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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W03
審判 全部申立て  登録を維持 W03
管理番号 1335291 
異議申立番号 異議2017-900183 
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2018-01-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-05 
確定日 2017-11-27 
異議申立件数
事件の表示 登録第5927984号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5927984号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5927984号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1に示すとおりの構成からなり、平成28年7月26日に登録出願、第3類「せっけん類,シャンプー,クレンジング乳液,薬用せっけん,洗顔せっけん,洗浄用油,家具用及び床用のつや出し剤,つや出しワックス,つや出し剤,研磨剤(研磨用補助液及び歯科用のものを除く。),コランダム(研磨材料),精油,かつら装着用接着剤,浴用化粧品,リップグロス,口紅,美顔用パック,化粧品,香水」を指定商品として、同29年1月23日に登録査定、同年3月3日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する登録商標は、以下のとおりであり、その商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 国際登録第245791号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2に示すとおりの構成からなり、2009年(平成21年)12月15日に国際商標登録出願(事後指定)され、別掲3に記載のとおりの第14類、第18類、第20類、第21類及び第24類の商品を指定商品として、平成25年5月17日に設定登録されたものである。
2 国際登録第1217351号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲4に示すとおりの構成からなり、2014年(平成26年)5月6日に国際商標登録出願され、別掲5に記載のとおりの第35類の役務を指定役務として、平成27年9月18日に設定登録されたものである。
以下、これら引用商標1及び2をまとめていうときは「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第27号証(枝番号を含む。なお、甲号証において、枝番号のすべてを引用する場合は、枝番号の記載を省略する。)を提出した。
1 申立人について
申立人は、ベルギー王国ブリュッセルに本拠を置くコミックス作家エルジュ(本名ジョルジュ・レミ)の作品の著作権を管理するベルギー法人である(甲4)。
エルジュは、1907年ブリュッセル生まれで、1983年に死亡するまでの間、コミックス作家として活躍した。特に、1929年に「Tintin au pays des Soviets」(邦題「タンタン ソビエトへ」)を発表し、その後、「タンタンの冒険旅行」シリーズとして全24巻のコミックスを発表したことで知られている(甲5)。
タンタンの冒険旅行シリーズのコミックスは、世界100以上の言語に翻訳され、累計で2億3千万部以上が販売されている(甲6)。エルジュ自身が「7歳から77歳までの全ての若者」へ向けられたものと語っていたことから、発売当初は子供を読者と想定して発表されたコミックスであったが、その内容は大人も楽しめるものであったことから、年齢を問わず当該シリーズはよく知られたものとなった(甲7)。
「タンタンの冒険」シリーズ名中の「TINTIN」は、本シリーズの主人公の少年記者の名前であり、日本においては、「タンタン」と称呼されている。なお、「TINTIN」が「タンタン」として広く知られていることは、審決においても認定されている(甲8)。
また、日本においては、申立人の子会社である株式会社ムーランサール ジャパンが、タンタン事業を行い、商標権及び著作権の管理等を行っている(甲9)。同社は、2004年7月にサンライズライセンシングカンパニー株式会社から現在の名称へ社名を変更し、30年にわたってタンタン事業をおこなっている。
日本における過去5年間の「タンタン」グッズの販売は7億円(市場価格)である。これは、申立人からの輸出品、日本でのパートナー企業の製造する商品、日本の子会社の販売する商品の売上の合計である。また、日本における過去5年間の申立人の子会社の取引額は、上記商品の販売額に加えライセンスのロイヤリティ、日本の直営店舗やインターネット店舗での売上を含めると8億円である。
2 申立人の事業について
申立人は、引用商標を用いて、タンタン事業を行い、その事業活動の結果、引用商標は周知となっている。
(1)書籍、ムック等の出版物の発行事業
1929年出版の「タンタン ソビエトへ」ののち、日本では、最初に1968年に主婦の友社から「ぼうけんタンタン」の題名でコミックスが刊行されたが、1983年以降は、福音館書店から「タンタンの冒険旅行」シリーズとして全24巻が日本語に翻訳され出版された(甲5、甲10)。
日本での発行部数は、2011年12月現在、ハードカバー版約107万部、ペーパーバック版約26万部である(甲5)。申立人らの日本での直営店とネットショップでの過去5年の書籍の売り上げ額は1,400万円である。
(2)グッズの販売店について
日本の直営のタンタングッズ販売店である「THE TINTIN SHOP」で、「TINTIN」商標が付された被服、壁飾り、おもちゃ、書籍、文房具、食器類、食品、かばん類、袋物、傘、タオル等が販売され(甲11の2?4)、京都の直営店は30年にわたり、申立人の事業を行っている(甲14)。
直営店のほか、タンタングッズを取り扱う商業施設でも、「TINTIN」商標が付された被服、おもちゃ、食器類、かばん類、タオル等が販売されている(甲12の2)。
さらに、TINTIN NET STOREを開設し、全国どこからでもタンタングッズを購入することができる(甲13)。
(3)パートナー企業等の「タンタン」、「TINTIN」の使用
ア A銀行のキャラクターに採用
1996年4月1日より、20年以上にわたり、A銀行は、国内銀行で唯一、タンタンのキャラクターを活用している。通帳類、リーフレット、カタログ、メモ帳、カレンダー、袋類に「TINTIN」、「タンタン」を使用し、銀行業を提供している(甲6、甲15)
イ 株式会社Bのコーポレートキャラクターに採用
2006年1月から12年にわたり、パソコン教室において、コンピュータを使った資格試験の実施・運営を行う株式会社Bは、タンタンをコーポレイトキャラクターに採用し、事業に使用している(甲6、甲16)。
ウ 株式会社CとのTシャツ事業
2015年春より株式会社CのTシャツのキャラクターに「TINTIN」を採用中である(甲6、甲17)。
エ 株式会社Dのキャラクターに採用
2009年より、ベルギーワッフル専門店Eを運営する会社である株式会社Dは、タンタンをキャラクターとして採用している(甲6)。同社は、タンタンを使用した食器類を販売促進のため顧客にプレゼントしている(甲18)。
オ F空輸会社
F空輸会社は、2003年3月から、国内線の機内販売品として、オリジナルのタンタングッズを販売した(甲19の1)。商品は、バッグ、ポーチ、キーリング、ファスナー用アクセサリー、タオルである。2005年には、羽田発韓国便就航キャンペーンの際に、チェックインカウンターの立て看板にタンタンのキャラクターを採用し、タンタンの文字の付されたうちわ、ネームタグ、ステッカー、機内食を搭乗客に配布した(甲19の2)。2015年には、ブリュッセル直行便就航キャンペーンにおいて、「TINTIN」の文字の付された傘とタオルを搭乗客に配布した(甲19の3)。
カ その他の企業
その他、数社の企業等がタンタンのキャラクターを採用し、販売促進のキャンペーンを行ったり、記念コインや郵便葉書に図柄が採用された(甲20)。
(4)ゲーム事業にタンタンがキャラクターとして採用
株式会社Gが、ゲーム提供サイトで提供する無料のゲームアプリに採用した(甲21の1)。
2012年1月に、H株式会社はゲームアプリ「タンタンの冒険」を発売した(甲21の2、甲23)。
(5)日本・ベルギー友好150周年記念イベント
2016年は、日本ベルギー友好150周年の年にあたり、友好を記念する行事が多く行われた。なかでも、2016年10月に名古屋の百貨店で行われた催事には、ベルギー王室のマチルド王妃が来日され、タンタンコーナーを訪れた。また、同催事においてタンタングッズも販売された(甲22)。
(6)映像事業
「タンタンの冒険」シリーズは複数回、映画化されている(甲5)。最古の映画は、1946年から1947年にかけての人形劇映画であり、1955年頃にアニメーション映画、1958年から1963年にかけてテレビアニメ、テレビ向けアニメ等が海外で製作された。我が国では、1998年に衛星放送でアニメーションが放映された(甲5)。
2011年に「タンタンの冒険 ★ユニコーン号の秘密★」が公開された(甲5、甲23)。映画の動員人数130万人、興行収入12億円、映画の興行後はDVD販売がされ、3回にわたり衛星放送で放映されるなど、多くの人がタンタンを知った(甲24、甲25)。
(7)美術展の開催
「タンタンの冒険」シリーズやその主人公タンタンについての展覧会が、日本においては、1989年に「タンタン架空美術館」が京都の百貨店と東京のデパートで開催された(甲26の1)。また、2002年3月16日から5月6日まで、東京のミュージアムで「タンタンの冒険」展が開催された(甲26の2?3)。さらに、2017年1月25日から同月31日まで、大阪の百貨店で「ベルギーにときめいて」展が行われ、タンタングッズが展示販売された(甲26の4)。
(8)出版物等の販売
アニメ版や実写版の「タンタンの冒険」のDVDや関連書籍(電子書籍)が販売された(甲27)。
(9)小括
以上のとおり、引用商標は、申立人の業務を示す商標として、本件商標の出願日である平成28年7月26日及び登録日である同29年3月3日において、我が国の需要者の間で周知著名であった。
3 商標法第4条第1項第15号に該当する理由
(1)出願商標が同項第15号に該当し登録できないものであるか否かは、以下のアからキの事由に該当するかを総合勘案して判断するものとされている。
ア 出願商標とその他人の標章との類似性の程度について
本件商標は、文字と図形で構成された態様であり、その構成において、文字と図形とが一体的と認められなければならない事情は見出せず、「tintin」の文字部分から「タンタン」の称呼が生じる。
一方、引用商標は「TINTIN」と書されており、この部分から「タンタン」の称呼が生じる。
両商標を対比すると、称呼はいずれも「タンタン」と共通し、観念においても違いはないから、両商標は類似する。
イ その他人の標章の周知性
引用商標は、申立人の30年に及ぶタンタン事業により、我が国の需要者の間で広く知られたものとなった。
ウ その他人の標章が造語よりなるものであるか、又は構成上顕著な特徴を有するものであるか
引用商標は、コミックス「タンタンの冒険」シリーズの主人公の名前に由来するが、その語自体は造語である。
エ その他人の標章がハウスマークであるか
引用商標は、申立人の事業の出所を表示する最も代表的な商標であり、ハウスマークである。
オ 企業における多角経営の可能性
申立人は自己の事業を行うことのほか、これまで様々な他業種の企業との間で、ライセンス事業やパートナーとして共に事業をおこなっている。その業種も、銀行、教育、旅客輸送、郵便事業、旅行代理店、流通、被服、飲食物、娯楽産業と多岐にわたることから、今後も様々な他業種の企業とのライセンス事業等は当然に予想される。
カ 商品間、役務間又は商品と役務間の関連性
引用商標の指定商品には、第14類、第18類の身体を装飾するため身につける商品が含まれる。
一方、本件商標にかかる指定商品は、化粧品といった装飾のための商品が含まれている。
よって、本件商標と引用商標は、「身体を装飾する」という性質が共通している商品を含むことから、両商品には関連性がある。
キ 商品等の需要者の共通性その取引の実情
引用商標の指定商品は、我が国の通常の需要者を需要者としており、本件商標の指定商品も同様であり、いずれも特殊な取引の実情があるわけではないから、引用商標と本件商標は需要者を共通とする。
(2)上述のとおり、我が国において引用商標が周知著名であることに鑑みれば、本件商標からは「tintin」の文字のみが他の部分から分離・独立して抽出され、出所識別標識機能を十分に果たし得る。
よって、本件商標に接する需要者等が、「tintin」の部分のみに着目し、我が国おいて周知著名である引用商標と関連のある商標であると誤認することは容易に想定できる。
また、申立人は、幅広い業種の企業との間で、ライセンス事業やパートナーとしての事業を行っている。
以上の事情を鑑みれば、本件商標をその指定商品に使用するときは、その取引者及び需要者において、当該商品が申立人等の業務に係る商品、あるいは、申立人等と緊密な関係にある者の業務に係る商品であると誤認し、その出所につき混同するおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
4 商標法第4条第1項第19号に該当する理由
(1)出願商標が同項第19号に該当し登録できないものであるか否かは、以下のアからウの事由に該当するかを総合勘案して判断するものとされている。
ア その他人の標章の周知性
引用商標は、申立人の30年にわたる事業活動や他企業とのライセンス事業により、我が国において周知著名となっていることは上述のとおりである。
イ 商標の同一又は類似性の程度
本件商標と引用商標は、大文字であるか小文字であるかの違いはあるけれど、いずれも「TINTIN」又は「tintin」の文字から生じる称呼「タンタン」を共通とするものであり、類似性の程度は高い。
不正の目的
引用商標が、本件商標の出願時において、すでに周知著名であることは明白であることから、本件商標権者が、これを知ることは容易であったといえる。そして、本件商標も引用商標も造語であるにもかかわらず、類似の程度が高く、極めて紛らわしい。
(2)これらの事情を考慮すると、本件商標は、引用商標が有している強力な顧客吸引力へのただ乗り又は希釈化を意識した不正の目的をもって、出願されたものといわざるを得ない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。

第4 当審の判断
1 引用商標に係る「TINTIN」の欧文字の周知性について
(1)申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 申立人は、ベルギー王国ブリュッセルに本拠を置く、コミックス作家エルジュ(本名ジョルジュ・レミ(1907?1983))の作品の著作権を管理するベルギー法人であると主張するが、甲第4号証には訳文が提出されていないのでその詳細は不明である。
そして、エルジュが1929年に発表した「タンタンの冒険」の絵本シリーズは、世界100か国以上で翻訳され、シリーズの全世界での発行部数は2億3千万冊に達し、該絵本は、アニメーション化や映画化された(甲6)。
イ 「THE TINTIN SHOP」の看板を掲げる店舗において、「タンタン」の文字をタイトルに含む「タンタンの冒険」の絵本シリーズ及び「TINTIN&SNOWY」の欧文字及びくるっとはねたブロンドの前髪とニッカボッカがトレードマークの少年記者のキャラクター(以下「本件キャラクター」という。)と両耳がやや折れた白色の犬のキャラクターが付されたマグカップや皿等の商品が販売され(甲11、甲12)、「TINTIN NET STORE」においても、「TINTIN」の欧文字及び本件キャラクターが付されたTシャツ等が販売されている(甲13)。
そして、「THE TINTIN SHOP 京都店」は、2017年に30周年を迎えた(甲14)。
ウ A銀行がメインキャラクターとして、通帳等に本件キャラクターを付している(甲6、甲15)。また、株式会社Bがコーポレート・キャラクターとして本件キャラクターを採用し、カタログ等に本件キャラクターを付している(甲6、甲16)。そして、株式会社Cが、Tシャツのキャラクターとして採用し、本件キャラクター及び「TINTIN」の欧文字をTシャツに付している(甲6、甲17)。その他、数社がキャンペーン等において本件キャラクターを採用し、「TINTIN&SNOWY」や「TINTIN」の欧文字と本件キャラクターを各種キャンペーンの広告物に付している(甲6、甲18?甲20)。さらに、本件キャラクターに係るゲームや映画が製作されている(甲6、甲21、甲24、甲25)
エ 2016年10月12日から同月18日に、名古屋の百貨店において日本・ベルギー友好150周年イベントが開催され、そこに出店した「THE TINTIN SHOP NAGOYA」を、ベルギー王室のマチルド王妃が訪れた(甲6、甲22)。
オ 1989年に、日本において「タンタン架空美術館」ミニ・バージョンが、京都の百貨店や東京のデパートで開催された(甲6、甲26の1)。また、2002年3月16日から同年5月6日にわたり、東京のミュージアムで「タンタンの冒険」展が開催された(甲6、甲26の2)。さらに、2017年1月25日から同月31日まで、大阪の百貨店で「ベルギーにときめいて」展が開催され、タンタングッズが展示販売された(甲26の4)。
(2)上記(1)の事実によれば、「タンタンの冒険旅行」シリーズの絵本は、世界100カ国以上で翻訳、出版され、全世界での発行部数は、2億3千万冊に達し、当該絵本に関する展覧会やイベントが、1989年、2002年、2016年及び2017年に我が国において開催された。
そして、「TINTIN&SNOWY」の欧文字、「TINTIN」の欧文字及び本件キャラクターが、マグカップ、皿等の商品や各種キャンペーンの広告物に付された。
しかしながら、引用商標に係る「TINTIN」の欧文字がそれのみで使用されているものはなく、その多くは、「TINTIN&SNOWY」の欧文字で使用されており、必ず本件キャラクターとともに表示されていることから、これらの文字は、本件キャラクターと一体的に認識されるものである。また、前記商品の我が国における売上高、販売数量、市場占有率等を示す資料は何ら提出されていないから、我が国における引用商標を使用した商品についての量的規模を客観的かつ具体的に把握できない。さらに、前記広告の規模を示す資料の提出がないものであるから、引用商標の使用の事実を量的に把握することができない。加えて、前記イベントや展覧会は、1989年、2002年、2016年及び2017年に、京都、東京、名古屋、大阪で開催されたにすぎないことからすると、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、「タンタンの冒険旅行」シリーズの絵本は、我が国の需要者の間において一定程度知られていたといえるものの、引用商標に係る「TINTIN」の欧文字が、申立人の業務に係る商品及び役務を表示する商標として、我が国の需要者の間で広く認識されていたものということはできない。
2 本件商標と引用商標との類否について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、黒色矩形内に白抜きの円図形を配し、該円図形の左上及び右下に円図形に接続して太字直線を縦に配置した図形(以下「図形部分」という。)と該円図形の太字直線の間に「tintin」(「i」の「・」がない。以下、同じ)の欧文字を配置した構成からなるものであるところ、本件商標の構成中、図形部分と「tintin」の文字部分は、観念上のつながりはなく、それぞれが視覚上分離して看取されることから、それぞれ分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえず、本件商標に接する需要者、取引者は、その構成中、中央に顕著に表され、強く支配的な印象を与える「tintin」の文字部分を、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものと認識するというべきである。
そして、本件商標は、その構成中の図形部分からは、取引に資する上での特定の称呼及び観念は生じないというべきであり、かつ、その構成中の「tintin」の文字部分は、我が国において親しまれた既成の語ではなく、一種の造語として認識され、一般的に、特定の意味を有さない欧文字からなる造語にあっては、我が国において親しまれた外国語である英語読み又はローマ文字読みをもって称呼されるとみるのが自然であるから、該文字部分は、その構成文字に相応して「ティンティン」又は「チンチン」の称呼を生じ、特定の観念は生じないというのが相当である。
なお、申立人は、本件商標の文字部分からは、「タンタン」の称呼が生じる旨主張する。確かに、「tintin(TINTIN)」の欧文字は、フランス語風に読む場合、「タンタン」と発音されることもありうるものの、我が国においては、フランス語は英語ほどには普及していないことからすれば、「タンタン」との称呼が生じるとはいえない。
(2)引用商標について
引用商標は、ともに「TINTIN」の欧文字を書してなるところ、該文字は、我が国において親しまれた既成の語ではなく、一種の造語として認識され、一般的に、特定の意味を有さない欧文字からなる造語にあっては、我が国において親しまれた外国語である英語読み又はローマ文字読みをもって称呼されるとみるのが自然であるから、引用商標は、その構成文字に相応して「ティンティン」又は「チンチン」の称呼を生じ、特定の観念は生じないというのが相当である。
なお、「タンタン」の称呼を生じないことは、上記(1)のとおりである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標との類否について検討するに、本件商標の要部と認められる「tintin」の文字部分は、引用商標の「TINTIN」の欧文字と、大文字と小文字の相違はあるとしても、同一の綴り字であり、両者は外観上近似した印象を与えるものである。
そして、本件商標と引用商標は、ともに「ティンティン」又は「チンチン」の称呼を共通にし、観念において相違するものではない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観において近似し、称呼及び観念において互いに紛らわしい類似の商標というべきである。
3 本件商標に係る指定商品と引用商標に係る指定商品との関連性について
申立人は、本件商標に係る指定商品である化粧品と引用商標に係る指定商品中、第14類と第18類の商品とは、いずれも身体を装飾するために身につける商品であるから、両商品には関連性がある旨主張している。
しかしながら、本件商標の指定商品と、引用商標の指定商品中、第14類及び第18類の商品とは、その商品を製造、販売する事業者やその用途は異なり、その需要者の範囲も異なるものであるから、両者の関連性は低いものである。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記2のとおり、本件商標と引用商標とは、互いに紛らわしい類似の商標であるが、上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして、我が国の需要者の間で広く認識されていたということはできないものであり、また、上記3のとおり、本件商標に係る指定商品と引用商標に係る指定商品とは関連性を有しないものである。
そうすると、本件商標を、本件商標権者がその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が、引用商標ないし申立人を想起又は連想することはなく、その商品が申立人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第19号該当性について
上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国の需要者の間で、申立人の業務に係る商品及び役務を表すものとして、広く認識されていたとは認められないものであるから、引用商標が我が国及び外国の需要者の間で広く認識されていた商標であることを前提に、本件商標は不正の利益を得る目的をもって使用されるとする申立人の主張は、その前提を欠くものである。
そうすると、本件商標は、引用商標の周知著名性へのただ乗りをし、不正の利益を得る目的等、不正の目的をもって使用されるものであるということもできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
6 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標)


別掲2(引用商標1)


別掲3(引用商標1の指定商品)
第14類「Precious metal, unwrought or semi-unwrought; key rings (trinkets or fobs) of precious metal; jewellery cases (caskets) of precious metal, jewellery, precious stones, timepieces.」
第18類「Leather and imitation leather, goods made thereof (included in this class), skins, hides and pelts, trunks and suitcases, umbrellas, parasols and walking sticks, whips, harness and saddlery.」
第20類「Furniture, mirrors, frames, furniture made from wood or substitutes for wood, bands of cork or substitutes for cork; statuettes of wood, wax, plaster or celluloid; boxes of celluloid, packing boxes and containers made of celluloid, celluloid and wooden sculptures.」
第21類「Small portable household and kitchen utensils and containers (except gloves for household purposes), combs and sponges , brushes (other than shoebrushes), brush ware materials, cleaning implements and equipments, steel wool, glassware, porcelain and earthenware.」
第24類「Face towels of textile, table napkins of textile, table linen of textile, wall covering of textile.」

別掲4(引用商標2)


別掲5(引用商標2の指定役務)
第35類「Advertising and promotional services; business management especially via the Internet (e-commerce); franchising,namely consultation and assistance in business management; sales promotion (for others); public relations; assistance and consulting services in the fields of advertising and promotion,marketing and business communication; organization of events and exhibitions for commercial,promotional and advertising purposes.」




異議決定日 2017-11-16 
出願番号 商願2016-80161(T2016-80161) 
審決分類 T 1 651・ 222- Y (W03)
T 1 651・ 271- Y (W03)
最終処分 維持  
前審関与審査官 平松 和雄 
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 尾茂 康雄
原田 信彦
登録日 2017-03-03 
登録番号 商標登録第5927984号(T5927984) 
権利者 御家匯股▲ふん▼有限公司
商標の称呼 ティンティン、チンチン、タンタン 
代理人 勝見 元博 
代理人 森脇 靖子 
代理人 鮫島 睦 
代理人 阿部 達彦 

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