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審決分類 |
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W35 |
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管理番号 | 1337202 |
審判番号 | 取消2016-300890 |
総通号数 | 219 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2018-03-30 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2016-12-19 |
確定日 | 2018-01-25 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5564359号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第5564359号商標の指定役務中、第35類「コンピュータデータベースへの情報編集」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5564359号商標(以下「本件商標」という。)は、「エフアイエス」の片仮名を標準文字で表した構成からなり、平成24年7月31日に登録出願、「コンピュータデータベースへの情報編集」を含む第35類及び第36類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同25年3月8日に設定登録されたものである。 なお、本件審判の請求の登録日は、平成29年1月10日であり、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、同26年1月10日ないし同29年1月9日である(以下「要証期間」という。)。 第2 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書及び弁駁書において、その理由を要旨次のように述べ、甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、その指定役務中、第35類「コンピュータデータベースへの情報編集」について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により、その登録は取り消されるべきものである。 2 答弁に対する弁駁 被請求人(商標権者)は、答弁書において、被請求人の関連会社である株式会社FISが、本件商標の通常使用権者として、本件商標に類似する商標「FIS」を、第35類「コンピュータデータベースへの情報編集」に使用していると主張している。 しかし、以下に述べるとおり、被請求人が提出した証拠によっては、本件商標に類似する商標「FIS」を、第35類「コンピュータデータベースヘの情報編集」に使用しているとは認められない。 (1)辞書によれば、「編集」とは、「資料をある方針・目的のもとに集め、書物・雑誌・新聞などの形に整えること。映画フイルム・録音テープなどを一つにまとめることにもいう。」とされており(甲3)、また、商標法上の「役務」は、「他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たりうべきものをいう。」(甲4)とされている。 これらのことから、「コンピュータデータベースへの情報編集」というのは、独立して商取引の対象となるものであって、「情報をある方針・目的のもとに集め、コンピュータデータベースの形に整えること」を意味すると理解するのが妥当である。 (2)次に、これを被請求人が使用事実を示す証拠として提出した乙第1号証ないし乙第14号証について検討する。 ア 乙第1号証ないし乙第3号証、及び乙第8号証によれば、株式会社FISが被請求人の関連会社であって、企業調査及び信用調査を主たる業務としていることは分かるが、被請求人から通常使用権の許諾を受けているか否かは不明であり、また、本件商標を「コンピュータデータベースへの情報編集」に使用している事実も立証されていない。 イ 乙第4号証ないし乙第7号証として提出された請求書は、いずれも企業調査及び信用調査に関するものであって、第36類「企業の信用に関する調査」、第45類「個人の身元又は行動に関する調査」に該当し、「コンピュータデータベースへの情報編集」には該当しない。 ウ 被請求人は、乙第8号証として、2017年2月10日の株式会社FISの公式ウェブサイトの一部の写しを使用事実として提出しているが、本件審判の予告登録は2016年12月19日であるから(審決注:予告登録日は2017年(平成29年)1月10日)、適法な使用事実とはなり得ない。仮に、乙第8号証の株式会社FISの公式ウェブサイトが本件審判の予告登録前に存在していたとしても(乙9)、乙第8号証に示された事業内容はいずれも「コンピュータデータベースへの情報編集」には該当しないので、使用事実を立証したことにはならない。 エ 被請求人は、乙第10号証ないし乙第12号証によって、乙第8号証に示した株式会社FISの公式ウェブサイトを維持するために必要なドメイン名を更新した事実を証明し、また、乙第13号証及び乙第14号証によって、株式会社FISの公式ウェブサイトのサーバのレンタル料を支払った事実を証明しているが、そもそも、乙第8号証に示された事業内容はいずれも「コンピュータデータベースへの情報編集」には該当しないので、使用事実を立証したことにはならない。 (3)以上のとおり、被請求人から提出された証拠によっては、要証期間内に、被請求人が、役務「コンピュータデータベースへの情報編集」について、本件商標又はそれと社会通念上同一の商標を使用していたことは証明されていない。 第3 被請求人の主張 被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、と答弁し、答弁書及び回答書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第16号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 答弁の理由 (1)被請求人(商標権者)の通常使用権者である株式会社FISは、本件商標と社会通念上同一商標と認められる商標「FIS」を、第35類「コンピュータデータベースへの情報編集」について、要証期間内に、日本国内において使用した事実がある。 (2)乙第1号証は被請求人(商標権者)である「株式会社ファミリーライフサービス」の履歴事項全部証明書(写し)であり、代表取締役は千葉雄二郎である。乙第2号証は通常使用権者である「株式会社FIS」の履歴事項全部証明書(写し)であり、代表取締役は千葉雄二郎である。よって、両者は代表者を同じとする関連会社である。 また、乙第1号証の目的欄の第3項には「コンピューターソフトウエアの企画・設計・開発・販売業、及びインターネットを利用した各種情報提供サービス業」とあり、乙第2号証の目的欄の第3項には「コンピューターシステムによる企業情報の分析管理および提携業務」とあり、両者は代表者が同じで共通の第35類「コンピュータデータベースへの情報編集」業務を目的としている。 かつ、商標権者の目的欄の変更の設定日と株式会社FISの設立の登記日が同じ平成24年8月7日というのも関連しており、偶然の一致ではない。 よって、株式会社FISは、商標権者である株式会社ファミリーライフサービスの実施許諾の下に通常使用権者として商標「FIS」を使用していたと認められる。 (3)本件商標「エフアイエス」と商標「FIS」は、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって、同一の称呼「エフアイエス」を生じると共に、両者共に特に観念が無いということで同一の観念を有するから、両商標は社会通念上同一の商標と認められる。 (4)乙第3号証は、株式会社FISに対して東京都公安委員会が平成24年8月20日に発行した「探偵業届出証明書(写し)」であり、営業所の名称「株式会社FIS」として現在に至るまで同一の所在地で営業を継続している。 乙第4号証は、株式会社FISが平成26年12月2日に発行した請求書(写し)である。 乙第5号証は、株式会社FISが平成27年1月30日に発行した請求書(写し)である。 乙第6号証は、株式会社FISが平成27年2月20日に発行した請求書(写し)である。 乙第7号証は、株式会社FISが平成28年6月6日に発行した請求書(写し)である。 乙第3号証ないし乙第7号証は、株式会社FISが営業所の名称「株式会社FIS」として、本件商標と社会通念上同一商標と認められる商標「FIS」を、要証期間内に、日本国内において使用した事実を証するものである。 (5)乙第8号証は、2017年2月10日現在の株式会社FISの公式ウェブサイトの一部の写しである。「株式会社FIS」「FISの特徴」「FISの信条」に見られるように商標「FIS」の使用が認められる。これと同じ商標「FIS」が使用された株式会社FISの公式ウェブサイトは乙第9号証の電子メールの写しに記載のように2012年12月10日には既に存在していたことが判る。 また、乙第10号証は、株式会社FISの公式ウェブサイトを維持するために必要なドメイン名を更新した2016年(平成28年)8月2日付けのGMOインターネット株式会社から株式会社FISへの電子メールによる請求明細書(写し)であり、乙第11号証は、2016年(平成28年)8月3日付けのGMOインターネット株式会社から株式会社FISへの電子メールによるドメイン契約更新完了通知(写し)であり、乙第12号証は、2016年(平成28年)8月3日付けの株式会社FISからGMOインターネット株式会社への振込みを証する振込金受取書(写し)である。更新期間は2年間毎である。乙第10号証から乙第12号証により、乙第8号証に示した株式会社FISの公式ウェブサイトは、少なくとも2016年(平成28年)8月2日、3日に至る2年間存在しており、現在に至っていると認められる。 また、乙第13号証は、株式会社FISの公式ウェブサイトのサーバのレンタル料「さくらのレンタルサーバサービス利用料(2016/09/01-2017/08/31)」を支払った際の2016年8月10日付けの電子メールによる請求明細書(写し)であり、乙第14号証は、2016年(平成28年)8月12日付けの株式会社FISからさくらインターネット株式会社への振込みを証する利用明細票(写し)である。この乙第13号証及び乙第14号証により、乙第8号証に示した株式会社FISの公式ウェブサイトは、少なくとも2016年(平成28年)8月10日、12日には存在していたと認められる。 2 回答書(平成29年10月30日付け) (1)株式会社FISが、被請求人(商標権者)の通常使用権者であることは、乙第1号証の被請求人(商標権者)の履歴事項全部証明書(写し)における代表取締役と、乙第2号証の「株式会社FIS」の履歴事項全部証明書(写し)における代表取締役が同一人物の「千葉雄二郎」であり、両社は代表者を同じとする関連会社である点、及び、乙第9号証の株式会社FISのウェブサイトセットアップメール、乙第10号証のドメイン維持更新費に関するメール、乙第13号証のサーバ利用料金に関するメール等において、商標権者が、株式会社FISの公式ウェブサイトのセットアップ、及び継続に直接関与している点からして明白である。 (2)乙第15号証の1は、通常使用権者が営業所の名称「株式会社FIS」として本件商標と社会通念上同一商標と認められる商標「FIS」を、要証期間内の平成27年7月に、請求書に記載して使用した事実を証するものである。 また、乙第15号証の1には、「対象者に係る、公文書のデータ、学校法人のデータ、これらに係わる統計、係数の報告等一式の提供」との記載があり、乙第15号証の3及び4の公文書のデータ、学校法人のデータと合致している。 乙第15号証の2は、乙第15号証の1の請求書の対象として通常使用権者が加工編集して依頼者に提供したコンピュータデータベースであり、その内容は、乙第16号証の3に示す公文書のデータ、学校法人のデータである平成22年度から平成26年度の各年度毎の消費収支計算書のデータベースと、乙第16号証の4に示す公文書のデータ、学校法人のデータである平成22年度から平成26年度の各年度毎の消費収支計算書のデータベースとを、コンピュータにより加工編集して得たデータベースであり、平成22年度(平成23年3月31日)の財産目録と平成26年度(平成27年3月31日)の財産目録とを作成して、5年間の差異を明らかにしたものである。 (3)乙第16号証の1は、通常使用権者が営業所の名称「株式会社FIS」として本件商標と社会通念上同一商標と認められる商標「FIS」を、要証期間内の平成27年2月に、請求書に記載して使用した事実を証するものである。また、請求書には「対象企業に係る関連データ調査」の記載があり、乙第16号証の2の「対象企業の決算推移一覧表」と合致している。 乙第16号証の2は、乙第16号証の1の請求書の対象として通常使用権者が加工編集して依頼者に提供したコンピュータデータベースで、その内容は、依頼者から提供された対象企業の決算推移一覧表を加工して不正受給したと思われる調査結果を依頼者に提供したものである。 (4)以上のとおり、被請求人(商標権者)の通常使用権者である株式会社FISは、本件商標「エフアイエス」と社会通念上同一商標と認められる商標「FIS」を、第35類「コンピュータデータベースへの情報編集」について、要証期間内に、日本国内において使用した事実がある。 (5)通常使用権者は、依頼者からの信頼を得るため秘密保持を最大の武器とする探偵業であることから、公開できるデータは殆ど無いのが実情であり、証拠を提出しなければ取り消されてその業務が出来なくなる、あるいは制限されるということでは、善意の登録商標使用者である商標権者に対して第3者が使用していないと申し立てるだけで取り消されてしまうのでは、不使用取消審判の趣旨に反する。 第4 当審の判断 1 被請求人が提出した証拠 (1)履歴事項全部証明書について 乙第1号証及び乙第2号証は、被請求人及び株式会社FISの「履歴事項全部証明書」であり、それぞれの「役員に関する事項」欄には代表取締役として「東京都東村山市富士見町三丁目26番地69/千葉雄二郎」の記載がある。 (2)乙第3号証について 乙第3号証は、株式会社FISの「探偵業届出証明書」である。 (3)請求書について ア 乙第4号証は、株式会社FISが平成26年12月2日に発行した「請求書」であり、右上に「株式会社 F I S」の記載があり、「摘要」欄には、「1 実態調査一式/(1)信用に係る調査/(2)コンプライアンス調査及び簡易コンプライアンス調査/(3)関係企業及び関係者の調査」と記載されている。 イ 乙第5号証は、株式会社FISが平成27年1月30日に発行した「請求書」であり、右上に「株式会社 F I S」の記載があり、「摘要」欄には、「1 信用調査(1件)/コンプライアンスに係る資料の入手/2 諸経費/本調査に関する諸経費は、一切前記費用に含むものとします。」と記載されている。 ウ 乙第6号証は、株式会社FISが平成27年2月20日に発行した「請求書」であり、右上に「株式会社 F I S」の記載があり、「摘要」欄には、「1 信用調査(1件)/(1)コンプライアンス調査一式/(2)その他諸経費(実費)」と記載されている。 エ 乙第7号証は、株式会社FISが平成28年6月6日に発行した「請求書」であり、右上に「株式会社 F I S」の記載があり、「摘要」欄には、「1 情報調査(内偵、取材調査)/(1)調査費用(諸経費一切含みます)」と記載されている。 オ 乙第15号証の1は、株式会社FISが平成27年7月に発行した「請求書」であり、右上に「株式会社 F I S」の記載があり、「摘要」欄には、「1 実態調査(個人2名)/(1)実態調査一式/対象者に係る、公文書のデータ、学校法人の公知のデータ/これらに係る統計、係数の報告等一式の提供」と記載されている。 カ 乙第16号証の1は、株式会社FISが平成27年2月に発行した「請求書」であり、右上に「株式会社 F I S」の記載があり、「摘要」欄には、「1 信用調査(1件)/(1)対象企業に係る関連データ調査一式/諸経費」と記載されている。 (4)乙第8号証について 乙第8号証は、被請求人が平成29年2月10に印刷した株式会社FISの「公式ウェブサイト」である。 これには、会社概要として、「設立」欄に、「平成24年8月7日『新たに設立した会社ですが、昭和55年から調査業務に携わった社員を中心に全社員が各調査業務のスペシャリストです。』」、「事業内容」欄に、「1.企業調査及び信用調査業務」、「2.社会・経済界の動向及び情報の収集・提供」、「3.コンピューターシステムによる企業情報の分析管理および提携業務」及び「4.企業経営上の各種リスクの調査、分析の受託ならびにリスクの評価、およびリスク回避の相談受託(個人様のご依頼もお受けします。)」と記載されている。 (5)乙第15号証の2について 乙第15号証の2は、請求書(乙15の1)の対象として依頼者に提供した「財産目録の差異データベース」とされるものであるところ、これには、「ホームページに開示されている『事業報告』上の内訳」のタイトルの下(一部黒塗りされている)、左右に分かれた平成23年3月31日及び平成27年3月31日の「科目」と「金額」が表形式でまとめられた「財産目録」とその金額の差異が右端にそれぞれ表示されている。 (6)乙第16号証の2について 乙第16号証の2は、請求書(乙16の1)の対象として依頼者に提供したコンピュータデータベースとされるものであるところ、これには、「対象企業の決算推移一覧表」のタイトルの下、売上高合計、流動資産合計、固定資産合計等の項目からなる表が表示されている(表の記載内容は、そのほとんどが黒塗りされている)。 2 判断 (1)使用者について 被請求人は、要証期間内に通常使用権者である株式会社FISが本件商標と社会通念上同一の商標「FIS」を使用していると主張している。 そして、前記1(1)のとおり、被請求人と株式会社FISの、それぞれの代表取締役は同一人物であることから、両者間で黙示の使用許諾があったものとみて、上記主張のとおり、株式会社FISを本件商標に係る通常使用権者と認めて差し支えないものである。 (2)使用役務について 前記1(2)のとおり、株式会社FISは、探偵業を営む法人であり、証拠として提出した「請求書」(乙4?乙7、乙15の1、乙16の1)の記載内容及び「公式ウェブサイト」(乙8)の記載内容から判断すれば、同人は、探偵業に係る企業調査又は信用調査等の調査業務を行っていたことが推認できる。 しかしながら、これらの証拠からは、株式会社FISが、取消請求役務である「コンピュータデータベースへの情報編集」の役務を提供していた事実を確認することができないばかりか、探偵業を営む者が、その業務と併せて該「コンピュータデータベースへの情報編集」の役務を提供することが一般的に行われているなどの事情も見いだせない。 (3)社会通念上同一の商標の使用について 株式会社FISが発行した「請求書」には、「株式会社 F I S」の記載があり、ローマ字部分は1文字ずつ間隔が空いているため、「エフ」、「アイ」、「エス」と1文字毎のローマ字に沿った読み方で称呼されるものといえる。 そして、本件商標「エフアイエス」は、ローマ字の「F」、「I」及び「S」の読み方を一連に片仮名表記したものと容易に理解されるものである。 してみれば、「株式会社 F I S」の表示中、自他役務の識別標識としての機能を発揮する「F I S」の文字と、本件商標「エフアイエス」の文字は、ローマ字及び片仮名の文字の表示を相互に変更するものであって、同一の「エフアイエス」の称呼を生ずるものである。 また、「F I S」と「エフアイエス」は、いずれも、特定の観念を生ずることのない造語とみるべきであるから、観念において相違するものではない。 そうすると、「F I S」と「エフアイエス」は、社会通念上同一の商標といえるものであり、同請求書には、本件商標と社会通念上同一の商標が使用されていると認められる。 (4)使用時期について 本件商標と社会通念上同一の商標が使用された「請求書」(乙4?乙7、乙15の1、乙16の1)の発行日は、前記1(3)のとおり、平成26年12月2日ないし同28年6月6日であり、同期間に、株式会社FIS(通常使用権者)がその業務に係る取引書類(請求書)に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用したものということができ、これは要証期間内である。 (5)まとめ 以上のとおり、通常使用権者(株式会社FIS)が、要証期間内に本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたといえるものの、その使用は、探偵業に係る調査業務についての使用であって、取消請求役務である「コンピュータデータベースへの情報編集」についての使用とは認められない。 その他、通常使用権者(株式会社FIS)が、「コンピュータデータベースへの情報編集」について本件商標の使用をしたと認めるに足りる証拠はない。 (6)被請求人の主張について ア 被請求人は、「乙第15号証の2は、乙第15号証の1の請求書の対象として通常実施権者が加工編集して依頼者に提供したコンピュータデータベースであり、・・・乙第16号証の2は、乙第16号証の1の請求書の対象として通常実施権者が加工編集して依頼者に提供したコンピュータデータベースで・・・通常使用権者である株式会社FISは、本件商標『エフアイエス』と社会通念上同一商標と認められる商標『FIS』を、第35類『コンピュータデータベースへの情報編集』について、要証期間内に、日本国内において使用した事実がある。」旨を主張している。 しかしながら、「データベース」とは、「系統的に整理・管理された情報の集まり。特にコンピューターで、さまざまな情報検索に高速に対応できるように大量のデータを統一的に管理したファイル。また、そのファイルを管理するシステム。」(広辞苑第6版 株式会社岩波書店)を意味する外来語であり、特に「コンピュータデータベース」といった場合は、上記意味合いにおけるファイル又はシステムを表すものといえるところ、上記請求書の対象として提供したとする乙第15号証の2及び乙第16号証の2は、調査結果の報告として表形式にまとめられた「財産目録」や「対象企業の決算推移一覧表」にすぎず、これ自体を「コンピュータデータベース」と認めることができないことから、「コンピュータデータベース」を提供したとはいえないばかりか、上記「請求書」の対象として依頼者に提供した調査報告をもって「コンピュータデータベースへの情報編集」の役務を提供したとみることはできない。 イ また、被請求人は、「通常使用権者は、依頼者からの信頼を得るため秘密保持を最大の武器とする探偵業であることから、公開できるデータは殆ど無いのが実情であり、証拠を提出しなければ取り消されてその業務が出来なくなる、あるいは制限されるということでは、善意の登録商標使用者である商標権者に対して第3者が使用していないと申し立てるだけで取り消されてしまうのでは、不使用取消審判の趣旨に反する。」旨を主張している。 しかしながら、商標法第50条に規定する不使用取消審判の趣旨は、一定期間登録商標の使用をしない場合には保護すべき信用が発生しないかあるいは発生した信用も消滅してその保護の対象がなくなると考え、他方、そのような不使用の登録商標に対して排他独占的な権利を与えておくのは国民一般の利益を不当に侵害し、かつ、その存在により権利者以外の商標使用希望者の商標の選択の余地を狭めることとなるから、請求をまってこのような商標登録を取り消そうというものであって、商標の使用をしていることを容易に証明することができる被請求人たる商標権者に、商標の使用の挙証責任を負わせることとしたものである(商標法第50条第2項)。 そして、被請求人は、取消請求役務である「コンピュータデータベースへの情報編集」について、本件商標の使用をしていることを証明していない。 よって、被請求人の主張は、いずれも採用することができない。 3 むすび 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、その請求に係る指定役務について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていたことを証明したものとは認められない。 また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。 したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、第35類「コンピュータデータベースへの情報編集」について、その登録を取り消すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-11-28 |
結審通知日 | 2017-12-01 |
審決日 | 2017-12-14 |
出願番号 | 商願2012-61811(T2012-61811) |
審決分類 |
T
1
32・
1-
Z
(W35)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 榎本 政実 |
特許庁審判長 |
井出 英一郎 |
特許庁審判官 |
山田 正樹 中束 としえ |
登録日 | 2013-03-08 |
登録番号 | 商標登録第5564359号(T5564359) |
商標の称呼 | エフアイエス |
代理人 | 平山 洲光 |