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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
管理番号 1342195 
異議申立番号 異議2017-900301 
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2018-08-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-10-11 
確定日 2018-07-11 
異議申立件数
事件の表示 登録第5971086号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5971086号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5971086号商標(以下「本件商標」という。)は,「ベビマ」の文字を標準文字で表してなり,平成28年12月13日に登録出願,第43類「育児相談及び育児に関する助言・情報の提供,保育所に関する情報の提供,保育所における乳幼児の保育,料理のレシピに関する助言・情報の提供,飲食物の提供に関する情報の提供,飲食物の提供,宿泊施設の提供に関する情報の提供,宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」を指定役務として,同29年7月6日に登録査定され,同年8月10日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は,「ベビ★マ」(以下「引用商標1」という。)及び「ベビマ」(以下「引用商標2」という。)の文字及び図形からなり(以下,これらをまとめていうときは「引用商標」という。),同人が「オムツ替えや授乳等の保育施設を検索し,その結果を地図上に表示する機能を持つ情報端末向けアプリケーションソフト」に使用しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第7号,同第10号及び同第15号に該当するものであるから,その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第22号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第10号について
引用商標は,2013年9月25日にリリースされた,主にオムツ替えや授乳等の保育施設を検索し,その結果を地図上に表示する機能を持つ情報端末向けアプリケーションソフト(以下「アプリ」という。)に使用するものである(甲2)。
同アプリに関する事業は,インターリンク株式会社にて開始され,その後株式会社エストコーポレーションに同事業の運営が移った(甲2)。2015年11月からは,株式会社エストコーポレーションの従業員であった申立人が同事業を買い取り,以降申立人が代表取締役を務めるTrim株式会社にて運営されている(甲17)。
リリース以来改良を重ね,本件商標出願前の2016年5月27日においては,保育施設のみならず,カフェ,食事処,公園等についても検索,登録及び地図上での表示機能,並びにユーザ同士の情報交換機能を有していた(甲3,甲17)。
引用商標に係る役務には,「育児相談及び育児に関する助言・情報の提供,保育施設に関する助言・情報の提供,飲食物の提供に関する情報の提供」が含まれ,これは,本件商標における指定役務の一部と同一又は類似するものである。
その育児世代を支援する当該役務と係る引用商標は,少子化問題も追い風となり,育児世代が中心となる需要者のみならず社会全体から注目を集めてきた。
本件商標出願前においては,内閣府認証NPOキッズデザイン協議会会長賞をはじめ,内閣官房主催日本トイレ大賞,横浜ビジネスグランプリ2016最優秀賞を受賞(甲4?甲6)。申立人の経営する企業は,前事業運営会社からの引継ぎを含め,複数の自治体と連携を図り(甲11,甲12,甲18,甲21),引用商標に係る役務を通して子育て支援に務めている。
これらの実績とその注目を浴びる役務は,引用商標とともに大手新聞社を始めとする各種メディアに掲載され(甲7?甲20),出願前の2016年3月には,少なくとも累計7万5千件?8万数千件のアプリのダウンロード実績がある(甲14,甲15)。
以上の事実から,引用商標は,本件出願時及び査定時に需要者の間で高い周知性を有していた。
引用商標は「ベビ★マ」又は「ベビマ」であり(甲2,甲19),本件商標と称呼がともに「ベビマ」で同一,その外観についても「★」の有無の差異のみであることから両商標は同一又は類似する。さらに,本件商標に係る商標権者(以下「商標権者」という。)と,申立人との間には何ら関係がない。
したがって,本件商標は,他人である申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている引用商標と同一又は類似する商標であるから,引用商標に係る役務又はそれに類似する役務である指定役務「育児相談及び育児に関する助言・情報の提供,保育所に関する情報の提供,保育所における乳幼児の保育,料理のレシピに関する助言・情報の提供,飲食物の提供に関する情報の提供,飲食物の提供」について,商標法第4条第1項第10号に該当する。
2 商標法第4条第1項第15号について
前述のとおり引用商標は,申立人の商標として,需要者の間で広く知られている。
よって,商標権者が引用商標と同一又は類似する本件商標を指定役務に使用する場合,需要者の間において,申立人の業務に係る役務として誤認,混同を生ずるおそれがあるから,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第7号について
前述のとおり,引用商標が多くのメディアにて紹介される等の事情から,商標権者は,本件商標の出願前に引用商標を認識する機会が十分にあった。
ところで,引用商標1は,申立人が合わせて使用してきた商標「BabyMap」(甲2)から由来したものである。申立人は,商標「BabyMap」を2016年6月に「Baby map」(甲17)に変更した上で,将来的に引用商標との統一化を目指している。
商標権者は,本件商標のみならず,本件商標と同日に商標「babymap」についての商標権(商標登録第5971085号)も取得している(甲22)。該商標は,申立人が引用商標と合わせて使用してきた「BabyMap」や「Baby map」と著しく類似するものであり,また,該商標に係る指定役務は,本件商標と同一であって,申立人の役務との関係において,重複する部分を有することは本件商標と同じである。
商標権者が,申立人の商標に酷似する複数の商標について,申立人の役務に重複する役務を指定役務として商標権を取得している事実はもはや偶然とはいえず,申立人の商標を出願前にメディアの掲載等から知り得て,なにかしらの不正の目的をもって剽窃的に出願したものと推認するに十分である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当する。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第10号及び同第15号該当性について
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人提出の証拠及び同人の主張によれば,次のとおりである。
(ア)2013年9月25日にリリースされた,オムツ替えや授乳等の保育施設を検索し,その結果を地図上に表示する機能を持つ情報端末向けアプリケーションソフト(以下「本件アプリ」という。)に引用商標1が使用されており(甲2),また,甲第8号証及び甲第19号証の本件アプリの紹介記事中に引用商標2の記載がある。
(イ)本件アプリに関する事業は,インターリンク株式会社にて開始され,その後,株式会社エストコーポレーションに同事業の運営が移った(甲2)。2015年11月からは,株式会社エストコーポレーションの従業員であった申立人が同事業を買い取り,以降申立人が代表取締役を務めるTrim株式会社にて運営されている(甲17)。
(ウ)本件商標の登録出願前においては,本件アプリが,内閣府認証NPOキッズデザイン協議会会長賞をはじめ,内閣官房主催日本トイレ大賞,横浜ビジネスグランプリ2016最優秀賞を受賞している(甲4?甲6)。
(エ)申立人の経営する企業は,前事業運営会社からの引継ぎを含め,複数の自治体と連携を図り(甲11,甲12,甲18,甲21),本件アプリの提供を通して子育て支援に務めている。
(オ)本件アプリに関する事業は,引用商標とともに大手新聞社を始めとする各種メディアに掲載され(甲7?甲20),出願前の2016年3月には,少なくとも累計7万5千件?8万数千件のアプリのダウンロード実績がある(甲14,甲15)。
イ 上記アからすれば,引用商標1は,2013年から,本件アプリについて使用されていることが認められるが,引用商標2は,ウエブサイトや新聞の本件アプリの紹介記事中に数回記載されているにすぎない。
そして,引用商標の使用事実について,申立人は,「出願前の2016年3月には,少なくとも累計7万5千件?8万数千件のアプリのダウンロード実績がある」旨を主張するが,これはインターネット上の新聞記事の引用であり,アプリのダウンロード数を間接的に示すにすぎないばかりでなく,「7万5千件?8万数千件」という数値も,インターネットないしスマートフォンが広く利用されている状況の下,必ずしも,周知性を獲得したことを裏付けるのに十分な数値とはいえない。
さらに,申立人は,本件アプリが,「内閣府認証NPOキッズデザイン協議会会長賞をはじめ,内閣官房主催日本トイレ大賞,横浜ビジネスグランプリ2016最優秀賞を受賞した」ことを主張しているが,これらの受賞が引用商標の周知性を判断する上でどのような関連性を有するのかも明らかでない。
また,メディアの紹介記事も2015年?2016年のものに限られており,掲載数にしても10数件にすぎない。
その他,提出された証拠等を検討しても,顧客数,市場占有率,広告の範囲及び回数等,引用商標の具体的な使用状況が明らかではない。
してみれば,引用商標は,本件商標の登録出願時及び査定時に,申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていると認めることができない。
(2)本件商標と引用商標との類否について
本件商標は,前記第1のとおり,「ベビマ」の文字からなるところ,該文字は,辞書等に採録のないものであって,特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として認識されるものである。そして,該文字に相応して,「ベビマ」の称呼を生じるものである。
他方,引用商標1は,前記第2のとおり,「ベビ★マ」の文字及び図形からなるところ,その構成文字等の全体は,辞書等に採録のないものであって,特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として認識されるものである。そして,その構成文字に相応して,「ベビマ」の称呼を生じるものである。
また,引用商標2は,前記第2のとおり,「ベビマ」の文字からなるところ,その構成文字は,辞書等に採録のないものであって,特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として認識されるものである。そして,その構成文字に相応して,「ベビマ」の称呼を生じるものである。
そうすると,本件商標と引用商標1とは,外観において「★」の図形の有無という差異があるものの,他の構成文字を共通にすることから近似した印象を与えるものであり,称呼においては,「ベビマ」の称呼を同一にするものである。
また,本件商標と引用商標2とは,構成文字を共通にすることから,外観において類似するものであり,称呼においては,「ベビマ」の称呼を同一にするものである。
してみれば,本件商標と引用商標とは,観念において比較できないとしても,外観において近似又は類似し,称呼を同一にするものであるから,これらを総合して考察すれば,両者は相紛れるおそれのある類似の商標と判断するのが相当である。
(3)引用商標の使用に係る商品について
申立人提出の証拠(甲2,甲5,甲13?甲17,甲20)によれば,申立人は,引用商標1を本件アプリに使用しているところ,本件アプリは,顧客がダウンロードすることにより入手できるスマートフォン用アプリケーションソフトウエアであり,これは,商品及び役務の区分第9類に属する商品であると認められる。
なお,申立人は,「引用商標に係る役務には,『育児相談及び育児に関する助言・情報の提供,保育施設に関する助言・情報の提供,飲食物の提供に関する情報の提供』が含まれ,これは,本件商標における指定役務の一部と同一又は類似するものである。」と主張するが,これを認めるに足りる証拠は示しておらず,また,他に,本件商標に係る指定役務と,引用商標の使用に係る商品とを類似とみるべき取引の実情も見当たらない。
(4)本件商標に係る指定役務と,引用商標の使用に係る商品の類否について
本件商標に係る指定役務である第43類「育児相談及び育児に関する助言・情報の提供,保育所に関する情報の提供,保育所における乳幼児の保育,料理のレシピに関する助言・情報の提供,飲食物の提供に関する情報の提供,飲食物の提供,宿泊施設の提供に関する情報の提供,宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」と,引用商標の使用に係る商品である第9類に属する「オムツ替えや授乳等の保育施設を検索し,その結果を地図上に表示する機能を持つ情報端末向けアプリケーションソフト」とは,役務の提供と商品の製造・販売とが同一事業者によって行われているのが一般的とはいえないし,役務と商品の用途や,役務の提供場所と商品の販売場所が一致するとはいえないものであり,両者は,類似するものということはできない。
(5)小活
上記(2)のとおり,本件商標と引用商標が類似する商標であるとしても,引用商標は申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていると認められないものであり,また,上記(4)のとおり,本件商標に係る指定役務と,引用商標の使用に係る商品とは,類似するとはいえないものである。
そうすると,本件商標は,他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって,その商品若しくは役務又はこれに類似する商品若しくは役務について使用をするものということはできない。
さらに,引用商標は,申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていると認められないものであるから,商標権者が本件商標をその指定役務について使用をしても,取引者,需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく,その役務が,申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
その他,本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき特段の事情は見いだせない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人は,商標権者が,本件商標のみならず,申立人が引用商標と合わせて使用してきた「BabyMap」や「Baby map」と著しく類似する商標「babymap」についての商標権(商標登録第5971085号)を取得していることを指摘し,「商標権者が,申立人の商標に酷似する複数の商標について,申立人の役務に重複する役務を指定役務として商標権を取得している事実はもはや偶然とはいえず,申立人の商標を出願前にメディアの掲載等から知り得て,なにかしらの不正の目的をもって剽窃的に出願したものと推認するに十分である。」旨主張している。
しかしながら,商標権者が,不正の目的をもって出願したことを示す具体的な証拠の提出はなく,申立人が引用商標と合わせて使用してきた商標と類似する複数の商標を出願した事実のみをもって,本件商標の登録出願が,引用商標による信用・利益を不正に得る意図で行われた剽窃的なものということはできない。
また,上記1(1)のとおり,引用商標は,申立人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていると認められないものであるから,本件商標は,引用商標の周知性に化体した信用,名声及び顧客吸引力へのただ乗りをするものであるとはいえない。
そして,申立人の主張及び同人の提出に係る甲各号証を総合してみても,本件商標の登録出願の経緯に社会的妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底認容し得ないような場合に該当すると認めるに足りる具体的事実を見いだすことができない。
さらに,本件商標を,その指定役務について使用することが,社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反するということもできず,他の法律によってその使用が禁止されているものでもなく,本件商標の構成自体が,非道徳的,卑わい,差別的,きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような構成態様でもない。
その他,本件商標が公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標と認めるに足る証拠もない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
3 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第10号,同第15号及び同第7号のいずれにも違反してされたものとはいえないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
異議決定日 2018-03-20 
出願番号 商願2016-140018(T2016-140018) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W43)
T 1 651・ 25- Y (W43)
T 1 651・ 22- Y (W43)
最終処分 維持  
前審関与審査官 旦 克昌 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 木住野 勝也
鈴木 雅也
登録日 2017-08-10 
登録番号 商標登録第5971086号(T5971086) 
権利者 根本 勇馬
商標の称呼 ベビマ 
代理人 森戸 啓太郎 

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