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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない W25
管理番号 1339326 
審判番号 取消2016-300634 
総通号数 221 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-05-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2016-09-13 
確定日 2018-04-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第5579343号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5579343号商標(以下「本件商標」という。)は,「MARCHAL」の欧文字を横書きしてなり,平成24年9月14日に登録出願,第25類「スウェットシャツ,パーカー,ブルゾン,ベスト,タンクトップ,ジーンズパンツ,洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,キャミソール,ティシャツ,ロングティシャツ,和服,ナイトキャップ,帽子」を指定商品として,同25年5月2日に設定登録されたものである。
なお,本件審判の請求の登録は,平成28年9月28日である(以下,同登録前3年以内の期間を「要証期間」という場合がある。)。

第2 請求人の主張
請求人は,商標法第50条第1項の規定により,本件商標の指定商品中,第25類「和服,ナイトキャップ,帽子」(以下「取消請求商品」という場合がある。)についての登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証及び甲第5号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,継続して3年以上,日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者によって,その指定商品中の取消請求商品については,一度も使用された事実が存しない。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は,2014年(平成26年)春夏新商品「マーシャルメッシュキャップ」の販売チラシ(乙5,以下「本件販売チラシ」という。)を作成し,一般顧客に配布した旨主張するが,当該販売チラシが,具体的に,いつ,どこで実際に配布されたことを示す証拠は,何ら提出されていない。
仮に,本件販売チラシが実際に一般顧客に配布されたとしても,このような宣伝広告行為のみで,実際の商品が販売されていないのであれば,名目的に商標を使用するかのような外観を呈しているにすぎず,本件商標の使用とはいえない。
(2)被請求人は,被請求人が「グラフィックとウェブのデザイン ミーツデザインスタジオ(以下「ミーツデザインスタジオ」という。)に本件商標を付した商品「キャップ(帽子,以下同じ。)」の製造を依頼し,当該製品が,2015年(平成27年)4月16日にミーツデザインスタジオから被請求人に納品されたと主張し,それを示す証拠として「納品書」(乙6)を提出した。また,本件商標を付した商品「キャップ」の「写真」(乙7)も提出している。
しかしながら,仮に当該主張が事実だったとしても,本件商標を付した「メッシュキャップ」が,実際に販売された事実を示す証拠は何ら提出されていない。
(3)被請求人は,「2013年(平成25年)8月頃から,本件商標を「帽子」に付し,その帽子を被請求人の店舗及び複数のイベント出店会場で販売した」と主張するが,その日付,場所,イベンド名及びイベント主催者すら特定されていない。
また,仮に,2013年(平成25年)8月頃から継続的に本件商標を付した商品「キャップ」を販売しているのであれば,「納品書」(乙6)に記載されている6個という製造数量は,あまりに少なすぎるものであり,不自然である。
当該商品が,単に自己使用目的やノベルティとして使用するために製造されている可能性もある点に鑑みると,当該商品が製造されたことをもって,本件商標が,商品「帽子」について使用されたことを立証するものではない。
(4)被請求人が提出する「被請求人ウェブサイトのプリントアウト」(乙1?乙4)及び2016年(平成28年)8月22日付けの同ウェブサイトのプリントアウト(甲3)によると,第25類との関連では,商品「Tシャツ」しか販売されておらず,商品「帽子」は販売されていない。
3 口頭審理陳述要領書(平成29年5月2日付け)
(1)被請求人は,口頭審理陳述要領書(第2頁及び第3頁)において,「本件販売チラシ(乙5)を1部作成し,ラミネート加工を施したものを,平成26年2月22日(土)及び23日(日)の二日間にわたってパシフィコ横浜で開催されたイベント『Nostalgic 2days(ノスタルジックツーデイズ)』のイベントブースで展示した」,「イベント終了後は,被請求人の店舗・・・で受注販売のために本件販売チラシを展示していた」旨主張している。
「チラシ」とは,一般的には複数部作成され,配布されるものを指すことや,被請求人が,審理事項通知書において,チラシの「頒布」に関する情報を求められた途端,「配布」から「展示」へと主張を変更したことも併せて考慮すると,上記「展示」の事実の存在自体,疑わしいといわざるを得ない。
また,陳述書(乙8)は,被請求人自身によるものにすぎず,被請求人からは,本件販売チラシが受注販売目的で「展示」されたことを客観的に示す証拠は何ら提出されていない。
さらに,被請求人の陳述書(乙8)において,被請求人の代表取締役は,本件販売チラシをラミネート加工したものを,イベント終了後約10か月,被請求人の店舗内に展示していたと述べている。
しかしながら,本件販売チラシの大きく目立つ場所に,「2014SPRING」と記載されている点及び「メッシュキャップ」との記載から,本件販売チラシに掲載されている商品「キャップ」は,明らかに春夏物の素材であるメッシュ素材によって製造されているものと予測できる点からも,本件販売チラシをラミネート加工したものが,イベント終了後約10か月も,被請求人の店舗内に展示されていたと信じることができない。
なお,被請求人顧客の陳述書(乙13)によると,当該顧客は,本件販売チラシが被請求人の店舗に展示されていたことを記憶しており,商品の注文に至ったとされているため,本件販売チラシをラミネート加工したものが当時存在していたことを立証できない限り,後述の商品の販売の事実の真偽も疑わしい。
(2)被請求人は,答弁書において,納品書(乙6)について,「商品『MARCHALメッシュキャップ』の製造委託先が発行した当該商品の納品書である」と主張しており,該納品書に記載の商品の態様を明らかにすべく,新たに陳述書(乙9),請求書(乙10)及び領収書(乙11)を提出している。
しかしながら,陳述書(乙9)において,製造委託先とされているミーツデザインスタジオの代表者が,「メッシュキャップ」のデザイン,色,及び発注の個数も含めて,約2年も前の取引のことをここまで詳細に記憶しているのは不自然である。
また,被請求人は,「ミーツデザインスタジオヘの依頼は電話で行った」と主張するが,このような商品のデザインに係る注文を,電話のみで行うのは不自然である。
さらに,平成27年4月30日付けの請求書(乙10)の「概要」において「メッシュキャップ」としか記載されておらず,同年5月9日付け領収証(乙11)においては「作業代」としか記載されていないため,これらは,本件に関するものであるのかを把握することができない。
(3)被請求人は,「平成27年3月初旬に,被請求人の店舗において,本件販売チラシに掲載されている商品を顧客に販売し,平成27年4月末に,同店舗において,当該商品を当該顧客に納品した」及び「平成27年12月にも同商品を販売した」と主張し,これを示す証拠として領収書(乙12及び乙14)及び陳述書(乙13)を提出している。
しかしながら,被請求人が当該商品を購入した顧客に対して発行したと主張する平成27年3月9日付け及び同年12月21日付けの領収証(乙12及び乙14)には,発行者が記載されていないため,これらの書類によっては,被請求人が当該商品をこれらの顧客に販売したことを立証できない。
また,陳述書(乙13)は,本件販売チラシに掲載の商品を購入したとされる顧客の陳述書であるが,約2年も前のことを,購入時期や値段も含め,ここまで正確に記憶しているのは不自然である。
さらに,領収書(乙14)は,平成27年12月21日付けであり,本件販売チラシに係る商品は受注販売であるとの被請求人の主張を併せて鑑みると,同日付けで顧客に販売したとされる商品は,平成27年4月16日付けの「納品書」(乙6)に記載の製造委託された6個に含まれるものではない。
4 上申書(平成29年6月27日付け及び平成29年8月31日付け)
(1)本件販売チラシの展示の有無について
被請求人は,平成26年2月22日(土)及び23日(日)にパシフィコ横浜で開催されたイベント「第6回Nostalgic 2days」に,「マーシャルジャパン」の屋号で出店したことを示す証拠として,株式会社芸文社ウェブサイト(乙16?乙18,乙23及び乙24)及び被請求人ウェブサイト(乙25及び乙26)を提出し,当該イベント出展時とする写真(乙19ないし乙22)を提出している(乙29)。
しかしながら,上記ウェブサイト(乙16?乙18及び乙23?乙26)には,被請求人が「帽子」を扱っている旨の記述もなければ,そのことを示す写真も掲載されていない。
「Nostalgic 2days 2.22/2014/SAT-23SUN」と記載された看板が写り込んでいる写真(乙19)は,上記イベント時のものであると予想できるとしても,その他の写真(乙20?乙22)は,いつ撮影されたのか不明であり,これらの写真が全て共に撮影されたことを示す証拠は何ら提出されていない。
さらに,被請求人は,「イベント出展時の写真(乙22)に,本件販売チラシが写りこんでいる」旨主張するが,当該写真は明瞭ではなく,机に置かれた書類上に「帽子」が描かれていることも把握できなければ,本件商標が付されていることすら確認できない。
したがって,これまで提出された証拠によっては,被請求人が上記イベントで本件販売チラシを展示したことを立証できていない。
(2)納品書(乙6)記載の商品の態様について
被請求人は,本件販売チラシに記載の商品と,同じデザインの商品が初めて製造された際の,商品の発注仕様を示す書類を提出すべきであるはずにもかかわらず,これを提出していない。
また,被請求人がこれまでに提出したいずれの証拠によっても,被請求人からの注文にしたがい,ミーツデザインスタジオが製造した商品の仕様は不明である。
(3)商品の製造委託先とされているミーツデザインスタジオについて
「納品書」(乙6),「請求書」(乙10)及び「領収書」(乙11)には,「グラフィックとウェブのデザイン ミーツデザインスタジオ」と記載されており,「請求書」(乙10)の概要欄に,「サイト管理・作業」と記載されていることからも,ミーツデザインスタジオは,ウェブサイトの設計・管理を行っているものと推測される。
しかしながら,インターネット検索によると,同社のホームページは,存在しない(甲5)。ウェブサイトの設計・監理を業としながら自社のホームページを有していないというのは,不自然である。
また,ミーツデザインスタジオの代表者の陳述書(乙31)は,同社の事業内容を客観的に示す証拠ではないため,依然として,同社が企業として現実に存在しているのか疑問であり,同社によって作成されたとされる乙各号証の信用性についての疑念を払拭することができない。
以上よりすれば,そもそも同社が企業として有効に存在しているのか疑問であり,ひいては,同社によって作成されたとされる各証拠(乙6及び乙9?乙11)の信用性についても疑問を持たざるを得ない。
(4)被請求人による商品「キャップ」の販売について
被請求人は,平成27年12月にも顧客に商品を販売したと主張するが,顧客に販売したことを示す証拠として提出されているのは,発行者の記載のない領収書(乙14)のみであり,販売の事実を立証する証拠としては不十分である。
さらに,被請求人が顧客に発行したとする領収書(乙12及び乙14)には,発行者が記載されていないことから,被請求人は,これが被請求人の発行によるものであることを示す証拠(例えば,台帳のような本件商品が販売された記録)を提出すべきであり,実際に商品が販売されたのであれば,容易に提出できる資料であるにもかかわらず,提出していないこと自体が,実際には商品を販売していなかったことを示す何よりの証拠である。

第3 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第31号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)被請求人は,主に中古車及び新車オートバイの販売,旧車レストア,修理,カスタムを事業内容とする会社であり,平成20年から本件商標を使用して,4輪車用ヘッドランプや,バイク用ドライビングランプ等を販売している(乙1?乙3)。
加えて,被請求人は,「MARCHAL」ブランドの関連グッズとして,Tシャツやステッカーなどの店頭販売及びオンライン販売を行っているが(乙4),このような関連グッズの一アイテムとして,2013年(平成25年)8月頃から,本件商標を「帽子」に付し,その帽子を販売している。販売場所は,被請求人の店舗(大阪府堺市西区平岡町)及び複数のイベント出展会場である。
ア 本件販売チラシ(乙5)は,被請求人が製作し,一般顧客に配布した2014年春夏新商品「マーシャルメッシュキャップ」のチラシであり,商標「MARCHAL」,「マーシャル」印の商品「キャップ」として「MARCHAL CAP 2014SPRING」及び「マーシャルメッシュキャップ」と表示され,商品「キャップ」の正面に「MARCHAL」の欧文字に係る標章が付されている。
イ 乙第6号証は,被請求人が,当該「MARCHALメッシュキャップ」の製造を委託していた大阪府和泉市伏屋町所在の「グラフィックとウェブのデザイン ミーツデザインスタジオ」からの納品書(写し)である。
納品書の納品日は,平成27年4月16日であり,「概要」に記載されている「メッシュキャップ アソート 9652-01」とは,メッシュキャップ本体を示し,「転写プリント」とは,メッシュキャップ本体に施した被請求人が指定したMARCHAL標章の転写プリント加工を示している。
ウ 乙第7号証は,本件販売チラシに掲載の商品「MARCHAL CAP(マーシャルメッシュキャップ)」の現物の写真であり,帽子の正面に「MARCHAL」の標章が付されている。
被請求人が販売する商品「キャップ」に付されている「MARCHAL」の標章は,本件商標と社会通念上同一の範囲内にあることは一見して明らかである。
エ 以上よりすると,当該商品「キャップ」は,2014年(平成26年)に本件販売チラシに掲載され,本件商標と社会通念上同一の標章が付され,少量ながらも,平成27年4月16日に当該商品の製造委託先から被請求人に納品され,被請求人により,被請求人の本社やイベント出展会場で一般顧客に販売された。
2 口頭審理陳述要領書(平成29年4月18日付け)
(1)陳述書(乙8)に記載のとおり,被請求人の代表取締役は,本件販売チラシ(乙5)を1部作成し,ラミネート加工を施したものを,平成26年2月22日(土)及び23日(日)の二日間にわたって,神奈川県横浜市西区みなとみらいに所在するパシフィコ横浜で開催されたイベント「Nostalgic 2days(ノスタルジックツーデイズ)」のイベントブースで展示した。
(2)ミーツデザインスタジオの代表者は,被請求人の依頼を受けて,実際に「MARCHALメッシュキャップ」の製作を請け負った人物であり,本件販売チラシ及び写真(乙7)に掲載された態様の商品を製作し,これを被請求人店舗に持参し,納品書(乙6)とともに納品したことを確認している(乙9?乙11)。
(3)上記(1)に記載のとおり,被請求人は,平成26年2月22日(土)及び23日(日)の二日間にわたってパシフィコ横浜で開催されたイベント「Nostalgic 2days(ノスタルジックツーデイズ)」に出店し,その際,ラミネート加工を施した本件販売チラシを,イベント期間中,自社のイベントブースにおいて,当該チラシに掲載した「MARCHALメッシュキャップ」を受注販売する目的で展示した。
しかしながら,イベント期間中,同商品の受注はなく,イベント終了後は,被請求人の店舗で,受注販売のために,本件販売チラシを展示していた。
平成27年3月初旬,上記店舗にて,顧客より,本件販売チラシにみられる青色に白プリントの「MARCHALメッシュキャップ」の購入希望があり,当該商品は受注販売の商品であったことから,顧客に説明の上,前金として商品代(2,900円)を現金で受領し,平成27年4月末,同店舗にて,商品を顧客に納品した(乙12及び乙13)。
さらに,本件商標を付した「MARCHALメッシュキャップ」は,平成27年12月にも販売された(乙14)。
(4)「MARCHALメッシュキャップ」の写真(乙7)は,平成27年4月頃に,被請求人会社の従業員によって,被請求人の店舗において撮影されたものである(乙27)。
(5)請求人の主張に対して
請求人は,「本件販売チラシが実際に一般顧客に配布されたとしても,このような宣伝広告行為のみで,実際の商品が販売されていないのであれば,名目的に商標を使用するかのような外観を呈しているにすぎず,本件商標の使用とはいえない」旨主張し,また,「『納品書』(乙6)に記載されている6個という製造数量はあまりに少なすぎるものであり,不自然である。」と主張する。
しかしながら,被請求人は,平成20年から,商標「MARCHAL」を使用して,4輪車用ヘッドランプやバイク用ドライビングランプ等を販売しており(乙1?乙3),これら「MARCHAL」ブランドの人気上昇とともに,「MARCHAL」ブランドの関連グッズとしてTシャツやステッカー等の店頭販売及びオンライン販売を行っており(乙4),「帽子」についても関連グッズの一アイテムとして,少量ながらも本件商標を付して販売している。
少量であっても商取引にかわりはなく,対価を得て商品を譲渡している以上(乙12,乙14),被請求人が,本件商標を付した帽子「MARCHALメッシュキャップ」を販売する行為は,商標法第2条第3項第2号の行為に該当する。
また,被請求人が,販売チラシ(乙5)をイベント「Nostalgic 2days(ノスタルジックツーデイズ)」のイベントブース及び被請求人の店舗において受注販売のために展示した行為は,商品に関する広告ないし価格表に本件商標を付して展示する行為であり,商標法第2条第3項第8号の行為に該当する。
3 上申書(平成29年6月6日付け)
(1)本件販売チラシ(乙5)の作成日に関する証拠
本件販売チラシの電子データのプロパティ(乙15)には,「作成日時:2014年2月20日,18:16:43」と記載されており,少なくとも同日時には当該チラシが存在していたことを示している。
(2)本件使用販売チラシが展示された事実を示す証拠
被請求人は,平成26年2月22日(土)及び23日(日)の二日間にわたって,パシフィコ横浜で開催されたイベント「第6回Nostalgic 2days(ノスタルジックツーデイズ)」に,「マーシャルジャパン」の屋号で出展した(乙16?乙18)。
ア 乙第16号証は,イベント「Nostalgic 2days(ノスタルジックツーデイズ)」の運営会社である株式会社芸文社のウェブサイトにおける「第6回Nostalgic 2days」の紹介ページであり,当該イベントが,平成26年2月22日(土)及び23日(日)の二日間にわたって,パシフィコ横浜で開催された事実が示されている。
イ 乙第17号証は,株式会社芸文社のウェブサイトの「第6回Nostalgic 2days」の出展社情報でアップされている近畿エリア出展社リストであり,乙第18号証は,同リストに添付されている会場レイアウトである。
被請求人は,これら出展社リスト及び会場レイアウトに,自社の主力ブランド「MARCHAL」の事業展開に使用している「マーシャルジャパン」の屋号で記載されている。
「マーシャルジャパン」が被請求人の屋号の一つであることは,被請求人が「Marchal Japan」の名前で,「MARCHAL」ブランドの専用サイト「MARCHAL JAPAN OFFICIAL WEB STORE」を運営している事実(甲3,乙1?乙4及び乙17)に記載されている「マーシャルジャパン」の住所が,被請求人住所と同一であることから明らかである。
よって,被請求人が当該イベントに出展した事実は明白である。
ウ 被請求人がイベントに出展した際の写真(乙19)には,イベント会場入り口が写り込んでおり,当該イベントの開催日時が確認できる(乙29)。
イベント時の被請求人のブースの様子を撮影した写真(乙20?乙22)には,ブース内に設置されたテーブルの上に展示された本件販売チラシが写り込んでいるから,本件販売チラシが,商品販売のためにブースに展示されたことは明らかである(乙29)。
さらに,株式会社芸文社のウェブサイトでは,毎年開催されるイベント「Nostalgic 2days」の報道向け告知ページにおいて,前年度のイベントの写真(乙23)が掲載されているところ,当該写真は,平成27年2月28日と3月31日に開催された「第7回Nostalgic 2days」のイベントの報道向け告知ページに掲載された写真であり,前年の平成26年2月22日(土)及び23日(日)に開催された「第6回Nostalgic 2days」のイベント会場が写り込んでいる(乙24)。
さらに,被請求人ウェブサイトのブログにおいても,2014年2月21日,同年2月28日及び同年3月1日付で,被請求人が,当該イベントに出展した事実が掲載されている(乙25及び乙26)。
エ 以上の証拠から,被請求人が,上記イベントのブースにおいて,「マーシャルメッシュキャップ」の販売のための広告として,本件商標を付した本件販売チラシを展示した事実は明らかである。
(3)平成27年12月の商品販売の経緯
被請求人は,本件商標を付した「MARCHALメッシュキャップ」を平成27年12月にも販売しており,販売時の「領収書(控)」(乙14)を提出する。この販売経緯については,当該領収書のとおり,「MARCHALメッシュキャップ」を販売したが,これは受注販売ではなく,平成27年初旬に別の顧客から「MARCHALメッシュキャップ」1個の発注を受けた際に,発注数より多い数の「MARCHALメッシュキャップ」をミーツデザインスタジオに製造依頼していたため,在庫として店舗に置いていたものを販売したものである。

第4 当審の判断
1 本件商標権者について
本件商標権者は,主に中古車及び新車オートバイの販売,旧車レストア,修理,カスタムを事業内容とする会社であり,平成20年から本件商標を使用して,自動車ヘッドランプや,バイク用ドライビングランプ等を販売している(乙1?乙3)。
そして,本件商標権者は,そのウェブサイトにおいて,黒い猫の顔と「MARCHAL」及び「MARCHAL JAPAN OFFCIAL WEB STORE」の見出しと,ショップ紹介として「マーシャルジャパン」の記載の下,自動車用品のほか,ステッカー及びTシャツ等を販売している(乙2?乙4,甲3)。
2 商品「帽子」係る本件商標の使用について
(1)本件商標権者は,2014年(平成26年)春夏新商品「マーシャルメッシュキャップ」の販売チラシ(本件販売チラシ,乙5)を,同年2月20日に(乙15)作成したものであり,当該チラシには,前面が白色でその他の部分がイエロー,ブルー,レッド,ブラック等9色の商品「キャップ」の絵柄が掲載され,サイズ,販売価格等が記載されている。
そして,これらの商品「キャップ」の前面には,黒い猫の顔と旗をデザインした図形と,その下に,横長長方形の中に「S.E.V.」の欧文字及び記号と「MARCHAL」の欧文字が白抜きで表されている。
(2)2015年(平成27年)4月16日付けの「グラフィックとウェブのデザイン ミーツデザインスタジオ」から本件商標権者に宛てた「MARCHALメッシュキャップ」の「納品書」(乙6)には,その「概要」の項に「メッシュキャップ アソート 9652-01」及び「転写プリント」の記載,「数量」の項に,いずれも「6個」の記載,及び「お支払い口座」が記載されている。
なお,ミーツデザインスタジオの代表者の陳述書(乙9)によれば,当該代表者が本件商標権者に納品した商品「キャップ」は,青,赤及び黒を各2個ずつの合計6個であった。
(3)「マーシャルメッシュキャップ」の写真(乙7)には,前面が白色でその他の部分がブルーの商品「キャップ」が写されており,当該商品の前面には,黒い猫の顔と旗をデザインした図形と,その下に,横長長方形の中に「S.E.V.」の欧文字及び記号と「MARCHAL」の欧文字が白抜きで表されている。
そして,当該商品は,本件商標権者の本件販売チラシに掲載された9色のキャップの絵柄のうちのブルーのキャップということができる。
なお,「マーシャルメッシュキャップ」の写真(乙7)は,2015年(平成27年)11月28日に撮影されたものである(乙27)。
(4)上記(1)ないし(3)によれば,本件商標権者は,2014年(平成26年)春夏新商品として,「MARCHAL」の欧文字を表示した9色のキャップの販売に関するチラシ(本件販売チラシ)を作成したものであり(乙5),当該チラシに掲載された9色の商品「キャップ」のうち,青,赤及び黒の各2個は,2015年(平成27年)4月16日に,ミーツデザインから本件商標権者に納品された(乙6及び乙9)。
そして,要証期間に含まれる同年11月28日に撮影されたブルーの商品「キャップ」の前面に表示された「MACHAL」の欧文字(乙7)は,本件商標と社会通念上同一のものと認められる。
そうすると,本件商標権者は,要証期間に含まれる2015年(平成27年)11月28日に,日本国内において,取消請求商品に含まれる商品「キャップ」に,本件商標と社会通念上同一である「MARCHAL」の欧文字を付したものと認められる。
本件商標権者による上記行為は,取消請求商品中,第28類「帽子」に含まれる商品「キャップ」について,商標法第2条第3項第1号にいう「商品に標章を付する行為」に該当するものである。
3 商品「帽子」の広告に係る本件商標の使用について
(1)本件商標権者は,上記2(1)のとおり,本件販売チラシを,2014年2月20日に作成した(乙5,乙15)。
(2)株式会社芸文社のウェブサイト(乙16)には,「第6回 Nostalgic 2days」について,「開催概要」が掲載されており,「会期」の項には「2014年2月22日(土),23日(日)の2日間」,「会場」の項には「パシフィコ横浜 展示ホール(C・D)」及び「主催」の項には「株式会社芸文社 Nostalgic 2days 事務局」の記載がある。
そして,「ノスタルジック2デイズ」の「第6回 出展社情報」のウェブサイト(乙17)の2葉目には,「マーシャルジャパン」について,「S.E.V.MARCHAL」の表示の下,赤い車体の車を含む3台の自動車の写真が掲載され,「猫マークでお馴染みのマーシャルヘッドライトを販売。」の記載と,本件商標権者と同一の住所等が記載されており,また,「会場レイアウト(PDF)」(乙18)によれば,「会場案内図 展示ホールC・D」の中程に「マーシャルジャパン」の記載がある。
上記1のとおり,本件商標権者は,商品の販売に関して,「MARCHAL」,「MARCHAL JAPAN」及び「マーシャルジャパン」の文字を使用していること,並びに上記「ノスタルジック2デイズ」の「第6回 出展社情報」には,「マーシャルジャパン」の記載とともに本件商標権者と同一の住所等が記載されていることからすると,当該会場レイアウトに記載された「マーシャルジャパン」の展示ブースは,本件商標権者のものといえる。
(3)株式会社芸文社のウェブサイト(乙24)には,「第7回 Nostalgic 2days」について,「イベント概要」が掲載されており,その1葉目の最下部分には4枚の写真が掲載され,そのうちの最右側の写真は,乙第23号証に示された写真とは,縮尺が異なるものの同じものということができる。
そこで,写真(乙23)をみるに,当該写真の中程には,「MARCHAL」と表示された黄色い旗が立てられた展示ブースが確認でき,その横には,車体の色が緑色で屋根の部分が白い色の自動車が展示されていること,その奥には,赤い車体の自動車が表示された看板らしきものが展示されていることが確認できる。
そして,当該「MARCHAL」と表示された黄色い旗が立てられた展示ブースの通路を挟んだ右側には,「STAR ROAD」と書された青色の大きな看板等による「STAR ROAD & WORK」の展示ブースがあること,当該展示ブースのやや右奥には「RockyAuto」と書された看板等による「ロッキーオート」の展示ブースがあることが確認できる。これらの展示ブースの配置は,「第6回 Nostalgic 2days」の「会場案内図 展示ホールC・D」(乙18)に示された展示ブースの配置と一致する。
(4)本件商標権者のイベント出展時の写真(乙21)には,「MARCHAL」と表示された黄色い旗が立てられたブースが示されており,左下には,車体の色が緑色で屋根部分が白い色の自動車が展示され,その奥には赤い車体の自動車が表示された看板が展示されていること,さらにその奥には商談スペースが設けられていること,また,本件商標権者のイベント出展時の写真(乙22)には,商談スペースと,その右奥に車体の色が緑色の自動車の一部が写されており,中央のテーブルの上には,不鮮明ながら,複数の色彩を有するチラシと思しきものが写っていることが確認できる。
(5)そうすると,株式会社芸文社のウェブサイト(乙24)に掲載された写真(乙23),及び本件商標権者のイベント出展時の写真(乙21及び乙22)は,写されている緑色の自動車及び赤い車体の自動車の看板の位置関係並びに展示ブースの配置が,「会場案内図」(乙18)に示された展示ブースの配置と一致するから,2014年2月22日(土),23日(日)の2日間開催された,「第6回 Nostalgic 2days」の「パシフィコ横浜 展示ホール(C・D)」内を撮影したものということができる。
(6)被請求人が提出した平成27年3月9日付けの領収書(控)(乙12)には,顧客名,「¥2,900」及び「マーシャルキャップ代」の記載がある。
そして,上記顧客の陳述書(乙13)によれば,当該顧客は,本件商標権者が経営する店舗に展示されていたことのある本件販売チラシにより,平成27年3月頃,店舗にてブルーの商品「キャップ」を注文し,商品代金2,900円を支払い,商品は,同年4月頃に店頭にて受け取ったものである。
そうすると,上記領収証(乙12)は,本件商標権者が,平成27年3月9日に,これに記載した顧客宛てに発行した「マーシャルキャップ代」についての「領収書」の「控」ということができる。
(7)上記(1)ないし(6)によれば,以下のように判断できる。
ア 本件商標権者は,2014年(平成26年)2月20日に,2014年春夏新商品「マーシャルメッシュキャップ」の本件販売チラシを作成したものであり,当該チラシの上部に表示された「MARCHAL」の欧文字は,本件商標と社会通念上同一のものと認められる。
イ 本件商標権者は,2014年(平成26年)2月22日及び23日に開催された「Nostalgic 2days」の「パシフィコ横浜展示ホール(C・D)」に出展し(上記(2)及び(3)),その出展ブースの内部に設けられた商談スペースのテーブルの上に,不鮮明ながら,複数の色彩を有するチラシと思しきものを置いていたということができる。
そして,被請求人は,「本件販売チラシを1部作成し,ラミネート加工を施したものを,平成26年2月22日(土)及び23日(日)の二日間にわたってパシフィコ横浜で開催されたイベント『Nostalgic 2days(ノスタルジックツーデイズ)』のイベントブースで展示した」旨述べ,写真(乙22)について,「ブース内に設置されたテーブル上で本件販売チラシが展示されている様子が写り込んでおり,本件販売チラシは『MARCHAL』の商標を付した帽子の広告である」旨主張している。
そこで検討するに,写真(乙22)に写されたテーブルの中程に置かれたチラシのように,やや大きく黄色様の色彩と,その下に,これに比べて小さく,異なる色彩を4色ずつ上下2段に表された構成のチラシは,本件販売チラシの構成と同じくするものということができる。
そうすると,本件商標権者は,要証期間に参加したイベント(Nostalgic 2days ノスタルジックツーデイズ)において,本件販売チラシを展示したものと推認できる。
エ 本件商標権者の本件販売チラシに掲載されたブルーの商品「キャップ」は,要証期間である平成27年3月9日に,顧客から本件商標権者に注文されて代金が支払われ,その後,同年4月頃,本件商標権者の店頭にて顧客に引き渡されたものである。
オ 上記のとおり,要証期間に含まれる2014年(平成26年)2月22日及び23日に,日本国内において,本件商標権者が,取消請求商品中,第28類「帽子」に含まれる商品「キャップ」の販売に関する広告に,本件商標と社会通念上同一である「MARCHAL」の欧文字を付して展示したものと認められる。
本件商標権者による上記行為は,取消請求商品中,第28類「帽子」に含まれる商品「キャップ」について,商標法第2条第3項第8号にいう「商品に関する広告に標章を付して展示する行為」に該当するものである。
4 請求人の主張について
請求人は,「乙第22号証に係る写真は明瞭ではなく,机に置かれた書類上に『帽子』が描かれていることも把握できなければ,本件商標が付されていることすら確認できない。」及び「被請求人提出に係る証拠によっては,被請求人が同イベントに参加したことは推測できたとしても,同イベントにおいて,本件販売チラシを展示したことが立証されていない。」旨主張する。
しかしながら,イベント出展時の写真(乙22)は,不鮮明ではあるものの,その中央のテーブルには,中程に,やや大きく黄色様の色彩が表され,その下には,これに比べて小さく,異なる色彩が4色ずつ上下2段に表されたものが,置かれており,かかる構成及び被請求人の「写真(乙22)には,ブース内に設置されたテーブルの上に展示された本件販売チラシが写り込んでいる」旨の被請求人の主張を考慮すれば,中央のテーブルには,「マーシャルキャップ」の本件販売チラシが置かれていたものとみて差し支えないものである。
そして,上記イベントの参加者は,本件商標権者のブースにおいて,本件販売チラシをみることができたものであるから,本件商標権者は,要証期間に参加したイベント(Nostalgic 2days ノスタルジックツーデイズ)において,本件販売チラシを展示したものと認められる。
5 まとめ
以上のとおり,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,本件商標権者が,その請求に係る指定商品について,本件商標(社会通念上同一の商標を含む。)の使用をしていたことを証明したと認められる。
したがって,本件商標の登録は,その指定商品中,第25類「和服,ナイトキャップ,帽子」について,商標法第50条の規定により,取り消すことはできない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2017-10-30 
結審通知日 2017-11-02 
審決日 2017-11-27 
出願番号 商願2012-74877(T2012-74877) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (W25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 晃弘 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 田中 亨子
平澤 芳行
登録日 2013-05-02 
登録番号 商標登録第5579343号(T5579343) 
商標の称呼 マーシャル 
代理人 青木 博通 
代理人 青島 恵美 
代理人 柳生 征男 
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所 
代理人 中田 和博 

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