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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X25
管理番号 1343159 
審判番号 取消2016-300335 
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2016-05-18 
確定日 2018-07-27 
事件の表示 上記当事者間の登録第5487411号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5487411号商標(以下「本件商標」という。)は、「TOP-SIDER」の欧文字を横書きしてなり、平成23年11月16日に登録出願、第25類「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」を指定商品として、同24年4月20日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
なお、本件審判の請求の登録は、平成28年5月30日であり、また、本件審判の請求の登録前3年以内である同25年(2013年)5月30日から同28年(2016年)5月29日までの期間を、以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書、審判事件弁駁書、口頭審理陳述要領書及び上申書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上、日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消されるべきである。
2 弁駁の理由
(1)本件商標の使用の事実について
被請求人は、株式会社フィールドハウス(以下「フィールドハウス」という。)は本件商標権に関する通常使用権者であると述べている。そして、フィールドハウスはベルト430本を株式会社ヴァンヂャケット(以下「ヴァンヂャケット」という。)に販売し、ヴァンヂャケットはベルト9本を販売したと述べている。
(2)被請求人、フィールドハウス、ヴァンヂャケットの関係について
被請求人の代表取締役会長であるAは、フィールドハウスの筆頭株主であり、被請求人は、フィールドハウスの傍系会社である(甲3、甲4)。
Aは、ヴァンヂャケットの筆頭株主であり、被請求人は、ヴァンヂャケットの株主である。
また、被請求人の取締役であるBは、ヴァンヂャケットの社長である(甲3、甲5)。
フィールドハウスの代表者であるCは、ヴァンヂャケットの取締役である(甲4、甲5)。
被請求人、フィールドハウス、ヴァンヂャケットの住所は、いずれも東京都台東区蔵前4丁目11番である(甲3?甲5)。
上記の事実から、被請求人、フィールドハウス、ヴァンヂャケットの関係は、取引関係というよりはむしろ密接に関係した関連会社であるといえる。
したがって、フィールドハウスがヴァンヂャケットにベルトを販売した行為は、商取引というよりはむしろ単なる関連会社間での商品の移動であるといえる。
商標法第50条の立法趣旨は、商標法上の保護は、商標の使用によって蓄積された信用に対して与えられるのが本来的な姿であるから、一定期間登録商標の使用をしない場合には保護すべき信用が発生しないかあるいは発生した信用も消滅してその保護の対象がなくなると考え、他方、そのような不使用の登録商標に対して排他独占的な権利を与えておくのは国民一般の利益を不当に侵害し、かつ、その存在により権利者以外の商標使用希望者の商標の選択の余地を狭めることになるから、請求をまってこのような商標登録を取り消そうというものである(工業所有権法逐条解説第19版)。
東京高裁平成4年(行ケ)144号及び平成5年(行ケ)168号で判示されているように「単に不使用取消審判を免れる目的で名目的に商標を使用するかのような外観を呈するような行為があっただけ」では商標法第2条第3項で規定された商標の使用には該当しない。
上記のような関連会社間の取引は、単に不使用取消を免れる目的で名目的に商標を使用するかのような外観を呈する行為にすぎないから、商標法第2条第3項で規定された商標の使用には該当しない。かかる名目的な使用によって不使用取消を免れることができれば、不使用取消審判の存在意義を埋没させるおそれがある。
(3)ヴァンヂャケットによる販売について
被請求人は、ヴァンヂャケットが本件商標を付したベルトを9本販売したと述べているが、ヴァンヂャケットは、本件商標権に関する通常使用権者ではないから、通常使用権者による本件商標の使用には該当しない。
また、被請求人が提出した乙第12号証は、商品の出入庫を記録した社内資料であり、実際に商取引が行われたことを立証するものではない。
(4)商標使用の時期
被請求人は、平成28年8月4日に撮影した写真(乙11)を提出したが、これは本件審判の請求の登録後に撮影されたものであるから証拠価値はない。
(5)まとめ
上記のとおりであるから、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内にその指定商品に使用されたということはできない。よって、本件商標は、商品「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」について取り消されるべきである。
3 平成29年1月31日付け口頭審理陳述要領書
(1)乙第3号証及び乙第13号証について
被請求人は、フィールドハウスからベルトの発注を受けた株式会社トーア(以下「トーア」という。)の担当者Dが、有限会社熊沢(以下「熊沢」という。)の担当者Eに当該ベルトの生産を指示したとして、その際の指示書(乙13)を提出した。
当該指示書には手書きで「Top-Sider素押し」と記載されているが、「Top-Sider」の具体的なデザインは示されていない。他方、納品されたとしているベルトにはデザイン化された「Top-Sider」の文字が刻印されている。具体的なデザインを提示されることなく、当該指示書のみによって、担当者Eがデザイン化された「Top-Sider」の文字をベルトに刻印することができたとは考えにくい。また、フィールドハウスがトーアに発注した際の発注書(乙3)にも具体的な「Top-Sider」の文字のデザインが記載されていないことから、具体的なデザインもないまま熊沢に生産を指示できたとは考えにくい。
また、FTS-14104の指示書にはサイズの記載がない。この指示書によって、FTS-14104のベルトが生産できたとは考えにくい。したがって、乙第13号証の指示書をもってFTS-14104のベルトが生産された事実は証明されていない。
さらに、被請求人は、トーアと熊沢との取引に関して乙第13号証の指示書以外の証拠を提出していない。
上記のとおり、乙第13号証によって熊沢が当該ベルトを生産できたとは考えられないため、トーアと熊沢との間に取引があったことを証明する発注書、納品書、請求書等の客観的な証拠が提出されない限り、乙第13号証は証拠として不十分である。
したがって、乙第3号証及び乙第13号証によって、各ベルトに本件商標が付された事実は証明されていない。
(2)乙第14号証について
被請求人は、フィールドハウスが2016年2月1日に各ベルトに下げ札を付したと主張し、乙第14号証を提出した。
しかしながら、乙第14号証は、当該ベルトを撮影した平成29年1月13日に当該ベルトに下げ札が付されていたことを証明するものであり、2016年2月1日にフィールドハウスが各ベルトに下げ札を付したことを証明するものではない。
また、被請求人は、平成29年1月13日に提出した乙第14号証の下げ札では色が「ベージュ」となっていたため、平成29年1月25日に色が「ネイビー」となっている下げ札を付したベルトの写真と差し替えた。被請求人が平成29年1月13日に口述審理陳述要領書を提出した後で色が間違っていたことに気付き、正しい下げ札に付け替えたのであれば、乙第14号証の写真にあるベルトに下げ札を付した時点は2016年2月1日ではなく平成29年1月13日以降である。
したがって、乙第14号証によって、各ベルトに下げ札を付した者がフィールドハウスであることも、2016年2月1日に付されたことも証明されていない。
さらに、当該下げ札には品番FTS-14100は記載されていない。また、材質は「アクリル、牛革」と記載されているが、フィールドハウスがトーアに発注した際の発注書(乙3)には、素材として「綿、牛革」と記載されている。
したがって、乙第14号証の写真にあるベルトは、品番FTS-14100のベルトではない可能性がある。
(3)乙第15号証について
被請求人は、トーアの担当者Fが納品したベルトの内訳が品番FTS-14100ないしFTS-14104であったことを証明する証拠として乙第15号証を提出した。
ところで、品番FTS-14100ないしFTS-14104に係る商品と乙第16号証の写真にある商品とが同一であることを証明する証拠は、Fの証明書(乙5、乙15)のみである。その他の証拠は全て品番FTS-14100ないしFTS-14104のベルトに関する証拠であり、その品番のベルトに本件商標が付されていたかどうかを証明するものではない。
なお、被請求人は、「Top-Sider」の文字が記載された下げ札を付したベルトの写真(乙11、乙14)を提出したが、いずれも要証期間外に撮影されたものである。
したがって、品番FTS-14100ないしFTS-14104の商品は、本件商標が付されていないベルトであった可能性もある。Fの証明書のみをもって品番FTS-14100ないしFTS-14104のベルトに本件商標が付されていたことを証明するには不十分であり、その他客観的な証拠がないため、各ベルトに本件商標が付された事実は証明されていない。
(4)商標法第2条第3項に規定する使用について
被請求人は、「本件登録商標の商標権者である被請求人から許諾を受けた通常使用権者であるフィールドハウスが、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、その請求に係る指定商品のうち、『ベルト』について本件登録商標を使用している。」と述べたが、その使用が商標法第2条第3項に規定する使用のどれに該当するか明らかにしていない。
(5)まとめ
上述のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、実際に、本件商標を請求に係る指定商品について使用している事実をなんら立証していない。
よって、本件商標の指定商品全てについての登録は、商標法第50条の規定により、取り消されるべきである。
4 平成29年3月10日付け上申書
(1)乙第2号証(商標使用許諾契約書)について
被請求人は、商標使用許諾契約書の第6条に基づいて、通常使用権者であるフィールドハウスが「TOP-SIDER」ブランドのベルトデザイン画を商標権者に提出して承諾を受けていたと述べているが、その事実を立証する証拠を提出していない。
当該デザイン画は、登録商標の適切な使用を確認するための重要な書類であるから、当然保管されているはずである。そのような書類が提出できないということは、当該ベルトが当該商標使用許諾契約書に基づいて生産されたものではないと考えられる。
したがって、当該ベルトに関して、フィールドハウスが通常使用権者であることは証明されていない。
被請求人が、フィールドハウスが当該商標使用許諾契約書に基づいて当該ベルトの生産を指示したと主張するのであれば、請求人は、第6条に記載の商標権者に提出した「本件商品の販売先、販売金額、在庫数量に関する報告書」の提出も求める。
(2)乙第3号証及び乙第4号証について
被請求人は、発注書(乙3)において「綿」と指定されていたベルトの素材が「アクリル」に変更されたことについて、かかる変更の経緯を説明する資料を求められたにも関わらず、何ら証拠を提出していない。このような不整合により、一連の取引に関する被請求人の主張は信憑性を欠くものである。
(3)乙第13号証について
被請求人は、熊沢とのやり取りについて、トーアの「証明書」と「版下」(乙18)を提出したが、熊沢から受け取ったはずの納品書及び請求書を提出していない。
通常の取引であれば、商品の製造を依頼された場合、納品書と共に納品し、その後請求書を送付する。トーアが当然受け取っている書類を提出せず、熊沢の書類のみを提出することは不自然であり、熊沢が当該ベルトを生産したとの被請求人の主張は信憑性を欠くものである。
また、当該ベルトの取引に関し、品番と当該ベルトの対応(乙5、15)及び熊沢が当該ベルトを生産した事実(乙18)といった本件商標の使用に関する重要な事実を、被請求人は全てトーアの「証明書」のみによって立証すると主張しているが、かかる証明書の内容を裏付ける客観的な証拠がなければ、証明書の信憑性は著しく低い。
さらに、仮に熊沢が当該ベルトを生産したとしても、本件商標を素押しした時期、すなわち、本件商標がベルトに付された時期は証明されていない。
したがって、熊沢が当該ベルトを生産した事実も生産した時期も立証されていない。
(4)乙第22号証について
乙第22号証は不鮮明であり、文字が判別できないから、証拠として採用されるべきではない。
(5)商標法第2条第3項に規定する使用について
ア 被請求人は、平成29年2月10日に行われた口頭審理において、本件商標の使用は、商標法第2条第3項第1号及び同項第2号であると主張した。
しかしながら、通常使用権者であるフィールドハウスが実際に行った行為のうち証拠により立証されている行為は、トーアにブランド名「トップサイダー」のベルトを発注したこと(乙3)及び東京吉岡株式会社(以下「東京吉岡」という。)に下げ札を発注したこと(乙21)のみである。
イ 被請求人は、平成29年2月24日付け上申書において、熊沢は、フィールドハウスの指示に基づいて本件商標を当該ベルトに素押ししたと述べているが、平成29年1月13日付け口頭審理陳述要領書では、トーアが熊沢に当該ベルトの生産を指示したと述べている。
乙第3号証によれば、フィールドハウスが発注した先はトーアであって熊沢ではない。すなわち、フィールドハウスと熊沢との間には何の関係もないのであって、「熊沢が当該ベルトに本件商標を素押しした行為はフィールドハウスが行った行為と同視できる」という被請求人の主張には根拠がない。
したがって、当該ベルトに本件商標を付した者は通常使用権者ではない。
ウ 被請求人は、平成29年1月13日付け口頭審理陳述要領書において、「フィールドハウスが下げ札を当該ベルトに付した」と述べているが、いつ付したのかは明らかではないし、フィールドハウスが付したという事実を立証する証拠も提出していない。
下げ札が当該ベルトに付されていることを示す証拠は乙第11号証のVAN Base店内での写真であるが、この写真は要証期間外に撮影されたものである。下げ札を付したのはVAN Baseである可能性もあるし、仮にフィールドハウスが下げ札を付したとしても、それが要証期間内に付されたのかどうかは明らかではない。
したがって、当該ベルトに下げ札を誰がいつ付したかは証明されていない。
(6)まとめ
上述のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、実際に、本件商標を請求に係る指定商品について使用している事実を何ら立証していない。
登録商標の使用に関する挙証責任が商標権者にあるのは、商標権者が、その商標の使用をしているかどうかを最もよく知っており、使用をしていることの証明も容易にできるからである。しかしながら、被請求人は、登録商標の使用を証明する十分な証拠を提出していない。
商標法第50条の立法趣旨に照らせば、使用の証拠が提出されたとしてもその証拠によって登録商標の使用が証明されていない場合、登録商標は取り消されるべきである。
よって、本件商標の指定商品全てについての登録は、商標法第50条の規定により、取り消されるべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書及び上申書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第22号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)使用の主張
本件商標は、本審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者である被請求人から許諾を受けた通常使用権者のフィールドハウスによって、その請求に係る指定商品のうち、「ベルト」について使用されている。
(2)本件商標の使用の事実
フィールドハウスは、被請求人(本件商標権者)から、2015年9月1日に本件商標の指定商品中「ベルト」について通常使用権の許諾を受けた(乙2)。
そして、フィールドハウスは、2015年12月に卜ーアの東京支店へ本件商標「TOP-SIDER」ブランドの「ベルト」の生産を依頼した。フィールドハウスの担当者Gは、トーアの東京支店の担当者Dに対し、「TOP-SIDER」ブランドの、デザインの異なる5種類の「ベルト」合計430本についての発注書を2015年12月3日に発行した(乙3)。ベルトの内訳は品番FTS-14100を120本、品番FTS-14101を80本、品番FTS-14102を100本、品番FTS-14103を50本、品番FTS-14104を80本である。これに対し、トーアの東京支店の担当者Dは2015年12月4日付けでフィールドハウスの担当者Gに「TOP-SIDER」の受注明細を送っている(乙4)。
これにより、トーア東京支店は、上記注文の「ベルト」を上記発注書に従って合計430本生産し、フィールドハウスに2016年2月1日付けで納品した(乙5)。この生産された「ベルト」には商標「TOP-SIDER」がベルトの留め具付近の革部材に刻印されている(乙5)。この納品に対し、フィールドハウスからトーアに対して仕入伝票及び物品受領書を発行し、これらにトーアが受領印を押して、フィールドハウスに返している(乙6)。また、当該受注生産についての、フィールドハウス宛ての請求書がトーアの本社から発行された(乙7)。なお、上記取引において、「ベルト」に付する「TOP-SIDER」ブランドを記した下げ札は、トーアが製造し、上記「ベルト」とともにフィールドハウスに納品している。
そして、フィールドハウスは、ヴァンヂャケットに当該「ベルト」430本を販売し、2016年2月1日付けでヴァンヂャケットに納品した。これに伴い、フィールドハウスの担当者Gは、ヴァンヂャケット宛てに受入伝票1(発行元控)を発行した(乙8の1)。また、ヴァンヂャケットの担当者Hは、社内向けに受入伝票2(検収元控)を発行し(乙8の2)、さらに、フィールドハウスに対し受入伝票4(受領書)を発行した(乙8の3)。上記受入伝票1(発行元控)及び受入伝票2(検収元控)は予めヴァンヂャケット製のものをフィールドハウスが購入して使用している。また、当該フィールドハウスからヴァンヂャケット宛ての「ベルト」の販売代金の請求を2016年2月29日付けで行っている(乙9)。
また、ヴァンヂャケットは、2016年2月1日付けで当該「ベルト」430本を、自身の店舗である「VAN Base」に移動し、当該商品を店舗内で展示、販売した(乙10、乙11)。ヴァンヂャケットでは、2月に品番FTS14100を3本、品番FTS14101を4本、品番FTS14102を1本、品番FTS14103を1本、品番FTS14104を2本の合計11本を販売し、また、3月には、品番FTS14100を4本、品番FTS14101を1本、品番FTS14102を1本、品番FTS14103を1本、品番FTS14104を2本の合計9本を販売している(乙12)。
2 平成29年1月13日付け口頭審理陳述要領書
(1)乙第13号証について
フィールドハウスから「TOP-SIDER」ブランドのベルトの発注を受けた卜ーアの東京支店の担当者Dは、熊沢の担当者Eにこれらのベルトの生産を指示した(乙13)。この指示書は、ベルトの各品番(FTS-14100?14104)に対応して5枚あり、各指示書では、この各指示書が2015年12月4日付けの担当者Dからのものであること、また、本件商標である「Top-Sider」をベルトの留め具付近の革部材に素押し(≒刻印)することが示されていることから、これにより、「TOP-SIDER」ブランドの各ベルトに本件商標が付されたことを立証できる。
(2)乙第14号証について
「TOP-SIDER」ブランドのベルト(品番:FTS14100 NAVY)に付した状態の下げ札を撮影した写真であり、下げ札の表面には、「Top-Sider」と印刷されている(乙14)。
なお、乙第3号証では、フィールドハウスから卜ーアに下げ札を支給する旨、また、平成28年8月10日付けの審判事件答弁書では、下げ札は卜ーアが製造し、上記ベルトとともにフィールドハウスに納品したと述べていたが、これは誤りであった。実際には、下げ札は、トーアの東京支店から納品を受けたフィールドハウスが、「TOP-SIDER」ブランドの各ベルトに付した。
乙第14号証の写真に示されている、下げ札付きの「TOP-SIDER」ブランドのベルトは、ヴァンヂャケットから借りてきたものであるが、下げ札は、2016年2月1日に卜ーアから納品を受けたフィールドハウスが付したものである。
そのため、乙第14号証によって、「TOP-SIDER」ブランドの各ベルトにおける下げ札の詳細及び当該下げ札の使われ方を立証できる。
(3)乙第15号証及び乙第16号証について
卜ーアの東京支店の担当者Fが証明した証明書(乙15)であり、乙第5号証に係る「TOP-SIDER」ブランドのベルト430本の内訳が記載されている。この証明書では、卜ーアの東京支店がフィールドハウスに2016年2月1日に納品した「TOP-SIDER」ブランドのベルト430本の内訳が「FTS-14100」等の品番に対応して示されている。
また、乙第5号証に貼付された写真(画像)の一部を拡大した写真(乙16)には、「TOP-SIDER」ブランドのベルトの留め具付近の革部材に本件商標が刻印されていることが示されている。
そのため、乙第15号証及び乙第16号証によって、フィールドハウスに2016年2月1日に納品された「TOP-SIDER」ブランドの各ベルトに本件商標が付されていたことを立証できる。
(4)被請求人、フィールドハウス、ヴァンヂャケットの関係について
請求人は、「被請求人、『フィールドハウス』、『ヴァンヂャケット』の関係は取引関係というよりはむしろ密接に関係した関連会社であるといえる。したがって、『フィールドハウス』が『ヴァンヂャケット』にベルトを販売した行為は、商取引というよりはむしろ単なる関連会社間での商品の移動であるといえる。」と、述べている。
しかし、各社はそれぞれ別個に設立された会社である。また、通常の商慣習に従い、平成28年8月10日付けの審判事件答弁書でも述べたように、ヴァンヂャケットは、「TOP-SIDER」ブランドのベルトを納品したフィールドハウスに対し、受入伝票4(受領書)を発行し、フィールドハウスは、ヴァンヂャケットに対し、「TOP-SIDER」ブランドのベルトの販売代金の請求を行っている。そのため、単なる関連会社間での商品の移動である旨の請求人の弁駁は失当である。
3 平成29年1月25日付け上申書
乙第14号証に係る写真で撮影された「TOP-SIDER」ブランドのベルト(品番:FTS14100 NAVY)に付した下げ札が間違っていた。本来であれば、「品番:FTS14100 NAVY」のベルトには、ベルトの色が、「ネイビー」と記載された下げ札が付されてなければならないが、「ベージュ」と記載された下げ札が付されていた。
そこで、乙第14号証に係る写真のうち、下げ札のベルトの色を示す部分が撮影された3枚目の写真を、正しい下げ札が付された写真に差し替える。
4 平成29年2月24日付け上申書
(1)乙第2号証の通常使用許諾契約書の第6条について
通常使用権者であるフィールドハウスは、本件商標の商標権者である被請求人に対し、「TOP-SIDER」ブランドのベルトを製造するに際し、事前にデザイン画を提出して承諾を受けていた。
(2)乙第17号証について
2016年8月以降の在庫一覧表(乙17)によると、ヴァンヂャケットは、自身の店舗である「VAN Base」において、2016年8月に品番FTS14100を6本、品番FTS14101を9本、品番FTS14102を5本、品番FTS14103を4本、品番FTS14104を8本の合計32本販売している。
(3)乙第18号証について
証明書(乙18)に示すとおり、トーア東京支店の担当者Dは、フィールドハウスの社長Iから、「Top Sider」のロゴを2015年12月3日に受け取った。
そして、そのロゴを縮小して、「TOP-SIDER」ブランドのベルト(品番:FTS-14100?FTS-14104)に素押しするための「版下」を、2015年12月4日に作成した。
また、2015年12月4日に、その版下を熊沢に渡して、「TOP-SIDER」ブランドのベルト(品番:FTS-14100?FTS-14104)に素押しするよう指示した。
(4)乙第19号証ないし乙第22号証について
2015年12月11日に、フィールドハウスの社長Iは、東京吉岡の担当者Jと打ち合わせをして、「TOP-SIDER」ブランドの下げ札(表面)の3つのデザイン案(乙19)の提案を受け、そのうち、「2」を選択した。
2015年12月15日に、フィールドハウスの社長Iは、東京吉岡の担当者Jと打ち合わせをした。その際に、担当者Jから先日選択した「2」のデザイン案で「TOP-SIDER」ブランドの下げ札を作成した場合の下げ札のレイアウト案(乙20)を見せられた。なお、このレイアウト案では、品番FTS14102、FTS14103及びFTS14104のベルトについて、「SIZE 適応長さ100cm」となっているが、これはあくまでレイアウト案であって、正確ではない。
そして、2015年12月21日に、フィールドハウスの社長Iは、東京吉岡に、「TOP-SIDER」ブランドの下げ札475枚を発注した(乙21)。
その後、2016年1月20日に、東京吉岡の担当者Jは、「TOP-SIDER」ブランドの下げ札475枚を、フィールドハウスに納品した(乙22)。
(5)素押しされた標章に関して、ベルトに標章を付したのは通常使用権者ではないとの請求人の主張に対する反論について
熊沢は、通常使用権者であるフィールドハウスからの指示に基づいて、「TOP-SIDER」ブランドのベルトに標章を素押ししたのである。すなわち、フィールドハウスからの指示がなければ、熊沢は、「TOP-SIDER」ブランドのベルトに標章を素押しすることはなかった。
そのため、熊沢が「TOP-SIDER」ブランドのベルトに標章を素押しした行為は、通常使用権者であるフィールドハウスが行った行為と同視できることはいうまでもない。
5 平成29年3月17日付け上申書
平成29年3月10日付け上申書により、請求人から「乙第22号証が不鮮明であり、文字が判別できない。」との指摘を受けたので、乙第22号証に係る仕入伝票及び納品書の写しを、より鮮明なものに差し替える。
6 結語
以上のとおり、本件商標の商標権者である被請求人から許諾を受けた通常使用権者であるフィールドハウスが、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、その請求に係る指定商品のうち、「ベルト」について本件商標を使用している。
なお、平成29年2月10日に行われた口頭審理において、本件商標の使用は、商標法第2条第3項第1号及び同項第2号の使用である旨陳述した。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る乙各号証によれば、以下のとおりである。
(1)乙第2号証は、2015年9月1日を契約日とする、本件商標権者とフィールドハウスとの「商標使用許諾契約書」であり、その冒頭には、「ケントジャパン株式会社(以下、『甲』という)と、株式会社フィールドハウス(以下、『乙』という)は、甲が所有する本書末尾(1)記載の商標権(以下、『本件商標』という)につき、甲より乙に対して通常使用権を許諾することに関し下記の通り契約する。」の記載がある。
そして、当該契約書には、第1条(期間)として「2015年9月1日?2016年8月31日」の記載があり、本書末尾には、「(1)本件商標の表示」として「TOP-SIDER」、「指定商品」として「第25類 ベルト」、その下に「商標登録番号 第5487411号」の記載があり、「(2)本件通常使用権の範囲」として「使用権の範囲は上記商品に限定し、販売地域に関しては日本国の範囲とする。」の記載があり、甲及び乙の住所及び名称並びにそれぞれの社印が押印されている。
(2)乙第3号証は、フィールドハウスがトーア宛てに作成した発注書であり、その2葉目には、「発注日 2015年12月3日」、「売先 会社名 (株)ヴァンヂャケット/ブランド名 トップサイダー」、「納期 2016年2月1日」、「品番 FTS-14101」、「品名 TSIVYベルト(剣先25mm)」、「素材 綿、牛革」、「上代 ¥3,900」、「生産国 日本」、「生地 テープ(日本製)」、「ネーム 無 備考 ス押」、「品質 無」、「下げ札 有 備考 支給」の記載と、「カラー ネイビー」、「サイズ 100cm」、「発注数 40」、「工場単価 1,250」、「金額 50,000」、「納品先 (株)フィールドハウス」の記載があり、「DESIGN イメージデザイン」の欄には、ベルトの一部分である濃紺色、白色、濃紺色(すべて同じ幅である。)の長さ約4.2cm、幅約1.8cmのテープ(以下「濃紺縞テープ」という。)の写真があり、「社長印」欄に社長Iの印、「営業印」欄に担当者Gの印が押印されている。
(3)乙第4号証は、トーアの担当者Dがフィールドハウス宛てに作成した平成27年12月4日付け「Top^sider受注明細」であり、「担当者G様・・・ご発注いただいた件、下記素材の内容で進行致します。」の記載と、その下表の欄に「品番 FTS-14101」、「カラー ネイビー」、「Order数 40」、「単価 1,250」、「タイプ アイビーベルト25mm」、「素材A 牛革:BROWN」、「素材B アイビー:アクリル」及び「希望納期 2月1日」の記載があり、担当者Dの印が押印されている。
(4)乙第13号証は、トーアが熊沢宛てに作成した指示書の写しであり、その2葉目には、「25mmアイビー参考見本」の見出しの下、「2015.12.4」、「FTS-14101」、「有効ウェストサイズ=100cm」の記載とともに、ベルトの剣先側には、引き出し線で「革色=茶に変更」、ベルトの尾錠側には、引き出し線で「尾錠・管・コキ→支給」、「Top-Sider/25/素押し」(「25」には文字幅を表す線が付されている。)の記載、「濃紺縞テープ」には、引き出し線で「NAVY-40」といずれも手書きの記載があり、担当者Dの検収印がある。
(5)乙第18号証は、トーアの担当者Dが作成した2017年2月21日付け証明書であり、フィールドハウスの社長Iから別紙1の「Top Sider」のロゴを2015年12月3日に受取り、そのロゴを縮小して「Top Sider」ブランドのベルト(品番:FTS-14101)に素押しするための版下を翌4日に作成し、同日に別紙2の版下を熊沢に渡して、その版下を同ベルトに素押しするよう指示したことの証明である。そして、別紙1には「MAIN LOGO」として、筆記体で書された「Top-Sider」の欧文字(以下「使用商標」という。)が表示され、別紙2には「Top-Sider版下」として、使用商標が表示されている。
(6)乙第6号証の1の1葉目は、トーア東京支店がフィールドハウス宛てに作成した仕入伝票であり、乙第6号証の2の1葉目は、トーア東京支店がフィールドハウス宛てに作成した物品受領書であるが、それぞれに「伝票番号 923664」、「年月日 160201」の記載と、その下表の欄に「品名 TSIVYベルト(25)」、「色 NY」、「商品コード FTS14101」、「数量 40」、「原単価 1250」、「原価金額 50000」の記載及び受領印がある。なお、上記仕入伝票及び物品受領書に記載された原価金額合計の合算は571,500円である。
(7)乙第7号証は、トーアがフィールドハウス宛てに作成した請求書であり、「請求日 2016年2月29日」、「今回お取引金額」の欄に「571,500」、「消費税額等」の欄に「45,720」、「今回ご請求金額」の欄に「617,220」の記載があり、トーアの社名の右側に社印が押印され、また、担当者Fの印も押印されている。
(8)乙第5号証は、トーアの担当者Fが作成した2016年7月26日付け証明書であり、同社がフィールドハウスの2015年12月3日の発注に対し、「TOP-SIDER」を付したベルトを430本、2016年2月1日に納品したことの証明と共に、茶色の革部材に尾錠と濃紺縞テープが付いたベルトの一部が写っている写真がある。
(9)乙第15号証は、乙第5号証に対する卜ーアの東京支店の担当者Fによる証明書であり、使用商標を付した430本のベルトの内訳の証明として「品番 FTS-14101」、「カラー ネイビー」、「個数 40」の記載がある。
(10)乙第16号証は、乙第5号証の写真の拡大写真であり、乙第5号証に写っているベルトの革部材に使用商標が素押しされている。
(11)乙第19号証は、「Top-Sider」のロゴの下げ札のデザイン案であり、当該下げ札の表面に使用商標が表示されている。
(12)乙第20号証は、「Top-Sider」のロゴの下げ札のレイアウト案であり、下げ札の表面には、使用商標が表示され、「FTS-14101」、「TSIVYベルト」用の下げ札の裏面には、「SIZE 適応長さ100cmまで」、「材質 アクリル、牛革」、「日本製」、「ネイビー」、「(株)フィールドハウス」、「¥3,900+税」の記載がある。
(13)乙第21号証は、フィールドハウスの社長Iが東京吉岡宛てに作成した下げ札発注依頼書であり、「東京吉岡株式会社」、「株式会社フィールドハウス 社長I」、「発注書No.20151221」、「発注日 2015/12/21」、「納品日 2016/1/20」の記載と、その下表の欄に「下札品番 FTS」、「本体価格 ¥3,900」、「原産国 日本」、「品番 FTS-14101」、「カラー ネイビー」、「サイズ 100cm」、「数量 45」、「単価 8」、「組成(材質) アクリル」「組成(材質) 牛革」の記載がある。
(14)乙第22号証は、東京吉岡がフィールドハウス宛てに作成した仕入伝票及び納品書であり、それぞれ「(株)フィールドハウス様」、「ブランド・発注者 社長I様」、「年月日 28 1 20」、「伝票番号 33923」の記載と、その下表の欄に「商品コード・品名・規格・品番 FTS TopSider下札 印字あり」、「数量 45」、「単価 8」、「金額 1,360」、「FTS-14101 ネイビー」の記載がある。
(15)乙第8号証の1の2葉目は、フィールドハウスの担当者Gがヴァンヂャケット宛てに作成した受入伝票1(発行元控)であり、「No.070006」、「発行 2016年02月01日」、「仕入先 (株)フィールドハウス」、「生産工場 (株)トーア」の記載と、その下表の欄に「年式 16」、「期 上」、「チョップ名 VAN」、「品目 FTS」、「品番 14101」、「C/♯ 29」、「C/♯計 40」、「単価 1560」、「数量 80」、「金額 ¥124800」の記載があり、発行欄に担当者Gのサインがある。
(16)乙第8号証の2の2葉目は、ヴァンヂャケットが発行した受入伝票2(検収元控)であり、「No.070006」、「発行 2016年02月01日」、「仕入先 (株)フィールドハウス」、「生産工場 (株)トーア」の記載と、その下表の欄に「年式 16」、「期 上」、「チョップ名 VAN」、「品目 FTS」、「品番 14101」、「C/♯ 29」、「C/♯計 40」、「単価 1560」、「数量 80」、「金額 ¥124800」の記載があり、発行欄にフィールドハウスの担当者Gがサインし、入庫検収欄にヴァンヂャケットの担当者Hの検収印がある。
(17)乙第8号証の3の2葉目は、ヴァンヂャケットがフィールドハウス宛てに作成した受入伝票4(受領書)であり、「No.070006」、「発行 2016年02月01日」、「仕入先 (株)フィールドハウス」、「生産工場 (株)トーア」の記載と、その下表の欄に「年式 16」、「期 上」、「チョップ名 VAN」、「品目 FTS」、「品番 14101」、「C/♯ 29」、「C/♯計 40」の記載があり、「左記のとおり受領いたしました。」の記載の下にヴァンヂャケットの担当者Hの受領印がある。
(18)乙第9号証は、フィールドハウスがヴァンヂャケット宛てに作成した平成28年2月29日付け請求書(控)であり、「合計金額 ¥778,248」の記載と、その下表の欄に「納品月日 2 1」、「専用伝票No.070006」、「商品名(品目・品番) FTS14101」、「数量 80」、「単価 1,560」、「金額 124,800」、「個別消費税 9,984」の記載があり、フィールドハウスの社長Iの記名とフィールドハウスの社印が押印されている。
(19)乙第10号証は、ヴァンヂャケットが同社の店舗であるVAN Base宛てに作成した「移動伝票(控)」であり、「取引区分 移動」、「伝票日付 2016年02月01日」、「伝票番号 00040956」の記載と、その下表の欄に「No 004」「商品/カラー/サイズコード FTS14101 29 0」、「商品名 FTSBLIVYベルト」、「バーコード カラー名 29」、「数量 40」、「上代単価 3,900」、「上代金額 156,000」の記載がある。
(20)乙第11号証は、平成28年8月4日に店舗VAN Baseを撮影した写真であり、使用商標を表示した下げ札を付され、使用商標が素押しされた茶色の革部材に尾錠と濃紺縞テープが付いたベルトが、他のベルトとともに陳列されている状況が写っている。
(21)乙第12号証の1は、カラー別サイズ別在庫一覧表(倉庫計)であり、「対象年月 2016年02月?2016年02月」、「処理日2016/08/01」、「倉庫コード/名称 000060 VANBase」の記載と、その下表の欄に「商品コード/名称 FTS14101/FTSBLIVYベルト」、「カラー 29」、「当月入庫/移動数 40」、「当月出庫/売上数 2」、「在庫数 38」、「在庫単価 1,560」、「上代単価 3,900」の記載がある。
(22)乙第12号証の2は、乙第12号証の1と同じ様式によるカラー別サイズ別在庫一覧表(倉庫計)であり、「対象年月 2016年03月?2016年03月」、「処理日2016/08/01」、「倉庫コード/名称 000060 VANBase」の記載と、その下表の欄に「商品コード/名称 FTS14101/FTSBLIVYベルト」、「カラー 29」、「当月入庫/移動数 0」、「当月出庫/売上数 1」、「在庫数 37」、「在庫単価 1,560」、「上代単価 3,900」の記載がある。
(23)乙第17号証は、乙第12号証と同じ様式によるカラー別サイズ別在庫一覧表(倉庫計)であり、「対象年月日 2016年08月01日?2016年08月31日」、「処理日2017/02/22」、「倉庫コード/名称 000060 VANBase」の記載と、その下表の欄に「商品コード/名称 FTS14101/FTSBLIVYベルト」、「カラー 29」、「前月末在庫 20」、「当月入庫/移動数 0」、「当月出庫/売上数 5」、「在庫数 15」、「在庫単価 1,560」、「上代単価 3,900」の記載がある。
2 上記1及び被請求人の主張によれば、当審の判断は以下のとおりである。
(1)本件商標の通常使用権者について
本件商標権者は、フィールドハウスに対し、2015年9月1日付けの「商標使用許諾契約書」(乙2)により、商品「ベルト」について、日本国内において、期間を2015年9月1日から2016年8月31日までとする、本件商標の通常使用権を許諾したことが認められるから、本件審判の要証期間において、フィールドハウスは、本件商標の通常使用権者であるということができる。
(2)フィールドハウスとトーア及びトーアと熊沢との取引について
ア 製品の発注及び受注
(ア)フィールドハウスとトーアとの取引について
フィールドハウスは、2015年12月3日付けの発注書(乙3)により、トーアに対し、「品番 FTS-14101」、「品名 TSIVYベルト」、「素材 綿、牛革」、「ネーム 無 備考 ス押」、「カラー ネイビー」、「サイズ 100cm」とするベルト40本を、製品納期を2016年2月1日までとして発注し、その際、「ブランド名 トップサイダー」を製品に素押しする旨の指示をしたものと認められる。
そして、トーアが翌4日付けでフィールドハウス宛てに作成したTop^sider受注明細(乙4)によれば、品番、カラー、数量及び単価は、いずれも発注書(乙3)の記載内容と一致していることから、2015年12月3日付けの発注書による製品の発注は、トーアが受注したものと認められる。
なお、2015年12月3日付けの発注書において「綿」と指定されていたベルトの素材が「アクリル」に変更されたこと(乙4)については、製品発注から受注までの過程で両者の合意があった結果とみるのが自然である。
(イ)トーアと熊沢の取引について
トーアが熊沢宛てに作成した2015年12月4日付け指示書(乙13)から、ベルトに素押しをする文字は、使用商標と同一の構成文字からなる「Top-Sider」であることが確認でき、また、品番、サイズ、カラー、数量がトーアの受注明細(乙4)の記載内容と一致している。
そして、2017年2月21日付け証明書(乙18)も併せ、総合的に判断すれば、トーアがフィールドハウスとの製品取引の下、熊沢に対し、商品「ベルト」に使用商標を素押しするよう指示したものと認められる。
請求人は、かかる証明書については、熊沢からの納品書・請求書等の客観的な証拠がなければ証明書の信憑性は著しく低いと主張している。
しかしながら、乙各号証において、熊沢からの納品書・請求書等に係る立証がされていないとしても、そのことをもって、トーアと熊沢の取引の事実が否定されるものではなく、請求人からは自らの主張を裏付ける具体的な証拠の提出もないことからすれば、上記認定に係る乙各号証の信憑性に対する請求人の主張は採用することができない。
イ 製品の納品
トーア東京支店がフィールドハウス宛てに作成した仕入伝票及び物品受領書(乙6)は、上記ア(ア)の2015年12月3日付けの発注書に記載の製品納期である2016年2月1日に作成されており、品名、色、商品コード、数量、原単価、原価金額は、いずれも同発注書の記載内容とほぼ一致している。
トーアがフィールドハウス宛てに作成した請求書(乙7)は、2016年2月29日に作成されており、「今回のお取引金額」に記載された金額は、上記仕入伝票及び物品受領書に記載された原価金額合計の合算と一致している。
また、撮影日時は要証期間外ではあるものの、留め具付近の革部材に使用商標を素押ししたベルトが撮影されており(乙5、乙15、乙16)、後記(4)の事実と併せ考えれば、このベルトは、フィールドハウスがヴァンジャケットに譲渡したベルト40本のうち、上記撮影時点でいまだ販売されずに残っていたものと推認することができる。
以上の事実によれば、2015年12月3日付けの発注書による製品の発注は、製品納期である2016年2月1日に、トーアからフィールドハウスに納品されたものと認められる。
したがって、トーアは、使用商標を製品に素押しする旨の指示も含め、上記ア(ア)の発注書に従って、使用商標を素押ししたベルトを製造し、フィールドハウスに納品したものと推認することができる。
(3)フィールドハウスと東京吉岡との取引について
2015年12月11日に、フィールドハウスと東京吉岡の担当者Jが「Top-Sider」のロゴの下げ札のデザイン案の打合せをし、当該下げ札の表面には使用商標が表示されている。同月15日に打合せをした下げ札のレイアウト案によると、表面に使用商標が表示され、裏面に「(株)フィールドハウス」とともに、品番、サイズ、色等の記載がある(乙19、乙20)。
その後、フィールドハウスは、2015年12月21日に、上記下げ札を東京吉岡に対し、製品納期を2016年1月20日までとして発注した。
そして、東京吉岡がフィールドハウス宛てに作成した平成28年1月20日付けの仕入伝票及び納品書(乙22)は、2015年12月21日付けの下げ札発注依頼書の記載内容と一致していることから、使用商標を表示した下げ札が納品されたものと認められる。
したがって、東京吉岡は、使用商標を表面に表示した下げ札を製造し、2016年1月20日にフィールドハウスに納品したものと認められる。
(4)フィールドハウスとヴァンヂャケットとの取引について
フィールドハウスの担当者Gがヴァンヂャケット宛てに作成した受入伝票1(発行元控)、ヴァンヂャケットの担当者Hが社内向けに発行した受入伝票2(検収元控)及びフィールドハウス宛てに作成した受入伝票4(受領書)(乙8)は、いずれも2016年2月1日に作成されており、上記(2)の2015年12月3日付けの発注書の記載内容と一致している。
フィールドハウスがヴァンヂャケット宛てに作成した請求書(控)(乙9)は、2016年2月29日に作成されており、上記受入伝票等の記載内容と一致している。
また、撮影日時は要証期間外ではあるものの、乙第11号証に係る写真(VANBaseの写真)には、上記(2)の取引によりフィールドハウスに納品された製品と同じ柄、皮色のベルトが写っており、当該ベルトには、上記(3)の取引により東京吉岡からフィールドハウスに納品された表面に使用商標を表示した下げ札が付され、また、ベルトの留め具付近の革部材に使用商標が素押しされている。
そして、当該ベルトは、乙第5号証及び乙第16号証に係る写真に写っている留め具付近の革部材に使用商標が素押しされているベルトと同じものである。
さらに、ヴァンヂャケットの店舗(VANBase)の在庫一覧表(乙12の1、乙17)には、「商品コード」が「FTS14101」とするベルトの在庫数が要証期間内の平成28年2月は38本あり、同年3月は37本あり、要証期間外の同年8月は15本あることが認められる。
以上の事実によれば、2016年2月1日に、フィールドハウスは、品番をFTS14101とするベルトをヴァンヂャケットに販売し、同日に納品したものと認められる。
したがって、フィールドハウスは、上記(2)の取引により2016年2月1日に所有した、留め具付近の革部材に使用商標が素押しされているベルト40本を、同日に、ヴァンヂャケットに販売・納品し、当該ベルトはヴァンヂャケットの店舗において同年2月から要証期間外の同年8月まで、継続的に販売されていたものと推認することができる。
(5)小括
ア 使用商標の使用者
上記(1)のとおり、使用商標の使用者は、フィールドハウスであり、本件商標の通常使用権者である。
イ 使用商標について
商品「ベルト」に素押しされ、また、下げ札に表示された使用商標は、上記1のとおり、筆記体で書された「Top-Sider」の欧文字を横書きしてなるものである。
一方、本件商標は、「TOP-SIDER」の欧文字を横書きしてなるものである。
そうすると、本件商標と使用商標とは、書体のみの変更を加えた同一の文字からなるものであり、「トップサイダー」という同一の称呼を生ずるものであるから、社会通念上同一の商標ということができる。
ウ 使用商品について
上記(2)のとおり、フィールドハウスがトーアの納品により所有した「ベルト」は、その留め具付近の革部材に使用商標が素押しされているところ、当該「ベルト」は、本件審判の請求に係る指定商品中の「ベルト」と同一の商品である。
上記(4)のとおり、フィールドハウスがヴァンヂャケットに販売し、納品した「ベルト」は、その留め具付近の革部材に使用商標が素押しされ、使用商標が表示された下げ札を付しているところ、当該「ベルト」は、本件審判の請求に係る指定商品中の「ベルト」と同一の商品である。
エ 使用時期について
上記(2)のとおり、フィールドハウスがトーアの納品により留め具付近の革部材に使用商標が素押しされているベルトを所有したのは、2016年2月1日であり、要証期間内である。
上記(4)のとおり、フィールドハウスがヴァンヂャケットに留め具付近の革部材に使用商標が素押しされた「ベルト」を販売し、納品したのは、2016年2月1日であり、要証期間内である。
オ まとめ
以上によれば、本件商標の通常使用権者であるフィールドハウスは、要証期間内に、日本国内において、本件審判の請求に係る指定商品中の「ベルト」について、本件商標を付したものと認めることができる。
そして、上記の行為は、商標法第2条第3項第1号に該当し、商品に標章を付する行為である。
また、同じくフィールドハウスは、要証期間内において、本件審判の請求に係る指定商品中の「ベルト」について、本件商標を付したものを譲渡したと認めることができる。
そして、上記の行為は、商標法第2条第3項第2号に該当し、商品に標章を付したものを譲渡する行為である。
3 請求人のその他の主張について
(1)請求人は、「本件商標権者、フィールドハウス、株式会社ヴアンヂャケットの関係は取引関係というよりはむしろ密接に関係した関連会社であり、フィールドハウスが株式会社ヴァンヂャケットにベルトを販売した行為は、商取引というよりはむしろ単なる関連会社間での商品の移動であるといえる。したがって、このような関連会社間の取引は、単に不使用取消を免れる目的で名目的に商標を使用するかのような外観を呈する行為にすぎないから、商標法第2条第3項で規定された商標の使用には該当しない。」旨を主張している。
しかしながら、請求人指摘の3者が関連会社であるとしても、財務や業務、仕入先、販売先等が異なる別法人(甲3?甲5)であって、関連会社間での取引自体、通常あり得るものである。そして、その他具体的な証拠がない限り、そのことのみもって提出された乙各号証の信憑性がないとはいえず、提出された乙各号証を併せみれば、フィールドハウスが取消請求に係る商品「ベルト」に本件商標と社会通念上同一の商標を付し、かつ、その商品をヴァンヂャケットに販売したと認められることは、上記2のとおりであるから、請求人の主張は採用することができない。
(2)請求人は、「被請求人は、商標使用許諾契約書の第6条に基づいて、通常使用権者であるフィールドハウスが『TOP-SIDER』ブランドのベルトデザイン画を商標権者に提出して承諾を受けていたと述べているが、その事実を立証する証拠を提出していないことから、当該ベルトが当該商標使用許諾契約書に基づいて生産されたものではないと考えられる。したがって、当該ベルトに関して、フィールドハウスが通常使用権者であることは証明されていない。被請求人が、フィールドハウスが当該商標使用許諾契約書に基づいて当該ベルトの生産を指示したと主張するのであれば、請求人は、第6条に記載の商標権者に提出した『本件商品の販売先、販売金額、在庫数量に関する報告書』の提出も求める。」旨を主張している。
しかしながら、乙各号証において、「Top-Sider」のロゴのベルトデザイン画が提出されていないとしても、そのことをもって、本件商標の商標使用許諾契約書の当事者である被請求人の上記主張が否定されるものではない。そして、フィールドハウスが本件商標の通常使用権者であって、商品「ベルト」に本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたと認められることは、上記2のとおりであるから、請求人の主張は採用することができない。
4 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、通常使用権者がその請求に係る指定商品中の「ベルト」について、本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたことを証明したものということができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2017-07-14 
結審通知日 2017-07-19 
審決日 2017-08-03 
出願番号 商願2011-86171(T2011-86171) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (X25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宗像 早穂鈴木 斎 
特許庁審判長 青木 博文
特許庁審判官 半田 正人
小松 里美
登録日 2012-04-20 
登録番号 商標登録第5487411号(T5487411) 
商標の称呼 トップサイダー、サイダー 
代理人 長谷 玲子 
代理人 藤沢 則昭 
代理人 藤沢 昭太郎 

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