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審決分類 |
審判 全部無効 商3条柱書 業務尾記載 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) W30 審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) W30 審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) W30 審判 全部無効 外観類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) W30 審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) W30 |
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管理番号 | 1342096 |
審判番号 | 無効2015-890082 |
総通号数 | 224 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2018-08-31 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2015-10-14 |
確定日 | 2018-06-18 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5708397号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成29年7月21日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成29年(行ケ)第10169号、平成30年3月7日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第5708397号の指定商品中、第30類「茶,茶飲料,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,コロッケ用以外の調味料,穀物の加工品,穀物の加工品を主材とする調理済み惣菜,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ,お好み焼き,おにぎり,調理済みのラーメン,調理済みのうどん,調理済みの中華そば,調理済みのそうめん,調理済みの焼きそば,調理済みのパスタ,調理済み麺類,調理済みの炒飯,調理済みの丼物,調理済みの米飯,調理済のスパゲティ,調理済みのカレーライス,ドライカレー,チャーハン」についての登録を無効とする。 その余の指定商品の「コロッケ用調味料」についての審判請求は成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5708397号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成25年7月4日に登録出願、第30類「茶,茶飲料,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,調味料,穀物の加工品,穀物の加工品を主材とする調理済み惣菜,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ,お好み焼き,おにぎり,調理済みのラーメン,調理済みのうどん,調理済みの中華そば,調理済みのそうめん,調理済みの焼きそば,調理済みのパスタ,調理済み麺類,調理済みの炒飯,調理済みの丼物,調理済みの米飯,調理済のスパゲティ,調理済みのカレーライス,ドライカレー,チャーハン」を指定商品として、同26年9月5日に登録をすべき旨の審決がされ、同年10月10日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人が引用する登録第5100230号商標(以下「引用商標」という。)は、「ゲンコツ」の文字を標準文字で表してなり、平成19年5月9日に登録出願、第30類「おにぎり,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ」を指定商品として、同年12月21日に設定登録されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。 第3 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第53号証を提出している。 1 本件商標を無効とすべき理由 (1)本件商標と引用商標との類否について 本件商標の構成中「コロッケ」の文字部分は、「揚げ物料理の一つ。あらかじめ調理した挽肉・魚介・野菜などを、ゆでてつぶしたジャガイモやベシャメル・ソースと混ぜ合わせて小判形などにまとめ、パン粉の衣をつけて油で揚げたもの」(甲5)の意として、我が国においては広く知られている加工食料品の普通名称である。また、本件商標の構成においては「ゲ」と「コ」の文字が他の文字に比べて一回り大きく表記されているために、「ゲンコツ」と「コロッケ」の二語の結合商標であることは明らかである。他方、本件商標全体として一体的な成語であるとみるべき格別な事情は見当たらない。 しかるに、本件商標において、自他商品の識別標識として機能するのは前半部分の「ゲンコツ」の文字部分にあるというべきである。そして、当該「ゲンコツ」の文字部分からは、「ゲンコツ」の称呼、及び「拳骨」すなわち「にぎりこぶし」の観念を生ずる(甲6)。 一方、引用商標は、「ゲンコツ」の片仮名より「ゲンコツ」の称呼及び「にぎりこぶし」の観念を生ずる。 したがって、本件商標と引用商標とは、主として両商標の構成文字数の相違によって外観が相違するとしても、「ゲンコツ」の称呼、及び「にぎりこぶし」の観念を共通にする類似の商標である。 (2)指定商品について 本件商標の商標登録出願日において適用されていた類似商品・役務審査基準第10版(甲7)によると、本件商標の指定商品中「サンドイッチ,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ,おにぎり」は、引用商標の指定商品中「おにぎり,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ」と完全に同一の商品であり、また、本件商標の指定商品中「菓子,パン,中華まんじゅう」は、引用商標の指定商品中「肉まんじゅう」と類似の商品である。さらに、本件商標の指定商品中「穀物の加工品を主材とする調理済み惣菜,お好み焼き,調理済みのラーメン,調理済みのうどん,調理済みの中華そば,調理済みのそうめん,調理済みの焼きそば,調理済みのパスタ,調理済み麺類,調理済みの炒飯,調理済みの丼物,調理済みの米飯,調理済みのスパゲティ,調理済みのカレーライス,ドライカレー,チャーハン」は、引用商標の指定商品中「おにぎり,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,べんとう,ラビオリ」と類似の商品である。 (3)商標法第4条第1項第11号について 本件商標と引用商標とは、外観が相違するとしても、「ゲンコツ」の称呼及び「にぎりこぶし」の観念を共通にする類似の商標であり、本件商標の指定商品中「菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,穀物の加工品を主材とする調理済み惣菜,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ,お好み焼き,おにぎり,調理済みのラーメン,調理済みのうどん,調理済みの中華そば,調理済みのそうめん,調理済みの焼きそば,調理済みのパスタ,調理済み麺類,調理済みの炒飯,調理済みの丼物,調理済みの米飯,調理済みのスパゲティ,調理済みのカレーライス,ドライカレー,チャーハン」は引用商標の指定商品「おにぎり,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ」と同一又は類似する商品である。 (4)商標法第4条第1項第16号について 上記(1)のとおり、本件商標の構成中「コロッケ」の文字部分は、我が国においては広く知られている加工食料品の普通名称である。また、本件商標の構成においては「ゲ」と「コ」の文字が他の文字に比べて一回り大きく表示されているために、「ゲンコツ」と「コロッケ」の二語を結合してなる商標であることは明らかである。その他、本件商標全体として一体的な成語であるとみるべき格別な事情も見当たらない。 しかるに、本件商標をその指定商品に使用するときは、恰もこれら商品がコロッケ又はコロッケを用いた商品であるかのように商品の品質の誤認を生ずるおそれがある。 (5)むすび 以上のとおり、本件商標は、その商標登録出願の日前の商標登録出願に係る他人の登録商標たる引用商標に類似する商標であって、当該引用商標の商標登録に係る指定商品又はこれらに類似する商品について使用するものであるにもかかわらず商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであり、また、本件商標は、その構成中に揚げ物料理の一つを意味する「コロッケ」の普通名称を明確に含むところ、これをその指定商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるにもかかわらず商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものである。 2 答弁に対する弁駁 (1)商標法第4条第1項第11号について ア 被請求人は、本件商標が、外観上一体的に表されており、全体の称呼も簡潔で語呂良く一連に称呼できるものであって、観念上も特定の意味合いを有さない造語、あるいは「にぎりこぶし大のコロッケ」程の一体的な意味合いを暗示させるものであるとし、したがって、本件商標は、その構成文字全体をもって全体観察するのが妥当であるから、本件商標中「ゲンコツ」の文字部分のみを分離又は要部観察すべきではないという。 イ 本件商標から「ゲンコツコロッケ」なる一連の称呼が生じることは否定し得ないが、本件商標の称呼ないし観念が「ゲンコツコロッケ」以外に生じる余地がないということはできない。けだし、本件商標が、「ゲンコツ」の文字部分と「コロッケ」の文字部分とをその構成部分とするものであることは、視覚上、容易に認識することができるのであるし、「ゲンコツ」の文字部分が「拳骨」つまり「にぎりこぶし」を意味すること、そして「コロッケ」の文字部分が「揚げ物料理の一つ」を意味して本件商標の指定商品との関係において普通名称に該当することは、いずれも広く一般的に知られているところである(甲5、甲6)。そして、被請求人自らも、本件商標を使用した商品「ゲンコツコロッケ」のテレビCMにおいては「ゲンコツ」の文字だけを表示しているし(甲8)、全国各店舗にて販売しているメンチカツとコロッケを「ゲンコツ兄弟」と略称したり(甲9?甲12)していること等からも明らかなように、本件商標とて必ずしも常に一連一体で使用されるものではないこと等に照らせば、たとえ本件商標中の「コロッケ」の文字部分が「ゲンコツ」の文字部分と一体となって「ゲンコツコロッケ」の称呼ないし観念が生じ得ることがあるにしても、この称呼及び観念とは別個に、そもそも指定商品を直接指称する語には相当しない「ゲンコツ」の文字部分に対応した「ゲンコツ」の称呼と観念もまた生じるものといわざるを得ない。 したがって、本件商標と引用商標の類否判断に際し、本件商標から「ゲンコツ」の文字部分を分離・抽出することは、当然に許されるべきものである。 ウ なお、被請求人は、「『ゲンコツ』の語は、食品の分野においては、『ゲンコツ○○(食品名)』のように用いられ、『げんこつ大』或は『げんこつのような形』の商品(食品)を表す語として普通に使用されていると評価するのが妥当」であるという。 しかしながら、被請求人が「広く一般的に使用されている」と主張してその根拠として挙げた例はごく僅かなものである。そして、「げんこつシュー」(乙1)や「げんこつパイ」(乙4)、「げんこつパン」(乙5)については、明らかに商標的使用がなされていると思われ、また、「げんこつカツ」(乙3)は、単にテレビ番組の料理レシピの名称として使用されているにすぎないし、その他の例示(乙7?乙10)はいずれも「げんこつ大」又は「ゲンコツ大」という表現であって、大きさを表現する接尾語である「大」の文字を伴ったものばかりである。 むしろ、「大」を伴わない「ゲンコツ」や「げんこつ」等が、食品分野における品質表示等として普通に使用されている例が一つも見られないことは、食品分野においても「ゲンコツ」の語自体が「にぎりこぶし」等の本来的意味合いをもって認識され、看者によっては「大きくて硬い親爺のゲンコツ」といった格別の観念まで連想し得ることの現れであるとも考えられる。 したがって、「本件商標の「ゲンコツ」の文字は、自他商品の識別標識としての機能を有さないか、あるいは極めて弱いと評価するのが妥当なものである」とする被請求人の主張は、失当である。 エ また、被請求人は、本件商標を付した商品「コロッケ」を2014年6月3日よりコンビニエンスストアにおいて発売しており、同商品は被請求人によって盛大に宣伝広告され、その売上高も相当な金額に上ることから、「ゲンコツコロッケ」は、その登録時において被請求人の商標として需要者の間で広く認知されていたものということができる、などと述べている。 しかしながら、被請求人による前記商標の使用は、メンチカツやコロッケを指定商品とする商標登録第1470113号「ゲンコツ」(甲14)の商標権者である株式会社紀文食品との間における商標使用許諾契約に基づくものであり、当該商標権についての通常使用権を法的根拠とするものにすぎない(甲15)。被請求人は、前記商品「コロッケ」に先行して発売していた商品「メンチカツ」に付した商標「ゲンコツメンチ」が前記登録商標「ゲンコツ」に類似していると判断し、商標権侵害となることを回避せんがために株式会社紀文食品に使用許諾を申し入れており、その際、将来的に弁当や調理パンについても「ゲンコツ」シリーズの展開を計画していたために、未だ抵触関係にない請求人に対しても、引用商標についての使用許諾を申し入れてきた。そして、その後も引用商標についての使用許諾契約の更新を催促してきたのである(甲15)。(ただし、引用商標についての商標使用許諾契約は、平成27年6月30日をもって満了している。) したがって、このように使用許諾契約を申し入れてきた事実は、被請求人自らも、本件商標が引用商標「ゲンコツ」に類似していることを認めていることの証左であるといえる。 オ ところで、本件商標は、拒絶査定不服審判を経て登録されたものであるが、その審決(甲16)に示されるとおり、審判請求後の平成26年9月2日付け手続補正書により、本件商標の指定商品が第30類のみに減縮補正された結果、原査定の拒絶の理由が解消したと認められたものである。 しかしながら、本件商標は、第29類と第30類を指定して出願されていたにもかかわらず(甲17)、拒絶理由通知書においては第29類について拒絶理由通知を受けたのみで、第30類については拒絶理由を指摘されていなかった(甲18)。 しかるに、第29類につき新たな分割出願を行うことで第30類のみとなった本件商標に関する拒絶査定不服審判においても、原拒絶査定において指摘されなかった商標法第4条第1項第11号及び同第16号の拒絶理由については、当然のことながら一切審理されることなく、本件商標の登録が認められるに至ってしまったのである。 なお、「ゲンコツ」を要部とする被請求人の出願商標「ゲンコツ/メンチ」(甲24)については、第29類及び第30類ともに、引用商標ほか「ゲンコツ」等からなる先願先登録商標を引用されて、商標法第4条第1項第11号に該当するとした拒絶査定がなされている(甲25)。 カ 以上のとおり、本件商標からは「ゲンコツ」の称呼と、これに対応した「にぎりこぶし」の観念も生じ得るところ、これらの称呼及び観念は引用商標と共通するものである。他方、両商標の外観の相違は、自他商品識別標識としての称呼及び観念が生じない「コロッケ」の部分の有無が異なる程度にとどまるものであるから、書体による外観の相違を考慮してもなお、本件商標と引用商標とが同一又は類似の商品に使用された場合には、当該商品の出所について混同が生じるおそれがあるというべきであって、本件商標は、引用商標に類似するものと思料する。 そして、本件商標に係る指定商品と引用商標の指定商品とは同一又は類似する商品である。 よって、本件商標は、引用商標に類似する商標であって、当該引用商標の指定商品又はこれらに類似する商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。 (2)商標法第4条第1項第16号について ア 被請求人は、本件商標が、構成文字全体として一体不可分の一種の造語と認識されるものというのが妥当なものと思料されるから、その指定商品に使用しても、商品の品質について誤認を生じさせるおそれはない、そして、本件商標の指定商品のうち「茶,茶飲料,調味料,菓子,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,ラビオリ,お好み焼き,おにぎり」に関しては、「コロッケ」とは商品の内容、原材料が全く異なるものである、などと主張している。 イ 前述したように、本件商標から「ゲンコツコロッケ」なる一連の称呼が生じることを否定するものではないが、その「コロッケ」の文字部分は、揚げ物料理の一つである「コロッケ」を連想させるのであるし、他方、「ゲンコツ」の文字部分が「にぎりこぶし」の意味合いとして知悉されていることも事実である。とりわけ、食品分野にて想定される需要者は、老若男女を問わない全ての一般消費者であるから、「ゲンコツ」の語に接する者いかんによっては「大きくて硬い親爺のゲンコツ」といった特別な連想をすることも少なくないと考えられる。 よって、簡易・迅速を尊ぶ商取引の実際に照らしてみるとき、本件商標において「ゲンコツ」の文字部分と「コロッケ」の文字部分とが分離して観察され得ることは、ごく自然なことである。 ウ そして「コロッケ」は、様々な料理と組み合わされて提供されていることが知られている。 例えば、コロッケを用いた調理パン(甲26)や、コロッケを挟んだサンドイッチ(甲27)、コロッケを挟んだハンバーガー(甲28)、コロッケを主材とした弁当(甲29)、コロッケを載せた焼きそば(甲30)、コロッケを載せたカレーライス(甲31)、コロッケを載せた炒飯(甲32)、コロッケを用いた丼物(甲33)といった慣れ親しんだ料理のほかにも、コロッケを載せたラーメン(甲34)、コロッケを載せたうどん(甲35)、コロッケを載せたパスタ(甲36)、コロッケを主材とした中華まんじゅう(甲37)、コロッケを具材としたパイ(甲38)などが見られる。 さらには、被請求人がコロッケとは商品の内容、原材料が全く異なると主張する商品についても、例えば、コロッケ味の菓子(甲39)、コロッケをピザにしたもの(甲40)、コロッケも挟んだホットドッグ(甲41)、餃子の皮でコロッケを包んだ料理(甲42)、コロッケをお好み焼きにした料理(甲43)、具材にコロッケを用いたおにぎり(甲44)などがあるし、調味料に至ってはコロッケ専用ソースもある(甲45)といった具合であって、コロッケに関係した商品が実在していることは明らかである。 エ 以上例示したように、現在の食品分野においてコロッケを用いた食品や料理は枚挙に暇がない上に、「コロッケ」の販売経路についても、本件商標に係る指定商品と共通している。 すなわち、被請求人が述べているように、本件商標は、被請求人がフランチャイズチェーン展開するコンビニエンスストア「ローソン」において販売されている「コロッケ」に使用されているところ、さらに被請求人によれば、本件商標の指定商品については、やはり被請求人の「ローソン」において販売されるものであり、これら商品と「コロッケ」は、需要者が共通し、また同じ店舗で販売されるというのである。 オ したがって、実際にも「コロッケ」を主材とした食品ないし料理が多数存在している上に、商品としての需要者が共通し、同じ店舗で販売されるという本件商標の指定商品について本件商標を使用した場合には、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるどころか、あたかもコロッケを原材料に用いたり、コロッケに適した調味料であるかの誤認を生ずることが明らかであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものである。 3 請求人のその他の主張 (1)本件商標に関する事実経過及び本件商標の使用状況について ア 平成25年6月14日、請求人と被請求人は、引用商標について、契約有効期間を平成25年6月15日から同年12月31日までとする商標使用許諾契約を締結した(甲46)。 同契約において本件引用商標の通常使用権を許諾された商品は「メンチカツ及びメンチカツを使用した弁当・サンドイッチなど」とされていた。 イ 上記契約の契約期間満了後の平成26年1月9日、請求人と被請求人は、引用商標について、契約有効期間を平成26年1月1日から同年6月30日までとする商標使用許諾契約を締結した(甲47)。 同契約において、本件引用商標の通常使用権を許諾された商品は、「(1)メンチカツやコロッケを使用した弁当」「(2)メンチカツやコロッケを使用したサンドイッチなど」とされていた。 ウ 上記契約期間満了日の平成26年6月30日、請求人と被請求人は、本件引用商標について契約有効期間を平成26年7月1日から平成27年6月30日までとする商標使用許諾契約を締結した(甲48)。 同契約において、本件引用商標の通常使用権を許諾された商品は、「(1)メンチカツやコロッケを使用した弁当」「(2)メンチカツやコロッケを使用したサンドイッチなど」とされていた。 エ 上記契約期間満了後、被請求人は、請求人に対し、本件引用商標について、契約有効期間を平成27年7月1日から平成28年6月30日までとし、通常使用権を許諾する商品を「(1)メンチカツやコロッケなどを使用した弁当(2)メンチカツやコロッケなどを使用したサンドイッチなど」とする商標使用許諾契約締結を申し出たが、請求人は契約締結に応ずることなく現在に至っている(甲49)。 オ その間、被請求人は、平成25年6月に「ゲンコツメンチ」の販売を開始し(甲50)、平成26年6月3日に「ゲンコツシリーズ第2弾」として「ゲンコツコロッケ」の販売を開始し(甲51)、平成27年1月には「ゲンコツクリームコロッケ」の販売を開始し(甲52)、平成27年6月16日、被請求人の設立40周年の記念商品としてゲンコツメンチシリーズの新作「ゲンコツチーズメンチ」の販売を開始している(甲53)。 カ そして、被請求人は、平成25年6月12日、「ゲンコツメンチ」について商標登録願を提出、平成27年2月20日商標登録の審決がなされている。 平成25年7月4日、本件商標について商標登録願を提出、指定商品又は指定役務として、第29類、第30類を出願していたが、引用商標としては、株式会社紀文食品を権利者とする商標「ゲンコツ」(第29類)のみが引用され、第30類についての先願先登録の引用はなされないままに審査がなされていた。 平成26年9月17日「ゲンコツメンチをマーク化したもの」について商標登録願を提出し審査中である。 キ 以上の事実経過を見ればわかるとおり、被請求人は「ゲンコツ」というブランドのもとに、メンチカツ、コロッケ、クリームコロッケ、チーズメンチといった個別商品を販売することで「ゲンコツ」シリーズという商品展開を行なっていたものであること、そして、そのために、請求人が権利を有する本件引用商標の使用許諾を受けている間に「ゲンコツ」シリーズ商品の販売を展開して広く既成事実を形成しつつ、各個別商品についての商標登録出願を行なっていたものであることがうかがえるものである。 (2)「ゲンコツ」の自他商品識別力について ア 被請求人は、本件商標が「にぎりこぶし大のコロッケ」程の意味合いしかなく、常に一体不可分のものと認識されるべきであり、「ゲンコツ」の文字は、「げんこつ状」あるいは「げんこつ大」の商品であることを示す用語にとどまり自他商品識別力が極めて弱いと主張することで「ゲンコツ」の意味を矮小化しようとしている。 しかし、上記(1)オで述べたとおり、被請求人は「ゲンコツ」ブランドを強調したゲンコツシリーズとして、メンチ(カツ)、コロッケ、クリームコロッケ、チーズメンチ(カツ)を「ゲンコツ」ブランド下の個別商品として商品展開を行なっていることからして、「ゲンコツ」という文字が強い自他商品識別力を有していることを前提として同表示を使用していること、そして「ゲンコツ」という商標に強い自他商品識別力の存在を認めているからこそ、上記(1)アないしエで述べたとおり、あえて引用商標についての使用許諾を受けているものであること、さらに、「ゲンコツ」という文字は、単に「げんこつ状」あるいは「げんこつ大」の商品であることを示すに止まらない観念を有しており、そこには強い自他商品識別力が認められると考えられるものであること、すなわち、「ゲンコツ」には、「がんこ」「力強さ」「一徹」「こだわり」「職人気質」といった観念が含まれており、それ故に、商品の外観を示すと同時に、その商品が職人の手になるこだわりの一品であるかのような観念を持たせ、一つのブランドとして、強い主張を込めた表示となっているのである。 以上3つの理由からしても、「ゲンコツ」には、強い自他商品識別力が認められるところであり、本件商標の要部となっていると考えられるのである。 イ 被請求人が引用する拒絶査定不服審判(乙11)における判断の存在は認めるが、同判断は被請求人の意図的なミスリードによって導かれたものであり、正当なものとはいえない。 乙第11号証の審決は、被請求人が拒絶査定理由の指摘を回避するために、あえて第29類についての商標登録願を削除して別件としての審決を得ることを企図したものと評価することができるものであって、本来は取消されて当然の内容ということになると考えるが、被請求人は、当該引用商標の権利者である株式会社紀文食品にとっての大口顧客という立場にあると思われるので、同社が審決取消を求めるような挙に出るとは思われないところである。 しかし、だからといって、前記審決の結論をもって本件の前提とするかのような議論を正当化する根拠はないものと考える。 ウ 被請求人の主張する取引の実情等は、あたかも「ゲンコツコロッケ」のみの商品展開を示しているかのようであるが、事実は「ゲンコツメンチ」(2013年7月から)、「ゲンコツコロッケ」(2014年6月から)、「ゲンコツクリームコロッケ」(2015年1月から)、「ゲンコツチーズメンチ」(2015年6月から)というゲンコツシリーズの中の1つの商品にすぎず、「ゲンコツ」ブランドでの商品展開がその実体であったものである。 そして、そこで使用された「ゲンコツ」ブランドは、当然被請求人の商品企画の中核と考えられていたからこそ、請求人の有する引用商標についても慎重に使用許諾契約を締結していたものと思われる。 したがって、本件商標が、需要者の間で広く認知される状況になっていたとしても、それは、引用商標の使用許諾契約が締結された状況下でのものであり、本件商標が仮に周知されるに至っていたとしても、それは本件商標固有の周知性となるものではない。 第4 無効理由通知 当審において、商標権者に対し、以下の理由によっても、本件に係る商標登録は、商標法第46条第1項の規定に基づき無効とすべきものである旨の無効理由通知を平成28年12月2日付けで通知した。 本件商標は、別掲のとおりの構成からなるところ、その構成中に「コロッケ」の片仮名を有してなることは明らかである。そして、「コロッケ」の語は、「揚げ物料理の一つ。あらかじめ調理した挽肉・魚介・野菜などを、ゆでてつぶしたジャガイモやベシャメル-ソースと混ぜ合わせて小判形などにまとめ、パン粉の衣をつけて油で揚げたもの。」を意味する語として一般に慣れ親しんだ語といい得るものである。 そして、商標法第3条第1項柱書により商標登録を受けることができる商標は、その査定時又は審決時において、現在使用をしているもの又は近い将来使用をするものと解されるところ、本件において指定している商品は、本件商標の構成態様から必然的にその使用が想定される範囲を超えたものであるため、このような状況の下では、本件商標の登録をすべき旨の審決時において、本件商標を、被請求人が使用していたか又は近い将来使用をすることについて疑義がある。 以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備していないにもかかわらず、登録されたものといわなければならない。 第5 被請求人の主張 被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び当審における無効理由通知に対する意見を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第33号証を提出した。 1 答弁の理由 (1)商標法第4条第1項第11号について ア 本件商標について (ア)本件商標の外観上の一体性 本件商標は、「ゲンコツコロッケ」の片仮名を横書きしてなるところ、その構成文字は、同じ書体の筆文字で、間隔を空けることなく横一連に表されてなるものである。 また、語頭「ゲ」、中間「コ」及び語尾「ケ」の文字が、他の文字に比べて多少大きく表されており、その書体の特徴と相まって、全体として統一感ある印象を与えるものとなっていることから、本件商標は、外観上一体的に看取される。 さらに、本件商標は、全体が8文字という短く簡潔な構成文字となっており、その構成文字の簡潔性からしても、構成文字全体が一体不可分のものと看取される。 (イ)本件商標の称呼の簡潔性 本件商標の称呼に関してみると、本件商標の構成文字全体から生ずる「ゲンコツコロッケ」の称呼は、促音を入れても8音から構成されており、無理なく一連に称呼することが可能である。 (ウ)本件商標の観念の一体性 本件商標は、上記のとおり、「ゲンコツコロッケ」の片仮名を太文字の筆文字風の書体で一連に表してなることから、本件商標に接した需要者及び取引者は、「ゲンコツコロッケ」を一体的に看取し、全体として特定の意味を有さない一種の造語と認識、理解するとみるのが自然である。 この点、請求人は、本件商標に関して、「コロッケ」は、加工食品の普通名称であること、また本件商標の構成においては「ゲ」と「コ」の文字が他の文字に比べて一回り大きく表記されているため、「ゲンコツ」と「コロッケ」の2語の結合であること明らかであると主張している。 本件商標は、上記のとおり、「ゲンコツコロッケ」の文字部分が、一体不可分のものとして看取されるべきものであるが、仮に、請求人が主張するとおり、本件商標が、「ゲンコツ」と「コロッケ」の語の結合からなると認識される場合があるとしても、「ゲンコツ」の語は、後述するとおり、食品の分野においては、「にぎりこぶし」程度の大きさや形を表す表現として使用されていることから、本件商標は、構成全体として「にぎりこぶし大のコロッケ」程の一体的な意味合いを暗示させると判断するのが妥当なものである。 したがって、本件商標は、仮に「ゲンコツ」と「コロッケ」の語の結合からなるものと認識されたとしても、「にぎりこぶし大のコロッケ」程の意味合いを暗示させることから、本件商標は、観念の観点からみても、一体的に看取されるとみるのが妥当である。 以上のとおり、本件商標は、外観上一体的に表されていること、また全体の称呼も簡潔で語呂良く一連に称呼できるものであって、殊更、略称するほどのものではないこと、さらに観念上も、特定の意味合いを有さない造語、あるいは「にぎりこぶし大のコロッケ」程の一体的な意味合いを暗示させることから、本件商標は、常に一体不可分のものと認識、把握されるとみるのが自然なものである。 (エ)「ゲンコツ」の自他商品識別力 次に、請求人が本件商標の要部であると主張する本件商標の構成中「ゲンコツ」の文字部分の自他商品識別力の強さについて検討する。 a 「ゲンコツ」の文字は、「にぎりこぶし」を意味するところ、請求人が認めているとおり、「にぎりこぶし」の意として広く一般に使用されている語であることから、造語とは異なり、本来的な自他商品識別力はそれ程強いものではなく、また食品の分野においては、以下のとおり、「げんこつ状」あるいは「げんこつ大」の商品であることを表す用語として使用されているものである。したがって、「ゲンコツ」の文字は、自他商品識別力が極めて弱いというのが妥当なものである。 (a)「げんこつシュー」 株式会社もりもとのウェブサイトにおいて、商品「げんこつシュー」に関して、「げんこつシューは、名前のとおり、見た目がげんこつのような形のシュークリーム。」と説明されている(乙1)。 (b)「げんこつカツ」 NHKのテレビ番組「きょうの料理」のレシピを紹介するウェブサイトにおいて、「ごぼうと牛肉のげんこつカツ」に関して、「ゴツゴツとした見た目がボリューム満点の“げんこつ”みたいなカツ。」と紹介されている(乙2)。また「お弁当のかわの」のウェブサイトにおいて、「げんこつカツ」に関して、「げんこつのようにゴツゴツしたフライ。だからげんこつカツ。」と説明されている(乙3)。 (c)「げんこつパイ」 ウェブサイト「オクルココロ」において、菓子工房モンパリの「げんこつパイ」について、「子供のにぎりこぶし程度のパイ生地に包まれているのは、アーモンドパウダーから作られた、甘さを抑えた香ばしいクリーム。」と説明されている(乙4)。 (d)「げんこつパン」 楽天レシピにおいて、「げんこつパン」について、「げんこつのようなパンです。」と説明されている(乙5)。 日経電子版の第121回栃木県ご当地グルメ(その3)において、「げんこつパン」が取り上げられ、「げんこつの意味なんですが、見ればわかりますよね。形がげんこつなのです。」と解説されている(乙6)。 (e)さらに、各種新聞・雑誌等にも、唐揚げ等の食品の大きさを表現する方法として、「ゲンコツ大」という表現が使用されている。 すなわち、2006年12月22日付け北国・富山新聞夕刊では、記者のグルメ探検焼き鳥ダイニング「様・様」という題名の下、「げんこつ大の出来たて唐揚げを山盛りに積んだおもちゃのトラックが楽しい。」と商品が説明されている(乙7)。 (f)2012年2月1日付け日経レストラン第450号47頁でも、「知っておきたい店情報」という題名の下、「肉屋ということだけあり、中華そばとげんこつ大の唐揚げ3個」と説明されている(乙8)。 (g)2015年6月16日付け毎日新聞滋賀、地方版でも、「おうみのお店:唐揚げ専門店とんちゃんくん・南草図店」という題名の下、「元祖とんちゃん唐揚げは1個が『ゲンコツ大』というボリュームと、かぶりつけば滴る肉汁の多さが自慢だ」と商品を説明している(乙9)。 (h)さらに、1996年12月26日熊本日日新聞夕刊9頁では、「してみて納得 こんにゃく作り体験道場「おふくろ館」という題名の下、「耳たぶぐらいの硬さになったら、手でげんこつ大に丸め、なべで30分ほどゆでれば出来上がり。」と説明されている(乙10)。 b 上掲の事例のように、「ゲンコツ」の語は、食品の分野においては、「ゲンコツ○○(食品名)」のように用いられ、「げんこつ大」あるいは「げんこつのような形」の商品(食品)を表す語として普通に使用されていると評価するのが妥当なものである。 c したがって、本件商標に関して、「ゲンコツ」と「コロッケ」の語の結合からなると認識されるとしても、本件商標の「ゲンコツ」の文字は、自他商品の識別標識としての機能を有さないか、あるいは極めて弱いと評価するのが妥当なものであることから、本件商標の構成文字である「ゲンコツ」と「コロッケ」は、自他商品識別力の点において、軽重の差異はないと評価するのが妥当なものである。 よって、自他商品識別力の観点からしても、本件商標に関して、特段「ゲンコツ」の部分のみを抽出して、分離観察しなければならない合理的な理由は存在しないと判断するのが相当である。むしろ、上記の食品業界における「ゲンコツ○○」という用語の使用例からして、本件商標に関しても、「ゲンコツ」の文字部分が独立して自他商品の識別標識として機能するというよりも、「ゲンコツコロッケ」の構成文字全体をもって、取引に資されるというのが相当である。 なお、「ゲンコツ」の文字の識別力に関しては、被請求人の商標「ゲンコツコロッケ」(商標登録第5708397号)の拒絶査定不服審判(不服2014-24087)において、引用商標「ゲンコツ」等との類否判断に際し、「『ゲンコツ』の文字は、『げんこつのような形(又は大きさ)』として、形状を暗示させる場合があることは否定できないことから、『ゲンコツ』の文字部分は、識別力がないとまではいえないが、自他商品の識別標識として強力に機能するともいえないものである。そうすると、本願商標は、『ゲンコツ』の文字部分が独立して自他商品の識別標識として機能するというよりも、その構成文字全体をもって、取引に資するものというのが相当である」と判示され、引用商標「ゲンコツ」等とは非類似の商標と判断されている(乙11)。 (オ)本願商標の一体性 以上の事実を総合考慮し、本願商標の称呼及び観念を検討すると、まず本件商標の称呼については、その外観上の一体性や称呼の簡潔性から、構成文字全体で一体不可分の一種の造語と認識、理解されるとみるのが妥当であることから、その構成全体から「ゲンコツコロッケ」の一連の称呼のみが生ずると判断するのが相当なものである。 また、仮に、本件商標について、「ゲンコツ」と「コロッケ」の語の結合からなるものと認識されたとしても、「ゲンコツ」と「コロッケ」の間には、自他商品識別力に関して軽重の差異はなく、食品の業界においては、「ゲンコツ○○○」と称して商品名を表すことが多くあること、また構成文字全体から「にぎりこぶし大のコロッケ」程の一体的な意味合いを暗示させること、さらにその外観の一体性及び称呼の簡潔性をも考慮すれば、本件商標は、「ゲンコツ」の部分のみが独立して取引に資されることはないとみるのが妥当である。 したがって、本件商標は、「ゲンコツ」と「コロッケ」の語の結合からなるものと認識されたとしても、「ゲンコツコロッケ」の構成全体が一体不可分のものと認識、理解され、その構成文字全体から、「ゲンコツコロッケ」の称呼のみが生ずると判断するのが相当なものである。 次に、観念については、本件商標は、上記のとおり、その構成文字全体で一体不可分の一種の造語と認識されるものであることから、特定の観念は生じない。また、仮に「ゲンコツ」と「コロッケ」の語の結合からなると認識された場合においても、その構成文字全体から「げんこつ大のコロッケ」程の意味合いを暗示させる程度と思料される。 したがって、本件商標から、「ゲンコツ」の称呼及び「にぎりこぶし」の観念が生ずるとする請求人の主張は妥当ではない。 イ 取引の実情等 さらに、本件商標の使用状況について説明すると、被請求人は、フランチャイズチェーン展開するコンビニエンスストア「ローソン」において、2014年6月3日より、「ゲンコツコロッケ」を商品「コロッケ」(以下「本件商品」という。)に使用を開始しており、同日から有名俳優「西島秀俊」と有名女優「竹内結子」が共演するテレビCMを全国で放映している(乙12)。 また、本件商品の発売に関しては、朝日新聞、共同通信ニュース、FujisankeiBusinessニュース、日本食糧新聞、WalkerPlus、Business Media誠、といった各種の新聞、雑誌、インターネットにも掲載されている(乙13?乙18)。 そして、本件商品は、発売後2ヵ月で1200万個を販売し、爆発的人気となったことから、雑誌「SAPIO」(乙19)にも取り上げられ、ブログ形式のニュースサイトであるGigazine(乙20)や、その他多数のブログ等に本件商品を実食したレポート等が掲載され話題となっている。このGigazineのレポートには、本件商品の大きさ、形状を説明するため、成人女性の握った手(げんこつ)と本件商品を比べる写真が掲載されていることからも明らかなとおり、本件商標に接した需要者及び取引者は、本件商標について、自然に、げんこつ大の大きさ又はげんこつ形状の商品であることを表すものであると認識、理解するものと思料される。 以上のとおり、「ゲンコツコロッケ」は、被請求人によって盛大に宣伝広告されており、また売上高も相当な金額に上ることから、「ゲンコツコロッケ」は、本件商標の登録時において、被請求人の商標として、需要者の間で広く認知されていたものいうことができるものと思料される。 本件無効審判において、商標法第4条第1項第11号を根拠に本件商標の登録無効を求められた商品は、「菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,穀物の加工品を主材とする調理済み惣菜,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ,お好み焼き,おにぎり,調理済みのラーメン,調理済みのうどん,調理済みの中華そば,調理済みのそうめん,調理済みの焼きそば,調理済みのパスタ,調理済み麺類,調理済みの炒飯,調理済みの丼物,調理済みの米飯,調理済のスパゲティ,調理済みのカレーライス,ドライカレー,チャーハン」であるところ、当該商品は、被請求人のフランチャイズチェーン展開するコンビニエンスストア「ローソン」において販売されるものであり、当該商品と「コロッケ」は、需要者が共通し、また同じ店舗で販売されることから、本件商標に接した需要者及び取引者は、本件商標から、周知となっている被請求人の上記「ゲンコツコロッケ」を使用した商品と理解し、被請求人の周知商標「ゲンコツコロッケ」を想起するものである。 ウ 引用商標 次に、引用商標についてみると、引用商標は、「ゲンコツ」の片仮名よりなることから、その構成文字より、「ゲンコツ」の称呼が生じ、また「握り拳」の観念が生ずるものである。 エ 本願商標と引用商標の類否 本件商標の外観は、「ゲンコツコロッケ」の片仮名を筆文字風の太文字で一連に横書きしてなるものであるのに対し、引用商標は、標準文字にて「ゲンコツ」の片仮名を横書きしてなるものであることから、両商標は、外観において、語尾における「コロッケ」の有無において明瞭に相違するものである。 また、本件商標の称呼は、その構成文字全体から「ゲンコツコロッケ」の称呼が生ずるのに対し、引用商標は、その構成文字より「ゲンコツ」の称呼が生ずることから、両商標は、称呼において、語尾における「コロッケ」の有無において明瞭に相違するものである。 さらに、本件商標は、構成全体として、一種の造語と認識されるとみるのが自然であることから、特定の観念は生じないと判断するのが妥当である。また、「ゲンコツコロッケ」は、被請求人の商標として周知になっていることから、本件商標から、上記「ゲンコツコロッケ」を想起させる場合がある。さらに、仮に、本件商標について、「ゲンコツ」と「コロッケ」の結合からなると認識されるとした場合、「げんこつ大のコロッケ」程の意味合いを暗示させるともいえる。 これに対し、引用商標は、その構成文字より、「握り拳」の観念が生ずるものである。 そうすると、両商標は、本件商標について、特定の観念は生じないとした場合は、観念において対比することはできないが、本件商標から生ずる想定される上記の観念と対比した場合であっても、引用商標とは、観念が異なるものである。 したがって、本件商標は、引用商標とは、その外観、称呼、及び観念のいずれにおいても相違するものである。 また、「ゲンコツコロッケ」は、上述したとおり、被請求人の商品名として需要者の間に広く認知されており、本件商標に関しても、周知になっている被請求人の「ゲンコツコロッケ」を想起させることから、本件商標を、その指定商品に使用しても、引用商標を付された商品とは容易に区別可能であり、両商標を使用した商品の出所について誤認混同するような事態は考え難いものである。 この点、請求人は、本件商標の構成中「コロッケ」の文字部分は、加工食品の一つを表す普通名称であり、自他商品の識別標識として機能するのは「ゲンコツ」の部分であることから、本件商標からは、「ゲンコツ」の称呼、及び「にぎりこぶし」の観念が生ずると主張している。 しかしながら、このような分離観察、要部観察は、商標の構成の一部部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合など特別の事情がある場合に限られるところ、これを本件商標についてみると、本件商標は、「ゲンコツコロッケ」の片仮名を筆文字風の太文字で一連に間隔を空けることなく表示されていることから、「ゲンコツ」の文字部分のみが強調されているものではない。むしろ、中間の「コ」及び語尾の「ケ」が大きく表示されていることから、「コロッケ」の文字部分の方が、需要者及び取引者に対して強い印象を与えるものといえる。 また、「ゲンコツ」は、「げんこつ大」の食品を表す語として使用されており、自他商品識別力は極めて弱いことから、「ゲンコツ」の文字部分についてのみ、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるといった事情も存在しないものである。 さらに、食品の業界においては、「ゲンコツ○○」と称して商品名を表すことが多くあることから、本件商標は、その構成上の一体性や称呼の簡潔性、さらに「げんこつ大のコロッケ」程の意味合いを暗示させる観念上の一体性をも考慮した場合、その構成文字全体をもって一体不可分のものと認識されるとみるのが自然であり、簡易迅速を尊ぶ取引の実情を考慮したとしても、「ゲンコツ」の文字部分が、独立して自他商品の識別標識として機能を果たすとは到底考え難いものである。 したがって、本件商標は、構成文字全体をもって全体観察するのが妥当であり、請求人が主張するような分離観察、要部観察は、穏当性を欠くものである。 オ 参考審決 上記被請求人の主張の妥当性は、不服2000-21096号拒絶査定不服審判(乙21)の判断からも首肯されるものである。 本審判では、外観上の一体性等を根拠に、商標「げんこつ」と引用商標「げんこつハンバーグ」は、非類似の商標と判断されており、本件商標と引用商標の類否判断においても、十分傾聴に値するものと思料される。 その他の商標登録例及び審決例においても、普通名称等との結合商標に関して、一体的に判断して併存して商標登録を認めている(乙22?乙33)。 カ 小括 よって、本願商標と引用商標とは、外観、称呼、観念のいずれの点においても類似しないものであり、また本件商標の周知性を考慮した場合、商品の出所について誤認混同を生じさせるおそれも全く存在しないことから、本件商標と引用商標は、互いに非類似の商標と判断するのが相当なものである。 (2)商標法第4条第1項第16号について 請求人は、本件商標の構成中「コロッケ」の文字部分は、「揚げ物料理の一つ。あらかじめ調理した挽肉・魚介・野菜などを、ゆでてつぶしたジャガイモやベシャメル・ソースと混ぜ合わせて小判形などにまとめ、パン粉の衣をつけて油で揚げたもの」を表す普通名称であることから、本件商標をその指定商品に使用するときは、あたかもこれら商品がコロッケ又はコロッケを用いた商品であるかのように商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあると主張している。 しかしながら、本件商標は、構成文字全体として、一体不可分の一種の造語と認識されるものである。したがって、本件商標は、その指定商品に使用しても、商品の品質について誤認を生じさせるおそれはない。 また、仮に、請求人が主張するように「ゲンコツ」と「コロッケ」の結合と理解される場合があるとしても、構成全体として、一種の造語あるいは「ゲンコツ大のコロッケ」程の意味合を暗示させる程度に止まるものであって、「ゲンコツコロッケ」の文字が、特定の商品を表す普通名称にまでには至っていないことから、本件商標を指定商品に使用しても、商品の品質について誤認を生じさせるおそれはない。 したがって、本件商標は、その指定商品に使用しても、商品の品質について誤認を生じさせるおそれはないことから、商標法第4条第1項第16号には該当しない。 さらに、本件商標の指定商品のうち、「茶,茶飲料,調味料,菓子,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,ラビオリ,お好み焼き,おにぎり」に関しては、「コロッケ」とは商品の内容、原材料が全く異なるものである。したがって、仮に、請求人が主張するように、本件商標の構成中「コロッケ」の文字から、「コロッケ」を想起させると仮定しても、上記指定商品については、その商品の内容等の差異からして、本件商標に接した需要者及び取引者をして、コロッケあるいはコロッケを用いた商品であると誤認されるとは考え難いものと思料される。 また、本件商標の指定商品のうち、少なくともコロッケを原材料に用いた商品、すなわち「コロッケを材料として用いたパン,コロッケを材料として用いたサンドイッチ,コロッケを材料として用いたハンバーガー,コロッケを材料として用いた弁当,コロッケを材料として用いた調理済みのラーメン,コロッケを材料として用いた調理済みのうどん,コロッケを材料として用いた調理済みの中華そば,コロッケを材料として用いた調理済み麺類,コロッケを材料として用いた調理済みの炒飯,コロッケを材料として用いた調理済みの丼物,コロッケを材料として用いた調理済みのカレーライス,コロッケを材料として用いたドライカレー,コロッケを材料として用いたチャーハン」に関しては、本件商標の構成中「コロッケ」の文字から、「コロッケ」を想起させたとしても、その原材料を表すものであることから、商品の品質について誤認を生じさせるおそれはない。さらに、「コロッケ用調味料」といった商品についても、その用途を表したものと理解されることから、商品の品質の誤認を生じさせるおそれはないものである。 したがって、仮に、本件商標の構成中「コロッケ」の文字から、「コロッケ」を想起させるとしても、少なくとも商品「茶,茶飲料,調味料,菓子,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,ラビオリ,お好み焼き,おにぎり」とは、商品の内容が明確に異なることから商品の品質等について誤認を生じさせるおそれはなく、また「コロッケ用調味料,コロッケを材料として用いたパン,コロッケを材料として用いたサンドイッチ,コロッケを材料として用いたハンバーガー,コロッケを材料として用いた弁当,コロッケを材料として用いた調理済みのラーメン,コロッケを材料として用いた調理済みのうどん,コロッケを材料として用いた調理済みの中華そば,コロッケを材料として用いた調理済み麺類,コロッケを材料として用いた調理済みの炒飯,コロッケを材料として用いた調理済みの丼物,コロッケを材料として用いた調理済みのカレーライス,コロッケを材料として用いたドライカレー,コロッケを材料として用いたチャーハン」については、原材料又は用途を表したものであり、商品の品質誤認といった問題は生じさせないことから、少なくとも上記指定商品については、商標法第4条第1項第16号には該当しない。 (3)むすび 以上のとおり、本件商標は、引用商標とは非類似の商標であることから、指定商品の類否を判断するまでもなく、商標法第4条第1項第11号に違反するものではない。また、本件商標は、構成全体で一体不可分の一種の造語と認識されるものであり、商品の品質についても誤認を生じさせるおそれもないことから、商標法第4条第1項第16号にも該当しないものである。 2 答弁における被請求人のその他の主張 (1)甲第15号証について 請求人は、甲第15号証として、被請求人の従業員から請求人の従業員向けに送信された電子メールの写しを提出し、そこに記載されている文章を根拠として、本件商標の商品「コロッケ」に関する使用は、商標登録第1470113号に係る商標使用許諾契約に基づくものであるから、本件商標が需要者の間に広く知られている事実は、通常使用権を法的根拠にするものにすぎないと主張している。 しかしながら、仮に、商標登録第1470113号に係る商標使用許諾契約が存在したとしても、通常使用権の対象は、専用権の範囲である「ゲンコツ」であり、本件商標とは異なるものである。 被請求人は、2014年6月3日から日本全国で本件商標を商品「コロッケ」使用しているが、その商品の販売活動、及びテレビCM等の商品の広告宣伝活動は、商標使用許諾とは関係なく、被請求人の企画、指示のもと自らの費用で一切を行っており、本件商標に化体している業務上の信用は、被請求人自らの努力によって培われたものである。 本件商標に化体している業務上の信用が、商標登録第1470113号に係る商標使用許諾契約に根拠にするにすぎないという請求人の主張は、商標使用許諾を曲解したもので、被請求人の営業努力を不当に無視するものであり、穏当ではない。 (2)甲第46号証ないし甲第49号証について 請求人は、本件商標登録の無効に関して大きな影響を与えるとして、甲第46号証ないし甲第49号証において、請求人と被請求人の間で締結された引用商標に関する商標使用許諾契約書(但し、甲第49号証の商標使用許諾契約書は未締結)を証拠として提出している。 そして、請求人は、被請求人が請求人に対して使用許諾契約を申し入れてきた事実は、被請求人自らも、本件商標が引用商標に類似することを認めていることの証左であると主張している。 しかしながら、本商標使用許諾契約は、被請求人が販売している商品「ゲンコツコロッケ」の売れ行きが好調なことから、将来においては、「弁当、サンドイッチ」等の関連商品を発売する可能性もあり、その弁当の販売等においては、引用商標それ自体(「ゲンコツコロッケ」ではない)を使用する可能性も否定できないことから、将来に向け商品の販売活動を柔軟かつ円滑に行うことができるよう事前に引用商標の使用許諾を求めたものである。 また、本商標使用許諾契約は、請求人が被請求人に対して引用商標を商品「メンチカツやコロッケなどを使用した弁当、サンドイッチ」等に使用することを許諾するもので、使用許諾の対象となっている商標は、引用商標「ゲンコツ」である。本商標使用許諾契約書には、本件商標の使用に関する規定は、一切存在しておらず、本件商標の使用が引用商標の商標権に抵触することを前提とするような規定は存在しない。 商標使用許諾契約書の存在をもって、本件商標と引用商標が類似商標であることを認めているとの請求人の主張は、本商標使用許諾契約の内容を曲解したものであり、妥当なものではない。 以上のとおり、甲第46号証ないし甲第49号証の商標使用許諾契約書は、本件商標の登録無効理由の有無の判断には、全く関係のないものであり、考慮されるべきものではない。 3 無効理由通知に対する意見 (1)被請求人は、本件商標の登録をすべき旨の審決時において、本件商標を指定商品に使用する意思を有していたものである。 そして、被請求人は、本件商標の登録をすべき旨の審決時において、被請求人及びフランチャイジーが運営するコンビニエンスストア「LAWSON」において、「パン、サンドイッチ、ハンバーガー、弁当、チャーハン、カレーライス、丼物、調味料」など指定商品に属する商品を既に販売していたものである。 また、本件商標の指定商品には使用を開始していなかったものの、本件商標は、審決時の前から、商品「コロッケ」に使用を開始しており、将来、当該コロッケを使用したパンや弁当等についても「LAWSON」において、販売する意思を有していたものである。 具体的には、「コロッケ入りのパン、コロッケ入りのサンドイッチ、コロッケ入りのハンバーガー、コロッケ用調味料、コロッケ入りの弁当、コロッケ入りのチャーハン、コロッケ入りの調理済みのカレーライス、コロッケ入りの調理済み丼物」に関して、近い将来使用する意思を有していたものである。なお、「コロッケ用調味料」は、「ゲンコツコロッケ」専用の調味料(例えばソース)を販売することを企画していたものである。 無効理由通知書では、被請求人が、本件商標の登録審決時に将来においてさえ本件商標の使用意思を有していない理由として、本件商標の構成態様から必然的にその使用が想定される範囲を超えたものであることを根拠として挙げているが、「コロッケ入りのパン、コロッケ入りのサンドイッチ、コロッケ入りのハンバーガー、コロッケ用調味料、コロッケ入りの弁当、コロッケ入りのチャーハン、コロッケ入りの調理済みのカレーライス、コロッケ入りの調理済み丼物」との関係においては、商標の構成態様から特に制約を受けるものではないことから、本件商標が、商標法第3条第1項柱書に違反して登録されたものであることの根拠にはならない。 (2)したがって、本件商標は、その登録審決時において、指定商品中、少なくとも「コロッケ入りのパン、コロッケ入りのサンドイッチ、コロッケ入りのハンバーガー、コロッケ用調味料、コロッケ入りの弁当、コロッケ入りのチャーハン、コロッケ入りの調理済みのカレーライス、コロッケ入りの調理済み丼物」に関しては、商標法第3条第1項柱書に違反して登録されたものではない。 第6 当審の判断 1 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標と引用商標との類否について ア 本件商標は、別掲のとおり、「ゲンコツコロッケ」の片仮名を、毛筆で書したかのような字体で、「ゲ」「コ」「ケ」をやや大きく、その余の文字をやや小さく一連に書してなり、「ゲンコツコロッケ」の称呼を生じるものである。 そして、本件商標のうち「ゲンコツ」は、「にぎりこぶし。げんこ。」を意味し(甲6)、食品分野において、ゴツゴツした形状や大きさがにぎりこぶし程度であることを意味する語として用いられることがあったものと認められる(乙1?乙10)。「コロッケ」は、「揚げ物料理の一つ。あらかじめ調理した挽肉・魚介・野菜などを、ゆでてつぶしたジャガイモやベシャメル・ソースと混ぜ合わせて小判形などにまとめ、パン粉の衣をつけて油で揚げたもの。」を意味する(甲5)。 本件商標は、「ゲンコツ」と「コロッケ」の結合商標と認められるところ、その全体は8字8音とやや冗長であること、上記のとおり「コ」の字がやや大きいこと、「ゲンコツ」も「コロッケ」も上記の意味において一般に広く知られていることからすると、本件商標は、「ゲンコツ」と「コロッケ」を分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分的に結合しているとはいえないものである。 また、本件商標の指定商品中に含まれる「コロッケ入りのパン、コロッケ入りのサンドイッチ、コロッケ入りのハンバーガー、コロッケ入りの弁当、コロッケ入りの調理済みの丼物、コロッケ入りの調理済みカレーライス、コロッケ入りのチャーハン」の商品(以下「コロッケ入り商品」という。)は、いずれも、「コロッケ入り」の食品であるから、本件商標の構成のうち「コロッケ」の部分は、指定商品の原材料を意味するものと捉えられ、識別力がかなり低いものである。 これに対し、上記のとおり、「ゲンコツ」は、食品分野において、ゴツゴツした形状や大きさがにぎりこぶし程度であることを意味する語として用いられることがあることから、「ゲンコツコロッケ」は、「ゴツゴツした、にぎりこぶし大のコロッケ」との観念も生じ得るが、常にそのような観念が生ずるとまではいえず、また、本件商標の指定商品中、コロッケ入り商品の原材料である「コロッケ」は、ゴツゴツしたものやにぎりこぶし大のものに限定されているわけでもないから、「ゲンコツ」は、「コロッケ」よりも識別力が高く、需要者に対して強く支配的な印象を与えるというべきである。 さらに、被請求人が、本件商標を使用して、「ゲンコツコロッケ」の販売を開始したのは、平成26年6月3日であり、販売開始は新聞の電子版で報道され、「ゲンコツコロッケ」は、人気商品となって、販売開始から短期間で多数個が販売されたことが認められる(乙13?乙20、甲51)。 しかし、本件登録審決日は上記の販売開始から約3か月間経過後であること、コロッケのような食品の需要者はきわめて多数にのぼると考えられることからすると、「ゲンコツコロッケ」が不可分一体と認識されると認めることはできない。 以上より、本件商標の要部は「ゲンコツ」の部分であると解すべきである。 そうすると、引用商標は、上記第2のとおり、「ゲンコツ」の文字を標準文字で表してなるものであるから、本件商標の要部「ゲンコツ」と引用商標とは、外観において類似し、称呼を共通にし、観念を共通にする。 したがって、両者は、類似しているものと認められる。 イ 被請求人は、(ア)本件商標は外観上全体として統一感ある印象を与え、(イ)称呼も短く、一連に称呼できるから、全体で一体不可分の語として認識、理解されるべきである、と主張する。 しかし、本件商標が全体として不可分なものであって、「ゲンコツ」と「コロッケ」を分離して観察することができないといえないことは、前記(1)のとおりである。 また、被請求人は、「コロッケ」及び「コロッケ」の語の結合からなるものと認識される場合であっても、需要者は「にぎりこぶし大のコロッケ」程の意味合いを暗示させることから観念の観点でも「ゲンコツコロッケ」を一体的に看取する、と主張する。 しかし、本件商標の構成のうち「ゲンコツ」の部分が、需要者に対して強く支配的な印象を与えることは、前記(1)のとおりであり、需要者が、「ゲンコツコロッケ」を一体的に理解するとは認められない。 さらに、被請求人は、本件商標は周知であるから、「ゲンコツコロッケ」は常に一体不可分のものとして認識される、と主張する。 しかし、この主張を採用することができないことは、前記(1)のとおりである。 (2)指定商品の類否について 本件商標の指定商品のうち、第30類「コロッケ入りパン,コロッケ入りサンドイッチ,コロッケ入りハンバーガー,コロッケ入り弁当,コロッケ入りの調理済み丼物,コロッケ入りの調理済みのカレーライス,コロッケ入りのチャーハン」は、引用商標の指定商品に同一又は類似する。 (3)小括 したがって、本件商標は、その指定商品中、第30類「コロッケ入りパン,コロッケ入りサンドイッチ,コロッケ入りハンバーガー,コロッケ入り弁当,コロッケ入りの調理済み丼物,コロッケ入りの調理済みのカレーライス,コロッケ入りのチャーハン」については、商標法第4条第1項第11号に該当する。 2 商標法第4条第1項第16号該当性について (1)本件商標は、上記1のとおり、その構成中に、「揚げ物料理の一つ。あらかじめ調理した挽肉・魚介・野菜などを、ゆでてつぶしたジャガイモやベシャメル・ソースと混ぜ合わせて小判形などにまとめ、パン粉の衣をつけて油で揚げたもの。」を意味する「コロッケ」の文字を含むものである。 (2)また、請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。 ア 「Google」の検索において、「コロッケ パン」の語を検索したときに、約912,000件ヒットし、「コロッケパン-Wikipedia」の項には、「コロッケパンとは、パンの間にコロッケを挟んだ惣菜パンのこと。」の記載がある(甲26)。 イ 「Google」の検索において、「コロッケ サンドイッチ」の語を検索したときに、約622,000件ヒットし、「ノンフライコロッケサンド-みんなのきょうの料理」の項には、「『ノンフライコロッケサンド』。パン粉をつけて揚げる代わりに、カリッとトーストしたパンにひき肉とたまねぎ入りのマッシュポテトをはさみます。手間なく、食べやすく、低エネルギーのコロッケです。」の記載がある(甲27)。 ウ 「Google」の検索において、「コロッケ ハンバーガー」の語を検索したときに、約524,000件ヒットし、「コロッケバーガーbyカルピネット[クックパッド]」の項には、「市販のバンズと余ったコロッケでコロッケバーガー。」の記載がある(甲28)。 エ 「Google」の検索において、「コロッケ べんとう」の語を検索したときに、約3,210,000件ヒットし、「肉じゃがコロッケ弁当-オリジン東秀」の項には、「肉じゃがコロッケ弁当をご紹介します。」の記載がある(甲29)。 オ その他、「コロッケ入りの焼きそば」、「コロッケ入りのカレーライス」、「コロッケ入りの炒飯」、「コロッケ入りのラーメン」、「コロッケ入りのうどん」及び「コロッケ入りのパスタ」等、「コロッケ」を使用した商品が多数販売されていることが認められる(甲30?甲45)。 (3)上記(2)の事実によれば、本願商標の構成中の「コロッケ」の文字は、本願商標の指定商品との関係においては、「コロッケ入りの商品」であることを理解・認識させるものであって、指定商品の取引の実際においても、商品の品質を示すものとして一般に使用されているということができる。 そうすると、これを本願商標の指定商品中、「コロッケ入りの商品」以外の商品に使用したときは、あたかも、「コロッケ入りの商品」であるかのように、その商品の品質について誤認を生じるおそれがあるといえる。 したがって、本件商標は、その指定商品中の「コロッケ入りの商品」以外の商品の「茶,茶飲料,菓子,コロッケ入り以外のパン,コロッケ入り以外のサンドイッチ,中華まんじゅう,コロッケ入り以外のハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,コロッケ用以外の調味料,穀物の加工品,穀物の加工品を主材とする調理済み惣菜,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,コロッケ入り以外の弁当,ラビオリ,お好み焼き,おにぎり,調理済みのラーメン,調理済みのうどん,調理済みの中華そば,調理済みのそうめん,調理済みの焼きそば,調理済みのパスタ,調理済み麺類,調理済みの炒飯,コロッケ入り以外の調理済みの丼物,調理済みの米飯,調理済みのスパゲティ,コロッケ入り以外の調理済みのカレーライス,ドライカレー,コロッケ入り以外のチャーハン」については、商標法第4条第1項第16号に該当する。 3 商標法第3条第1項柱書きについて 前記第4のとおり、本件商標は、その構成中に「コロッケ」の片仮名を有してなることは明らかである。そして、商標法第3条第1項柱書により商標登録を受けることができる商標は、その査定時において、現在使用をしているもの又は近い将来使用をするものと解されるところ、本件において指定している商品中、「コロッケ入りの商品」以外の商品については、本件商標の構成態様から必然的にその使用が想定される範囲を超えたものであるため、このような状況の下では、本件商標の登録をすべき旨の審決時において、本件商標を、被請求人が使用していたか又は近い将来使用をすることについて疑義がある。 これに対し、被請求人は、本件商標をその指定商品中の「コロッケ入りのパン,コロッケ入りのサンドイッチ,コロッケ入りのハンバーガー,コロッケ用調味料,コロッケ入りの弁当,コロッケ入りのチャーハン,コロッケ入りの調理済みのカレーライス,コロッケ入りの調理済みの丼物」以外の商品について、登録査定時において使用していたこと又は近い将来使用する意思を有していたことを何ら主張、立証していない。 以上のとおり、本願商標は、その指定商品中、上記商品以外の商品の「茶,茶飲料,菓子,コロッケ入り以外のパン,コロッケ入り以外のサンドイッチ,中華まんじゅう,コロッケ入り以外のハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,コロッケ用以外の調味料,穀物の加工品,穀物の加工品を主材とする調理済み惣菜,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,コロッケ入り以外の弁当,ラビオリ,お好み焼き,おにぎり,調理済みのラーメン,調理済みのうどん,調理済みの中華そば,調理済みのそうめん,調理済みの焼きそば,調理済みのパスタ,調理済み麺類,調理済みの炒飯,コロッケ入り以外の調理済みの丼物,調理済みの米飯,調理済みのスパゲティ,コロッケ入り以外の調理済みのカレーライス,ドライカレー,コロッケ入り以外のチャーハン」について、商標法第3条第1項柱書の要件を具備していないものである。 4 むすび 以上のとおり、本件商標は、その指定商品中「茶,茶飲料,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,コロッケ用以外の調味料,穀物の加工品,穀物の加工品を主材とする調理済み惣菜,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,コロッケ入り以外の弁当,ラビオリ,お好み焼き,おにぎり,調理済みのラーメン,調理済みのうどん,調理済みの中華そば,調理済みのそうめん,調理済みの焼きそば,調理済みのパスタ,調理済み麺類,調理済みの炒飯,調理済みの丼物,調理済みの米飯,調理済みのスパゲティ,調理済みのカレーライス,ドライカレー,チャーハン」について、商標法第4条第1項第11号及び同第16号に違反して、又は、同法第3条第1項柱書の要件を具備しないにもかかわらず登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とし、請求に係るその余の指定商品「コロッケ用調味料」については、商標法第4条第1項第11号及び同第16号並びに同法第3条第1項柱書のいずれにも違反して登録されたものではないから、その登録を無効にすべき限りでない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲(本件商標) |
審理終結日 | 2018-04-24 |
結審通知日 | 2018-04-27 |
審決日 | 2018-05-08 |
出願番号 | 商願2013-52028(T2013-52028) |
審決分類 |
T
1
11・
272-
ZC
(W30)
T 1 11・ 18- ZC (W30) T 1 11・ 263- ZC (W30) T 1 11・ 262- ZC (W30) T 1 11・ 261- ZC (W30) |
最終処分 | 一部成立 |
前審関与審査官 | 内田 直樹 |
特許庁審判長 |
井出 英一郎 |
特許庁審判官 |
榎本 政実 田中 幸一 |
登録日 | 2014-10-10 |
登録番号 | 商標登録第5708397号(T5708397) |
商標の称呼 | ゲンコツコロッケ、ゲンコツ |
代理人 | 新井 悟 |
代理人 | 宮城 和浩 |
代理人 | 特許業務法人RIN IP Partners |
代理人 | 宇佐美 英司 |
代理人 | 中川 拓 |
代理人 | 森 寿夫 |