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審決分類 審判 一部申立て  登録を維持 W45
審判 一部申立て  登録を維持 W45
審判 一部申立て  登録を維持 W45
管理番号 1343217 
異議申立番号 異議2018-900057 
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2018-09-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-03-07 
確定日 2018-06-21 
異議申立件数
事件の表示 登録第6003152号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第6003152号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第6003152号商標(以下「本件商標」という。)は、「届け出挙式」の文字を標準文字で表してなり、平成29年3月15日に登録出願、第45類「婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供」を含む、第9類、第16類及び第45類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年10月13日に登録査定され、同年12月8日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、 本件商標はその指定商品及び指定役務中、第45類「婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供」(以下「本件申立役務」という。)について、商標法第3条第1項第1号及び同法第4条第1項第7号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、インターネット記事とそのURLを明示すると共に、申立人宛の公文書任意的開示回答書を提出している。
(1)商標法第3条第1項第1号について
本件商標は、「届け出挙式」の文字を標準文字で表してなるところ、これは、「役所・学校・会社などに、必要とされる事柄を文書や口頭で正式に申し出ること」の意味を有する「届け出」の語と、「式、特に結婚式をあげること」の意味を有する「挙式」の語とを組み合わせてなるものであって、その構成文字全体として、「役所での届出と結婚式を挙げること」程の意味合いを認識させるものである。
そして、「届け出挙式」は、地方自治体、議会関係者においては、「婚姻届を提出した後、役所でできる挙式」として、広報誌の掲載等において、すでに広く一般に使用され、特に、宗教法人を支持母体とする政治団体が、各地方自治体に対してその導入を提案している事業でもある。
本件申立役務に関しては、苫小牧市ほか地方自治体において、その名称を用いて、婚姻の当事者に対して、挙式するための市役所庁舎等の施設の提供を実施しており、民間事業者が営利目的で実施している事業ではないことが認識されるに至っているものであって、すでに、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきである。
したがって、本件商標は、役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、商標法第3条第1項第1号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第7号について
ア 商標法第4条第1項第7号に規定する「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(a)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(c)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(d)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれると解される(知財高裁 平成17年(行ケ)第10349号)。
イ ところで、日本における婚姻の成立は、民法第739条の規定により、市町村長に対する届出によって成立するという、欧米諸国とは異なった、世界に類を見ない制度を採用している。すでに苫小牧市役所等において庁舎施設内で実施されている「届け出挙式」の事業は、欧米諸国で採用されているような儀式を市役所庁舎施設内において行うことで、婚姻の儀式と届出の有機的結合を試みているものとも捉えられる。しかしながら、ヨーロッパ各国において、婚姻の成立にあたり挙式を要件としているのは、1563年のトリエント公会議によって確認された婚姻の秘跡(サクラメント)の支配の影響を少なからず受けているものである。日本において普及している挙式の形式は、たとえ習俗化しているとしても、その由来から宗教的活動とは全く無縁ということもできないものである。
日本において民間事業者が実施している挙式の形態は、教会式・キリスト教式・神前式・仏前式といった、宗教的要素を含んでいるのがほとんどであり、いくら、宗教的要素のない人前式としても、花嫁のウェディングドレス着用やブーケの用意などは、キリスト教由来であることが想像に難くない。そもそも、権限を有する者の前で男女が永遠の愛を宣誓するスタイルは、キリスト教の布教に伴って世界各地域に浸透したものであって、挙式における、神父や牧師に相当する司式者の役を、市長等の勤務時間中の公務員が務めることには問題が生じる。日本では、国家(政府)と教会(宗教団体)を分離する政教分離を原則としているところ、市町村役場庁舎内において、いくら任意であるとはいえ、儀式の遂行をすることは、憲法第20条第3項の規定に抵触することを否定できないのである。
日本における婚姻の成立において、儀式の挙行を要件とすることなく、戸籍法に規定する届出のみによって成立することとして、また、その届出にあたっては、当事者本人の市役所窓口への出頭ですら、民法等の法律において要求されていないのは、政教分離の要請の観点から極めて妥当なものであって、将来にわたって維持されるべきものである。そうすると、婚姻の成立に関して「届け出」と「挙式」を結合させた名称を用いた事業を地方自治体が直接主催して実施することは社会公共の利益に反して著しく不適当であるとして指摘されても致し方ないものなのであって、ことのほか、地方自治体において実施する事業として、民間事業者が商標登録すること自体決して許容されるものではない。
「届け出挙式」の事業の実施、その普及に当たって、特定の宗教信者を排除することはできないことはいうまでもなく、また、そのために公の施設を、当事者や民間事業者に対して無償で提供することについて、憲法第89条その他の観点において、問題が全くないとはいうことができない。登録査定の段階で、審査官がそこまで考慮することは、到底困難であることは致し方ないことであるが、いくら、その名称のみからでは商標法上の秩序に反しないとはいえ、当該商標の使用による効果及び影響を踏まえるなら、直接の規定がなくても、総務省・文化庁その他関係省庁に照会をするなどして、その立場をないがしろにすることがないようにするべきものと捉えられる。
本件商標の登録の維持にあたっては、現在のような、地方自治体主催の形態では、到底認められないものであり、あらぬ批判を回避するためにも、今後、当該事業は、民間事業者が主催して、公の施設を有償で借り受けて実施するべきものでなければならない。なにより、「届け出挙式」の名称使用について、独占排他的権利を与えた結果、特定の民間事業者の提供する役務について、議会議員が、各地方自治体に対して、その採用の便宜を図っているように市民に受け取られかねないものとなるのは不可避であって、いささか不本意なものである。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定役務中、本件申立役務については、商標法第3条第1項第1号及び同法第4条第1項第7号に違反してされたものである。

3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第1号及び同第3号該当性について
申立人は、本件商標が商標法第3条第1項第1号に該当する旨主張しているが、その理由は同第3号に該当する旨の主張と解されるので、両号の該当性について検討することとする。
ア 「届け出挙式」の文字(語)について
(ア)申立人が明示するインターネット記事及び職権調査によれば、次の事実が認められる。
a 本件商標の登録査定の日以前において、平成29年2月14日に苫小牧市で、同年3月15日に東京都港区で、同年3月22日に鈴鹿市で、同年3月26日に東京都足立区で、いずれも「届け出挙式」と称し、婚姻届を提出した後、その役所内で結婚式が行われた。
b それらは、いずれも商標権者の関係会社が協力し、当該役所(地方自治体)が主催したものである。なお、本件商標の登録査定の日後においては、八王子市、越谷市、西宮市、横須賀市が「届け出挙式」を行っており、それらについても商標権者の関係会社が協力している。
(イ)上記(ア)のとおり、本件商標の登録査定の日以前に「届け出挙式」が行われたのはわずか4件であり、しかもそのいずれも商標権者の関係会社が協力していることからすれば、「届け出挙式」の文字(語)は、本件商標の登録査定時において、本件申立役務の質又は普通名称を表すものとして普通に用いられていたものと認めることはできず、また、当該役務に係る取引者及び需要者が、その役務の質又は普通名称を表示したものと認識していたものと認めることもできない。
イ 本件商標は、前記1のとおり「届け出挙式」の文字からなるものであるが、当該文字は、上記アのとおり、本件商標の登録査定時において、本件申立役務の質又は普通名称を表すものとして普通に用いられていたものとはいえず、当該役務に係る取引者及び需要者をして、本件商標は、その役務の質又は普通名称であると認識していたと認めることはできない。
さらに、職権をもって調査するも、「届け出挙式」の文字が本件申立役務の質又は普通名称を表示するものと認識されるなど、自他役務識別標識としての機能を果たし得ないというべき事情は見いだせない。
そうすると、本件商標は、これを本件申立役務に使用しても、当該役務の質又は普通名称などを表示するものでなく、自他役務識別標識としての機能を果たし得るものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第1号及び同第3号のいずれにも該当しない。
(2)商標法第4条第1項第7号該当性について
ア 申立人は、地方自治体が「届け出挙式」を主催し、かつ、そのために公の施設を無償で提供していることを前提とし、政教分離を原則とする我が国において、地方自治体が宗教的要素を含む挙式を遂行すること、及びそのために公の施設を当事者や民間事業者に無償で提供することは、社会公共の利益に反して著しく不適当であり、また、地方自治体において実施する事業を民間事業者が商標登録することは許容されるものでない旨主張している。
イ しかしながら、地方自治体が「届け出挙式」を主催し、公の施設を無償で提供している事例があるとしても、本件商標についての本号該当性の判断を左右するものではない。
また、ある事業を遂行するにあたって、官公庁や民間事業者など複数の者が主催者(共催者)、協賛者、後援者、協力者などとして参画することは一般に行われるものであり、誰がどのような立場で参画するかは、事業ごとに当事者間で決すべきことであり、本件においては、いずれも商標権者の関係会社が当該挙式の遂行にあたっての協力者であることを考慮すれば、地方自治体が「届け出挙式」を主催している事例があることをもって、直ちに民間事業者が当該「届け出挙式」の文字について商標登録を受けることは許されないとはいえない。
ウ その他に、本件商標「届け出挙式」が、前記2(2)アの判決(知財高裁 平成17年(行ケ)第10349号)で説示する(a)ないし(e)のいずれかに該当するなど、公序良俗に反するというべき事情は見いだせない。
エ したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品及び指定役務中、第45類「婚礼(結婚披露を含む。)のための施設の提供」について、商標法第3条第1項第1号及び同第3号並びに同法第4条第1項第7号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2018-06-12 
出願番号 商願2017-34457(T2017-34457) 
審決分類 T 1 652・ 13- Y (W45)
T 1 652・ 11- Y (W45)
T 1 652・ 22- Y (W45)
最終処分 維持  
前審関与審査官 白鳥 幹周 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 冨澤 美加
鈴木 雅也
登録日 2017-12-08 
登録番号 商標登録第6003152号(T6003152) 
権利者 株式会社リクルートホールディングス
商標の称呼 トドケデキョシキ、トドケデ、キョシキ 

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