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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W03
管理番号 1343114 
審判番号 無効2016-890063 
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-10-28 
確定日 2018-07-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第5858891号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成29年4月5日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成29年(行ケ)第10109号、平成29年11月14日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第5858891号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5858891号商標(以下「本件商標」という。)は、「MEN’S CLUB」の欧文字を標準文字で表してなり、平成28年1月7日に登録出願、第3類「男性用化粧品」を指定商品として、同年6月1日に登録査定され、同年6月17日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する商標は、「MEN’S CLUB」の欧文字からなり(以下「引用商標」という。甲3)、同人が商品「雑誌(男性ファッション誌)」について使用しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書及び平成30年2月19日付けの回答書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第35号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当し、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効とされるべきである。
2 具体的な理由
(1)商標法第4条第1項第15号について
ア 概要
本件商標(甲1)は、請求人がその業務において長期間使用し周知となっている引用商標と同一であり、かつ請求人の業務と本件商標の指定商品との関連性等からすれば、請求人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがある。
イ 引用商標の周知性
請求人は出版社であり、その発行する雑誌「MEN’S CLUB」(以下「請求人雑誌」という場合がある。)は、1954年に創刊された我が国で初めての男性ファッション誌である。その歴史の概略は以下のとおりである(甲4、甲5)。
・1954年6月 「婦人画報増刊 男の服飾読本」として創刊
・1956年10月(第6集) 「MEN’S CLUB」ロゴを初めて使用
・1957年10月(第8集) 婦人画報増刊から独立創刊し、題号を男の服飾「MEN’S CLUB」とする。
・創刊当時の編集には、「TPO」という言葉を創り出し「メンズファッションの神様」と言われたメンズファッション評論家I氏が深く関わる。
以後、創刊から今年(審決注:2016年)で62年、男性ファッション誌の先駆け的存在として継続的に発行され、2016年9月号が第667号となる。
2014年の発行部数は、5万6,817部である(マガジンデータ2014 印刷証明付き部数)。
以上のとおり、引用商標は、男性ファッション誌の代名詞として我が国において広く知られる商標である。
ウ 引用商標の使用実態と本件商標の指定商品との関連性
男性ファッション誌においては、服飾品のほか、靴や鞄、生活雑貨、美容、車、時計、宝飾品、旅行、グルメなど幅広いジャンルで読者の生活スタイル全般にわたる情報提供がされる(甲6)。また、雑誌で紹介された商品を扱う実店舗が設置されたり(甲6)、各種ブランドとの共同企画(甲6、甲21?甲25)により、男性ファッション誌で紹介される各種商品に対して雑誌の名を冠することで、消費者に品質を保証しあるいは流行を取り入れた商品であることが提示されるなど、出版社はその発行する雑誌で紹介される商品について多角的に事業を展開している。
実際に、請求人は、雑誌、印刷物に限らず、多種多様な男性向け商品の企画や情報発信等を行っている(甲6、甲21?甲24)。
本件商標の指定商品「男性用化粧品」もまた、当然、男性ファッション誌において紹介される商品であり、男性のライフスタイルの一環として請求人雑誌の名を冠した商品企画がされる商品である。
実際に、請求人雑誌では、「美容定例」として、毎月4頁ほどのページを化粧品の特集にあて、ほぼ毎月何らかの化粧品やコスメ用品を紹介している(甲7?甲16の2)。
2009年以降は、毎年1回(7月号又は8月号)、「メンクラコスメ大賞」と題する企画を設け(当初は「美貌男コスメ大賞」の名称)、およそ30頁以上にわたる美容特集を組んで、化粧品、コスメ用品の紹介等を行っている(甲9?甲16)。なお、2016年においては、12月号でも32頁の美容特集を予定している。
また、請求人雑誌に掲載される化粧品の広告も増加傾向にあり、同誌の広告掲載料における化粧品の占める割合は、2014年8.4%、2015年11.4%、2016年(10月まで)11.9%と、年々増加している(甲17)。
さらに、請求人は、請求人雑誌について、富士フイルムが販売する「アスタリフト」という化粧品シリーズや、(株)マンダムが製造、販売するLUCIDO化粧品シリーズ等につき、化粧品会社と提携してコラボレーション企画を数多く実施してきた(甲21?甲25)。
このような雑誌と雑誌掲載商品とのコラボレーション企画は、雑誌及び商品の有するブランドイメージを相互に利用することで、双方のブランドイメージ及び顧客吸引力の向上を図るものであり、商品の側からすれば、掲載される雑誌が周知著名であればある程、提携の効果は高いこととなる。
このように出版社が雑誌に掲載した化粧品等を含む各種商品を販売する、いわゆる多角経営化の傾向は、請求人に限らず出版業界全体において顕著に見られる現象である。例えば請求人の競合誌でもある男性向けファッション雑誌、「Safari」(日之出出版、甲33)や「OCEANS」(ライトハウスメディア、甲34)、「Begin」(世界文化社、甲35)等では、インターネットサイトにおいて雑誌名を用いた通販サイトを設け、被服や服飾品に加え、多くの化粧品等を販売している。
そうすると、雑誌が、雑誌にとどまらず、被服、服飾品、そして化粧品等、雑誌に掲載された商品を実際に販売する多角経営化という現状が、出版業界全般において一般化しており、こうした状況が一般消費者にも広く浸透して認識されている、との実状をも考慮すれば、請求人雑誌を知る消費者が、雑誌と全く同一の本件商標が付された化粧品を見た際に、当該化粧品は請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であると誤認混合を生じる可能性は極めて高いといえる。
こうした事実からも、請求人雑誌と、本件商標の指定商品である化粧品とが極めて強い関連性を有していることは明らかである。
エ 男性ファッション誌と男性用化粧品の需要者が共通すること
上記のとおり、請求人雑誌は化粧品特集を多く組み、かつ、その広告掲載料における化粧品広告の割合も増加傾向にあるが、これは請求人雑誌の購読者層が当該化粧品の購買者層と重なっているからに他ならない。
化粧品に関心がないであろう読者層を持つ雑誌に、化粧品の広告を沢山出しても特段の効果は期待できず、また出版社としても、読者が関心のない企画、特集を組んでも雑誌の売り上げを期待できないことはいうまでもない。
つまり、請求人雑誌は30代から40代のファッションに関心の高い男性をターゲットとする雑誌であるところ、このような男性が化粧品についても高い関心を示しているからこそ、同誌においては男性用化粧品特集を積極的に企画し、かつ関連広告を掲載しているのである。
男性向けファッション誌と化粧品の市場は、いずれも女性向けファッション誌や化粧品市場と比べて圧倒的に規模が小さく、狭い市場である。そのため、男性ファッション誌の読者と男性用化粧品の需要者が共通する確率は、女性誌の場合と比べても格段に高いといえる。さらに、近年では、コンビニエンスストアや大手ドラッグストア等において、男性向け化粧品と雑誌が同じ店舗内の近接した売り場等で売られていることは周知の事実であり(甲29)、需要者の共通性は更に高まっているといえる。
このような事実からしても、請求人雑誌と男性用化粧品の需要者が基本的に共通していることは明白である。
オ 需要者の注意力の程度
「混同のおそれ」の有無の判断にあたっては、「当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として」判断すべきとされているところ、ファッション雑誌や化粧品を購入する際に、一般男性消費者が払う注意は必ずしも高いとはいえない。
高額商品、例えば車や高級腕時計を購入する場合に払う注意力と、日用品としての化粧品を購入する際に払う注意力とではその程度に差があることは当然である。いかに化粧品に高い関心がある(相応の注意を払う)消費者であっても、本件商標を付された化粧品をみて、請求人と何等かの関連性があるのではないかといった誤認を生じる可能性は十二分に想定されるから、誤認混同の可能性は高い。
以上を踏まえ、上記のとおり、実際にファッション雑誌において化粧品特集が多く掲載され、かつ、雑誌と化粧品のコラボレーション企画が数多く実施され、雑誌の名前を冠した商品が多く流通しているという取引の実態からすれば、需要者としては、引用商標の付された化粧品を見れば、請求人雑誌とのコラボレーション企画によるものであるか、又は請求人雑誌に掲載されたお勧め化粧品である、もしくは請求人がライセンスし、あるいは品質について何らかの監修等を行った商品である等、請求人と何等かの提携関係があるものであろうと誤認することは容易に想定されるところである。
カ 独創性について
「混同のおそれの有無」の判断が、需要者の認識にかかるものである以上、その判断にあたっては、「需要者の間に広く認識されているかどうか」という「需要者における認識の程度」こそが重視されるべきである。独創性の有無及び程度は、周知性の程度を補うためのファクターとしての機能、意義を有するにとどまり、十分な周知性が認められる本件においては各別に重視されるべき要素ではない。
キ 結論
よって、このような引用商標の周知性と、本件商標と引用商標の類似性に加えて、請求人雑誌と男性用化粧品との強い関連性と需要者の共通性及び男性ファッション誌と男性用化粧品の市場規模や出版業界における多角経営化の実状等を考慮すれば、男性用化粧品に本件商標が使用された場合、それに接した消費者は、請求人がライセンスし、あるいは品質について監修等を行った商品であると誤認混同を生じるおそれが極めて高い。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第19号について
ア 概要
本件商標権者は、本件商標と全く同一の商標を全く同一の指定商品について商標登録していたが(商標登録第1109985号。以下「旧登録商標」という。甲2)、不使用により取り消されている。それにもかかわらず、請求人が旧登録商標について商標権譲渡の交渉を持ちかけた途端に本件商標の出願を行ったものである。商標使用の実際の目的がないにもかかわらず、本件商標を請求人に高額で売却し、あるいは請求人の予定する事業を妨害することを目的として出願したものであるから、本件商標は「不正の目的」をもって使用するものである。
イ 旧登録商標に関する商標権譲渡交渉の経過
請求人は、上記のとおり事業の多角化に伴い、「男性用化粧品」を指定商品とする旧登録商標について、本件商標権者に譲渡の交渉を持ちかけた。その経過は以下のとおりであった。
・平成27年12月17日 請求人から本件商標権者に対し、旧登録商標について相談に伺いたい旨の通知を送付(甲18)。
・同年12月22日 本件商標権者のグループ会社と称する「株式会社クラブコスメチックス」(以下「クラブコスメチックス」という場合がある。)の管理部法務課D氏により、本件については同氏が対応する旨の電子メールを受信(甲19)。
・同年12月24日 D氏を訪問して面談する予定を平成28年1月8日と決める(甲19)。
・平成28年1月7日 本件商標を出願(甲1)。
・同年1月8日 クラブコスメチックスを訪問し、請求人とD氏が面談。請求人から旧登録商標の商標権譲渡を申し出る(この時点において、本件商標が出願されていた事実を知る由もなく、D氏から説明もない。)。面談後D氏から、商標権譲渡をする場合、クラブコスメチックスに通常使用権を許諾してもらえるかとの問い合わせがある(甲19)。
・同年1月12日 請求人から、(譲渡後の)通常使用権の付与について検討するので、クラブコスメチックスにおいてどのような使用を考えているのかを問い合わせる(これに対する回答はない。)(甲19)。
・同年1月19日 請求人から譲渡の対価を提示(甲19)。
・同年1月20日 本件商標権者から譲渡を拒否する回答(甲19)。
・同年2月12日 旧登録商標について不使用取消審判請求。
・同年5月19日 旧登録商標について取消審決(甲2)。
ウ 引用商標の周知性
上記(1)イのとおり、引用商標は、請求人の業務にかかる商品又はサービスを表示するものとして日本国内の需要者の間に広く認識されている。
エ 引用商標と本件商標の同一性
引用商標と本件商標は、その外観、称呼、観念のいずれも同一又は極めて類似する。
不正の目的
上記イの経過のとおり、本件商標権者は旧登録商標を長期間にわたって全く使用しておらず、不使用取消審判請求に対しても何らの反論、使用実績も主張することなく、取消審決が確定している。
それにもかかわらず、旧登録商標について請求人から商標権譲渡を持ちかけられた途端、請求人との面談予定日(平成28年1月8日)の前日に、旧登録商標と商標、指定商品とも全く同一の本件商標を出願したものである。
カ 結論
よって、本件商標の出願の目的が、現実にこれを使用することではなく、本件商標を請求人に高額で譲渡するかあるいは請求人の予定する事業を妨害するために出願したことは明白である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

第4 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、審判事件答弁書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第114号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標の周知性
請求人は、請求人雑誌が日本において広く知られている旨主張する。
しかしながら、請求人の主張する発行部数5万6,817部(2014年)は、同時期に発行された同世代向け男性ヤングアダルト誌計135万8,080部中、約4.2%にすぎない(乙1)。さらに、他の男性ファッション誌と比較しても、発行部数において請求人雑誌をはるかに上回る雑誌は多数ある(乙1?乙3)。このような状況において、引用商標が周知であるということはできない。
(2)引用商標と本件商標の指定商品との関連性
請求人は、男性ファッション誌においては、服飾品のほか、靴や鞄、生活雑貨等幅広いジャンルで情報提供がされ、各種ブランドとの共同企画により、雑誌で紹介される商品について多角的に事業を展開するため、請求人雑誌と本件商標の指定商品である化粧品とが極めて強い関連性を有していると主張する。
しかしながら、請求人雑誌のようないわゆる「情報誌」は、元来さまざまなジャンルの情報を提供するものであり、そのすべてのジャンルの商品について雑誌との関連性を認めるとすれば、第16類「雑誌」又はその上位概念である「印刷物」を指定商品とする商標登録について不当に広い権利範囲を認めることとなり、不合理である。
現に、請求人雑誌が主に服飾品を掲載するにもかかわらず、指定商品第25類「被服」についての「MEN’S CLUB」の商標は、第三者により登録されている(乙4?乙6)。また、「MEN’S CLUB」の商標を付した被服は、市場において請求人雑誌と混同されることなく販売されている(乙7?乙10)。
さらに、以下のとおり、第16類「雑誌」又は「印刷物」を指定する商標と第3類「化粧品」を指定する同一又は類似の商標とが併存登録され、当該商標を付したそれぞれの商品が、市場において混同を生じることなく販売されている。
・「with」と「WITH\ウイズ」(乙11、乙12)
・「MORE」と「MORE\モア」(乙13、乙14)
上記「with」及び「MORE」は、女性ファッション誌であり(乙15、乙16)、2016年におけるそれぞれの発行部数は18万6,000部及び23万6,667部と、請求人雑誌と比べてはるかに多い(乙17)。にもかかわらず、同一の商標を付した化粧品は、市場において当該女性ファッション誌と混同されることなく販売されている(乙18、乙19)。
以上の事実を考慮すると、本件商標が男性用化粧品に使用された場合、請求人の業務と混同を生じるという主張は、妥当性を欠くものである。
2 商標法第4条第1項第19号について
(1)旧登録商標に関する交渉について
請求人は、被請求人が保有していた旧登録商標について、商標権譲渡の交渉を持ちかけた途端に本件商標の出願を行ったと主張する。
しかしながら、請求人からの書簡には「ご相談に伺わせていただきたく」としか記載されておらず(甲18)、本件商標の出願時においては、被請求人は相談の内容が商標権譲渡に関するものであることを知らされていない。 また、請求人は平成28年1月8日の面談において、被請求人側から本件商標が出願されていた事実について説明がなかった旨を述べているが、企業における商標についての出願計画はいわゆる内部情報であり、ある商標登録の商標権譲渡についての申し入れを受けただけの段階において、被請求人の他の商標出願及び登録の状況についてまで他社に説明する必要はない。同日に被請求人が通常使用権について問合せを行っているのは、むしろ請求人からの申し出を真摯に検討し、また、被請求人が旧登録商標の商標について使用意思を有していたことによるものである。請求人は、どのような使用を考えているかの問合せについて被請求人からの回答がない旨を述べているが、商標の使用態様については被請求人側においても検討段階であり、商標の将来的な使用計画は企業秘密であるともいえるため、他社に明らかにする必要がないのは当然である。
(2)「クラブ」「CLUB」商標について
そもそも「CLUB」は、被請求人が属する「CLUBグループ」の中心である「株式会社クラブコスメチックス」が、その前身である中山太陽堂の自社製品第一号として明治36年に「クラブ洗粉」を発売して以来、「クラブ白粉」「クラブ美身クリーム」「クラブ男性乳液G」「クラブ ラブ乳液」等の「クラブ」ブランドを主力商品として販売し続けてきたことから、被請求人を含むCLUBグループのハウスマークの役割を果たすともいうべき主要ブランドである(乙20)。「クラブ」ブランドは、明治36年に始まり110年以上の歴史を有し、その商品は長年続く伝統ある商品として、多数の雑誌に紹介され、企画展等にも展示されている(乙21?乙32)。
現在(審決注:2016年12月)においても、同社の「クラブ」又は「CLUB」ブランドの商品を紹介する記事は、雑誌及びウェブサイトを含む多数の媒体に掲載されている(乙33?乙99)。また、eo光テレビが提供するeo光チャンネルの「技術立国日本!」という番組において、CLUBグループの第一号製品として「クラブ洗粉」、現在の主力商品として「クラブホルモンクリーム」が紹介されている(乙100)。さらに、被請求人の所有する「クラブ」又は「CLUB」の語を含む商標登録は105件に上り(乙101)、商標「club(ロゴ)」及び「CLUB」は、AIPPI JAPANの発行する「日本有名商標集」に掲載されている(乙102)。
上記より、被請求人が、「クラブ」「CLUB」ブランドを主要ブランドとしていることは明らかであり、その被請求人が、「クラブ」「CLUB」ブランドの男性用として使用するために、本件商標を出願したことについては何等の疑義も生じ得ない。自己が使用する以外の目的をもって出願したとは考え難い。
(3)「MEN’S CLUB」について
化粧品の業界において、特定の商標に「MEN’S」を付した商標を男性用商品の商標として使用することは、通常行われている。例えば、女性用「Biore(ビオレ)」(審決注:「e」の文字にはアクサンテギュが付されている。)に対して男性用「MEN’S Biore(メンズビオレ)」(審決注:同前)、女性用「Bigen(ビゲン)」に対して男性用「MEN’S Bigen(メンズビゲン)」、女性用「ケシミン」に対して男性用「MEN’Sケシミン」、女性用「Softymo(ソフティモ)」に対して男性用「men’s softymo(メンズソフティモ)」、女性用「肌水」に対して「MEN’S肌水」等が挙げられる(乙103?乙111)。これらの商標と同様に、被請求人は「クラブ」「CLUB」ブランドの男性用として商標「MEN’S CLUB」を独自に創案・採択し、出願したものである。
さらに、被請求人は、本件商標の使用の計画が具体化した段階において、商品パッケージのデザイン案を作成し(乙112)、2016年8月30日付けで商標「MEN’S club」及び商標「MEN’S\club ヒゲソリあとや\肌あれ防止に 弱油性タイプ」を出願している(乙113、乙114)。先願主義の下では、早期に商標権を確保するために、具体的な商標の態様が決定していない段階において標準文字で出願しておくのは一般的な戦略である。被請求人は、標準文字による商標の出願後、計画が具体化した段階で実際の使用態様にて商標出願を行っており、被請求人が本件商標について使用意思を有することは明らかである。
以上の事実を考慮すると、本件商標を請求人に高額で売却し、あるいは請求人の予定する事業を妨害することを目的として出願したとする請求人の主張は、妥当性を欠くものである。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当するものではない。

第5 当審の判断
請求人が利害関係人であることについては、当事者間に争いがないため、以下、本案に入って審理する。
1 引用商標の周知性について
(1)請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次の事実を認めることができる。
ア 請求人は、雑誌の出版等を行う株式会社であり、請求人雑誌のほか、「婦人画報」「25ans(ヴァンサンカン)」等複数の雑誌を出版している(甲4)。
イ 請求人雑誌は、男性ファッション誌であり、株式会社婦人画報社(以下「婦人画報社」という。)が1954年(昭和29年)に「婦人画報増刊 男の服飾讀本」として創刊し、1956年(昭和31年)に「MEN’S CLUB」のロゴが初めて使用された。そして、1957年(昭和32年)に婦人画報増刊から独立し、誌名を「男の服飾『MEN’S CLUB』」と変更し、さらに、1959年(昭和34年)に「MEN’S CLUB」と誌名変更し、1965年(昭和40年)からは月刊誌として、現在まで60年以上継続して発行されている(甲5、甲7?甲16)。
請求人は、婦人画報社から、請求人雑誌の発行を継承するとともに、引用商標も継承して使用を継続している(甲3の1・2、甲4)。
請求人雑誌の2015年(平成27年)の発行部数は約6万部であり(甲4)、2015年(平成27年)12月号は通巻658号である(甲15の12)。
ウ 請求人雑誌は、少なくとも2007年(平成19年)1月号からほぼ毎号、化粧品についての記事を掲載しており、平成21年からは毎年1回(7月号又は8月号)、15頁ないし30頁程度の美容特集を掲載している(甲7?甲16)。
エ 請求人は、特設の店舗を設置し、別注企画として引用商標を雑誌以外の商品に使用しているが(甲6)、それらの販売規模などは定かでない。
オ 請求人は、化粧品会社等と共同で企画する、いわゆるコラボレーション企画を数回実施している(甲21?甲24)。
カ 請求人雑誌の競合誌でも、インターネットサイトにおいて雑誌名を用いた通販サイトを設け、被服や服飾品に加え、化粧品を販売するなど、多角経営を行っている(甲33?甲35)。
(2)上記(1)の認定事実によれば、次のとおり判断できる。
請求人雑誌は、1954年(昭和29年)に創刊され、1959年(昭和34年)から「MEN’S CLUB」の誌名で本件商標の登録出願の日前である平成27年12月まで60年以上継続して、通巻で658号が発行され、その後も現在まで継続して発行されているものであるから、本件商標の登録出願の日前及び登録査定日はもとより現在も需要者の間に広く認識されているものと認めるのが相当である。
そうとすれば、請求人雑誌の誌名である「MEN’S CLUB」(引用商標)は、本件商標の登録出願の日前から、請求人雑誌を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められる。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)本件商標と引用商標の類似性の程度
上記第1のとおり、本件商標は、「MEN’S CLUB」の文字を標準文字で表してなるものであり、他方、引用商標は、「MEN’S CLUB」の欧文字からなるものであるから、両商標は、「メンズクラブ」の称呼及び「男性の集まりないし同好会」の観念を共通にするものであり、また、外観については、同一又は類似のものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
(2)引用商標の周知性及び独創性
上記1(2)のとおり、引用商標は、請求人雑誌を表示するものとして、本件商標の登録出願の日前及び登録査定日において、需要者の間に広く認識されているものと認められる。
しかしながら、引用商標を構成する「MEN’S」及び「CLUB」は、我が国で親しまれた英語であり、いずれも普通名称であるから、これらの語を組み合わせてなる引用商標の独創性は、造語による商標に比して高いとはいえない。
(3)男性用化粧品と男性ファッション誌との関連性及び需要者の共通性
ア 上記1(1)ウのとおり、請求人雑誌には、少なくとも最近約10年間にわたり、ほぼ毎号、化粧品についての記事が掲載されている。また、請求人は、化粧品会社等とのコラボレーション企画を実施し、請求人雑誌の競合誌でも、インターネットサイトにおいて雑誌名を用いた通販サイトで化粧品を販売するなど、多角経営を行っている実情がある。
そうすると、男性ファッション誌の主な対象は服飾品であるものの、化粧品はファッション全般に関するものとして、男性ファッション誌の対象とされているというべきである。
したがって、男性用化粧品と男性ファッション誌は、共にファッションに関するものとして少なからぬ関連性を有するというべきである。
イ 男性用化粧品と男性ファッション誌の需要者は、いずれも男性向けファッションに関心のある者と考えられ、共通するというべきである。
また、本件商標の指定商品は、日常的に消費される性質の商品であり、その需要者は特別の専門的知識経験を有する者ではないことからすると、これを購入するに際して払われる注意力は、さほど高いものでないというべきである。
(4)小括
上記(1)ないし(3)のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのある類似の商標というべきであり、引用商標の独創性は高いとはいえないものの、引用商標は需要者の間に広く認識されているものであり、その周知性は高いといえ、また、本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品とは関連性を有するものであり、需要者が共通すること及び需要者の注意力がさほど高くないこと等を考慮して、総合的に判断すれば、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用した場合は、需要者は、請求人の使用する引用商標を連想又は想起し、その商品が請求人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生じるおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 被請求人の主張について
被請求人は、請求人雑誌のようないわゆる「情報誌」は、元来さまざまなジャンルの情報を提供するものであり、そのすべてのジャンルの商品について雑誌との関連性を認めるとすれば、第16類「雑誌」又はその上位概念である「印刷物」を指定商品とする商標登録について不当に広い権利範囲を認めることとなり、不合理であると主張する。
しかし、上記1(1)ウのとおり、請求人雑誌には、少なくとも最近約10年間にわたり、ほぼ毎号、化粧品についての記事が掲載されていることから、化粧品はファッション全般に関するものとして、男性ファッション誌の対象とされているというべきであり、そうすると、男性用化粧品と男性ファッション誌は、共にファッションに関するものとして少なからぬ関連性を有するものといえ、そして、上記1(2)のとおり、引用商標は長期間にわたって周知のものであることに加え、上記1(1)オのとおり、請求人がコラボレーション企画等を行っていることをも併せ考慮すれば、いわゆる広義の混同が生じるおそれが認められる。
したがって、被請求人の主張は、採用することができない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反しないとしても、同法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2018-05-16 
結審通知日 2018-05-21 
審決日 2018-06-05 
出願番号 商願2016-1586(T2016-1586) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (W03)
最終処分 成立 
前審関与審査官 林 悠貴和田 恵美 
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 中束 としえ
小松 里美
登録日 2016-06-17 
登録番号 商標登録第5858891号(T5858891) 
商標の称呼 メンズクラブ、クラブ 
代理人 亀井 弘泰 
代理人 特許業務法人深見特許事務所 
代理人 近藤 美智子 
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