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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y03
管理番号 1342110 
審判番号 取消2016-300443 
総通号数 224 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-08-31 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2016-06-27 
確定日 2018-06-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第5039175号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5039175号商標の指定商品中、第3類「全指定商品」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5039175号商標(以下「本件商標」という。)は、「SALVESTROL」の欧文字を標準文字で表してなり、平成18年7月11日に登録出願、第3類「肌用化粧品,スキンクリーム,皮膚の手入れ用化粧品,日焼け止めクリーム,日焼けクリーム及びローション,肌荒れ防止クリーム」及び第5類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同19年4月6日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成28年7月11日である。
なお、本件審判において商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは、平成25年(2013年)7月11日ないし同28年(2016年)7月10日である(以下「要証期間」という。)。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を、審判請求書、審判事件弁駁書及び口頭審理陳述要領書において、要旨以下のように主張し、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、継続して3年以上日本全国において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが、本件審判の請求に係る第3類「肌用化粧品,スキンクリーム,皮膚の手入れ用化粧品,日焼け止めクリーム,日焼けクリーム及びローション,肌荒れ防止クリーム」についての使用をしていないものであるから、その登録は、商標法第50条の規定により取り消されるべきものである。
2 審判事件弁駁書における主張
「サルベストロール」や「Salvestrol」は、被請求人が証拠資料を示して主張するように、植物に含まれる天然成分としての「化合物」の名称であり、「サルベストロール」や「Salvestrol」の名称使用においては、化合物の名称として使用されている場合は、商品の出所表示として使用されているとはいえず、商標法第2条第3項に示す商標の使用であるとはいえない。
(1)乙第3号証について
被請求人は、乙第3号証について「被請求人のウェブサイト」であるとし、サルベストロールに関する情報がある旨主張する。
しかし、商標法第50条第2項の規定は、日本国内での登録商標の使用を証明しない限り取消しを免れないのであり、乙第3号証について、被請求人が、日本国内において本件商標を使用したことについて証明していない。特に甲第1号証に示すように、被請求人が示したウェブサイトのサーバは、ドイツにあり、しかも外国語のみの内容となっている。これらの事実より少なくとも日本国内において広告を展示、頒布等していることを証明していない。
また、乙第3号証は、化合物としての「サルベストロール」の紹介記事であり、出所表示機能を有する態様により使用したとはいえず、商標法第2条第3項に示すいずれの使用にも該当しないことは明白である。
さらに、被請求人は、乙第3号証において、栄養補助食品としての栄養強化食品として市販されていると主張しており、本件審判の請求に係るいずれの指定商品について本件商標の使用をしていることを証明していないことは明白である。
(2)乙第4号証ないし乙第7号証について
被請求人は、乙第4号証ないし乙第6号証において、被請求人がファイトテクノロジー社とサルベストロールジャパン社を販売代理店として、3社が一体的な関係にあることを主張している。また、通常使用権者と主張するファイトテクノロジー社がサルベケアバイオテクノロジーズファイ社を通じて商品の販売促進を行っている旨主張し、乙第7号証のサルベケアバイオテクノロジーズファイ社のウェブサイトを示して商標の使用を主張している。
しかし、ファイトテクノロジー社がサルベケアバイオテクノロジーズファイ社を通じて商品の販売促進を行っていることを示す証拠は、何ら提出されておらず、サルベケアバイオテクノロジーズファイ社が示している商品が、被請求人等により供給された商品であるとの証明はされていない。
また、乙第7号証のウェブサイトのサーバは、甲第2号証に示すように、カナダにあり、しかも外国語のみの内容となっている。これらの事実より少なくとも日本国内において、要証期間に広告を展示、頒布等をしていることを証明していない。
(3)乙第8号証について
被請求人は、乙第8号証において、専門誌の紹介記事を示して、市販のサルベストロール商品の紹介を行っている旨主張している。
しかし、乙第8号証で紹介されているのは、植物に含まれる天然成分としての「サルベストロール」の紹介記事であり、被請求人等の商品の広告等ではなく、また、掲載されている写真の商品は、「サプリメント」であって、本件審判の請求に係る指定商品のいずれかについての商標の使用を証明したということはできない。
(4)乙第9号証及び乙第10号証について
被請求人は、乙第9号証において、通常使用権者と主張するサルベストロールジャパン社の代表者がサルベストロールクリーム商品の試供品をもらっており、希望に応じて配布していると主張している。また、併せて乙第10号証において、保管されている試供品の写真を示して使用をしていると主張する。
しかし、乙第9号証において陳述書で述べているのは、当事者である代表者であり、第3者による証明及び陳述を裏付ける証拠は何ら示されておらず、当該陳述書において述べられている「サルベストロールクリーム商品」がいかなるクリーム状の商品であるかについても明示はなく、その証明もされていない。
また、乙第9号証においても要証期間に広告を展示、頒布等をしていることを証明していない。
同様に、乙第10号証で示されている写真は、要証期間に撮影されたものではなく、また、内容物もいかなるものであるかは不明であり、これらの写真は本件審判の請求に係る指定商品のいずれかについての商標の使用を証明したということはできない。
3 口頭審理陳述要領書における主張
(1)試供品の配布について
被請求人は、乙第9号証及び乙第10号証の試供品の配布について、商標法第2条第3項第8号にいう商品に関する広告に標章を付して頒布する行為であり、法律上、試供品自体が「スキンクリーム,肌荒れ防止クリーム」であることを必要としていないと主張する。
しかし、「試供品」は「試用に供する見本の品」の意味を示す語であり、試用できない品については、「試供品」ではない。また、試用をするのは、商品である「スキンクリーム,肌荒れ防止クリーム」であって、仮に被請求人が「スキンクリーム,肌荒れ防止クリーム」以外の商品が入っている商品を配布したり、空箱のみを配布しているとするのであれば、商品(スキンクリーム,肌荒れ防止クリーム)に関する広告に標章を付して使用する行為(商標法第2条第3項第8号)ではなく、また、乙第9号証の下から3行目の「サルベストロールクリーム商品の試供品をもらっております。以後日本の顧客から希望があった場合にはその都度試供品を差し上げるようにしており」等の主張と矛盾する。
(2)陳述書の主張(乙9、乙11)について
被請求人は、乙第9号証(審決注:乙第11号証の誤り。)において、「サルベストロールPLATINUM2000を購入した若しくは購入を検討している医療従事者を中心に配布した実績があり・・・」と陳述する。
また、乙第11号証において、「弊社と取引関係にある日本の医療従事者で医療用栄養補助剤/食餌療法用食品であるPLATINUM2000(商品名)を購入した方、若しくは購入を検討している医療従事者を中心に約20個程度を配布しております。この試供品の配布期間は、要証期間内の2015年半ば?2016年半ばであり、配布に際して電話若しくは口頭で、65gの容量のサルベストロールクリーム/SALVESTROL CREAM(乙7参照) が約4,000円程度での販売価格であり、もし該試供品が示すところのサルベストロールクリーム製品を購入を希望される場合は、現時点(配布時点)では医師の個人輸入になる旨をお伝えしております。」と陳述する。
しかしながら、乙第11号証の陳述書は、当事者でもある被請求人が通常使用権者と主張するサルベストロールジャパン社の代表者による陳述であって、しかも医療従事者を中心に配布した実績があると主張するものの、販売(配布)先や取引書類などの販売(配布)の事実を示す証拠は何ら示されていない。
また、乙第9号証では、「その都度試供品を差し上げる」と陳述しているにもかかわらず、乙第11号証では、「約4,000円程度での販売価格で」と陳述の内容が変更されている。
さらに、乙第11号証において配布している商品について、「65gの容量のサルベストロールクリーム/SALVESTROLCREAM(乙7参照)が約4,000円程度での販売価格」と陳述しているが、乙第7号証で示されている被請求人の販売価格は30gで$34.95(日本円換算で、3,000円程度)と表示されており、代理店であるサルベストロールジャパン社は、被請求人の製品よりも大きい容量にて試供品を販売しており、また、その価格も本社である被請求人の販売製品よりも大幅に安い金額で提供している。
以上のように、乙第9号証及び乙第11号証の陳述書については、それぞれ矛盾点や不自然な点も多い上に、陳述書で示された事実を裏付ける証拠は何ら示されていない。
(3)まとめ
以上述べたとおり、被請求人は、本件商標と社会通念上同一の商標を、要証期間に、その指定商品のいずれか(しかも、商標法上の商品であること)について、本件商標権者又は通常使用権者が使用していたことを立証するには至っていない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を、審判事件答弁書及び口頭審理陳述要領書において、要旨以下のように主張し、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第11号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 審判事件答弁書における主張
(1)本件商標権者による使用の態様
被請求人(本件商標権者)は、イギリスに本社を置き、植物由来の天然物質であるサルベストロールによる抗がん作用の発見から、がんの治療や予防のために大量のサルベストロールを摂取できるサプリを中心とした商品群を研究開発し、量産化のためのシステムを確立して商業化を図っている。しかしながら、サルベストロールの画期的なシステムについては、臨床論文は少なく、2007年頃より学会での発表が始まったという状態である。
このような状況ながら、被請求人は、ウェブサイト(乙3の1)によりサルベストロールに関する情報を、要証期間に発信している。なお、このウェブサイトのサルベストロールに関する情報が要証期間に存在していたことは、インターネット上のウェブページを保存する団体(The InternetArchive)のサイト(乙3の2)にも同じものが保存されていることからも証明できるものである。URLの20150428110424の部分は、2015年4月28日の時点のサイトを取り込んだものであることを示している。
被請求人のウェブサイトで発信された情報は、Salvestrolsのページにあるように、“Salvestrol's are now commercially available in fortified foods,as nutritional supplements and for recommendation by practitioners.”(訳:サルベストロールは現在栄養補助食品としての栄養強化食品及び開業医による推奨品として市販されている)と記載されており、すでに、市販品が得られている旨の情報発信を行っている。
一般に、外国語のウェブページについては、日本の需要者を対象としていないとの理由で、その使用態様として否定されるケースも散見するが、商標法第2条の使用の定義においては、何ら英語などの外国語の情報を排除しているものではない。特に、本件商標は、抗がん物質として開業医などの医業に従事する者を主な対象にしており、これらのがんの治療に専念するような高度の医療を行うものにとっては、英語自体は全く言語の障害となるものでない。
(2)ファイトテクノロジー社の通常使用権者としての地位
被請求人は、全世界でのサルベストロール商品の流通の目的で、アジア・オセアニア地域については、ニュージーランドのファイトテクノロジー社と二人三脚で製品を供給する体制を整えており、日本市場については、ファイトテクノロジー社が担当している(乙4、乙5)。
本件商標については、ファイトテクノロジー社にライセンスを与えるとの書面は存在しないものの、同社は、アジア地域を管轄しており、その商標の利用を代理店に許可する立場であったので、要証期間において、実質的に通常使用権者としての地位を有することは疑義のないところである。
(3)ファイトテクノロジー社による使用の態様
アジア地域を管轄するファイトテクノロジー社は、2015年7月7日にサルベストロールジャパン社と販売代理契約を結び、その契約は、現在も継続している。その契約書(乙6)には、第6項(審決注:第5項の誤り。)で知的財産はファイトテクノロジー社に残る旨の記載もある。ファイトテクノロジー社は、契約に基づき、サルベストロール商品に関する情報やサルベストロール商品の試供品を、販売代理会社であるサルベストロールジャパン社に送り、受注に応じて、サルベストロール商品を、サルベストロールジャパン社あるいは直接顧客に対して供給する。
なお、ファイトテクノロジー社は、他にも、サルベストロール商品群を普及させるために、サルベケアバイオテクノロジーズファイ社を通じてクリームを含む商品の販売促進も行っている。乙第7号証は、サルベケアバイオテクノロジーズファイ社のウェブサイトの写しである。このページには、サルベストロールクリーム30gが紹介され、購入も日本を含めて世界中から通販形式で可能である。
(4)サルベストロールジャパン社における営業
サルベストロールジャパン社(本社、東京都品川区)は、日本でのサルベストロール商品の販売を代理することを主な営業としている。サルベストロールジャパン社の活動は、広く抗癌医療に従事する者にサルベストロール商品に関する情報を提供して普及させることにあり、その一環として、専門誌「統合医療でがんに克つ 2015・12 Vol.90」(2015年11月30日発行)において、「注目されている植物性天然抗がん物質『サルベストロール』」(乙8)と題した連載記事の形式で発表して、その中で、市販のサルベストロール商品についての紹介を行っている。
本件審判の請求の対象である指定商品中の「スキンクリーム、あるいは肌荒れ防止クリーム」に関しては、サルベストロールジャパン社は、2015年2月にニュージーランドのファイトテクノロジー社を訪問した際に、日本での販売促進用に、サルベストロールのクリーム商品の試供品をもらい、それを持ち帰って日本の顧客からの希望があった場合に、その都度、試供品を差し上げ、残りの試供品はサルベストロールジャパン社の都内事務所にて保管するようにしている。この点については、サルベストロールジャパン社の代表の陳述書(乙9)にも記載されている。
乙第10号証は、サルベストロールジャパン社の事務所にて保管されているサルベストロールのクリーム商品の試供品の写真(サルベストロールジャパン社の事務所内で撮影、撮影日平成28年11月17日)を印刷したものであり、上面のラベルに、本件商標があり、また、実務者用の試供品である旨の文字も印刷されている。
(5)結論
上述のように、被請求人及びその通常使用権者であるファイトテクノロジー社は、要証期間に、日本国内において取消請求の対象である指定商品中、第3類「スキンクリーム、あるいは肌荒れ防止クリーム」について、本件商標若しくは本件商標と社会通念上同一の商標を使用している。
2 口頭審理陳述要領書における主張
乙第9号証、乙第10号証に示す試供品の配布は、商標法第2条第3項第8号にいう商品に関する広告に標章を付して頒布する行為であり、法律上、試供品自体が「スキンクリーム,肌荒れ防止クリーム」であることを必要としていない。
商標法第2条第3項第8号には、「商品に関する広告に標章を付して頒布する行為」は商標の使用とされると規定されており、法律上、広告自体について、パンフレットなどの紙媒体であることを必要とするとの限定はされていない。広告とは、商標法上特に定義されていないが、一般に顧客を誘致するために商品について広く知られるようにすることであり、商品について情報性を伴って潜在的な購入希望者に媒体等を配布することは広告を構成するものと思慮する。
乙第9号証(審決注:乙第11号証の誤り。)にも記載されるとおり、要証期間である2015年2月以降は、サルベストロールジャパン社では、医療用栄養補助剤及び食餌療法用食品であるサルベストロール PLATINUM2000を購入した若しくは購入を検討している医療従事者を中心に、試供品を配布した実績があり、その際には、実際の商品の容量と販売価格を伝えている。
試供品は、乙第10号証に示されるように、“標章を付した”状態で頒布されており、カタログと同様に商品の内容についての情報を提供するものであり、実際に使用することも可能であることから、その宣伝目的としての情報提供機能は、単なる紙媒体であるカタログよりは高いものである。
3 口頭審理における陳述
被請求人は、「『スキンクリームあるいは肌荒れ防止クリーム』について、現在までに日本国内で販売されたことを証明する客観的な事実はない。」旨及び「『スキンクリームあるいは肌荒れ防止クリーム』の試供品の配布先、配布時期、配布個数などを証明する客観的な事実はない。」旨を陳述した。

第4 当審の判断
1 被請求人は、本件審判の請求に係る指定商品中、第3類「スキンクリームあるいは肌荒れ防止クリーム」(以下「使用商品」という場合がある。)について本件商標を要証期間に使用しているとして、商標法第2条第3項第8号に該当する行為(商品に関する広告に標章を付して頒布する行為)があったと主張しているところ、被請求人の主張及び提出に係る証拠によれば、本件商標の使用について、以下のとおりである。
(1)乙各号証について
ア 乙第7号証は、被請求人が、本件商標の通常使用権者と主張するサルベケアバイオテクノロジーズファイ社のウェブサイト(写、2016年(平成28年)7月20日印刷)であるところ、「Salvestrol(マルR)」の文字の表示があり、「Salvestrol Cream 30g」なる商品の通販に係るページであることが認められる。
しかしながら、当該ウェブサイトは、英語によるアクセスが必須なものであり、また、当該ウェブサイトから、日本語のウェブサイトや我が国における代理店などの日本語のウェブサイトにリンクが張られていることも見いだせないから、我が国の一般の需要者向けのウェブサイトであるとはいえず、乙第7号証に示された記事が要証期間に当該ウェブサイトに掲載されていたかも不明である。
そして、当該ウェブサイトに示された商品が使用商品の範ちゅうに含まれるものであることも確認できない。
イ 乙第9号証は、日本の代理店と主張するサルベストロールジャパン社の代表者による「陳述書」であるところ、当該代表者は、「2015年2月には、ニュージーランドのPhyto社を訪問し、その際に販促活動に活用するためのサルベストロールクリーム商品の試供品をもらっております。以後、日本の顧客から希望があった場合にはその都度試供品を差し上げるようにしており、残りの試供品は弊社の事務所に保管しております。」と述べている。
また、乙第10号証は、被請求人によれば、乙第9号証の陳述書で述べられている「サルベストロールクリーム商品」の試供品の写真であるところ、「Salvestrol(マルR)」、「CREAM」及び「Practitioner/Sample」(審決注:「実務者用の試供品」の意。以下同じ。)の文字の表示があることから、同号証は、「CREAM(クリーム)」であって、「Practitioner/Sample」と認められる。
しかしながら、被請求人は、当該陳述の内容を裏付ける証左を提出しておらず、また、乙第10号証の写真に表されたものが、乙第9号証の陳述書で述べられている試供品であること及びその容器の内容物が使用商品の範ちゅうに含まれるものであるかについて確認できない。
ウ 乙第11号証は、サルベストロールジャパン社の代表者による「陳述書(その2)」であるところ、当該代表者は、サルベストロールクリーム製品について、「・・・医療従事者を中心に約20個程度を配布しております。・・・配布に際して電話若しくは口頭で、・・・もし該試供品が示すところのサルベストロールクリーム製品を希望される場合は、現時点(すなわち配布時点)では、医師の個人輸入になる旨をお伝えしております。」と述べている。
しかしながら、上記第3、3のとおり、口頭審理において被請求人は、「『スキンクリームあるいは肌荒れ防止クリーム』について、現在までに日本国内で販売されたことを証明する客観的な事実はない。」旨及び「『スキンクリームあるいは肌荒れ防止クリーム』の試供品の配布先、配布時期、配布個数などを証明する客観的な事実はない。」旨を陳述している。
(2)小括
以上のとおり、「Salvestrol Cream 30g」(乙7)なる商品について、通常使用権者と主張するサルベケアバイオテクノロジーズファイ社が、要証期間に我が国の一般の需要者に対して、ウェブサイトにおいて広告を行ったとはいえず、また、被請求人がいう「サルベストロールクリーム商品」の試供品(乙10)が、乙第9号証の陳述書で述べられている試供品であったとしても、それが使用商品の範ちゅうに含まれるものであることを確認できないし、日本の代理店と主張するサルベストロールジャパン社が当該試供品を日本国内において配布した時期等も確認できない。
そして、被請求人がいう「サルベストロールクリーム商品」は、それが使用商品に含まれる商品であるか否かを措くとしても、当該商品を我が国において入手するには、医師の個人輸入によるしか手段はないのであるから、我が国で一般に流通する商品ということもできない。
その他、被請求人が提出した証拠によっては、要証期間に、使用商品について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の商標法第2条第3項各号にいう使用があったことを認めるに足る事実を見いだせない。
2 むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)を使用していたことを証明したものと認めることはできない。
また、被請求人は、本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、その指定商品中、「結論掲記の指定商品」について、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2017-12-18 
結審通知日 2017-12-22 
審決日 2018-02-06 
出願番号 商願2006-64586(T2006-64586) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Y03)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小川 敏 
特許庁審判長 田中 亨子
特許庁審判官 原田 信彦
大森 健司
登録日 2007-04-06 
登録番号 商標登録第5039175号(T5039175) 
商標の称呼 サルベストロール 
代理人 佐藤 勝 

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