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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 審判 全部申立て 登録を維持 W25 |
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管理番号 | 1336377 |
異議申立番号 | 異議2017-900163 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-05-19 |
確定日 | 2018-01-12 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5924494号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5924494号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5924494号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成28年8月26日に登録出願,同29年1月11日に登録査定,第25類「被服(ただし『和服』は除く。),新生児用被服(ただし『和服』は除く。),サイクリング競技用衣服,防水加工を施した被服(ただし『和服』は除く。),靴類(『靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具』を除く。),帽子,メリヤス下着,メリヤス靴下,手袋(被服),ネックスカーフ(マフラー),アイマスク」を指定商品として,同年2月17日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 商標異議申立人(以下「申立人」という。)が,本件登録異議の申立てに引用する登録第4701254号商標(以下「引用商標」という。)は,別掲2のとおりの構成からなり,第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として,平成15年8月15に設定登録され,その後,同25年6月18日に存続期間の更新登録がされ,現に有効に存続しているものである。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は,本件商標はその指定商品について,商標法第4条第1項第11号,同項第10号,同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第30号証を提出した。 1 商標法第4条第1項第11号について (1)本件商標と引用商標との類似性について ア 外観について (ア)本件商標は,別掲1のとおり,略正六角形をその向かい合う一対の辺を水平方向に配し,水平方向の辺と斜辺との比が,約1.5対1.0となるようにその略正六角形を水平方向に延伸させてなる扁平な黒塗りの六角形(以下「水平六角形」という。)1つと,略正六角形をその向かい合う一対の辺を垂直方向に配し,垂直方向の辺と斜辺との比が,約1.2対1.0となるようにその略正六角形を垂直方向に延伸させてなる扁平な黒塗りの六角形(以下「垂直六角形」という。)4つとからなり,4つの垂直六角形が水平六角形の周囲4方向に,水平六角形の各斜辺と垂直六角形の一斜辺との間にごく僅かな隙間を設けるように配され,全体としては2つの垂直六角形と水平六角形からなるローマ字の「U」字状図形2つを,一方を上向きにし,他方を下向きにして,上下対称に互いの湾曲部を一部重なり合うように組み合わせてなる図形である。 (イ)引用商標は,別掲2のとおり,黒塗りのローマ字の「U」字状図形2つからなり,一方を上向きにし,他方を下向きにして,上下対称に互いの湾曲部を一部重なり合うように組み合わせてなる図形である。 (ウ)本件商標と引用商標との対比 a ローマ字の「U」字状図形2つを組み合わせてなる点 本件商標において,水平六角形と4つの垂直六角形との間にはごく僅かな隙間しかないことから,まず,水平六角形とその上方に配される2つの垂直六角形に着目すれば,それら全体として黒塗りのローマ字の「U」字状図形を上向きに構成する図形であると認識される。 次に,水平六角形とその下方に配される2つの垂直六角形に着目すれば,それら全体として黒塗りのローマ字の「U」字状図形を下向きに構成する図形であると認識される。 よって,本件商標は,全体として黒塗りのローマ字の「U」字状図形2つからなり,一方を上向きにし,他方を下向きにして,上下対称に互いの湾曲部を一部重なり合うように組み合わせてなる図形である。 これに対し,引用商標も,黒塗りのローマ字の「U」字状図形2つからなり,一方を上向きにし,他方を下向きにして,上下対称に互いの湾曲部を一部重なり合うように組み合わせてなる図形である。 したがって,本件商標と引用商標は,いずれも黒塗りのローマ字の「U」字状図形2つからなり,一方を上向きにし,他方を下向きにして,上下対称に互いの湾曲部を一部重なり合うように組み合わせてなる点において,互いに類似する図形である。 b 全体として水平方向にやや延伸した横長扁平の図形である点 本件商標において,水平六角形と2つの垂直六角形からなる「U」字状図形の幅と高さとの比は,約1.3対1.0であることから,本件商標は,全体として水平方向にやや延伸した横長扁平の図形である印象を与える。 これに対し,引用商標において,「U」字状図形の幅と高さとの比は,約1.6対1.0であることから,引用商標も,全体として水平方向にやや延伸した横長扁平の図形である印象を与える。 したがって,本件商標と引用商標は,いずれも全体として水平方向にやや延伸した横長扁平の図形である点において,互いに類似する図形である。 c 上下に1つずつ存在するくぼみ部分の共通点 本件商標は,その上部と下部において,水平六角形とその上方に配される2つの垂直六角形とで囲われるくぼみ部分と,水平六角形とその下方に配される2つの垂直六角形とで囲われるくぼみ部分を有し,そのくぼみ部分の幅と高さとの比は,約1.3対1.0である。 これに対し,引用商標も,その上部と下部において,くぼみ部分を1つずつ有し,そのくぼみ部分の幅と高さとの比は,約1.6対1.0である。 よって,本件商標と引用商標は,いずれもその上部と下部にくぼみ部分を1つずつ有し,くぼみ部分の横縦比は互いに近似しており,かつ,その形状及び商標全体に占める大きさも共通していることから,図形全体として互いに類似する印象をより強く与えている。 d 左右に1つずつ存在するくびれ部分の共通点 本件商標は,その左部と右部において,上下2つの垂直六角形で囲われるくびれ部分を1つずつ有している。 これに対し,引用商標も,その左部と右部において,くびれ部分を1つずつ有している。 よって,本件商標と引用商標は,いずれもその左部と右部にくびれ部分を1つずつ有し,その形状,大きさ及び商標全体に占める大きさも共通していることから,図形全体として互いに類似する印象をより強く与えている。 e 中心部分の共通点 本件商標において,その中心に配される水平六角形は,横長扁平であり,左右に行くに従い先細る形状となっていることから,アメリカンフットボール用のボールのような形状をしている。 これに対し,引用商標においても,その中心を構成する狭長楕円形部分は,左右に行くに従い先細る形状となっていることから,アメリカンフットボール用のボールのような形状をしている。 よって,本件商標と引用商標は,いずれもその中心部分がアメリカンフットボール用のボールのような形状であり,その商標全体に占める大きさも共通していることから,図形全体として互いに類似する印象をより強く与えている。 f 先端部分の共通点 本件商標において,その四方の先端部分を構成する垂直六角形は上下垂直方向に伸びており,よって,本件商標の各先端部は尖状である。 これに対し,引用商標において,その四方の先端部分を構成する三角形状に近い面は,その一つの頂点が上下垂直方向に向いており,よって,引用商標の各先端部も尖状である。 したがって,本件商標と引用商標は,いずれもその先端部が尖状である点で共通し,図形全体として互いに類似する印象をより強く与えている。 以上のように,本件商標と引用商標とは,全体及び細部において,多くの共通点を有していることから,外観上,類似するものである。 g 実取引上の商標の使用態様における対比 本件商標権者は,アメリカ合衆国において,本件商標と同一の商標を商標登録出願しているところ(甲3),当該商標の使用見本として本件商標権者の商品の写真を提出している(甲4?甲7)。 また,実際の使用態様においては,本件商標と引用商標は,その商品に付される位置,大きさ及び範囲は共通しており,よって,商品全体から受ける印象も非常に似通っている(甲8?甲15)。 h 小括 以上より,本件商標と引用商標とは,楕円状の空間の有無やごく僅かな隙間の有無等,その細部においては多少の相違点を有するとしても,それら相違点を遥かに凌駕するほど多くの共通点を有しており,かつ,実取引において需要者に与える印象も極めて似通っている。 ここで,商標の類否は,両商標を直接的に対比観察することにより判断されるものではなく,時と処を異にする離隔的観察により判断されるものであるから,過去に別の場所で見て記憶した商標と,現在見ている商標とが相紛れるか否かという観点で判断されるべきものである。 需要者が図形のみからなる商標に接したとき,需要者はその商標の全体的基本的構成を記憶するから,需要者は引用商標を,2つの「U」字状図形を一方を上向きにし,他方を下向きにして,上下対称に互いの湾曲部を一部重なり合うように組み合わせてなる図形からなる商標と記憶する。そして,後日,別の場所で,引用商標と極めて近似する構成からなる本件商標に接した需要者が,本件商標を引用商標と誤認混同することは疑いの余地がない。 以上より,本件商標と引用商標とは,外観上,類似する。 イ 称呼について 本件商標は,特定の称呼も生じない。また,引用商標からも特定の称呼は生じない。 したがって,本件商標と引用商標とは,称呼上,比較できない。 ウ 観念について 本件商標及び引用商標からは特定の観念が生じないため,本件商標と引用商標とは,観念上,比較できない。 エ まとめ 以上のとおり,本件商標と引用商標とは,外観において類似するものであり,称呼及び観念において比較できないものである。 そして,本件商標は,引用商標よりも後願であって,かつ,その指定商品は互いに抵触するものである。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。 2 商標法第4条第1項第10号について (1)引用商標に係る異議の決定 申立人は,アメリカ合衆国メリーランド州ボルチモアに本社を置く総合スポーツ用品メーカーであり,引用商標をそのハウスマークとして採用し,設立から10年余りで全米でも指折りの総合スポーツ用品ブランドに成長した企業と評されている(甲16)。 ここで,登録異議の申立事件(異議2009-900440)の異議の決定において,「申立人商品に使用される引用商標(登録第4701254号)は,本件商標の登録出願時(平成21年2月6日)はもとより,その登録査定時(平成21年7月27日)においても,我が国のスポーツ関連分野の需要者の間においては,広く認識されていたものということができる。」と認定している(甲17)。 よって,引用商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして,平成21年の時点において既に,需要者の間に広く認識されていたといえる。 (2)申立人の事業活動の範囲及び事業規模の変遷 引用商標が既に需要者の間に広く認識されていたと認められた平成21年(2009年)当時から現在に至るまで,申立人の事業活動の範囲及び事業規模は,世界中で年々拡大を続けており,今や世界3位に迫るほどの総合スポーツ用品メーカーに成長している(甲18?甲20)。 ここで,引用商標の周知性が認められていた2009年以降の,我が国における申立人の業務に係る商品の年間売上高(年間売上数量)を示した資料(甲21)によれば,2009年度の年間売上高(年間売上数量)は,約79億円(約290万ユニット(数))であり,その後,順調に事業規模を拡大した結果,2016年度の年間売上高(年間売上数量)は,約371億円(約1,370万ユニット(数))にまで膨れ上がっている。 このように,引用商標の周知性が認められた2009年当時と比して,直近2016年度の年間売上高(年間売上数量)は,約5倍と飛躍的に増大しており,その結果,引用商標に化体し続けた信用は,絶大なものとなっていることがわかる。 (3)まとめ 以上より,本件商標の登録出願時にはもちろんのこと,登録査定時においても,引用商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた商標である。 また,本件商標と引用商標とは類似し,その指定商品は互いに抵触するものである。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当する。 3 商標法第4条第1項第15号について 引用商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であって,本件商標と引用商標とは互いに類似し,その指定商品は互いに需要者の範囲が一致するものである。 (1)誤認混同の蓋然性 ア 本件商標と引用商標とは類似する。 イ 申立人の引用商標の周知度は,絶大である。 ウ 引用商標は,図形からなるものであり,2つの「U」字状図形を組み合わせたその構成は他に類を見ないものであり,構成上,顕著な特徴を有する。 エ 引用商標は,申立人のハウスマークであり,需要者が頻繁に接するものである。 オ 申立人は日本のみならず世界中でその事業を展開しており,かつ,その事業活動の範囲及び事業規模は,年々拡大を続けていることから,申立人が多角経営を行う可能性は十分高い。 カ 商品の範囲が抵触しており,かつ,実際に取引されている商品においてもその範囲が著しく重複していることから,商品間の関連性は非常に高い。 キ 本件商標権者の業務に係る商品は,主にスポーツ関連のものである一方で(甲23),申立人の業務に係る商品は,スポーツ関連のものを含む,被服,靴,帽子等である(甲24)。これらから明らかなように,互いの需要者の範囲は著しく共通している。 さらに,取引の実情を考慮する場合,前述のような実取引上における両商標の使用態様も考慮されるべきである。 ク 上記事実を総合勘案すれば,本件商標をその指定商品に使用する場合,それが申立人の業務に係る商品であると誤認混同を生ずるおそれがある。 (2)実取引上の誤認混同の蓋然性 我が国における需要者が,申立人のハウスマークであり需要者の間に広く認識されている引用商標について,どのように認識し,記憶するかを示す資料を提出する。 ア 甲第25号証は,我が国の需要者に対し,申立人のブランドを訴求するための主要な店舗の外観や内装を示したものである。 イ 甲第26号証は,申立人のブランド商品の日本国内取扱い店舗の一覧表であり,量販店,専門店,直営店等を含めて,その総店舗数は2,000を超えている。 ウ 甲第27号証は,我が国において申立人の業務に関するイベントや展示会の様子を示したものであり,商品はもとよりテントやのぼり旗等,様々な縮尺で付された引用商標が用いられている。 エ 甲第28号証は,引用商標が新聞や雑誌等の広告媒体に取り上げられた一例である。また,甲第29号証は,我が国における申立人の日本総代理店である株式会社ドーム(甲30)の契約アスリート等を示すものであり,野球,ゴルフ,フットボール(サッカー),ラグビー等のプロスポーツ界においても,引用商標が広く使用されていることを示している。 オ 以上のように,我が国における需要者にとって,引用商標に接する機会は非常に多く多岐に亘って存在しており,その商標の使用態様も多様であること等から,2つの「U」字状図形を,一方を上向きに他方を下向きにして,上下対称に互いの湾曲部を一部重なり合うように組み合わせてなる図形といえば,申立人のハウスマークである引用商標又は申立人の出所から生じた商標であると認識されるものといえる。 かかる状況に照らせば,引用商標とその構成の軌を一にする本件商標をその指定商品に使用する場合,それが申立人の業務に係る商品であると誤認混同を生じるおそれがある。 (3)まとめ 以上より,本件商標をその指定商品に使用すれば,それが申立人の業務に係る商品であると誤認されるおそれがあるか,あるいは,本件商標を付した商品が,申立人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認されるおそれがある。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。 4 商標法第4条第1項第19号について 引用商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であって,本件商標と引用商標とは互いに類似する。 また,引用商標は,本件商標の登録出願時には,既にその指定商品の属する分野において極めて広く認識されていたものであるから,主にスポーツウェア用品を製造する本件商標権者が,本件商標の登録出願時において,絶大な周知度を誇る引用商標の存在を認識していなかったとは考えられない。 ましてや,アメリカ合衆国を本拠とする本件商標権者が,本件商標の使用開始日である2016年9月10日時点(甲3)において,我が国はもとよりアメリカ合衆国で絶大な周知性を誇る申立人の引用商標を認識していなかったはずはなく,すなわち,本件商標権者が引用商標の存在を知らずに,引用商標に類似する本件商標を偶然に採択し,使用しているものとは認め難い。 以上より,引用商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であって,本件商標と引用商標とは互いに類似し,本件商標は,引用商標が持つ高い名声と絶大なる信用力にただ乗り(フリーライド)する不正の目的をもって使用をするものである。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当する。 第4 当審の判断 1 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標について 本件商標は,別掲1のとおり,やや縦長の黒塗りの六角形(垂直六角形)を,左右に上下二つずつ縦に向けて表し,その中程には,これらの図形よりやや長めの黒塗りの六角形(水平六角形)を,横に向け,垂直六角形との間に僅かなスペースを設けて表した構成からなり,全体として,上記5個の六角形を用いて「H」のローマ字状に図案化したものとの印象を与える。 そして,本件商標は,「H」のローマ字状に図案化したものとの印象を与えるとしても,図案化が顕著であるため,称呼及び観念は生じない。 (2)引用商標について 引用商標は,別掲2のとおりの構成からなり,「U」字状の弧線を,黒塗りでやや横長に左右を少しずつ幅広にしながら両端部を太く表して図案化したもの2つを,一方を上向きに,他方を下向きにして,中央部付近を交差させて横長のレンズ状となるように表してなるものであり,全体として2つの「U」字状の図形を上下対称に組み合わせて図案化したものとの印象を与える。 そして,引用商標は,特定の文字を表してなるものとは直ちに認識できないため,称呼及び観念は生じない。 (3)本件商標と引用商標との類否について ア 外観について 本件商標と引用商標とは,上下左右に対称となる図形であって,上下の中央には大きな凸状のくぼみ及び左右の中央には小さな凸状のくぼみを有する点,及び黒塗りの図形又は線により構成されている点で共通するものの,(ア)本件商標は,5個の六角形を用いて「H」のローマ字状に図案化して表されているのに対し,引用商標は,2つの「U」字状の図形を組み合わせて図案化して表されていること,(イ)本件商標は,直線よりなる六角形を,直線を基調とする「H」のローマ字状となるように配置され,直線を主とした構成態様であるのに対し,引用商標は,曲線を基調とする「U」字状の図形を組みあわせて表されていること,(ウ)本件商標は,略正方形にまとまりよく表されているのに対し,引用商標は,水平方向にやや延伸した横長扁平に表されていること,(エ)本件商標は,そのくぼみ部分が直線的であるのに対し,引用商標は,丸みを帯びた態様で表されていること,(オ)本件商標の中心部分の横線は,横長の六角形を,他の六角形との間にスペースを設けて表されているのに対し,引用商標は,上下の「U」字状の図形を交差させ,その中心部分をレンズ状に表されていること,(カ)本件商標の四隅の先端部分は,六角形の一つの角を垂直に上下に向けて表されているのに対し,引用商標は,先端部分を幅広にして,その内側の角を外側よりも延伸して表されていること,などの点において明確に相違するものである。 そうすると,本件商標と引用商標とは,両者の全体としての印象及びそれぞれの構成要素の相違から,その視覚的印象は,別異のものというべきであるから,両商標は,対比観察した場合はもとより,時と処を異にして離隔的に観察した場合においても,外観上,相紛れることはないものと認められる。 イ 称呼及び観念について 本件商標及び引用商標は,それぞれ称呼及び観念を生じないため,称呼及び観念について比較することができない。 ウ まとめ 以上のとおり,本件商標と引用商標とは,共に特定の称呼及び観念を生じるものではなく,外観における視覚的印象は,別異のものというべきであるから,両商標は,同一又は類似の商品に使用された場合であっても,その商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれのない,非類似の商標というべきである。 したがって,本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とが,同一又は類似であるとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。 エ 実取引上の商標の使用態様における対比について 申立人は,本件商標が,ハーフパンツ,ショートパンツ等の片側の裾部分やタンクトップの肩に近い部分に白抜きで表示されている本件商標権者の使用例(甲4?甲7),及び,引用商標が,トレーニング用又はランニング用ショートパンツ等の片側の裾部分や競技用タンクトップの肩に近い部分に白抜きで表示されている申立人の使用例(甲8?甲11)を提出し,「両商標がその商品に付される位置,大きさ及び範囲は共通しており,よって,商品全体から受ける印象も非常に似通っている(甲12?甲15)」旨主張する。 しかしながら,ハーフパンツ,ショートパンツ等の一部(ショートパンツ等の片側の裾部分やタンクトップの肩に近い部分)に白抜きで商標を表示することは一般に広く行われているものであって,特徴を有するものでなく,しかも,本件商標と引用商標は,上記アのとおり,外観における視覚的印象は別異のものというべきである。 そうすると,本件商標と引用商標は,実際の商取引の実情を考慮したとしても,これらに接する者は,両商標の違いを明瞭に看て取れるものということができるから,相紛れるおそれはない。 2 引用商標の周知性について 申立人は,1996年に米国メリーランド州に設立された「スポーツ用アンダーウェア」等(以下「申立人商品」という。)の製造,販売を手がける企業であり(甲16),申立人が提出した証拠における申立人の店舗の出店数及び売上高等(甲18?甲20,甲25?甲30)を考慮すれば,引用商標は,本件商標の登録出願時はもとより,その登録査定時においても,申立人商品を表す商標として,我が国のスポーツ関連分野の需要者の間において広く認識されていたものと認められる。 3 商標法第4条第1項第10号及び同項第15号該当性について 上記2のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人商品を表示する商標として,我が国のスポーツ関連分野の需要者の間において,広く認識されていたものと認められる。 しかしながら,上記1のとおり,本件商標は,引用商標とは,相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標というべきである。 そうすると,引用商標が使用されている商品と本件商標の指定商品とが,その需要者を共通にし,関連性を有するとしても,本件商標権者が本件商標をその指定商品について使用をした場合,これに接する需要者が,引用商標を連想,想起することはなく,申立人又は同人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であるかと誤認し,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第19号該当性について 上記2のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人商品を表示する商標として,我が国のスポーツ関連分野の需要者の間において,広く認識されていたものと認められる。 しかしながら,上記1のとおり,本件商標は,引用商標とは,相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。 そして,申立人が提出した証拠からは,本件商標が,引用商標が持つ名声と信用力に便乗し,不正の利益を得る目的で使用されていることを具体的に示すものはなく,その他,不正の目的をもって使用をするものというべき事実も見いだせない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。 5 むすび 以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号,同項第10号,同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。 よって,結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) 別掲2(引用商標) |
異議決定日 | 2018-01-04 |
出願番号 | 商願2016-93470(T2016-93470) |
審決分類 |
T
1
651・
25-
Y
(W25)
T 1 651・ 262- Y (W25) T 1 651・ 263- Y (W25) T 1 651・ 261- Y (W25) T 1 651・ 222- Y (W25) T 1 651・ 271- Y (W25) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 泉田 智宏 |
特許庁審判長 |
早川 文宏 |
特許庁審判官 |
田中 亨子 阿曾 裕樹 |
登録日 | 2017-02-17 |
登録番号 | 商標登録第5924494号(T5924494) |
権利者 | アジアス インク |
商標の称呼 | エッチ、エイチ |
代理人 | 古岩 信嗣 |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |