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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X09
管理番号 1335269 
審判番号 取消2016-300696 
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2016-10-06 
確定日 2017-11-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第5297842号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5297842号商標(以下「本件商標」という。)は、「脱出ゲーム」の文字を標準文字により表してなり、平成21年8月19日に登録出願、第9類「インターネットを通じてダウンロード可能な携帯電話機用のゲームプログラム,インターネットを通じてダウンロード可能なパーソナルコンピューター用のゲームプログラム,家庭用テレビゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のダウンロード可能なゲームプログラム」を指定商品として、同22年1月29日に設定登録されたものである。
なお、本件審判の請求の登録日は、平成28年10月18日である。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項により、本件商標の指定商品中の第9類「全指定商品」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証(枝番を含む。)提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その登録に係る指定商品中、第9類「全指定商品」について、本件審判の請求の登録前3年以内(以下「要証期間内」という。)に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)乙第1号証ないし乙第5号証について
ア 被請求人は、「脱出ゲーム」を販売した実績の請求明細として、株式会社NTTドコモ(以下「NTTドコモ」という。)、KDDI株式会社(以下「KDDI」という。)が発行した売上明細書を各乙号証として示し、本件商標に係る指定商品・役務について使用をしていることが証明されていると主張する。
しかし、各乙号証のいずれの書面を参照しても、NTTドコモが発行したことを示す書面は示されていない。またKDDIが発行したとする書面については、「サイト名称」「サービス名称」「サービス開始日」及び請求の項目についての記載はあるが、そのウェブサイトのアドレスさえ表示されておらず、その請求が如何なるウェブサイト、さらには如何なる内容の商品・役務に対する請求であるかが証明されていない。なお、各乙号証をみると、サービス名称の欄に「(電子書籍)」の記載が見受けられるが、これらを踏まえれば、これらの振込額内訳書については、「電子出版物」に属する「電子書籍」に相当する商品として取引された書面であることが明らかである。なお、この「電子書籍」については、本件商標に係る指定商品には含まれていない。
イ 各乙号証におけるサイト名称、サービス名称の欄には、「脱出ゲーム@ガットメール」「なぞとき屋」「デコレア☆取り放題!」の表示は明示されているが、本件商標は付されていない。
なお、上記表示には「脱出ゲーム@ガットメール」のような「脱出ゲーム」を含む表示もあるが、そもそも「脱出ゲーム」は甲第1号証に示されるように被請求人が出願する前より、「閉鎖された環境(室内や建物)に閉じ込められた状況から脱出することを目的とするゲーム」を内容とするコンピュータゲームの一ジャンルとして確立されている名称であり、また「ガットメール」は造語であることから、全体として「ガットメールというサービスによる脱出ゲームのジャンル」との意味合いを想起させるものとなっているから、「脱出ゲーム」を一つの商標として、把握するとは考えられない。
ウ 以上のとおり、各乙号証は、いかなる商品及び役務についての請求であるかを明らかにしておらず、また記載のある「電子書籍」は請求にかかる指定商品又は役務とは異なるものであるから、本件審判請求に係る指定役務のいずれかについての商標の使用を証明したということはできない。
(2)答弁書において主張するウェブサイトについて
被請求人は、答弁書において、各乙号証に記載されているウェブサイトとしてウェブサイトのアドレスを示して本件商標が使用されていると主張する。
しかし、答弁書において示されているのはウェブサイトのアドレスのみであり、その内容について何ら主張されておらず、更にはそのウェブサイトが各乙号証と関係がある旨の主張はされているが、その事実を証明する証拠の提出はない。さらには主張する各ウェブサイトにおいて要証期間内に本件商標の使用をしたとする証拠の提出もない。
これらの被請求人の主張をもって、その請求に係る指定商品についての商標の使用を立証したということはできない。
(3)まとめ
以上のとおり、被請求人によって提出された答弁書及びその証拠書類によっては、本件商標権者又はその使用権者が、本件商標を要証期間内に、その請求に係る指定商品のいずれかについて使用していたということはできない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第14号証を提出した。
1 答弁書
(1)被請求人は、本件商標に係る指定商品・役務について使用をしていることを証明する書面として、「脱出ゲーム」を販売した実績の請求明細書を提出する。当該請求明細書は、日本の主要な携帯電話会社であるNTTドコモ、KDDIが発行した売上明細書であり、通信会社の暗号化により改ざんできないようにされているため、信憑性は高い。
(2)脱出ゲームを利用したビジネス実績について
被請求人が継続して使用している本件商標「脱出ゲーム」は、2005年ガットメールというウェブサイトにて、配信を開始した。多くのユーザーに認知され約10年、相当数の「脱出ゲーム」の数を揃えるようになった。PCゲームの提供数は81個、スマートフォンゲームの提供数は411個、フィーチャーフォンゲームの提供数は2012個になる(2016年10月現在)。
2008年にはNTTドコモ、KDDIau、SoftBankの運営する携帯公式サイトとして承認された。携帯サイトの名前は「脱出ゲーム@ガットメール」である。各通信会社の厳しい審査を経て通信会社の決済サービスを利用している。
2012年よりは、過去に作られた作品をスマートフォンにリメイクするなど、ビジネス展開し現在に至っている。
(3)提出証拠に記載のサイトについて
提出した請求明細書に記載されているウェブサイトは以下のとおり。
ア デコレア取り放題「http://www. gotmail.jp/qr/」
イ 脱出ゲームガットメール「http://www. gotmail.jp/」
ウ なぞとき屋「http://www. gotmail.jp/mobile/nazo.html」
(4)結語
以上のおり、被請求人は、本件商標に係る指定商品・役務について継続して使用していることは明らかである。
2 回答書
(1)乙第6号証は、NTTドコモより送付された2017年2月11日から同年3月10日の回収期間における被請求人に対する支払額通知書である。これによれば、ガットメール(乙13)、なぞとき屋ゲーム(乙14)、エビデンスの各サイトにおける被請求人の売上実績が確認できる。
なお、この支払額通知書のPDFは、NTTドコモよって暗号化防御され改ざんできない状態にある。
乙第7号証は、NTTドコモの管理画面のスクリーンショットである。「脱出ゲーム」というインターネットを通じてダウンロード可能な携帯電話機用のゲームプログラムを、NTTドコモの公式サイトとして販売するためにNTTドコモに登録されている被請求人(iモード情報提供者)の登録情報を示している。
なお、NTTドコモの公式サイトとは、NTTドコモの審査をパスした企業だけが、NTTドコモのメニューに登録されることを許可されるものである。
乙第11号証にiモードサイトを含むNTTドコモの公式サイトにおけるドコモケータイ払いについて説明されており、乙第12号証にNTTドコモの審査について説明されている。
乙第12号証の「2.【CPに対する規定】2-1.申請および提供対象<運用面>」においては、「コンテンツを継続的に安定して提供できる能力と経営基盤かおること(お客様窓口の円滑な運営や、安定したサーバ運用・保守等が可能なこと)」と規定されている。なお、CPとはコンテンツプロバイダの略であり、被請求人はCPである。
そして、NTTドコモのコンテンツパトロールが頻繁に公式サイトを巡回している。つまり、被請求人が契約した2008年から本日に至るまで永続的に公式サイトを運営し、NTTドコモに強制解約されていないということを示している。
これは約10年間、被請求人(商標権者)がNTTドコモの監査のもと継続的にビジネスを続け、ここで「脱出ゲーム」で売上を得ている証拠である。
(2)乙第6号証の第2頁は2017年1月1日から同月31日までの期間の脱出ゲームの売上をNTTドコモが集計し、被請求人に送付した明細である。
この明細の対象となっているサイトのサイト名は「ガットメール」である。この「ガットメール」では脱出ゲームのFlashゲームを販売している。なお、明細におけるサイト名の欄には「ガットメール96円」と記載されているが、1個ダウンロードすると96円かかる。
乙第13号証は上記ページをPCで表示したハードコピーである。販売している脱出ゲームの数は1000個を超えており、上記ページに掲載しているQRコードからフィーチャーフォンの実機で確認できる。
乙第6号証の第5頁の明細におけるサイト名の欄には「なぞとき屋ゲーム300円」と記載されている。「なぞとき屋」というサイトでは、ゲームを1個300円で販売している。
乙第14号証は上記ページをPCで表示したハードコピーである。ゲーム数は300個を超えている。
(3)乙第8号証はNTTドコモの管理画面のスクリーンショットである。「脱出ゲーム」を販売するiモード月額サイト「ガットメール」の登録情報が記載されている。
ここで、サイト情報の変更日は2013年10月16日となっており、「脱出ゲーム」を販売する「ガットメール」のサイト情報は、この変更日以来、そのままであることを示している。
(4)乙第9号証は同じくNTTドコモの管理画面のスクリーンショットである。「脱出ゲーム」及び脱出ゲームを販売するサイト「ガットメール」をNTTドコモのメニューリストに登録している状況を示している。前述のようにNTTドコモの審査に合格したサイトのみビジネスが可能である。
乙第9号証の「メニュー開始日」の欄の記載により、NTTドコモのメニューリストにおいては、登録時の2008年2月4日より、「脱出ゲーム@ガットメール」として約10年運営されていることが示されている。
また、このサイトは「脱出ゲーム」のみを扱ったサイトであり、NTTドコモが承認し、メニューリストに掲載されている。
なお、「@」という記号は、データ等に関連するサーバを示す区切り記号としてインターネットでは広く用いられている記号である。よって、需要者は「区切り記号」と認識し、「脱出ゲーム@ガットメール」という表示を見れば、「ガットメール」というサイトにある「脱出ゲーム」と理解するのが通常である。よって、「脱出ゲーム」という標章が付されたゲームプログラムを指していることは取引界において常識と言える。
(5)実際のサイトは、今回の場合はNTTドコモの携帯電話(フィーチャーフォン)によって確認することができる。
iMenu(乙10)についてはPCでも確認できる。
(6)結辞
以上のとおり、被請求人は、本件商標に係る指定商品について継続して使用していることは明らかである。

第4 当審の判断
1 証拠及び被請求人の主張によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第7号証ないし乙第9号証について
ア 乙第7号証は、NTTドコモの管理画面「iモード情報提供者登録 参照」画面のプリントアウトであるが、「IP基本情報」及び「有料IP情報」に被請求人(商標権者)の名称及び住所の記載が確認できる。
イ 乙第8号証はNTTドコモの管理画面「iモード月額サイト登録 変更」画面のプリントアウトであるが、「サイト名」に「ガットメール」の記載が、サイト情報の「変更日※」には「2013年10月16日」の記載が確認できる。
ウ 乙第9号証はNTTドコモの管理画面「メニュー登録 参照」画面のプリントアウトであるが、基本情報(FOMA)には「メニュー開始日」として「2008年02月04日」の記載が、「メニュー名」として「脱出ゲーム@ガットメール」の記載が、「メニューのジャンル」として「・ゲーム>アドベンチャー/ノベル」の記載が、「サービス内容」として「大人気脱出ゲームが売切り100円★ここでしかダウンロードできないハイクオリティなゲームが続々登場」の記載が確認できる。
そして、乙第7号証ないし乙第9号証に記載の「ログインID」及び「ログイン名」が一致することから、これら管理画面は被請求人(商標権者)による同一サイトのものと認められる。
エ これより被請求人(商標権者)は、NTTドコモの提供する「iモード」のサービスにおいて、2008年2月4日より、ダウンロード可能なゲームプログラムの販売を目的とした「脱出ゲーム@ガットメール」なるメニュー名の携帯電話用ウェブサイトを運営してきたといえ、当該ウェブサイトの情報の最終変更日は2013年10月16日であったことが確認できる。
(2)乙第13号証について
ア 乙第13号証は「携帯公式サイト『脱出ゲーム@ガットメール』のトップページ」をパーソナルコンピュータで表示した画面を2017年4月6日にプリントアウトしたものとのことであるが、当該書証の左上には「このページは、携帯公式サイト『脱出ゲーム@ガットメール』のトップページのイメージです。PCではご利用できません。」の記載がある。
イ 上記アの記載の下には携帯電話(フィーチャーフォン)の画面程の幅の横書きの記載が、3列に表示された構成からなるところ、左列上部には別掲のとおり、「非常口」を表すピクトグラムを模した図形と、図形の右側に「脱出ゲーム」及び「@ガットメール」の文字を二段に配した構成からなる標章が表され、当該標章構成中の「脱出ゲーム」の文字は「@ガットメール」に比べて2倍から3倍の大きさの文字で表されている。また、当該標章以下には「[PR]行列のできた脱出ゲーム」、「おススメ脱出ゲーム」、「今週の新作脱出ゲーム」などのゲームの紹介、広告といえる記載も確認できる。
ウ 当該書証の中央列には「ガットメールの携帯サイト! ただいま携帯脱出ゲーム1000個以上配信中!!」の記載と、「i-mode」、「EZweb」及び「Yahoo!ケータイ」の該携帯電話用のウェブサイトへ遷移するための2次元コードが記載されている。さらにその下段には「i-mode/EZweb/Yahoo!ケータイ公式サイト提供中」の記載及び「ゲームタイトルリスト」のもとゲーム名の一覧と思われる記載が確認できる。
エ これより、乙第13号証は、携帯電話の画面の縦スクロールにより表示される携帯電話用のウェブサイト画面と同様の記載内容を、パーソナルコンピュータの画面において3列に表示したものであり、表示される内容は携帯電話用のウェブサイトとパーソナルコンピュータの画面とで同様のものといって差し支えない。
そして、この携帯電話用のウェブサイトは、そのタイトル、内容などから、上記(1)により運営、管理されているウェブサイトであることに不自然な点はなく、また、当該ウェブサイトにおいて「インターネットを通じてダウンロード可能な携帯電話機用のゲームプログラム」の販売をしていたことが認められる。
次に、上記イにおいて認定した図形と「脱出ゲーム」及び「@ガットメール」の文字を二段に表してなる標章は、携帯電話用のウェブサイトのタイトル部であること、該商標構成中「脱出ゲーム」の文字部分は、明らかに他の図形及び文字と比べて大きく顕著に表されていることからすれば「脱出ゲーム」の文字部分は標章として使用しているといえるものであって、該文字部分の構成文字と本件商標の構成文字とは同一であることから、両者は社会通念上同一の商標といえる。
(3)小括
上記(1)及び(2)によれば、被請求人(商標権者)は、我が国において、2008年2月頃より携帯電話用のウェブサイトにおいて「インターネットを通じてダウンロード可能な携帯電話機用のゲームプログラム」を紹介(広告)及び販売をしており、少なくとも要証期間内である2013年(平成25年)10月16日頃からは、当該携帯電話用のウェブサイトにおいて、本件商標と社会通常上同一の商標を使用し、電磁的方法により提供していたと認められ、当該行為は、商標法第2条第3項第8号に定める商標の「使用」に該当する。
なお、審判長は、平成29年9月3日付けで、請求人に対し、被請求人提出の回答書を送付し、期間を指定して、これに対する弁駁を求めたところ、請求人からは、所定の期間を経過するも、何ら意見の提出はなかった。
2 まとめ
以上のとおり、被請求人は、商標権者が、要証期間内に、日本国内において、本件審判の請求に係る指定商品に含まれる「インターネットを通じてダウンロード可能な携帯電話機用のゲームプログラム」について、本件商標と社会通念上同一と認められる標章の使用をしたことを証明したということができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 (色彩は原本を確認のこと。)




審理終結日 2017-09-13 
結審通知日 2017-09-20 
審決日 2017-10-03 
出願番号 商願2009-63296(T2009-63296) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (X09)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 敦子 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 田中 幸一
冨澤 武志
登録日 2010-01-29 
登録番号 商標登録第5297842号(T5297842) 
商標の称呼 ダッシュツゲーム、ダッシュツ 
代理人 園田・小林特許業務法人 

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