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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W09
審判 全部申立て  登録を維持 W09
管理番号 1335295 
異議申立番号 異議2017-900120 
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2018-01-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-04-13 
確定日 2017-12-11 
異議申立件数
事件の表示 登録第5912820号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5912820号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5912820号商標(以下「本件商標」という。)は、「EasyOneTouch」の文字を標準文字で表してなり、平成28年10月19日に登録出願され、第9類「スマートフォン用車載ホルダー,スマートフォン用ケース・カバーその他のスマートフォン用の部品及び付属品,携帯電話機用車載ホルダー,携帯電話機用ケース・カバーその他の携帯電話機用の部品及び付属品,タブレット型電子情報端末装置用車載ホルダー,タブレット型電子情報端末装置用ケース・カバーその他のタブレット型電子情報端末装置用の部品及び付属品,携帯電話機用充電器,充電器,通信ケーブル,接続ケーブル,ケーブル,ケーブル接続具,トランスミッター,ヘッドセット,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」を指定商品として、同年12月9日に登録査定、同29年1月13日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は、以下の(1)及び(2)である。
(1)本件商標が商標法第8条第1項に該当するものであるとして引用する国際登録第1105572号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなるものであり、2011(平成23)年8月24日にFranceにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張し、同年12月12日に国際商標登録出願され、2017年7月25日付けで拒絶査定がされているものである(拒絶査定不服審判請求審理中:不服審判2017-650075)。なお、その指定商品及び指定役務は、第9類「Telecommunications devices, apparatus, equipment and installations, mobile equipment; telecommunication software; batteries for mobile equipment; cell phone battery chargers; devices for the hands-free use of mobile equipment namely loudspeakers, microphones, headphones; cases for mobile equipment; keyboards for mobile equipment; holders for mobile equipment; computers, laptop computers, tablet personal computers, personal digital assistants (PDAs), electronic organizers, electronic notebooks, portable digital electronic devices; devices for global positioning systems (GPS); antennas for mobile telephones and communications networks; coin-operated devices and equipment for recharging mobile equipment.」並びに第38類及び第42類に属する日本国を指定する国際登録において指定された役務である。
(2)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するものであるとして引用する商標(以下「引用使用商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなるものであり、申立人の商品「スマートフォン」に永年使用されたとするものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標の登録は取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第50号証を提出した。
1 商標法第8条第1項違反について
(1)本件商標について
本件商標は、「EasyOneTouch」の欧文字を標準文字にて横一連に配した構成からなる商標である。「Easy」、「One」、「Touch」の各構成文字からは、それぞれ「簡単な」、「一度」、「触れる」といった観念を有するところ、本件商標からは「簡単に一度、触れる。」といった観念が生じ、「イージーワンタッチ」という称呼が生じる。
また、本件商標は、我が国の取引者・需要者の間で周知著名となっている申立人の引用使用商標「onetouch」と全く同一の文字「OneTouch」の前に指定商品との関係で識別力の弱い「Easy」の文字を結合した構成からなるところ、本件商標の類否判断の対象となる要部は「OneTouch」というべきであるから、「ワンタッチ」という称呼及び「一度、触れる。」といった観念も生じる。
(2)引用商標について
引用商標は、欧文字「onetouch」の青色の欧文字からなる商標である。「one」及び「touch」は、各々「一度」、「触れる」といった意味を有する一つの語ではあるが、引用商標は「one」及び「touch」を一連一体の態様にした態様であるところ、全体として「onetouch」という辞書にない造語となっている。かかる引用商標からは「一度、触れる。」等の観念が生じ、「ワンタッチ」という称呼が生じる。
引用商標の指定商品は、2016年1月18日付けで国際事務局宛てに提出されたMM6記載の標記に基づくものである。
引用商標は、国際登録第1105572号として、2011年8月24日付けのフランス国の基礎出願(基礎出願番号113854473)をもとに、国際事務局に日本国を指定して同年12月12日に国際登録された商標である。当該国際登録第1105572号に係る出願に対して、2012年12月13日付けの暫定拒絶通報がなされ、商標法第3条第1項第3号、同法第6条第1項、同法第4条第1項第11号及び同項第16号に該当するとの拒絶理由が通知された。
申立人は、当該拒絶理由を解消すべく、2013年3月13日付けで意見書及び補正書を提出した。なお、当該拒絶理由中、商標法第4条第1項第11号に関しては、申立人は引用商標(登録第2718963号)の商標権者と、抵触する指定商品を申立人に分割譲渡する旨で合意しており、2016年2月26日付けで商標権分割移転申請書を提出した。この点について、申立人は2016年3月3日付けで上申書を提出し、上記により商標法第4条第1項第11号に基づく拒絶理由が解消すると述べた。引用商標は現在審査中であり、間もなく登録になる見込みのものである。
(3)本件商標と引用商標との類否
ア 本件商標の構成中「Easy」の文字部分は指定商品との関係で自他商品識別力の弱い語であるところ、本件商標は、「OneTouch」部分をその要部とする結合商標というべきである。
そして、結合商標類否判断については、最高裁判所の平成20年9月8日判決(甲3)及び昭和38年12月5日判決(甲4)において、結合商標類否判断における要部観察の重要性を明らかにしている。
イ 本件商標は、「Easy」、「One」及び「Touch」の語を横一連にした態様ではあるが、「Easy」という文字部分は「簡単な」という意味を有し、当該文字部分を指定商品「スマートフォン」、「スマートフォンの関連製品」等に使用した場合、その商品の操作等が簡単であることを謳う場合に使用されるものであり、本件商標のように他の文字部分とともに商標構成中に用いられた場合には、単なる品質表示として認識されるにとどまる記述的な語というべきである。
審決においても、「Easy」の文字について、自他商品の識別標識としての機能を有しない、若しくは果たさないとの判断がされている(甲5?甲8)。
ウ また、「easy」という語は、日本国内において電子機器等の商品について、その操作や内容等が、「簡単」「易しい」であることを示すべく幅広く使用されている(甲9?甲13)。
エ さらに、商標構成中に「EASY」の欧文字を含む以下の商標登録出願が、第9類指定商品について自他商品識別機能を有しないとして拒絶査定に至っていることからも、「EASY」の文字部分に自他商品等識別機能がないことは明らかである(甲14?甲16)。
加えて、商標構成中に「EASY」の文字を含む231件もの商標登録が、第9類商品「電気通信機械器具」、「電子応用機械器具及びその部品」等の有する類似群コード11B01及び11C01を指定しつつも、併存して登録に至っている実情を考慮すると(甲17)、「EASY」の文字部分に自他商品等識別機能がないことは明らかである。
オ 以上のとおり、本件商標の構成中「Easy」という文字部分は、一般的に、本件商標の指定商品に使用されるときは、その商品が従来品と比較して、操作等が簡単であることを謳う場合に使用されるものであり、単なる品質表示として認識されるにとどまる記述的な語である。そのため、本件商標の構成中「Easy」という文字部分は識別力が弱く、出所識別標識としての機能を果たしていないところ、本件商標の類否の対象になる要部は、「OneTouch」の文字部分というべきである。
そこで、本件商標の要部である「OneTouch」と引用商標とを比較すると、「OneTouch」の文字部分と引用商標とは構成される文字については同一であり、「ワンタッチ」の称呼及び「一度、触れる。」の観念を共通にするものである。
したがって、本件商標は、引用商標と類似する商標というべきである。
(4)指定商品の類否
本件商標に係る第9類の指定商品は、引用商標に係る第9類の指定商品中「Telecommunications devices, apparatus, equipment and installations, mobile equipment; telecommunication software; cell phone battery chargers; devices for the hands-free use of mobile equipment namely loudspeakers, microphones, headphones; cases for mobile equipment; keyboards for mobile equipment; holders for mobile equipment; computers, laptop computers, tablet personal computers, personal digital assistants (PDAs), electronic organizers, electronic notebooks, portable digital electronic devices; devices for global positioning systems (GPS); antennas for mobile telephones and communications networks; coin-operated devices and equipment for recharging mobile equipment.」(電気通信用の装置・機器・器具及び設備,移動式装置,電気通信用コンピュータソフトウェア,携帯電話機用充電器,移動式装置のハンズフリーでの使用用装置(すなわち拡声器),マイクロホン,ヘッドホーン,移動式装置用ケース,移動式装置用キーボード,移動式装置用ホルダー,コンピュータ,ノートブック型コンピュータ,タブレット型パーソナルコンピュータ,携帯情報端末,電子手帳(オーガナイザー),電子手帳,携帯用デジタル式電子応用装置,全地球測位システム(GPS)用受信装置,移動電話機用及び通信ネットワーク用のアンテナ,移動装置の再充電用の硬貨作動式の装置及び器具)と同一又は類似する商品である。
(5)両商標の先後願関係
本件商標は、平成28年10月19日に商標登録出願されたのに対し、引用商標は、平成23年8月24日にフランス官庁においてした商標登録出願に基づいて、日本国を指定して平成23年12月12日に国際登録されたものであるから、引用商標に係る商標登録出願は、本件商標の商標登録出願日前の他人の登録商標出願に該当する。
(6)小括
以上のとおり、引用商標は本件商標の登録出願日前の商標登録出願に係る他人の商標登録出願に係る商標であり、本件商標は、引用商標と類似する商標であり、引用商標に係る指定商品と同一又は類似する商品を指定商品とするものであるから、商標法第8条第1項に違反して登録されたものである。
2 商標法第4条第1項第15号違反について
(1)混同のおそれの判断
商標法第4条第1項第15号について、最高裁判所の平成12年7月11日判決において、「混同を生ずるおそれ」の意義及びその「おそれ」の有無の判断基準を明らかにしている(甲18)。すなわち、混同を生ずるおそれの有無は、商標の類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度、及び商品間の関連性の程度、取引者及び需要者の共通性その他取引の実情という要素に基づいて判断すべきであると明確にしている。
本件商標と引用商標とが類似することは、上記に述べたとおりである。
(2)引用使用商標の周知性について
申立人は、引用使用商標を商品「スマートフォン」について使用し、ブランド展開を進めている。以下のとおり、引用使用商標が日本国内及び世界的に周知著名性を獲得している。
ア 申立人である「ティーシーティー モービル ユーロップ エスアーエス」は、 1898年にフランスで創業した携帯電話メーカーであり、申立人の製品は、低価格品であること、使いやすさが追求されていることや、フランスらしいカラフルなカラーリングの製品であることから需要者の間で人気となっている(甲19)。そして、1997年に引用使用商標「ONETOUCH」ブランドの第1弾となる携帯電話「ONETOUCH Easy phone」が販売され、その後、商品「スマートフォン」のブランドとして、引用使用商標が使用されたブランド「ALCATEL ONETOUCH」が立ち上がる。当該ブランドは、「デザインするときに消費者目線を大事に考えるという根本的な価値観を重要視すること」、「最新テクノロジーを大衆化させて、高性能かつ革新的な機能を、素晴らしいデザインとともに届けること」をコンセプトにしている(甲20)。
2010年のスマートフォン市場への参入直後から、携帯電話会社向けの製品を積極的に展開し、ヨーロッパの携帯電話会社が自社ブランドで販売しているスマートフォンは、今はほとんどが申立人のスマートフォンをベースにしたモデルになっている(甲19)。
2013年には、引用使用商標が使用された商品である当時世界最薄の「ONE TOUCH IDOL Ultra」が発表される(甲19)。それまでは、「世界最薄●●」の名で著名なメーカーはサムスンやノキアであったところ、突如、申立人の世界最薄のスマートフォンが発表されたため、申立人の製品開発力が世界に周知され、引用使用商標のブランドイメージの向上につながった(甲19)。同年夏には、引用使用商標が使用された商品であり、スマートフォン入門者層向けの「ONETOUCH Fire C」が、中国や東南アジアの新興国をターゲットに販売された。このようなあらゆる消費者ニーズに応じた製品をラインアップにそろえることで、申立人の商品「スマートフォン」は世界170か国以上で販売され、地域ごとに最適化された販売戦略をとった結果、ラテンアメリカでは1位、米国市場では4位のシェアを確保している(甲20)。現在、申立人の商品である「スマートフォン」の販売台数は、世界シェア7位であり、常に10位以内にランクインしている(甲19)。
なお、申立人より上に位置するのは、サムスン、アップル、マイクロソフト、レノボ、LG、ファーウェイと誰もが知る大手メーカーであり、申立人はそれら大手メーカーと肩を並べている。
イ このような引用使用商標の世界各国における商品展開について、海外のウェブサイトでは、以下のように取り上げられている。
(ア)引用使用商標の米国市場における位置、成長について、価値重視のアプローチとビジネス成長戦略により、2013年末に北米で急速に成長しているチャレンジャーブランドであり、今日、トップ5の地位を固めている(甲18)。
(イ)申立人の商品が米国、カナダ、イギリス、ドイツ、フランス、スペインに向けて、市場展開されている(甲19)。
ウ このような引用使用商標の世界における周知性について、日本国内の需要者が認知していることは、下記ウェブサイトの記事からも明らかである。
(ア)今や世界170力国に営業拠点を持ち、ALCATELブランドのスマートフォンを各国で販売している。2014年通年の同社の端末出荷台数世界シェアは6位。クリスマスのホリデーシーズンとなる2014年第4四半期には4位を記録した(甲23)。
(イ)TCLコミュニケーションズがヨーロッパを中心とした先進国だけではなく中国や東南アジアなどの新興国をターゲットとした製品を開発しているからできることだ。あらゆる消費者ニーズに応じた製品をラインアップにそろえているその姿は、世界シェア1位の座を不動のものにしていたノキアの王国時代にもかぶって見えてくる。(甲19)
エ 上記のとおり、引用使用商標は、商品「スマートフォン」について世界における周知著名性を獲得しており、日本国内へは、2014年9月5日にイオンスマホの第3弾として、引用使用商標が使用された商品「ALCATEL ONETOUCH IDOL 2S」が販売される(甲24)。なお、イオンスマホが日本国内で注目を集めていることは、ウェブサイトの「イオンモバイルは、通信速度を制限されていても一定のデータ通信量までは高速通信を利用できるので、webページの閲覧やSNSの閲覧に関しては、ほぼ常に安定して利用できる強みがあります。ちなみに2016年2月26日以前のイオンモバイル(イオンスマホ)の評判は他社MVNOと比べて決して良いものではありませんでした。端的に言えば『スマホは高く、データ通信速度は遅かった』状態です。しかし現在はリニューアルされて通信の質も向上、プランも最安級として他社と競合するようになっています。間違いなく今後も注目すべきMVNOの一つといえそうです。」(甲25)という記事からも明らかであり、申立人の商品は日本国内の需要者に注目されているイオンスマホの第3弾として販売された。そして、当該商品は、商品価格が9,980円という低価格であることに対し、画質、操作性や機能性が良く、また片手で持てるサイズであることが需要者の間で広まった(甲26)。この点について、イオンスマホの機種の中でも、特に申立人の当該商品が人気であることは、ウェブサイトの「安い機種を求めているなら 『ALCATEL ONETOUCH IDOL 2S』が9,980円で販売されていますのでオススメです。『ALCATEL ONETOUCH IDOL 2S』はイオンスマホの中ではもっとも安いですが LTEに対応しているため動画やウェブサイトをスムーズに見ることができます。」(甲27)、「ALCATEL ONETOUCH IDOL2 Sについて。Alcatelは元々はフランスの通信機器メーカーでした。最近だと『ALCATEL ONETOUCH IDOL3』を販売して話題になっています。・・・初めてスマートフォンを持つ人ならイオンスマホのこの『ALCATEL ONETOUCH IDOL2 S』はかなりおすすめです!」(甲28)、「先日お伝えしていたイオンスマホ第三弾の端末はTCT Mobile Limited製『ALCATEL ONETOUCH IDOL 2 S』ということが分かりました!パッと見た感じだと、上の画像のタイトル通り、スタイリッシュですね!また 端末は上126gとかなり軽いそうです!」(甲24)」という記事からもわかる。
オ 加えて、申立人は、引用使用商標が使用された商品「スマートフォン」のシリーズとして、「ALCATEL ONETOUCH IDOL 2 S イオンスマホSIMフリー 白ロム(ブルーグレー)」、「ALCATEL ONETOUCH IDOL 2 S イオンスマホSIMフリー 白ロム(白)」、「ALCATEL onetouch idol 3 6045F [DarkGray, SIMフリー]」、「SIMフリー ALCATEL onetouch IDOL 3 6039S 4.7インチ」、「Alcatel One Touch 2004c White-For Seniors-Big button」、「Alcatel One Touch 2004c White-For Seniors-Big button[Black]」、「Alcatel One Touch Pixi-3 ANDROID GSM Quad Band 4 camera phone」、「ALCATEL one touch idol 2 MINI S GSM QuadBand 8 mega pixel 4.5 camera phone」、「Alcatel OneTouch POP C1 (AT&T)Clean ESN」といった商品を日本国内で販売している(甲29)。
カ このような日本国内における商品展開が進められる中、2015年8月21日に申立人の新商品「ALCATEL ONETOUCH IDOL3」の製品発表会にて、引用使用商標が使用された商品「スマートフォン」のブランド「ALCATEL ONETOUCH」を日本においても本格的に商品展開することが発表された(甲20?甲30)。
それにより、日本国内で申立人の商品は本格的な販売が開始され、申立人の商品「スマートフォン」は価格設定や使いやすさによって、日本市場においても受け入れられ、高い周知性を獲得した。
キ 引用使用商標の日本国内における周知著名性について、申立人の宣伝広告活動、雑誌への広告、ウェブページにおける記事紹介は、以下のとおりであり、雑誌への掲載、主要都市の人が集まる駅構内や路線における宣伝広告等により、引用使用商標は、商品「スマートフォン」について、本件商標の出願日及び登録査定日において、日本国内で周知著名な商標というべきであり、引用使用商標の世界における周知著名性についても日本国内の需要者によって認識されている。
(ア)申立人の宣伝広告活動
上述したとおり、2015年8月21日に新商品「ALCATEL ONETOUCH IDOL3」を製品発表会にて発表した。その後、六本木駅、渋谷駅及び品川駅において、2015年9月1日から同年9月30日の間、当該商品が電子看板において宣伝広告される(甲31)。また、東京メトロ沿線において、2016年1月1日から同年1月30日の間、当該商品がウォール広告において宣伝広告された(甲32)。さらに、当該商品の広告は、2015年12月16日から2016年1月15日の間には京王線、2015年12月17日から2016年1月16日の間には日比谷線、2016年1月6日から2016年2月5日の間には半蔵門線、2016年2月26日から2016年3月25日の間には都営浅草線の鉄道車両内においてドア横の固定額面用広告として貼られた(甲33)。このような人の往来の激しい駅、路線において、申立人の商品が宣伝広告されたことで、申立人の商品は日本の需要者に広く周知になった。加えて、当該商品は2015年12月14日から2016年1月31日の間、クリスマスのバナー広告においても宣伝された(甲34)。個人消費が最も活発なクリスマスの時期に当該商品が宣伝広告されたことで、当該商品が需要者の間に広まった。
(イ)雑誌への広告
申立人の引用使用商標は、日本国内で有名な雑誌である「MEN’S CLUB(発行部数6万部)」、「GoodsPress(発行部数10万部)」、「日経WOMAN(発行部数10万部)」、「MonoMaX(発行部数12万部)」、「monoマガジン(発行部数7万5千部)」、「SWITCH(発行部数10万部)」、「Gainer (発行部数9万部)」、「ELLE Japan(発行部数9万部)」、「週刊ダイヤモンド(発行部数13万部)」、「MEN’S EX(発行部数6万部)」、「週刊エコノミスト(発行部数8万部)」、「週刊東洋経済(発行部数9万部)」、「DIME(発行部数16万部)」、「THE DAY(発行部数5万部)、「LEE(発行部数10万部)」で紹介されている(甲35)。
(ウ)ウェブページにおける紹介記事
申立人の商品は第三者によるウェブページで下記のように紹介されており、申立人の商品が需要者に注目されていることがわかる。
(a)「21日の発表会では、DJでm-floなどで活躍する☆Taku Takahashiも登場し、『IDOL3』でDJプレイを披露。・・・そこで披露されたプレイは、アプリのインターフェイスが普段利用するツールに近いこともあってか、スマートフォンのディスプレイ上での操作とは思えないほどで生み出されるリズムで、報道陣も自然と体をゆする状況に。」(甲36)
(b)「『ALCATEL ONETOUCH IDOL 3』はデザイン的には、とても洒落た端末だ。まさにフランスからやってきたスタイリッシュなデバイスだといえる。カメラや音の性能も平均以上で、これに加え、上下逆でも使えて通話もできるため、バランスがいい 気軽に使える、お洒落な機種を求めている人にオススメだ。」(甲37)
(c)「“フランス生まれのスマートフォンブランド”をキャッチコピーに日本国内では展開されておりALCATEL ONETOUCH IDOL3ですが、仮にそのキャッチコピーがなくても、機能面で十分魅力の感じさせることができるスマホといえるでしょう。」(甲38)
(d)「フランス生まれの『ALCATEL ONETOUCH』、格安SIM・スマホ熱の高まる日本に本格進出」「日本市場向けに投入されるIDOL 3はモバイル通信における対応周波数帯が日本に最適化されていて、LTEと3G両方において 山間部を中心に使われる低めの周波数帯(800MHz/900MHz帯)に対応していることは高く評価できるだろう。」(甲20)
(e)「遅れてやってきたスマホの黒船?上下のないスマホ『ONETOUCHIDOL 3』を発売したアルカテルが世界中で売れている理由」(甲36)
(f)「スペックの高めなONETOUCH IDOL 3を日本市場に投入したのは、目の肥えた日本の消費者を考えてあえて上位モデルを選んだとのこと。ですが、アルカテルは海外でタブレットやスマートウォッチなど多数の製品を販売しています。日本市場での本格展開を始めるということで、今後それらの製品も投入される可能性も見えてきました。アルカテルのこれからの動きは要チェックです。」(甲40)
(3)引用使用商標の独創性
引用使用商標は欧文字「onetouch」の青色の欧文字商標である。「one」及び「touch」は各々既存の語ではあるが、引用使用商標は「one」及び「touch」を一連一体の態様にした態様であるところ、「onetouch」という辞書にない造語となっている。そのため、「一度、タッチする。」、「ワンタッチする。」といった観念を有する造語であり、引用使用商標の独創性は高いと言える。
(4)本件商標と引用使用商標との類似性の程度
上述したとおり、本件商標の要部を構成する「OneTouch」と引用使用商標を比較すると、「OneTouch」の部分と引用使用商標とは同一の称呼及び観念が生じ、同一の文字より構成されている。したがって、本件商標は、引用使用商標と類似性の程度が極めて高いというべきである。
(5)商品間の関連性、需要者の共通性及び取引の実情
引用使用商標が周知著名性を獲得している商品は、「スマートフォン」であり、本件商標の第9類の指定商品と極めて関連の高い商品である。当該商品の需要者は一般消費者であり、需要者が共通していることは明らかである。
上述したとおり、申立人は商品「スマートフォン」について、引用使用商標を使用した商品「スマートフォン」をシリーズとして商品展開を行っており、日本国内及び世界的にも周知著名性を獲得している。
ここで、商品「スマートフォン」は、一般消費者が購入する商品であり、各メーカーは、一般消費者の購入を駆り立てるべく、タレントを使ったテレビCMや新聞広告、ウェブでの情報発信、ソーシャルメディアやオンライン販売を展開している。申立人においても、フェイスブック、インスタグラム等で宣伝広告し、商品販売を行っている(甲41,甲42)。このような商品「スマートフォン」の現実の取引実情において、本件商標の構成中「Easy」の文字部分は識別力のない語であること、引用使用商標が日本国内及び世界的に周知著名性を獲得していること、及び申立人が引用使用商標「onetouch」シリーズの「スマートフォン」を販売していることに鑑みると、本件商標が付された「スマートフォン」が、申立人の商品と同じ商品ケースや陳列棚等に並んだ場合、需要者は本件商標が付された商品について、操作が簡単な申立人の「onetouch」シリーズのスマートフォンの一つとして、誤認する可能性が高いというべきである。
さらに、スマートフォンについては、シニアや子供のようなスマートフォンの操作に不慣れな方向けに、「操作がEasy(簡単)なスマートフォン、アプリ」として、各携帯電話会社より、「らくらくスマートホン(docomo)」、「かんたんメニュー(au)」、「シンプルスマホ(SoftBank)」や「かんたんスマホ(Y!mobile)」といった商品が販売されている(甲43)。このような各携帯電話会社の商品展開をも考慮すると、本件商標がスマートフォンに使用された場合、操作が簡単な申立人の「onetouch」シリーズのスマートフォンの一つとして、需要者に誤認を生じる可能性はさらに高いというべきである。
したがって、本件商標は引用使用商標と非常に紛らわしく、需要者に商品の出所について誤認混同を生じさせる蓋然性が極めて高いというべきであり、本件商標は引用使用商標とその出所について混同を生じさせるおそれのある商標というべきである。
(6)特許庁における審査基準及び審決
商標法第4条第1項第15号に関する商標審査基準上、「他人の著名な商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものなどを含め、原則として、商品又は役務の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認して取り扱うものとする」とされている(商標審査基準〔改訂第9版〕十三の5、甲16)。引用使用商標が申立人の商品を表示するものとして需要者に広く認識されている実情に鑑みれば、引用使用商標と同一の文字である「OneTouch」を含む本件商標は、上記審査基準上にいう「他人の著名な商標と他の文字又は図形を結合した商標」に該当し、申立人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがある商標として商標法第4条第1項第15号に該当する。
また、周知著名な他人の商標を一部に含む商標に関し、当該周知著名な商標に係る他人の業務と出所の混同を生じるおそれがあるとして、商標法第4条第1項第15号に該当すると判断した審決及び判決例からも、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当することは明らかである(甲44?甲50)。
(7)小括
以上より、周知著名な引用使用商標と類似性の高い本件商標を、その指定商品について使用した場合には、これに接する需要者は、引用使用商標と関連のある商品として、その商品の出所について誤認・混同が生じる可能性が極めて高いから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたというべきである。
3 結び
以上のとおり、本件商標は、商標法第8条第1項及び同法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号に基づき、その登録は取り消されるべきである。

第4 当審の判断
1 引用使用商標の周知著名性について
申立人は、引用使用商標を商品「スマートフォン」について使用し、引用使用商標が日本国内及び世界的に周知著名性を獲得していると主張し、証拠方法として甲第19号証ないし甲第40号証を提出しているが、これらの証拠によれば、引用使用商標が我が国において商品「スマートフォン」に使用していることは認められるものの、その使用は、「ALCATEL」の文字と併記されているもの、並びに「ALCATEL ONETOUCH」及び「Alcatel OneTouch」(他の文字の結合も含む。)としてのものであり、引用使用商標のみを独立した商標として認定することができない。
ほかに、引用使用商標が、本件商標の登録出願前に使用されて周知著名となっていたということができる事実を見いだすことはできない。
そうすると、引用使用商標は、我が国において、本件商標の登録出願時はもとより登録査定時においても、申立人の業務に係る商品を表示するものとして広く認識されていたということは到底できない。
2 本件商標の商標法第8条第1項該当性について
本件商標は、前記第1のとおり、「EasyOneTouch」の欧文字を標準文字で表してなるところ、各構成文字が大文字と小文字によりなることから「Easy」、「One」及び「Touch」の各文字を結合してなるものと看取されるものの、これら文字は、いずれも、同じ書体及び大きさをもって等間隔にまとまりよく一連に表示されているものであって、外観において、その構成全体をもって一体的に表されたものとの印象を与えるものである。
そして、本件商標の構成中の「Easy」、「One」、「Touch」の各文字が、それぞれ、「容易な、簡単な」、「1、一つ」、「触る」の意味を有する平易な英語として理解されるとしても、上記のとおりの構成からなり、また、これより生じる「イージーワンタッチ」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものであると認められる本件商標にあっては、その構成中から「Easy」、「One」、「Touch」の各文字の一つないし二つの文字のみが、独立して看者の注意を惹くものとはいえない。
そうとすれば、本件商標は、その構成全体をもって一体不可分のものとして把握されるとみるのが相当であり、その構成文字全体に相応して、「イージーワンタッチ」の称呼のみを生じるものであり、親しまれた特定の観念を有しない一種の造語からなるものとして認識されるというべきである。
してみると、本件商標の構成中「OneTouch」の文字部分を分離、抽出し、「ワンタッチ」の称呼及び「一度、触れる」の観念を生ずるとした上で、本件商標と引用商標とが類似するものであるとする申立人の主張は採用できない。
その他、本件商標と引用商標とが類似するとすべき理由は見いだせない。
したがって、本件商標は、引用商標とは非類似の商標であるから、両者の指定商品が同一又は類似のものであって引用商標が先願であるとしても、商標法第8条第1項に該当しない。
3 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標と引用商標とは、上記2のとおり、非類似の商標であるところ、引用使用商標と引用商標とはその構成を前記第2(別掲)のとおり同じくするものであるから、本件商標と引用使用商標とは、本件商標と引用商標との認定、判断と同様に、非類似の商標といえるものである。
また、上記1のとおり、引用使用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているとは認めることはできない。
そうとすれば、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者をして、該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように連想、想起することはなく、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第8条第1項及び同法第4条第1項第15号のいずれにも違反してされたものでないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
引用商標及び引用使用商標


(色彩については、原本を参照のこと。)


異議決定日 2017-12-01 
出願番号 商願2016-115881(T2016-115881) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (W09)
T 1 651・ 4- Y (W09)
最終処分 維持  
前審関与審査官 矢澤 一幸 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 酒井 福造
網谷 麻里子
登録日 2017-01-13 
登録番号 商標登録第5912820号(T5912820) 
権利者 加島商事株式会社
商標の称呼 イージーワンタッチ 
代理人 稲葉 良幸 
復代理人 星宮 一木 
代理人 佐藤 俊司 
代理人 田中 克郎 
代理人 池田 万美 

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