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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 025
管理番号 1335217 
審判番号 取消2015-300212 
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-03-25 
確定日 2017-08-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第3065975号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3065975号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成4年8月7日に登録出願され、第25類「洋服,コ?ト,セ?タ?類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲ?トル,毛皮製スト?ル,ショ?ル,スカ?フ,足袋,足袋カバ?,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチ?フ,マフラ?,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガ?タ?,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。),乗馬靴」を指定商品として、同7年8月31日に設定登録されたものであり、その後、2回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、また、商標登録の取消しの審判により、指定商品中の第25類「靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。),乗馬靴」についての登録を取り消す旨の審決がされ、同27年10月8日にその確定審決の登録がされたものである。
なお、本件審判の請求の登録は、平成27年4月9日にされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項に規定により、本件商標の指定商品中、第25類「洋服,コ?ト,セ?タ?類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲ?トル,毛皮製スト?ル,ショ?ル,スカ?フ,足袋,足袋カバ?,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチ?フ,マフラ?,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガ?タ?,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」についての登録を取り消す、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出している。
1 不使用取消請求
本件商標は、その指定商品中の上記の本件審判の請求に係る指定商品について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されていないものであるから、商標法第50条第1項の規定により、その登録は取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
被請求人は、答弁書において、本件商標は、取消請求に係る指定商品中の「コート」に使用しており、その事実を乙第1号証により立証すると主張しているが、以下のとおり、被請求人のこれらの主張では本件商標の使用とは認められない。
(1)乙第1号証(枝番号を含む。以下同じ。)の「登録商標の使用説明書」は、納品書や請求書を含めて、全て権利者である被請求人自身により作成されたものであり、第三者による客観的な証明及び証拠は一切無く、答弁書における主張及び証拠は客観性に欠け、これらをもって本件商標の使用を認めることはできない。
(2)乙第1号証について、以下の点が本件商標の使用に疑問を生じさせる。
ア 添付の商品写真から認められることは、コートのライナーの織ネーム部分及び下げ札に本件商標の「FIELD HOUSE」が付されているのが認められるだけであって、コート自体に本件商標が付されていることは明らかにされていない。一般的には、コート自身にも商標が付されているのが普通である。
イ 本件商標を使用した当該コートが実際に販売された事実は、例えば、請求書、納品書により立証すると主張しているが、冬物の重衣料であるコートを、当該冬物衣料の販売が既に終了し、春物衣料の販売も終盤に掛かっている3月の下旬に販売するというのも不自然なことと思われ、被請求人のみの証明であることを除いても、当該コートの卸(販売)が実際に行われたとは認め難い。
ウ 被請求人は、本件商標を使用したコートは、本件商標の登録時の1995年頃から継続的に使用されており、主に全国の主要百貨店において委託販売の形態で販売され、前年度だけでも5400点、1億7千万円の売り上げがされているにも関わらず、登録商標の取消しの成否が審理される、登録商標の使用の立証に当たって、僅か一点のみの証明というのもいかにも不自然なことと思われる。しかも、被請求人は需要者へ直接販売しているものとも思われず、卸であれば一点のみの販売ということも到底信じられない。
エ 被請求人が平成27年の3月に一点販売したという「studio ZERO」のホームページデータを見ると「メーカー直送 野海コート専用」の欄が設けられているが、この「studio ZERO」のホームページデータには、商品写真で明らかにされたコートは掲載されておらず、「studio ZERO」が該コートを販売していたことは明らかではない。また、メーカー直送であれば、3月23日の際に被請求人が販売した顧客の直送先が記録されているものと思われるが、その顧客の住所も明らかでない。
また、この「studio ZERO」のホームページデータは、平成27年5月29日付けのものであり、上記コートを卸(販売)したのは、同年3月23日であり、時期が異なる上記「studio ZERO」のホームページデータの提出は本件商標の使用の立証とは無関係である。
これらのことから、上記「studio ZERO」のホームページデータによっては、本件商標の使用を明らかにできない。
3 口頭審理における陳述及びその後の主張
(1)本件商標の使用商品「コート」の同一性について
ア 被請求人は乙1号証の使用証拠の裏付けとして乙第2号証ないし乙第7号証を提出しているが、これらの号証には、乙第1号証の本件商標の使用商品である「コート」の製品品番「FH217-1」と異なる製品品番が記載されており、これらが乙第1号証とどのような関係にあるのか不明であり、乙第1号証の証拠の裏付けとはならない。
すなわち、乙第4号証及び乙第5号証の「コート」の製品品番は「FH2501」であり、また、乙第6号証及び乙第7号証の「コート」の製品品番は「fh2512-2」及び「FH2512」であり、上記乙第1号証の「コート」の製品品番「FH217-1」と異なる。
イ そして、被請求人は、乙1号証の「FH217-1」、乙第4号証及び乙第5号証の「FH2501」、乙第6号証の「fh2512-2」及び乙第7号証の「FH2512」である各製品番号の関連性についての主張をしておらず、その証拠も提出されていない。
(2)本件商標の使用商品の証拠について
乙第4号証は、被請求人宛ての玉野縫製株式会社の請求書であるが、玉野縫製株式会社の印鑑が見当たらない。また、被請求人が提出した乙第1号証ないし乙第9号証は、第三者による客観的な証拠が見当たらない。
(3)乙第4号証及び乙第5号証について
乙第4号証は、乙第5号証の被請求人の「加工指図書」に基づいて、玉野縫製株式会社が「コート」を製造し、被請求人に納品し、その結果の2枚の「請求書」と推測されるが、当該2枚の「請求書」と「加工指図書」の「コート」のサイズ及び数量が一致していない。したがって、「請求書」は「加工指図書」に対応する物とは思われず、その結果、請求書の「FH2501」が「FIELD HOUSE」を付した「コート」であるかどうかが分からない。
また、乙第4号証の玉野縫製株式会社の被請求人宛ての請求書では「FH2501」の単価は26,200円となっているが、乙第1号証の「亀井宏(Studio Zero)」宛ての請求書では、「FH217-1」は原価が19,500円、売価が30,000円となっており、これらも一致しない。
また、乙第5号証の「加工指図書」では「コート」の表地はカシミヤ100%となっているが、乙第1号証の「コート」の写真の下げ札には表地は綿100%となっている。
(4)乙第6号証及び乙第7号証について
ア 乙第6号証は、「こだわり工房楽天市場店 お買い上げ明細書」であり、この販売製品(品番fh2512-2)は、乙第7号証の被請求人の「加工指図書」に基づいて製作された製品品番「FH2512」のものとして提出されたと思われるが、この「加工指図書」は誰に宛てたものか不明であるとともに、上記製品品番が異なる点も不明である。また、乙第6号証では2015年2月7日に注文を受けており、メーカー直送となっており、代金は60,000円となっている。乙第1号証では、被請求人が納品したのは2015年3月23日であり、注文から1か月と16日も経って納品しており、注文から納品日までが長く不自然である。さらに、乙第1号証の納品書や請求書では「売価が30,000円」となっているが、乙第6号証では「60,000円」で販売しているのも理解できない。
イ 乙第7号証の「加工指図書」は2014年5月8日付けであるのに対し、乙第6号証の「お買い上げ明細書」は2015年2月7日付けであり、前記「加工指図書」から9か月経っている。また、製品番号も乙第7号証が「FH2512」であり、乙第6号証は「fh2512-2」である。この点、被請求人は乙第6号証の商品と乙第7号証とは合致する商品であると主張しているが、乙第6号証では「ステンカラー ラグラン ロングコート ネイビー 濃紺」と表示されており、乙第7号証ではデザイン欄に「ステンラグランハーフ(3枚袖)」と表示されている。すなわち、前記乙第7号証のデザイン欄の表示からは「ステンカラー、ラグラン袖(3枚袖)、ハーフコート」と解釈できる。したがって、乙第7号証は、乙第6号証の「ロングコート」ではなく、「ハーフコート」の「加工指図書」であると思われる。
以上のことから、乙第6号証の商品は、乙第7号証により製造されたものとは思われず、また、乙第7号証により製造された旨の立証はなされていない。
ウ 「studio ZERO」の販売事実について、被請求人は、乙第6号証の「お買い上げ明細書」以外に販売事実を立証するものはないと主張しており、乙第1号証の3と乙第6号証の関連性もないことから、被請求人が本件商標を付した商品を販売した事実は立証されていない。
(5)乙第9号証について
乙第9号証は「本件使用商品の発注を行った記録データ」と主張されているが、これは株式会社丸井の担当者から被請求人の担当者に「13awの展開希望型番」についての問い合わせであり、株式会社丸井の各店舗にその製品が納品された結果の記録ではないから、本件商標が使用されたとの証拠とはいえない。
(6)「FIELD HOUSE」織ネームとコートに付されたネームの同一性について
乙第1号証の2の商品「コート」に付されている織ネームと乙第2号証及び乙第3号証の「FIELD HOUSEネーム」とが同一のものであることの証拠は提出されていない。
被請求人は、乙第6号証及び乙第7号証のコートに付されている織ネームと同一の織ネームを株式会社ジャストが被請求人に納入した証拠が見つかったとして、乙第10号証及び乙第11号証を提出しているが、乙第10号証は2013年(平成25年)1月22日付けの御見積書であり、乙第11号証の電子メールは4件あるが、一番早いもので2014年1月18日であり、また、乙第7号証の「加工指図書」は2014年5月8日でいずれも上記見積書からほぼ1年経っている。しかも電子メールには、織ネームの具体的は表示がないため、これらの織ネームが同一のものであるか否かは不明である。
(7)商標権者による商品であることの表示について
被請求人は、乙第1号証の2の「FH217-1」のコートのケアラベルの裏面には、被請求人の名称が付されているとして乙第13号証を提出した。
しかしながら、乙第13号証に表示されているケアラベルはコートについているライナーのものであり、コートそのもののケアラベルではない。ケアラベルの表示には、表地ポリエステル100%、中綿ポリエステル、裏地ポリエステルと表示されていることからライナーのものであることが分かる。
また、乙第6号証及び乙第7号証のコートであるとする乙第12号証の写真には製品番号「FH2512」と表示されているが、「fh2512-2」の表示は見当たらない。
4 結語
以上のように、被請求人の提出された乙第1号証ないし乙第13号証の証拠は、同一商品についてのものとは思われず、本件商標を付した商品の製造依頼、納品、販売及び本件商標を付した織ネームの依頼、納品等に関する同一商品についての一連の流れを示す証拠がなく、乙各号証に基づいて本件商標が本件審判の請求の登録前3年以内に「コート」に使用されていたとの被請求人の主張を容認できるものではない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第13号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 本件商標の使用事実
(1)本件商標は、取消請求に係る指定商品中、「コート」について使用されており、その事実は、登録商標の使用説明書(乙1)のとおりである。
ア 使用に係る商品「コート」
本件商標の使用に係る「コート」は、商品写真に示すとおりである(乙1の2)。
イ 本件商標の使用
本件商標と同一の商標である「FIELD HOUSE」が、本件商標権者が販売する当該コートの襟部の織ネームに鮮明に付されている(乙1の2(a)?(e))。
ウ 商品の販売の事実
(ア)本件商標を使用した当該コートが実際に販売された事実は、例えば、平成27年3月23日付けの請求書及び納品書の写し(乙1の3)により、当該コートが「亀井宏(屋号:studio ZERO)」(乙1の4)に対し販売された事実を示す。これらは、管理システムのコンピュータ内に残存しているデー夕を乙第1号証作成時にプリンターから打ち出したものであって、当時打ち出された納品書等は得意先の「studio ZERO」亀井様に送付されている。当該得意先と被請求人との取引は電話によって行われ、特に発注書や受領書をやり取りすることもない。
なお、同請求書、納品書に記載された品名の「FH217-1」とは、前記コートのケアラベルや下げ札に表示された品番とも一致するとおり、前記コートを示すものである(「FH」は「FIELD HOUSE」の頭文字である)。
(イ)また、本件商標を使用したコートは、本件商標の登録時の1995年頃から継続的に使用しており、主に全国の主要百貨店において委託販売の形態で販売され、これらは、例えば直近3年では、「2012年7月から2013年6月まで約7200点で約2億3千万円」、「2013年7月から2014年6月まで約5700点で約1億9千万円」、「2014年7月から2015年5月まで約5400点で約1億7千万円」程度の販売数、販売額の実績がある。ただし、これらは百貨店における委託販売のため伝票類の収集が直ちには困難であるので、上記のとおり、商標権者の手許に明確な伝票が残存していたものを提出する。
2 本件商標の使用事実の追加証拠
(1)「商品写真(コート)」(乙1の2)について
ア 当該写真を提出した意図は、本件審判の請求の登録前3年以内(以下「要証期間内」という場合がある。)から現在まで、継続して使用している本件商標の使用態様を示すものであって、要証期間内における本件商標を使用した商品そのものを示す意図ではない。当該写真と同じ使用態様の本件使用商品が、要証期間内に取引された事実は、当該写真のケアラベルや下げ札にも示された品番と、取引書類によって立証をするものである。
ちなみに、当該写真に示された「Field House」の文字が付された織ネームは、株式会社ジャストにより製造されて被請求人の縫製工場である玉野縫製株式会社に納入されたものである。要証期間内に当該織ネームが取引された際の納品書(乙2)と請求書(乙3)を提出する。また、玉野縫製株式会社から被請求人に「Field House」の商標が付されたコートが納入された事実は、請求書(乙4)と加工指図書(乙5)によって証明する。同加工指図書に示されたとおり、ブランド「Field House」の製品品番FH2501が被請求人に納入された結果、玉野縫製株式会社より請求書が発行された。
イ 「FH217-1」(乙1の2)のケアラベルの裏面には、被請求人の名称が付されている(乙13)。
(2)「studio ZERO」のホームページ(乙1の4)について
ア 当該ホームページを提出したのは、「studio ZERO」の会社概要を説明するためであって、本件使用商品自体の販売を直接示そうとしたものではない。
イ 「Studio ZERO」が、本件商標を使用した商品を要証期間内に販売した証拠として、「Studio ZERO」がインターネット上の店舗「こだわり工房楽天市場店」において販売した際に発行した「お買い上げ明細書」を提出する(乙6)。なお、同号証における顧客名、住所などの項目は、個人情報保護のため黒塗としている。
同号証に示すとおり、「カシミヤ100% ステンカラー ラグラン ロングコート ネイビー 濃紺 SMLLL fh2512-2」のコート1点が2015年2月7日に販売されている。なお、「fh2512」は、当該コートの品番であり、「fh」は本件商標「Field House」の頭文字であるとともに、加工指図書(乙7)に示すとおり、製造品番「FH2512」は、ブランドネーム「Field House」が付されたコートである。
ウ 乙第2号証及び乙第3号証の織ネームと乙第1号証の2の商品「コート」に付されている織ネームの同一性を示す証拠は見つからなかったが、乙第6号証及び乙第7号証のコートに付されている織ネームと同一の織ネームを株式会社ジャストが被請求人に納入した証拠は見つかったので提出する(乙10,乙11)。
乙第10号証は、株式会社ジャストが被請求人に宛てた平成25年1月22日の御見積書であり、「FIELD HOUSE ネーム」と明記されているほかに、織ネームの見本、デザインが添付されている。
また、乙第11号証は、その後、被請求人が株式会社ジャストに対し、「FIELD HOUSE」ネームの納品を依頼した電子メールの写しである。
さらに、乙第6号証及び乙第7号証のコート「fh2512-2」の写真も乙第12号証として提出する。同コートには乙第10号証の織ネームと同一のものが付されている。
エ 乙第6号証の商品は、製品品番「fh2512-2」の「カシミヤ100%ステンカラー ラグラン ロングコート ネイビー 濃紺 サイズ:L」であり、一方、乙第7号証の加工指図書は、左最上部に「野海」、右最下部に「NOUMI」とあるように被請求人が縫製工場の玉野縫製株式会社に宛てたもので、左上半部の「製品品番/FH2512」とその下段の「製品 色番/サイズ」の「2」(ネイビー 濃紺色を表す)から、乙第6号証の「fh2512-2」に合致する商品の規格を示したものである。そして、右下半部の「ラベル/ネーム」の欄の「ブランドネーム」の項目には「Filed House」と記載されているとおり、本件商標の付された織ネームを上前に付すことが明記されている。
(3)百貨店での販売について
本件商標を使用したコートは、全国の百貨店で長年販売をしているが、委託販売のため要証期間における伝票類の収集が困難である。
例えば、首都圏を中心に百貨店などを展開する株式会社丸井でも当該コートは販売されている。要証期間において株式会社丸井が被請求人に対し支払った関係にあることは、お支払案内書の写し(乙8)により示す。残念ながら、個別商品のデータが無いため、この中で本件使用商品自体を特定することはできないが、両者が長年取引関係にあることは明らかである。
さらに、株式会社丸井の担当者が被請求人に対し、要証期間において本件使用商品の発注を行った記録として、例えば当該発注を行ったメール(メール自体は既に削除されている)に添付されたエクセルデータが残っていたので提出する(乙9)。
同データの冒頭に記載されたとおり、株式会社丸井の担当者(森澤氏)から被請求人の担当者(若林氏)に対し、「13awの展開希望型番」すなわち2013年の秋冬物(autum,winterの頭文字)について連絡があり、それが株式会社丸井の各店舗に納品された結果が記録されている。また、型番のFHは、本件商標の「FIELD HOUSE」の頭文字であり、先に示したFH2501やFH217などの型番が含まれている。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者により、本件審判の請求に係る指定商品中「コート」について使用されているものであるから、その登録は商標法第50条第1項の規定によって取り消されるべきではない。

第4 当審の判断
1 被請求人の主張及び同人が提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)「studio ZERO」のホームページであるとして提出された乙第1号証の4(〔アドレス〕http://www.rakuten.co.jp/kodawari-studio/info.html 〔紙打ち出し日〕2015年5月29日)には、「【楽天市場】こだわり工房楽天市場店[会社概要]」の表題の下、「studio ZERO」の会社概要として、「大阪府茨木市西駅前町10-223」、電話番号、「店舗運営責任者:亀井 宏(代表)」等の記載があり、「メーカー直送 野海コート専用」の項において、【備考】として「こちらの配送方法は、株 野海 のコートをお買い上げでメーカー直送をご要望の方専用となります。」との記載がある。
(2)乙第6号証は、「Studio ZERO」がインターネット上の店舗「こだわり工房楽天市場店」において販売した際に発行した「お買い上げ明細書」とするものであり、「<こだわり工房楽天市場店>お買い上げ明細書」の表題の下、乙第1号証の4に記載の「studio ZERO」と住所、電話番号が一致する「studio ZERO」からマスキングされたお客様宛てで「このたびはお買い上げいただきまして、誠にありがとうございました。お客様のお買い上げ明細書を送付いたしますので、ご確認いただきますよう、お願いいたします。」と記載されており、「お買い上げ明細」として、お届け先、お支払い方法、受注番号のほかに、「ご注文日:2015年2月7日」の記載、そして「商品名/商品番号/項目:選択肢」欄に「カシミヤ100% ステンカラー ラグラン ロングコート ネイビー 濃紺 S M L LL fh2512-2 サイズ:L メーカー直送の可否:OK」、「個数」欄に「1」、「単価」欄に「60,000円」の記載がそれぞれある。
(3)乙第10号証は、株式会社ジャストが商標権者に宛てた平成25年1月22日付けの見積書であると認められ、その1葉目には、「品名」欄の1行目に「FIELD HOUSE ネーム」と記載され、同じく4行目に「レピア黒 エンドホールド 高密度打込」、同じ行の「数量」欄に「5000」、「単価」欄に「17」、「金額」欄に「85,000」の記載があるほか、黒地長方形内に、上下に長さの違う3本の直線を有する「FIELD」及び「HOUSE」の欧文字を2段に併記したデザインの織ネームの見本が添付されている。そして、「(株)ジャスト」の表示の下部には、住所、電話番号とともに、「大福」と表した印が押されている。
(4)乙第11号証は、商標権者が株式会社ジャストに宛てた「FIELD HOUSE」ネームの納品を依頼した電子メールの写しとするものであり、送信日が2014年1月8日、同年2月26日、同年5月19日、2015年2月13日、同月25日のものが提出されており、その内容は、「FIELD HOUSE」ネームを1,000枚又は2,000枚、商標権者を納品先として、玉野縫製株式会社事務担当者から株式会社ジャストの大福様宛てに納品を依頼するものである。そして、「FIELD HOUSE」ネームの単価は「17」であり、乙第10号証の見積書に記載の「レピア黒 エンドホールド 高密度打込」の「単価」欄の「17」と符合する。なお、「玉野縫製株式会社」は、商標権者の縫製工場であると被請求人は主張している。
(5)乙第12号証は、商品「コート」の写真であり、男性物のコートであると認められ、左側の内ポケット部分に織ネームが縫い付けられており、そこに表された商標の態様は、乙第10号証の見積書に添付の織ネーム見本に表された商標の態様と符合する。また、該コートに付された下げ札には、「NO. FH2512」、「COL. 2」、「SIZE. S」、「QUAL. 表地 カシミヤ 100% /裏地 ポリエステル」及び「日本製/FH2512-2 S」が記載されている。さらに、内ポケット内に縫い付けられたケアラベルの表面には、「品番 FH2512」、「色番 2」、「サイズ/胸囲 80?88/身長 155?165/S」等の印刷がされ、同じく裏面には、「表地 カシミヤ 100%/裏地 ポリエステル」、「株式会社野海」、「日本製」等の印刷がされている。
2 上記1で認定した事実を総合すると、商標権者は、自身の縫製工場である玉野縫製株式会社において、株式会社ジャストに依頼して作成した「FIELD HOUSE」の織ネームを付した品番「FH2512」である男物のコートを製造し、乙第12号証の商品写真と同等のサイズ違いのコートが、「こだわり工房楽天市場店『studio ZERO』」を通じて、一顧客との間に2015年(平成27年)2月7日に注文、販売があったことが推認される。
そして、「FIELD HOUSE」の織ネームに表示されている「FIELD HOUSE」の文字からなる標章は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標といえるものであり、また、該商標を付した「コート」を商標権者が製造したといって差し支えない。「コート」は、本件審判の請求に係る指定商品に含まれる商品である。
さらに、商標法第50条第1項における商標権者、専用使用権者又は通常使用権者(以下「商標権者等」という。)が登録商標の使用をしている場合とは、特段の事情のある場合はさておき、商標権者等が、その製造に係る商品の販売等の行為をするに当たり、登録商標を使用する場合のみを指すのではなく、商標権者等によって市場に置かれた商品が流通する過程において、流通業者等が、商標権者等の製造に係る当該商品を販売等するに当たり、当該登録商標を使用する場合を含むものと解するのが相当である(知財高裁平成24年(行ケ)第10310号同25年3月25日判決参照)ところ、本件においては、本件商標と社会通念上同一と認められる商標が付された「コート」が流通業者といえる「こだわり工房楽天市場店『studio ZERO』」を通じて、一顧客に販売されたということができる。そして、「コート」が、「こだわり工房楽天市場店『studio ZERO』」を通じて、一顧客に販売された2015年(平成27年)2月7日は、本件審判の請求の登録前3年以内に当たるものであり、当該日に販売された該行為は、「商品に標章を付したものを譲渡する行為」(商標法第2条第3項第2号)に該当する。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者がその請求に係る指定商品中の「コート」について本件商標と社会通念上同一の商標の使用をしていることを被請求人が証明したと認められる。
したがって、本件商標の登録は、その指定商品中の本件審判の請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標(登録第3065975号商標)


審理終結日 2017-06-12 
結審通知日 2017-06-15 
審決日 2017-06-27 
出願番号 商願平4-153177 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (025)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 正雄 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 田中 幸一
酒井 福造
登録日 1995-08-31 
登録番号 商標登録第3065975号(T3065975) 
商標の称呼 フィールドハウス 
代理人 特許業務法人みのり特許事務所 
代理人 藤沢 則昭 
代理人 藤沢 昭太郎 

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