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審決分類 |
審判 一部申立て 登録を維持 W09 審判 一部申立て 登録を維持 W09 審判 一部申立て 登録を維持 W09 審判 一部申立て 登録を維持 W09 審判 一部申立て 登録を維持 W09 審判 一部申立て 登録を維持 W09 |
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管理番号 | 1342197 |
異議申立番号 | 異議2018-900009 |
総通号数 | 224 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2018-08-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2018-01-09 |
確定日 | 2018-07-20 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5987535号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5987535号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5987535号商標(以下「本件商標」という。)は、「TS-LINK」の欧文字を標準文字により表してなり、平成29年2月10日に登録出願、第9類「電子計算機用プログラム,電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具,配電用又は制御用の機械器具,電気磁気測定器,測定機械器具,磁心,抵抗線,電極」並びに第38類及び第42類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定商品及び指定役務として、同年9月25日に登録査定され、同年10月13日に設定登録されたものである。 第2 登録異議の申立ての理由 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第9類「全指定商品」について、商標法第4条第1項第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号によりその登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第33号証を提出した。 1 引用商標 (1)引用商標1 申立人が、商標法第4条第1項第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に該当するとして引用する国際登録第1129618号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1のとおり「TP-LINK」の欧文字を横書きしてなり、2012年(平成24年)3月21日に国際商標登録出願、第9類「Modems; routers; power adapters; switches; modules for switching; network interface cards; fiber converters; telephones; computer network switches; antennas; network communication apparatus; transmitters of electrical signal; optical communication devices; intercommunication apparatus; wireless LAN adapters; wireless LAN access point; computer peripheral devices; data processing apparatus; computer storage devices; integrated circuit cards; cell phones; fluorescent screens; printed circuits.」及び第38類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の役務を指定商品及び指定役務として、平成25年12月20日に設定登録され、その後、同27年3月25日に本権の移転の登録がされたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。 (2)引用商標2 申立人が、商標法第4条第1項第11号及び同第19号に該当するとして引用する登録第5899512号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成28年5月17日に商標登録出願、第9類「電気用ケーブル,テレビジョン受信機,ビデオカメラ,蓄電池,歩数計,モデム,電気アダプター,コンピュータネットワークスイッチ,ネットワーク接続用カード(LANカード),トランスポンダ,電話機械器具,アンテナ,コンピュータ周辺機器,光通信機械器具,相互通信装置,無線ネットワーク接続用カード(LANカード),携帯電話機,携帯メディアプレーヤー,音響用振動板,スピーカー,電池用充電器,ルーター,電子信号送信機,監視ネットワークシステム用監視カメラ,データ通信ネットワークを用いた監視装置用監視カメラ,センサー(測定機器)(医療用のものを除く。),警報器,遠隔制御装置,電気スイッチ,プラグ,ソケットその他の電気接続具,ダウンロード可能な電子計算機用プログラム,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,測定機械器具,電線及びケーブル,電池」を指定商品として、同年11月25日に設定登録され、その商標権は現に有効に存続しているものである。 なお、引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは、「引用商標」という。 2 申立人について 申立人は、無線LANルーターの販売で世界最大のシェアを占める「ティーピー-リンク テクノロジー カンパニー リミテッド(TP-LINK Technologies Co.,Ltd.)」(以下「TP-LINK」社という。)のグループ会社である(甲4?甲6)。「TP-LINK」社は、1996年に設立された中国法人(有限責任公司)であって(甲5、甲6)、ネットワーク通信機器をはじめとしてモバイルバッテリーやダウンロードアプリなど様々な電気通信製品及び電子応用製品を製造販売しており(甲7?甲9)、2015年には、同社の無線LANルーター製品の一つである「Archer C7」が、多くの人が選ぶ優れた商品の一つとして、米国のニューヨークタイムズ紙で取り上げられ(甲10、甲11)、無線LANルーターの2016年第1四半期の世界シェアは45.94%を記録した(甲14、甲15)。そのほかにも、「TP-LINK」社の製品は、その優れた性能から、本件商標の登録出願前より世界各国で様々な賞を受賞している(甲12)。「TP-LINK」社は、本社を中国深センに置き、世界42ケ国に直営子会社や支社を展開しており(甲13)、日本では、2015年11月に日本法人「ティーピー-リンクジャパン株式会社(TP-LINK JAPAN INC.)」を設立し(甲5、甲6)、2016年6月に日本市場への本格参入を果たしている(甲14?甲16)。無線LANルーターで世界最大のシェアを占める「TP-LINK」社の日本市場参入は、当時大きな話題を呼び、毎日新聞やマイナビニュースなど、多くのメディアで取り上げられた(甲14?甲16)。参入当初は、Yahooショッピング、楽天市場、amazonといったオンラインショッピングモール内において、「TP-LINK」社の公式オンラインストアでのみ製品を販売していたが、通信速度の速いハイエンドな製品を求めるユーザーからの高い支持を獲得し、その後、2017年3月13日からはビックカメラとヨドバシカメラの家電量販店における販売も開始した(甲17)。その結果、日本市場への本格参入から1年間(2016年6月?2017年6月)の販売数は、累計160,000台を達成し、日本市場における無線LAN中継器のシェアは第2位を記録している(甲18)。現在では、公式オンラインストアでの販売はもちろん、複数の大手家電量販店において販売されている(甲19)。 さらに、「TP-LINK」社は、我が国において、以下のSNS公式アカウントにより、自らの商品を取引需要者に対して訴求している(甲20?甲23)。特に、Facebook、YouTube、TwitterのSNS公式アカウントは、本件商標の登録出願前から運用している(甲20、甲21、甲23)。 また、「TP-LINK」社の協力により製作されたYouTube動画は、2016年11月25日に公開されて以降、2万回以上再生されており、「TP-LINK」社の商品は我が国の需要者から非常に注目されている(甲24)。 なお、「TP-LINK」社は我が国において積極的に事業を展開しており、2018年1月15日には、プロeスポーツチーム「DetonatioN Gaming」とのスポンサー契約締結を発表している(甲25)。 3 引用商標について 引用商標1及び引用商標2は、本件商標の登録出願前に出願・登録されており(甲1?甲3)、「TP-LINK」社の社名である「TP-LINK(tp-link)」の文字をその構成要素に含む。当該「TP-LINK(tp-link)」の文字は、電磁ケーブル配線の一種である「twisted pair link」(ツイスト ペア リンク)に基づき、「TP-LINK」社が独自に考案した造語である。 また、引用商標1及び引用商標2は、「TP-LINK」社のホームページ、製品パッケージ、世界各国での展示会、広告などで使用されており(甲26?甲30)、無線LANルーターで世界最大のシェアを占める「TP-LINK」社の商標として、世界中の需要者の目に触れている。この点、中国の審判では、商標「TP-LINK」は、「TP-LINK」社の商標として周知であると認定されている(甲31)。また、「TP-LINK」社の日本市場への本格参入は、多くのメディアで取り上げられたことから、参入当時の2016年6月には、我が国の通信機器を取り扱う業界において、引用商標1及び引用商標2が「TP-LINK」社の商標として認識されたものと考えられる。 さらに、上述のとおり、2016年6月?2017年6月の期間の販売数は、累計160,000台を達成し、無線LAN中継器のシェアでは日本市場において第2位を記録したことから、遅くとも日本市場参入から半年ほど経過した2016年12月には、相当程度、我が国において引用商標1及び引用商標2は「TP-LINK」社の商標として認知されていたものと考えられる。 したがって、引用商標1及び引用商標2は、本件商標の登録出願時(2017年2月)には、商品「ルーター」について「TP-LINK」社を表す商標として、日本国内外の取引需要者に広く知られていたと推認される。 4 商標権者について 商標権者である「株式会社タムラ製作所」は、ネットワーク通信機器の製造・販売を行っており(甲32)、本件商標の登録出願時(2017年2月)には、その競合他社として、無線LANルーターで世界最大のシェアを占める「TP-LINK」社の存在を当然知っていたものと考えられる。また、商標権者は、中国深センに関連会社「田村電子(深セン)有限公司」を有しており(甲33)、中国深センに本社を置く「TP-LINK」社とは、地理的にも近接していることから、本件商標の登録出願時に「TP-LINK」社の存在を知っていたものと考えられる。 5 商標法第4条第1項第15号について 引用商標1は、本件商標の登録出願時において、我が国における取引需要者の間で、少なくとも「ルーター」について「TP-LINK」社の商標として広く知られていたものと推認され、引用商標1に表された「TP-LINK」の文字は「TP-LINK」社が独自に考案した造語である。 ここで、本件商標と引用商標1とは、その書体に違いがあるものの、一般的に使用される書体の範囲内の相違であり、両商標の実質的な違いは、中間のアルファベット1字(「S」と「P」)にすぎず、外観上相紛らわしいものである。 さらに、「TP-LINK」社は、ネットワーク通信機器をはじめとしてモバイルバッテリーやダウンロードアプリなど様々な電気通信製品及び電子応用製品を製造販売しているところ、本件商標に係る指定商品「電子計算機用プログラム,電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具,配電用又は制御用の機械器具,電気磁気測定器,測定機械器具,磁心,抵抗線,電極」は、「TP-LINK」社が取り扱う電気通信製品及び電子応用製品の部類に属するか、これら製品に関連するものである。 加えて、需要者の共通性その他取引の実情について、本件商標の指定商品は、日常的に消費される性質の電気通信製品及び電子応用製品を広く含むところ、その主たる需要者は、広く一般の消費者を含むものということができる。そして、このような一般の消費者には、必ずしも商標やブランドについて正確又は詳細な知識を持たない者も多数含まれているといえ、商品の購入に際し、メーカー名やハウスマークなどについて常に注意深く確認するとは限らない。 そうすると、本件商標の登録出願時において、商標権者によって本件商標が使用された場合には、その商品に接する取引需要者は、取引上要求される一般的な注意をもってしても、その商品が「TP-LINK」社の商品であるとか、「TP-LINK」社と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同を生ずる可能性は十分に予想され、需要者がその出所について混同を生じることは明らかである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 6 商標法第4条第1項第10号について 引用商標1は、本件商標の登録出願時において、我が国における取引需要者の間で、少なくとも商品「ルーター」について「TP-LINK」社の商標として広く知られていたと推認される。また、本件商標と引用商標1とは、その書体に違いがあるものの、一般的に使用される書体の範囲内の相違であり、両商標の実質的な違いは、中間のアルファベット1字(「S」と「P」)にすぎず、外観上相紛らわしいものであって、互いに類似する商標である。加えて、本件商標の指定商品中「電子計算機用プログラム,電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具」(第9類)と、「TP-LINK」社の使用に係る商品「ルーター」とは、同一又は類似の商品である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 7 商標法第4条第1項第11号について 引用商標1は、本件商標との関係において、他人の先願登録商標であるところ、本件商標と引用商標1とは、その書体に違いがあるものの、一般的に使用される書体の範囲内の相違であり、両商標の実質的な違いは、中間のアルファベット1字(「S」と「P」)にすぎず、外観上相紛らわしいものである。また、本件商標に係る指定商品中「電子計算機用プログラム、電子応用機械器具及びその部品、電気通信機械器具」と引用商標1に係る指定商品中「ルーター」とは、同一又は類似の商品であり、本件商標に係る指定商品中「配電用又は制御用の機械器具」と引用商標1に係る指定商品中「電源アダプター」とは、類似の商品である。 さらに、引用商標2は、本件商標との関係において、他人の先願登録商標であるところ、「tp-link」の文字部分が分離観察され得ることから、本件商標と引用商標2の構成中「tp-link」の文字部分とを比較検討するに、その書体に違いがあるものの、一般的に使用される書体の範囲内の相違であって、両商標の実質的な違いは、中間のアルファベット1字(「S」と「p」)にすぎず、その構成は近似しており、外観上相紛らわしいものである。また、本件商標と引用商標2とは、共に「測定機械器具」を指定商品に含む。 以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 8 商標法第4条第1項第19号について 引用商標1は、本件商標の登録出願時において、日本国内外における需要者の間で、少なくとも「ルーター」について「TP-LINK」社の商標として広く知られており、本件商標は、引用商標1と類似する。また、商標権者は、本件商標の登録出願時に、無線LANルーターで世界最大のシェアを占める「TP-LINK」社の存在を当然知っていたと推測され、商標権者による本件商標の登録出願行為は、引用商標に化体した申立人の信用に便乗(フリーライド)する目的(不正な目的)が推認される。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 第3 当審の判断 1 引用商標の周知著名性について (1)申立人の提出する証拠及び主張によれば、以下の事実が認められる。 ア インターネットのウェブ記事において、申立人は、「TP-LINK」社のグループ会社であるとされている(甲4)。 イ インターネットのフリー百科事典「ウィキペディア」の記事において、「TP-LINK」社は、1996年に設立された中国企業であるとされている(甲5、甲6)。 「TP-LINK」社のホームページによれば、同社は、ネットワーク通信機器をはじめとしてモバイルバッテリーやダウンロードアプリなど様々な電気通信製品及び電子応用製品を製造販売しており(甲7?甲9)、同社の無線LANルーター製品の一つである「Archer C7」が、多くの人が選ぶ優れた商品の一つとして、米国のニューヨークタイムズ紙で取り上げられたこと(甲10)や、無線LANルーターの2016年第1四半期の世界シェアは45.94%を記録したこと(甲14、甲15)が、インターネットのウェブ記事において紹介されている。 そのほかにも、同社のホームページにおいて「TP-LINK」社の製品が世界各国で賞を受賞したことが紹介されている(甲12)。 ウ インターネットのフリー百科事典「ウィキペディア」の記事によれば、「TP-LINK」社は、2015年11月に日本法人「ティーピー-リンクジャパン株式会社」を設立したとされ(甲5、甲6)、2016年6月に「無線LANルーターで世界最大のシェアを占める中国メーカー」である「TP-LINK」社が、日本市場へ参入したことが毎日新聞やマイナビニュースなどのウェブ記事に紹介されている(甲14?甲16)。 そして、2017年3月13日からビックカメラ及びヨドバシカメラの家電量販店における販売も開始したことが、同年3月10日付けのウェブ記事において紹介されている(甲17)。また、「TP-LINK」社のホームページでは、複数の大手量販店を取扱店として店舗検索ができるようにしている(甲19)。 さらに、インターネットのウェブ記事において、日本市場への本格参入から1年間(2016年6月?2017年6月)の販売数は、累計160,000台を達成し、日本市場における無線LAN中継器のシェアは第2位を記録したと記載されている(甲18)。 エ 「TP-LINK」社は、我が国において、SNS公式アカウントを有し、YouTube動画で、自らの商品を紹介している(甲20?甲24)。また、2018年1月15日には、プロeスポーツチーム「DetonatioN Gaming」とのスポンサー契約締結を発表したことがウェブ記事に掲載されている(甲25)。 オ 引用商標1及び引用商標2は、「TP-LINK」社のホームページ、製品パッケージ、展示会のポスターに表示されている(甲26?甲30)。 (2)判断 上記アないしオを総合勘案すれば、「TP-LINK」社はネットワーク通信機器をはじめとしてモバイルバッテリーやダウンロードアプリなど電気通信製品及び電子応用製品を製造販売している中国企業であり、引用商標1及び引用商標2は、「TP-LINK」社のホームページ、製品パッケージ、展示会において使用されていることがうかがわれる。 そして、「TP-LINK」社は、2016年6月には日本市場に参入し、自身のホームページや量販店で商品の販売を行い、SNS公式アカウントやスポンサー契約締結等により、商品に関する広告活動をしていることもうかがわれる。 しかしながら、インターネット上のウェブ記事において、「日本市場への本格参入から1年間(2016年6月?2017年6月)の販売数は、累計160,000台を達成し、日本市場における無線LAN中継器のシェアは第2位を記録した」(甲18)との記事があるものの、引用商標が使用された商品の販売数等が示されていない紹介記事にとどまるものであり、当該記事の他に、引用商標1又は引用商標2が使用された「ルーター」について、我が国における販売量、売上高、市場占有率(シェア)、広告宣伝の規模等を具体的に裏付ける取引書類や広告実績が分かる客観的な資料の提出はないものである。 してみれば、引用商標が、我が国において使用された結果、申立人の業務に係る商品「ルーター」を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。 また、申立人は、引用商標は「無線LANルーターで世界最大のシェアを占める『TP-LINK』社の商標として、世界中の需要者の目に触れている。この点、中国の審判では、商標『TP-LINK』は、『TP-LINK』社の商標として周知であると認定されている」と述べ、引用商標が、中国を始め外国で周知である旨主張しているが、「無線LANルーターで世界最大のシェアを占める」ことや、中国での周知著名性を裏付ける資料は、インターネットの数件のウェブ記事及び中国語で記載された資料のみであり、外国における、引用商標を使用した「ルーター」の販売量、売上高、市場占有率(シェア)、広告宣伝の規模等について、引用商標の使用状況を客観的に把握することができる資料の提出はないものである。 そうすると、申立人が提出した証拠からは、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国及び外国において、引用商標が、申立人の業務に係る商品「ルーター」を表すものとして、需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。 2 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標 本件商標は、前記第1のとおり、「TS-LINK」の文字からなり、その構成文字に応じて「ティーエスリンク」の称呼を生じ、また、該構成文字は、辞書に採録されていないものであり、特定の意味合いを生ずることのない一種の造語であることから、特定の観念は生じないものである。 (2)引用商標 ア 引用商標1は、別掲1のとおり、ややデザインされた「TP-LINK」の文字からなり、その構成文字に応じて「ティーピーリンク」の称呼を生じ、また、該構成文字は、辞書に採録されていないものであり、特定の意味合いを生ずることのない一種の造語であることから、特定の観念は生じないものである。 イ 引用商標2は、別掲2のとおり、太線でモノグラム的にデザインされた幾何図形と、ややデザインされた「tp-link」の文字を該幾何図形の右側に配してなるところ、図形部分と文字部分とは、視覚的に分離され、これを常に一体不可分のものとして把握しなければならない特別の事情は見いだせず、商標全体の他に、図形部分と文字部分がそれぞれが独立して自他商品の識別機能を果たし得るものというべきである。 そして、引用商標2の図形部分は、我が国において特定の事物を表したもの又は意味合いを表すものとして認識され、親しまれているというべき事情は認められず、特定の称呼及び観念を生じないものである。 また、引用商標2の文字部分である「tp-link」の文字は、その構成文字に応じて「ティーピーリンク」の称呼を生じ、また、該構成文字は、、辞書に採録されていないものであり、特定の意味合いを生ずることのない一種の造語であることから、特定の観念は生じないものである。 してみれば、引用商標2は、その構成中、「tp-link」の文字部分に相応して、「ティーピーリンク」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 (3)本件商標と引用商標との類否 ア 本件商標と引用商標1との類否 本件商標と引用商標1を比較すると、外観においては、全体の書体が相違するほか、共に比較的短い6文字で構成され、それぞれの2文字目において別異の欧文字と容易に認識される「S」と「P」の文字の差異を有することからすれば、その外観は判然と区別できるものである。 次に、称呼においては、本件商標から生じる「ティーエスリンク」の称呼と、引用商標から生じる「ティーピーリンク」の称呼とを比較すると、共に7音から構成され、その第2音節目に「エス」と「ピー」の差異を有するものであり、比較的短い音構成にあっては、この差異が称呼全体に与える影響は大きく、両者を一連に称呼した場合は、両者は、称呼上、明瞭に聴別できるものである。 また、観念においては、いずれも特定の観念を生じないものであるから、両者を比較することはできない。 してみれば、本件商標と引用商標1は、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において明らかに相違するものであるから、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 イ 本件商標と引用商標2との類否 本件商標と引用商標2を比較すると、外観においては、文字のみからなる本件商標と図形及び文字からなる引用商標2とは、全体の構成態様は明らかに相違するものである。 また、本件商標と引用商標2の構成中、「tp-link」の文字部分を比較しても、文字全体の書体や大文字と小文字の差異を有するほか、共に比較的短い6文字で構成され、2文字目において、別異の欧文字と容易に認識される「S」と「p」の文字の差異も有することからすれば、その外観は判然と区別できるものである。 次に、称呼においては、本件商標から生じる「ティーエスリンク」の称呼と、引用商標2から生じる「ティーピーリンク」の称呼とは、共に7音から構成され、その第2音節目に「エス」と「ピー」の差異を有するものであり、比較的短い音構成にあっては、この差異が称呼全体に与える影響は大きく、両者を一連に称呼した場合は、両者は、称呼上、明瞭に聴別できるものである。 また、観念においては、いずれも特定の観念を生じないものであるから、両者を比較することはできない。 してみれば、本件商標と引用商標2は、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において明らかに相違するものであるから、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 (4)小括 上記のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第10号該当性について 前記1(2)のとおり、引用商標1は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 また、前記2(3)のとおり、本件商標と引用商標1とは、相紛れるおそれのない非類似の商標である。 そうすると、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標ということはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第15号該当性について 前記1(2)のとおり、引用商標1は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 また、前記2(3)のとおり、本件商標と引用商標1とは、相紛れるおそれのない非類似の商標である。 してみれば、引用商標1が造語であり、かつ、その指定商品「ルーター」が、本件商標の指定商品「電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具」の範ちゅうの商品であることからその関連性を有するものであり、その需要者に共通性があったとしても、上記のとおり、引用商標1は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできず、かつ、本件商標と引用商標1とは、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきであるから、商標権者が本件商標をその指定商品について使用をしても、取引者、需要者をして引用商標1を連想又は想起させることはなく、その商品が、他人(申立人)の業務と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標ということはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 5 商標法第4条第1項第19号該当性について 引用商標は、いずれも、前記1(2)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国及び外国において、申立人の業務に係る商品を表すものとして、需要者の間に広く認識されるものであったとは認めることができない。 また、本件商標と引用商標とは、前記2(3)のとおり、互いに相紛れるおそれのない非類似の商標である。 そして、申立人は、「商標権者は、ネットワーク通信機器の製造・販売を行っており、本件商標の登録出願時(2017年2月)には、その競合他社として、無線LANルーターで世界最大のシェアを占める『TP-LINK』社の存在を当然知っていたものと考えられる。また、商標権者は、中国深センに関連会社『田村電子(深セン)有限公司』を有しており、中国深センに本社を置く『TP-LINK』社とは、地理的にも近接していることから、本件商標の登録出願時に『TP-LINK』社の存在を知っていたものと考えられる。」とし、商標権者による本件商標の登録出願行為は、「引用商標に化体した申立人の信用に便乗(フリーライド)する目的(不正な目的)が推認される。」旨主張しているが、商標権者が商標権者の競合他社として「TP-LINK」社を知っていたとしても、そのことのみでは、商標権者が、不正の利益を得る目的や使用商標の出所表示機能を希釈化させ、その名声等を毀損させる目的をもって本件商標を出願し、登録を受けたと認めることはできない。 ほかに、本件商標が不正の目的をもって使用する商標であることを認めるに足りる証拠の提出はない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 6 むすび 以上のとおり、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第9類「全指定商品」について、商標法第4条第1項第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に該当するものではなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その商標登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(引用商標1) 別掲2(引用商標2) |
異議決定日 | 2018-07-12 |
出願番号 | 商願2017-14962(T2017-14962) |
審決分類 |
T
1
652・
263-
Y
(W09)
T 1 652・ 271- Y (W09) T 1 652・ 261- Y (W09) T 1 652・ 222- Y (W09) T 1 652・ 262- Y (W09) T 1 652・ 25- Y (W09) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 小林 智晴、中尾 真由美 |
特許庁審判長 |
冨澤 美加 |
特許庁審判官 |
真鍋 恵美 鈴木 雅也 |
登録日 | 2017-10-13 |
登録番号 | 商標登録第5987535号(T5987535) |
権利者 | 株式会社タムラ製作所 |
商標の称呼 | テイエスリンク、リンク |
代理人 | 特許業務法人三枝国際特許事務所 |