オブ・ザ・イヤー2016 ジャンル賞(美容・ヘアケア・ネイルジャンル大賞/ダブルイヤー賞)
・ショップ・オブ・ザ・ウィーク2016 7月1週賞(ジャンル賞(美容・ヘアケア・ネイル))
・ショップ・オブ・ザ・イヤー2015 ジャンル賞(美容・ヘアケア・ネイルジャンル大賞)
・ショップ・オブ・ザ・ウィーク2015 12月2週賞(ジャンル賞(家電))
・ショップ・オブ・ザ・ウィーク2015 4月3週賞(ジャンル賞(家電))
・ショップ・オブ・ザ・マンス2013 1月賞(ジャンル賞(家電))
・ショップ・オブ・ザ・ウィーク2012 11月4週賞(ジャンル賞(レディースファッション))
また、2016年度の家電部門年間ランキングにおいて、申立人の商品は、第5位及び第21位にランクインしており(甲8)、平成29年7月5日に更新された家電部門の月間ランキングでは第2位、第5位及び第11位に(甲9の1)、平成29年7月19日に更新された週間ランキングでは、第3位、第10位及び第25位にランクインしている(甲9の2)。
(イ)Amazonでのランキング
Amazonにおいても、申立人商品は、2015年の家電部門の年間ランキングで第13位、2016年の家電部門の年間ランキングで第4位、2017年の家電部門の上半期ランキングで第15位にランクインしている(甲10の1?3)。
また、平成29年7月20日時点のヘアアイロンの売れ筋ランキングでは、申立人商品は、第1位、第2位、第3位及び第6位にランクインしている(甲10の4)。
(ウ)Yahooショッピングでのランキング
Yahooショッピングにおいても、申立人商品は、2017年7月19日時点の美容家電部門のデイリーランキングで第3位、第14位及び第19位に、同日時点の美容家電部門のウィークリーランキングで第2位、第16位及び第17位に、同日時点のヘアアイロン部門のウィークリーランキングで第1位、第3位、第4位、第5位及び第15位にランクインしている(甲11)。
(エ)小括
以上のとおり、申立人商品は、複数の大手通販サイトのランキングにおいて上位にランクインしており、「SALONIA(サロニア)」ブランドの知名度は極めて高いものになっているといえる。
エ ネット上でのヘアアイロンに関するランキング
(ア)@cosmeでのランキング
@cosmeにおいては、クチコミ件数や、おすすめ度等を総合的に考慮し、ランキングを付けているが(甲12の1)、ヘアアイロンのランキングにおいて、申立人商品は第1位にランクインしている(甲12の2)。
また、クチコミ件数順のランキングにおいても、第9位にランクインしており(甲12の3)、「SALONIA」ブランドが、多くの人に認知された人気ブランドであることがわかる。
(イ)KAUMOでのランキング
KAUMOにおいては、「【おすすめヘアアイロンTOP20】みんなが絶賛!理想ヘアを作る商品はコレ」との記事において、申立人商品は、ストレート用ヘアアイロンランキング、カール用ヘアアイロン(32mm)ランキング、及びカール用ヘアアイロン(19mm)ランキングで第1位にランクインしている(甲13)。
また、コメント欄には、「数あるヘアアイロンの中でもトップの人気を誇る『SALONIA』のヘアアイロン。紗栄子さんや木下優樹菜さんなど、数多くの有名芸能人の方が愛用しています。」と紹介されており、申立人商品が人気商品であることがわかる。
なお、本ウェブサイトは、google検索エンジンにおいて「ヘアアイロンランキング」と検索すると、8番目に表示されているウェブサイトであり(甲14)、多くの人が閲覧しているウェブサイトであるといえる。
(ウ)ヘアアイロンおすすめ.comでのランキング
ヘアアイロンおすすめ.comにおいては、「【ヘアアイロン】人気ランキンキング2017 今年のおすすめはコレ!」との記事において、申立人商品は第3位にランクインしている(甲15)。
また、コメント欄には、「余計な装飾が付いていないシンプルなデザインは、若い世代を中心にすごく受け入れられています。シンプルなのでどんな世代の人でも使いやすいですし、メンズでも購入する人が多いのだとか!」と紹介されており、申立人商品が人気商品であることがわかる。
なお、本ウェブサイトは、google検索エンジンにおいて「ヘアアイロンランキング」と検索すると、1番目に表示されているウェブサイトであり(甲14)、多くの人が閲覧しているウェブサイトであるといえる。
(エ) 小括
以上のとおり、申立人商品は、ヘアアイロンのランキングに関して掲載した複数のウェブサイトにおいて上位にランクインしており、「SALONIA」ブランドの知名度は極めて高いものになっているといえる。
オ 雑誌の記事
申立人商品は、以下に示すようなファッション雑誌の特集記事の中で度々取り上げられており(甲16)、「SALONIA」ブランドの商品の注目度が高いことを示している(ヴィヴィにおいては月間の発行部数が26万部を超える雑誌である(甲17)。)。
・ビーズアップ 2012年5月号
・グリッター 2013年5月号
・チョキチョキガールズ 2014年3月号
・ビーズアップ 2014年6月号
・グリッター 2014年9月号
・ヴィヴィ 2014年12月号
・アール 2015年2月号
・Ray おしゃれヘアカタログ700 2015年春夏
・女性セブン 2015年8月号
・大人髪カタログ 2015年12月号
・ビーズアップ 2016年7月号
特に、ビーズアップ2014年6月号(甲16の4)、ヴィヴィ2014年12月号(甲16の6)、女性セブン2015年8月号(甲16の9)の記事において申立人商品が人気の高い商品であることを示しており、引用商標が需要者に広く知られていることが分かる。
カ 小括
以上より、申立人の長年に亘る大規模な営業・販売活動に加え、多方面における引用商標の宣伝活動、また、数多くのメディアにおける引用商標の表示の結果、引用商標は理容・美容業界において非常に有名で目立った存在となっている。そのため、本件商標の出願時及び登録査定時において、引用商標が需要者の間で周知となっていたことは明らかである。
(3)商標法第4条第1項第15号について
本号の「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」であるか否かの判断にあたっては、ア)その他人の標章の周知度、イ)その他人の標章が創造標章であるかどうか、ウ)その他人の標章がハウスマークであるか、エ)企業における多角化の可能性、オ)商品間・役務間又は商品と役務の関連性等を総合的に考慮する必要があるが、かかる要素を総合的に考慮した場合に、本件商標と引用商標との間で出所の混同のおそれがあることは明らかである。
ア 他人の標章の周知度
引用商標が需要者の間で広く知られた周知・著名商標であることは、上記(2)で詳述したとおりであり、引用商標の需要者への浸透度は非常に大きいといえる。
イ 他人の標章が創造標章であるかどうか
引用商標は、申立人が創造した創造標章であり、強い自他商品識別力を有する商標である。
ウ 他人の標章がハウスマークであるか
申立人は、引用商標をヘアアイロンのほか、ヘアドライヤー、化粧品等の商品にも使用しており、引用商標はハウスマークとして位置づけられるものである。
エ 企業の多角化の可能性
申立人は、ヘアアイロン、ヘアドライヤー、化粧品のほか、シャンプーや各種の食品の製造、販売も行っており、多角的に幅広い業務を行っている。
オ 商品間・役務間又は商品と役務の関連性
本件商標の指定商品中「頭飾品」は、申立人が行っているヘアケア事業に関連するものであり、その他の指定商品も申立人が販売する可能性がある商品である。
カ 小括
以上述べたアないしオの要素を総合的に考慮すると、商標権者が本件商標をその指定商品に使用した場合、取引者、需要者に、申立人と関連した商品であるとの認識を抱かせるおそれがあり、広義の混同のおそれがあることは明らかである。
したがって、本件商標は、申立人の業務に係る商品と出所の混同を生じさせるおそれが大きい商標であり、商標法第4条第1項第15号に基づく取消理由を有する。
(4)商標法第4条第1項第19号について
商標権者は、平成28年後半より、Amazonの通販サイ卜において、「ヒメツヤ」の名称で、申立人の「SALONIAダブルイオンストレー卜アイロン SL-004S」との商品名のへアアイロン(以下「申立人ストレー卜アイロン」という。)と寸法も含め、完全に同一の形態のへアアイロン(以下「被疑侵害商品」という。)を、「DARKIRON ス卜レートへアアイロン ダブルイオン」との商品名(旧商品名「ELECTROHOME」から変更)で販売していたので、本件商標の出願の意図は不正の目的によるものであると推認される。
申立人ストレー卜アイロンと被疑侵害商品の対比は、対比表(甲18)に記載のとおりであるが、被疑侵害商品は、申立人ストレー卜アイロンとブランド名のロゴを消した点以外は完全に同一の形態からなり、商品の外箱のデザインも申立人ストレー卜アイロンの外箱のデザインと実質的に同一である。また、取扱説明書も申立人ストレー卜アイロンの取扱説明書をそのままコピーしたものであり、文章表現や写真の配置等も完全に共通している。
被疑侵害商品は、主にAmazonのウェブサイトで販売されていたところ、申立人がAmazon社に通告したことにより、Amazonのウェブサイトでの被疑侵害商品の販売は中止となったが、商標権者は、かかる処分を不服として、日本の販売店である株式会社サイタステックを通じて申立人に対して書面(甲19)を送付してきている(株式会社サイタステックは、本件商標の出願の代理人)。
以上の点に鑑みると、本件商標の出願の目的が、申立人の業務を妨害するためか、申立人との交渉を有利に進めるためなど「不正の目的」でなされたものである可能性は極めて高いといえる。
また、上述したとおり、引用商標が需要者の間で広く知られた著名商標であるといえ、本件商標と引用商標が同一・類似であることも明らかである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に基づく取消理由を有するというべきである。(異議決定注:申立人は、本(4)において商標権者を別法人と誤解し主張するところがあるが、主張の全趣旨から上述の趣旨と解した。次の(5)も同じ。)
(5)商標法第4条第1項第7号について
審査基準では、本号に該当する例として、「当該商標の出願の経緯に社会的相当性を欠くものがある等、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合」が挙げられているが、上述した本件商標の出願経緯に鑑みると、本件商標の登録を認めると、商標法の予定する秩序に反する事態が生じることは明らかである。
また、本件商標の登録が維持された場合、本件商標の商標権に基づいて申立人やその取引先(申立人の商品をインターネットで販売している業者等)に対し、法的根拠のない警告書が出されたり、申立人に対し、商標権の買い取りを求めて来たりする可能性が非常に高く、公正な取引秩序を害する事態が生じる可能性は極めて大きい。
以上の点に鑑みると、本件商標は「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当し、商標法第4条第1項第7号に基づく取消理由を有するというべきである。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次の事実を認めることができる。
(ア)申立人(吸収合併した株式会社メインラインを含む。)は、平成24年頃から引用商標を付したヘアアイロン(以下「申立人ヘアアイロン」という。)を販売し(甲6、甲16の1)、現在も同商品を継続して販売しているほか、ヘアドライヤー、ヘアクリーム、ヘアオイルなども販売している(甲4)。
(イ)申立人ヘアアイロンの販売実績及びヘアアイロン市場におけるシェアは、2012年(平成24年)が5億円で4.7%、2013年が5.5億円で5.0%、2014年(見込み)が6億円で5.1%であり、いずれの年も5位であった(甲6)。
(ウ)通販サイト「楽天市場」において、「SALONIAオフィシャルサイト」が、「2015年楽天年間ランキング 受賞ショップ一覧」の「家電」及び「美容・コスメ・香水」の項にそれぞれ掲載された(甲7の1)。
また、「ショップ・オブ・ザ・イヤー2016 ジャンル賞」の「美容・ヘアケア・ネイル」のジャンル大賞を受賞し、それを紹介するウェブページには申立人ヘアアイロンなどが掲載されている(甲7の2)。
さらに、「2016年楽天年間ランキング」において、「SALONIAオフィシャルサイト」が、家電ジャンルで5位及び21位として、申立人ヘアアイロンなどとともに掲載されている(甲8)。
(エ)申立人ヘアアイロンは、通販サイト「Amazon」において、「ランキング大賞2015 家電」で13位、「ランキング大賞2016 家電」で4位であった(甲10の1、2)。
(オ)申立人ヘアアイロンは、本件商標の登録査定の日以降、上記通販サイトなど複数のウェブサイトの各種ランキング(週間、日別を含む。)において、1位ないし3位を含む上位にランキングされている(甲9,甲10の3、4、甲11?甲13、甲15)。
(カ)申立人ヘアアイロンは、2012年(平成24年)5月頃から2016年7月頃までの間、ファッション雑誌に記事又は広告が11回掲載された(甲16)。
イ 上記アのとおり、申立人は平成24年頃から現在まで申立人ヘアアイロンを継続して販売していること、申立人ヘアアイロンの平成24年ないし平成26年の販売実績(見込みを含む。)が5億円ないし6億円、シェアが5%前後で5位であること、申立人ヘアアイロンは平成27年ないし平成29年の各種ランキングで上位にランキングされていること、及び平成24年ないし平成28年には各種雑誌で紹介等されていることからすれば、申立人ヘアアイロンに使用されている引用商標は、申立人の業務に係る商品であることを表示するものとして需要者の間にある程度認識されているものと認めることができる。
しかしながら、上記の平成24年ないし平成26年の販売額及びシェアはヘアアイロンの1ブランドの売上げとしてその周知性を基礎付けるほど多額及び高シェアであるとは認められないと判断するのが相当である。
そして、通販サイトのランキングには、「SALONIAオフィシャルサイト」のもの、極めて短期間のものが含まれ、何より売上金額などを示すものは含まれていない。また、雑誌への掲載は本件商標の登録出願の日前の4年間で11回掲載されたに過ぎない。
さらに、「SALONIA」ブランド商品の売上げは、平成27年度が13.1億円、平成28年度が15.8億円である旨の陳述書(甲5)が提出されているが、かかる額を裏付ける証左はなく、仮にそれが事実であるとしても、理容・美容関係の幅広い商品における1ブランドの売上げとしてその周知性を基礎付けるほど多額であると認めるに足りる証左は見いだせない。
したがって、引用商標は、本件商標の登録出願の日前ないし登録査定時において、他人(申立人)の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
本件商標及び引用商標は、上記1及び上記2のとおり、いずれも「SALONIA」の欧文字を標準文字で表してなるものであるから、同一の商標である。
しかしながら、(1)のとおり引用商標は申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであるから、本件商標は、これに接する取引者、需要者が引用商標を連想又は想起するものということはできない。
してみれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
(3)商標法第4条第1項第19号について
上記(2)のとおり、本件商標は引用商標と同一の商標であり、引用商標は申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
そして、申立人は、商標権者が通販サイ卜において「被疑侵害商品」を販売していたので、本件商標の出願の意図は不正の目的によるものであると推認される旨主張しているが、商標権者がかかる販売を行った事実を認めるに足りる証左は見いだせない。よって、申立人のかかる主張は、その前提において採用できない。
さらに、他に本件商標が不正の目的をもって使用をするものと認め得る証左も見いだせない。
してみれば、本件商標は不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものといえない。
(4)商標法第4条第1項第7号について
申立人は、本件商標の出願の目的が申立人の業務を妨害するためか、申立人との交渉を有利に進めるためなど「不正の目的」でなされたものである可能性は極めて高い、及び本件商標の商標権に基づいて申立人や申立人の商品をインターネットで販売している業者等に対し警告書が出されたり、申立人に対し商標権の買い取りを求めて来たりする可能性が非常に高く、公正な取引秩序を害する事態が生じる可能性は極めて大きいとして、本件商標は「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当する旨主張している。
しかしながら、申立人が商標「SALONIA」を使用しているのは、ヘアアイロン、ヘアドライヤー、ヘアクリーム、ヘアオイルなどの理容・美容関係の商品であり、本件商標の指定商品について商標「SALONIA」を使用している又は使用しようとしている主張及び証左はないから、申立人のかかる主張は、その前提において採用することは困難である。
そして、本件商標が、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないなど、公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。
してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものといえない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2018-03-13 
出願番号 商願2016-78431(T2016-78431) 
審決分類 T 1 651・ 222- Y (W26)
T 1 651・ 22- Y (W26)
T 1 651・ 271- Y (W26)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松田 訓子 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 田中 幸一
大森 友子
登録日 2017-05-12 
登録番号 商標登録第5945284号(T5945284) 
権利者 深セン市怡怡科技有限公司
商標の称呼 サロニア 
代理人 山田 威一郎 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ