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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X30
管理番号 1343198 
審判番号 取消2016-300478 
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2016-07-08 
確定日 2018-08-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第5381958号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
登録第5381958号商標(以下「本件商標」という。)は、「DELTA」の文字を標準文字で表してなり、平成22年7月1日に登録出願、第30類「菓子及びパン,アーモンドペースト,穀物の加工品,食用粉類,はちみつ,アーモンド入り菓子,洋菓子,穀物調整品,ピーナッツ入り菓子」並びに第29類、第31類及び第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同23年1月7日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成28年7月27日にされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中、第30類「菓子及びパン,アーモンド入り菓子,洋菓子,ピーナッツ入り菓子」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める旨述べ、その理由を審判請求書、平成29年3月17日付け審判事件弁駁書及び同年9月13日付け口頭審理陳述要領書において、要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第8号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、本件審判の請求に係る指定商品について、継続して3年以上日本国内において使用されていないものであるから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人の商品カタログ(乙2)
ア 商品カタログ
被請求人が提出した商品カタログ(乙2)は、表紙に「Retail/Product Guide」と明記されているとおり、卸売又は小売の役務の提供に当たって使用するカタログであるから、第30類「菓子等」について商標を使用したことを示す証拠ではない。
すなわち、上記カタログの表紙には、ドライフルーツ又はナッツ製品の写真が掲載され、「ドライフルーツやナッツは、」、「安心安全なドライフルーツ、ナッツ作りを追求しています。」、「アーモンド・クルミ・レーズンなどを始めとする」等の記載とともに、ドライフルーツ又はナッツ製品が掲載されている(甲3:乙2の写し)ことから、当該カタログは、掲載製品からしても、その構成全体からしても、ドライフルーツ又はナッツ製品の卸売又は小売の役務に関するカタログとしてしか認識され得ないものである。
したがって、上記カタログに表示されたいずれの標章も、第30類「菓子等」の出所識別標識として認識され、取引されたとはいえない。
イ 商品カタログの使用時期
被請求人は、乙第4号証の請求書を根拠に、乙第2号証の商品カタログが2016年6月6日に納品されたと主張するが、当該請求書に記載された「商品パンフ(茶)」が乙第2号証の商品カタログかどうかは不明である。そして、乙第2号証は、抜粋写しとされるものであるため、全体の構成、総ページ数も確認できず、1冊のカタログから抜粋したものかも不明である。
また、被請求人は、上記商品カタログについて、「被請求人の商品カタログ(2016年6月現在)である」とも主張するが、当該カタログの裏表紙には、「*当カタログの内容は2016年6月現在のものとなります。」と記載があるにすぎず、その年月の記載は、当該カタログの発行日や使用時期を示すものではない。
さらに、上記カタログには、「商品の仕様については、事前の通知なしに変更となる場合があります。」とも明記されていることから、掲載商品の取引時期とそのカタログの使用時期とが一致しないことが前提であり、当該カタログが商品の発注に必須のものではないことがうかがえる。
この点につき、被請求人は、「掲載されている商品は、本件審判の請求の登録前3年以内における被請求人の販売商品であることが明らかである」旨主張するが、仮に、掲載商品が2016年6月現在のものであったとしても、乙第2号証の商品カタログが本件審判の請求の登録前3年以内(以下「要証期間」という場合がある。)に取引で使用されたことを裏付けるものではないし、仮に、掲載商品と同一の商品が要証期間に取引された事実があったとしても、取引された商品に本件商標の表示がなければ、かかる取引の事実は、要証期間の本件商標の使用を示すものではない。
したがって、乙第2号証の商品カタログの裏表紙に「当カタログの内容は2016年6月現在のものとなります。」と記載があったとしても、被請求人が要証期間にそのカタログを掲載商品の取引で使用したことの証明にならない。
(2)被請求人の使用商標
ア 本件商標は、「DELTA」の文字を標準文字で表してなるものであるところ(甲1)、乙第2号証の商品カタログの表紙及び裏表紙に記載の商標(以下「使用商標」という。)は、図形と二段に書した「DELTA」及び「International Co.,Ltd.」の文字とが、外観上、まとまりよく一体的に表されていること、被請求人の名称「株式会社デルタインターナショナル」の英語表記が「DELTA International Co.,Ltd.」であることから、全体として被請求人の名称を観念させる一体の商標として認識され、取引されるものである。
そうすると、一体の商標として認識される使用商標と本件商標とは、図形及び「International Co.,Ltd.」の文字の有無という明らかな差異を有し、称呼、観念及び外観において同一性を有しない。
したがって、使用商標は、本件商標と同一ではなく、社会通念上同一でもない。
イ 被請求人は、使用商標の構成中の「International Co.,Ltd.」の文字部分が「社名表示として付記的なもの」と主張するが、上記商品カタログ(乙2)の表紙の「デルタインターナショナル商品カタログ」の表示のほか、被請求人自身が、社名を「Delta International」、「デルタインターナショナル」と略称していることは、当該カタログの記載から明らかであり(甲3:乙2の表紙、1ページ、裏表紙)、かかる主張は、乙各号証の記載と齟齬がある。
また、上記商品カタログの使用商標は、被請求人の「株式会社デルタインターナショナル」及び「DELTA International Co.,Ltd.」の名称並びに「Delta International」及び「デルタインターナショナル」の略称と近接して表示されているのであるから、かかる観点からしても、使用商標に接した取引者、需要者が、使用商標の構成中の「International Co.,Ltd.」の文字部分を「社名表示として付記的なもの」と認識し、使用商標の構成中の「DELTA」の文字部分のみを分離、抽出して、それを出所識別標識として取引したとする事情は見当たらない(甲3:乙2の表紙、1ページ、裏表紙)。
この点、被請求人は、上記商品カタログの1ページ目の「DELTA」、「デルタ」、「私たちデルタのドライフルーツやナッツは、すべてこの地球上の大地で採れる農作物から作られています」の記載について言及しているが、当該ページ上部の「DELTA」、「デルタ」の記載は、「私たちデルタのドライフルーツやナッツは」との記載から明らかなように、ドライフルーツとナッツに関する記載であって、第30類「菓子等」に関する記載ではないし、これに続く英文では、やはり「Delta International has been・・・」などと「Delta International」を略称として使用しており、当該ページの中央のより目立つ位置に「デルタインターナショナル」が略称として記載されている。
したがって、上記商品カタログの1ページ目の記載は、使用商標の構成中の「DELTA」が被請求人の略称と認識されるとする理由にはならない(甲3:乙2の1ページ)。
(3)本件審判の請求に係る指定商品についての使用
ア 「ラビトスロワイヤル」について
「ラビトスロワイヤル」の製品には、本件商標の表示はない(乙2)。
また、被請求人が提出したネットショップ「nutsberry」の記事(乙11)には、本件商標の使用はなく、そもそも、乙第8号証から乙第12号証は、要証期間外の記事であるため、要証期間の本件商標の使用を示すものではない。そして、被請求人は、要証期間での当該ネットショップでの販売事実があるとも主張しているが(乙13、乙14)、その販売に当たって、本件商標が使用されたことを示す証拠はない。
さらに、「ラビトスロワイヤル」は、「ドライいちじくにブランデー風味のチョコレートクリームを詰め、表面をチョコレートで薄くコーティング」した商品、すなわち、ドライいちじくであって、第30類「菓子等」ではない。現に、楽天市場の被請求人のネットショップ「nutsberry」においても、「【楽天市場】ドライフルーツ>いちじく>ラビトスロワイヤル」と記載され(乙11)、ドライフルーツに分類して販売している。
したがって、上記商品に関する乙各号証は、要証期間において被請求人が本件商標を第30類「菓子等」に使用したことを示すものではない。
イ 「フィグログ」について
(ア)「フィグログ」の製品には、本件商標の表示はない(乙2)。
また、被請求人が提出したネットショップ「nutsberry」の記事(乙12)には、本件商標の使用はなく、そもそも、乙第8号証から乙第12号証は、要証期間外の記事であるため、要証期間の本件商標の使用を示すものではない。そして、被請求人は、要証期間での当該ネットショップでの販売事実があるとも主張しているが(乙15、乙16)、その販売に当たって、本件商標が使用されたことを示す証拠はない。
さらに、被請求人は、請求明細書(乙7)を提出して、「フィグログ」が2016年7月22日に販売されたと主張するが、当該明細書は、被請求人が作成した書類であって、日付はなく、あて名も被覆されていて、要証期間の取引を客観的に示す証拠ではないし、仮に、「フィグログ」が販売されていたとしても、その取引に当たり、本件商標が使用されたことを示す証拠はない。
(イ)ところで、「フィグログ」の「フィグ」はイチジクを、「ログ」は丸太を意味するものであり(乙5の3の3ページ)、「フィグログ」は、「フィグ(いちじく)などのドライフルーツをフードプロセッサーにかけて丸太の形に成形したもの」(乙5の2の下から4行目)との説明のとおり、ドライフルーツとナッツを棒状に固めた商品であって、ドライフルーツやナッツと同じ第29類「加工果実」に分類される商品であり、第30類「菓子等」ではない。
被請求人は、「菓子」と紹介された記事を提出しているが(乙5の1?3)、約6,000万人の利用者を有するレシピ検索第1位のサイト「クックパッド」では、「イタリア・マルケ州の伝統食」、「ワインのつまみに最適」などと紹介されており(甲5の1?3)、一般的には、チーズや生ハムと一緒に食するワインのおつまみ、ドライフルーツとナッツを棒状に固めた商品、ドライフルーツの一種、として認識されていて、「フィグログ」が一般に「菓子等」と認識されていないことは明らかである。
(ウ)乙第2号証の商品カタログに記載された「フィグログ」と同じパッケージが掲載された乙第12号証の写真からは、そのパッケージの「Fig Log」の上には、「いちじくとクルミの美味しいおつまみ」、下には、「黒いちじく」と明記され、さらに、その下には、乾杯するワイングラスの図形が記載されていることが確認できる(甲6:乙12の1ページ及び2ページ)。
また、楽天市場の被請求人のネットショップ「nutsberry」でも、「【楽天市場】ドライフルーツ>いちじく>フィグログ」と記載され(乙12)、ドライフルーツに分類されており、販売実績と主張するページにも「【いちじく】【ワインのお供に】フィグログ」と記載されていて(乙15、乙16)、明らかに、被請求人自身が「いちじくとクルミ」からなるワインのおつまみと自称して取引している。
結局、被請求人自身が、「フィグログ」を「いちじくとクルミの美味しいおつまみ」、ワインのおつまみの「伝統食」である「ドライフルーツ」の一種として、宣伝し、販売している。
したがって、上記商品に関する乙各号証は、要証期間において被請求人が本件商標を第30類「菓子等」に使用したことを示すものではない。
ウ 「ディップチョコ」について
被請求人は、「ディップチョコ」について、商品規格書と包装デザインの書類を提出しているが、それが要証期間に販売されたことを示す証拠はない(乙6の1?5)。
また、上記「ディップチョコ」は、包装デザインの「CHOCOLATE DIPPED DRIED FRUITS.」の記載のとおり、チョコレートに浸したドライフルーツであって、第30類「菓子等」ではない。
したがって、上記商品に関する乙各号証は、要証期間において被請求人が本件商標を第30類「菓子等」に使用したことを示すものではない。
3 口頭審理陳述要領書
(1)「フィグログ」について
被請求人は、「フィグログ」について、被請求人の商品カタログ(乙2、乙31、乙45、乙46、乙48)に掲載されていることを理由として、商標法第2条第3項第8号の使用をしたと主張するが、被請求人が「フィグログ」について提出したいずれの書証も、要証期間における本件商標の「菓子等」への使用を示すものではない。
ア 乙第2号証のカタログについて
被請求人は、乙第2号証のカタログの作成時期と頒布方法を説明しているが、当該カタログが頒布されたことを示す証拠は一切提出されていない。
被請求人が提出した自社エントランスと受付の写真(乙23、乙24)は、要証期間外の2017年8月に撮影されたものであり、要証期間の事実を示す証拠ではない。
また、被請求人は、デザイン会社等との通信記録等の提出(乙17?乙22)、パソコン画面を印刷した書証(乙18、乙19)をもって、乙第17号証の電子メールの添付書類が乙第2号証のカタログであると主張するが、保存先が同一ネットワーク内の別のパソコンのハードディスクドライブ内である場合や、外部記録媒体(USBメモリ等)を利用すれば、同一ファイル名の異なるプロパティ情報をパソコン画面上に表示させることは容易であるし、ファイルの作成時期や更新日時を変更するフリーソフト等が入手可能であることは周知である。
したがって、上記パソコンの画面を印刷した書証は、電子メールの添付書類の内容を裏付ける証拠にはならず、乙第17号証の電子メールの添付書類の内容は不明であるから、乙第2号証のカタログが、いつ作成され、いつどのように頒布されたか不明である。
イ 乙第31号証のカタログについて
(ア)商品カタログの構成等
乙第31号証のカタログは、乙第2号証で提出された抜粋写し(表紙、1ページ、2ページ、5ページ、14ページ、裏表紙)とほぼ同様の構成である。
したがって、乙第31号証は、表紙に「Retail/Product Guide」と明記のとおり、卸売又は小売の役務の提供に当たって使用するカタログであり、「菓子類」について、商標を使用したことを示す証拠ではない。
すなわち、上記カタログの表紙には、ドライフルーツ又はナッツ製品の写真が掲載され、「ドライフルーツやナッツは、」、「安心安全なドライフルーツ、ナッツ作りを追求しています。」、「アーモンド・クルミ・レーズンなどを始めとする」等の記載とともに、ドライフルーツ又はナッツ製品が掲載されている(甲3:乙2の写し)。また、当該カタログの3ないし4ページに記載されたパートナー企業は、いずれもドライフルーツ又はナッツ製品に関する企業であり、当該カタログの5ないし14ページにも、ドライフルーツ又はナッツ製品が掲載されていることから、当該カタログは、掲載製品からしても、その構成全体からしても、ドライフルーツ又はナッツ製品の卸売又は小売の役務に関するカタログとしてしか認識され得ないものである。
したがって、上記カタログに表示されたいずれの標章も、第30類「菓子類」の出所識別標識として認識され、取引されたとはいえない。
(イ)商標について
乙第31号証のカタログの表紙及び裏表紙に記載された商標は、乙第2号証のそれと同一であるから、全体として被請求人の名称を観念させる一体の商標として認識され、取引されるものであり、本件商標と乙第31号証に記載の商標(使用商標)とは、図形及び「International Co.,Ltd.」の有無という明らかな差異を有し、称呼、観念及び外観において同一性を有しないものであるから、使用商標は、本件商標と同一ではなく、社会通念上同一でもない。
被請求人は、商品カタログの1ページ目の記載について縷々述べているが、既に審判事件弁駁書において述べたとおり、当該商品カタログの1ページ目の「DELTA」の表示は、「菓子等」に係る出所識別標識として認識されるものではない。
(ウ)カタログの頒布について
被請求人は、乙第31号証の商品カタログを「第50回スーパーマーケット・トレードショー2016」のブースで頒布したと主張する(乙25?乙38)が、被請求人が展示会ブースで撮影したとする写真(乙27、乙28)には、何がしかの冊子が並んでいるようには見えるが、その一つが乙第31号証のカタログかどうか不明である。
また、上述した乙第18号証及び乙第19号証と同様に、パソコン上の画面の印刷(乙28)で、画面上の写真の撮影時期を特定することはできず、乙第27号証の写真の撮影時期は不明である。
さらに、被請求人は、乙第2号証のカタログについてと同様に、デザイン会社等との通信記録等を提出し(乙17?乙22)、パソコンの画面を印刷した書証(乙35、乙36)をもって、乙第34号証の電子メールの添付書面が乙第31号証のカタログであると主張するが、既述のとおり、当該パソコンの画面を印刷した書証は、電子メールの添付書類の内容を裏付ける証拠にはならないから、乙第34号証の電子メールの添付書面の内容は不明である。
加えて、乙第31号証のカタログ1,000部の分の請求書(乙33)によれば、その印刷料は「130,000円」とあるが、同様の構成の乙第2号証のカタログを2,000部印刷した際の印刷料は「149,500円」(乙4)とほぼ同額であり、明らかに単価が異なる。また、当該請求書(乙33)には、「納品日:2016年02月08日」との記載があるが、その作成日は「2016/06/27」であり、乙第2号証のカタログの請求書(乙4)が「納品日:2016年6月6日」の2日後の「2016/6/8」に作成されているのに対し、4か月以上経過した後に作成されていて不自然である。さらに、被請求人は、複数の販促物を印刷しているようであり(乙23、乙24等)、乙第33号証の請求書が乙第31号証のカタログに関するものであるか不明である。
したがって、乙第31号証のカタログが、いつ作成され、いつどのように頒布されたか不明である。
ウ 発注について
被請求人は、JANコードが発注書に記載されていることを理由として、その発注時にカタログが使用されたと主張する(乙39?乙42)が、JANコードは、通常、バーコードスキャナで読み取れるように、商品パッケージに表示されるものであり(甲7)、JANコードが発注書に記載されたとしても、発注時にカタログ(乙2、乙31)を使用した証拠とはならず、また、発注書(乙39)には、規格等、カタログに記載のない情報も記載されている。
そもそも、乙第2号証又は乙第31号証のカタログのいずれにも、「フィグログ」の大きさ等の規格は一切記載がなく、これらのカタログで「フィグログ」が発注されたとは考えられない。
エ 乙第45号証、乙第46号証及び乙第48号証の各カタログについて
(ア)商品カタログの構成等
被請求人が通販用カタログと主張する「nutsberry」のカタログ(乙45、乙46、乙48)は、表紙に「ドライフルーツとナッツのお店」と明記され、ドライフルーツ又はナッツ製品が掲載されていて、乙第2号証及び乙第31号証のカタログと同様に、その掲載製品からしても、その構成全体からしても、ドライフルーツ又はナッツ製品の卸売又は小売の役務に関するカタログとしてしか認識され得ないものである。
したがって、上記カタログに表示されたいずれの標章も、「菓子類」の出所識別標識として認識され、取引されたとはいえない。
また、そもそも、「nutsberry」のカタログは、全体の構成、総ページ数が確認できず、1冊のカタログから抜粋したものかどうかも不明である。その表紙と裏表紙の「nuts/berry」、「ドライフルーツとナッツのお店」、その他の図形等が非常に不鮮明である一方、「商品カタログ」、「※内容、価格は随時変更される場合がございます。」、「詳しくはTELにてご確認ください。」、発行日、号数、被請求人の名称、住所、電話及びファックス番号等の黒字の記載(乙第48号証については、裏表紙の住所変更を告げる赤字の記載も含む。)並びにホームページアドレス及び「図形/DELTA DELTA International Co.,Ltd.」の青字の記載は、後から挿入したかのように非常に鮮明で統一感がなく、中央に記載された「nuts/berry」の図形等の商標と「商品カタログ」の文字の中心が不一致で、顧客に頒布する「紙媒体の通販用カタログ」というには煩雑な仕上がりであり、不自然である。
さらに、2013年5月1日付け及び2014年8月1日付のカタログ(乙45,乙46)の「現在の訳あり商品!」には、賞味期限が各発行日の3年以上前である2010年11月15日の「大粒!種付きオレゴン産プルーン200g×10袋」が掲載されていることから、提出されたカタログ(乙45、乙46、乙48)の発行日も内容も、信憑性を欠くといわざるを得ない。これらは、関係者で事後的に作成が可能なものであるため、商標の使用の事実を示すには客観性を欠く。
加えて、「nutsberry」のカタログには、ネットショップ「nutsberry」で使用されている商品番号(乙9の3ページ目、乙10の2及び3ページ目)の掲載もなく、被請求人のネットショップ「nutsberry」(乙8、乙9、乙39)で表示されていない「図形/DELTA DELTA International Co.,Ltd.」が、通販用カタログに唐突に表示されていることも不自然である。
(イ)商標について
裏表紙に記載された「図形/DELTA DELTA International Co.,Ltd.」は、被請求人の名称を観念させる一体の商標として認識され、取引されるものであり、本件商標とは、図形及び「International Co.,Ltd.」の文字の有無という明らかな差異を有し、称呼、観念及び外観において同一性を有しないから、本件商標と同一ではなく、社会通念上同一でもない。
(ウ)頒布について
被請求人は、「nutsberry」のカタログを送付した証拠として乙第47号証を提出しているが、そこに記載されている「カタログ」がどのカタログを示すのか不明である。
また、乙第47号証は、関係者で事後的に作成可能なものであるから、商標の使用の事実を示すには客観性を欠くものである。
したがって、被請求人が、要証期間に、「nutsberry」のカタログ(乙45、乙46、乙48)を頒布したかどうかは不明である。
オ 「フィグログ」が「菓子類」でないことについて
「フィグログ」は、審判事件弁駁書において述べたとおり、「菓子類」ではない。
被請求人は、「第50回スーパーマーケット・トレードショー2016」の出展申込書の出展内容に「くだもの加工食品 スイーツ原料(ドライフルーツ&ナッツ)」と記載しているとおり、自らの取扱商品を「くだもの加工食品、スイーツ原料、ドライフルーツ&ナッツ」と認識して取引をしていることが明らかである。
実際に、乙第31号証のカタログでは、「With Wine」の見出しで、干しブドウ等のドライフルーツと一緒に分類して掲載し、「フィグログ」と「ラビトスロワイヤル」をワインのおつまみであるドライフルーツの一種として取り扱っている。
「フィグログ」は、被請求人が「アメリカ産のイチジク、プルーン、レーズン、クルミを使い日本で加工した」と説明しているように(乙12、乙45、乙46)、「イチジク、プルーン、レーズン、クルミ」等の加工品、加工果実の一種であり、「菓子類」ではない。
(2)「ラビトスロワイヤル」について
被請求人は、「ラビトスロワイヤル」について、「フィグログ」と同様に、被請求人の商品カタログ(乙2、乙31、乙45、乙46、乙48)に掲載されているとして、商標法第2条第3項第8号の使用をした旨主張する。
しかしながら、「ラビトスロワイヤル」は、審判事件弁駁書において述べたように、「菓子類」ではなく、「フィグログ」について述べたことと同様に、被請求人が「ラビトスロワイヤル」について提出したいずれの書証も、要証期間における本件商標の「菓子等」への使用を示すものではない。
(3)「ディップチョコ」について
被請求人は、「ディップチョコ」(乙6の1?5)の販売事実を示すとして、乙第49号証ないし乙第57号証を提出している。
しかしながら、「ディップチョコ」は、審判事件弁駁書において主張したように、包装デザインの「CHOCOLATE DIPPED DRIED FRUITS.」の記載のとおり、チョコレートに浸したドライフルーツであって、第30類「菓子等」ではない。「ディップ」とは、広辞苑に記載のとおり、「少し浸すこと。」(甲8)であり、「人気のドライフルーツをひとつひとつチョコにディップ」(乙57)したというのであれば、ドライフルーツを少しチョコレートに浸しただけの商品であり、当該商品がドライフルーツであることは明らかである。被請求人が商品の画像として提出した乙第55号証でも、ドライフルーツの一部が確認できる。
また、被請求人は、乙第55号証を提出して実際に上記商品が販売されたと主張するが、当該商品が要証期間に存在していたものかどうか、実際に販売されたものかどうかを客観的に示す証拠はない。
さらに、被請求人が「ディップチョコ」と称する商品の包装(乙6の5、乙55)には、「CHOCOLATE DIPPED DRIED FRUITS.」と明記され、「ディップチョコ」の記載は全くない。そして、被請求人が提出したその他の書証には、「ドライフルーツチョコ」(乙52)、「ドライフルーツ チョコディップ」(乙6の5、乙53)等の記載もあり、被請求人が「ディップチョコ」と称する商品の包装(乙6の5、乙55)が、提出された取引書類に記載された商品に関するものかどうか不明である。
加えて、被請求人が提出した包装(乙6、乙53、乙55)に表示された商標は、乙第2号証及び乙第31号証に記載されているものと同一であるから、既述のとおり、本件商標とは同一性を有しないものであり、本件商標とは同一ではなく、社会通念上同一でもない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を平成29年1月10日付け審判事件答弁書及び同年8月31日付け口頭審理陳述要領書において,要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第57号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 審判事件答弁書
商標権者である被請求人は、要証期間に日本国内において、本件商標を本件審判の請求に係る指定商品について使用しているから、本件審判の請求は成り立たない。
(1)カタログにおける商標使用
ア 本件商標は、被請求人の企業名を表示するコーポレートブランドとして、被請求人商品やウェブサイト等に使用されている。
被請求人のウェブサイトの会社情報では、ドライフルーツ、ナッツ等の食品の卸売、輸出入、企画開発、販売を主な事業とし、その他農産加工品、スイーツ等も取り扱っていることが示されている(乙1)。
乙第2号証は、被請求人の商品カタログ(2016年6月現在)であって、ドライフルーツ、ナッツ、フルーツシロップ漬け等の商品のほか、ドライフルーツ入りのチョコレート等菓子も掲載されており、当該カタログは、2016年5月6日に被請求人の本店を現在の所在地へ移転(乙3)したため、新たに印刷されたものであり、その作成時期は、印刷会社の請求書(乙4)によっても客観的に証明される。
上記請求書(乙4)には、2016年6月6日に「商品パンフ(茶)」2,000部が納品され、同年6月8日に請求書が発行されたことが示されている。
したがって、上記カタログ(乙2)に掲載されている商品は、要証期間における被請求人の販売商品であることが明らかである。
イ 上記カタログ(乙2)の表紙及び裏表紙には、販売者を表示する「DELTA」の商標が記載されている。これは、細い縦長の書体による「DELTA」と、その下に「International Co.,Ltd.」が表示されているが、後者は、社名表示として付記的なものであり、その幅は「DELTA」の文字の横幅に揃えられ、高さは「DELTA」の文字の5分の1程度で、かなり小さく表されているから、需要者は、一見して「DELTA」の文字部分に注目し、この顕著に表示された「DELTA」の文字部分が出所識別機能を発揮しているといえる。
また、上記カタログの1ページ目には、「DELTA」の文字が顕著に表示され、その下に「デルタ」の片仮名が小さく記載されている。そして、当該ページ中には、「私たちデルタのドライフルーツやナッツは、すべてこの地球上の大地で採れる農作物から作られています。」と記載があるように、「DELTA」の語が被請求人を表示する略称として使用されていることが分かる。
さらに、ドライフルーツ、ナッツ等の商品画像では、包装に「DELTA」商標が使用されている。
したがって、本件商標と同一の称呼及び観念の生じる社会通念上同一の商標が、カタログに掲載された商品について使用されているといえる。
(2)本件審判の請求に係る指定商品についての使用
ア チョコレート菓子「ラビトスロワイヤル」
被請求人は、ドライフルーツを含む菓子等の輸入販売を行っており、いちじくチョコレート「ラビトスロワイヤル」を販売している。これは、被請求人の商品カタログ(乙2)の14ページに掲載されている商品であり、現在も店頭及びネットショップ等において販売されている。当該カタログには、上述のとおり、本件商標と社会通念上同一といえる「DELTA」商標が掲載され、当該商標は、販売者を表示するものとして使用されている。
したがって、菓子「ラビトスロワイヤル」の販売について、本件商標が使用されているといえる。
イ 菓子「フィグログ」
被請求人は、菓子「フィグログ」を日本向けに企画販売している。当該「フィグログ」は、イタリアの伝統菓子であり、インターネット上の記事やレシピ紹介などで、ドライフルーツやナッツを練りこんだ棒状の菓子として説明されている(乙5の1?3)。
上記商品も被請求人の商品カタログ(乙2)に掲載されており、現在も店頭及びネットショップ等において販売されており、当該カタログには、本件商標と社会通念上同一の商標「DELTA」が記載されていることから、菓子「フィグログ」の販売について、本件商標が使用されているといえる。
ウ チョコレート菓子「ディップチョコ」
被請求人は、ドライフルーツにチョコレートをコーティングしたチョコレート菓子「ディップチョコ」(乙6)を販売している。当該チョコレート菓子は、現在、販売を休止しているが、要証期間である2013年10月4日付けの「ディップチョコ」の商品規格書(乙6の1?4)の商品写真のように、その包装に「DELTA」の文字が使用されている。乙第6号証の5は、当該包装のデザインの版下であり、当該商品規格書の商品写真のとおり、「DELTA」の文字が包装の右下又は左下に明記されていることを示している。
そして、上記「ディップチョコ」への「DELTA」商標の商品への表示方法は、被請求人の商品カタログに掲載されているドライフルーツ等の包装への表示方法と同じものである。
したがって、チョコレート菓子「ディップチョコ」について、本件商標と社会通念上同一の商標「DELTA」が使用されているといえる。
エ 請求明細書における使用
乙第7号証は、被請求人が顧客に対して発行した請求明細書であり、上記菓子「フィグログ」が含まれている。当該明細書には、「(自)16年07月21日(至)16年08月20日」の記載があることから、「黒いフィグログ140g×12入」及び「白いフィグログ140g×12入」が2016年7月22日に販売されたことが分かる。
そして、上記菓子は、上述のとおり、被請求人の商品カタログに掲載されている菓子として、本件商標と社会通念上同一の商標「DELTA」の下に販売されているものである。
(3)被請求人のネットショップ「nutsberry」における使用
ア 被請求人は、ナッツやドライフルーツ等を中心に様々な食品を販売する通販サイト「nutsberry」を運営しており(乙8)、その会社概要には、被請求人が表示されている(乙9)ほか、被請求人のウェブサイトのトップページに「nutsberry」の表示がある(乙10)ことから、当該通販サイト(ネットショップ)の商品も、被請求人が販売者として理解されるものである。
そして、上記通販サイト(ネットショップ)では、上記「ラビトスロワイヤル」(乙11)や「フィグログ」(乙12)も販売している。
なお、上記「フィグログ」の商品案内には、「モンドセレクション2013金賞受賞」と大きく紹介され、「nutsberryではアメリカ産のイチジク、プルーン、レーズン、クルミを使い日本で加工したフィグログを完成させました。」の説明があることから、これが、被請求人が日本で企画販売している商品であることが示されている。
イ 上記通販サイト(ネットショップ)における被請求人の商品の2016年3月1日から31日までの取引実績は、次の(ア)及び(イ)のとおりであり、その実績は、被請求人が本件審判の請求に係る指定商品を現実に販売していることを客観的に証明するものであり、その使用に係る商標は、被請求人のコーポレートブランドを表す、本件商標と社会通念上同一の商標と認められるものである。
(ア)チョコレート菓子「ラビトスロワイヤル」
乙第13号証は、「ラビトスロワイヤル」の商品別売上高を示す管理者画面をプリントアウトしたものであり、商品名の欄に「【スペイン産】ラビトスロワイヤル(いちじくチョコ)<1kg>」と記載され、その右側のセルに商品番号、単価、売上個数、売上高、売上件数が記録されている。そして、2016年3月1日から同年3月31日までの間の売上個数として、363個と表示されているから、要証期間において当該商品が販売されていたことを示すものである。
また、上記商品名の行をクリックすると、商品ごとの購買者が一覧で表示され、その氏名、購買金額、購買回数、購買個数を確認することができる(乙14)ところ、当該一覧においても、「『【スペイン産】ラビトスロワイヤル(いちじくチョコ)<1kg>』購買者一覧」との表示があり、販売期間と商品名が証明されている。
(イ)菓子「フィグログ」
乙第15号証は、「フィグログ」の商品別売上高を示す管理者画面をプリントアウトしたものであり、商品名の欄に「【いちじく】【ワインのお供に】フィグログ(白)<140g>【マリアージュ】【トルコ産イチジク使用】」と記載され、その右側のセルに商品番号、単価、売上個数、売上高、売上件数が記録されている。そして、売上個数として、19個と表示されているから、要証期間において当該商品が販売されていたことを示すものである。
また、乙第16号証は、乙第14号証と同様、「【いちじく】【ワインのお供に】フィグログ(白)<140g>【マリアージュ】【トルコ産イチジク使用】」の購買者一覧を表示したものである。
2 口頭審理陳述要領書
(1)カタログの作成時期
ア 乙第2号証の商品カタログ(原本)の裏表紙右下に「当カタログの内容は2016年6月現在のものとなります。」の記載があり、乙第2号証と同一のカタログであることが分かる。
そして、上記カタログの表紙には、「DELTA」の文字が白地の正方形の中に目立つように記載されている。
また、上記カタログの1ページ目上部には、「DELTA」の文字が大きく表示され、その下に「デルタ」の文字が記載されており、「Diversity」、「Evolution」、「Learning」、「Traceability」、「Aspiration」の各語の頭文字を白抜きとして丸で囲み、縦に「DELTA」の文字が強調され、顕著に記載されている。
さらに、その下の「私たちデルタのドライフルーツやナッツは、すべてこの地球上の大地で採れる農作物から作られています。」という需要者へのメッセージや、社長挨拶の部分からみて、上記カタログに掲載された商品は、被請求人の企画、製造による商品であることが理解できる。「DELTA」の語のこのような顕著な表示方法は、記述的なものではなく、出所表示機能、品質保証機能を有する商標と理解されるものである。
したがって、上記カタログに掲載された商品に関し、商品の取引書類に標章を付して展示、頒布などにより提供する行為として、商標法第2条第3項第8号の使用に該当する。
イ 上記カタログに掲載された商品の販売時期を示す資料として、請求書写し(乙4)を提出したが、その請求件名「商品パンフ(茶)」は、乙第2号証の商品カタログに該当するものである。
商品カタログの印刷の流れは、以下のとおりである。
(ア)被請求人からカタログデザイン会社へデザイン修正の依頼及び承認
(イ)デザイン会社から印刷会社へ印刷データを直接送付
(ウ)印刷会社から被請求人へカタログ納品
上記取引の連絡はメールにより行われたことから、各社の担当者によるメール履歴を提出する。
乙第17号証は、被請求人担当者のAからデザイン会社(トランジット合同会社)のBに対し、2016年4月8日にデザイン修正依頼を行い、その後、同年5月27日に修正後の最終確認を行った際のメール内容である。Bが、最終版をAにメール送信した際のパソコン画面をプリントしたものが乙第18号証である。メール添付のPDFデータは、2016年6月版の商品カタログ(乙2)と同一のものであり、また、当該PDFデータのプロパティを表示したものが乙第19号証であり、ファイル名が一致し、その更新日は、メール送信日時の少し前である。
乙第20号証は、デザイン会社のBから印刷会社(株式会社精美堂)のCに対し、2016年5月30日に印刷入稿データを送り、データが受領された旨のメール内容である。
乙第21号証は、被請求人のAから印刷会社のCに対し、2016年5月27日にカタログ2,000部の印刷の見積りを依頼し、100部を先納品、900部を同年6月6日納品、残りを印刷会社保管とする旨のメール内容である。
また、乙第4号証の印刷会社の2016年6月8日付け請求書には、部数が「2,000部」、納品日が「2016年6月6日」との記載があるほか、搬送料の項目の備考欄には「保管料+搬送料(2回)」の記載があり、上記メールの内容と一致するものである。
したがって、上記請求書の写し(乙4)の請求件名「商品パンフ(茶)」が、乙第2号証の商品カタログと一致することに整合性がある。
乙第22号証は、デザイン会社の2016年5月30日付け請求書であり、内訳項目には「総合カタログ(コンシューマー用)2016年6月改訂版」とあることから、上記の取引を裏付ける資料である。
以上のメール履歴の内容から、乙第2号証の商品カタログは、要証期間である2016年6月に確かに作成された商品カタログであることが明らかである。
(2)カタログの頒布方法
ア 被請求人は、商品カタログの頒布場所として、自社のエントランス(乙23)、来訪者受付カウンター(乙24)で配布しているほか、主に以下の方法により頒布している。
(ア)取引先との商談時に持参し、商品の紹介時に使用する。
(イ)取引先担当者に送付又は直接渡し、今後の商品発注の参考としてもらう。
(ウ)問屋からの依頼の場合、希望部数を送付し、問屋取引先のスーパー、個人商店等における商品紹介に使用してもらう。
(エ)取引先からの依頼で、直接取引のない企業・店舗へ送付する。
(オ)スーパーマーケットトレードショー、展示会等で、ブース来場者に配布する。
上記のうち、(オ)のスーパーマーケットトレードショーは、スーパーマーケットを中心とする食品流通業界に最新情報を発信する商談展示会であり、毎年開催されている(乙25)。被請求人は、当該トレードショーに出展し、実際に商品を展示し、来場者に商品カタログを配布している。
乙第27号証は、2016年2月10日から12日までの間、東京ビッグサイトで開催された「第50回スーパーマーケット・トレードショー2016」(乙26)に出展した際に撮影した被請求人のブースの写真である。当該ブースの高い位置に「DELTA」の文字が顕著に表示され、被請求人の商品や商品カタログが展示されている風景が記録されている。当該写真のプロパティによれば、撮影日時は「2016/02/11 13:28」となっており、当該出展時の撮影であることが証明される(乙28)。
乙第29号証は、上記トレードショーの出展申込書の写しであり、出展者名には、被請求人が記載されている。
また、乙第30号証は、上記トレードショーの出展費用に関する平成27年(2015年)7月6日付け請求書の写しであり、前払いとして発行されたものである。
イ 被請求人は、「第50回スーパーマーケット・トレードショー2016」の出展に合わせ、2016年1月版の商品カタログの印刷を行っている。これは、実際に当該トレードショーで頒布した商品カタログである(乙31)。
上記カタログの裏表紙には、「当カタログの内容は2016年1月現在のものとなります。」の記載があり、住所は、移転前の旧住所となっている。
そして、上記カタログの印刷時期を明らかにするため、被請求人と前述の印刷会社の担当者間のメール履歴を提出する(乙32)。これによれば、2015年12月29日に、被請求人のDから印刷会社のEに対して、「コンシューマーカタログリニューアル版印刷 2月9日(搬入日)?12日までのスーパーマーケットトレードショウに間に合うように印刷をお願いしたいと思っています。」との発注内容が記載され、その後、2016年1月6日に納期を2月8日、完全データを2月1日渡しとする承認を行っている。
乙第33号証は、上記カタログ印刷に関する印刷会社の2016年6月27日付け請求書であり、件名は「商品パンフ」、納品日は「2016年02月08日」となっている。なお、納品日と請求日が離れているのは、当該カタログの納品を受けた被請求人が、その後、その代金の請求を受けていないことに気付き、印刷会社に連絡して請求書を発行してもらったためである。
また、上記印刷においても、前述のデザイン会社にカタログデザインの修正を依頼しており、2016年1月29日に修正依頼、同年2月1日に入稿データの最終確認が行われている(乙34)。
乙第35号証は、デザイン会社のBから被請求人のAへ送信したメールに添付された入稿データの内容を表示したパソコン画面をプリントしたものである。当該添付のPDFデータは、2016年1月版の商品カタログと同一のものであり、また、当該PDFデータのプロパティを表示したものが乙第36号証であり、ファイル名が一致し、その更新日は、メール送信日時の少し前である。
デザイン会社の2016年1月31日付け請求書には、「総合商品カタログ(コンシューマー用)2016年改訂版」と記載されている(乙37)。
上記カタログは、2016年2月8日に被請求人の社内一斉メールにより、スーパーマーケットトレードショーに合わせ改版された旨が周知され(乙38)、その後、被請求人の商品カタログとして頒布されていたことが理解される。
上記取引履歴から、被請求人は、商品カタログを要証期間に作成及び頒布していたことが証明される。
(3)「フィグログ」について
被請求人の販売する「フィグログ」は、「菓子」に該当するものであり、被請求人の商品カタログに掲載されていることから、商標法第2条第3項第8号の使用に該当する。
乙第7号証の顧客あて請求書には、「黒いフィグログ」、「白いフィグログ」と記載されているが、これは、被請求人の商品カタログに記載されている商品表示である。顧客は、その取引の商品発注時に商品カタログの商品番号を使用しているため、これを示す発注書を提出する(乙39)。当該発注書は、2016年7月20日に顧客(株式会社Kitano Creation)の担当者のFがメールにより発注を行い、同年7月21日に被請求人のGから納期の確認メールを返信している(乙40)。当該発注書は、メール添付で送られ、「黒のフィグログ」及び「白いフィグログ」の各JANコード欄に記載されているコードは、商品カタログの14ページのJANコードと一致している。
乙第41号証は、メールに添付された発注書のプロパティであり、更新日時は「2016/07/20」となっている。そして、被請求人のGの納期確認メールには、「フィグログ 7/21出荷、7/22納品」とあるが、これは、乙第7号証の請求書中の「黒いフィグログ」と「白いフィグログ」の日付(7/22)に一致する内容である。また、その数量も、発注書の「黒いフィグログ」の規格「140g」、入数「12」、c/s数量「4」のところ、請求書には「黒いフィグログ140g×12入り(北野エース 郡山店 様分)数量4.00」とあり、一致する内容である。
上記したとおり、顧客は、商品カタログの商品番号をもって発注しているのであり、カタログに記載されている「DELTA」が顧客注文時に識別標識として認識されているといえ、さらに、請求書を送付する際に使用されている被請求人の封筒には、「DELTA」の商標が使用されており(乙42)、一連の取引において本件商標が認識されているというべきである。
(4)通販サイト「nutsberry」について
被請求人は、通販サイト「nutsberry」において、「フィグログ」、チョコレート菓子「ラビトスロワイヤル」等の菓子類を販売している。被請求人の通販サイトは、2006年6月16日に開設し(乙43)、2007年9月から「e-CROP」の名称で販売開始していたが、2011年7月22日から「nutsberry」にショップ名を変更している(乙44)。
通販サイト「nutsberry」において、上記商品が要証期間に販売されていたことを示すため、通販用のカタログを提出する(乙45、乙46)。当該カタログは、被請求人へ電話やFAXで発注希望があった場合に、紙媒体の商品カタログとして送付しているものである。電話番号等の連絡先は、被請求人商品や「nutsberry」サイト上に掲載されていることから、被請求人の商品を知って注文を行うものといえる。通販用のカタログは、新商品販売開始、販売終了、価格改定などに合わせて改訂を行っている。
被請求人は、商品に記載してあるフリーダイヤルでの問合せに対し、2013年10月以降の記録を取っているが、「ラビトスロワイヤル」に関する問合せに関し、2014年4月25日及び同年9月12日にカタログを送付している(乙47)。当該記録の備考欄の「カタログ」や「パンフレット」等の記載は、全て通販サイト用の「nutsberry商品カタログ」を指すものである。2014年4月25日送付時の商品カタログは「2013年5月1日第12号」(乙45)、同年9月12日送付時の商品カタログは「2014年8月1日第15号」(乙46)が該当するが、いずれのカタログにも「ラビトスロワイヤル」、「フィグログ」が掲載されている。そして、「nutsberry商品カタログ」の裏表紙には、「DELTA」の文字が記載されており、被請求人の商品シリーズを表示する商標と理解されるものである。
したがって、要証期間に「nutsberry商品カタログ」が頒布されたことが明らかであり、「ラビトスロワイヤル」、「フィグログ」について、商標法第2条第3項第8号の使用に該当する。
また、上記各商品が実際に販売されていた事実は、被請求人が既に提出している乙第13号証ないし乙第16号証に示すとおりである。
なお、乙第13号証ないし乙第16号証に係る表示期間(2016年3月1日?3月31日)に対応する2016年2月25日第30号の「nutsberry商品カタログ」にも、「ラビトスロワイヤル」、「フィグログ(白)」、「フィグログ(黒)」が掲載されている(乙48)。
(5)「ディップチョコ」について
「ディップチョコ」の使用(乙6)に関し、その販売事実に係る証拠を提出する。
乙第49号証は、「ディップチョコ」の発注書であり、販売店から発注を受けた卸会社(三菱食品株式会社)から2014年1月14日にFAX注文を受けたものであり、商品名には「ディップチョコ 国産リンゴ 50g」などとあり、メーカー名には「デルタ」と記載されていることから、被請求人の本件商標に係る商品であることが認められる。
被請求人は、即納の依頼に応じ、発注日翌日に商品を納品したことが納品書により確認できる(乙50)。当該納品書の日付は、2014年1月15日であり、摘要欄に「Tマートセンター(タジマヤ足利支店様帳合)様分」と記載されている。
乙第51号証は、上記取引に関する三菱食品あての被請求人が発行した請求明細書であり、2013年12月21日から2014年1月20日までの期間の請求明細書には、日付欄の「1/15」に、「ディップチョコ」について、納品書と同一内容が記載されている。
上記発注書に記載されている「デルタ」は、被請求人の商品シリーズを表示するものと理解でき、本件商標「DELTA」の文字を相互に変更するものであって、同一の称呼及び観念を生ずる社会通念上同一の商標といえる。
したがって、要証期間に菓子「ディップチョコ」について、本件商標が使用されたことは明確である。
また、「ディップチョコ」の包装材には、乙第6号証の商品写真のように、右下又は左下に本件商標「DELTA」が表示されている。
乙第52号証は、包装材の印刷に関する2013年9月30日付け発注書であり、被請求人から印刷会社(三和紙工株式会社)あてに「ディップチョコ用袋110×165」が発注されている。当該発注書の送付に先立ち、被請求人のDから印刷会社のHへ送信した2013年9月26日発注メールが乙第53号証であり、当該メールに添付された印刷会社の2013年9月25日付け見積書には、「ディップチョコシール」、「ディップチョコ用袋」の品名が記載されている。そして、印刷データとして、乙第6号証の5と同じものが添付されている。
なお、納品先の「株式会社丸菱」は、ディップチョコの製造者であり、被請求人の依頼により、ディップチョコの製造を行ったものである。包装シール及び袋の納品を受けた株式会社丸菱が、ディップチョコを製造し、被請求人へ送付した2013年11月30日付け請求書が乙第54号証である。当該請求書には、「ディップパイン」などと記載されており、ディップチョコの製造がされたことが確認できる。
そして、実際に販売された商品の画像が乙第55号証であり、ディップチョコの包装に「DELTA」の商標が記載されている。
「ディップチョコ」の販売開始時期は、2013年12月であり、「nutsberry」サイト上のメールマガジンの2013年12月21日配信の記事には、「【新発売】『ディップチョコ』1袋400円」と紹介されている(乙56)。
乙第57号証は、上記メールマガジンを受領した際のプロパティを表示したパソコン画面であり、その受信日時には「2013/12/21」と記載されており、配信日時と一致している。
これらの取引書類から、要証期間に、菓子「ディップチョコ」が製造及び販売されていた事実が証明され、そのパッケージに本件商標が表示されていることから、商標法第2条第3項第1号及び第2号の使用に該当するといえる。
(6)請求人の弁駁書について
請求人は、被請求人の商品カタログについて、「ドライフルーツ又はナッツ製品の卸売又は小売役務に関するカタログとしてしか認識され得ない」旨述べているが、当該カタログに掲載されている「白いフィグログ」、「黒いフィグログ」は、インターネット上の情報からみても、イタリアの伝統的な菓子等として流通しており、これが菓子に該当するものであることは、審理事項通知書の見解でも認められている。また、「ラビトスロワイヤル」は、明らかにチョコレート菓子であり、菓子に該当する商品である。
さらに、本件商標が記載された被請求人の商品カタログは、要証期間に使用され、通販サイトにおける販売事実も証明されているものであるから、「白いフィグログ」、「黒いフィグログ」、「ラビトスロワイヤル」の菓子について、本件商標が使用されたものといえる。
請求人は、「使用商標は、本件商標と同一ではなく、社会通念上同一でもない」と述べているが、商品カタログ1ページの「DELTA\デルタ」の記載や、取引書類における「デルタ」(乙49)の記載のように、単独で「DELTA」又は「デルタ」と認識される表示がされており、本件商標と社会通念上同一の商標が使用されているというべきである。
加えて、「nutsberry」サイトにおける商標の使用に関しては、要証期間の通販用カタログの送付によって、当該カタログに記載された「DELTA」が社会通念上同一の使用と認められるものである。
なお、「ディップチョコ」については、新たに提出した取引書類等により、チョコレート菓子についての本件商標の使用が示されている。

第4 当審の判断
1 本件商標の使用について
(1)被請求人の主張及び同人の提出に係る乙各号証によれば、以下のとおりである。
ア 本件商標権者は、平成28年5月6日に、本店を「東京都品川区北品川三丁目3番5号」(以下「旧住所」という。)から「東京都品川区北品川四丁目7番35号御殿山トラストタワー11階」(以下「新住所」という。)へ移転している(乙3)。
イ 本件商標権者は、乙第31号証に係る商品カタログ(以下「商品カタログ」という。)の制作に当たり、2015年12月29日から2016年2月1日までの間、印刷会社及びデザイン会社とスケジュールの調整等をメールにより行った(乙32、乙34?乙36)。その内容は、(a)商品カタログ(16ページ)は、「第50回スーパーマーケット・トレードショー2016」(会期:2016年2月10日?12日)(乙26)に間に合うように、その入稿は2016年2月1日、納品は同月8日とすること、(b)商品カタログは、本件商標権者が2016年5月に新住所へ移転するまでの間に使用するものであることなどである。
そして、商品カタログは、2016年2月8日に、印刷会社から1,000部が納品された(乙33)。
ウ 商品カタログは、表裏の表紙を含めて全16ページからなり、その1ページの左上冒頭部には、別掲に示すとおり、「DELTA」の文字と「デルタ」の文字とを上下二段に表してなる標章(以下「使用標章」という。)が表示されている。そして、商品カタログの裏表紙には、旧住所及び「当カタログの内容は2016年1月現在のものとなります。」の記載がある。
エ 商品カタログの14ページには、「ラビトスロワイヤル9個入り」と称する商品が掲載されているところ、その商品説明として、「スペインで誕生した、贅沢ないちじくチョコレート。ドライいちじくにブランデー風味のトリュフクリームを詰め、チョコレートで薄くコーティングしました。」の記載があることからすれば、当該商品は、本件審判の請求に係る指定商品中に含まれる商品「チョコレート菓子」の一種と認められる。
(2)上記(1)によれば、本件商標権者は、本件審判の請求に係る指定商品中に含まれるチョコレート菓子「ラビトスロワイヤル9個入り」が掲載された商品カタログを、それが納品された2016年2月8日以降、少なくとも本店が新住所へ移転した同年5月6日までの間、「第50回スーパーマーケット・トレードショー2016」(同年2月10日から12日まで開催)の会場内を含めて頒布したといえ、その頒布の時期は、本件審判の請求の登録前3年以内(平成25年(2013年)7月27日から同28年(2016年)7月26日まで。)である。
また、商品カタログに表示されている使用標章は、「DELTA」の文字と「デルタ」の文字とを上下二段に表してなるものであって、下段の「デルタ」の文字が上段の「DELTA」の文字の読みを表したものと看取、理解されるものである。
そこで、本件商標と使用標章とを比較すると、本件商標は、前記第1のとおり、「DELTA」の文字を標準文字で表してなるものであって、「デルタ」の称呼及び「三角州」の観念を生じるものであり、使用標章は、その構成中の「DELTA」の文字部分から「デルタ」の称呼及び「三角州」の観念を生じるものであるから、使用標章における「DELTA」の文字は、本件商標とつづりを同じくし、かつ、「デルタ」の称呼及び「三角州」の観念を共通にするものであり、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
してみれば、本件商標権者は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件審判の請求に係る指定商品中に含まれる「チョコレート菓子」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用(商標法第2条第3項第8号にいう使用)をしたものと認められる。
2 むすび
以上によれば、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、本件商標権者が、本件審判の請求に係る指定商品について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したということができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (別掲)
使用標章


(色彩については、原本参照のこと。)

審理終結日 2018-03-02 
結審通知日 2018-03-06 
審決日 2018-03-29 
出願番号 商願2010-52191(T2010-52191) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (X30)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉岡 めぐみ金子 尚人 
特許庁審判長 大森 健司
特許庁審判官 田中 敬規
松浦 裕紀子
登録日 2011-01-07 
登録番号 商標登録第5381958号(T5381958) 
商標の称呼 デルタ 
代理人 特許業務法人大島・西村・宮永商標特許事務所 
代理人 鮫島 睦 
代理人 川本 真由美 

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