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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W33
審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W33
審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W33
管理番号 1342200 
異議申立番号 異議2016-685031 
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2018-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-12-16 
確定日 2018-04-13 
異議申立件数
事件の表示 国際登録第1279767号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 国際登録第1279767号商標の商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件国際登録第1279767号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、2015年(平成27年)9月30日に国際商標登録出願、第33類「Alcoholic beverages[excluding beers and wines];ciders;digesters[liqueurs and spirits];wines with a protected geographical indication,wines with a protected appellation of origin;spirits.」を指定商品として、平成28年6月1日に登録査定、同年10月7日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議の申立てに引用する登録商標は、次の(1)及び(2)のとおりであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。
(1)国際登録第952753号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、2007年7月26日にFranceにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2008年(平成20年)1月8日に国際商標登録出願、第33類「Wines of guaranteed label of origin from the winery called Chateau Montrose.」を指定商品として、平成21年6月5日に設定登録されたものである。
(2)国際登録第952669号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲3のとおりの構成からなり、2007年7月26日にFranceにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2008年(平成20年)1月8日に国際商標登録出願、第33類「Wines of guaranteed label of origin.」を指定商品として、平成21年2月6日に設定登録されたものである。
以下、上記(1)及び(2)をまとめていうときは、「引用商標」という。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するから、その登録は同法第43条の3第2項の規定により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第17号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標と引用商標1との比較
本件商標は、上部に数字の「1701」、下部に3段のトカゲを白抜きで表したグレーの盾の図形及びその下に「DOMAINE MONTROSE」の欧文字を二段に書してなり、その構成から「ドメーヌ モンローズ」の称呼が生ずる。
しかし、上段の「DOMAINE」の文字は小さく、下段の「MONTROSE」の文字が大きく記載され、商品「ワイン」との関係においては、「DOMAINE」の語は「ワイン生産者」を表すフランス語であるから(甲4)、自他商品識別標識としての機能を果たすものではない。
そうすると、本件商標においては、その構成中の「MONTROSE」の文字部分が自他商品識別標識としての機能を有し、「モンローズ」の称呼が生じることは明らかである。
そして、「MONTROSE」の文字部分は、「MONT」の部分が「山、丘」を、「ROSE」の部分が「ばら(色の)、ピンクの」を表すフランス語(甲5)として一般的に知られていることから、「ピンク(桃色)の山(丘)」の観念を生じるものである(甲6)。
他方、引用商標1は、図形及び「Chateau Montrose」並びに「Saint-Estephe」の欧文字を筆記体にて横書きにしてなるものであり、その構成から「シャトー モンローズ」及び「サンエステフ」の称呼が生じる。
しかし、「Chateau」の文字部分は、商品「ワイン」との関係においては、「ブドウ栽培から瓶詰めまで行うボルドー地方のブドウ園」(甲7)の意味合いを有する一般的なフランス語であり、自他商品識別標識としての機能を果たすものではない。
そうすると、引用商標1の出所表示として機能するのは、「Montrose」の文字部分であるといえる。
過去の審決等においても、「ボルドー産の『ワイン』との関係においては、『CHATEAU』は自他商品識別標識としての機能を果たすものではないといえるから、『CHATEAU ○○○』と表示された標章のうちで、その商品『ワイン』の出所表示として機能するのは、『CHATEAU』を除いた『○○○』の部分にあるものというのが相当である。」との判断がなされている(甲8)。また、その審決において、「フランスボルドー地方には、200以上の『シャトー』が存在し、これらの『シャトー』で生産されたワインのうち優れた品質のワインに、それぞれのシャトー名を表示して販売していること、そして、これらのワインが『シャトー』部分を省略し、紹介されていることが認められる」とあるように(甲8の1)、ワインは「シャトー」部分を省略して紹介、取引されることが一般的である。事実、引用商標1においては、「Montrose」の部分をもって取引されている実情がある(甲9)。世界で最も影響力のあるワイン評論家の著した「ボルドー第四版」においても、「格付が見直されることがあれば、モンローズはメドックの一級に格付されるかもしれない。」と「モンローズ」の名前で賞賛されている(甲9)。
引用商標1の「Saint-Estephe」の文字部分は、ワインの産地を表示する部分であり(甲9、甲10)、識別力は弱いと思われる。
しかし、「Chateau Montrose」の文字部分とかなり間隔が置かれていることに照らせば、「Saint-Estephe」の文字部分は、「Chateau Montrose」又は「Montrose」の文字部分と一体として称呼されるものではない。
したがって、引用商標1においては、その構成中、「Montrose」の文字部分が自他商品識別標識となる。
そして、「Montrose」の文字部分は、上記のとおり、「ピンク(桃色)の山(丘)」の観念を有する。
また、本件商標の指定商品中、「wines with a protected geographical indication,wines with a protected appellation of origin;」は、引用商標1の指定商品「Wines of guaranteed label of origin from the winery called Chateau Montrose.」と類似するものである。
以上によれば、本件商標と引用商標1とは、称呼及び観念を共通にする類似の商標であり、指定商品も類似のものである。
イ 本件商標と引用商標2との比較
本件商標は上記アのとおりである。
引用商標2は、その構成中、「La Dame de Montrose」の文字部分からは、「ラダムドゥモンローズ」、「ダムドゥモンローズ」、「ラダム」、「ドゥモンローズ」又は「モンローズ」の称呼が生じる。
「La Dame de Montrose」の文字部分は、「La Dame」と「de Montrose」の二段で記載され、「de」の文字が英語の「of又はfrom」に相当し、「・・・の」の意味を有するフランス語であるから(甲11)、需要者及び取引者は、「Montrose」の部分に注目して取引にあたることも多い。そして、「Saint-Estephe」の文字部分については、上記アのとおり、自他商品識別標識のとしての機能は弱いものと考えられる。
したがって、引用商標2からは、「モンローズ」の称呼が生じ、上記アにおいて述べたとおり、「ピンク(桃色)の山(丘)」の観念が生じるから、本件商標と引用商標2とは、称呼及び観念において同一の商標である。
そして、本件商標の指定商品中、「wines with a protected geographical indication,wines with a protected appellation of origin;」は、引用商標2の指定商品「Wines of guaranteed label of origin.」と同一又は類似するものである。
以上によれば、本件商標と引用商標2とは、称呼及び観念を共通にする類似の商標であり、指定商品も同一又は類似のものである。
ウ 結論
上記のとおり、本件商標は、引用商標と類似のものであり、また、その指定商品も同一又は類似のものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 引用商標の周知、著名性について
申立人のシャトーは、1815年に建てられ、ワインの生産が始められた。この土地は、春になると丘一面にヒースの花が咲き乱れ、ピンク色に染まっていたことから、「モン・ローズ(ばら色の丘)」と呼ばれるようになり、それがシャトー名となった。そのワイン「シャトー・モンローズ」は、1855年のメドック格付け時には、第2級という栄冠に輝いた由緒あるワインである。以来、シャトーの所有者が代わり、消費者の好みに合わせスタイルを軽くした時期もあったが、1986年以降は1975年以前のヴィンテージを思わせるようなスタイルに戻し、1989年以降から現在に至っては、メドックの中でも最上のワインとして多くの雑誌、新聞、インターネット等で広く紹介され、日本の需要者に広く普及している(甲9、甲10、甲12?甲16)。申立人の代表的な商品である、引用商標1に係るワインは、メドック格付け第1級のシャトー、ラトゥールに匹敵するほどの品質の高さと味わいから、「サン・テステフのラトゥール」と呼ばれるほど人気が高く、「モンローズ」と言えば申立人の商品として需要者及び取引者において広く認識されている。前述のとおり、引用商標1に係るワインは、「ボルドー第四版」において「モンローズ」の名で賞賛されており、フランスはもとより、特にイギリスにおいて評価が高いシャトーであり、日本においても、愛好者が多い(甲9、甲12、甲13)。
また、引用商標2に係るワインは、申立人のセカンドラベルとして広く知られ、ワイン愛好家の間で人気が高い。平均収穫量が23,500ケースであるが流通がそれほど多くないため、憧れのワインとなっている(甲17)。
以上のとおりであるから、引用商標は、本件商標の国際登録日前より、申立人の商品ワインを表すものとして、日本における需要者の間に広く認識されている商標であるというべきである。
イ 本件商標と引用商標との類似性について
上記(1)のとおり、本件商標は、引用商標と類似する商標である。
ウ 出所の混同
本件商標は、申立人の運営しているシャトーで生産され、その取り扱いに係る商品「ワイン」に使用され広く知られている「MONTROSE」の文字を書してなるものであるから、本件商標を、本件商標に係る指定商品中、「wines with a protected geographical indication,wines with a protected appellation of origin;」に使用する場合は、商品の出所について混同を生ずるおそれがあることは明らかである。事実、甲第6号証において、「ボルドーの某有名シャトーを彷彿とさせる名前です」との記述があるように、本件商標を使用することにより、取引者及び需要者は著名である引用商標を連想・想起し、商品の出所について混同を生ずるものと認められる。
また、本件商標に係る指定商品中、「Alcoholic beverages[excluding beers and wines];ciders;digesters[liqueurs and spirits];spirits.」は、アルコール類という点で「ワイン」と共通するものである。両者は同一事業者が取り扱う可能性の高い商品であり、密接に関連する商品である。これらの商品は同一事業者によって製造販売され、同一エリア内で販売されることも多く、申立人とは無関係の者が、本件商標を上記指定商品に使用する場合は、これに接する取引者及び需要者は著名である引用商標を連想・想起し、申立人又は申立人と関係のある者の取り扱いに係る商品であるかのように商品の出所について混同を生ずるものということは明らかである。
エ 結論
上記により、本件商標が本件指定商品に使用された場合、本件の指定商品の分野の需要者は、申立人の業務に係る商品と誤認し、出所について混同を生じるおそれがあることが明らかであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 取消理由の通知
当審において、本件商標の商標権者に対し、「本件商標は、引用商標1と類似する商標であって、本件商標の指定商品は、引用商標1の指定商品と同一又は類似する商品であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものといわなければならない。よって、本件に係る商標登録は、商標法第43条の3第2項の規定に基づいて、取り消すべきものである。」旨の取消理由を平成29年6月28日付けで通知した。
5 商標権者の意見
上記4の取消理由に対し、商標権者は、何ら意見を述べていない。
6 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、白抜きの「1701」の数字と3匹のトカゲとおぼしき形を内包した、吹き出しの上部を直線で切り取ったような水色の図形と、薄い灰色の曲線を背景に「DOMAINE」の文字と「MONTROSE」の文字を上下二段に書してなるものを、四角形の上の辺の中央部分を円弧状に外側に膨らませた枠線内に上下に配した構成からなるところ、構成中の枠線及び背景は、商標を構成する文字や図形等の装飾としてありふれたものであるから、かかる構成においては、水色の図形部分並びに「DOMAINE」及び「MONTROSE」の文字部分が看者の注意を引くといえる。
そして、その図形部分と文字部分は、枠内の上と下に離れて配されていることから、視覚上分離して観察されるものである。
加えて、文字部分のうち「DOMAINE」の文字は、本件商標の指定商品中「wines with a protected geographical indication,wines with a protected appellation of origin」との関係においては、取引者、需要者に、その商品がブルゴーニュ地方のブドウ園やワイン生産者に係る商品であることを理解させる語であって、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないか、極めて弱いものというのが相当である。
そうすると、本件商標は、その構成中、「MONTROSE」の文字部分が独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得るから、文字部分の構成文字全体から生じる「ドメーヌモンローズ」の称呼のほか、「MONTROSE」の文字部分から「モンローズ」の称呼をも生じるものである。
また、「MONTROSE」の文字は、一般の辞書等に掲載がなく、特定の意味を有しない造語と理解されるものであるから、本件商標は、その文字部分の構成文字全体及び「MONTROSE」の文字のいずれからも、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標1について
引用商標1は、別掲2のとおり、紋章とおぼしき図形の下に筆記体の「Chateau Montrose」(「Chateau」の3文字目の「a」にはアクサンシルコンフレックスが付されている。以下同じ。)の文字を配し、さらに離れた下方に「Saint-Estephe」(「Estephe」の4文字目の「e」にはアクサングラーヴが付されている。以下同じ。)の文字を配した構成からなるところ、かかる構成においては、図形部分、「Chateau Montrose」の文字部分及び「Saint-Estephe」の文字部分が視覚上分離して観察されるものである。
そして、文字部分のうち「Saint-Estephe」の文字は、引用商標1の指定商品との関係においては、取引者、需要者に、その商品がボルドー地方メドック地区のサンテステフ村産のワインであることを理解させるものであって、商品の品質を表示したものと認識され、それのみでは自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものである。
また、文字部分のうち「Chateau Montrose」の文字の構成中、「Chateau」の文字は、引用商標1の指定商品との関係においては、その商品がボルドー地方のブドウ園、ワイン醸造所に係る商品であることを理解させる語であって、自他商品識別標識としての機能を果たし得ないか、極めて弱いものというのが相当である。
そうすると、引用商標1は、その構成中、「Montrose」の文字部分が独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得るから、「Chateau Montrose」の文字部分から生じる「シャトーモンローズ」の称呼のほか、「Montrose」の文字部分から「モンローズ」の称呼をも生じるものである。
また、上記アと同じく「Montrose」の文字は特定の意味を有しない造語と理解されるものであるから、引用商標1は、「Chateau Montrose」の文字部分の構成文字全体及び「Montrose」の文字のいずれからも、特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標1との類否について
本件商標及び引用商標1の構成中、独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得る「MONTROSE」の文字部分と「Montrose」の文字部分とを比較すると、外観においてその構成文字を同一にし、称呼において「モンローズ」の称呼を同一にするものであって、構成文字を同一にする両者からは、異なる観念を生じないから、本件商標と引用商標1とは、相紛れるおそれのある類似の商標というのが相当である。
エ 本件商標の指定商品と引用商標1の指定商品との類否について
本件商標の指定商品と引用商標1の指定商品とは、同一又は類似するものである。
オ 小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標1と類似する商標であって、本件商標の指定商品は、引用商標1の指定商品と同一又は類似する商品であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 【別記】



異議決定日 2017-12-11 
審決分類 T 1 651・ 261- Z (W33)
T 1 651・ 263- Z (W33)
T 1 651・ 262- Z (W33)
最終処分 取消  
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 小松 里美
松浦 裕紀子
登録日 2015-09-30 
権利者 DOMAINE MONTROSE
商標の称呼 ドメーヌモンローズ、モンローズ、モントローズ 
代理人 特許業務法人きさ特許商標事務所 

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