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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W353639
管理番号 1341291 
異議申立番号 異議2017-900271 
総通号数 223 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2018-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-09-04 
確定日 2018-06-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第5969222号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5969222号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5969222号商標(以下「本件商標」という。)は,「サカイホールディングス」の片仮名を標準文字で表してなり,平成29年1月31日に登録出願,第35類「携帯電話及びその付属品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,携帯情報端末の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」,第36類「生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出」及び第39類「太陽光発電装置による電気の供給,その他の電気の供給」を指定役務として,同年7月14日に登録査定され,同年8月4日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,本件商標は商標法第3条第1項柱書,同法第4条第1項第7号及び同第8号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証を提出した。
1 申立人と商標権者の関係
申立人は,東京証券取引所(JASDAQ)に上場する企業である(甲1)。また,商標権者は,島根県安来市在住の個人であり,申立人の個人株主になるべく,申立人への株主登録を平成28年9月30日に行った(甲2)。
2 申立人と本件商標の関係
申立人は,平成28年11月10日,「会社分割による持株会社体制への移行に伴う吸収分割契約締結及び定款変更(商号及び事業目的の一部変更)に関するお知らせ」(以下「定款変更通知」という。)を発行し(甲3),全株主へ同日に発送を行った。
そして,申立人は,定款変更通知において「当社は本日開催の取締役会において,平成29年10月1日(予定)付で『株式会社サカイホールディングス」に商号を変更するとともに,その事業目的を持株会社体制移行後の事業に合わせて変更することを内容とする決議をいたしましたので併せてお知らせいたします。』との告知を行った。
一方,本件商標は,定款変更通知の発行日である平成28年11月10日以後,平成29年1月31日に出願した商標である。
また,本件商標「サカイホールディングス」は,申立人が変更後の商号として株主に対し通知を行った商号「株式会社サカイホールディングス」の自他商品・役務の識別力を発揮する商標の要部,すなわち,「サカイホールディングス」を標章として採択し出願し登録した商標である。すなわち,本件商標は告知した新会社の商号「株式会社サカイホールディングス」に類似し,若しくは,実質的に同一の商標である。
3 異議申立の根拠と具体的な理由
(1)本件商標が商標法第3条第1項柱書に違反する理由
ア 商標の登録は,自己の業務に係る商品又は役務に関し使用する商標について受けることができる(商標法第3条第1項柱書)。しかしながら,本件商標は同条に該当しない。
イ 一方,商標権者は,申立人の商号変更を告知する定款変更通知(平成28年11月10日発行:甲3)の発送後,平成29年1月1日付で「サカイホールディングスの商標登録について」と称する書簡をファックスにて突如提出者に送付した(甲4)。
同書簡によれば,商標権者が申立人に対し「サカイホールディングス」の商標登録を促す主旨であり,「商標登録は広い範囲が必要です」との見出しのもと「株式会社 サカイホールディングス」等商標登録を促すべき商標案を明示している。
ウ 商標権者は,甲第4号証の書簡に続き,申立人の代表取締役社長宛に平成29年7月5日付の書簡を郵送に送付した(甲5)。同書簡によれば,「商標登録についてIR氏と連絡を取り合っていましたが,期末の株主総会でサカイホールディングスヘの名称変更が打ち出されたわりに,商標登録の出願対応がなされず,再三にわたり出願の要請を致しましたが,シビレを切らして自分で出願してしまいました」と事情を説明した。そして,次の商標出願を行った事実を告知した。
(ア)商願2017-8914(本件商標:登録5969222号)
出願日:平成29年1月31日
商標:サカイホールディングス
(イ)商願2017-67853(申立人が刊行物等提出書を平成29年8月10日に提出済み)
出願日:平成29年5月18日
商標:さかいホールディングス
さらに,商標権者は,「もとより,大それた目論見など抱かず,単純に一株主としての危機感から発生した事由でございます。未だ登録もされていない未玉の状態でこんなお話を差し上げるのは誠に恐縮ですが,(登録の暁には)私の出願案件をお買い上げ願えないでしょうか」と提出者に対して,「譲渡の条件」をも具体的に提示し本件商標の購入を催促した。
なお,甲第5号証のとおり,商標権者は本件商標の他に,申立人の変更後の商号である株式会社サカイホールディングスの要部である「サカイ」を平仮名表記にした「さかいホールディングス」についても商標出願を行った(商願2017-67853)。
以上のとおり,申立人は同商標出願に対しては,平成29年8月10日付の「刊行物等提出書」を提出した。
エ 商標権者は,甲第5号証の書簡に続き,提出者のIR担当者宛に平成29年7月19日付の書簡をFAXした(甲6)。
その内容は,商願2017-8914(出願商標:サカイホールディングス)が登録査定を受領したことを言及するとともに,同商標の買い取りと本件商標の買い取り検討を督促するものであった。
オ 商標権者は,甲第6号証に続き,提出者の代表取締役社長宛に平成29年7月19日付の書簡を郵送した(甲7)。
その内容は,甲第6号証と同趣旨であるが,商願2017-67853(出願商標:さかいホ-ルディングス)と本件商標の買い取り検討を再度督促するものであった。
商標権者は,同書簡において,同人が申立人に対して本件商標の譲渡の意向があることを明確に示すとともに,譲渡の具体的な金額を提示し,「以後,どの様に扱われましょうとも,関与致しません」などと半ば申立人以外の第三者に本件商標を転売することを示唆する言及を行っている。
さらには,「勝手ながら登録請求前の買取りなら半額にします。」,「登録後の譲渡よりも登録前の譲渡の方が手間も費用も安くて済むと特許事務所は申しております。」と付言し,申立人の早期買取りを促す文面となっている。
カ 上述の事実から明らかなとおり,本件商標は,出願人が自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標ではない。
商標登録は,自己の業務に係る商品又は役務について使用する者に対し認められるべきところ(商標法第3条第1項柱書),申立人が新商号を商標出願していないことを奇貨として,当初から申立人への転売目的のため,商標権者は本件商標を出願したものである。
かかる商標権者の行為は,出願人が自己の業務に係る商品又は役務について使用をするために本件商標を出願したものでないことは明らかであり,商標法第3条第1項柱書に違反する商標であり商標登録を受けることはできない。
キ 商標権者は,本件商標の指定役務について,実施の事業の準備若しくは実施の事業を行っていない。特に,「太陽光発電装置による電気の供給」等の役務は,管轄行政機関による許認可若しくは届け出を必要とする役務であり,さらには,大型の設備機器を要する事業である。
よって,個人である商標権者がこれらの役務を実施できるとは到底想定できない。かかる理由からも,商標権者が本件商標の使用に関する意思を有しているとは考えることは困難である。
この理由からも,商標権者は,同人が自己の業務に係る商品又は役務について使用をするために本件商標を出願したものでないことは明らかであり,商標法第3条第1項柱書に違反する商標であるから商標登録を受けることはできない。
(2)本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当する理由
商標権者による本件商標の取得は,提出者の株主である地位を悪用した行為である。かかる本件商標の放置は,株式上場会社から不当な金銭を引き出すことを目的とし,ひいては,株式上場企業の企業活動に妨害を与えんとするものである。
したがって,本件商標の商標登録は,健全な企業活動という経済社会の安寧秩序を揺るがす公共の利益に反する重大な行為であり,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標登録であるとの非は免れない。
換言すれば,本件商標の出願の経緯には,社名変更を公表した申立人に対し善意者を装い本件商標の出願を行い,事後本件商標の購入を「(買い取らなかった場合は)以後,どの様に扱われましょうとも,関与致しません」(甲5?甲7)などと提出者の恐怖心を煽る表現を用い,本件商標の購入を半ば強要する行為が,社会的相当性を欠く反社会的行為であることは火を見るより明らかである。
このような行為は,商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り,需要者の利益を図ることを目的とする商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない行為である。
よって,本件商標は商標法第4条第1項第7号に違反し,商標登録を受けることはできない。
(3)本件商標が商標法第4条第1項第8号に該当する理由
本件商標は,申立人が設立する予定の新会社の商号「株式会社サカイホールディングス」と実質上同一である表示「サカイホールディングス」を出願したものである。また,本件商標の出願時である平成29年1月31日の時点において,本件商標「サカイホールディングス」は,申立人の変更後の商号である「株式会社サカイホールディングス」の著名な略称として認識されていた。
一方,申立人は,本件商標の登録について,商標権者に許諾を与えていない。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当するものであるから,商標登録を受けることはできない。

第3 取消理由の通知
当審において,商標権者に対し,「商標権者は,申立人の株主の一人であり,申立人の経営に参画しているともいい難く,自己の業務に使用する目的でなく,申立人に転売する目的で本件商標を商標登録出願したといえる。そうすれば,本件商標の登録査定時において,商標権者が本件商標をその指定役務について使用しているか,近い将来使用する意思があったことについて合理的な疑義があり,本件商標は,商標権者が自己の業務に係る役務について使用をする商標ということはできないから,本件商標の登録は,商標法第3条第1項柱書の規定に違反してされたものである。」旨の取消理由を平成30年1月19日付けで通知し,相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。

第4 商標権者の意見の要旨
商標権者は,前記第3の取消理由に対して,要旨以下のように意見を述べ,証拠方法として,「商標『サカイホールデングス』(異議決定注:「サカイホールディングス」の誤り,以下同じ。)の異議申立てについて」(資料1)「到来資料抜粋『取消理由』」(資料2),「IR資料抜粋(表紙のみ)」(資料3),「株式会社エスケーアイ株主持ち株数の推移」(資料4)及び「最大関心時の会社への提言や質問」(資料5)を提出している。
1 再三にわたり商標登録をしないさいと進言しても,一向に出願の気配がないので,危機を感じて出願に至ったものである。
2 一株主として,対応する会社の利益を守ろうとしたにすぎず,会社に特許の先願性の重要さを認識して欲しかった。
3 商標権が株式会社サイカイホールデングスに帰属することに異存はない。
4 様子見の期間対応が憎らしく,もっと意思疎通に気を使って欲しかった。

第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項柱書の該当性について
申立人の提出した甲各号証及び同人の主張によれば,以下の事実を認めることができる。
(1)商標権者は,本件商標の登録出願前の平成28年9月30日に株式会社エスケ-アイ(申立人)の株主登録をしている(甲2)。
(2)申立人は,平成28年11月10日付け「会社分割による持株会社体制への移行に伴う吸収分割契約締結及び定款変更(商号及び事業目的の一部変更)に関するお知らせ」とする書簡を各株主に対し通知し,その書簡の内容には,「平成29年10月1日(予定)付で,『株式会社サカイホールディングス』に商号を変更する」旨が記載されている(甲3)。
(3)商標権者は,平成29年1月1日付けの「『サカイホールデング』(異議決定注:「サカイホールディングスの誤り,以下同じ。」)の商標登録について」とする書簡を申立人のIR担当宛てに,FAXしており,その書簡の内容として,「◎『サカイホ-ルデング』という社名は商標登録がお済でしょうか。」の記載,また,「何はともあれ,まず出願しましょう。」の記載があり,申立人に対し,「サカイホ-ルデング」の商標出願を促している(甲4)。
(4)商標権者は,平成29年7月5日付け(本件商標の登録査定前)の「商標『サカイホ-ルデングス』譲渡のお伺いについて」とする書簡を申立人代表取締役宛てに郵送している(甲5)。
そして,その書簡の内容として,「・・・商標登録の出願対応がなされず,再三にわたり出願の要請を致しましたが,シビレを切らして自分で出願してしまいました」の記載,また,「・・・私の出願案件をお買い上げ願えないでしょうか。」の記載があり,商標登録出願を行った事実を告知し,申立人に対し,商標権の買取りを促している。
(5)商標権者は,同年7月19日付けの「商標権譲渡伺いのご案内」とする書簡を申立人のIR担当宛てに,FAXし(甲6),さらに同日付けの「商標『サカイホ-ルデングス』譲渡のお伺いについて(その2)」とする書簡を申立人の代表取締役宛てに,郵送しており(甲7),それらの書簡の内容として,「譲渡の条件」が記載され,申立人に対し,「サカイホールディングス」の商標権の買取りを促している。
(6)商標権者は,前記第4の意見書において,「再三にわたり商標登録をしなさいと進言しても、一向に出願の気配がないので、危機を感じて出願に至ったものです。」,「一株主として、対応する会社の利益を守ろうとしたにすきません。会社に特許の先願性の重要さを認識して欲しかった。」及び「商標権が株式会社サイカイホールデングスに帰属することに異存はありません。」旨の意見を述べている。
(7)上記(1)ないし(6)の証拠及び主張を総合的に勘案すれば,商標権者は,申立人の株主の一人であり,申立人の経営に参画しているともいい難く,自己の業務に使用する目的でなく,申立人に買い取らせる目的で本件商標を商標登録出願したといえる。
また,前記第4のとおり,商標権者が提出した意見書からは,本件商標を商標権者が使用していないことは明らかであり,また,近い将来使用する意思がないことも明らかである。
したがって,商標権者は,出願時はもちろん,現在に至るも本件商標を使用する意思はないと認められる。
してみれば,本件商標の登録査定時において,商標権者が本件商標をその指定役務について使用しているか,近い将来使用する意思があったことについて合理的な疑義があり,本件商標は,商標権者が自己の業務に係る役務について使用をする商標ということはできないから,商標法第3条第1項柱書の規定に違反して登録されたものといわざるを得ない。
2 まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第3条第1項柱書の規定に違反してされたものであるから,同法第43条の3第2項により,その登録を取り消すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
異議決定日 2018-04-24 
出願番号 商願2017-8914(T2017-8914) 
審決分類 T 1 651・ 18- Z (W353639)
最終処分 取消  
前審関与審査官 安達 輝幸 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 榎本 政実
山田 正樹
登録日 2017-08-04 
登録番号 商標登録第5969222号(T5969222) 
権利者 平井 武
商標の称呼 サカイホールディングス、サカイ 
代理人 前田 大輔 
代理人 中村 知公 
代理人 伊藤 孝太郎 
代理人 朝倉 美知 

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